キョン「おーい、腹が減ったんだが昼飯は…まだなのか? 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:32:40.30 ID:alSAnx+Z0 母「…もう少し待っていて」 キョン「ん?やけに今日は静かなんだな、母さん」 長期休暇中、珍しく不思議探索がなかった俺はぼんやりと過ごしていた。 昼になり腹の虫が暴れ出すと一階に降りて飯はまだかと母さんに尋ねた。 …はずだった。 いつもよりトーンの低い声、風邪でも引いたのかとキッチンを覗き込んだ。 そこには、長門っぽい母さんが居た。 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:33:42.38 ID:alSAnx+Z0 キョン「…あれ」 長門っぽい母さん「…もう少し待っていて」 キョン「あぁ、ところで今日のメニューはなんだ?」 長門っぽい母さん「カレー」 キョン「昼からカレーか…まぁいい、向こうで待ってるよ」 長門っぽい(ry「…」コクリ キッチンを出て、イスに座る。 テーブルに置かれた新聞をばさりと広げて目を通すと昨日今日のニュースが所狭しと乗せられていた。 10分ほど読みふけっていただろうか、 突然音も無く目の前に置かれた皿には湯気を立ち上らせるカレーがあった。 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:34:39.69 ID:alSAnx+Z0 長門(ry「父を呼んで来て」 そういわれて初めて飯の準備が出来たことを知り、長門の言うとおりに立ち上がり廊下に出る。 キョン「おーい、父さーん…昼飯できたってー」 二階の部屋に居るであろう父さんに聞こえるように声をかけると、ガチャ、とドアの空く音がして 父さんが降りてきた。 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:35:11.04 ID:alSAnx+Z0 最近毛が薄くなってきたはずの父さんはフッサフッサになっていた。 あと顔がどう見ても古泉だった。 古泉っぽい父さん「あぁ、どうも。今日のご飯はなんですか?…どうやらカレーのようですね。」 心なしか口調も古泉のようだ。 キョン「え、ああ…カレーだ。ところで父さん、毛が増えてないか?」 なんとなく聞いてみると、古泉っぽい父さんは頭に手をあて「いえ?」という。 そうか、そりゃすまんかったとだけ呟いて長門(ryの待つ部屋へと足を進める。 中には、いつから居たのかナイスバディな姉さんと怒っているような妹が居た。 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:35:46.38 ID:alSAnx+Z0 ハルヒっぽい妹「おっそーい、キョンったらなにやってんのよこの馬鹿!」 朝比奈さんっぽい姉さん「あわわ、ハルヒちゃんダメですよぅ、キョン君はお父さんを呼んで来てくれたんですから…」 黄色いカチューシャをつけて、まるでこいつハルヒの真似でもしてるのかおいところで成長しすぎてないか? ってな妹。 それとは対照的にあぁまるで部室の唯一の天使朝比奈さんのような見事な容姿の御姉様だ。 俺はもしかして頭がおかしくなっちまったのかもしれない。 なぜなら俺に姉さんが居るはずもなく、こんな偉そうな妹もフッサフッサニヤケスマイルの父も、 三点リーダ連発の母も居ないからだ。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:36:18.43 ID:alSAnx+Z0 おかしい。 取り敢えず、腹が減っている俺はその所為だろうということにして昼食をとることにした。 待たせたな。 一同「いただきます」 一斉にスプーンを皿から口へと上下させはじめる。 なんだこりゃ、ものすごくうまいじゃないか。 しかしなんだこの違和感は。 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:36:59.24 ID:alSAnx+Z0 なぁ、なんで俺の家族の顔がSOS団のメンバーなんだ? キョン「なぁ長t「長門ではない、私は今はあなたの母親」 キョン「じゃあ古z「いやですねぇ、なんで僕の旧姓知ってるんですか、キョン君。 んっふ、もしかしてそこからやりなおして僕と結ばれたいとか?一樹嬉しすぎて照れちゃう!」 違うに決まってるだろバカ野郎。 キョン「朝 「禁則事項です。うふふ、ごめんねキョン君?」 キョン「ハルヒ…なぁ、おまえって俺の妹だったか?」 ハルヒっぽ(ry「なによアンタ、暑さでイかれたの?私は生まれたときからあんたの妹だけど?」 …どうやら俺は夢を見ているらしい。 こいつら全員どう見たってSOS団の団員じゃねーか。 ぐい、と頬をつねってみても痛いだけだ、うっわ、夢じゃない。 つーことはもしかして、またハルヒがやらかしたのだろうか。 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:38:38.86 ID:alSAnx+Z0 キョン「なが…母さん、あとで俺の部屋に来てくれないか?」 長門(ry「…了解した」 古泉(ry「おや、お二人でなにを…いえ、ナニを…まさか愛の営みのつもりですか、許しませんよ。」 バカだろお前、なぁバカだろ。 あまりにも不自然な家族団らんの昼食を終えた俺はそそくさと二階の自室に入る。 ちなみに後ろからは長門(ryがちょこちょことついてきている。 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:39:23.36 ID:alSAnx+Z0 キョン「…で、今度は一体どういうことだ。後古泉がきもいのも」 長門(ry「涼宮ハルヒが私たちといつか別れることを恐れ家族という絆で結ばれ 決して離れることがなければと願った。そのために私たちが家族であるという情報を作り上げた」 長門(ry「古泉一樹に関しては、涼宮ハルヒが彼は息子を出来合いするのだろうと想像した結果歪んだ形で現れただけ」 そうか、やっぱりアイツか。 