涼宮ハルヒの決戦 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/21(日) 02:06:08.93 ID:ICW71nkn0 物事の移り変わりというものはなんともあっさりとしたものである。 それは人の心にしろ、季節にしろ。 あれだけ暑かった夏も、過ぎてしまえば気温はガクッと下がり、 カップル達が毛糸製の一本の縄で首を繋ぎ、 磁石のS極とN極が引き寄せられるかの如く体を寄せ合いながら町を闊歩する季節がやって来た。 こんな季節には静かに季節が流れ行くのを楽しむ、 いわばそれが昔からの慣習であり、情趣を解す心というものである。 しかし、そんな事などおかまいなし、年中無休24時間暑苦しいやつがここにいる。 その名は涼宮ハルヒ。 なにかとお騒がせなこいつも夏を過ぎれば、 冬眠する蛇や熊のように静かになるかと思ったが、その兆候は全く見られなかった。 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:06:58.81 ID:ICW71nkn0 ハルヒ「いいわ、勝負してあげる。その変わり、手加減は一切なしでいくわよ!!」 ・・・・・・・・・。ああ、頭が痛い。 誰かブァファリンを持ってきてくれ。半分の優しさなんて要らないから、100%鎮痛剤でできてるやつをな。 なぜこいつが世界戦を前にしたボクサーのように燃え上がっているのかというと、原因は一本の電話だった。 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:07:33.34 ID:ICW71nkn0 妹「キョンくん、キョンくん電話ー!」 ノックもなし、ドアを勢いよく開けて開口一番、言い放った。 こいつは何度言ってもノックをしない。言っても言っても聞かないのだ。 キョン「おいおい、いつもノックぐらいしろって言ってるだろ。」 妹「はーい!」 返事だけはいつもよい。我が妹ながら素直な心だけは俺なんかよりもずっと育っている。 しかし小学生も高学年になったんだ。もう少ししっかりとして欲しいものだ。 そんな心配をよそに妹は「シャミ連れてくねー」と言って、 誰からの電話かも告げず、猫を抱えて部屋を後にした。 しょうがなく俺は誰からかも分からない電話に出る羽目になった。 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:08:05.25 ID:ICW71nkn0 「やあ。妹さん、相変わらず元気だね。」 この少し堅苦しいしゃべり方。その少し相手を試すような声。 電話の主は昔のクラスメイトの佐々木だった。 佐々木「君のほうは元気かい?僕の方は相変わらず日々に、勉強にといつも何かに追われる毎日だよ。    授業についていくための勉強、勉強のための勉強。未来のための勉強。少し嫌になるな。」 そうか、そうか。超進学校に行ったお前の苦悩は分かったよ。で、何の用事だ。 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:08:38.94 ID:ICW71nkn0   「くっくっくっ、変わらないね、キョン。その無駄を省こうとする性格は相変わらずだ。」   「今日は君に少し頼みたい事があってね。一回収めたクラス名簿を引っ張り出してまで君に連絡を取ったんだ。 それでは単刀直入に聞こう、来週の金曜日なんだけど、空いているかな?」 来週の金曜っていうと三連休の初日か。まあ今のところ何の予定もはいっちゃいないが。   「そうか。それはよかった。実は少し君と話がしたくてね。」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:09:10.98 ID:ICW71nkn0 話?何か重要な事か?  「いや、他愛の無い会話がしたいだけさ。お互いの学校での事とか、昔話とかね。」 「僕の周りには、僕と過去の時間を共有した人間がいなくてね。僕もたまには郷愁にふけたくなるんだよ。」 それなら国木田でも誘ってやれよ。頭がいいやつ同士の方が俺なんかよりずっと話が合うと思うぜ。 「前にも言ったと思うが、君はとても人の話を聞く能力に長けていると思うんだ。 話し手と聞き手、両者が違う方向を向いて話していても全く話は伝わらないんだ。 君は、そうだな。人の話のベクトルに自分を合わせる事ができるとでも言っておこうか。」 「そして、一番驚くべきことは先を読んで核心をついた質問ができる。」 「これはすごい才能だと思うんだ。国木田くんにもこの能力はないと思うよ。」 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:09:56.19 ID:ICW71nkn0 そうかい。要するにプレステ3並みのスペックを持ったシーマンってことだろ。そりゃ喜んで良いのか? 「むしろ誇りに思うべきだと思うよ。という訳で、キョン。金曜日、僕達と会ってくれるかな?」 僕達ってなんだ。他に誰かいるのか? 「ああ、僕のツレがね。橘さんと、九曜さんも来るよ。」 橘と九曜って、あの超忌々しい性悪超能力女と恐ろしい目をした宇宙人か。 「くっくっくっ、彼女達はだいぶ嫌われているようだね。」 過去、あいつらのおかげで誘拐されたり閉じ込められたりしているからな。 そのお礼はしてもしてもしすぎることはない。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:10:27.15 ID:ICW71nkn0 「じゃあついでに言うよ、できれば一人で来て欲しい。」 はっ、なぜだ。何か危ない事でもすんのか?それならなおの事一人じゃ行けないな。 「しないよ、そんな事。ただ、僕は平和的に会話がしたいだけなんだ。一般の友達同士がするような雰囲気でね。 でも、そこに対立したもの同士がいたらあまり友好的な空気にはならないと思うんだ。 アメリカとソ連の冷戦ような空気の中、会話してもあまりノスタルジックな気分には浸れないだろう?」 ・・・危険はないんだな? 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:11:18.75 ID:ICW71nkn0 「ああ、それは僕が保障するよ。」 お前の保障がどれほどまでに信頼できるのかしらんが、分かったよ。 しかし何かあったらすぐに帰らしてもらうからな。 「ああ、良かったよ。本当の所、君は承諾してくれないんじゃないかと思っていたんだ。」 「まあ、とにかく金曜日、待ち合わせは駅前でいいかな?  朝9時。寝坊なんてしないでくれよ。時間はとても貴重な物なんだから。」 「あっ、あと次に会うときに携帯の番号を教えてくれるかな。   何度も妹さんに取り次いでもらうのは気が引ける。」 ああ、分かったよ。じゃあな。 「ああ、じゃぁまた。」 そういって電話はプツリという音とともに切れた。 