世にも奇妙ならき☆すた 262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 07:38:53.85 ID:JxNU8Sp80 保守もかねてとりあえず最初だけ 意外と長くなるかも試練 「幸せのリボン」 柊 つかさ つかさ(今日もいい天気だなぁ。さっきまで寝てたはずなのに、学校に着いたらすぐ寝ちゃいそうだよぉ) いつも通りの朝に、いつも通りの通学路。 私はあくびをしながら、お姉ちゃんたちといつも通りに登校します。 こなた「でもやっぱりあのパッドは操作しづらいよ。スティックメインなのはわかるんだけどさぁ――」 かがみ「わたしはシューターだから、あの操作のし辛さはきついのよねぇ」 こなちゃんもと姉ちゃんは、今日も朝から元気そうです。 こなた「んでね、わたしいつも思うんだけど――」 かがみ「うわっ、今気づいたけど結構やばい時間ね」 お姉ちゃんが時計を見ながら声を上げます。 こなた「うお、ホントだ。これはちょっと走ったほうがいいかもね」 かがみ「そうね。ほら、つかさも急いで」 つかさ「えぇ〜っ」 もう走り出しているお姉ちゃんとこなちゃんがわたしを急かします。 つかさ「二人ともちょっと待って〜」 かがみ「いつもより遅く起きたあんたが悪いんでしょ?わたしが起こさなかったら走っても間に合わない時間だったわよ?」 つかさ「だってあれは目覚まし時計が勝手に止まって……」 かがみ「あんたが自分で止めたんでしょ?自業自得よ」 つかさ(うぅ……今日は付いてないよぉ) 二人は走りながら何か話していますが、わたしは付いていくだけで精一杯です。 264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 08:06:05.74 ID:JxNU8Sp80 キーンコーンカーンコーン かがみ「予冷かぁ。危なかったわね」 こなた「うん。ぎりぎりセーフだね」 何とか間に合いました。 こなた「つかさもよくがんばったね。GJ」 こなちゃんが親指を立ててわたしをほめてくれます。 つかさ「えへへ、そうかな? ――あれ?」 ポケットに手を入れると、何か違和感を感じます。 こなた「ん? どしたの?」 つかさ「……携帯落としちゃったかもぉ……」 どうやら携帯電話を落としてしまったみたいです。 かがみ「ホントに落としたの? 家に置いてきたとかない?」 つかさ「たぶん……朝ポケットに入れた気がするから……」 かがみ「そう……でも、今から探しに行く訳にはいかないし……」 こなた「もしかしたら、誰か優しい人が拾って交番に届けてくれるかもよ?」 そんなにしょんぼりしているように見えたのか、二人が励ましてくれます。 かがみ「じゃあ、わたしは自分の教室に行くから。 わたし達の教室に着いたところでお姉ちゃんと別れます。 こなた「じゃ、また休み時間にね」 その後の授業も散々です。 答えられない問題ばかりやけに先生にたくさん当てられて大変でした。 268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 08:49:11.09 ID:JxNU8Sp80 みゆき「それは大変でしたね」 わたしの今日半日の話をしながら、みんなで机を囲みます。 こなた「つかさ、もしかしたら何かに憑かれてるんじゃないの?」 つかさ「えぇ〜こなちゃん怖いこと言わないでよぉ」 そういいながら、自分のお弁当箱を探します。 つかさ「あれ? あれれ?」 こなた「今度はどしたの? もしかして携帯をカバンに入れちゃってて今気づいたとか?」 つかさ「どうしよう〜お弁当忘れちゃったみたいだよぉ」 もうわたしは泣きそうです。 今度はお弁当を忘れてしまったようです。 かがみ「あんた今日はホントついてないわね」 こなた「でも前にも携帯落としたこととかあるし、先生に当てられて答えられないのも普通だし、いつも通りと言えばいつも通りだよね」 かがみ「確かにそうかもね」 お姉ちゃんとこなちゃんが二人で笑っています。ちょっとひどいです。 かがみ「ごめんごめん。ほら、わたしのを分けてあげるから。一緒に食べましょ」 みゆき「でしたらわたしのもどうぞ」 こなた「じゃあ、わたしのもあげるね。コロネだけど」 結局その日のお昼はみんなにお弁当を分けてもらいました。 