キョン「つまりおまえは俺の知っている長門なんだな?」 長門(ry「そう。」 じゃあ[(ry]なんてのはいらないな。 キョン「どうすればもとにもどる?」 長門「今は未だ分からない、調査中。…恐らくまだ少し時間が必要と見られる」 キョン「そうか…なら仕方ないな。スマン、話はそれだけなんだ」 長門「そう。」 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:40:01.62 ID:alSAnx+Z0 長門が部屋を出たのを確かめると、俺はベッドに寝転がりこれからどうしようかと考える。 まさか、このまま一生家族で暮らすわけにもいかないだろう、 第一俺は元の父さんと母さんがいいからな。 SOS団はSOS団であってこそなんだ、家族である必要はないじゃないか。 ところでさっきから部屋の扉がノックされてるんだがどうしたらいい? 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:42:19.59 ID:alSAnx+Z0 古泉「キョンくーん…開けてくれませんかねー…僕も御話があるんですよ…ぐふふっ…。」 古泉「なにも捕まえて掘ろう…げっふ、取って食おうってわけじゃないんですからぁー…。」 とうとう幻聴まで聞こえてきやがった、頭でも打ったかな。 古泉「お父さんが息子の部屋に入るというのはどの家庭でも自然な行為であって、 なにもやましいことなんてないんですよー…?」 じゃあ、ところどころから聞こえてくる掘るとかはなんなんだよ。 段々音が激しくなってきた気がする。 古泉「鍵なんか掛けないでくださいよー、まだ早すぎます!」 おまえみたいなのが居るからだろ、つーか同い年だろうが。 古泉「…今回は諦めますが、夜は期待していてくださいよ。明日はきっと歩けないでしょうね」 なんだその台詞、おまえまさか夜中に忍び込むつもりか…? キョン「やれやれ…」 久しぶりのお決まりの台詞。 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:43:12.52 ID:alSAnx+Z0 みくる「ほんとですねぇ…古泉君ったらどうしたんしょうか?」 あれれー、どこからか朝比奈さんの声がするよぉー? みくる「キョンくぅん、無視しないでくださぁい…」 鍵のかかったはずの部屋からする朝比奈さんの声。 どこだどこだと探しているとにゅるんとベッドの下から朝比奈さんが出てきた。 キョン「おぅわっふ!」 驚いて思わず変な声が出ちまったぜ。 キョン「ああああ、朝比奈しゃ…いてっ、舌噛んだ……朝比奈さん、一体いつからそこに…」 みくる「ふふ、禁則事項です」 舌噛んじまったよ。 ハートマークがつきそうな口調で口元に人差し指をくっつける朝比奈さんの可愛さは異常。 みくる「けど、涼宮さんったらそんなに私たちと一緒に居たかったんですねぇ…」 そうですね、俺もびっくりだ。 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:44:11.83 ID:alSAnx+Z0 キョン「あれ、そういえば朝比奈さんも気付いてたんですね?てっきりハルヒちゃんとか言ってたから…」 みくる「涼宮さんの前だけ、です。そうしないと涼宮さんも疑問持っちゃうでしょ?」 なるほど、ぼんやりしてそうでしっかりしているんですね。 みくる「でも新鮮ですね、家族だなんて…ふふふ」 なんだか嬉しそうだな、朝比奈さん。 キョン「そんなことよりどうです、一発」 古泉「大歓迎ですよ!」 みくる「え、え、ええ!?…キョキョ、キョン君…だめですよぅ、そんなこと…恥ずかしいです!」 真っ赤なあなたも素晴らしい。 キョン「冗談ですよ」 みくる「…チッ。ヘタレが」 キョン「なにかいいましたか?」 みくる「ふえ?なにも言ってないですよー?」 キョン「ですよねー」 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:45:07.46 ID:alSAnx+Z0 みくる「あ、じゃあそろそろ失礼しますね?涼宮さんと約束があるの」 分かりました、それじゃあまた夜にでも風呂場であいましょう。 みくる「風呂場って、え?」 キョン「冗談ですよ」 鍵を開けて部屋を出ていく朝比奈さんを見送って、俺は携帯を取り出した。 どうやら着信があったらしく小さなランプは光を灯している。 誰からだ? 開いてみると、古泉からのようだ。 うげぇ、と舌を出しながらも内容を読む。 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:46:39.93 ID:alSAnx+Z0 「from:バカ タイトル:キョン君 本文 先ほどはふざけすぎましたね すみません。 ほんとうはあんなこと…。 りょうしょうもなしにするはずないですよ。 ただ、何故か口が勝手に動いてしまうんですよ。 いいですか、今日の夜…僕の部屋で待っています。 大事な御話があるんです。」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:47:42.70 ID:alSAnx+Z0 大事な話しか…しかしところどころ文体おかしくないか? まぁいい、仕方ないから放置しておくか。 どうせあいつのことだ、「貴方から視線がはずせない、どうしましょうか」とかだろう。 もう慣れた。 そういえば、朝比奈さんはハルヒと約束があるっていってたな…。 どっか行くんだったら是非お供させてほしいもんだぜ。 もちろんハルヒは置いといて、だ。 ハルヒ「キョーンッ、いるんでしょ?あんたに友達よー!」 噂をすればなんとやら、ハルヒが階下から叫んでいる。 友達か…誰だ、珍しいな。 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:48:18.27 ID:alSAnx+Z0 窓から覗くと長い髪がちらりと見えた。 