キョン「どうやら俺は」


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1 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 01:36:46.91 ID:FKS9xEPd0

「死ぬようだ」

そう言い放った俺は周りを見渡す

ここは文芸部の部室

そこには見慣れたSOS団の面々の顔がある

「何の冗談よ?」

「ハルヒ、残念ながら冗談じゃないんだ」

戸惑いながら訪ねてくるハルヒに俺はそう答える

「この前急に胸の辺りが苦しくなってきてな」

「病院に行ったんだ」

「そしたら余命後半年だそうだ」

「最初は俺も冗談だと思ったさ」

「ただ、俺の心臓は後半年で仕事をしなくなるみたいだ」

今言ったことは全て事実であり寸分の嘘もない

むしろ嘘であってほしいのは俺のほうだ

「どうしてよ‥‥」

「そこまでしてあたしをからかって何が面白いの?」

どうやらこいつにはまず事実を正確に伝えなきゃいかんようだ

3 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 01:42:33.84 ID:FKS9xEPd0

俺は病院であったことや自分の体におきていること

全てをハルヒに伝えた

いや、SOS団の全員に伝えた

俺だって認めたくはない

しかしそれは事実なのだ

「嘘でしょ‥‥もういいわ今日の団活はこれでおしまい‥‥解散して」

そう言って出て行くハルヒ

「追わないんですか?」

いつものニヤケスマイルで古泉が俺に尋ねてくる

追いかける義務なんてないさ、むしろ一人にしてやりたい

そう答え俺は部室から出て行く

すると朝比奈さんが俺の制服の裾をつかむ

「キョン君‥‥死んじゃダメですぅ‥‥」

朝比奈さんは目に涙を浮かべながら俺に訴えかける

「すみません朝比奈さん。俺も認めたくないんです」

そう言って朝比奈さんの手を裾から離し部屋を出て行く

そんな俺の目にも涙が浮かんでいた

4 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 01:46:38.93 ID:FKS9xEPd0

俺はしばらく歩き、自分の家に向かった

すると坂道の途中でハルヒがたたずんでいた

話しかけるべきか否か

俺の頭の中では勝手に脳内会議を始めていた

「ちょっとキョン」

そんなこんなしているうちにハルヒが俺に話しかけてきた

「ホントに死んじゃうの?」

すまん、多分そうなる

「何でそんなに冷静でいられるの?」

実感がわかないからだ

「そう‥‥」

黙り込まないでくれよ

「ごめんなさい‥‥そうだ!!」

いつもの怪しい笑みで俺を見る

このはた迷惑な団長さんは何かをひらめいたみたいだ

「あんたが死ぬまで私がそばにいてあげるわ!!」

何を言い出すんだ

5 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 01:50:20.65 ID:FKS9xEPd0

「それはどういう意味で言ってる?」

「そんなの言葉通りに決まってるじゃない」

「あんたが寂しくならないようにあたしが元気にしてやるって言ってんのよ」

「まぁあんたが迷惑じゃないならの話だけどね」

そう俺をまくしたててくる

なぜか俺は「頼む」なんて言ってしまったもんだからハルヒは満面の笑みを浮かべる

「団長様が直々に平団員に協力するんだから感謝しなさいよね」

協力は頼んでないのだが‥‥

こうして俺達の半年が始まった

9 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 02:08:16.20 ID:FKS9xEPd0

俺は家につくと飯も食わずに自分部屋に行った

親も気を使っているのか声をかけてこない

俺は今一人になりたいんだ

ハルヒのあの不安そうな顔を見てから俺は急に死ぬんだと思った

今は七月

簡単計算でプラス六ヶ月だから年は越せるみたいだな

そんなのんきなことを考えていると電話がかかってきた

『どうも夜分遅くにすいません』

時計を見ると11時前だった

もうこんな時間なのか

「古泉か。何の用だ?」

『今回は特に用はありません』

「なら切るぞ」

『ただ、友人として少し話をしたいんです』

「今からか?」

『出来れば凉宮さんには感づかれれたくない話もありますからね』

「わかったどこに行けばいい?」

古泉は待ち合わせ場所を伝えると電話を切った

やれやれとつぶやきながら俺は立ち上がる

ドアの隙間からシャミセンがこっちを見ていた

「お前も心配してくれるのか?」

答えが返ってこないのを知りつつ訪ねてみる

にゃーご

返事は返ってきた

10 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 02:12:29.17 ID:FKS9xEPd0

少し急ぎめに待ち合わせ場所に到着したつもりだが古泉はもうそこにいた

「遅刻です一番遅い人がみんなの分をおごりです」

ハルヒみたいなことを言うな古泉

待ち合わせ場所に古泉が選んだのはSOS団のものなら知らないものはいない

いつもの駅前の広場だった

「あの話は本当だったみたいですね」

最初から嘘はついてない

「可能性の話です」

まぁ信じろと行ってすぐ信じれる話ではないからな

「これも機関の調べです」

相変わらずだなお前のところの組織は

「とりあえず暑いので中に入りませんか?おごります」

そう言っていつもの喫茶店に入る古泉

いつもおごってる俺がおごられるのもたまには悪くないな

俺も古泉の後に続いた

11 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 02:21:08.92 ID:FKS9xEPd0

ウエイトレスが運んできたコーヒーをちびちびすすりながら聞いた

「用件はなんだ?」

「あなたのことです」

古泉はニヤケスマイルを崩さず言う

「まぁそうだろうな」

「あなたが半年後に無くなってしまった場合涼宮さんの精神状態はかなり不安定になると思われます」

「友達を失ったショックか」

「‥‥あなたもつくづく鈍いお方だ」

「ん?なんか言ったか?」

「いえ、なにも」

そう言って古泉はコーヒーをすすりそれを置いて言った

「あなたの死はなんとしてでも食い止めなければなりません」

「それが出来たらお前のことを崇めるよ」

「今の医療技術ではほぼ不可能だそうですね」

「あぁそれこそ俺は死にものぐるいで調べたさ」

「結果は芳しくなかったと‥‥」

「残念ながらそう言うことになる」

そう言うと古泉は黙る

いったい何が言いたいんだ?

