長門「・・・・・放尿の許可を・・・」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/01(火) 20:09:12.06 ID:p2y/WPvt0 「…………放尿の許可を」  あらかじめ断っておくが、長門の口からこの台詞が発せられたのは決して俺たちが何か特殊な ゲームやプレイに興じている最中というわけではなく、むしろそのような状況からは程遠い平穏な 一日の放課後だということを理解して頂きたい。 「へっ!?」  そこにいた誰もが、ハルヒのように素っ頓狂な声をあげたかったに違いないだろうが、ハルヒ以外 の全員は自分たちの空耳だと思っていたのか、まるで渋谷の忠犬ハチ公のように大人しくその場で 固まっているしかなかった。  そこに追い打ちのように、 「限界」  長門がそう言って、その相変わらず南極の巨大な氷の結晶のように真っ直ぐな瞳を、あろうことか 俺の方に向けてきたのである。 「ちょっと、キョン? ユキは何を言ってるの?」  ああ、待て、ハルヒ。俺もその質問を長門にしようと思っていたところだったんだ。 「あたしには、あんたがユキに何か迷惑を掛けているようにしか見えないんだけど?」  団長様は、俺の無実の主張を一切聞き入れない冷血な裁判官のように、理不尽なジト目をこっちに 向けてくる。 「ま、待ってくれ! 長門、どういうことだ!?」  長門は先ほどまで視線を落としていた本をそのまま膝に置いたまま、淡々と語り始めた。 「私があなたから、放尿を我慢するように言われてから既に20時間、私はずっと放尿を我慢している。 しかし、そろそろ放尿をしないと、膀胱に害が及ぶおそれがある。許可を」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 20:18:56.06 ID:p2y/WPvt0  放尿の我慢? 長門、お前は一体何を言っているんだ。 「キョン? どうやらあんたの死刑が決まったようね……」  落ち着けハルヒ、誤解だ! 俺はそんな妙な命令なんて出していない! 「ユキが言われたって言ってるんだから、言ったのよ。ユキの数少ない言葉の発言権に比べたら、 良く喋るあんたの軽い口なんてゴミでしかないのよ」  なんて理不尽な言いぐさだ、だったら俺も明日から無口キャラになってやるぞこの野郎、と言いたいところでは あったが、そんな反論はハルヒの殺る気に満ちた瞳に睨まれるとたちまち消えてしまうのだ。 「それより長門! 俺がいつそんな事を言ったんだ!?」 「あなたが答えろと言うのであれば答えるが、私の体にそろそろ限界が来ている。先に放尿の許可が欲しい」  俺としては、殺されるのと長門がおしっこを漏らす事を天秤に掛けたら、俺の命を優先したいところではあったが、 流石にそれは許されないと思い、 「行け、長門! 早く放尿をしてこい!」 「………………わかった」  長門はそう言うと、横のテーブルに先ほどまで読んでいた本を置き、しかし先ほどまでの言葉とは矛盾するように、 いつもとは変わらぬ足取りでゆっくりと部屋を横切っていく。  しかし、よく見れば長門の表情にはうっすらと紅が差しており、歩き方もまたどことなくぎこちない。俺にしか分からない 様なレベルの変化で、長門は必死に尿意と戦っているに違いなかった。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 20:31:23.49 ID:p2y/WPvt0  そわそわとしているようで、しかし確実に落ち着き払ったようにも見える長門の足取りをゆっくりと眺めて いたい気持ちも確かにあったが、俺の背後で目を光らせている団長様がそれを許してはくれないようだ。 ハルヒよ、なんでお前はいつも俺のおいしいところで邪魔をするんだ。 「で、キョン? あんた、覚悟はできてるんでしょうね?」 「だから誤解だって言ってるだろ」  ちょうど長門が後ろ手に閉めたドアの音が響く頃に、ハルヒの猛攻が始まる。勘弁してくれよ、ホント。 「あんたがユキにいかがわしい命令を出していたことに違いは無いわ。古泉君? こいつをちょっと痛め つけてやろうと思うんだけど、どんな方法が良いかしら?」  古泉に聞くなよ! というか、お前もなに嬉しそうな顔して考えてるんだ! 「ん〜、そうですね、彼の鬼畜な命令に翻弄されてしまった長門さんの精神的屈辱を考えると、これは 並大抵の罰では済まないかもしれませんね」  黙れ古泉。にやけた顔でこっちを見るな。 「あ、あの〜。キョン君も誤解だって言ってますし、何かの間違いでは……」 「ミクルちゃんは黙ってて」  俺の唯一の味方だった朝比奈さんには、俺同様に発言権が無いらしい。 「それでは、このような罰は如何でしょう? まずは、」  そこまで言いかけたところで、突然部室のドアが開いた。 「……?」  誰もが何事か、とドアの方に振り返ると、 「…………膀胱からあふれ出た尿によって、下着に若干の染みができたものと思われる」 「報告しなくていいから早くトイレに行け!」 「…………漏らしたら報告をしろと言ったのは、あなた」  めまいがしてきた。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 20:49:00.68 ID:p2y/WPvt0 「キョン! これはどういう事なの!」 「おやおや、尿意を我慢しろというだけならまだしも、失禁したことを報告することまで義務づけているとは。 これは言い逃れが出来ませんねえ」 「キョンくん……ひどい」  ハルヒと古泉だけならどうでも良いのだが、あろうことか唯一俺の味方であった天使のような朝比奈さんまでが 俺のことを疑っている。というか、明らかに古泉によって誘導されている。 「ちょっと待ってくれ、みんな。これは陰謀だ!」  俺はそんな事を長門に言った覚えなんて一切無い。これは確実にハメられている。一体誰に!? 「そういえば、長門さんはこうも言っていましたね。『我慢するように言われてから二十時間が経っている』、と。 