ハルヒ「キョンのバカ!あんたなんか死んじゃえ!」 171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 06:29:03.39 ID:nlhxijkl0 窓の外、流れる雲に思いを馳せる俺 「キョンのバカ!あんたなんか死んじゃえ!」 叫ぶ彼女、窓の外からなにごとかと俺に視線を送る通行人。 俺は適当に苦笑いを通行人に送りつつ、定番のため息をついて振り向く。 これ以上無視しても解決はしないし、俺の後頭部に硬質的な何かが飛んでくるのも時間の問題だろうて? 「はいはい、外に思いっきり声がいってるから、少し静かにしてくれ」 と言おうとしたのは俺、実際言えたのはその半分あたり 俺の台詞を中断したのは俺のプラスチック製の目覚まし時計で どうやら俺の考えていたよりも彼女は早く物を使った実力行使に出たらしい 高速で迫るそれに額を著しく痛めた俺は、結局台詞の半分を言ったところで地に伏せた 172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 06:34:01.52 ID:nlhxijkl0 「ふん!」  自分の鞄をつかみ、俺の醜態に目を向けることも無く どたどたと部屋をでて行ってしまった彼女、涼宮ハルヒ 俺は砕けてもはや本来の存在意義を失くした目覚まし を片手で拾い上げ、もう片方の手を額にあてたまま立 ち上がる。 「…ちっくしょう、自分の腕力ぐらいキチンと把握しやがれ」  本人がいたらさらになにか飛んでくるような愚痴を吐き つつ、鏡に目をやって紅くなった額を撫ぜる。正直血が出 てないのが逆に怖い、頭は内出血のほうが危ないのだ。 175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 06:58:09.34 ID:nlhxijkl0  これは多分明日には青紫のたんこぶになっているだ ろう、それでもまぁなにもしないよりか…と思い、少し冷 やそうと氷でもとりに台所に向かおうとする。 バン  玄関が勢いよく開いた、2DKの家の性質上当然台所 というよりかは冷蔵庫に近づくと当然玄関にも近いわけ で、思いっきり開いたドアの音を至近で聞いた俺は、反 射的に肩をすくめ、飛び上がりかけた。ってか実際手に 持ってた氷は落として、ものすごい勢いで玄関に振り向 いた。 「これ!」 「いてっ!」 176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 06:58:30.30 ID:nlhxijkl0  玄関の蝶番を壊すためだけに再来したのだろうかと、 その場で動かないハルヒを眺めていると、掛け声と同時 に俺にまたもやなにかを投げつけ バン  また勢いよく玄関を閉めて去っていった。まったく嵐の ような女である、さっきの目覚ましでは腹の虫が治まら なかったのだろうか? 頭をひねりながらも、しかし先ほ どの二撃目にぶつかったものの軽さの正体を確かめる べくとりあえず足元に目をやった。 「……あとで謝らないといけないな」  俺は足元の冷却シートを拾い上げながら部屋の上着に 入ってるはずの携帯を頭に浮かべた。 177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 07:11:08.45 ID:nlhxijkl0 ピッピッピッ 『電源が入っていないか、電波の届かない場所にいるためかかりません』  ……これは、俺が思ってるよりハルヒの怒りは大きい らしい。謝罪を受け付けませんサインだ、こうなると最低 三日は無視される。メールも見ないで消される。確実。 「ふぅ、仕方ない。怒らせたのは俺の責任か、まったく世知辛い」  携帯の画面を見て、そして忌々しげに電源ボタンを ワンクリック、文明の利器も女の機嫌には勝てん。 俺は携帯を上着のポケットに戻してから、ハンガーに 上着をかけてさらに壁のフックにかける。いつもなら 休みのこの時間帯ハルヒがいない時はゲームの一 つでもやるか、妹が友達を連れて遊びに来たりと、 まぁ暇つぶしには事欠かないのだが。ハルヒがくる 事は前から知ってたので妹も今日はこないし… 179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 07:39:36.53 ID:nlhxijkl0  寝転がる。天井は木目調、少し古い感じがまるだ 、…起き上がる、ダメだな、ゲームやる気にはなら んしどうしたものか。  きょろきょろ部屋を見渡すと机の下に一冊の雑誌 なんだこりゃ俺の持ち物でないことは明らかなのだ が誰のだろうか、さっきまでハルヒがいたことを考え れば奴のだろうが…、どうにも確信をもてない。