俺の記憶が正しければあれは朝倉じゃないか? いや、あいつは消されたはずだ。 でもあいつしか覚えが無い。 ハルヒ「キョンー!? 早く降りて来なさいよ」 ハルヒの怒声が飛んでくる。 仕方なく部屋を出て思い足引き摺り玄関に向かうと、やはりそこにいたのは朝倉だった。 朝倉「おひさしぶり、おどろいたでしょ?」 最後に見たときとなんら変わらぬその眉毛。 キョン「…おまえ、なんで…」 朝倉「ふふふ…知りたい?情報連結を解除されたはずの私が此処に居る理由」 キョン「あぁ。…目的はまた俺の抹殺か?」 朝倉「やぁね、違うわ。今度の目的はあなたじゃなくて長門さん」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:51:21.58 ID:alSAnx+Z0 長門だって? まさかこいつ長門を… 朝倉「ちょっとやめてよ、私はそんなつもりじゃないわ」 キョン「心を読むな」 朝倉「とりあえず長門さんを呼んで?」 キョン「誰が呼ぶか…!なにするかわかんねーんだからな」 そうだ、意地でも呼んでやるもんか。 朝倉「そう…じゃあ仕方ないけど叫ばせてね」 叫ぶ?なにを。 朝倉「キョン君のオカズ」 キョン「んなぁああ!?どどどど、どうして知ってる!?」 いつばれた、いつ俺のオカズ…いや主食があれだと知った!? 朝倉「内緒よ。言われたくなかったら呼んでね」 キョン「ちっ…仕方ない。なが…母さーん!お客さん来てるぜー」 呼ぶとすぐに長門はやってきた。 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:52:09.54 ID:alSAnx+Z0 長門「…あなたは、朝倉涼子…どうしてここにいる」 朝倉「あぁん長門さぁぁぁん!会いたかった!」 長門「……」ビク 朝倉「私長門さんに会いたくて合いたくて仕方ないから情報統合思念体に再構築してもらったの。」 なんだこいつ、前とは人が変わったみてーに…あ、人じゃなかったな。 長門「どういう意味、私は別に会いたくは無かった」 朝倉「ひどい、私はこんなにも長門さんが好きなのにぃ…」 朝倉「ねぇキョン君、あのことばらされたくなかったら私も同居させてよ」 なんだって!? 眉毛が傍に居るなんて俺の眉毛が大変なことに… ただでさえ朝比奈さんと一つ屋根の下に居ることでマイサンが忙しいってのに。 しかし拒否すれば俺の秘密がばらされてしまう。 どうする、俺!? 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:54:24.52 ID:alSAnx+Z0 もちろん迷わず「もちろんだ朝倉、歓迎するさ」と答える。 どうせ元から騒がしいんだ、一人増えたぐらいでなんもかわんねーよな。 朝倉「ありがとう、心が広いキョン君ならきっと快く承諾してくれると信じてた!」 はいはい御世辞はいいから中に入れ。 …おまえ住む気満々だな、なにその荷物。 長門を脇に抱えてずかずかと家に入り込んだ朝倉は、長門に無理矢理部屋を聞いた。 そして「私は長門さんと一緒の部屋ね!」と言い二階へと消えた。 古泉「じゃあ僕はキョン君と一緒の部屋にしましょうか」 キョン「断る」 突然玄関先に現れた古泉を無視して中に入り、居間に行くと猫が居た。 キョン「ん?…シャミセンか」 「にゃぁ」と一鳴きしたあとにシャミセンはどこかへ行った。 別にそこまで興味ないがな。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:55:17.58 ID:alSAnx+Z0 冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注いで一気に飲み干す。 喉を通るひんやりとしたお茶に思わず「あ゛ー」と唸る俺。 まるでおっさんのようだ。 コップを流しに置いて、早速とばかりに二階にあがる。 もちろん長門の部屋を覗くためだ。 しかし、神は俺にのんびりと長門の部屋を見せてくれないらしい。 長門「来るな!」 階段を上がっていると、突然聞こえた声。 長門のものだ。 どうして俺が来ていると分かった…。 長門「朝倉涼子、あなたはおかしい」 おっと、どうやら朝倉に言っていたようだ。安心。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 19:57:36.59 ID:alSAnx+Z0 そっとドアの前まで来たのはいいものの、中から聞こえるハァハァという息遣いに俺は入ることを躊躇する。 と、後ろから階段を駆け上がってハルヒが来た。 ハルヒ「キョン?誰か来てるの?…さっきのやつ?」 ナイスタイミングハルヒ。 しぃ、と指を口に当てて小さな声で「朝倉が居る。な…母さんの部屋でなんかしてるみたいなんだ」 と教えてやる。 するとハルヒは「ふうん…気になるわね」と言い中に入っていった。 バァン、と音を立てて盛大に開く扉。 中には、ベッドに倒され足で朝倉の押しのけようとしている長門が居た。 朝倉は長門に覆いかぶさる形で「長門さん」と連呼している。 キョン「キモッ」 思わず口をついて出てしまった言葉だが、本当にそうとしかいえないんだ。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:00:38.77 ID:alSAnx+Z0 長門はこちらに気付いて「助けて」と言った。 ハルヒ「なにやってんの!?母さんちょっとまってて、今助けるわ!」 長門の助けを聞いたハルヒが朝倉に突進していく。 朝倉はそれを華麗に避けて見せると、ハルヒに笑いながら言った。 朝倉「私、家が火事になっちゃって…だから長門さんのところで今日から御世話になるの」 よくもまぁそんな嘘がぺらぺら出るもんだ。 ハルヒ「そうだったの…じゃあウチに居ていいわ。ただし今みたいに母さんに嫌がらせしたら許さないけどね」 朝倉「ありがとう、約束するわ」 二人は無言の長門をスルーして一階へと行った。 