電話が切れた後も俺は電話を耳から離さずにいた。いや、離せずにいた。 旧友との会話に心和んでいたからではなく、恐怖で足が竦むような感覚。 週末の事を考えると胃がズキズキとした。俺の体がやつらと会うことに対して警告を送っていた。 俺は正直ビビっていた。 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/21(日) 02:20:02.23 ID:ICW71nkn0 決戦前日。 窓の隙間風が無性に冷たく感じるのは、ただ単に季節が冬へ近づいているからだけではないだろう。 明日の事を考えるとどっと気分が重くなり、俺のからだを空気が押しつぶしてしまうのではないかという感覚に襲われた。 やはり敵陣に一人で突っ込むのはまずいな。昔、モンゴル帝国が日本に攻め入って来たとき、日本の将軍は名乗りをあげ、一人で勇猛果敢に立ち向かって行き、 人海戦術の前にあえなく撃沈した。 長門や古泉が駄目にしろ、朝比奈さんなら連れて行ってもいいのでは・・・。 いや、駄目だな。あの人じゃカマドウマの時しかり、いたところでオロオロして何の力にもなりそうにないからな。 こうなったらいっそのこと妹でも連れて行くか。佐々木と面識もあるし、喜ばれそうだな。 特にあの性悪超能力女に。 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:20:33.47 ID:ICW71nkn0 そんなことを考えていると時計の針が授業終了の時刻を刺すのはあっという間だった。 いつもの授業と同じ時間とは思えない。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:21:04.41 ID:ICW71nkn0 授業も終わり部室へ向かう。木々も枯れはじめ、山も冬支度の様だ。 部室にノックをして入る。 いつもはだいたい古泉が最後笑顔を振りまいて部室に入ってくるのだが、今日は珍しく俺が最後だった。 パイプ椅子に座って、指だけ軽快に動かし、一心不乱に国語辞書ほどのハードカバーを読んでいる長門。 小さな体を小刻みに動かし、せっせとお茶を汲んでいる朝比奈さん。 ファッション雑誌の表紙を飾れるような笑顔を向けながら、挨拶をする小泉。 そしてコンピュータ部から奪い取ったパソコンのデスクトップと睨めっこをしているハルヒ。 いつものSOS団の風景である。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:21:36.15 ID:ICW71nkn0 古泉「今日は遅かったんですね、掃除ですか?」 ああ、ちょっとばかし時間がかかってな。  「そうですか、それはそれはお疲れ様です。では前のゲームの続きでも、どうですか?」 そう言って棚の上から少しホコリのかぶったボードゲームを持ち出す古泉。  「2勝3敗でしたね。今日勝って勝率を5割に戻して見せますよ。」 いつもこの手のゲームで勝つことのできない古泉だが、このゲームだけは相性が良いらしい。 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:22:08.94 ID:ICW71nkn0  「やっと真の力を発揮できた、とでも言っておきましょうか。」 どこぞのゲームのボスのようなセリフだな。 ハルヒ「キョン、明日は町で一日中不思議探しよ。もちろん空いてるわよね?」 そんな約束した覚えは無いが。  「当然よ。私が今決めたんだから。」 全く勝手なやつだ。でも残念だったな。明日は先約がいる。不思議探しでもなんでも好きなだけやってくれ。 もちろんお前達だけでな。  「SOS団員にあるまじき発言ね。そんなんだからあんたはいつまでも平団員なのよ。」  「で、その約束はSOS団の行事よりも大切な約束なんでしょうね。」 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:22:40.16 ID:ICW71nkn0 小学校で習わなかったか?約束ってのは先にしたほうが大事なんだよ。同じ中学のやつに会うだけだ。  「私の約束をそこら辺の人間と同格に扱うなんて信じられないわ。私の約束は大統領と同等の力を持つのよ。」  日本は大統領制はとっていない。  「同じ中学って・・・あの鈴木だかなんだか言ったあの子?」 佐々木だ、佐々木。余計なやつらもいるが。   「ふーん。そうなの。ふーん。」 そう言ってハルヒはまたパソコンのデスクトップと睨めっこをする作業に戻っていった。 この時はまだ明日の自分があんなに追い詰められるなんて思っていなかったな。 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:23:11.69 ID:ICW71nkn0 夜。 明日の決戦に備えていつもより少し早くベッドへと潜り込んだ。 ♪〜 ♪〜 携帯の着信音が俺の眠りを妨げる。 「明日、不思議探し決行!待ち合わせ場所はいつもの場所、時間は9時!遅れるんじゃないわよ!」 キョン「え?ちょっと―――プツン・・・プー」 携帯を見直す。そこには着信、涼宮ハルヒと確かに表示されていた。 なんなんだ、アイツ・・・。明日は駄目だって言ったろ・・・。 急いでハルヒに電話をかける。 (―――通話中か・・・。) 全く勝手なやつだ。もう少ししたらかけ直して苦言を申してやらなねば。 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/21(日) 02:23:43.00 ID:ICW71nkn0 10分後・・・ 20分後・・・ いったいなんなんだ。こんな夜中に長電話か。 (まいったな。こうなったら佐々木ほうにかけて見るか・・・。) 出ない。こっちも通話中。 なんなんだこいつら。夜に長電話ってのが今の女子高生のステータスなのか? 急激に襲い掛かってくる睡魔ども。5分だけ。5分だけ目を瞑るだけだ。決してフラグなんかじゃない。 そして俺は睡魔に負けてしまった。 寝てしまうとは。それも目覚まし時計をセットしていなかったなんて。 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/21(日) 02:27:29.18 ID:ICW71nkn0 カーテンの隙間から差し込んでくる光に目が覚める。 今日は目覚ましがなる前に目が覚めたぞ。 鳥のさえずり。爽快な目覚め。空気のおいしい朝だ。 こんな朝には新聞でも広げながら、目覚めのコーヒーを一杯飲みたくなるもんだ。もちろんミルク多目な。 俺はひとつ大きな伸びをして時計を手に取る。 気持ちの良い朝終了。 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:28:00.08 ID:ICW71nkn0 約束の時間に間に合うか間に合わないかの瀬戸際。 しかも待ち合わせ場所には今頃、鬼も裸足で逃げ出す修羅場が広がっていることだろう。 