現在が午後の四時ですから、二十時間前となると昨夜の八時頃になりますが? 長門さんは時間に正確な 方なので、きっと誤差はないでしょうね」 「そう言われればそうね、古泉君。目の付け所が違う、流石は我がSOS団の副団長だけあるわ」 「恐れ入ります」  待てお前ら、一体何を二人で早合点しているんだ。 「つまりキョン、あんたはわざわざ昨日の夜、ユキの家に電話を掛けてまでそんなつまらない事を命令した って事になるのかしら?」 「いえ、もしかしたら、彼が直接長門さんの家に訪問していた可能性も……」  二人して安っぽいサスペンスドラマのように、真犯人がほくそ笑んでいる隣で無実の人間の罪を膨らませるん じゃない! というか、俺にはその時間のアリバイが、 「そうだ、俺は昨日の夜八時にアリバイがある!」 「ほう、聞きましょうか」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 21:06:12.49 ID:p2y/WPvt0 「俺は昨日の夜八時、確かに家のリビングでテレビを見ていた。妹としゃみせんが一緒に居た事を 証言してくれるはずだ!」 「残念ながら、あなたの妹さんほど幼い方の記憶では、あまりに曖昧すぎて証言としては採用出来ない でしょうね」  うるさい古泉、黙れ。お前は何で検察気取りなんだ。 「それにキョン、携帯電話を使えば、リビングにいても電話くらい出来るわ」 「携帯は充電中で……」 「言い訳しない!」  話は最後まで聞け、なぜそんなに俺を死刑にしたがる、お前はどっかの皇帝か。 「では、証拠不十分ということで有罪、でしょうか?」  にやけるな、嬉しそうに言うな、顔が近いんだよ気持ち悪い。 「ま、待って下さい!」  俺の周囲を暴虐無人な二人が取り囲んで、取って喰おうとしていたその時である。俺の心のオアシス 朝比奈さんが、突如大声を上げて二人を止めてくれた。ああ、あなたは何て眩しいんだ。 「あ、あの〜、長門さんの意見も聞いてからでないと、やっぱりちょっと急ではないでしょうか?」  そうです、その通りです朝比奈さん! この人を貶めるしか頭にない二人に言ってやって下さい! 「ふん、仕方ないわね。キョン、あんたユキが戻ってきたら覚悟してなさいよ?」  取り囲んでいた二人がヤレヤレだぜとばかりに俺の周囲から距離を置いて、そんな様子を見た朝比奈さんは 柔らかく俺に向かって微笑んでくれる。ああ、癒しとはあなたの笑顔の事を言うのですね、朝比奈さん。 「キョン? 最有力容疑者であることに変わりは無いのに、一体何をニヤニヤしているのかしら?」  俺の心の安らぎに対してハルヒがもの凄い形相で睨んでくる。お前は一体、どれだけ俺の安らぎを邪魔すれば気が済む。  ハルヒがメイド姿の朝比奈さんと俺の間に割って入ってこっちを睨んでいると、不意に部室のドアが開く。 「ユキ、戻ったの?」  ハルヒがそう言って向かったドアの先には、手に白い布を握った長門が立っていた。 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 21:48:06.59 ID:p2y/WPvt0  長門の手に握られているその白い布は、明らかにハンカチと言うには厚みに欠け、更に言うなれば ハンカチとは似ても似つかない形をしている。唯一の共通点といえば、縁がフリルで象ってある程度 だろう。 「ユキ……それはもしかして」 「下着、あるいは日本においてはショーツなどという呼ばれ方をするが、パンティが一般的」  おい長門、今日のお前は随分と饒舌だな? その下着に対する飽くなき情熱は分かったから、どうして お前はそんな物を手に持っているのだ。 「あなたが要求した」 「古泉君!」  古泉は返事をするよりも早く、俺の座っている椅子の後ろにサッと回ったかと思うと、 「はい、団長」  なんて言い終わる頃には既に俺の両手を掴んでテーブルに押さえつけられていた。 「古泉! 離せ!」 「ボクとしては離しても構わないかと思うのですが、何せ団長命令でして」  うそつけ、凄く顔が嬉しそうだぞお前。 「キョン君……なんてことを」  ああ、違うんです朝比奈さん。俺はそんな変態的な要求を長門にした覚えなんて決して無いんです。 「下着に尿が付着した場合はそれを寄越せと、あなたが言った」 「死刑ね」 「ちょっと待て! 話せば分かる!」 「問答無用!」 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 22:08:10.13 ID:p2y/WPvt0  お前は犬養を暗殺した青年将校か、と文句を言いたいところであったが、そんなつまらない事を つっこむよりも俺の疑惑を晴らす方が先だということに精一杯だった俺は、 「違う、よく聞け。長門、俺はそんな命令をお前にした覚えはないぞ!」 「確かにあなたに言われた」 「いつ? どうやって!?」 「昨夜の二十時七分、あなたから電話があった」 「どうやら、涼宮さんの予想が当たりのようですね」  うるさい古泉、黙ってろ。それより先に、俺の頭を三回ほど殴っているハルヒを止めろ! 「そしてあなたはこう言った。『これから俺の許可があるまでトイレに行くな、漏らしたらパンツを俺によこせ』、と」  ちょっと待ってくれ。いくら何でも、その電話の相手は頭が悪過ぎやしないだろうか? トイレに行くな、 パンツをよこせ? 確かに少しそそる要求ではあるが、そんな要求なら電話なんてまどろっこしい事をしないで 普通に長門の家に行けばいいじゃないか。いや、むしろ行くべきだ。行きたい。 「あんたねえ、反省の色が見えないんだけど」 「だから俺じゃないって言ってるだろ!」  全力で否定する。 「大体、そんな命令をするんならお前らの前では黙っておけって言うだろうが普通!」 「ハッ、どうだか。あんた、バカだもん」  バカの一言で片づけられたら警察はいらない。 「…………」  ふと、長門が無言でこっちに近づいてくる。そしてその小さく、握られたパンツにも負けないくらい白い腕をこっちに 差し出し、 「……あなたには、必要」  パンツを俺の鼻先に突き出してきた。 「くれ!」 