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:01:10.32 ID:alSAnx+Z0 長門「…どうして彼女の移住を許可したのか問いたい」 長門の視線が痛い。 キョン「…すまん」 長門「理由を聞いている、謝罪はいらない」 キョン「……き、禁則事項です」 長門「理 由 を 聞 い て い る 。明確にかつ簡潔に」 長門さんひどいです、朝比奈さん攻撃がきかんとはたいしたやつだな。 俺ならイチコロだ。 キョン「…かわいそうだと思ったんだよ」 これでどうだ。 長門「彼女のあの理由は嘘。あなたも気付いているはず」 うっ…やっぱりだめか。 なら俺はどうすりゃいい。 キョン「もういいだろ別に、元々は俺の家なんだ」 仕方なく俺は最後までとっておいたこの手を使った。 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:01:56.38 ID:alSAnx+Z0 長門「…そう」 心なしか長門は怒っているようにも見えた。 しかし実際には無表情のまま、部屋を出て行った。 キョン「まずかったか…」 そう呟いて俺も部屋を出て、自分の部屋に戻る。 すると、何故か当然のように古泉がベッドに座っていた。 古泉「お邪魔しています。ひどいですね、メールに返信をくれないなんて。つれない人だ」 キョン「なんかきもかったんだ。あと出て行け」 古泉「おやおや、僕がお嫌いですか?」 キョン「嫌いだ」 言った途端に、泣き真似を始める古泉。 正直気色悪い。 古泉「これも通じませんか…」 キョン「朝比奈さんがしてたら今頃飛びついてたさ」 まじでな。 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:04:46.57 ID:alSAnx+Z0 古泉「……キョンくうん、ひどいですよーう」 ぼそりと呟いたらしい言葉、俺にはよく聞こえなかった。 だって聞きたくなかったんだもの。 古泉「スルーですかそうですか、それなら僕も奥の手を出して見せましょう」 もちろんこれも無視するぜ、悪いが。 古泉「くっ…やはり貴方は手強い。はったりは通用しないということですか…」 嘘だったのかよ。 そして、そのまま古泉は俺のベッドの下に潜り込んで行った。 キョン「いや、潜り込んで行った、じゃねえよ!いつまでそこにいるつも―…あれ、いない?」 確かにベッドの下に潜った古泉の姿は、なかった。 どこかに通じる穴でも掘ってあるのだろうか、古泉だけに。 そう思って同じ様にもぐりこんで見てもなにも異常はない。 後、尻だけ出して潜ってるのを朝比奈さんに見られた。なんでここに居るんですか。 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:05:48.50 ID:alSAnx+Z0 〜次の日〜 キョン「ふわー…おはようさん」 居間に行くと、いつもの集合のときのように皆揃っていた。 時刻は午前8時。 ちくしょう、家族になってもこれだけはかわんねぇのかよ。 各々俺に軽く挨拶をして飲み物を飲んだり食事をとっている。 俺も席について長門の料理を堪能する。 なんというか、情報統合思念体とやらはおかかえのシェフロボットを作りたかったのだろうか。 とてもウマイ。 今更だけど皆支援とかありがとう。 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:09:50.51 ID:alSAnx+Z0 一心に食べていると視線を感じた。 視線の主を探ると、どうやら長門だったらしく俺をじっと見ている。 その口が、「食後、私の部屋に」と動いた。 何故わかるんだろうな、俺に。 そういえばちゃっかり朝倉も食ってるよ。 こくりと頷いてまたもくもくと食事を始める。 朝は元々そこまで食べないほうな俺はすぐに食べ終わり、 俺より早く食っていたにも関わらずまだ口を動かす家族を眺めていた。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:11:38.26 ID:alSAnx+Z0 長門が食べ終えたのを見計らい「んじゃ、もう一眠りするよ」と次げて二階にあがる。 長門の部屋に失礼して、ベッドに座るのもどうかと思い立ったまま待つ事数分。 静かに扉を開いて長門が入ってきた。 キョン「よぉ」 長門「…改変の突破口を発見した。あなたにしか出来ないこと」 口を開くなり長門はそういった。 キョン「そりゃよかったな。…俺にしかできないってどういうことだ?」 長門「涼宮ハルヒは貴方といつか別れることを恐れている。貴方が別れることはないと告げればいいだけ」 なんだって?ハルヒが? まさか。 あいつは俺のことを雑用程度としか思ってないんだろうよ。 …確かに雑用が居ないのは不便だがな。 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:17:19.12 ID:alSAnx+Z0 長門「涼宮ハルヒは貴方に対して特別な感情を抱いている。よって貴方が言うのが一番効果的だと考えられる」 キョン「そうなのか…。まぁ分かった、なんとか言ってみるよ」 俺が部屋を出ようとすると、長門に引き止められる。 長門「待って、今の涼宮ハルヒには私たちの知っている涼宮ハルヒの記憶はない。よって彼女に言っても無駄」 キョン「じゃあどうするんだ?」 長門「涼宮ハルヒの意識の最奥に眠る私たちとの記憶に呼びかける」 そんなことが可能なのか、情報統合思念体は。 長門「貴方にのみ可能。今から意識に潜る。目を閉じて」 突然だな、仕方ない、言うとおりにしとかないと世界崩壊なんてごめんだしな。 すっと目を閉じると、長門がぶつぶつと呟いているのだけが聞こえた。 そして、徐々に落ちていくような感覚に囚われて意識あるまま俺はどこかに飛ばされた。 頭の中に長門の声が響いている。 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:19:29.59 ID:alSAnx+Z0 長門「起きて、其処に留まるのは危険」 どうして、なんか聞くはずも無い。 