朝倉「長門…さん?」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 11:14:08.03 ID:i+qPrFJ/0 SOS団として活動していたあの時、誰かが連れてきてくれた場所。 ここが私の今の居場所。 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 11:15:32.96 ID:i+qPrFJ/0 「あの…この本を探しているのですけど。」 「その本ならここを真っ直ぐ行った突き当たりから右に曲がってすぐの棚の上から三段目右から4番目にある。」 高校を卒業してからもう6年になる。 涼宮ハルヒは高校を卒業と同時に願望を現実に変える能力を失い国立大学へと進学 朝比奈みくるは一足先に大学へ行ったが涼宮ハルヒの能力の消滅と共にもうこの世界にいる必要は無いと判断して未来へと帰り 赤玉も超能力を失い普通に大学へ進学した。 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 11:18:18.03 ID:i+qPrFJ/0 私も普通に文系の国立大学へと進み、司書の資格を取った。 もう対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースとしての役目を終えたのか情報統合思念体からの通信は一切無い。 というか私達SOS団は集団で催眠術でもかかっていたのかもしれない。 元から私は普通の人間だったし、願望を現実にする力なんてあるはずがない。 超能力者や未来人なんてありえない。 この世にそんな存在がいるはずがなかったのだと私は思い始めていた。 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 11:20:54.63 ID:i+qPrFJ/0 「すいません、こいつに図書カード作ってやってくれませんか。」 「…わかった。この用紙に記入を。」 …なぜだろうか、日に何度もこのやり取りをしている時、何かを思い出しそうになる。 ただのデジャブ…?何故だかとても優しい気持ちになる、そして心の何処かに悲しい気持ちも覚える。 …おかしい、私は何かを忘れている気がする。 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 11:25:46.21 ID:i+qPrFJ/0 ーーーーーーーー 「さっ!今日も活動するわよー!」 「今日は何処に行くんだ?」 …これはSOS団、みんなが文芸室に揃っている。 …みんな? SOS団は本当にこれで全員だった? 何かが足りない。誰かが足りない。足りない。足りない。 ーーーーーーーー 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 11:59:41.97 ID:i+qPrFJ/0 「長門…さん?」 しばらく仕事に手をつけずにぼーっとしていると誰かが私の名前を呼んだ。 この仕事に就いてからは私の名前を呼ぶ人は館長以外いないが館長は男だ、こんな声なわけがない。 誰かと思って前を見ると、そこには私が高校の時に破壊したはずのインターフェイス、朝倉涼子だった。 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:02:07.79 ID:i+qPrFJ/0 なぜここにいるのか。 確かに私はあの時完全に朝倉涼子を消したはず。 「ふふ…驚いた?」 正直本当に驚いている。 少し長くなった髪の毛、上品な服装、前と変わらぬ太い眉毛。 確かに…確かに私の目の前にいるのは朝倉涼子だ。 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:06:13.63 ID:i+qPrFJ/0 「あなたも甘いわね…。」 「…どういうこと?」 「あの後…私を構成し直したのはあなたよ?長門さん。」 フフフッと笑い「ありがとね」と朝倉涼子。 私は彼女の話をあまりうまく理解できていない。 どういうこと?私が…? 「私はあなたを構成し直した記憶がない。」 「あたり前よ。そのうち解るわ?」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:12:08.62 ID:i+qPrFJ/0 じゃあまたね?と言うと朝倉涼子は既にその場にはいなかった。 朝倉涼子を構成し直したのは私…。 わからない…やはり私の記憶は所々抜け落ちている。 抜け落ちた記憶には何があるの? 何かが足りないSOS団に破壊したはずの朝倉涼子…。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:18:26.68 ID:i+qPrFJ/0 ーーーーーーー 「長門有希に接触したわ…これでいいの?」 「はい。これで少しでも長門さんの記憶に刺激を与えられていれば…」 「彼は…まだ戻って来れていないの?」 「…」 「…そう。じゃあね。」 (長門さん…あなた自信が気付かなければ、あなたの大切な物…何も帰ってこないわ) ーーーーーーーー 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:28:08.65 ID:i+qPrFJ/0 「すまないな、お前の気持ちに俺は答えてやれないんだ。」 何処からか声が聞こえた。 それは耳から聞こえたものではなく、何処からか湧き上がるように聞こえた言葉。 私は誰かに謝られていた…断られていた? 悲しい気持ちが湧き上がる。 これは…私の望む物じゃない…。 私が最も恐れていた事、言葉。 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:32:52.91 ID:i+qPrFJ/0 朝、窓から差し込む光が目に眩しい。 この部屋にはカーテンがない、カーテンどころか何も無い。 唯一あったコタツは何故だかとても嫌悪を覚えて捨ててしまった。 