269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 08:49:39.17 ID:JxNU8Sp80 つかさ「はぁ〜、ホント今日はどうしちゃったんだろ」 ため息をつきながら、わたしたち3人は通学路を朝とは逆に辿ります。 こなた「やっぱり何かに憑かれてるんじゃない? 今ここに射影機があればわたしが除霊してあげるのに」 かがみ「あんた、それゲームの話だろ」 カンカンカンカン 踏み切りに差し掛かったところでわたし達は足を止めました。 どうやら電車が来たようです。 つかさ「明日はいいことないかなぁ……あれ?」 踏み切りのランプとは別に、何か赤いものが視界に入ります。 遮断機に何か引っかかっているようです。 かがみ「なに、つかさ? また何かあったわけ?」 つかさ「あそこに……」 わたしが指差した先。真っ赤なリボンが風に揺れていました。 駆け寄って、それを手に取ります。 270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 08:49:52.91 ID:JxNU8Sp80 こなた「誰かの落し物かな?」 かがみ「でもそれにしては変でしょ。さっき遮断機が下りてきたのに、なんでそこに引っかかってるのよ」 かがみ「まるで今、誰かがここに置いていったみたいじゃない」 こなた「それはそうだね……て、つかさ?」 つかさ「な、なに? こなちゃん?」 はっとして返事をします。 何故だかこのリボンに見とれてしまっていました。 一見、何の変哲もないただのリボン。でも…… こなた「そのリボン、そんなに気に入ったんならもらって帰っちゃえば?」 つかさ「で、でも……」 かがみ「こら。人の落し物だったら思いっきり横領だろそれ」 こなた「いや、でも誰かに持っていってくださいといわんかのように置いてあったんだよ?」 こなた「実際仮に落としてたとしても、リボンくらいであーだこーだ言わない気もするんだよねぇ」 かがみ「ま、まぁ確かにそうかも知れないけど……」 つかさ「……」 271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 08:50:53.05 ID:JxNU8Sp80 チュンチュン 次の日の朝。 わたしは何故か目覚ましが鳴る前に目が覚めました。 手の中には昨日のリボン。 結局、わたしはあのリボンを持って帰ったのでした。 つかさ(今日は何かいいことあるかな……) そう思いながらわたしは身支度を始めました。 頭には昨日のリボンを結んで……。 かがみ「あんた昨日とはえらい違いね」 つかさ「そ、そうかな〜」 わたしは照れて頬をかきます。 話しているのは今日のわたしのことです。 まず朝。わたしは誰にも起こされずに自分で起きることができました。 起こしに来たお姉ちゃんがとても驚いていたのを憶えています。 次にテスト。 今日は授業中に抜き打ちの小テストがありました。 すべての問題が4択の選択式。 わたしは適当に書いても1/4は当たってくれると、感で答えました。 ですがなんと、全問正解していたのです。 これにはこなちゃんやゆきちゃん、もちろんわたしも驚きました。 272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 08:52:20.89 ID:JxNU8Sp80 こなた「でもホントすごいよね。あのつかさがテストで満点なんて――あり?」 カバンの中をあさっていたこなちゃんの動きが止まります。 こなた「うぅ、どうしよう……チョココロネ忘れちゃったみたい」 かがみ「今度はあんたかよ……」 お姉ちゃんがじろっとこなちゃんを見ます。 こなた「しょうがないから購買で買ってこようかな。確かチョココロネも売ってたし」 つかさ「じゃあ、わたしも付いてくよ。昨日コロネを分けてもらったお礼」 昨日のお礼にと、わたしもこなちゃんと一緒に購買へ行くことにしました。 購買へついたわたし達ですが、唖然としてしまいました。 こなた「これはまた……すごい人だかりだね」 つかさ「うん……なんか前にこなちゃんに連れて行ってもらったお祭りみたい……」 お昼休みの購買は人の波で埋め尽くされていました。 こなた「これはカウンターに行くのも大変そうだね……でもしょうがないか。いくよつかさ!」 こなちゃんがそういって人ごみを掻き分けながら前へ前へと進んでいきます。 