鬼が靴を履いているかは知らんがな。 ・・・・・・少し風邪っぽいな・・・。今日は家で静かにしていようかな。 なんて笑えないジョーク言ってられない。 俺はすぐに愛車のママチャリに乗り込み、ペダルを精一杯回転させて駅へ向かった。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:28:30.72 ID:ICW71nkn0 時間には間に合った。 がしかし、すでに両軍勢ぞろい。西、性悪超能力女。暗黒オーラ宇宙人。 東、スマイリー古泉、挙動不審未来人、不動宇宙人。 そして恐らく神と恐らく神モドキ。 そこには予想通りの修羅場が完成しており、すでに変な空気が周りに充満していた。 ハルヒ「遅いわよ、キョン!団長をまたせ―――」 佐々木「遅いよ、キョン。いつも言ってるじ―――」 両者顔を見合わせた。他人事なら是非ともこの後の展開を見守りたいものだが。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/21(日) 02:35:22.45 ID:ICW71nkn0 佐々木「どういうことなんだい、キョン。今日は僕達と約束したはずじゃないのかい。」 ハルヒ「まさか、あんた。SOS団よりもそっちを優先しようとしてるんじゃないでしょうねぇ。」 佐々木「どうなんだい、キョン!」 ハルヒ「どうなのよ、キョン!」 いつも温厚な佐々木が少し声をあらげた。ああ、逃げ出したい。穴があったら入りたいって言葉こんな時にも使ってもいいんだっけ? 元はと言えば、ハルヒ。お前が強引に約束を――― 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:35:53.18 ID:ICW71nkn0 ハルヒ「何よ!なんか文句あるの!!」 駄目だこりゃ。どうにかしてくれ。外国の兵を前にビビっていたのに、まさか自軍から裏切りがでるなんて。 俺は古泉のほうに助けを求めたが、古泉はいつもの笑顔で両手の手のひらを上に向けた。 両者から一分ほど、強烈な視線を穴があくんじゃないかってほど浴びせられた。 そんな状況を見かねたか、性悪超能力者が口をはさんだ。 橘「じゃあ勝負しませんか?」 ハルヒ「誰よあんた!ちょっと黙ってなさい!」 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:36:24.10 ID:ICW71nkn0 相変わらずの自由人ハルヒ。にしてもなんだ勝負って。ここでドンパチでも始めようってのか? 橘「キョンくんを一日逆エスコートするんです。そして気に入られた方が勝ち。どうですか?」 ハルヒ「なんでキョンなんかのために、そんなことしなきゃならないのよ。」 橘「賞品はそうですね・・・。   キョンくんに選ばれたチームの代表者が1日キョンくんとデートができるなんてどうでしょう。」 おいおい、なんの冗談だよ。そんな賞品あってたまるかよ。 ハルヒ「何よそれ、訳わかんない―――」 そうだそうだ。もっと言ってやれ。 ハルヒ「―――でもそれ、ちょっと面白そうね。」 へっ? ハルヒ「いいわ、勝負してあげる。その変わり、手加減は一切なしでいくわよ!!」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:36:55.19 ID:ICW71nkn0 ―――回想終わり。 全くどうなってんだ。これからどうなるんだ? 俺のクエスチョンマークは大きく膨らみ、そして空へと舞い上がっていった。 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:37:25.97 ID:ICW71nkn0 はっ・・・ なんだ・・・夢か。なんだかとても悪い夢を見た気がするなあ・・・。 なんてことにはそうそうならない。 話はどんどんと先へ進んでゆく。それもよからぬ方向へ。 橘「それでは3対3で勝負ですね。そちらはあなたと、髪の長い彼女、そして無口な彼女でいいですね?」  「こちらは私と九曜、そして佐々木さんの三人です。」 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:37:56.66 ID:ICW71nkn0 ハルヒ「キョンの旧友だかなんだか知らないけどコテンパンにしてあげるわ!」 何をもってコテンパンにする気だよ。 橘「こちらの代表者は佐々木さんです。そちらの代表者はあなたでいいですよね?」 ハルヒ「もちろんよ。団長だもの。」 みくる「えっえっ!?ふぇー・・・でもぉー―――」 ハルヒ「何か文句あるの!みくるちゃん!」    「大丈夫よ。私は自分の物を盗られるのが嫌いなの。     例えそれがSOS団員の落ちこぼれだとしてもね!」 みくる「はっ、はいですぅ・・・。」 佐々木「くっくっくっ、何だか楽しそうだね。」 佐々木は喉の奥で笑い声を立てた。笑ってないでなんとかしろ。お前も話題の中心にいるんだぞ。 ハルヒ「それじゃあSOS団が先行ね!行くわよ、有希、みくるちゃん!」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:38:27.34 ID:ICW71nkn0 そう言ってハルヒは後ろを振り向き、別に行き先も決めてないであろう、適当な方向に歩き出した。 その姿を見て佐々木軍団は駅の方向へと何も言わずに歩いていった。 終始、長門と見詰め合っていた九曜だけはそこに少しの不気味な空気を残して。 ビルの隙間風が痛い。 結局話に着いて行けなかった俺と古泉がその場にとり残され、少しくたびれたススキの様に立っていた。 ハルヒ達はというと、ハルヒを先頭に朝比奈さん、長門と並んで歩いている。 その姿はまるで性格の著しく違うアヒルの親子だ。 俺達はそのアヒルの親子に近づいていき、機嫌の良さそうな親アヒルに尋ねた。 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:38:58.12 ID:ICW71nkn0 古泉「僕はいかがいたしましょうか?」 ハルヒ「今日はもう帰ってもいいわよ。」 古泉「へっ?」 そんな殺生な。流石の古泉もこの返答には少し驚いたようだ。 その顔にはいつもの余裕の笑顔はなかった。 ハルヒ「私、フェアじゃないことって嫌いなの。3対3っていうルールがあるなら、それに従わないとね。」 古泉「・・・わっ、分かりました・・・。それでは・・・今日は帰りますね・・・。」 哀れ古泉。その背中にはボーナスを減らされた中年サラリーマンのような哀愁が漂っていた。 古泉が駅の改札に消えていくのを俺は最後まで見送った。 俺は古泉が最後に一度だけ振り向き、決して笑っていない笑顔を見せたのを確かに見た。 そしてその姿を見届けたハルヒはまた歩き始めた。 