昨日 は朝比奈さんと鶴屋さんコンビと少し飲んだし、他に も俺の家はこの年で一人暮らしをしてるので人の出 入りは実は結構多い。 「……あぁ、なるほど、やっぱりこれは俺がいけないんだろうな」  『新デートスポット!』だのなんだの怪しさ大爆発の ネーミングの帯やらをつけられた雑誌には、先ほど話 題に上がった、オープンしたばかりの遊園地情報が 色々と書かれていた。ハルヒがこんなものを読むという 事実に驚きもしたが、それ以上にさっき俺がした無遠慮で 無思慮な発言に頭を抱えたくなる。 180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 07:49:04.93 ID:nlhxijkl0  幸いにもハルヒが先ほど指定した日時は一週間後 ハルヒの怒りが解けるまでの時間を考えても余裕の タイミングだ、俺は雑誌を開いてページを流し読む、 所々にボールペンで乱雑にマークをつけてる所があ ればそこには特に目を通しておく。 「しっかし、落ち着いて考えるとやっぱり意外だよな」  つい、しみじみと思ってしまった ―7日or3日 279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 18:18:01.98 ID:nlhxijkl0 >>180 間持たせに続ける  次の日、という区分が必要なのかどうかよくわからんが、まぁ とりあえず一日たって翌日。予想通りに額にたんこぶを作り起 きて早々にブルーな俺、正直これでは家の外に出る気ならん、 買い物をこの間してて良かった。 「…とりあえずなにか食うべきだろ」  圧倒的空腹感を収めるべく俺は冷蔵庫に向かって適当に朝食 を作ることにする。とりあえずパンをトーストにして、卵を冷蔵庫 から二つ取り出す、フライパンに油を引いて弱火で暖めてる間に 卵をボールで溶いて、水を一滴飛ばせばすぐに蒸発する程度に なったら卵を焼く、形は薄くなり過ぎなければこの際どうでもいい 、皿を取り出して狐色になったパンにマーガリンを塗ってその上 からマヨネーズをのせる、パンの方はこれでいい、あとは火の通 った卵に塩コショウをしてフライ返しを使ってフライパン上で二つ に切り、二枚のパンにのせる。 「いただきます」  誰もいなくてもこれは言うのが礼儀だ 282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 18:37:59.73 ID:nlhxijkl0 「…ご馳走様でした」  実際日本人て面白いよな、感謝の気持ちなのはわかるけど、 精進料理を始めて食べた中高生がどんな気持ちでご馳走様と いってるのであろうかと思考を働かす、きっとコンビニでなんか しらの食料調達することであろう。 「キョン君ー居るー?」 「居ない」  昨日あれだけ来るなと念を押したのでその反動で今日来るだろ うと思ってはいたが、まったく想像に容易い思考回路の妹で助かる 、妹は俺の返答に聞く耳持たず「あがってあがってー」と景気のいい 台詞を吐いている。ここは俺の家だ、そこは履き違えてはいけない。  だが妹を含めた合鍵を持ってる連中はみな一様に自宅のような振 る舞いをする、なんだろうか、親しき仲にも礼儀は必要だと五右衛門 も口をすっぱくして言ってる。知らんが。ってか五右衛門だれだ。 「勝手に上がるな、せめてノック程度はするように前から言ってあるだろう?」 293 名前:流れがカオス[] 投稿日:2008/03/29(土) 19:58:57.26 ID:nlhxijkl0 >>282  妹は俺が部屋からため息をつきつつ現れるのを見ると、チラッと こっちを見て、すぐにササッと一緒に連れてきた友達の後ろに隠れ た。 「お兄さんこんにちわです、あのお邪魔だったでしょうか?」  …ミヨキチだった、妹はミヨキチの後ろに隠れニヤニヤと嫌な笑みを 浮かべて俺を眺めてる、流石兄妹、俺の弱点をよく知っていやがる。 しかしこんにちはとな? 腕時計を見る、となるほど先ほど朝食のつもり で食べたものは昼食だったのか。 「いや、そんなことない。ミヨキチいつだって歓迎だ、ゆっくりしてくといい」 「ありがとうございますお兄さん」 「キョン君おじゃまー」 「お前は遠慮しろ」 「ミヨキチはいいのに?」 「ミヨキチは特別だ、VIPだ、お前とは違って当然だ」  ぶーたれる妹を適当にあしらいつつ、なにか飲み物の一つでもなかった かと冷蔵庫を開ける、ジンジャーエールがあるのでそれでいい。コップに氷 を入れてそれを注ぎ、先に部屋に行った二人に渡しにいく。 