つかさ「あ、まってこなちゃん」 わたしはと言うと、向かってくる人並みに押し戻されて思うように進めません。 つかさ「うぅ……こなちゃ〜ん……」 こなちゃんの特徴的なクセ毛がだんだんと遠くなっていきました。 276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 09:22:47.93 ID:JxNU8Sp80 つかさ「ただいまぁ〜、ものすごく人が多かったよ〜」 わたしが教室へ戻ると、既にこなちゃんも戻ってきていました。 こなた「お帰りつかさ……でも、もう売り切れちゃってたでしょ?」 うなだれたこなちゃんが残念そうに言います。 つかさ「あ、そのことなんだけど――はい、これ」 買ってきたチョココロネをこなちゃんへ渡してあげます。 こなた「おぉっ! ありがと! でも、どうして? わたしが先に行ったときは売り切れって言われたんだけど……」 つかさ「なんか購買の奥に出し忘れの商品があったみたいで、実はまだ残ってたみたいなの」 かがみ「へぇ、そんなこともあるのね」 こなた「何か今日のつかさはホントすごいね……あ、もしかしてそのリボンのお陰なんじゃない?」 こなちゃんがわたしの頭を指差します。 昨日拾った赤いリボン。 つかさ「もしかしたらそうかも。このリボンを拾ってからいいことばっかり起きてるんだよね」 わたしが笑うと、リボンがふわりとゆれます。 そろそろラストね 281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 10:00:08.64 ID:JxNU8Sp80 それから1週間ほどが経ちました。 今日もみんなでお昼を食べます。 こなた「そういえばつかさ、最近そのリボンばっかりつけてるよね」 コロネをほお張りながら、こなちゃんがわたしのリボンに目を向けます。 かがみ「この子ったら、最近はお風呂に入るときも夜寝るときも付けてるのよ」 つかさ「えへへ……、洗うときはお風呂で洗ってすぐ乾かすから、いつも付けてられるの」 こなた「すごいこだわりよう……そのリボンそんなに気に入ったの?」 つかさ「うん。なんかこのリボンね、"幸せのリボン"みたいなの」 かがみ「幸せのリボン?」 お姉ちゃんが疑わしそうにわたしのリボンを見ます。 つかさ「このリボンを付けてたら、いいことばかり起きるみたいなの」 つかさ「最近、毎朝自分で起きれるし、探してたものが見つかったし、懸賞にもあたったの」 かがみ「そういえば何か当たったって喜んでたわね」 つかさ「それにテストの点数も上がってきたし……」 こなた「言われてみれば最近テストの点数いいよね。選択式のやつだけだけど」 わたしはえへへと笑い、ほっぺをかきます。 こなた「でもいいなぁ、わたしも楽していい思いしたいな〜」 こなちゃんが羨ましそうな声を上げます。 かがみ「甘ったれたことを言うな。そもそも朝起きるのにしてもテストにしても、本人が努力してこそのものなの」 かがみ「少しはみゆきを見習いなさいよね。ねぇ、みゆき?」 わたしたち3人の視線がゆきちゃんにそそがれます。 みゆき「そうですね、確かに"若いころの苦労は買うてもせよ"ということわざがありますね」 こなた「ふ〜ん……じゃあ、わたしの苦労を売ろうと思ったら誰か買ってくれるかなぁ」 かがみ「あんたはまたすぐにそういう方向に……」 やる気なさそうに言うこなちゃんにお姉ちゃんがあきれます。 282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 10:01:07.87 ID:JxNU8Sp80 つかさ「でも、わたしはこのリボン気に入ってるし、前みたいに運が悪いことばっかり起きるのは嫌だし……」 頭のリボンをさすります。 かがみ「まあ、別に付けたいなら付けておけばいいんじゃない?」 かがみ「どうせ端からリボンのせいだとは思ってないしね」 かがみ「でもやっぱり前のほうがあんたらしいわよ? 最近のは――なんかちょっと変な感じ」 心配してくれているんでしょうか。 一瞬ですが、お姉ちゃんが少し暗い顔をしました。 つかさ「そんなことないよぉ。今までのわたしがダメなわたしだっただけだよ。これが本当のわたし」 お姉ちゃんが暗い分、わたしが明るく答えました。 283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 10:03:57.82 ID:JxNU8Sp80 こなた「ふぅ〜、今日もよく勉強した」 かがみ「よく昼寝したの間違いじゃないのか……」 こなちゃんが大きく伸びをします。 