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:39:29.32 ID:ICW71nkn0 長い事熱を帯びていた日本を冷ますか如く最近はめっきり寒くなった。 人間は寒さに強くはできていない。だから人間は衣服などを着用することでそれを補うようになった。 しかし一番効率よく寒さを凌ぐにはどうすればいいだろう。 それは一歩もねぐらから出ない事だ。寒くなれば、熊だって蛇だって冬眠をする。 外気を遮断し、動かない事で体温を保つのだ。 なのに人間とはなんと天邪鬼なのだろう。 外がこんなに寒くなっても町には人があふれている。 それは物を求めているのか。はたまた心を求めているのか。 人の心の変化というものは単純で、寒さ一つで心寂しくなってしまう。 そんな時は誰かと一緒に過ごすのがよいだろう。 友達、家族、はたまた恋人。 俺は今3人の女子と街中を歩いている。どうだい?羨ましいか? そうか。そうだろ。ならこのクソ重たい荷物を今すぐ俺の手から奪い取ってくれ。 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:39:59.61 ID:ICW71nkn0 みくる「あのぉ〜大丈夫ですかぁ〜?」 この方の声を力に変えて頑張ってきた俺だが流石にそろそろ電力切れのようだ。 俺の力は風力発電じゃないもんでな。 おい、もういいだろ、そろそろ帰ろうぜ。 ハルヒ「何言ってんのよ!これからじゃない!」 なんだってエスコートされる側の俺が荷物持ちなんてしなきゃなんねえんだ。 ハルヒ「あんた、今日遅れてきたでしょ。その罰よ!」 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:40:30.24 ID:ICW71nkn0 最初の方はよかった。まだハルヒの頭の中にも勝負の内容が入っていたのだろう。 適当な喫茶店でお茶をし、そこの代金はハルヒが払うと言い出した。 火星でも降ってくるんじゃないかと思って外を見上げてみたが、流れ星の一つも降ってこなかったよ。 その後、映画を見に行った。 俺の好きな映画でいいっていうもんだから、見たかったSF映画を見たんだが、ハルヒは全く興味が持てなかったのだろう。 少しだけ難しそうな顔で何か考え込んでいたが、早々に眠りの世界に旅立っていった。 今に思えばそれが失敗だったのかもしれん。 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:41:01.20 ID:ICW71nkn0 目覚めたハルヒは勝負の事を完全に忘れていた。 いや、覚えちゃいるが無視しているみたいな。 恐らく眠っている間にハルヒの頭の中で多数決が行われ、団長である私が団員をエスコートするなんて考えられないという案が得票数多数で可決されたのだろう。 そこからはいつものハルヒ。 女物の服を見たり、ゲームセンターにいったり。 その間、ハルヒパーティーが手に入れたアイテムが全て俺の腕の上に積みあがっていった。 今になっては古泉の大切さを体に教え込まれているところだ。 しかし時間がたつにつれハルヒのテンションは下がっていった。 一瞬見せるどこか切なげな顔が俺の目に焼き付けられた。 その後ハルヒは一通り行きたいお店を回った後、駅に戻り、 ハルヒ「SOS団は…あんたと私が作ったんだからね!わかってんでしょうね。」 といって口をアヒルにしたハルヒはプリプリ怒りながら駅に向かっていった。 いつもああなら可愛げがあるってもんなんだがな。 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/21(日) 02:41:32.56 ID:ICW71nkn0 朝比奈さんは「キョンくん、私信じてますね。」と、一撃必殺級の笑顔を俺に向け、そして駅へと向かっていった。 そして俺と長門が残された。 キョン「さて、帰るか。」 長門「・・・・。」 無言の返事を聞いて、俺達は歩き始めた。 会話のないまま俺達は歩き続ける。 空にはたくさんの星が輝いて、俺達を照らしていた。 そういえば昔もこんな星を見たことがあるな。 あれは・・・そうだ。中学のときの塾帰り。佐々木と見た星空にどこか似ている。 あの時は佐々木が一方的に星の雑学を披露し、俺はそれを静かに聴いていた。 今は会話も無く、ただただ歩いている。 その時、俺の手を長門の手が捕らえた。 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 02:42:03.01 ID:ICW71nkn0 長門「・・・。」 驚く俺。ビックリして自転車を倒してしまった。夜の世界に響く音。その場に立ち尽くす。 冷たくて、白くて、そしてとても小さい手。 強く握り締めたら崩れてしまいそうなくらい。 キョン「長門―――」 長門「・・・・・・天蓋領域だけには負けない。」 長門の小さな声がつぶやく。 長門・・・・・・。お前・・・・・。 まっ、まあ長門が感情を表しただけでも成長かな。 俺は顔で笑って心で泣いていた。 この少しだけ期待した俺を笑いたいなら笑ってくれ。 恐らく俺の枕は明日、俺の涙でびしょ濡れになっているだろうよ。 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:01:02.80 ID:ICW71nkn0 佐々木「やぁ、キョン。今日は遅れずにちゃんと来てくれたね。また遅刻するんじゃないかってハラハラしたよ。」 寝不足の俺に佐々木の色んな意味の詰まった言葉が容赦なく突き刺さる。 俺が来たときにはすでに三人揃っていた。 佐々木はキャミソールにジーパンスタイル。橘は高そうなブランドで身を包んでいる。 そして・・・真っ黒な服に真っ黒で怖いほど綺麗な髪。やはりこいつだけ空気がどこか違う。   「どうしたんだい、とても眠そうだね。」 ああ、昨日色々あってな。   「へえ、君の高校の友達も頑張ったんだね。先手をとられちゃったかな。」 ・・・・。俺は佐々木を少し睨み付けた。 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:01:33.42 ID:ICW71nkn0 「おいおい、勘弁してくれよ。君を今からエスコートしようとしているのに。あまり怒らないでくれ。 眠たいときには・・・そうだな。コーヒーを飲むといい。コーヒーにはカフェインが入っているからね。    カフェインには覚醒作用があるから、君の重たい瞼もたちまち軽くなるはずだよ。」   「おっと、でもカフェイン中毒には気をつけてくれよ。パニック障害が発生することもあるらしいからね。」 朝からよくしゃべるやつだ。お陰で目が覚めそうだ。 橘「雑談中失礼。じゃ行きましょうか。車も待たせてあるし。」 佐々木「そうだね、行こう、キョン。」 顔を向けた先には真っ黒の車が止まっていた。 どこぞのお偉い人が乗ってそうな黒塗りのベンツ。 大丈夫なんだろうな。拉致なんて洒落になんねーぞ。 