「さっきまで涼宮さんの力に頼ろうとしていました」

俺も頼りたいくらいだね

「ですが涼宮さんはあなたの死を受け止めなければいけないものと認識してしまったようです」

最後の頼みがダメなら俺も腹を据えないとダメみたいだな

「それとほんとは黙るように言われていたんですが涼宮さんからこんなメールが来ました」

そう言って携帯を俺に差し出す古泉

12 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 02:27:01.29 ID:FKS9xEPd0

『みんな、最重要の団長命令よ
 キョンはあたし達の前から半年経ったらいなくなるかもしれない
 あたしはそんなの認めたくないしみんなもそうだと思ってる
 でも、本人であるキョンがそれを受け止めようとしてる
 ならあたし達は要領の悪い平団員の手伝いをしましょ
 言い方が変だけどキョンが生きててよかったって思えるくらい楽しい半年にしようと思うの
 あたしだけじゃ多分無理だからみんなで、みんなの力でなんとかしたいの
 最初に命令なんていったけど取り消しね
 友達として、仲間として頼むわ

 キョンを楽しませるわよ!!』

俺は画面を見たとき自然と涙が出てきた

ハルヒはお前達にメールする時はこんなに素直なのか?

と聞くと

「むしろ、メールが来ること自体が珍しいです」

「もし来ても用件だけです」

俺はそのまま画面を見つめたまましばらくそのままだった

28 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 22:12:33.63 ID:FKS9xEPd0

>>12の続き




俺はあの後古泉と別れ、なんとなく家にまっすぐ帰るのがもったいないような気がして公園に寄った

まだ夏本番とは言えないが十分暑い七月

俺は公園のブランコに座り考えてみる

後半年しか俺の心臓は動かないのか

その間に何が出来るんだろう

医者からはあまり激しい運動などをするのは死期を早めると言われている

あんまり無茶は出来ないな

もし死んだら幽霊になってハルヒを喜ばしてやるか

そんなくだらないことを考えていると不意に

「あなた死ぬの?」

と、どこか聞き覚えがある声が後ろから聞こえてきた

後ろを振り返ると二人の少女がいた

一人は説明するまでもない

我らがSOS団の無口キャラ代表、読書キャラの長門有希だった

そしてもう一人

それはもう見るはずの無いものだった

恐らくあの時から俺とは二度と遭遇しないはずの人間

ん?あれは人間か?

「朝倉」

俺はそいつの名前を呼んでいた

29 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 22:21:29.94 ID:FKS9xEPd0

「あなたが後半年の命って言うから見に来たの」

ふざけるな、なぜお前がここにいる?

「そうね‥‥涼宮さんが望んだから?」

お前と話していても埒があかないな

長門、手短に説明してくれ

「涼宮ハルヒはあなたを死ぬまで楽しませる、寂しくならないようにすると言った」

「そして涼宮ハルヒは思いついた」

「突然海外に転校したクラスメイトが返ってきたら面白い」

「そして朝倉涼子は情報連結の解除を解かれ実態を再生しここにいる」

「ちなみに戦闘能力になりうるものは全て私が消しておいた」

それはご苦労だったな

「ようするに今私はただの女子高生よ」

まぁ長門が言うならそうなるんだろうな

「私は信用してくれないの?」

あぁ全くしない

そう言うと朝倉は俺の隣のブランコに腰掛ける

「こういう暮らしもいいかもしれないわね」

「今の私は情報統合思念体なんかとは無縁だし」

「平和に長門さんと同じマンションに住んでる女子高生」

「それでいいじゃない」

それがきっとハルヒが望んだ結果なんだろうよ

「ずいぶん涼宮さんに詳しいのね」

そりゃ、あれだけ一緒に活動してれば嫌でも分かるさ

「おあついこと」

何の話だ

「とりあえず俺は疲れたから家に帰って寝る」

「帰り道には気をつけるべき」

無表情で長門が警告してくる

なんだか意味ありげにつぶやくのは止めてくれないか?

そんなことを考えつつ帰路についた

30 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/29(月) 22:28:31.44 ID:FKS9xEPd0

俺は家につき、ベッドに横になり考える

ハルヒは朝倉を復活させた

いたら俺が喜ぶだろうなんて容易な考えで

むしろ友人の一人が死ぬなんてことを知ったら急に不機嫌になり閉鎖空間炸裂

なんてことになるかもしれなかったのにな

ずいぶん危ない橋を渡っていたもんだ

まぁ何がともあれ結果は何となくいい方向に進んでいる

おかげで古泉は死なずにすみそうだ

しかし今日のハルヒどこか変だった

古泉やその他の団員へ送ったメールや俺への態度

ひたすらハタ迷惑な団長とは打って変わって妙に素直でいいやつだった

多分ハルヒが常にこんなやつだったらもっと友達が出来たろうに

などいろいろ考えていると時計の針は二時半をさしていた

さて、明日も学校だしとっとと寝るかな

俺は布団をかぶりそのまま眠りの世界へと向かった

35 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/30(火) 07:23:42.77 ID:LT7h7CIp0

今日は早起きしたから出かける時間まで投下
>>30の続き



俺は毎朝恒例の妹の起こすというなの暴力行為を受けて目覚めた

家族は普通に接してくれている

そのほうが気が楽でありがたい

適当に朝飯をつっこみ俺はこれもほぼ毎朝恒例の強制上り坂を上り学校へ向かう

教室に入ると谷口と国木田がやってきた

「お前、あと半年しか命が無いなんて嘘だよな?」

と、急に谷口が聞いてくる

どうやらホントらしい

そう答えると谷口は俺の襟をつかむ

「勝手に死ぬんじゃねぇよ!!」

そんなこと言うな

俺だってまだ死にたくない

「そうだよ谷口、キョンが望んでこうなったんじゃないんだよ」

国木田がフォローする

「そんなの分かってるけど認めたくないんだよ」

いつのまにかずいぶん頑固になったな

すまない

でも死の宣告を受けたのはホントだ

認めたくないならいつも通りに接してくれ

そう言って俺は席に着いた

37 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/30(火) 07:57:20.06 ID:LT7h7CIp0

席に着くと後ろの席の団長様

もとい涼宮ハルヒは机に突っ伏していた

何か話そうかと思ったが邪魔しちゃ悪いので放っておくことにした

俺がぼーっとハルヒを眺めていると急に顔を上げた

「あら、キョン来てたの?」

まさに寝起き顔でこっちを見るハルヒ

さっき来たところだと伝えると満足そうにうなずき

「さ、今日の放課後の団活はとっても楽しいわよ」

と、満面の笑みで言う

こいつも常にこの顔でいて何もしゃべらなければきっとすごいことに‥‥

何を考えてるんだ俺は?