長門がそういうのだから危険なんだろう。 ゆっくりと目を開けると、そこは何もない灰色の世界だった。 たとえるのなら、まるで閉鎖空間のように。 キョン「ここは…」 長門『そこは涼宮ハルヒの脳内にある閉鎖空間に酷似したもの』 厳密には閉鎖空間ではないってことか。 長門『そう。そこにあなたの意識だけを飛ばした』 情報統合思念体はそんなことも出来るんだな。 長門『銀河を統括する存在は神よりも低い位置とはいえ全ての存在に置いての上位にある。 技術の発達は当然のこと』 そうか。 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:21:19.66 ID:alSAnx+Z0 辺りを見回すと、灰色の中に一点だけ黒がある。 まるでなにかを囲むように彩られた黒の中には、ハルヒが居た。 キョン「ハルヒ!」 駆け寄ってみると、ハルヒは眠っているかのように目を閉じている。 何度名前を呼んでも目を覚まさない。 キョン「長門…聞こえてるか?ハルヒが目を覚まさない、どうすりゃいい?」 長門『眠っているのではなく、眠らされている。』 …そりゃ一体誰にだ。まさか新しい敵とか言うんじゃないよな? 長門『違う、彼女自身。離れたくないと願った故に大きくなった意思を持つあちら側の涼宮ハルヒの影響。』 どの世界でも厄介な奴だな、本当に。 しかしどうすりゃいい、どうすりゃコイツは目覚めてくれる? 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:23:48.06 ID:alSAnx+Z0 長門『目を覚まさせる方法は一つしかない、涼宮ハ…ヒ…≪ザザッ≫…こ…は…ぼ…がいされ…いる…!」 なんだなんだ、突然長門の声が聞き取りづらくなった…それにノイズも混じってる。 キョン「どうした!?」 長門『あち…のすず…や…ルヒ≪ザッ≫…が…干渉を妨が≪ビィィィ≫…てい…連絡がとれ≪ザァァァ≫……≪ブツンッ≫』 所々切れ切れになって聞こえてくる声は、やがてブツンという千切れるような音と共に聞こえなくなった。 …これはつまり、長門に助けを求められないということだな。 なんてこった。 下手したら俺は此処から出られないんじゃないか…? 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:28:11.97 ID:alSAnx+Z0 キョン「っ…!そんなのはゴメンだな。 ハルヒ、おいハルヒ、起きろ!いい加減目を覚ませ!」 がくがくと眠るハルヒの体を揺らす。 もちろん反応はない。 くそッ…! どうすればいい、頼りにしていた長門とは連絡が取れない。 下手したら、俺はここに一生…なんてことにもなりかねない。 そんなのは真っ平ごめんだよ。 とにかく、ハルヒを起こすしか手はないんだ。 キョン「ハルヒ、頼むよハルヒ…目を開けてくれ」 パシン、パシンと頬を叩いてみる。 それでもぴくりとかも動かないこいつに、俺はなにが出来る? 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:31:46.28 ID:alSAnx+Z0 死んでいるのかと錯覚してしまう程に動かないハルヒに対して、冷や汗が流れる。 以前の閉鎖空間の時のように、その…キ、キスをするか? いやしかしそれで目覚めるとも限らない。 ―…やらなくて後悔するより、やって後悔したほうがいいよね? 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:33:48.88 ID:alSAnx+Z0 うん?聞き覚えのある台詞だな。 ああそうか、朝倉か…。 やって後悔……な。 うーん…いっちょ、試すか。 なんとも簡単に決意するんだな、俺と言う奴は。 正直ハルヒに二度目のキスをするのには抵抗がある。 が、それが元の生活に戻るための鍵なのだとしたらするしかないんだよな。 覚悟を決めるぞ、いいな俺? 勿論だとも俺。 一人虚しい遣り取りを終えて、そしてゆっくりと顔をハルヒに近づける。 書き溜めなくなってきたな。 遅くなるかもしれない。 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:36:31.04 ID:alSAnx+Z0 キョン「すまんハルヒ」 唇に、触れた。 数秒そのままを維持して、そっと離れる。 恐らく、今、俺の顔は赤いのだろう。 肝心のハルヒは…? 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:40:25.86 ID:alSAnx+Z0 目覚めて、居ない。 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:42:39.38 ID:alSAnx+Z0 なんでだよ! 眠り姫は王子のキスで目覚めるもんだろう。 それともなにか、もう俺はハルヒの王子ではなくなったということか? それならそれで、いい。 寂しくはあるが…ってなんで寂しいんだ俺! とにかく、これで俺はカードを無くしてしまった訳で、同時に元の世界に帰る鍵も消えたということだ。 ん…?どこかおかしくは、ないか? 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:46:54.17 ID:alSAnx+Z0 いや、なにとは分からんのだがなにか違和感があるんだ。 なにが、なにがおかしい…? どこで俺は違和感を感じたのか、思い出せ。 そのとき、なにを考えていたんだっけな。 確か、そうだ…ハルヒが目覚めないことを知って…俺が王子じゃなくなって…? 王子じゃ、なくなった? 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:49:31.47 ID:alSAnx+Z0 そこだ、そこがおかしいのか。 俺があいつにとってのかぎでなくなったとすれば、今ここに俺が居ることも無く世界は元に戻っているはずだ。 