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:02:12.33 ID:ICW71nkn0 橘「心配後無用。今回は単純に移動手段なだけよ。 それに今日はあの可愛らしい先輩もいないしね。」 俺は少し橘を睨み付け、最後に車に乗り込んだ。 何かあったらドアを開けて飛び出すためだ。・・・恐らくそんなことできないけど。 車は俺の心配を他所に軽快に高速道路を突き進んだ。景色が一瞬のうちに通り過ぎる。 車中では主に佐々木と俺が中学時代の話をしていた。 佐々木のしゃべる事なんかは中学時代とほとんど変わっていなかった。 急に車が止まる。 「着きました。」 どこからともなく聞こえた声と共にドアが開かれた。 ここは・・・遊園地? 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:02:43.52 ID:ICW71nkn0 佐々木「くっくっくっ、驚いたかい?実は一度行ってみたくてね。     友人や恋人と来る場所の定番らしいじゃないか。君は誰かと来た事があるのかな?」 佐々木はいたずらに成功した子供のような顔で俺に問いかけた。 遊園地なんて小学生の時に家族と来て以来、来てないな。   「僕はどうもこの娯楽施設の良さが分からなくてね。」   「多くの時間を消費するくせに何も自分の身につかない。 こんな非効率的な場所にくるなら図書館に行ったほうが幾分かためになると思うんだ。」 そりゃあ恋人同士、せっかくのデートが会話厳禁の図書館じゃ味気ないってのが世論なんじゃないのか?  「そんなものなのかな。お互い知識が増えると話が弾むと思うんだけどな。   まあいいや。今日は久しぶりに塾も無い、大いに楽しもうじゃないか。」 そういって俺の腕を引く。 俺は佐々木の後ろを引きずられるかの様にして遊園地の門を潜った。 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:03:15.36 ID:ICW71nkn0 「しっかしこの寒いのに人が多いな。」 俺は愚痴っぽく零した。流石遊園地と言うだけあってそこら中に浮かれて笑ってるやつらがたくさんいる。 つかの間の休日。厳しい現実なんて忘れて楽しもうとしているのだろうが、 浮かれれば浮かれるほど後のダメージは多いだろうに。 人生なんてものは楽あれば苦ありだ。 楽を得るために苦を味わうのか。 苦を味わったから楽があるのか。 要するに俺が言いたいのは・・・・・あー・・・どいつもこいつも浮かれやがってってことだ。 俺は正直この勝負に乗り気じゃなかった。 ハルヒは知らないが、俺達はこいつらに一度ならず二度も危険に晒されている。 それなのに、急にやれ勝負だのやれエスコートだのと。 今回だって何か裏があるんじゃないか、そう思って当然だろ。 そんな事を考えていた俺に対して、佐々木は少し遠くを覗く様にして言った。 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:03:46.49 ID:ICW71nkn0 佐々木「本当に人が多いね。嫌になるくらいだ。」   「でもここにいる人たちは日本の人口にしてみれば極わずかな人数だ。世界人口にすればもっとだね。 世界にはこれの10万、いや100万倍以上の人々が暮らしている。」   「でも本当にそうなのかな。キョン、君は外国に行ったことがあるかい?」 いや、ないな。 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:04:17.43 ID:ICW71nkn0   「実は僕も無いんだ。だから本当に外国が存在していると断言できない。 僕達は外国が存在するのを知識として理解している。でも外国を実際に見たことは無い。 映像としてでなく、本物の外国をね。外国に言った事がある人だって、飛行機の中にいるんじゃ、 自分が本当に海を渡って外国にいるのか証明できないだろ?」  「キョン、君だって人間が月に行ったことがあることぐらいは知っているよね?」 当然だろ。馬鹿にしているのか?   「くっくっくっ、悪い悪い。そう、人間は月に行った。でも本当にそうなのかな。」  「人が月に立っている映像を見た。そして知識として人間の歴史や脳に刻み込まれた。」  「でも本当に人間は月に行ったのだろうか。人間が月に行ったか否か。今でもいろんな説があるんだ。 アポロ計画はアメリカのでっち上げだった、とかね。」 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:04:48.56 ID:ICW71nkn0   「極論から言ってしまえば、そう君の生きているこの世界だって本物なのかどうか誰にもわからない。 作られた所を誰も見ていないのだから。」  何が言いたい。  「僕や涼宮さんが神と呼ばれる存在になる前にもこの世界は存在していたのだろうか。」 俺が返事をする前に佐々木の口からはっきりとした言葉が飛び出した。  「僕は存在していたと思ってる。僕にははっきりそれ以前の記憶があるからね。」   「でももしこの世界が4年前にできた世界だったとしたら。今までの記憶はすべて作られたものだとしたら。    だとしたら、誰が、何のために僕達をいわゆる神といわれる存在にしたのだろう。」  「なぜ全く係わり合いのない二人が選ばれたのだろう。」 佐々木は少し間を空けて、俺の顔をまじまじと眺めながら言った。   「そしてその係わり合いのない二人の少女の唯一の共通点は何なのか。」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:05:21.91 ID:ICW71nkn0  「―――いや、折角遊園地に来たと言うのに一人で長々と喋ってしまって悪かったね。でも君なら僕が何を言いたいのか分かるんじゃないかな。」  「・・・そうだ。お腹が空かないかい?昼時になって店が混む前に食べてしまっておこうじゃないか。」 そう言って、佐々木はまた俺達を率いて歩き始めた。 俺はこいつが何を言いたいのかだいたい察しは付いたが、口には出さないでいた。 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:05:52.85 ID:ICW71nkn0 味も普通。量も普通。しかし価格だけは年中インフレ状態の遊園地の食事をすませた。 佐々木と俺を先頭に一行は何に向かうでもなく、ただただブラブラと歩いく。 周りからは笑い声とジェットコースターに乗っている人の奇声が聞こえてくる。 その声を聞いた佐々木はジェットコースターに乗ろうと言い出した。 絶叫マシーンの類は初めてらしい。本当に度胸のあるやつだ。まあ俺もこの手の絶叫マシーンは嫌いじゃないがな。 全員了解し、ジェットコースター乗り場へと歩を進める。 