しかしハルヒの言う楽しいはやや常識的なところが無い可能性があるからな

「ねぇ聞いてるの?」

すまん考え事をしていた

「平団員が団長様を無視なんていいご身分ね」

そう言ってそっぽ向くハルヒ

すまんすまんと謝っていると担任岡部が入ってきた

38 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/30(火) 08:01:39.37 ID:LT7h7CIp0

そして岡部から転入生の紹介があった

「皆さんお久しぶりです朝倉涼子です」

そう言って礼をする

みんな口々に久しぶりだの元気にしてた?と聞く

俺はもう既に昨日会っていたからそこまで驚きはなかった

「あら?キョン、驚かないの?」

後ろの席から声が聞こえた

まぁそこまで衝撃の真実ではないがな

「ふぅんなんかつまんないわね」

いや、これでも多少は驚いてる

「そう」

怒らせちまったかな?

朝倉は岡部の指定した席へ座る

目が合ったが無視した

57 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/31(水) 23:03:50.88 ID:/p90OUPv0

>>38の続き



そしていつものようにぼーっと授業を聞き流し

辺境の地に忘れ去られた犬よりの強力な帰巣本能を持った俺はまたこりずに文芸部室に向かう

文芸部室に行けば朝比奈さんがおいしいお茶を入れてくれるだろう

そう言えばハルヒが今日は団活が楽しいとかなんとか言ってたな

ろくなことが起きそうな気がしない

しかしこの前見たハルヒのあの顔、あの目

信じてみるのも悪くないよな

あいつならホントに俺を楽しませてくれるだろうし

そんなことを思いながら部室に入る

58 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/31(水) 23:13:11.84 ID:/p90OUPv0

そこにいたのは長門だけだった

よう長門

そう声をかけると読んでいた本から一瞬視線を外し数秒俺を見た後また本を読み始める

こいつはいつも通りに接してくれている

ありがたい限りだ

もし長門が急に感情的になって積極的に話しかけてきたり涙を浮かべるようなことがあったら恐らくそれはまた世界の改変が云々の話になってくる

短い命なんだ

なるべく波風立てないでくれると嬉しいぞ俺は

しかしそんな俺の理想を崩す声

「みんなおっはよーう!!」

ばたんと勢いよく音を立ててドアを開ける音とともに入ってきたドアの音よりうるさい女

ハルヒはニコニコしながら団長様特等席に座る

今日はずいぶん機嫌がいいじゃないか

そう茶化すと

「重大発表があるのよ」

「それを発表するには全員そろわないとつまらないじゃない」

確かにあと古泉と朝比奈さんがいないな

お茶が恋しいぜ

59 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/31(水) 23:30:11.02 ID:/p90OUPv0

しばらくすると朝比奈さんがやってきてそのあとすぐに古泉が来た

メイド服に着替えようとする朝比奈さんを珍しくハルヒが止め

「今日は急ぎの用があるの」と言って全員をせかす

そしてホワイトボードの前に団員を座らせる

「ホントに今日は急ぐのよ」

「なぜなら」

そう言って間を取る

心なしか長門以外の団員の顔が引きつった気がした

「今から海に行くわよ!!」

今からって‥‥

「失礼ですが涼宮さん」

そう言って古泉が手を挙げる

「なにかしら?」

「今日は平日であり明日も平日です」

なるほど古泉

お前の言いたいことはよくわかった

俺もそう言おうとしていたんだ

「学校はどうするつもりか?ってことよね?」

予想していたかのようにハルヒが答える

「休むに決まってるじゃない」

なぜこいつは非常識なことをひょいひょい言えるんだ?

「なるほど‥‥僕はその計画に賛成しましょう」

「僕の成績なら一日や二日の欠席はたいしたことはありません」

俺の成績だとたいしたことがあるんだが

60 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/31(水) 23:36:19.11 ID:/p90OUPv0

「私も賛成ですぅ」

そんな朝比奈さんまで

「私も反対はしない」

長門‥‥お前もか‥‥

「じゃあ決定ね!!」

まてまて俺に意見は求めないのか?

「多数決で行くって決まったじゃない」

なるほどね‥‥

しかし休日に行くじゃ意味ないのか?

「せっかく行くなら学校さぼった!!とかの方がなんか面白いじゃない」

まぁお前の考えてることはよくわからん

それももう周知の事実だ

海だろうが山だろうが月だろうが太陽だろうが

こうなったらどこでも行こうじゃないか

「あらずいぶんやる気になったのね」

せっかくだからな

「そうよ」

「せっかくやるなら印象に残るようにしないと」

「じゃあ集合は六時にいつものところね!!」

あと一時間ちょっとで用意をしろと?

「そうよ」

「じゃああたしも用意してくるから最後の人鍵締めてね!!」

そう言って立ち去るハルヒ

61 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/08/31(水) 23:48:40.31 ID:/p90OUPv0

「なんで古泉は率先して賛成した?」

ハルヒが出て行くと俺は問いつめた

「理由はただ遊びたかったからです」

「お前からは出てきそうにない台詞が出てきてびっくりだ」

「最近は閉鎖空間もほとんど出ませんしこういうときに息抜きをしないと僕も身が持ちません」

なるほどな

「あとはあなたの思い出作りに貢献させていただこうと思いまして」

そうか、俺死ぬんだっけな

すっかり忘れてた

「私もそうですぅ」

朝比奈さんまで‥‥

「もしキョン君が私たちの前からいなくなっても心の中で生き続けてほしいから私は思い出を作りたいんです」

すいません

なんか迷惑かけてしまって

「迷惑なんて思いませんよ」

「それにこれは涼宮さんが望んだことですよ?」

どういうことですか?