そう、SOS団として活動している生活に。 それが戻らないということは、まだハルヒが俺と、俺たちと時をともにすることを望んでいる証拠だ。 つまり、まだ俺はあいつにとっての鍵ということなんだろう。 ただ、キスが解決策ではなくなっただけということだ。 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:51:23.17 ID:alSAnx+Z0 二度目は通用しないってことか…。 俺にはもう術がないのだろうか。 長門はどうなったのだろう、妨害というのはどういうことなのだろう。 尽きることの無い疑問。 もしや、朝倉の所属する急進派とやらか? 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:53:59.58 ID:alSAnx+Z0 『それは違う』 突然灰色の空間に響いた声。 聞き間違える事のない、長門の声。 キョン「っ…な、長門!! 一体なんだったんだ、さっきのは!それに…ハルヒが…」 長門『状況は理解している。今は説明している時間はない。…よく、聞いて』 冷静な声に、幾らか安心する。 キョン「あ、ああ…」 長門『涼宮ハルヒの意識が戻らない今、接吻をしたとしても効果は得ることが出来ない』 長門『解決策をあの妨害工作の後、情報統合思念体が調査した。』 長門『その結果、あちらの…つまり本来の涼宮ハルヒを閉じ込めている涼宮ハルヒを消滅させる事が本来の涼宮ハルヒを取り戻すきっかけとなることが分かった』 キョン「それはつまり…妹として存在してるハルヒを殺すということなのか?」 酷すぎる。 確かに本来のハルヒをこうしたのも世界を変えたのもあいつだが…。 それにしても、ハルヒを消滅させるなんて、出来るわけが無い。 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 20:57:32.73 ID:alSAnx+Z0 長門『有機生命体の言葉を借りると、そうなる。存在を消滅させる事により一時的にこの空間で本来の涼宮ハルヒが覚醒する』 長門『あなたは、その時に涼宮ハルヒに接吻をしなければいけない』 長門『しかし、それには問題がある』 キョン「問題?」 長門『この空間内で涼宮ハルヒが覚醒するのは、時間にして約十秒しかない』 キョン「その一瞬をついてすればいいだけだろう?」 長門『それは不可能。あなたは、あちらの涼宮ハルヒを消滅させなければいけない』 キョン「俺がするのか、それ…大体、それ以外に方法はないかのよ?いくらなんでも…」 そんなこと俺に出来ると思うか? …有無を言わさずさせられそうだな。 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:01:40.24 ID:alSAnx+Z0 長門『方法はその一つだけ』 キョン「っ…じゃあ、俺が、…あっちのハルヒを殺し、た…としてすぐに戻ればいいんだろう?」 長門『それも不可能。少なくともこちらに戻るまでには1分を要する』 キョン「つまり、その間にまた眠っちまうってことかよ…!?」 長門『そう』 んな、無茶な…。 ハルヒを殺さないといけないだのむちゃくちゃすぎる。 せめて俺が二人居ればいいのにな。 そうすれば片方をこっちに残して片方は…くそ、そんなこと出来るわけないじゃないか。 いや、出来る。 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:07:07.67 ID:alSAnx+Z0 キョン「長門よ、一度この空間から出ることは出来るのか?」 長門『可能』 キョン「なら…朝比奈さんとあわせて欲しい」 長門『…分かった。あなたの意図する事も理解した。今からあなたを朝比奈みくるのところへと送る』 ゆっくりと目を閉じると、時空移動のときとは違う空気を感じる。 次の瞬間、瞼を上げた先には朝比奈さんが居た。 みくる「ひっ…ひえええぇ…キョ、キョンくうん…とと、突然どこから…?」 相変わらず可愛いですね。 と、そんなこと言ってる場合じゃないな。 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:10:38.73 ID:alSAnx+Z0 キョン「すみません、説明は後にして、今から過去に戻りたいんです」 みくる「えええ…そそ、そんなこと駄目ですよう…許可がないと…」 キョン「申請できませんか?」 みくる「うう…試してみますね?…え、嘘。また通っちゃった…指定があるけど」 キョン「じゃあそこへ」 みくる「じゃあ行きますから、目を閉じてくださいね」 言葉に従って、目を閉じる。 何度も経験したあの揺れ。 眩暈を堪えて暫くすると揺れは治まり、まだ少しふらつく体に力を入れた。 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:19:33.30 ID:alSAnx+Z0 キョン「此処は…」 俺の部屋の前だ。 時間が分からない。 みくる「ここは、昨日の午前7時25分17秒です」 ということは、そろそろ俺が起きるな。 みくる「でも、ここから一体どうするんですかぁ?」 キョン「…この時間の俺を、俺が居た時間に連れて行きます」 みくる「ふえ?それって、同じ時間に二人のキョン君をってことですかぁ?」 キョン「その通りですよ、流石ですね」 みくる「駄目です!そ、そんなのは絶対に駄目なの…」 ふるふると頭を振る朝比奈さん。 その表情には、絶対に駄目だと浮かび上がっている。 すいません、これしか世界を救う方法がないんです。 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:22:57.72 ID:alSAnx+Z0 キョン「こうしないと、俺たちは元の世界には…、帰れません」 みくる「ひえっ!ででで、でもぉ…」 なんとかして説得を続けようと、口を開いたそのときだった。 朝比奈さんがきゅうと言って倒れてしまったのだ。 キョン「朝比奈さん!?」 