ハルヒ「キョン! ……頭撫でなさいよ……」 207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 17:34:30.15 ID:F30oEtKX0 目覚めるとそこはいつだかの風景だった。 「キョン、起きて!キョン!」 そう俺を呼ぶ声も懐かしい。 「・・・・・。」 まだ眠い。目をこすり体を起こす。 一息ついて周りを見る。 あぁ・・・・本当に懐かしい。 「よぉハルヒ。・・・・久しぶりだな。」 見知った顔がそこにある。 「・・・・・本当ね。」 ・・・・それは、SOS団が解散して・・・いや、俺とハルヒが別れて3年たったある日の夢である。 208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 17:34:48.88 ID:F30oEtKX0 「変わらないな。」 人気のない学校を二人で歩く。 いつだか見た夢のように俺たちはSOS団の部室―文芸部室に来ていた。 「そんなこと無いわ。なに?こんなにいい部屋を物置代わりにしちゃって!!」 ハルヒはズカズカと部室に入っていきパイプ椅子を取り出して言った。 「・・・それでも、空気は変わらないな。」 ハルヒが取ってくれたパイプ椅子に座る。 3年たった今も、この部室には変わらずに俺たちのいたあの時と同じ空気がつまっている。 少し古臭く、でも温かい。 「まぁ・・・私達が卒業してすぐに文芸部は廃部。その後はただの物置になってたみたいだし。」 「唯一の部員の長門が卒業しちまったからなぁ。」 部室の中を見渡す。 そこには長門の本棚も、古泉の持ってきたボードゲームも、朝比奈さんの衣装も無い。 部室にあったものは全て、3年前にそれぞれの持ち主のもとへと帰っていった。 「お茶が飲みたいな。」 そう言っても、前のように可愛らしくうなずいてポットへと小走りに駆ける姿はなく。 窓辺を飾る花のように、本を片手に座る姿もなく。 俺の退屈を邪魔するようにゲームを催促してくる姿もない。 「・・・・そうね。」 ハルヒも思うところは同じなのか、少し顔を伏せ それきり会話は途切れてしまった。 209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 17:35:04.67 ID:F30oEtKX0 どれくらいたっただろう? すっかり物置と貸している文芸部室・・・いや元文芸部室には時計はなく正確な時間はわからない。 空も相変わらずあの時と同じ灰色に染まっている。 「ねぇキョン。あんた・・・最近どう?」 ふいにハルヒが尋ねてくる。 「どうって言われてもな・・・。別に普通に生活してるさ。」 ハルヒ、古泉、長門、俺。 それぞれ別の大学に行ってからも俺の日常は淡々と流れていた。 ただ・・・・ 「朝起きて大学行って、授業受けて帰る。・・・退屈な毎日だな。」 高校時代、ハルヒ達と共に過ごした3年間。 あっというまに過ぎていった毎日に比べ、今の平穏な日々は退屈なものだ。 「そう。」 ハルヒは一言つぶやいて窓の外を眺める。 「ハルヒ、お前はどうだ?」 ・・・そこに一瞬の沈黙があった。 「別に。普通よ。・・・・普通。」 ハルヒのいう普通とはどんなものか。 3年も一緒にすごしていればわかる。 その背中が3年前に比べ、少し寂しそうに見えた。 210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 17:35:21.34 ID:F30oEtKX0 そろそろ頃合か。 「悪い。トイレ。」 そう言って俺は部室を抜け出した。 ハルヒはずっと窓の外を見つめているだけだった。 小走りで学校の外にでる。 「お久しぶりです。」 そこにはまたも懐かしい奴がいた。 「・・・久しぶりだな古泉。」 前と同じように赤い小さな玉がフラフラとこっちに向かってくる。 「・・・またその格好か。」 「えぇ。どうやら彼女は僕を招待してくださったようですが、あなた一人が限界だったのでしょう。」 そいつは俺の目の前まできて動きをとめ、それきり口を閉ざしてしまった。 ・・・・俺の言葉を待っているのか。 「なぁ古泉。なんでまたこんなことになってるんだ?」 それなら・・・と口を開く。 「なんでまた閉鎖空間ができてる?」 それが俺にはわからなかった。 「あいつはもう・・・・神様じゃないんだろう?」 