「禁則事項です」

まぁハルヒの行動には少なかれ何かついてくるからな

いろいろ厄介だ

「私もそれでいい」

長門がそんなこと言うなんて驚きだ

「あなたにはこんなところで死んでもらいたくない」

俺もまだ死にたくなかったりするんだよな

「少しでも中身の濃い時間を過ごすべき」

ありがとな

「さて、あまり返るのが遅れると涼宮さんが設定した時間に間に合いません」

そうだな

遅刻は罰金だもんな

俺達は解散をし、またあとで

そう言って各自の帰宅コースをなぞった

73 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/01(木) 16:39:52.41 ID:zzQ+371T0

>>61の続き




俺はどこに行くんだと問いつめてくる妹の攻撃をかわしながら着々と海へ向かう準備を始めた

いったいどこの海行くつもりなんだろうか?

それにあまり行ってもはしゃげないよな

そう考えて自分の左胸に手をおく

「もっと俺に時間をくれ」

そうつぶやいた

どうにも出来ないことはわかっているがなんかこう‥‥わらにもすがる思いと言うか

気持ちだけでも死なないようにしたかった

適当なところで準備が完了し時計を見た

「六時十分前か‥‥」

これは遅刻決定だな

74 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/01(木) 16:48:32.39 ID:zzQ+371T0

少し遅れながら待ち合わせ場所へ行くと俺以外の全員が顔を揃えていた

「罰金よ!!キョン!!」

そう言ってこっちに来るハルヒ

「来てくれないかと思ったわ」

ハルヒが計画したらなこないわけにはいかないだろ

「そうよね」

「じゃあ張り切って行くわよ!!」

そう雄叫びを上げて駅へ向かうハルヒ

どうやって行くつもりだ?

「まず電車に乗って大きい駅にいくわ」

「ほんとはローカル線を乗り継いで行こうと思ったんだけど‥‥」

そう言って表情を曇らせるハルヒ

「あんまりキョンの負担にならないようにしないとダメかなって思って」

すまんな

「気にしなくていいわ」

「前日からだと夜行バスくらいしかチケットをとれなかったの」

そう言ってチケットを七枚取り出す

ん?七枚?

「二枚多いですが?」

古泉がハルヒに聞く

「まぁ大きい駅に行けばわかるわよ」

そのハルヒが言う駅はここから電車で約一時間

その夜行バスとやらは八時に出るそうだ

なるほど

ハルヒにしては恐ろしいくらい用意が周到だ

75 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/01(木) 16:55:23.82 ID:zzQ+371T0

そして俺達は電車へ乗り込む

「なんだか遠足みたいで楽しいですねぇ」

朝比奈さん、時間的には遠足から帰る時間ですよ

「たしかにそうですねぇ」

そう言って朝比奈さんは窓の外をぼーっと眺めていた

美人はどんな姿でも絵になるもんだ

そんなことを思いながら俺は前に視線を戻す

「なによはしゃいじゃって」

目の前には不機嫌な顔をしたハルヒがいた

せっかくのお出かけだ

はしゃがなくてどうする

「それもそうね」

今日はやけに素直だな

「別にいいじゃない」

そう言って向かい側の席に座るハルヒ

今日のハルヒはハルヒじゃないみたいだ

「あなたもそう思ってらっしゃるのですか?」

いきなり隣に座っていた古泉が話しかけてきた

今日のハルヒはどこかぎこちない

「僕もそう思っていました」

「しかし、あれは涼宮さん本人ですのでむしろ内面的な方のことでしょうか?」

そうかもしれないな

「そうかもしれないですね」

ま、いつもあれくらいおとなしくしてくれればいいのにな

90 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 22:06:19.80 ID:Vm+H1z0J0

>>75の続き



俺達は何事も無くハルヒの言う大きな駅に到着した

「まだ来てないのかしら?」

残りのチケット

要するに二枚分も席には誰が座ることになるのだろうか

「お〜みんな来てたのか〜い」

その声は

「あ、鶴屋さんですぅ」

「みくるじゃないか〜よしよし」

そう言って朝比奈さんの頭を撫でる鶴屋さん

「この夜行バスのチケットを手配してくれたのは鶴屋さんよ」

ハルヒはなぜか自慢げに言う

ありがとうございます鶴屋さん

「そんな固くならなくていいさっ」

「うちの家の力でちょちょいのちょいさ」

なんだかあまり聞かない方がいいお仕事してる家ですもんね

「そのうち分かるさっ」

そう言って鶴屋さんは朝比奈さんに抱きつく

「涼宮さん、あと一人は誰なんですか?」

古泉が訪ねると

「有希、まだこないのかしら?」

「次の電車で来るはず」

そう言いつつ俺達が今さっき出た改札を見る長門

俺はもう一人の正体が分かった気がする

91 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 22:08:55.79 ID:Vm+H1z0J0

しばらくするとその一人が来た

「ごめんなさいね待たせちゃって」

やっぱり朝倉か

「来ちゃダメだったかな?」

俺を殺す気がないなら大歓迎だ

「殺す必要がないもの」

「ちょっと!!なにこそこそしてるのよそこ!!」

いや、何でも無いんだ

「あっそう」

そう言ってそっぽ向くハルヒ

「じゃあとりあえずバスまで時間はあるわ」

「何か食べちゃいましょ」

ハルヒは先陣を切って歩き出す

こういう風景を見てるとまだ死ぬなんて実感できそうになかった

92 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 22:16:24.96 ID:Vm+H1z0J0

ところで長門

「なに」

朝倉はどういう経路で復活したんだ?

ハルヒ達に気づかれない程度の距離を取って俺は長門に聞いた

「恐らく涼宮ハルヒの願望を叶える力によるもの」

「しかし涼宮ハルヒは朝倉涼子の本当の姿を知らないため今はただのクラス委員の能力しか無い」

要するに前みたいな情報なんとかとかそう言うのには関わりがないと?

「全くないと言っていい」

「でもその時の記憶もある」

「情報統合思念体は朝倉涼子の復活は対した動きだと見ていない」

自分の手ごまじゃないからか

「あれは朝倉涼子であって朝倉涼子ではないから」

なるほどな

あれは実在していた朝倉じゃなくてハルヒが考えだした朝倉といっていい訳か

「その解釈で間違いはない」

「しかしさっきも言ったようにあの朝倉涼子はヒューマノイドインターフェースだった時の記憶もある」

力はないんだろ?

