ハルヒ「キョンのバカ!あんたなんか死んじゃえ!」 145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/29(土) 01:30:35.25 ID:BvPHuWvy0 あー、いいや投下しちまえ。 「キョンのバカ…死んじゃえ…。」 夕日に照らされ、教室はオレンジに染め上げられていた。 俺は床にうつ伏せに倒れ、教室に赤い色彩を加えていく。 冷たく硬い床の感触は触れた面から俺の体にひたひたと這い上がってくる。 対照的にハルヒに刺された鳩尾はとても熱かった。 俺のすぐ傍には仰向けで、同じように腹部を刺された女子がぴくりともせず倒れている。 朝倉涼子。俺の最愛の人だ。 146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 01:39:12.42 ID:BvPHuWvy0 どれくらいになるだろうか、俺たちが付き合いを始めたのは。 最初はただのおせっかいな委員長サマだ、としか思っていなかった。 ハルヒの存在の事、長門や朝比奈さん、古泉やそして…涼子の正体。 それらを知らされ、世界の存続の為、ハルヒや皆の為俺は皆の助けを借りて 東奔西走していた。ハルヒ以外の皆の協力もあり、時には死にそうな目にも遭いながら 一日、一日と過ごして行った。 そんな中、最も親身に俺の手助けをしてくれたのが朝倉涼子だった。 長門と同じ存在ながら、全く正反対の豊かな感情と美しい容姿を持ち、任務の為SOS団に直接加担できない ながらも、俺達を支えてくれていた。 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 01:47:47.30 ID:BvPHuWvy0 俺は優しく、頼りになる存在である涼子に惹かれはじめていた。 あれは…いつだったか。今日のように夕日でオレンジになった教室。 そこでいつものように部活が終わった後、涼子に相談をしに行った。 その時、涼子は…俺に告白してくれた。 考えるまでも無かった。入学してから、俺は涼子の姿だけではなく、その内面にも惹かれて いたのだろう。俺は涼子の想いを受け止めた。 俺たちはハルヒにばれないよう、密かに付き合いを始めた。ハルヒからお呼びが無い時は デートに出かけたりもした。遊園地で、映画館で、涼子の見せた笑顔は、クラスメイトに見せる モノとは違った、俺だけの大切な笑顔だった。 150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 01:53:15.94 ID:BvPHuWvy0 いつしか、俺はSOS団の活動を煩わしく感じるようになっていた。 涼子ともっと一緒に居たい、もっと傍に居たい。だが、たった一人の厄介な能力を持った たった一人の少女の我侭の為、俺はそんなささやかな願いさえ叶えられないままだった。 自然と俺はハルヒと疎遠になっていった。古泉や、朝比奈さんから何度も警告を受けていた。 曰く「涼子と距離をとれ、ハルヒと関係を密にせよ。」。 だが、俺はその頃は既に聞く耳を持たなかった。 そして俺は部室に行くのを止めてしまった。 最後に部室を出る時…長門が悲しそうな目で俺を見たような気がした。 今日も俺は涼子との逢瀬を楽しんでいた。夕日に染まる教室の中、二人だけで 口付けを交わす。金色の光を浴びた涼子は―息を呑む美しさだった。 たった二人だけの、閉ざされた空間。 俺が涼子に愛撫をし始めた時、教室の隅からコツという小さな音が聞こえた。 そこには、ナイフを持ったハルヒが無表情で立っていた。 「キョン…なに…してるの?」 151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 01:57:00.82 ID:BvPHuWvy0 何故か…俺は冷静だった。涼子は怯えたようにはだけた胸を手で覆い、俺の 背後に隠れた。体が震えていた。 俺は怒っていた。俺や涼子を振り回す厄介者が、俺の涼子を震えさせていた事が とても不愉快で仕方が無かった。 「…見たら判るだろ?」  「子どもじゃないもん。それくらい判るわよ。」 「それなら、ここを去るべきってこともわかるだろう?…俺は涼子を愛してるんだ。」  「…なんでよ。なんで朝倉さんなのよ。」 「お前がいつもしてる事、わかってるのか?俺や涼子や、SOS団やクラスのみんなに 我侭で迷惑ばかり掛けて。皆がどれだけ苦労してるか知ってるのか?」 「もう、うんざりなんだよ。」  「…そんなの…そんなの知らない!