211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 17:35:40.51 ID:F30oEtKX0 「えぇ。その通りです。涼宮さんはもう神様ではありません。」 ・・・・ならなぜ? 「そうですね。たしかにもう涼宮さんは神ではありません。でも昔は神様だったのですよ?」 そりゃわかる。わかるというより知っているさ。 「彼女は世界を意のままにできる力を持っていた。」 その力を取り戻したのか?でもハルヒは今は神様じゃないんだろう? 「えぇ。涼宮さんは今回、その力の残骸を使ったのです。」 残骸?その力の残りって事か? 「はい。最後の力を振り絞って涼宮さんはこの世界を作ったのですよ。」 ・・・その理由はなんとなくではあったが理解できた。 「・・・あなたもわかっているようですが・・・・ 小走りで部室に戻る。 「遅かったわね。」 ハルヒは変わらずに窓の外を眺めていた。 「あぁ。久しぶりで場所忘れちまってな。」 そう言ってハルヒに近づく。 「・・・・なに?座らないの?」 ジトッと見つめる目は3年前と変わらない。 でも少し、心なしか弱弱しく感じる。 「なぁ、ちょっと外にでないか?」 ハルヒの手を取って強引に引っ張る。 「ちょ、ちょっとキョン!?」 ・・・少し痩せたな。 「いいから。」 強引に手をとり部室をでる。 ハルヒ黙って俺の後ろを着いてきた。 212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 17:35:57.56 ID:F30oEtKX0 「疲れたわ。座りましょ。」 あの後、どこに行くでもなく二人で手をつないで学校の中を歩いていた。 さすがにずっと俺の歩幅に合わせるのは辛かったのかハルヒは外の自販機の前、 いつだったか俺が古泉から初めてハルヒのことを聞いたベンチに座り込んだ。 「・・・・なんか飲むか?」 「いらない。」 いちおう自販機で二人分のコーヒーを買う。 そしてハルヒの横に座る。 「ほら。」 「・・・・ありがと。」 ハルヒは俺の買ったコーヒーを大事そうに両手で包み込んでいた。 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 ・・・・さて、これからどうしようか・・・。 古泉が話したこと。 それを知った俺はどうするべきなのか。 「なぁハルヒ。」 ・・・俺が話そうと思った時、 「ねぇ、キョン。」 ハルヒの声が響いた。 214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 17:44:30.78 ID:F30oEtKX0 「・・・・私もね。ずっと退屈。」 ハルヒは顔を伏せたままつぶやくように話し始めた。 「ずっと同じ毎日。変わらない、退屈な日々。」 古泉の話がフラッシュバックする。 「みくるちゃんも、ゆきも、古泉くんも・・・・」 ―涼宮さんは最後の力を振り絞ってこの世界を作った。 「そして、キョン。あなたもいない毎日。」 ―前のように巨人を出す力も残っていません。 「それでもね。私は頑張ったの。」 ―恐らくこの空間も持って一時間か二時間くらいでしょう。 「毎日を楽しくすごそうって。」 ―しかしその短い時でも、彼女は望んだんですよ。 「でもね・・・どんなにがんばっても・・・足りなかったの。」 ―最後の力を使ってでも、望んだんですよ。 「みんなが・・・ううん、 ―僕達を・・・いえ、 「キョン、あなたがいないの。」 ―あなたと一緒にいることを。 気づけばハルヒは俺の目の前に立っていた。 224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 17:56:54.36 ID:F30oEtKX0 >>214続き 「もう5年も前の事よね。」 ハルヒは俺の手を取り、強引に歩き出した。 「その時も、こんな夢を見たわ。」 手が少し震えている。 「あなたと二人きりで学校にいるの。」 「その時は、うれしかった。」 ハルヒはグラウンドに向けて歩いていく。 「だから私は願ったの。」 5年前、俺とハルヒにとって特別な場所になったところ。 「キョン、あなたに会いたいって。」 ハルヒが俺に抱きついてくる。 「夢でいい。また・・・あの時のように・・・逢いたいって。」 ハルヒの手が背中に回され、強く俺の体を抱きしめる。 「なら良かったじゃないか。その夢とやらをお前は見れているんだから。」 