「だからその記憶についても私でも処理できるレベル」

情報操作ってやつか?

「そう」

「今の朝倉涼子には情報操作の力も何も残されていないただの女子高生」

ならそのままでいいんじゃないか?

「あなたがそう言うならそうする」

「ちょっと!!あんた達早く来なさいよ!!」

ハルヒが入ろうとしているところは立ち食いそばやであった

「あたし、こういうとこ入るの初めてなのよね」

と、満面の笑みで言うもんだから俺も思わず入ってしまった

93 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 22:22:01.02 ID:Vm+H1z0J0

俺達は初めての立ち食いそばになぜか苦戦しつつ無事夕食をすませ

今、鶴屋さんの提案でアイスを買っているところだ

「あんた遅刻したからおごりね!!」

という団長命令で全員分をおごるはめになった

いつも通り接してくれてありがたいが俺の財布は少し寂しくなってしまった

そして蒸し暑い中あと少しで到着というバスを待った

全員がアイスを食べ終わるとほとんど同時にバスが来た

「席順どうする?」

ハルヒが全員に問いかける

「くじ引きでいいんじゃないかしら?」

なんともクラス委員らしいまともな答えだ

そして急遽作ったあみだくじで席を決めることになった

俺は相当の願いを込めて線の上をたどった

望むべきは朝比奈さんの隣!!

自分でもほれぼれするくらいのすばらしいあみだくじだった

しかし隣になったのは

「あんたが隣なのね」

ハルヒだった

94 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 22:27:34.49 ID:Vm+H1z0J0

「あ、鶴屋さんとなりですねぇ」

「ほんとだみっくるー」

とじゃれ合う二人

まぁあの二人なら安心だろう

「長門さんが隣なのね」

「そう」

この二人はほぼ定番だよな

「なぜ、僕だけ補助席なんでしょうか?」

お前いたのか

「さて、席も決まったことだしさっさと座っちゃいましょうよ」

そう言ってまたもや先陣を切るハルヒ

やれやれと言いつつ中に入る俺

中はかなり豪華な部類に入るだろう

鶴屋さん‥‥どんな悪いことしたら前日にここまでいいバスのチケットがとれるんですかね?

「ごめんねみんなほんとは貸し切りの方がいいかなって思ったんだけど前日じゃちょいとむずかしくてさ」

いえいえとんでもないです

ハルヒが無茶難題を押し付けてしまって

「きにしないでよっ」

「こういう形での協力もありだと思うしさっ」

そう言って笑う鶴屋さん

どんな親がこんなにいい人を育てるんだろうか

この人間性はなかなかすばらしいな

「この椅子ふかふかね」

ハルヒよ、お前も少しは鶴屋さんに感謝しろ

96 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 22:34:27.14 ID:Vm+H1z0J0

各々席につき一息つく

席順を説明しよう

まずなぜか最前列の俺とハルヒ

その後ろに鶴屋さんと朝比奈さん

その後ろに長門と朝倉

その後ろの補助席に古泉

なぜ古泉だけ補助席なのかとかそう言う質問は>>1の気分に決まってる

しかしこのバスに乗る人はそんなに多くないようで満席にはならないまま出発した

後ろの席に人が入るたびに補助席をどかす古泉を見て長門は

「ユニーク」

とつぶやいていた

満席じゃないからその辺の席に座ればいいじゃないか?

「そう思ったんですがここに座らないとキャラが立たないので」

何意味の分からないことを言ってるんだ?

その五分後シートベルトの破損が確認され長門達の後ろの席に座ることになった

このバスは高速を使わないルートで行くらしく結構時間がかかるようだ


97 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 22:43:22.73 ID:Vm+H1z0J0

「なぁ、ハルヒ」

俺はチョコを食べているハルヒに話しかけた

「これはあげないわよ」

「別に欲しくて話しかけた訳じゃない」

「別にどうしてもって言うならあげてもいいわよ?」

「言葉通じてます?」

「なによ」

「なんでわざわざこんな時間をかけて海に行くんだ?海なら電車とかを使えば二、三時間で行ける距離にあるだろ?」

そう聞くとハルヒは少し困ったような顔をしてこっちを見る

「きれいな海だからよ」

「行ったことあるのか?」

「いや、ないんだけど‥‥」

「そこも宇宙人とかなんとかのあれなのか?」

「多分違うわ」

「じゃあなんか特別な意味でもあるのか?」

「知り合いにいいところだって教えてもらったのよ」

「なるほどな」

「納得したならこの話はおしまいよ」

そう言ってチョコを食べ始めるハルヒ

しかし、その海をすすめた奴はハルヒになんらかの影響力を持っている訳か

いったいどんな奴なんだ?

ま、気にしなくていいか

俺は持ってきた音楽プレイヤーを装備し自分の世界に入った

98 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 22:56:21.37 ID:Vm+H1z0J0

しかし、このバスとても進むのが遅い

そりゃ、行動を駆使してかなり遠くまで行くのに時間がかかるのは分かる

さっきから信号に引っかかりまくりだ

そう思っているのは一番気が短い俺の隣に座る奴も同じらしく耳が塞がっている俺に何やら話しかけてきた

なんだハルヒ

「ずいぶん遅いわね」

奇遇だな俺もそう思ってた

「ずいぶん時間かかるのね」

それはお前も知ってただろ?

「そうだけど‥‥」

ま、少しくらい我慢しよう

「このペースだとこのツアーの醍醐味の夜明けの海を見るのは無理そうね」

そんなこと初めて聞くんだが

「部室で言ったじゃない」

いや、言ってないぞ

「そうだったかしら?」

あぁそうだった

「まぁこの夜行バスは明け方くらいに目的地に着くのよ」

それであんな微妙な時間に出発なのか

「そうよ、それがすごくきれいだったって知り合いに教えてもらったのよ」

ずいぶん親切な知り合いだな

「言われたのは昔よ」

「ここまで思い出すのに一苦労だったわ」

「だってその人場所覚えてなかったのよ?」

そいつはとんだ間抜けだな

99 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 23:00:18.76 ID:Vm+H1z0J0

その後いろいろと雑談をし気づけば後ろが静かになっていた

「いつの間にか寝てたのね」

そうみたいだな

「あたし達も寝る?」

ハルヒは眠いのか?