「死ね!」  四度目のげんこつが俺に振り下ろされた。 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 22:21:11.57 ID:p2y/WPvt0 「これは尚更、弁明の余地は無くなりましたね」 「ちょうど良いわ。この機会に、思いっきりストレスを解消しましょ」 「それは大変よろしいかと」  お前ら、人をサンドバッグか何かと間違っているんじゃないのか? オイ。それに古泉、さり気なく自分の 仕事を減らそうとするんじゃない! 「あの〜、長門さん」  ああ、愛しのマイエンジェル朝比奈さん、あなたまでこのタコ殴りの俺を見捨てるんですか? 「…………何」  パンツを握りしめたままの長門は、そんな見て見ぬふりの朝比奈さんに、鋭い視線を向けた。 「長門さんがその下着を持っているって事は……い、今は何を履いているんですか?」 「はいてない」  オーケイ、気が変わった。ハルヒ、殴っても良いから俺を床にたたきつけてくれ。出来れば仰向けがベストだ。 「こんの人でなしが!」  そんな俺の思いを無視しているのか気付かないのか、ハルヒは俺が古泉によってテーブルに押さえつけられて いるのを良いことに、遠慮無くグーで殴ってきて、決して床にはたたきつけようとはしなかった。 「あの〜、私の予備をお貸ししましょうか?」  朝比奈さん、あなたは学校に予備のパンティを持ってきているんですか、それ俺にください。 「漏らしたら一日、下着を履くなと言われた」  言ってないぞ。 「あんた、死ぬ覚悟はあるんでしょうね?」 「ふふっ、やれやれです」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 22:36:30.46 ID:p2y/WPvt0  古泉てめえ、笑っていないで助けろ。 「やれやれ、仕方ありませんね。涼宮さん、随分制裁も加えましたし、そろそろ彼の弁明を聞いてあげて も良いんじゃないでしょうか?」  先に弁明をさせろ。 「ふん、仕方ないわね。キョン、あんたの返事次第では、グーが増えるわよ?」  分かっているとも。俺だって、わざわざ殴られるような事はしたくない。 「まず、長門に確認させてくれ」 「……何」  長門は相変わらずパンティを握りしめたままの姿勢で、ドライアイスのような冷たい瞳を俺に投げかける。 「その電話は本当に俺だったのか?」 「間違いない」 「その根拠は?」 「私があなたの声を聞き間違えたりはしない」  そう言いきる長門の真っ直ぐな瞳に、迷いの色はない。 「ちょっとキョン、あんたなに赤くなってるのよ」  ハルヒ、口がアヒルになっているぞ、少し黙ってろ。 「あなたは電話の向こうで、先ほど話した内容の命令をした」  長門は淡々とそう言う。だがしかし待て、ジャスタウェイト、タイムだタイム。俺には本気でそんなことを言った 覚えが無い。それは何かの間違いに決まっている。 「あ、朝比奈さん……」 「ちょっとあんた! 何でユキの次はミクルちゃんに色目つかってんのよ!」 「ぬわーーーー!」 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 22:49:18.43 ID:p2y/WPvt0 「だ、大体! そういういかがわしいゲームをするときは、まず団長であるあたしに相談しなさい!」  一体何を言っているんだこいつは。 「ゲームを企画、進行するにあたって、ルールを管理する者は絶対に必要よ。それをまずあたしに 言わなくてどうするのよ、何のためのSOS団なのよ」  ションベンを我慢し続けて、漏らしたらそのパンティを誰かにあげるのがゲームだと言い切るのであれば、 お前は一回人生をやり直した方が良いだろう。いや、悪いことは言わない、今すぐやり直せ。というか、 いつからSOS団はゲームの企画進行を管理する団体になったんだ? 何月何日何時何分何秒地球が何回 回ったとき? 「特に、そういったいかがわしいゲームをいきなりユキで試さないの! 異常性癖の団員を矯正するのも、あたしの 役目なんだから、次からは私に言いなさいよ!」  お前はどうして我慢ノーパンをゲームだと言い張るのだ。なんだか本当にゲームのような気がしてきただろうが。 「それでは、今回の制裁はこんなものでよろしいでしょうか? 団長」  古泉、ナイスだ! 「そうね、あたしからはもういいわ。でも問題は、ユキよ。古泉君、そいつ絶対に離さないでね」 「承知しました」  オイこら古泉、さっきから助けてくれるのかそれとも俺をよりピンチに陥らせようとしているのか、どっちなんだよ。 「あはは、基本的にボクは、団長の命令を守らなくてはなりませんからね。副団長としても、世界のためにも」  世界だと? 俺のノーパン電話疑惑に世界なんてつまらないものを干渉させるんじゃない。 「ユキ、あなたもこのバカに何か報復してもいいわよ。団長権限で許すわ」 「…………報復?」  長門は俺のことを見つめている。その表情に一切の変化は見られない。言葉に疑問詞が付いていた割には、 ほんのちょっと首が動いたりすることもない。 「あの〜、長門さん。予備の下着は……」 「いらない」  即答。 「ほええぇぇ」 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 23:06:12.46 ID:p2y/WPvt0  朝比奈さん、あなたのその麗しい御手に握られた小さなポシェット、是非それを俺に下さいと言いたいところ ですが、さっきからこっちを覗き込んでいる長門のおかげでそんな邪な感情は消し飛ばされそうです。 「…………私も同じことを要求する」 「は?」  何を言った? この宇宙人の手先は。 「明日一日、あなたには放尿を我慢してもらう。漏らしたら、下着を私がもらう」 「ほほう、ハンムラビ法典ですね?」 「目には目を」  おいちょっと待ってくれ長門。真顔で一体何を言い出すんだ? 「お、俺はそんな電話してないぞ!」 「まあまあ、長門さんもそれで許してくれると言っている訳ですし、安いものではないでしょうか?」  