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:06:28.04 ID:ICW71nkn0 途中、九曜が急に立ち止まった。そして一点を無言で眺めている。 その先にはこの遊園地の二匹のマスコットキャラクター、ねずみのようなきぐる・・・おっと生き物が愛嬌たっぷりに子供達に手を振っていた。 九曜はそんなキャラクターをじっと見つめている。 なんなんだ。こういうのに興味があるのか?やはり宇宙人の趣味はよく分からんな。 するとそのキャラクター達は一心に見つめる九曜に気づいたのか、近づいてくる。 近づいてくると結構でかいな。そしてそのまま九曜に―――九曜をスルーして俺の方に向かってくる。 そして二匹は俺の肩を掴み、そのまま俺は職員専用の建物に連れて行かれた。余りの事に佐々木達はポカーンと口を空けている。 俺はその顔を見ながら後ろ向きに連れて行かれた。最後に見た佐々木の顔はなぜか少し笑顔だった。 結論、俺は遊園地のキャラクターに誘拐された。 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:06:58.76 ID:ICW71nkn0 キョン「おいおい、あんたら何やってんだ。やつらの仲間か?」 キャラクターは奇妙な裏声で「違う」とだけ答えた。 この真昼間、しかもこんなに人がいるところで誘拐とは大した度胸だ。しかし褒めてる場合じゃないな。 なんだって俺はこんなとこに連れてこられたんだ。俺は以外に冷静だった。 そりゃあんたらの中には人がいるって、妹に告げ口はしたが、そんな事普通の人間なら周知の事実だろ。 今更一人に教えたからって・・・。 するとキャラクターの被り物が外される。 そこには見知った人が二人。 古泉とその上司の森園生さんだ。 なにやってんだ。これもバイトの一つなのか? 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:07:54.50 ID:ICW71nkn0 古泉「いえいえ。違います。これは強いて言うなら見張り、ですかね。もちろんあなたではなく、橘と名乗っている方のですが。」 「僕達は常に見張っています。何かあれば助けに入ります。それを伝えたくてあなたを"拉致"しました。」 園生「何もないとは思いますが、万が一です。私達はバレないように周りから見ています。 最も私達の正体に気づいていた方もいたようですが。」 九曜か・・・、ていうかそんな事メールで伝えてくれればよかったんじゃないのか? 古泉「それも考えたのですが、丁度あなた達がこちらに気づいたので、こっちの方がてっとり早いと思いまして。 では、用も伝えたのでお戻りになってよいですよ。」 おいおい、無茶言うなよ。俺は二匹のキャラクターに誘拐されたんだぞ。それなのに普通に戻って行ける訳ないだろ。 古泉「そうですか、では次のパレードに人質役として出てみますか?」 そう言って古泉は笑う。こいつ昨日の事根に持ってんのか? わかったよ。戻るよ。 古泉「では、頑張ってくださいね。」 ・・・お前もな。 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/21(日) 03:08:24.78 ID:ICW71nkn0 俺は職員専用建物を出て、連れて行かれた俺を探していた三人組みに合流した。 佐々木は少し目を細めて笑い、 佐々木「キャラクターにも好かれるなんて流石だね。じゃ、行こうか。」 とだけ俺に言い、何があったとかは何も聞かなかった。 恐らくこいつらには俺に何があったかはだいたい察しがついているのだろう。 俺は「おう。」とだけ言って、ジェットコースター乗り場へと向かった。 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:10:33.45 ID:ICW71nkn0 「くっくっくっ、こんなにおもしろいなんて知らなかったよ。」 死にそうな顔をしている橘をよそに今日一番の笑顔で言う佐々木。 佐々木「ジェットコースターなんて物理の問題でしか見たこと無かったからね。実際に乗ってみると我を忘れちゃうくらいおもしろかったよ。」 それは良かったな。その前にそこで足をガクガクさせている橘をどうにかしてやれ。 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:11:04.05 ID:ICW71nkn0 空は青かった。 発射のベルが鳴りいっそうテンションの上がる佐々木。 ちょっとは怖がってくれた方がデートのムードってもんがでるんだがな。 コースターが線路とかみ合い、金属と金属がぶつかり合う音と共にゆっくりと天へと上っていく。 届きそうで届かない空。 届かないと分かっているから手を伸ばさない。 俺は昔から無理な事にははじめから挑戦しない。なんだかんだ理由をつけては避けてきた。 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:11:34.93 ID:ICW71nkn0 昔から相手の好意がどこに向いているのか察するのが苦手だ。 でも佐々木の好意が俺に向いていないのだけはなぜだかはっきりと分かった。 だから俺もあいつに好意を向けることはなかった。それは"無理"なことだから。 佐々木が俺に抱いている気持ちは好意というより興味。 科学の本を買ってもらってキラキラした目で見入っているような感じ。 俺は一人の男ではなく、一つの対象として見られていたんだ。 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:12:07.25 ID:ICW71nkn0 佐々木「どうしたんだい、実に愉快な乗り物だったじゃないか。」 志望校に受かった受験生の様なテンションの佐々木が、滑り止めにも落ちてしまったようなテンションの橘を立たせる。 橘「じゃっ、じゃあ次はお化け屋敷に行きましょう。」 すると佐々木の顔が一転する。 佐々木「いや、でも―――」 橘「決定ね。行きましょう。」 そういって橘は歩き始めた。佐々木は真っ青な顔で呆然と立ち尽くしていた。 橘はそんな佐々木の手を引く。 俺達はお化け屋敷の前へとやってくると、列に並んだ。 橘「それでは二人ペアで行きましょう。私は九曜さんとペアを組むからお二人さん、頑張ってね。」 お見合いの仲介人が若い二人を送り出すような顔で橘は言った。 なんでこのクソ寒い時期にお化けで寒くならなきゃいかんのだ。 だいたいそこら辺のお化けより不気味なやつがそこにいるじゃないか。 そういって俺は九曜を見る。 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:12:38.16 ID:ICW71nkn0 「キョン、君はお化けを信じるかい?」 声の先には九曜よりも白い顔、いや真っ青の顔をした佐々木がすこし苦笑いを浮かべて立っていた。 佐々木「実はキョン、―――」 橘「お二人さん。詰まってるわよ。