295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 20:05:00.15 ID:nlhxijkl0 >>293  はてさて、妹達ももうすぐ高校生、浮いた話の一つも聞かないのはどうな のだろうかと思いつつ、できたらそれはそれで兄として複雑なのでいまの状 況を受け入れてるのだが。しかしそれでも思春期の女の子、部屋に戻ると 昨日ハルヒが置いていったままの雑誌を二人で覗き込んでいた。 「これキョン君の? この間できた遊園地だよね?」  俺が机に置いたジュースを何も言わずに飲み、そしていきなり核心に程 近い台詞を吐く妹、とりあえずそれは無視して「ありがとうございます」と 丁寧に礼を言うミヨキチに笑顔で答える俺。心が休まる。 「あの、お兄さん、それでこの雑誌はお兄さんのなんですか?」  ミヨキチに聞かれたからには答えなくてはならない 「いや、違うよ、それは涼宮の持ち物の筈だけど」 「……そう、なんですか」  なぜだろう、ミヨキチの声のトーンが下がる 298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 20:21:44.67 ID:nlhxijkl0 >>295  なんだろう、地雷を踏んだ感触は無かったはずなのに……、まるで折り紙を 追ってたら地雷が出来て爆発みたいな理不尽感を覚える。がとりあえずは弁解 なにがヒットしたのかわからないから下手に動くと余計被害が広がる気もするが まぁなんとかなるだろう、ミヨキチは聡明な子だ。胸も大きい。けしからん。 「昨日涼宮がやってきて多分忘れてったんだと思う、一昨日にも高校の頃の先輩とかも来たりしたし  色んな連中が出入りするからな、もしかしたらこの間きた二人の友達とかじゃないのか?」 「えっと、聞いてないですから、違うと思います」  これは……微妙、でもまぁ少しは上がったか? まったくよくわからない、女の子 の心の機敏なんぞ、SOS団時代のハルヒの暴走並みにわからん。 「ねぇねぇキョン君、そういえばこの間言ってたゲームの新作買ったの?」 「ん、あぁそういや買ったぞ、まだやってないけどな」 「じゃあやらせてー、ミヨキチもやろうよ」  ナイス妹、お前には国民平和賞をやろう。無理だけど。まぁミヨキチもゲームの 方に意識が言ってくれればそれでいい、少しでもブルーの入ったミヨキチは見た くないからな。 299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 20:22:17.41 ID:nlhxijkl0 >>298 「ねぇねぇキョン君」 「なんだ今度は、しかもそんな小さな声で」 「…あの雑誌とハルヒちゃんって、そのおでこの怪我と関係あるでしょ?」  なんとびっくり、あの妹がこんな鋭い観察眼を繰り広げるとは思わなかった。 「…まぁな、ちょいと怒らせちまってな。ミヨキチがなんで暗くなったのかは知らんが、とりあえずフォローは頼んだ」 「了解!」  元気よく答えてゲームのセッティングに苦労してるミヨキチの手助けに入る妹、 いやはや兄が居なくとも妹は育つのだな、俺はベットに寄りかかり軋むスプリング を感じながら二人を眺め、ジンジャーエールを煽った。炭酸がきつく喉に来るが しかしそれにまさる爽快感が歩きがした。 302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 21:18:23.23 ID:nlhxijkl0 >>299 「さすがに最新版だね〜、ムービーとか綺麗」 「そうだが、これでは俺がゲームをやるとき感動が半減だな」  ベットに横になって90度傾いたゲーム画面を眺める俺、基本的に妹が操作を してミヨキチがそれを横で見てて、俺がさらにその二人を眺め、既に数十分が 経っていた、妹はキャラとかの言う台詞を聞かないので時折わけのわからない 行動を起こしたり、先に進められなくなったりするので、そういうときにミヨキチや 俺が口を出す、…しかしこれでは本格的に俺が自発的に自分でこのゲームを やりだす日は遠そうである、せっかく買ったのにこれでは大学連中との話題に もまた遅れること必至である。 「……キョン君」 「なんだ妹」 「おなか減った〜」 「…ミヨキチはどうだ?」 「え? えっと…」 「遠慮はするな」 「私はハンバーグ食べたい!」 「そうか、でミヨキチは?」 「私もハンバーグ食べたいです」 「なら俺の驕りでどこかに食いに行くか」  妹がミヨキチの手を引いて踊りだし、ミヨキチの困惑顔を尻目に、壁にかかった ハンガーから上着をとり羽織る、財布の中を確認………。給料日は遠い。