古泉、お前みたいな奴が警察に就職したりすると、痴漢のえん罪や法廷での偽証が増えるって事が今ハッキリ とわかったぜ。 「あの……とりあえず長門さん、これを履いて下さい」 「黙って」 「は、はい」 「ユキ、それはダメよ! 明日はSOS団で不思議探しをしに街を散策する日。キョンのおしっこに一日付き合ってる 暇は無いわ」 「…………団長権限」 「うっ」  長門、お前は何で今日に限ってそんなに妙な意地を張るんだ。固いのは態度じゃなくてお前のそのクソ分厚い 本だけにしておけよ。 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 23:19:16.27 ID:p2y/WPvt0 「涼宮さん、せっかくですから、明日一日は休暇ということにされては如何でしょう? ここのところは ずっと不思議散策に出てばっかりですから、涼宮さん自身も疲れておいででは?」  古泉が何か上手いことハルヒを言いくるめようとしている。  冷静に考えて、長門に一日ションベンを管理されるのと、街を散策させられるのとどっちがマシかと言えば、 どう考えても街を一日歩く方が良い。例え俺のおごりというペナルティが付いたとしても、だ。 「まあ、そうね……少し疲れてるかも知れないわ」  ハルヒ、お前も乗るな! 「では、明日は休日ということで。お陰で、バイトの臨時呼び出しをされても対応出来そうです」  気持ち悪い笑顔をこっちに向けるな、微笑むな、ウインクするな! 「……これ」  長門も長門で、一体いつまで俺の眼前にパンティを突きつけているつもりなんだ! 「あなたには必要」 「いいえ、必要ないわ」  ハルヒ、余計なこと言うな! 長門のパンティにレースの縁取りが付いていたことが分かっただけでも 大きな収穫なのに、更にその染み付きバージョンが手に入る機会なんてモノは今後絶対に存在しないと 俺のゴーストが囁いている! いや、そのために俺は、明日一日ションベンを我慢することになったんだ、 そうに違いない! 「ユキ、一回脱いだパンツをもう一回履けとは言わないわ。だから、せめてミクルちゃんがさっきからもの凄く 逃げ腰で差し出している予備のパンツを履きなさい。これは団長命令よ」  長門はスッと朝比奈さんの方に目を向けると、おもむろにその御手に握られていたポシェットを受け取り、 そして中から純白のパンティを取り出すと、平然とそのまま足を上げて、 「おい、古泉! 何するんだお前!」 「やれやれ、ここで後ろを向かなかったら、また涼宮さんに何をされるか分かったものではありませんよ?」 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 23:33:51.63 ID:p2y/WPvt0  古泉の言うことには確かに一理どころか十理くらいありそうなので、ここは大人しく長門の居る位置から 聞こえてくる、長門の足をパンティが通過する艶めかしいサウンドだけで我慢することにしよう。 「もうよろしいでしょうか?」 「ええ、良いわよ」  やれやれ、と流石の古泉も疲れたような声を出しながら前を振り返ると、外見上に変わりは無いが、朝比奈さんの パンティを履いているらしい長門がそこにいた。  というか、よく考えたらそのパンティは素晴らしいモノだ。朝比奈さんのものであり、かつ長門の使用済みだ。  これを究極と言わずしてなんと言えば良いのか分からないくらいの品物に変身してはいないだろうか? 「キョン、あんた何ニヤニヤしてんのよ」  アヒル口は黙れ。お前のパンティに興味はない。  それにしても長門、お前が未だに握りしめているそのパンティはどうするつもりなんだ一体。 「…………」  そうですか、無言でこっちに差し出してきますか。確かに、欲しいっちゃ欲しい。だがしかし、ここで俺も無言で、 何となくサッカーの試合後に清々しくユニフォームを交換する選手のようにパンティを受け取ったら、審判の ハルヒが俺をレッドカードの病院送りにすることだろう。  だから俺がここでとる策はひとつ、 「もらって、いいのか?」  こうやって了解を取ることだ。 「キョン! 何言って……」  そんなハルヒの大声に一切の怯みを見せない水晶クオーツのような長門は、ワザと他の人物達にも分かるように 大きめに頷いて、改めてそのパンティを差し出してくる。 「仕方ないな」  俺は爽やかに溜息を吐いて、爽やかにパンティを受け取り、爽やかにポケットに仕舞ったところで爽やかにハルヒに 殴られた。 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/01(火) 23:49:50.07 ID:p2y/WPvt0 「没収よ! 没収!」 「あっ、ハルヒてめえ、なにしやがる!」  俺のポケットから長門のシミ付きパンティを奪い取ったハルヒは、それを長門に突っ返す。  長門は何となくといった感じでそのパンティを受け取ると、再び俺に向かってそのパンティを差し出してきた。 「もらって、いいのか?」  コクリと頷く長門。爽やかに受け取る俺。殴られる俺。 「あああ、キョ、キョンく〜ん」 「やれやれ、無限ループとは怖いモノですね」  外野の二人は高みの見物だ。 「だーっ! もう分かったわよ! どうしてもパンツが欲しいんなら、あたしので我慢しなさい!」  ハルヒがキレた。わけのわからん方向に向かって。 「すまん、俺の聞き間違いだと良いんだが……今、何て言った?」 「あ、あたしのパンツで我慢しなさいって言ったのよ……そ、それで満足出来るんなら、良いわよ。団員を 変態の手から守るためだもの……」  そう言ってハルヒは、両手をスカートの上でもじもじとさせはじめた。 「ほほう……」 「あわわわわ、涼宮さ〜ん」  外野は相変わらず楽しそうだ。だがしかし、 「ハルヒ………」 「な、何よ。団長のパンツよ? 逆立ちして感謝しなさいよね」 「いや、お前のはいらん」  ビンタが炸裂した。 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 00:02:07.74 ID:PaAQzQM60  思いっきり放たれた平手打ち通称ビンタは、俺の顎を捕らえクリーンヒット。