さっ、入った入った。」 佐々木「橘さん、・・・。」 俺と佐々木は言われるがままにB級お化けが待つであろう屋敷へと入っていった。 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:13:08.83 ID:ICW71nkn0 思ったとおりのB級感。 真っ暗でそこらじゅうに血しぶきのようなものを飛ばして、恐怖を煽っている。 しかしこんなのに驚くのはカップルで来場し、男の気を引くためにわざと大げさに驚いてるやつか、 恐怖の沸点がよっぽど低いやつだけだろう。 佐々木「こんな事をして何が楽しいんだい。お金を取られてまで・・・。」 さっきからブツブツいっているこいつは後者に入るようだ。 少し先から聞こえる叫び声。 そろそろ幽霊が出てくるらしい。これで幽霊も文化祭の浮かれ学生がやっている幽霊並みだったら本当にいいとこなしだ。 歩いていくとそこは小さな教会作りの部屋になっていて、その部屋の真ん中には棺桶が置いてあった。 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:13:39.55 ID:ICW71nkn0 佐々木「キョン、ここはまずいよ。別の道を進むってのはどうだい?」 いやいや。幽霊を避けて歩いてたらお化け屋敷に入った意味がないだろ。 佐々木の指が俺の服を強く握った。ははっ、こいつ本当に怖いんだな。やっと遊園地らしくなったじゃねーか。 キョン「んじゃ、いくぞ。」 佐々木は小さく息を飲んだ 棺桶の前まで行く。すると棺桶の中から煙があふれ出し、勢いよく黒づくめの男が出てくる。 黒のマントに二本の長い牙。その口には血がしたたっている。 ・・・まさかドラキュラ? ここお化け屋敷だよな。ドラキュラってどうなんだ。 しかし佐々木はそんなドラキュラに驚き目を硬く閉じて俺の服をより一層強く握った。 こんだけ驚いて貰えればドラキュラさんも満足だろう。 俺は場違いのドラキュラに少し冷たい視線を送りながら、目を瞑って立ち止まっている佐々木を連れて部屋を出た。 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:14:11.27 ID:ICW71nkn0 佐々木「いや。決してあれ自体が怖いんじゃないよ。ただあの煙が絶対目に悪くないという確証はないだろ?」 要するにお化けが怖くて目を瞑ったのではなく、煙が原因で目を瞑ったと。 佐々木「まっ、まあそんなところかな。」 そういって少し照れながら俯く佐々木。なんなんだこのいらない強がりは。 その後も佐々木の怖がっては言い訳のパターンが続いた。 そのつど硬く握りしめられ、俺の服の一点だけはしわくちゃになっていた。 すると佐々木が急に口を開く。 「その、キョン・・・。」 「僕は、・・・僕は幽霊の存在自体はあまり信じていないんだ。 でも昔、父に話してもらった話がトラウマでね。この手のものは頭ではいないって分かっていても反応してしまうんだ。   要するに僕はこの手のものが苦手なんだ。」 ほお。今更だな。まあ、お前にも少しは女の子らしいところがあったってことだな。 「心外だな。これでも高校に入って少しは女の子らしくしているんだよ。昔は友達といえば男の子ばかりだったからね。 といっても人数は極わずかだったが。まぁなんにせよ、僕はお化けや幽霊といったものがとても嫌いだ。」 「だから―――。」 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:14:41.87 ID:ICW71nkn0 だから? 「人はどういう状態のときに一番安心するだろう。僕が思うに人は何かと繋がっているとき一番安心すると思うんだ。」 妙に早口になった佐々木が続ける。 「だから、キョン。手を繋がないかい?」 驚いた。 こいつの口からこんな言葉が出るなんて。 人は追い込まれるとこうも心変わりするものなのか。 俺は返事もなしに佐々木の手をとった。さっきまで俺の服を掴んでいた手は少し汗ばんでいて、 体温がストレートに伝わってくる気がした。 俺の心臓が高く、そして強く打っているのが分かる。 お化けが怖いとかじゃない。それは無茶はしない性格の俺が、少しだけ無茶をしようとしているからかもしれない。 人の心と言うものはすごく不安定なものだ。 場所、時、場合。ある一定の条件で人は人を求めるようになっているらしい。 そいつの顔が、体が、すべてが愛しく見えてくる。 空気に流されるってのは好きじゃないが、今は流されてもいいような気がする。 佐々木が少し頬を染める。この姿を知らない人が見たとき、俺達は恋人同士に見えてるのかな。 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:15:17.37 ID:ICW71nkn0 「・・・追いついた・・・・」 腰が抜けるかと思ったね。 俺はその場にへたりこんだ。 声の先には九曜だけが立っていた。 怖いくらい整った顔。その透き通った声。 暗闇で見たらそれこそ幽霊だって裸足で逃げ出す怖さだ。 佐々木「あれ?橘さんはどうしたんだい。」 驚いた事に佐々木は一つも驚いていなかった。 九曜「絶叫・・・逃走・・・消失・・・」 要するにあいつも駄目な口だったのか。 俺達は橘を探すため、さっさとA級のお化けを連れてB級幽霊屋敷を後にした。 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:22:22.15 ID:ICW71nkn0 橘「・・・全く・・・もう絶対こないわ。」 一番満喫したであろう橘が怒りと恥ずかしさに顔を赤らめながら言った。  「あれが遊園地の怖いところなのよ。」 お前は遊園地の何を知ってんだよ。 俺はそんな突っ込みを、もちろん心の中でいれて、車へと乗り込んだ。 車は行きに来た道をひたすらに戻っていく。 外はすでに真っ暗になっていて、窓に映るネオンがスライドしていくのを俺は静かに見つめていた。 車は駅に着くと、俺と佐々木を下ろし、早々に走っていってしまった。 橘はぐっすりと眠っていて、もちろん九曜は必要最低限しかしゃべらないので挨拶はなし。 俺は有料駐輪場に止めてあった自転車を取ってくると、俺達は家路へと歩を進めた。 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:22:54.17 ID:ICW71nkn0 中学生のときと同じような夜空のしたを歩く。 あの時も俺が自転車を押しながら、佐々木と二人歩いた。 将来の話をしながら歩いた事もあったっけ。あの時は受験疲れでナーバスになってたしな。 今じゃ恥ずかしくて語れないようなこともあの時は本気で語り合えたな。 今も星はあの時と同じように光っているのに、俺達はだいぶ変わってしまったな。 行ってる学校もつるんでいる仲間も。 佐々木は佐々木だって分かっていてもどこか他所他所しくなってしまう。 