デシル「今度こそフリットに勝つ」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:19:19.93 ID:5Daf6ZLR0

ゼハート「兄さん! よくぞご無事で」

デシル「何故だ… いつもフリットに勝てない!」

ゼハート「フリット・アスノも今や司令官です。一対一の戦いに拘らなくても良いではありませんか」

デシル「しかしな、こいつは俺のプライドの問題なんだ」

ゼハート「だとしても、少しは休んでください。このところ無茶をしすぎです」

デシル「そうだな。少し頭を冷やして作戦を練るとするか……」


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:21:08.28 ID:5Daf6ZLR0

——数日後——

デシル「おいゼハート! すげぇアイデアを閃いたぜ! これでフリットに勝てる!」

ゼハート「どうしました?」

デシル「お前の言う通り、向こうが大軍を率いてる以上、こっちもバックボーンを強化すべきだ」

デシル「そこでだ、戦争をちょっと控えめにしよう」

ゼハート「膠着状態にさせる、ということですか?」

デシル「ああ。地球種には火星圏まで攻めに来る技術もないから、焦らなくていいだろ?」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:25:36.63 ID:5Daf6ZLR0

ゼハート「するとそこから巻き返す策も必要ですね」

デシル「まずは戦費を最低限に抑えて、本国の経済体制を立て直す」

デシル「戦争はとにかく金がかかるからな。金回りのいい方が勝つに決まってるんだ」

ゼハート「ヴェイガン本国がより盤石になったところで再スタートというわけですね」

デシル「その間も地球種たちがヴェイガンの再来に備えて消耗するよう、見せかけができる規模の部隊だけ地球圏に残しておけばいい」

デシル「総司令の権限でそういう方向にもってけないかな」

ゼハート「すぐにとはいきませんが、検討する価値はあると思います」

デシル「頼んだ。俺も方針を煮詰めてみる。軌道に乗せたらコールドスリープに入るから、お前も後から来てくれ」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:30:40.23 ID:5Daf6ZLR0




ゼハート「お久しぶりです、兄さん」

デシル「20年ぶりか。外はどうなってる?」

ゼハート「一足先に起きて、資料をまとめておきました」

デシル「ありがとう! どれ…… ほぅ、思ったより効果あるな」

ゼハート「連邦側もヴェイガンの襲来が減っている以上、我々がいた頃のような体制を維持するのは無理があったようです」

デシル「ああ、前よりずいぶんおとなしくなってるようだな。それにしても、軍備を控えたらここまで効果あるとはな……」

ゼハート「想像以上の成果ですよ」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:34:23.67 ID:5Daf6ZLR0

デシル「ここまで来たら欲が出て来るじゃねぇか。いっそのこと、戦争をやめちまうってのはどうだ?」

ゼハート「それは飛躍しすぎです! 今までの犠牲も無駄になってしまうではありませんか」

デシル「だがお前なら不可能じゃない。イゼルカント様も年だし、そろそろ隠居させてやんなよ」

ゼハート「うまくいくでしょうか……」

デシル「年寄りの扱いには鉄則がある。余計なことは喋らず、ひたすら褒めちぎるだけでいい」

デシル「何か言われてもとにかく『すばらしいお考えです』これで通すんだ。いいな?」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:38:16.89 ID:5Daf6ZLR0




ゼハート「イゼルカント様が、プロジェクト・エデンの全権をわたしに託すと」

デシル「チョロい爺さんだな。だがこれでヴェイガンはもっと力を蓄えられる!」

ゼハート「ええ、我々の勝利は目前です!」

デシル「しかも戦争が終わったって事は、地球種相手の商売もいままでみたいにコソコソしないで、堂々とできるな」

ゼハート「プロジェクト・エデンは戦後も忙しくなりそうですね」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:40:27.40 ID:5Daf6ZLR0

——ビッグリング——

キオ「ヴェイガンとの通商条約?」

アセム「終戦にともない、連邦はヴェイガンを国家承認して、これからは仲良くやってきましょうってわけだ」

キオ「よかった…… もう戦いで犠牲は出ないんだね」

アセム「しかし父さんがおとなしく戦いをやめるかどうか」

キオ「『ワシの戦争は終わっとらん!』とか言いそうだね……」

 フシュー
フリット「その通り、まだ戦いは続くのだぞ!」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:43:24.94 ID:5Daf6ZLR0