みんなの勝手じゃない!あたしのせいじゃ…」 「違う!」 「はっきり言わせて貰おう。俺は……自分勝手なお前が、嫌いだ。大嫌いだ。」 ハルヒは肩を小刻みに震わせながら俯いていた。聞き取れないくらいの小声で何かを言っていた。 (…ちがう…ちがう…こんなの…ちがう…) (…キョンはあたしのこと…あたしはキョンのこと…ちがう…) (…ちがう…こんなのキョンじゃない…キョンじゃない、ちがう、ちがう、ちがう、ちがうちがうちがうちがうちがう!!!!!」 冷たい感触が俺の鳩尾の辺りを突き抜けた。力が抜け、床に倒れる。 続いて、涼子の短い叫び声が聞こえ、彼女が俺の目の前に倒れた。 綺麗な顔は無表情になっていて、口元から一筋の赤い液体が流れていた。 かろうじて視界を動かすと、腹部から血を流していた。僅かに、極僅かに上下するそこからは血が さらさらと流れていた。そのうち腹が動かなくなっても、少しの間血は流れ続けて、やがて止まった。 「キョンのバカ…死んじゃえ…。」 152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 01:59:54.29 ID:BvPHuWvy0 俺は 「可哀想に、あんなに血を流して、可哀想に、あんなに硬くて冷たい床に倒れてしまって。痛かったろう、涼子。」 とぼんやりと考えていた。 視界が暗くなってゆく。最初に感じていた床の冷たさはとうに無くなっていた。体は動かせず、 ただ涼子の柔らかい髪や頬を撫でてあげたくても出来ないのが煩わしいと感じていた。 ハルヒは無表情のまま 「…手、洗わなくちゃ…。」 とつぶやいて廊下に出て行ってしまった。 俺たちの返り血と床に流れた血糊のせいで、足音が「ギチッ、ギチュッ、ギチッ」と 妙な音になっていたのがなんだか可笑しかった。 不思議と死ぬのが怖くなかった。ただ涼子と離れ離れになるのが怖かった。 死後の世界、なんていうけど、そんな物があるのなら、また二人になりたいなぁ、と 朦朧としながら考えていた。 ハルヒが出て、どれくらいか―実際はほんの数分だと思うが― 目の前の涼子がムクリと起き上がった。 153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 02:06:03.09 ID:BvPHuWvy0 不思議と驚かなかった。ただ、腹は痛くないのかな?と場違いな事をぼんやりと思っていた。 涼子は俺の目を見た。無表情だった顔が、急に見下すような冷酷な微笑みになった。 「ゴメンね、キョンくん。騙しちゃって。」 …なんのことだろう?おれはもうこと葉の意味がなんだかわからなくなっていた。 「私の任務は、涼宮ハルヒの能力による情報爆発、世界の改変。」 何を いってるんだろう。 「私はハルヒや周囲の人間を観察し、いかにソレを達成するかを考えていたわ。」 「中心人物である涼宮ハルヒと、その重要な鍵であるキョンくん。あなた達になんらかの刺激を  えればその可能性はぐっと高くなる、私と私の派閥は装結論したわ。」 「でも、私が直接手を下そうとすれば、長門有希とその派閥が妨害してくる。そこで考えたの。」 「キョンくんを涼宮ハルヒに殺害させる事を。」 なにを いってるんだろう 「親切にキョンくんを助けてあげれば、きっと私の事を好きになってくれると思っていた。案外うまくいってくれたわ。」 「自分でも怖いくらい順調に計画は進んでいった。純真な女子高生を演じてあげたのに、キョンくん、 すっかり夢中になってくれて。」 「ここだけの話だけど、デートの時は楽しかったわ。それから…初めてした時のキョンくん、ふふ、可愛かったわよ?」 なに を いってる の 154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 02:10:08.68 ID:BvPHuWvy0 「見事にキョンくんと涼宮ハルヒの仲は疎遠になっていった。ふふ、詳しくはいえないけど、あの子キョンくんの事  好きだったのよ。なんだか悪い事しちゃったわね。」 「さて、私のお仕事はもうおしまい。後はハルヒが現実に耐え切れなくなってリセットをしてくれるのを待つだけよ。私の存在自体なんて、この世界ではどうとでも操作できるわ。どう?すごいでしょ?」 な にを  いって  の 「うふふ…本当の事言うとね…好きって言ってくれた時、私嬉しかったわ。とっても、嬉しかった。」 「…それじゃあね、キョンくん。おやすみなさい。……愛してたわ。」 う ん おや   す    み  な      さ -End-