後ろを見ると、そこには更にナーイスバディーな朝比奈さん(大)が居た。 みくる(大)「うふふ、ごめんね?でもこれが規定事項だから…」 キョン「ええーと…どうしてここに?」 みくる(大)「禁則事項です。…なんてね、キョン君の言うとおりに、この時間軸に居るキョン君を連れて行かないといけないの」 一度、唇に人差し指を当てて御決まりの台詞を呟いた後ににっこりと微笑んで言う朝比奈さん(大) 可愛いです。 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:29:24.24 ID:alSAnx+Z0 キョン「はあ…じゃあ行きますか」 みくる(大)「あ、駄目なの。あのときのキョン君は、私達の姿を見てないでしょう?」 確かにそういえば…というかよくよく考えればこの時間に起きてなかった。 みくる(大)「だから、そっと入ってそのー…ら、拉致するの」 まさか朝比奈さんからそんな単語が聞けるとは想いませんでした、ええ。 しかしそれでも…それでも俺にはこの時の記憶が残ってるはずですよね? 誰かに連れて行かれて、その先で会った出来事の記憶が。 まるで俺の心を呼んだかのように朝比奈さん(大)は苦笑する。 みくる(大)「ごめんね、そのあたりはほら…今だからいえるんだけど、長門さんにちょっと、ね」 キョン「ああ、そうでしたか」 成る程…。 納得したぜ。 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:38:00.66 ID:alSAnx+Z0 キョン「あれ、でもじゃあ別に拉致とかじゃなくても…」 みくる(大)「あれ、そういえばなんでなんだろう…まあいいじゃないですか」 そうですね、あなたの笑顔を見てたらどうでもよくなりました。 とにかく、と促されて静かに部屋のドアを開ける。 バカ丸出しで、Tシャツとトランクス姿の俺。 おまえ…そりゃあないだろ。 しかし気にもしていられない。 起こさないように、朝比奈さん(大)から渡された目隠しをつけて、合図する。 すると、朝比奈さん(大)が「じゃあ行きますよ」と言って、言葉と同時にまた揺れる。 目をぎゅっと閉じて、俺を起こさないように気をつけてやる。 鈍感なのだろうか、それとも睡眠に貪欲なのだろうか、俺は唸り声を上げるだけで目を覚ましていないらしい。 激しい揺れに耐えて、いいですよという声に瞼を開けた俺。 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:45:11.23 ID:alSAnx+Z0 目の前には長門が立っていた。 長門「…おかえりなさい」 キョン「ああ、ただいま」 こいつが…俺が起きてしまう前にしてしまはないとな? こくりと頷く長門に、頼むと寝ている俺を渡す。 小柄な身体で大丈夫かと思ったが、むしろ軽々と俺を抱き上げている。 なんか悲しいな。 キョン「それじゃあ、こっちの奴に事情を説明してやってくれよ?俺が空間の中に、入る」 長門「了解した」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:53:25.25 ID:alSAnx+Z0 すぐに長門はぶつぶつと呪文らしき単語を並べ始める。 1分弱続いたそれが終わると、俺の意識はまたあの灰色空間に戻っていた。 先程と同じ様に、ハルヒが横たわっている。 そこまで駆け寄り、長門に問い掛けた。 キョン「長門、聞こえるか?」 長門『…なんとか。けれど長くは持たない。じきに私はあなたと連絡が取れなくなる」 キョン「そうか…俺はどうだ?」 長門『こちらの貴方なら、今事情を説明したところ。嫌だと首を振っている』 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 21:55:48.35 ID:alSAnx+Z0 なんて情けない奴だ…しかし俺にも気持ちは分かるぜ、俺だってハルヒを殺すなんて嫌なんだ。 だからといってお前に押し付けたわけじゃない。 俺達は同じなんだからな。 ただ、状況をより把握している俺のほうがこっちは適任なんだ。 キョン「…そうだな、長門よ。≪そこに存在するハルヒがお前にとっての本物のハルヒなのか≫と伝えておいてくれないか?」 長門『分かった。それでは…頑張って』 それ以降、長門からはなんの反応もない。 じっとして待機する俺。 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:00:59.48 ID:alSAnx+Z0 目の前のハルヒは、穏やかな表情だ。 少なからず、この状況…つまり、俺たちが家族であるという世界に満足しているのかもしれない。 それとも、幸せな夢でも見ているのだろうか。 そこに、俺は出ているだろうか。 …なにを考えているんだ、俺は。 そんなのまるで俺がハルヒの夢に出たいみたいじゃないか。 気のせいだ、気のせい。 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:06:24.42 ID:alSAnx+Z0 そうやって、待機すること数十分。 何故だろう、少し息がし辛い。 キョン「長、門…なんか…呼吸しにくいんだ、が」 まだ応えてくれるだろうか。 長門『≪ビー…ッ≫そろそ…とど…れる…じか…がすくな…ってき…』 途切れ途切れの声だ。 ノイズもある。 なんてこった、つまり…あまり時間がかかると俺はここから出られずに死ぬかもしれないってことだろ? キョン「そっちはど、うだ?」 長門『貴方、は決≪ザアア≫した…らし…や、20びょ…ご…消滅す…』 20秒ぐらいなら持つだろう。 キョン「わか…っ、た」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:08:15.48 ID:alSAnx+Z0 大きく息を吸い込んでも、そうは感じない。 そっとハルヒの額に手を当てて目を細める。 そうこうしている間に、あっちの俺が成功したようだ。 ハルヒが小さく呻いた。 