「あんたと話してたら眠気吹っ飛んだわ」

そう言って笑う

俺達はまた雑談を始めた

ふと時計を見ると二時を過ぎていた

ずいぶんと夜更かししてたんだな

しばらくするとハルヒがいきなりおとなしくなった

寝たのか?とハルヒの方を向くと急に寄りかかってきた

まったく‥‥

とつぶやきながら肩を貸してやる

俺もそろそろ寝るかなと思いながらうとうとしだしいつの間にか寝ていた

100 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 23:07:54.58 ID:Vm+H1z0J0

目覚めると‥‥いや、ハルヒに叩き起こされると時計はちょうど五時ちょっと前を指していた

他の奴らは起こさないのか?

と聞くと

「昨日一応言ったんだけど寝ぼけてたみたいだし」

なるほどな

まず、話をするのが遅かったんじゃないのか?

「いいのよあんたに見てほしかったのよ」

お前も初めて見るんだろ?

「そうなんだけどね」

そう言って笑うハルヒ

眠い目をこすりながら周りを見渡す

「海に近くなってきたみたいね」

確かにそうだな

そして五時頃になるとバスが止まり目的地到着を知らされた

なぜかハルヒ的にはこのツアーの醍醐味らしいのだが降りる客は俺達と二組の家族ずれと三組のカップルだけだった

まだみんな眠いんだな

そんなことを考えつつ適当に歩を進める俺達

「あんまり早く歩かないでよね」

わかったお前にあわせるよ

「当然よ」

101 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 23:15:59.82 ID:Vm+H1z0J0

俺達は適当な場所で腰を下ろした

海の向こう側には太陽が少し出ていた

「ホントにきれいなのね」

そうみたいだな

「あんまり感動してないみたいだけど?」

いや、これでも感動しているぞ

「それならいいわ」

そう言って笑い俺の肩に頭をのせてきた

なんだハルヒ

「ちょっと眠くなってきたから肩借りるわよ」

やる順番がおかしいだろ

「別にいじゃない」

「落としたりしたら死刑だからね」

そう言ってかわいらしい寝息を立て始めた

「寝るの早いな」

そう言って肩にハルヒの頭を感じながらぼーっと日の出を見ていた

俺はあと何回日の出を見れるのだろうか

みんなが今まで通りに接してくれるせいで俺は自分が受けた死の宣告を忘れていた

忘れるくらい信じられない事実だった

今はまだ健康体だが死ぬなんて全く考えられない

死んだらまたこうして海に来れないんだろうか

いったい俺はどうなるんだろうか

なんか突拍子も無く死は訪れるんだな

いきなり死ぬ方が楽だったかもな

死の宣告なんて受け入れたくないな

でも、あの医者の言うことが正しいのであれば俺は約半年で短い人生が終わる

まずいな、いまさら実感が湧いてきた

「俺は死ぬんだ」

言葉に出しても何も変わらない

いや、違った変わったことは一つあった

102 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/02(金) 23:23:24.76 ID:Vm+H1z0J0

ハルヒが抱きついてきた

「なにしてるっ」

無言でハルヒは抱きついたまま離れない

俺だって健全な男子高校生だ

こんな状況で冷静でいられない

「死んでもあたしのこと見守ってて」

そう言った

「じゃあ死ぬまで俺を楽しませてくれ」

そう答えた

「楽しませてほしいなら抱きしめてよ」

そう言われた

俺はためらいながらハルヒの腰に腕をまわす

「もっと強く」

力を込める

ん?なんなんだこの状況は?

「あたしがこうしてたいのよ」

そうか、よくわからんがよくわかった

「あんた鈍感ね」

そう言うとハルヒは俺からはなれる

「ま、そう言うのもいいけどね」

そう言って立ち上がるハルヒ

「なかなかきれいな太陽ね」

そうつぶやく

「さっきもそんな感じのこと言ってたな」

「細かいことは気にしないの」

そしてハルヒは俺に手を差し出す

「つかまりなさいよ」

「おうすまないな」

俺はその手をつかんで立ち上がる

「さ、バスに戻りましょ」

「遅い人があとでコーヒーおごりね」

そう言って駆け出すハルヒ

運動神経で俺がお前に勝てる訳ないだろっての

そう毒づきながら歩いて行った

その後ハルヒにコーヒーをおごったのは言うまでもない

152 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 22:48:04.80 ID:tUIsazpo0

>>102の続き




俺達はその後も何となく過ごし

気づけば夏休みに突入していたのだった

夏休みと言えばあまりいい思い出もなかったりする

永遠に続く夏休みをあじあわせられたら死んでしまう

そんな気も知らないで我らが団長様はこう言った

「夏祭り巡りをするわよ!!」

相変わらずの活発さを見せつけてきた

153 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 22:54:54.55 ID:tUIsazpo0

そしてハルヒは後日集合と言って部室から出て行った

明日から夏休み

俺にとっては最後の夏休みになるかもしれない

どうしたものか

そう考えるとなんだって出来そうだ

俺は楽しむことにした

最後くらいいいじゃねぇかと

そう意気込んでいると朝比奈さんが俺に話しかけてきた

「話をしたいので一緒に帰りませんか?」

もちろん高速でもちろんですと答え急いで帰りの支度をした

「今日は早いですね」

と古泉が話しかけてきたが無視をした

さ、朝比奈さんいきましょう

「そうですね行きましょうキョン君」

そう言って俺達は二人で部室をあとにした

154 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 23:09:59.72 ID:tUIsazpo0

俺達はSOS団初めての不思議探索で朝比奈さんとペアになったとき来たあの道に来ていた

今は八月

桜が咲き誇っていた道も今は夕日に照らされた緑が生い茂っている

「私はここで初めてキョン君に私自身の話をしたんですよね」

そう言ってなんとも懐かしいベンチに座った

隣いいですか?

「もちろんですよ」

一応許可をもらい隣に座る

「未だにキョン君がいなくなってしまうなんて信じられません」

未来では規定事項って奴じゃないんですか?