キオ「じいちゃん! もういい加減に…」

フリット「まぁ落ち着けキオ。ワシらは軍人であり、政治家ではないのだ。国家が終戦を認めた以上、従わねばならん」

アセム(あんた粛正委員会とか作ってたろ…… よく言うよ)

フリット「そこで我がアスノ家は新たな戦いを開始する」

キオ「僕たちも含まれてるの!?」

フリット「その通り、アセムも海賊を抜けてもらうぞ」

アセム「一体何をする気なんだ?」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:44:55.66 ID:5Daf6ZLR0

フリット「アスノ家の資産と、ワシがこれまでに築いてきた人脈を活かし、地球の企業を買収する」

キオ「まさか軍需企業を買い占めるつもりじゃ……」

フリット「ヴェイガンの一般人は、火星圏でこれまで苦しい生活を強いられてきたことだろう」

キオ「そうだね。ぼくも見てきたよ」

フリット「そこで地球の商品を扱う店をヴェイガンへ進出させる。するとどうなる?」

アセム「むこうの一般人には高嶺の花だろう。とてもじゃないが、手は出せない」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:47:34.15 ID:5Daf6ZLR0

フリット「これでいいのだ。ヤツらは地球からやって来た商品を眺め、手に取る事ができるようになる」

フリット「イゼルカントの掲げる理想や、ヴァーチャルな立体映像ではないぞ。本物の地球に触れさせるのだ」

キオ「それが戦いになるの……?」

アセム「今ひとつつかめないな」

フリット「まだわからんのか!? 火星人たちは地球からやって来た品物に強い憧れを抱くようになる」

フリット「憧れはいずれ、それを生み出した地球人と、地球人たちの豊かな生活へ向けられることになる」

キオ「だから、それのどこが戦いなのかわからないんだってば」

フリット「地球種は愚かな蛮族と教えられ、信じることが、ヴェイガンの心のよりどころでもあった」

フリット「地球の豊かさを見せつけることで、その希望を完全に打ち砕くのだ!」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:51:20.32 ID:5Daf6ZLR0

キオ「それはそれで、かわいそうじゃ…」

アセム「」シーッ

キオ(父さん……?)

アセム(まぁ見てろって。年寄りの扱い方には、コツがあるんだ)

アセム「父さん! やっとわかったよ。父さんの理想としていることが」

フリット「おお、そうか!」

アセム「素晴らしい考えだ。ぜひ俺とキオにも協力させてくれ!」

フリット「うむ、事業が軌道に乗った頃合いを見て、お前に経営権を譲ろう! なにせワシもこの年だからな」ハハハハ

アセム(な?)

キオ(う、うん……)

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:56:24.14 ID:5Daf6ZLR0

——ヴェイガン——

デシル「地球との貿易を再開できたはいいが」

ゼハート「我が火星圏の主力輸出品目は鉱物資源。生産量に限界があります」

デシル「火星移民当時は地下資源の豊富な土地だからって、それを当て込んでたくらいだもんな」

デシル「しかしまさか、地球圏でこれほど好評だとは想定外だったぜ。どうにか増産する方法は……」

ゼハート「わたしも同じ事を考えてEXA-DBに何かいい知恵は無いかと探してみました」

デシル「おう、それでどうした?」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/10(水) 23:59:10.78 ID:5Daf6ZLR0

ゼハート「その昔は、Xラウンダーが遠隔操作するビットMSというものがあったようです。それを作業用に転用できないかと」

デシル「そういや昔はビットもとんでもなく多いのがあったみたいだな。となると、使える人手が一気に増えるか」

ゼハート「探知能力も鉱脈の調査に応用できそうです」

デシル「よし。なら軍のXラウンダーをそっちに使っちまおう」

ゼハート「いいのですか? いくら平時とはいえ、あまり戦力を落としすぎるのも」

デシル「そんなもん、俺とフリットが戦う分だけ残ってりゃいいんだよ! 早速新型機の開発にとりかかるぞ!」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/11(木) 00:05:46.76 ID:a56RgTGW0

——ヴェイガン一般家庭——

フラム「お兄ちゃん! 朝ご飯できたよ〜!」

フロスト「おはよう。そんなに大声あげなくても聞こえるよ」

フラム「ねぇ、ご飯食べたらジャスコ行こうよ!」

フロスト「聞いたが事あるな… この辺りにもできたのか」

母「フラム、お兄ちゃん今まで軍の仕事が大変だったんだから、休ませてあげなさい」

フラム「だって、しばらくしたら火星へ降りちゃうんでしょ?」

フロスト「そうだよ。マジシャンズ8は全員再就職することになった」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/11(木) 00:08:03.99 ID:a56RgTGW0