ハルヒは答えない。 俺はどうしていいかわからなかった。 抱きついてきているハルヒを力強く抱きしめるべきなのだろうか? 「でもね、今はちがうの。」 ハルヒの声はか細く、少し聞き取りづらかった。 「この夢が覚めたら・・・また離れ離れだもの。」 顔を見ることはできないが、恐らくハルヒは泣いているのだろう。 「キョン・・・抱きしめて。」 俺はできるだけ強く、できるだけ優しく、ハルヒを抱きしめた。 228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 18:11:02.44 ID:F30oEtKX0 >>224続き 結構な時間がたったと思う。 それでもハルヒは離れなかった。 「・・・・。」 空を見ると、かすかではあるが薄くひび割れていた。 ―恐らくこの世界は持って一時間か二時間でしょう。 ・・・もうそろそろか。 恐ろしく自分は冷静だった。 「なぁハルヒ?」 そっと肩に手をかけ、ハルヒから距離を置く。 「・・・・。」 ハルヒは何もいわず、顔を伏せて震えている。 もうすぐこの世界は終わるのだろう。 それをハルヒもわかっているのだろう。 そして、この世界は壊れ、俺たちはまた退屈な日々へと戻っていく。 ハルヒがいない日々へと。 SOS団に入った時にはわからなかった。 ここが、どれだけ自分にとって大事な場所か。 あれから3年がたち、俺たちには思い出だけが残った。 大学の帰り道。制服を着た高校生に自分達の姿を映し、もう戻らないはずのあの日々を思い。 どれだけ願っても戻るはずはないあの日々の事を、 どれだけ願っても帰らない・・・・ 古泉や、朝比奈さんや、長門や・・・・ ハルヒと一緒にいれた日々。 俺でさえこの喪失感がこんなにも胸に穴を開けるくらいだ。 ハルヒにとっては耐え難いものだったのだろう。 229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 18:28:34.29 ID:F30oEtKX0 >>228続き 「ハルヒ。」 込めれるだけの優しさを込めて名前を呼ぶ。 「・・・・もう、お別れだ。」 ハルヒは俯いてた顔を上げ、いつもとは違う・・・弱気な顔で俺を見つめてきた。 ・・・泣いてるな。 このいつも強気で、わがままで、傲慢な団長さまのこんな顔を見たのは初めてだった。 「嫌・・・・。」 そうは言ってもハルヒにもわかるのだろう。 この世界がもうすぐ終わるということも。 「でもなハルヒ。」 だからこそ、俺は言わなくてはならない。 ・・・伝えなくてはならない。 前と同じように目は閉じることにした。 だからハルヒがどういう顔をしていたのか、またも俺は見ることはできなかった。 唇に伝わる体温。 そしてすぐに世界は曖昧になっていく。 流され、自分がどこにいるのかもわからなくなっていく。 そのなかでずっと、俺はハルヒの体を抱きしめていた。 そして瞬間、ハルヒの体が離れる。 「キョン!!!」 そう、ハルヒが叫んだ気がした。 最後、俺はありったけの力をこめてハルヒを近寄せ抱きしめた。 「・・・・いつもの場所で、待ってる。」 何秒間かしか抱きしめられなかったがそれで十分だった。 そして俺は、遠く・・・自分の部屋へと戻っていった。 236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 18:52:17.91 ID:F30oEtKX0 >>229続き、長いから短文で消化。 ドスン。 背中に強い衝撃。 「こういうオチしかできないのか。」 そう言いながらベットの上に戻る。 久しく使ってなかった目覚まし時計をセットしてまた眠りに入る。 240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 18:55:23.14 ID:F30oEtKX0 >>236 そして朝がきた。 けたたましく鳴り続ける目覚まし時計を止め、俺は洗面所へと向かった。 寝癖を治して歯を磨く。 きっと、いくら急いでも無駄なんだろうがいちおう急いで仕度をして家を出た。 すっかり家の置物になってしまった自転車をひっぱりだし、全力で漕ぐ。 タイヤの空気が抜けていたが時間がないからそのままにしておいた。 そして、何分か全力疾走を続けると約束の場所が見えてきた。 自転車をいつもの場所―3年前は・・・―に置き呼吸を整えて歩き出す。 ・・・そいつは3年前となにもかわらずにそこいた。 