あのコタツを捨てる時、胸を締め付ける感じを覚えた。 とても思い入れのある品を捨ててしまうわけでも無いのに…。 あの感情も私の抜け落ちている記憶と関係があったのだろうか? 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:36:06.54 ID:i+qPrFJ/0 今日も仕事がある。 いつもと同じように一日を過ごすのだろう…。 そういえばあの頃は毎日が新しい体験でいっぱいだった。 涼宮ハルヒという刺激的な人間の存在のおかげだろう。 新しい体験の他に私は新しい感情も身に着けたと記憶している。 ただ、その感情は誰に向けられていた物なのか私の記憶は記憶としての役目を果たしていない。 …朝倉涼子は昨日「またね」と言っていた。 また私に会いに来るつもりなのだろう。 その時私は彼女に聞かなければならない事が沢山ある。 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:42:21.00 ID:i+qPrFJ/0 「長門さん。」 昨日と同じように朝倉涼子は私の名前を呼んだ。 私が顔を上げると彼女はフフフッと笑い 「聞きたい事…あるんじゃない?」 と、全てを知っているかのような口調で話してきた。 そんな所、高校時代と全く変わらない。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:45:57.83 ID:i+qPrFJ/0 「今から30分後から昼休みが始まる…、館長には午後休みを取ると言う。 あなたは私の家で待ってて。聞きたい事がある。」 朝倉涼子は「わかったわ」と言うとすたすたと図書館を出て行った。 …私は彼女に鍵を渡していない。 いや彼女ならきっと鍵なんて要らないだろう。 これで…今までの謎が全て解ける。 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:48:15.82 ID:i+qPrFJ/0 館長に休みを取ると告げた後、私は真っ直ぐにマンションへと向かった。 708号室…ここがあの時から変わらず私の部屋。 案の定、鍵は開けられていて改めて朝倉涼子を思い知る。 「長門さん、おかえり」 彼女は勝手に麦茶を出して飲んでいた。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:52:04.46 ID:i+qPrFJ/0 そういう事に私はうるさいほうでは無いけれど、これはあんまりだと思う。 「最低限の礼儀はわきまえるべき。」 「ふふっ…ごめんなさい」 朝倉涼子はあまり反省はしていないようだ。 私は彼女のこんな所があまり好きではない。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:56:22.14 ID:i+qPrFJ/0 「…で、長門さんは何から知りたいの?」 「……あなたが今、ここにいる理由。」 彼女は淡々と語り始めた。 「まず…あなたはあの時、私をこの世から消した。 そして私はカナダへ急な転校をした。ということになったわ。 そこまでは…わかるわね?」 「まって、私は何故あなたを消したのか理由がわからない。」 「当たり前よ。もうちょっと人の話を聞きなさい。」 「…」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 12:58:35.96 ID:i+qPrFJ/0 「ここからは私も人に聞いた話だからあまり詳しくは無いけど…。 あなたはある人に振られたのよ、それはあなたが望まなかった言葉…。 そのある人っていうのがあなたが私を消した理由なんだけどね。」 誰かが私の望まない言葉を掛けたらしい…。 ただそれが朝倉涼子が今いる理由にはならない。 「あなたがここにいる理由になっていない。」 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 13:01:54.41 ID:i+qPrFJ/0 「…まだわからないの?」 朝倉涼子はここまで話せば後は私が自分で答えを見つけると思っていたらしい。 しかし私は全くと言っていいほどなにも解らなかった。 朝倉涼子はふーっと息を吐くと、彼女には似合わない大声で言った。 「だから…あなたは失恋に耐え切れなくて、あの世界を…彼を…っ! 消してしまった!今、この世界はあなたが自分の都合の良いように作った世界よ! 私が今、ここにいる理由もこれ!あなたはどこかで私を消した事を後悔していた…。」 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 13:06:55.18 ID:i+qPrFJ/0 「また随分電波な…お前が宇宙人?」 「ああ…もうお茶はいいよ。」 「眼鏡をしてない方が可愛いと思うぞ」 「すまないな、俺はお前の気持ちに答えてやれない。」 思い…出した…。 全て私がやった事だった。 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 13:12:44.49 ID:i+qPrFJ/0 ーーーーーーーーー そこは文芸室…SOS団の部室。 「さ!今日も活動するわよー!」 みんな…みんないる。 「長門…それ、面白いのか」 「…ユニーク」 もちろん彼も。 「…これ、読んで。」 差し出すのは「ハイペリオン」。 [本日8時 公園にて待つ] ーーーーーーーーーー 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 13:13:24.15 ID:i+qPrFJ/0 おわり 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/03(木) 13:29:00.60 ID:i+qPrFJ/0 こんな引きこもりに暖かい言葉をありがとう。 初めてだったからって言い訳したいわけじゃないけど 今度は頑張る