佐々木「今日一日楽しかったよ。ありがとう。」 佐々木はこちらを見ずに真っ直ぐと目の前を見つめながら行った。  「でもよかったよ。やはりキョンはキョンだった。」 その言葉に俺は正直驚いた。 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:23:24.79 ID:ICW71nkn0  「時が経てば人は変わっていく。必然の事だ。それは外面にせよ、内面にせよ。」 「でも本当に変わるのは内面なんじゃないかなって思ってた。でも君の内面はほとんど変わっていなかった。」 そんな一日過ごしただけで分かるのか。 「なんていうか・・・雰囲気っていうのかな。君といると自分の感情を上手く表に出せる気がするんだ。」 「遊園地で人が安心するときの話をしたよね。人が安心するのは人と人が繋がっているときだって。  それは物理的に、人と人とが繋がっている事だけじゃないと思うんだ。それは心と心が繋がっていると感じたとき、  たぶん物理的に繋がっている時よりずっと安心できるんだと思う。」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:23:55.19 ID:ICW71nkn0 「つかぬ事を聞くが、キョン。君は涼宮さんと付き合っているのかい?」 何を言ってる。あいつとは半ば強制的な腐れ縁だ。 「そっか。じゃあ・・・僕と涼宮さん、どっちが綺麗だい?」 唐突になんなんだ。お前は現代の口裂け女か。なんでそんな事を聞く。 「くっくっくっ、いや単なる興味さ。」 そして少しの間の後佐々木が口を開いた。 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:24:26.23 ID:ICW71nkn0 「僕はね、キョン。恋愛感情は一時の気の迷い、つまり一種の錯乱状態なんじゃないかと思っていたんだ。キョンはどう思う?」 どうって。そういえばお前と同じような事を言うやつが昔いたな。 「でもね、キョン。僕は最近その感情に似たような感情を抱いているんだよ。  一人で考えて一人で悩んで。こんなに辛いことだなんて知らなかったよ。」 ほお、お前が恋か。それはめでたいな。 「キョン、君に会ってからだよ。」 一瞬、時が止まった。俺の血の気がさっと引き、そしてすごい勢いで逆流したかのように俺の顔は赤くなった。  キョン「なっ、何言ってんだ、佐々木。」 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:25:05.95 ID:ICW71nkn0 「聞いてくれ、キョン。僕は高校に入ってからというもの、いつも回りに気を張っていた。   自分を守るように。自分の領域に入ってこないように。 ある種、心のバリアーみたいなものを張っていた。周りは勉強のライバルばかりで、学校にいても塾にいても気の休まるときが無い。 そんな時、僕はいつも思い出していたんだ。中学の頃の事をね。 あの頃は良かったなって。  僕は君に話をするとなぜか安心するんだ。君は僕の心のバリアーを透き通って、本当の僕と接してくれる。  いや、君と接する時だけ僕はバリアーを張っていなかった気がする。だからかな。   僕は君とこの星空を見ながら帰る帰り道が大好きだった。」 俺もこいつと帰る帰り道は好きだった。会話の内容にに対して思い入れがあったわけじゃない。 だけどそんな会話の中に、なぜか暖かさを感じてた。 受験勉強なんかで疲れた心が癒される気がしていた。 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:25:38.10 ID:ICW71nkn0 「でもね、最近気づいたんだ。君といるとなぜ安心できるのか。   いや君に対して抱いている気持ちは安心感だけじゃないってね。」 「ここで僕から提案があるんだ。 僕達付き合ってみないか。」 佐々木の表情はいつものニヤけ顔ではなく、何かを決意した顔、そして精悍な顔だった。 「ははっ。何言ってんだ。お前はどっちかっていうと男友達みたいなかんじで・・・。」 俺は弱弱しい声で笑った。たぶん今まで男友達のように接していたやつが急に"女"になるのが怖かったんだろう。 佐々木が葉っぱから滑り落ちた雫ほどの声で言った。 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:26:08.83 ID:ICW71nkn0 「それでも僕は―――それでも・・・私は・・・―――            私はきみが好きだ 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:26:40.17 ID:ICW71nkn0 頭を何かが通り抜ける音がした。大きな杭を頭に打ち付けられた感じ。 俺はその場に立ち竦み、ただただ佐々木を見つめていた。 思考機能は完全にストップし、何も考える事のできない脳が溶けていくような気がした。 静かに流れるとき。立ち尽くす二人。 どこかで鳴ったクラクションの音が聞こえる。 二人の間に流れる淀みない空気。 昔も今も変わらずに輝く星が俺達を照らしている。 「じゃっ、じゃあ返事まってるよ。今日は本当に楽しかった。」 そう言って佐々木は走り去っていった。 俺は佐々木が去ってからもしばらく動けずにいた。 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:29:20.46 ID:ICW71nkn0 家に帰り俺はベッドに寝そべった。 衝撃の告白、信頼できる仲間。 その間を俺は行ったり来たりしている。 俺にとって大事な事はなんなんだ。仲間、友情、旧友、愛・・・。 俺は決意を固め、携帯電話を手に取りボタンを押した。 数回の呼び出し音の後相手が電話に出る。 「もしもし―――」 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/21(日) 03:29:51.27 ID:ICW71nkn0            ∠´      `ヽ、             _             /           \     _...-‐::::::: ̄::::::::::`丶、         /   /⌒ヽ,ィ"⌒ヽ.   、   /:::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::\         ,'   {::○:::::::::::::::::::::::}   V/::::::::::::::::::::::::::::丶::小∧::::::::::/|         l    ヽ::::o::::::::::::::::: 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         \ おしまい。