「未来ではキョン君は涼宮さんと末永く一緒に過ごすと教えられましたから」

その未来も信じがたいですね

「あんまり鈍感すぎると涼宮さんに嫌われちゃいますよ?」

もう十分嫌われてる気がしますけどね

「気のせいです」

信じがたいですけどね



155 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 23:10:26.10 ID:tUIsazpo0

「ここからは私の推測です」

いつになく真剣な表情をする朝比奈さん

でも可愛い

「もしかしたらキョン君はこれからしないといけないことがあるのかもしれません」

しないといけないこと?

「キョン君が死の宣告をされたのは事実です」

「しかしキョン君が死ぬのは恐らく規定事項ではありません」

「私の知る限りでは違います」

なにかアクションを起こして未来を朝比奈さんの知っている未来に変えるってことですか?

「それが正しいのか間違っているのか分かりませんが」

正直俺は死ぬことを覚悟してます

「ただ、みんなはあなたに死んでほしくないと思ってますよ?」

「もちろん私もです」

「まだキョン君といたいから」

「この気持ちは‥‥」

そう言うと朝比奈さんはうつむく

「ごめんなさい禁則事項です」

そう言ってなぜか朝比奈さんは自分の指を俺の前に立てた

「今日は帰ります」

そう言って俺は去って行く朝比奈さんの後ろ姿をただ眺めていた

追わなかった

追えなかった

朝比奈さんの目には涙が光っていたからだ

156 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 23:16:30.17 ID:tUIsazpo0

俺は家に帰ると横になった

なぜ朝比奈さんはあんなことを言い出したんだろう

もし朝比奈さんの言う通り俺が死ぬことが規定事項でないならなんらかのアクションは必要だ

ハルヒの力も使えない、長門も今回はお手上げと言っていた

古泉はあてにしていない、朝倉には殺されるかもしれないというトラウマが未だに

鶴屋さんには特殊能力が無い

そうなると一番可能性が高いのは朝比奈さんの持つTPDDの利用だ

しかし俺が死ぬ原因なんて思いつかない

そんな予兆なんて無かった

ある日突然死の宣告を受けた

しかも原因不明ときたもんだ

いったいどうすればいいのか分からない

俺は脳を今までに無い速度で必死に回転させ考えを巡らせた

鍵はなんだ?

きっかけはなんだ?

使えるものはなんだ?

しばらく考えたところで少し卑怯な手を思いついた

「これならどうにかなるかもな」

そう言ってのびをする

157 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 23:19:10.31 ID:tUIsazpo0

するとハルヒからメールが来た

来週からいろんな地域で夏祭りが開催される

行くところを決めるために明日集合だそうだ

簡単に要約するとハルヒのメールはこういうことを伝えたかったんだろう

明日か

まず朝比奈さんに相談してみなきゃな

「キョンくーんごはんー」

妹の呼ぶ声がしたので俺は着替えをし、下に降りた

158 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 23:23:34.58 ID:tUIsazpo0

そして次の日になった

天気は少し曇りでここ最近暑い日が続いていたが多少涼しくて快適な気温だ

「全員集まったわね?」

いつものようになぜか待ち合わせより前の時間に来るのに一番くるのが遅い俺

今日もおごりか‥‥

そんなことを考えているとハルヒはみんなを引き連れていつもの店に入る

そして最後尾を歩いていた朝比奈さんに話しかけた

あとで話があるので少し時間いいですか?

「大丈夫ですよ」

「この集まりが終わったらでいいですよね?」

もちろんです

そう言って俺達も店へ入った

159 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 23:31:08.15 ID:tUIsazpo0

俺達は席に着くとハルヒは自分の鞄から何やら大きな紙を出す

「じゃじゃーん」

その声とともに広げられた紙にはびっしり書かれていた

「これはこの近所で行われる祭りの地図ですね?」

「その通りよ古泉君」

なるほど、ホントに夏祭り巡りをするつもりなんだな

「あたりまえじゃない」

なぜか真顔で答えるハルヒ

「八月からが多いですねぇ」

そういってかわいらしくハルヒお手製の地図を覗き込む朝比奈さん

「祭り‥‥楽しみ」

こころなしか楽しそうに見える長門

「ま、とりあえずここに書いてあるのは全部行くつもりよ」

そりゃずいぶん大変なこった

「これでも減らした方よ?」

いったいうちの地域ではどれくらいの祭りがやってるんだ?

そんなことを考えながら地図を眺める

以外と分かりやすい地図でクオリティが高い

「一夜漬けで頑張ったのよ!!」

おつかれさま

「ま、感謝しなさいよね」

そう言って水を飲むハルヒ

「みんな飲み物何がいい?」

「今日はキョンのおごりよっ!!」

今日もだろ

ちなみにそのあといつものように不思議探検をするとハルヒが言い始めるのはもはやお約束の領域だった

160 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 23:35:33.10 ID:tUIsazpo0

そしてちょうど良くペアは朝比奈さんと俺、ハルヒと長門と古泉になった

「みくるちゃんに変なことしたら死刑よ!!」

と言って俺達と反対側に歩き出すハルヒ

一応俺達も行きますか

「そうですね」

そう言って俺達は適当に歩き出す

161 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 23:40:00.33 ID:tUIsazpo0

「さっき言ってた話ってなんですかぁ?」

少し歩くといつもの調子で朝比奈さんが問いかけてきた

俺、昨日考えたんですよ

「アクションを起こすとか起こさないとかのあれですか?」

それです

「なにか答えにたどり着いたんですか?」

少し卑怯なんですがやっぱりハルヒに泣きつくのが

「ダメですよ」

いつもとは少し違う強い視線で俺を見てきた

「もう涼宮さんはキョン君のすべてを受け入れようとしてるのに」

「キョン君がそんなこと言ったら迷っちゃうじゃないですか」

そうですよね

浅はかでした

「でも頼るものが何も無いのも事実ですよね」

それともう一つ考えつきました

「今度は常識的ですよね?」

俺が持っている常識が正しければ

162 名前: ◆gKM3DnKYXU[saga] 投稿日:2011/09/05(月) 23:45:56.45 ID:tUIsazpo0

未来の情報に寄ると俺は天寿を全うすることになってるんですよね?

「そのはずですよ」

なら今のままでは多分俺は死ぬことになりますよね?