母「体に負担がかからないといいけどねぇ」

フロスト「磁気嵐が来る時は避難するんだよ。Xラウンダーはそうそう換えがきかないから」

フラム「次の仕事が始まるまでに、いっぱい遊んでおかないとね!」

フロスト「ハハハッ そうだな、ずっと軍にいたから、外の流行にはもうついていけないよ」

母「この辺りも地球人が進出して来るようになって、ずいぶん変わったよ」

フラム「ジャスコにスタバもあるんだよ!」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/11(木) 00:11:12.03 ID:a56RgTGW0

フロスト「なんだい、それは?」

フラム「地球のコーヒー屋さん。すっごい人気で、いつも行列なの」

母「うちの近所でもみんな行ったことあるわ。『身近なエデン』ってね」

フロスト「そんなものまでできているとは… これもプロジェクト・エデンの成果か」

母「戦争が終わって良かったよ。地球のものも手に入るようになって、みんな喜んでるわ」

フラム「スタバは注文が難しいから、私が教えてあげるね!」

フロスト「ではお願いするよ」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/11(木) 00:14:56.46 ID:a56RgTGW0

デシル「街の様子もだいぶ賑やかになったな」

ゼハート「地球からの開発援助を受け入れたおかげで、福祉も充実しましたしね」

デシル「めでたいことだ。地球種にとっても、ヴェイガンの地下資源は魅力だからな。気に入られるためにはそのくらいするさ」

ゼハート「残る問題はマーズ・レイですね。あれさえなければ」

デシル「EXA-DBも使えないのか?」

ゼハート「元来、兵器のためのデータベースですから。要素技術であれば使えそうなものはありますが」

デシル「火星圏全体へ適用できる規模へ発展させないとな……」

デシル「ん? 発展…… 進歩……?」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/11(木) 00:19:20.95 ID:a56RgTGW0

——ビッグリング——

フリット「フッ… フハハハハ!! 見てみろ、アセム!」

アセム「父さん、あんまり騒ぐとよくないよ」

フリット「これが喜ばずにいられるか!」

キオ「今度はどうしたの…… AGEシステムを貸してほしいって?」

フリット「マーズ・レイ対策の研究に、よりにもよってAGEシステムを使わせてほしいとは、よく考えたな」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/11(木) 00:23:11.20 ID:a56RgTGW0

アセム「父さん、まさか断らないだろうね?」

キオ「やろうよ! 火星の人たちは、200年もマーズ・レイに苦しんできたんだ」

フリット「当然だ! ヤツらにAGEシステムの力を思い知らせてくれる!」

キオ「よかった…… これで火星の人たちも助かるんだ」

アセム「ヴェイガンは殲滅だって、このごろ父さん言わなくなったね」

フリット「殺してしまうなど生温いわ! ヴェイガンめ、生きてワシに感謝し続けるがいい!」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/11(木) 00:27:31.01 ID:a56RgTGW0

——ヴェイガン——

ゼハート「AGEシステムの件、あっさり通りましたね」

デシル「すごいだろ? こういうのを大人の知恵っていうんだぜ」

ゼハート「さすがです、兄さん!」

デシル「まだまだやるぞ。この程度じゃ飽きちまうぜ!」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/11(木) 00:28:49.25 ID:a56RgTGW0

——一般家庭——

母「マーズ・レイの薬ができたんですって」

フラム「前からあったでしょ?」

母「新しい薬は症状を良くするんじゃなくて、治しちゃうみたいよ」

フラム「すごいね! じゃあお兄ちゃんももう安心して働けるじゃない!」

母「地球のフリット・アスノが何とかっていう機械を貸してくれたって、ニュースで言ってたわ」

フラム「けっこういい人だったんだね」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/11(木) 00:32:03.25 ID:a56RgTGW0


機動戦士ガンダムAGE

フリット「マーズ・レイ撲滅を記念して、セカンド・ムーンにワシの銅像を建てたいと言ってきたぞ」

地球と火星、人類が歴史上初めて経験する星間戦争は

ゼハート「地球との文化交流を促進し、経済面でもより活発な協力を促します」

デシル「笑いが止まらねぇな! いっそプラチナで建ててやれ!」


未だ終わりを見せない——


   完



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