もの凄い勢いで 顔が潰れたかと思うと、頭がぐわんぐわん揺らされて一瞬立ちくらみを起こす。 「何しやがる!」  鼻の頭が痺れているような気もするが、辛うじて立っていられた。 「……帰る」 「何?」 「今日は帰るわ」  ハルヒはうつむき加減でそう言うと、団長の椅子から鞄とコートをひったくってきびすを返す。 「あ、涼宮さん……」  朝比奈さんの気遣いに満ちた声にも全く反応を示さず、そのままハルヒはズカズカと部室から出て行って しまった。  一瞬、静寂が部屋に満ちる。 「やれやれ、今夜は臨時のバイトが入るかも知れませんねえ」  古泉は両手に盆でも持っているのかというポーズで、大げさに溜息を吐いた。 「キョン君、さっきのはちょっと言い過ぎかもしれません」  朝比奈さんは困ったように、俺のことを見ている。 「………………そんなに怒るなよ」  冗談とかではないが、わざわざハルヒにそんなことをしてもらう必要が無いと思ったまでだ。俺の考えは 正しいと全国の皆さんに理解してもらえるだろうよ。  それにしても、さっきの平手は効いた。  俺は未だに引かない頬の痛みに耐えながら、長門が差し出してくるパンティをポケットにしまい込んだ。 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 00:17:27.60 ID:PaAQzQM60  団長が帰ってしまったため、部活は中止の雰囲気だった。  古泉は早速携帯に着信が入ったために「バイトが入りました」といって早々に帰ってしまい、朝比奈さんも どこか居心地悪そうにしていたので、解散という運びになった。  そして帰り道。俺は何故か長門に連れられて長門の家に向かっていた。 「なあ、長門。本当に電話の向こうは俺だったのか?」  長門は振り返ることもなく、 「間違いない」  そう言って聞かないのだ。  やがて長門の家に着き、前回と同じようにリビングのこたつで二人で茶を飲む。  最後の会話から随分と無言の時間が続いたが、長門が八杯目の茶を飲み終わったところで、ようやく会話が 生まれる。 「あの電話は、未来から来たあなたによって私に掛けられた電話」  突然、意味不明なことを言い始めた。 「な、何だって?」 「恐らく、あなたは朝比奈ミクルと共に近いうちに時間を旅することになるだろう。そしてそのおりに、私に先ほど 話した内容の電話を入れる」 「待て、言っている意味がわからん」 「私の下着には、何かメッセージが残されているはず」  下着にメッセージ? 元々ぶっ飛んだ奴だったが、更にぶっ飛んだことを言い始めた。  この下着には長門の使用済みに加えてシミ付きという最高のプレミアが付いていることは疑いのないことだが、 どうしてそれを未来の俺が支持するのか。 「………もしかして」  未来の俺グッジョブ? 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 00:30:38.64 ID:PaAQzQM60 「ごく近い未来、もしかすると今夜にも、世界に大きな変化が起こるかも知れない」 「もしかして、さっきのハルヒの態度に関係があるのか?」 「否定はしない」 「半分はお前のせいだぞ」 「きっと、それすらも見越して、未来のあなたは電話をかけてきた」  ダメだ、コイツの言っていることがさっぱり分からない。とりあえず今の俺にあるのは、ブレザーの左ポケット に入っている長門の使用済みパンティープラスシミ付きだ。 「あなたには、それが必要。信じて」  長門はそれっきり黙ってしまい、二人で見つめ合ったまま過ごす長い時間が始まった。  互いに何も言わない、言えない。時計の針の音は刻一刻と過ぎていくのに、俺は長門の予言に対してどのような リアクションを取ったらいいのか分からない。  というか、本当なら長門のパンティを堪能したい。だが、本人の前では流石の俺も無理だ。そうだろ? 「…………………」  長門は既に、一時間近く沈黙したままこっちを見ている気がする。心なし、こたつのせいか顔に赤らみが刺して いる気もするが…… 「…………長門?」  俺にしか気づけないほどに僅かな長門の変化に、少し焦る。 「……………」  長門は黙ったままだ。 「おい、様子がおかしいぞ、どうしたんだ長門!?」  長門の顔は、更に紅色に染まっていく。 「おい、長門!」  こたつから飛び出て、長門の体を支える。ぐったりと力が抜けていて、既に自分でコントロールが効かないみたいだ。 「何? 何だ、どうした?」  何か喘ぐように口を動かす長門に耳を近づける。 「………………………放尿の…………許可を」  とりあえず、一発頭ををハリセンで殴っておいた。 139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 00:44:07.41 ID:PaAQzQM60 「八杯もお茶を飲むからだ。今度から控えろよ?」  長門をトイレに連れて行ってから、こたつに戻る道中で長門に言い聞かせる。  後ろを付いてくる長門は、コクリと俺にしか分からない頷きで了解し、二人して再びこたつに入った。 「…………」 「…………」  再び、無言の時間が始まる。そう思ったその矢先、 「………これ」  長門が何かを差し出した。  小さくて白い手に握られたその何か。確認するまでもなく、パンティだ。 「お、俺に?」  長門は頷く。  そのパンティは、先ほどまで長門が履いていたパンティ。即ち、朝比奈さんの持ち物であり、 「少し漏らした」  長門のシミが付いた最強最悪レベルを地でいってしまう宝具とかギアスとかもうどうでも良くなってくるレベルの 最強のアーティファクトである。何を言っているか分からないだろうが、俺にもわからん。 「お……俺に?」  問いに、長門は少しだけ頬を赤らめながら、 「…………あなたには必要」  そういって、こたつのテーブル越しに神のパンティを差し出してくる。  あまりにもその光景が神々しくて、俺には直視出来なかった。  