「もしかしたらそうなるかもしれません‥‥」

あくまでも仮定ですが今アクションを起こせないなら過去か未来に起こすんじゃないですか?

「なるほど‥‥」

もし、未来で天寿を全うしてるはずの俺もこの時期に死の宣告をされたけど何らかのアクションでそれを回避した

そうかもしれないですよね?

「可能性はゼロとは言えませんね」

「ただ、未来を変えるなら過去に行くのが普通ですよね」

そうですよね‥‥

「今確認を取ったんですけどホントにすぐにTPDD使用許可が下りました‥‥」

これで過去か未来に何かあることが分かった‥‥

178 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/06(火) 22:24:55.39 ID:Vn+g/fc+0

>>162の続き




俺は考えた

恐らく未来へ行ってもあまり変わらないだろう

朝比奈さんが言う通り未来を変えたいなら過去へ行くべきか

しかし過去へ行って何をする?

いや、何が出来る?

俺がこうなったきっかけも分からない

ヒントが少なすぎる

こんなんじゃどんなにすごい名探偵でも分かる訳が無い

あ、分かりそうな奴がひとりいるじゃないか

179 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/06(火) 22:40:18.75 ID:Vn+g/fc+0

俺と朝比奈さんはハルヒの集合メールを受けていつもの場所へ戻ることにした

すると朝比奈さんは俺のシャツをつかんだ

「私の前から、みんなの前からいなくならないでください」

すると急に抱きつかれた

あああああ朝比奈さんむむむむ胸が

俺はそんなことを考えながらこの奇妙な状況から気をそらすことで精一杯だった

「絶対にキョン君には死んでほしくありません」

「これは未来人だからとか、涼宮さんが関係してるからとかじゃなくて私個人の意見です」

そう言いながらも抱きついてくる

背中からだぜ?

よからぬ妄想が俺の理性を潰す前にっ!!

そして朝比奈さんから俺は解放された

「今したことは忘れてくださいね?」

そう言って歩き出す朝比奈さん

最近の朝比奈さんはなんだか違和感を感じるな

180 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/06(火) 22:52:39.34 ID:Vn+g/fc+0

俺と朝比奈さんはハルヒ達のもとへ戻った

「遅いわよ!!」

そう言ってハルヒが俺にすごんでくる

すまないな

「まぁいいわ」

もちろん成果がない本日の不思議探検はこうして幕を閉じたのだった

「長門、ちょっといいか」

俺は帰り際に長門に話しかけた

「なにを聞きたいかはだいたい想像がつく」

「しかし、それを涼宮ハルヒに聞かれるわけにはいかない」

ごもっともです長門大先生

「私の家でいい?」

かまわない

「私の家には朝倉涼子がいる」

「それでもかまわない?」

かまわないさ

俺は長門に付いて行った

193 名前: ◆Pk67Fv0IHA[saga] 投稿日:2011/09/11(日) 00:24:11.25 ID:04uQBCyN0

>>180の続き




俺はそのまま長門について行き長門のマンションまでたどり着いた

そのまま長門について行きもう何度目になるだろうか

長門の部屋に入る

「おかえりなさい」

と、朝倉が声をかけてきた

居間のお前は害がなくていいな

「余計なお世話よ」

と言ってキッチンへ消えて行った

さて長門俺が聞きたいのは

「だいたい予想できる」

「これからあなたがしなければならないことについて」

それが分かりそうなのはお前くらいしかいなくてな

197 名前: ◆TWvuoarrw.[saga] 投稿日:2011/09/20(火) 19:35:33.31 ID:cgvtffwZ0

酉が変わったけど>>1です
最近放置かましてすいません
ネタが出てこなかった
かなり遅筆になると思うけど今日あたりから投下始めようと思うからお付き合い願いまする

200 名前: ◆TWvuoarrw.[saga] 投稿日:2011/09/20(火) 21:51:42.06 ID:cgvtffwZ0

「まずあなたの意見が聞きたい」

俺は過去で何かアクションを起こすべきだと思った

「その考えは間違ってはいない」

「しかしそれが確実に正しいとは言えない」

要するにどういうことだ?

「あなたが死ぬという運命は私たちの記録には無い」

「なぜなら涼宮ハルヒはあなたの死を受け入れないはずだから」

「正確には認めないはずだった」

俺がハルヒに認めさせちまったってことか?

「そう言うことになる」

じゃああの時の俺にハルヒによけいなことを言わせなきゃいいんだな

「それでは未来が大幅に変わってしまう恐れがある」

どうしろと?

「解決策はほぼ皆無だと思われる」

そう言うと長門は黙り込んだ

心無しかうつむいているように見える

201 名前: ◆TWvuoarrw.[saga] 投稿日:2011/09/20(火) 21:56:30.78 ID:cgvtffwZ0

「あら?本格的に死んじゃうんだ」

と朝倉が茶々を入れてきた

どうやらそうみたいだ

「まぁ今の私には関係ないわ」

「それに涼宮さんが認めてるんじゃもう助からないわね」

それだったらあと半年を楽しく生きるさ

「怖がらないなんてつまらないのね」

ハタ迷惑な団長さんのおかげで変なことにはなれたからな

「ホントにつまんないわね」

そう言いながら台所へまた消えてく朝倉

なにやら台所からいいにおいがした

「今日はここで夕食をとるべき」

長門は静かにつぶやいた

202 名前: ◆TWvuoarrw.[saga] 投稿日:2011/09/20(火) 22:03:19.71 ID:cgvtffwZ0

俺は長門の家で朝倉の料理を食べ終え適当なところで帰宅することにした

さて、俺はこれからどうなっちまうのかね

長門も今回ばかりはお手上げのようだし

しょうがないな

腹をくくるしか無いみたいだな

もう俺が味わう夏もこれで最後か

なんて思いながら俺はまだ蒸し暑さの残る夜道を歩いた

203 名前: ◆TWvuoarrw.[saga] 投稿日:2011/09/20(火) 22:04:26.33 ID:cgvtffwZ0

待ってた人すまん
たった三レスの投下だけど今日の投下終わり
このSSはかなり遅筆になるから覚悟してくれるとありがたい
もしくは完結後にでも読んでくれ



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