ハルヒ「んん…?ここ…キョン?」 キョン「っ…!ハルヒ、すまん…我慢してくれ」 目覚めたハルヒが身体を起こす前に、時間がないことを知る俺は、一言謝罪を述べて、そして。 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:09:40.31 ID:alSAnx+Z0 訝しげに眉間に皺を寄せるハルヒの後頭部に手を当てて唇を押し付けた。 驚いたハルヒの唇の隙間から漏れる吐息。 朦朧としはじめる意識。 突然、灰色の空間にひびが入った。 閉鎖空間の崩壊のように。 轟音を立てて崩れる灰色のガラスのような空間は、割れて落ちる。 欠片は消えて、崩れたところからは色彩に満ち溢れた光が姿を見せた。 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:15:22.65 ID:alSAnx+Z0 同時にハルヒが口を開く。 ハルヒ「すごい…なに、ここ…。キョン?…!あ、あんた…その、まっまた!ゆ、夢だからってなんでもしていいと思わないでよねっ」 ぽかんと開けた口をきっと結んだ後に、かああと顔を赤く染めるハルヒ。 どうやら今回も夢だと思ってくれているらしい。 キョン「悪かったな。でもな…お前の寝顔見てつい」 本当はそうでもないんだが、少しぐらいはそれも混じっていたかもしれない。 そういえば、10秒しか持たないんじゃ…そうか、成功したからか。 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:26:17.37 ID:alSAnx+Z0 …いや、そうでもないらしい。 目の前のハルヒもそうだが、俺の身体も光って、少しずつ消えている。 ハルヒ「…ねえキョン、私達消えてるわ。どうなっちゃうの?」 眉を潜めるハルヒ。 キョン「これは夢なんだからなんでもありなのさ、心配するな」 ぎゅっと抱きしめてやる。 ハルヒ「っ…バカ、調子乗るんじゃないわよっ」 そう言っているものの俺の服の裾を掴むハルヒの手には力が篭った。 そうして、俺とハルヒは抱き合ったまま意識を手放したわけだ。 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:33:17.25 ID:alSAnx+Z0 長門「起きて」 上から降りかかる、静かで心地よい声。 長門が居た。 正座して俺を覗き込んでいる。 どうやら眠っていたらしい。 あれは、夢…ではないか。 見回すとどうやらここは長門のマンションの部屋のようだった。 キョン「戻ったのか…?世界も、俺も、ハルヒも」 長門「そう」 一つ頷いた。 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:37:25.15 ID:alSAnx+Z0 良かった。 立ち上がろうと思ったのに、力が入らない。 長門「まだ眠っていて。あなたはあそこで体力を消耗しすぎた、今はまだ眠っているべき」 キョン「分かったよ」 大人しく従って目を閉じる。 そういえば、あっちの俺はどうなったのだろう。 長門「問題ない。彼は元の時間軸に帰した。記憶は抹消してある、時間もつれてきたときと0.01秒違うだけ。問題は無い」 心を読むなって。 まあそれならいいか、もう少し眠らせてもらうことにするか。 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:42:51.46 ID:alSAnx+Z0 こうして、俺のたった二日間ではあったものの家族生活は幕を閉じた。 その後、ハルヒと俺の距離が縮まったのは言うまでもないだろう? END 見てくれた人ありがとう。 支援してくれた人もすごい感謝してます。 ぶっちゃけ前の途中で落としたから書き終えたかった。 ぐだぐだな感じだけどよかったよ。 変なところ多いけど見逃してやってください。 なんか質問とかあればどぞー 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:49:05.20 ID:alSAnx+Z0 とりあえず飽きるまで適当に書き散らかしてます。 キョン「なぁ長門よ」 長門「…なに」 キョン「あれはなんだ?」 長門「…さあ」 キョン「じゃあお前の口からはみ出てるうようよしたそれは?」 長門「…ポクテ」 キョン「…そうか」 長門「そう」ゴックン 久々にはれグゥ見たよ。 グゥ可愛いよグゥ。 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:52:53.32 ID:alSAnx+Z0 長門「おなかが空いた」 キョン「俺に言われても…なんも持ってないんだが」 長門「貴方に期待など元からしていない」 キョン「…そうか」 長門「そう」 ハルヒ「キョーン、好きよーっ!」 キョン「ああ」 ハルヒ「ちょっと聞いてるの?」 キョン「ああ」 ハルヒ「私のこと好き?」 キョン「いいえ」 ハルヒ「…私のこと嫌い?」 キョン「ああ」 世界は崩壊した。 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 22:59:47.83 ID:alSAnx+Z0 ついでに。BADENDの場合ね。 ちなみに場所は最後のキスのところ。 * キスをした。 ハルヒの唇と重なり、恐らく赤くなっているであろう俺の顔。 ハルヒの反応を見ようと瞼を開けると、ハルヒはいなかった。 目の前にあるのは灰色の壁だけだ。 どういうこと、だ? 灰色の空間にまた響く声は長門。 長門『…あちらの貴方は、涼宮ハルヒを消滅させることを無意識下でかたくなに拒んだ』 長門『そのために、あちらの涼宮ハルヒは消滅する事無く意識のみの存在として残留している』 そんな、…どうして。 長門『私も、朝比奈みくるも、古泉一樹も、じきに消滅する。世界改変が行われると予測している』 長門『楽しかった、それじゃあ』 飛び起きる。 汗が、酷い。 夢だったのだろうか? 外は、静かだ。 いや、色が無い。 灰色だ。 END