しかし、俺にはそのパンティを手にする理由がある。未来の俺が、そうしろと俺に囁いているのだ。  意を決して、長門の差し出す神のパンティを手に取る。  握った瞬間、何かパワーのようなモノが溢れ出してきた様な気がするが、とりあえず未来の俺マジでグッジョブ。  得た力を右手に感じながら、俺はパンティを右ポケットに仕舞った。 142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 00:51:28.86 ID:PaAQzQM60 「…………あれ?」  長門から受け取った、神のパンティをポケットに入れた瞬間、急激な眠気が俺を襲う。  バカな、夜の楽しみはこれからだっていうのに、眠ってたまるものか。  いや、まさか…… 「長門……睡眠薬を………」 「違う。これは、涼宮ハルヒがあなたを呼んでいるサイン」  何だって!? 「あなたは、夢の中で涼宮ハルヒと出会うだろう」  長門の氷のような視線から目が離せない。しかしその一方で、俺の脳を蹂躙するような眠気が襲ってくる。  さっきビンタを喰らった瞬間のように、ぐらぐらと頭が揺れて、鼻の頭が痺れるような感覚。  長門に貰ったパンティを握りしめながら、意識が混濁としていって、やがて真っ暗な世界に体が投じられるように 俺の意識は長門の部屋から消えていった。 151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 01:06:59.85 ID:PaAQzQM60 「キョン……キョン!」  誰かが俺の頬を叩いている。いやだ、まだ眠いんだ。寝かせてくれ。 「起きてよ!」  鼻をつまむな、苦しい。 「キョン! 起きなさいってば!」  でこピンの衝撃で目を覚ます。 「やっと起きたの?」  勝手に起こしておいてその言いぐさは何だ。俺はもう少しで長門と良い雰囲気になったりしたりしなかったり するかもしれない程に重要な夢を見ていた気がするんだ。起こすな。 「さっきまで部屋で寝ていたハズなのに、目が覚めたらこんなところに居たの……」  こんなところ? どんなところだ。  そういえばさっきから背中が妙に痛い気がする。何だこれは? コンクリートの打ちっ放しか?  どうしてそんなところに俺が、さっきまで俺は何をしていた? いかん、思い出せない。  当たりを見渡してみる。 「ここは…………」 「ランジェリーショップね」 「アホかあああああああ」  俺は全力でこの世界に突っ込んだ。 156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 01:17:25.83 ID:PaAQzQM60  何でランジェリーショップなんだ、何が悲しくて未使用の下着を見て歩かなければならんのだ。  しかし、ここの雰囲気にはどこか見覚えがある気がした。 「……よく見れば、これは北高の近くにある可愛い下着からファンシーでアダルトな奴まで揃うと噂の下着屋さん じゃないか」 「……あんた、詳しいわね」 「谷口情報だ」 「はぁ〜、男子ってバカね」 「国木田も似たような反応だったよ」  ともあれ、学校の近くにある小さな店だ。どっかしらに出口が必ず存在するはずだ。 「ハルヒ、とりあえずここから出よう。手分けして手口を探そうぜ」  しかしハルヒは、ここから動こうとしない。 「……ハルヒ? どうした」 「ねえ、キョン」 「何だよ」 「こ、ここにある下着の中で、あんたが一番好きな下着って、どんなの?」  意味不明なことを言い始めた。 「何を言っているんだ、お前は」 「……あんたがあたしの下着を拒絶するからよ。どんな下着だったら、ユキやミクルちゃんに危害が及ばないかを、 団長としてリサーチする義務があると思ったのよ」  そんなもんをリサーチしてどうする。結局、下着なんていうのはそれを履いている人間による付加価値が最も 大きいと言わざるを得ないだろう。  どんなパンティを履いているかではなく、誰がパンティを履いているかというのが最も重要なことであり、どんな パンティであるかはあくまで二番目でしかないのだ。 169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 01:25:14.27 ID:PaAQzQM60 「とにかく、あたしがどんな下着を履いていたらあんたはそれを欲しいと思うのか、とっとと言いなさい!」  人にモノをお願いするにしては、随分と態度がでかいじゃないかハルヒ。 「そうだな……」  その時、俺の視界に赤い小さな発光物体が目に入った。 「…………少し見ながら考えるから、その辺を歩いてくる」 「えっ、ちょっと」 「すぐに戻ってくるよ」  そう言って、ハルヒの元を離れた。  しばらく、小さいようで意外に広い店内を散策する。どうやらハルヒは、最初の地点から動く気がないようで、 それはこっちにとって非常に都合が良い。 「……古泉か?」 『ええ、ボクです』  ハルヒが視界に入らなくなった当たりで、古泉を自称する赤い発光体は、俺の前に姿を現した。 『再び、あのときと同じ事が起こっています』 「ハルヒが、世界を作り替えようとしているのか?」 『その通りです』 「んで俺たちは下着屋に閉じこめられるのか? 冗談じゃないぞ!? ここには未使用の下着しかない!」 『おやおや、あなたの他に、涼宮さんが居られるんですよ? もし頼めば、このフロアにある全ての下着を使用済みに して貰うことも、不可能ではないと思いますがね』 「笑えない冗談はよせ」 『おっと、これは失礼』 174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 01:33:28.95 ID:PaAQzQM60 「俺たちが元の世界に戻る方法を教えろ」  相手が単なる赤い球体なので、胸ぐらを掴んだり出来ないのが残念だ。 『ははっ、それならば以前にもあなたが実践したことがあるじゃないですか』 「冗談はよせ」  いくら夢の中とはいえ、あの手段を二度も三度も連発したいとは思わない。