信号が変わり、俺は歩き出す。 まだ気づいていないのか、そいつはしきりに時計を気にしながら辺りを眺めている。 そして、あと数歩という所で目が合う。 「よぉハルヒ。」 「・・・・。」 おそらくハルヒは俺に会えるなんて思ってもなかったんだろう。 目を点にして驚いている。 まぁしょうがないだろう。俺だってこんなことがあれば驚くさ。 「なぁハルヒ。」 別に沈黙も悪くはない。 「なによ。」 時間が限られてるわけでもない。 これから、俺たちの前には長い長い時が待ってる。 でもよ、思ったことはすぐに言ったほうがいいと思うんだ。 「―――似合ってるぞ。」 俺たちの時は、また動き出した。  /end 243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/08(火) 18:57:30.09 ID:F30oEtKX0 とりあえず終わり。 最後なんか個人的にいい終わり方がなくて鬱・・・・。 まぁ保守代わりってことにしてください。 ってか>>1が「キョン!大好きよ!」の人だったらまた便乗させてもらってしまったよ・・・・orz 953 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/11(金) 03:04:53.59 ID:4NoBSpfn0 >>207のハルヒ視点を書こうとしたらもう時間やばすwww 間に合うか・・・・ 959 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/11(金) 03:09:52.18 ID:4NoBSpfn0 懐かしい夢を見た。 まるで私達はあの頃と一緒で。 でも本当はもう戻らなくて。 何年ぶりだろう? 私は気がつけば涙を流していた。 楽しかった夢のあとに残ったのは喪失感だけ。 それで気づいてしまった。 ―私には彼が必要なんだろう。 少し考えて目覚ましをかけることにした。 夢の出来事を信じるなんて、自分らしくもないけど。 布団の中で目をつむる。 まだ唇に残る感触と、手に残る温もりが消えるのが怖かった。 少し減速頼む(汗 970 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/11(金) 03:17:42.78 ID:4NoBSpfn0 >>959 気がつけば朝になっていた。 夜中にかけた目覚ましのスイッチを止める。 鏡に映る自分は眠そうなのにいつもより元気そうに見えた。 「久しぶりかぁ。」 5年前と同じように髪を結んだ。 家をでる足は軽い。 駅までの道のりがとても短く感じた。 そして、駅へとつく。 いつもの集合場所に行くとまだ彼は来ていなかった。 「まぁ1時間も前にきちゃったしね。キョンはいつも遅れてきてたし。」 夢なのにここまで信じれる自分が少し好きになった。 約束の時間に近づいていく。 だんだんと人が多くなってきた。 そして、だんだんと寂しくなってきた。 こんなに人がいるのに、私は一人ぼっちだ。 ・・・なんでこんなことしてるんだろう・・・ 夢の中の出来事・・・そんなの信じたって・・・ 時計を見ればあと30分になっていた。 995 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/11(金) 03:28:04.28 ID:4NoBSpfn0 30分・・・25分・・・20分・・・ 時間だけが過ぎていく。 もし彼が来たら叱ってやろう。 いつも彼は一番遅かった。 そう考えてるうちに・・・彼が来た。 「・・・・・。」 「・・・・・。」 彼はあの頃と変わらない。 「よぉハルヒ。」 ・・・言葉が出なかった。 やっと逢えたのに何もできない自分が嫌になる。 そして・・・沈黙。 彼は少し考えたようにして・・・口を開いた。 「ハルヒ・・・似合ってるぞ。」 その言葉もそのしぐさも、あの頃のままで・・・。 「・・・馬鹿。遅刻してきたんだからおごりよ!!」 そう言おう。 そう言ってやろう。 ・・・でも、今はまだ・・・ 「キョン・・・・。」 「・・・なんだ?」 彼に近づく。 「久しぶり。」 できるだけの笑顔を作る。 そして、そっと彼に口付けを。 夢では二度した。 その度に思っていたのだ。 「キョン・・・大好き。」 こうなることを願ってたんだ。 /end 時間ないからこんなんですまん。みんな大好きだZE!!