今日もいつもと同じように、家へと帰ります。 いつもといっても、ここ1週間の"いつも"です。 朝は自分で起きて、学校へ行く途中も何もドジをせずに、授業でもちゃんと答えられて、また何もドジをせず家へ帰ります。 それもこれも、あのリボンのお陰。 あのリボンのお陰で、何もしなくても見違えるような毎日になりました。 こなた「いやいやぁ、ちゃんと寝ておかないと徹夜でのネトゲが辛くてねぃ……」 かがみ「あんたいつか死ぬぞ……」 カンカンカンカン 踏み切りの音が聞こえて、ちょうどわたし達の前で遮断機が下りていきます。 こなた「そういえばつかさがリボンを拾ったのもこの踏切だったよね」 かがみ「そういえばそうね」 そう。 わたしがあの"幸せのリボン"とであったのはここでした。 風に揺られる赤いリボン。 あの日のことを思い出しながら、リボンに手をやります。 つかさ「……あれっ?」 かがみ「どうしたのつかさ――て、あんたリボンは?」 ありません。 さっきまで確かにつけていたはずのリボン。 284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 10:04:31.01 ID:JxNU8Sp80 こなた「あれ? つかさ今日リボンつけてなかったっけ? でも、学校で見たときは確かに付けてたような気が……」 つかさ「お姉ちゃん! リボンが、リボンが!」 かがみ「落ち着きなさいって。どこかに落としたりとかしてないの?」 つかさ「リボンが外れたらすぐ気づいちゃうよ! ねぇこなちゃん、わたしのリボンは?!」 こなちゃんの両腕をつかんで、揺さぶります。 こなた「お、おおおお落ち着いてよつかさ」 落ち着いていられるわけがありません。 わたしに幸せをくれた"幸せのリボン"。 つかさ「わたしのリボン――幸せのリボン――」 必死にあたりを見回して探します。 つかさ「あっ……」 遮断機にひらひらと揺れる赤いもの。 あのリボンでした。 こなた「あれ? いつの間にあんなところに?」 見つけたときと同じように風に揺られてはためいています。 つかさ「待ってっ!」 リボンを取ろうとした瞬間。 風に大きく煽られて、リボンが宙に舞い、線路の真ん中へふわりと落ちました。 線路の先を見ると、電車が少しずつ少しずつ大きくなってきています。 つかさ「わたしのリボン!」 リボンを取ろうと駆け出したところ、二人に腕をがっちりと掴まれました。 286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 10:05:01.49 ID:JxNU8Sp80 こなた「ちょ、つかさ、危ないって!」 かがみ「つかさ、落ち着きなさいって!」 つかさ「お姉ちゃんとこなちゃん、放して! あのリボンがないと……ダメなの!」 二人の振り払って遮断機を潜ります。 そしてぺたんとリボンの前に座り、そっとリボンを手に取ります。 つかさ「よかったぁ……わたしのリボン……」 その時、後ろから二人の声が聞こえてきました。 何かを叫んでいるようです。 振り返ってみると、何か怖いものを見ているような顔で、わたしと大きな音のするほうを交互に顔を向けています。 大きな音―― そういえば遮断機を潜るまで聞こえていた地響きのような音の変わりに、黒板を引っかくような甲高い音が聞こえます。 わたしは静かに音のするほうを向きました。 すぐ目の前に大きな電車が来ていました。 でも大丈夫。 わたしには幸せのリボンがあるから。 きっと何とかしてくれる。 わたしはぎゅっとリボンを握り締めました。 世にも 奇妙な らき☆すた 287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 10:05:32.33 ID:JxNU8Sp80 白石「人は死の直前、今までの人生を走馬灯のように見るといいます」 白石「それはもしかしたら、全てが無になるこれからに対する、一種の反動のようなものなのかもしれません」 白石「最近、やたらと物事がうまくいったり、苦労をせずに何かを得たりしていませんか?」 白石「それはもしかしたら、今から起こる事の前触れなのかもしれませんよ」 白石「次に奇妙な物語の扉を開くのは、あなたかも知れません」