大体、そういうことはたまに するから良いんじゃないか。ホイホイやってたら希少価値が無くなる。 『申し訳ありませんでした。ですが、僕たち機関にはどうすることも出来ません。それは以前に話した通りです。 あなたがすべき事は、涼宮さんを元の世界に戻りたいと思わせることです。そして今回のこの状況。自ずと答えは 見つかると思いますが?』  つまり、下着を選べと? この未使用下着の山の中から? 「……キョン、キョン?」 『おっと、涼宮さんがこっちを追いかけてきた様ですね。ボクもそろそろ、持続出来る時間を超えそうですし…… 今回もあなたにお任せすることにしましょう。上手く行くことを信じていますよ。それでは』  古泉の声を発する赤い発光体は、そう言ったっきり暗闇の中に霧散してしまった。 「キョン? どこにいるの?」  ハルヒの声が、俺に近づいてくる。  考えろ。俺とハルヒが、この世界から抜け出す方法を! 『……あなたには、必要』  長門!? 181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 01:40:57.53 ID:PaAQzQM60  頭の中を掠めた声に導かれるように、俺はブレザーの左ポケットに手を突っ込み、その中に収められていた 純白のレースで縁取られた神々しい布を手に取る。  そしてそれを目の前で大きく広げる。そこには、長門のシミが確かに残っていた。 『YUKI.N>見えてる?』  あいつ、いくら何でも器用すぎるだろ。  両手で掲げた長門の真っ白な下着には、長門によって付けられたシミがハッキリと残っていた。  俺へのメッセージとして。  だが前回と違うのは、俺と対話が出来る状態ではないこと。そして、コンピュータのディスプレイとは違い、 表示出来る情報の量が格段に少ないこと。  だから、パンティのシミは次の文章で終わっていた。全部でたった二行の、あいつのメッセージ。 『YUKI.N>また、使用済みのパンティを』  待て待て、お前と使用済みのパンティを『また』なんて言えるほど取引した覚えは無いぞ。  いや、したいけどさ、無理だろ、色々と。ほら。だろ?  長門の使用済みのパンティ。それは今、俺の手に握られているこの一枚っきりで…… 「キョン?」  慌ててパンティをブレザーのポケットに押し込む。  危ない。こんなモノ見られたら、マジで世界を崩壊させかねないアホが一人目の前似ることを忘れていた。 186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 01:49:28.23 ID:PaAQzQM60 「キョン…………見つかった?」  ハルヒは、いつものハルヒに似合わないくらいに弱々しい笑顔で、こっちを見ている。  やめてくれ、そんな目で俺を見ないでくれ。  お前はいっつも自信満々で、それでみんなに迷惑掛けるけど、それでもみんなが一緒にいて楽しいって 思えるような団長だったじゃないか。  それが、そんな顔をしないでくれよ。  ハルヒは、笑っている方が似合うんだから。 「…………?」  長門のパンティを必死で隠した、ブレザーの右ポケット。俺の手に握られたパンティ以外に、何か一つ 別の感触を見つけた。  よく似ている。けれど、違うパンティ。これは……  朝比奈さんのパンティ、そして長門のシミが付いたパンティ。 『YUKI.N>また、使用済みのパンティを』  ハッとなって、右手を引き抜く。  手には先ほどの長門メッセージパンティではなく、朝比奈さんパンティが握られていた。 「……キョン?」 「あのな、ハルヒ。俺、ここ数時間だけだけど、もの凄く面白い時間を過ごしてたんだ」 「何……言ってるの?」 「お前は知らないかもしれないけど、お前のパンティなんて欲しくないってキッパリ言ったばかりだったのに…… スマン、ありゃ嘘だった」 191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 01:56:29.22 ID:PaAQzQM60  ハルヒはパンツを片手に握りしめた俺の演説に、虚を突かれたような顔をしている。  俺はハルヒの方を掴んでこっちを向かせ、 「俺、実はポニーテールのハルヒが長門の使用済み朝比奈さんのパンティを履いておもらししてる姿萌えなんだ」 「なに?」 「いつだったかお前の朝比奈さんへのセクハラ、反則的なまでに鼻血が出たぞ」 「バカじゃないの?」  俺もそう思う。確実にバカだ。 「だから、この長門の使用済み朝比奈さんのパンティを、履いて欲しい」  俺は右手に握りしめた、長門と朝比奈さんの温もりを感じるパンティをハルヒに差し出す。  正直言って、手が震えた。  これを差し出すことで、世界を終わらせてしまうかも知れない。  だけど、この瞬間を逃したら、二度とこんな最高な好機が来ないんじゃないかって、俺のゴーストが囁いてる!  全力で手渡せ! 「……ハルヒ」  ハルヒが、俺の右手からパンティを受けてとる。  そして、 「バカー!」  ビンタ再び炸裂。 「ですよねー」  俺は床に倒れ伏した。 209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 02:11:23.49 ID:PaAQzQM60  冷たいタイルの味を感じる。さっきはコンクリートの打ちっ放しかと思ったが、普通にデパートみたいな タイルが使われているのはさすが下着店。その根拠は不明だ。  終わるのか。世界は作り替えられてしまって、この小さな下着店の中で二人はアダムとイブなのか!? 「長門……朝比奈さん……鶴屋さん……古泉……国木田……お前達に、もう一度だけ、会いたかった……」  俺はビンタの痛みが顔の左半分を侵略しているこの状況に甘んじながら、世界が変わっていく瞬間の 片棒を担がなくてはいけないのか……  いや、確実に俺のせいだ。  世界が変わってしまうのは、意味不明な要求をハルヒや長門に強いた俺のせいに違いないんだ。 「すまない……主に鶴屋さん……」  懺悔が頭を駆け巡る。悔やんでも悔やみきれない、未使用パンティの山のなかで、世界は終わる。  そんなとき、床にうつぶせに伏している俺の背後から、ハルヒの声が聞こえた。 「……絶対に、こっちを向くんじゃ無いわよ」  ハルヒ……お前、何を言ってるんだ? 「いいから! 絶対にこっちを向くんじゃないわよ!」 「わ、分かった」  突然のハルヒの大声に、思わずからだがすくむ。  やがて、俺の背中の上では、衣擦れの音が聞こえてきた。  あの部室のなかで長門がパンティを履き替える音を聞き分けた俺には分かる。この音は……  ハルヒが、パンティを脱いでいる。 228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 02:20:54.30 ID:PaAQzQM60 「ハルヒ……お前!」 「良いから! 絶対に、そこから動かないで」  俺の背中のたった一メートル上で、ハルヒがパンティを脱ぎ終えて、その脱ぎ終わったばかりの布を、床に伏す 俺の目の前に、ポイッと投げ捨てる。  長門や朝比奈さんと同じく、そのパンティはレースで縁取られた純白の一枚だった。 「あんたに……あんたになら見せても良いと思って履いていた一枚よ。感謝して見なさい!」  声の語尾に、ほんの少しだけ水気の混じったような音が聞こえた。  もしかしたら、ハルヒは泣いているのかも知れない。床と睨めっこしている俺にはうかがい知れない事だが。  それに続いて、第二の衣擦れの音が聞こえる。  これは…… 「履いているのか? ハルヒ」 「そうよ。あんたの希望通り、ユキの染み付きミクルちゃんのパンツを履いてるわ。まったく、こんなののなにが 良いんだか……」  ハルヒは悪態をつきながら、シュッとパンティを股の付け根まで持ち上げてしっかりと装着すると、 「いい? 座るわよ?」  と言って、俺の背中に遠慮なく腰を落としてきた。  そりゃもう、俺の肺の中身を全部はき出させようとしているとしか思えない勢いで、思いっきり。 「ぐげぇ!?」  遠慮しろ、ハルヒ! 俺の背中はロデオボーイか何かじゃ無いんだ! フツーの高校生の背中だぞ! 「……いい? これから起こることは、全部夢の中のことなんだから」  ハルヒはそう言って、俺の肩を掴む。 243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 02:28:24.37 ID:PaAQzQM60 「んっ……」  ハルヒが、何やら気合いを入れる声を発している! 「おい、ハルヒ! まさか!」 「こいういうのが、あんたの萌えなんでしょ!?」  ハルヒの怒声と同時、俺の背中に広がる暖かい感触。  濡れるブレザー、震えるハルヒ、聞こえる何かしらの液体が漏れる音。  何が起こっているのか。考えるまでもない。  さっき俺がハルヒに要求した全てが、俺の視界の外で、しかし俺の体感の中で、起こっているとしか 言いようがない。  ハルヒが、長門の使用済み、朝比奈さんの、パンティを履いて、ポニーテールは? ポニーテールなのか!?  背中を伝っていくこの温もりは何だ! 今までに感じたことのないこの神秘こそが、ハルヒの作り出した世界を 満たす羊水のように神秘的で。  俺の意識は果てしなくどうでも良いところに誘導されて、そして背中を広がっていくハルヒの体から排出された 正に神としか言いようのない液体に浸されて、俺の体は不意に無重力化に置かれ、そしてぐるぐると不気味な感覚 を味わったあとで……  長門の部屋だった。 「……首、吊って良いか?」  長門はノーパンで俺のズボンを脱がしていた。 270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 02:41:23.17 ID:PaAQzQM60 「というか、お前は何をしている」  長門は相変わらずの液体窒素のような瞳で、こっちを見つめている。 「……失禁」 「はぁ?」 「あなたは放尿をした。私の許可無く」 「待ってくれ、世界を救ったんだからノーカンって事にしてくれ」 「……駄目」  冗談きついぜこの対有機生命体何とかは! 「下着を私に差し出すべき」 「アホか!」 「アホではない、報復」 「お前、さり気なく苛ついてたな!?」 「私に苛つくという感情は無い」 「嘘をつけ!」  結局この後、長門とのパンティの取り合いを展開した俺は、当然宇宙人の手先に勝てるわけもなく、 夢を見ている過程で失禁してしまったトランクスを長門に取り上げられるハメになった。  ああ、ノーパンで家に帰れと言うのかこの鬼は。 278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 02:47:07.06 ID:PaAQzQM60  そして俺がノーパンで家に帰った翌日。  いつも通り、朝の教室に入ると、ポニーテール姿のハルヒが、俺の席の後ろに座っていた。 「よう、元気か?」 「元気じゃないわね。昨日、悪夢を見たから」  ハルヒは平坦な口調で答える。それは奇遇なことがあったもんだ。俺も、甘美のような悪夢を見たんだ。 「お陰で体が火照って、全然眠れやしなかったのよ。今日ほど朝から……いえ、学校を休もうと思った日は初めてよ」 「そうかい」  鞄を置いて椅子に座り、不機嫌そうに外を見ているハルヒに声を掛けてやる。 「似合ってるぞ。それに、良い気持ちだった」  答えはいつも私の胸のに〜                          Fin 280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 02:47:59.64 ID:PaAQzQM60 なんか訳のわからん展開になった…… 本当はもうちょっと違った感じだったんだが、まあ良いか 酔った俺にはこれが限界だ >>277 パイパンに決まってるだろ! 286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 02:48:56.49 ID:PaAQzQM60 あぁ、因みに、所々原作の小説から引用をしてるところもあるが、気にするな