キョン「……ハルヒ」


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1 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/03/03(木) 23:41:14 ID:.1tRcqh6O

俺は一人、帰宅の路を歩いている。
夕方の時間、北校から家に向かうこの坂道から見る街の風景は何時見ても何とも言えない風景を醸し出している。

本当に綺麗だ。

もう二度とこの坂道を歩む事も、ここから街の風景を見る事もないだろう。

今日、俺は北校を卒業した。

人間っていうのは一人でいる時、不安になりやすかったり、物事をマイナスに捉えやすくなると言うが正しく正論だ。改めてそれを実感する。

そして恐らく、これから先、ハルヒに合うことも無いだろう。
例え会えたとしても俺の事など眼中に無いだろう。

目に映る街の風景がぼやけて見える。

泣き虫だな…。俺は…。
涙が溢れて来る…。


一週間前だった。
俺はハルヒに団活終了後、部室に残るようにと言われた。


2 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/03/04(金) 00:10:51 ID:cRmSreQgO

―――――
―――


その時のハルヒは何処か変だった。何かそわそわしていて、何時もの活気溢れる姿ではなかった。

「何だよ?何か話でもあるのか?」

「…うん。…あのさ、あんたは…、誰かを本気で好きになった事ってある?」

「………いや、ねえよ。」嘘だ。本当は俺はハルヒの事が本気で好きだった。でもその時はあえて言わなかった。もし、そこで俺の本心を言えば今までのこいつとの関係が拗れそうな気がしたからだ。

「………そう。」

「どうしたんだよ?急に。」

「……誰にも言わないでよ。……あたしね…、」


「…古泉君が好きなの。」


「…………え?」
突然の告白に戸惑った。
そしてそれ以上に胸の苦しみを感じた。まるで心臓が針金のような冷たい何かに縛り付けられた様に。
あまりの衝撃にただ返事を返すという簡単な事がその時は本当に精一杯だった。ただ小さく、情けない声で「…そうなのか。」と返す事しか出来なかった。

「……うん。卒業してあたし達SOS団はバラバラになっちゃうから卒業式の日に告白しようと思っているんだけど…、もし駄目だったら…あたし…。」

「…何弱気になってるんだよ。お前なら大丈夫だ。あいつ彼女いないらしいし…、前に陰でお前の事魅力的だって言ってたんだぜ。」

「…それ本当?」

「本当だ。何なら俺も協力してやる。」

「…うん。ごめんね、キョン。あたし一人だと不安で仕方ないの。こんな事相談できるのもキョンしかいなくて…。」

「…気にするな。…また何か不安な事があったら言えよ。」

「…うん。」

3 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/03/04(金) 00:23:18 ID:cRmSreQgO

―――――
―――


その日はハルヒと一緒に下校した。
色々雑談を交わしたがあまりその内容は覚えていない。ハルヒが古泉の事を好きだという突然の事実を突き付けられた俺は感情を殺し、泣くのを堪える事に必死だったからだ。
本当は今すぐ走って帰りたかった。一人で思いっきり泣きたかった。でもそれは出来ない。不本意ながら協力すると言った以上、そんな身勝手な事をする訳にはいかなかった。それにハルヒに余計な心配をかけたくはなかった。


そして今日、卒業式を迎えた。

4 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/03/04(金) 00:40:51 ID:cRmSreQgO

卒業式を終えた後、SOS団の解散式が行われた。団活もこれで最後かと思いながらドアを開けると長門と意外な事に朝比奈さんが来ていた。
そして古泉も。

「久しぶりね!みくるちゃん!」

俺と一緒に部室に向かったハルヒが何時も通りの声を張り上げて解散式が始まった。

「古泉、解散式が終わったら部室に残ってくれないか?ハルヒから話があるらしい。」

「…?いいですよ。」

作戦通り俺はこっそりと古泉に部室に残るようにと伝える事に成功した俺はハルヒにその旨を伝える為にハルヒの目を見て頷いた。するとあいつは、緊張した表情で頷き返した。
お前、そんな表情する時もあるんだな。

6 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/03/04(金) 01:18:04 ID:cRmSreQgO

……


「ではこれにてSOS団は解散します!またいつか会いましょう!」

解散式はハルヒの威勢の良い声で幕を閉じた。
朝比奈さんはボロボロと涙を流し、顔が真っ赤だ。長門も何時もとは違う表情を浮かべていた気がした。そして二人は先に部室を後にしてそれぞれの帰路に向かった。未来と宇宙の親玉の元へ。
ハルヒのあの不思議な能力は半年前完全に消えてしまった。だからもうあの二人がハルヒを観察する事はない。多分これが永遠の別れになるだろう。
そんな事を考えていると二人の足音はとっくに聞こえなくなっていた。俺は席から立ち上がり、鞄とコートを手に持ちドアを開けた。

「…じゃあな。」
小さいが、静かになった部室では充分響く声で俺はハルヒと古泉に別れを告げた。

「…ええ、さよなら。」

「…うん。じゃあね。」

古泉はいつもと変わらない笑顔で優しく、
ハルヒは緊張した面持ちでさっき程とはうって変わって小さくそれぞれ返事を返してくれた。

…いよいよだな、ハルヒ。…頑張れよ。

ハルヒにテレパシーを送り俺はドアを閉めて階段を降りようとした。


しかし、俺はこっそりと部室のドアの横へ引き返してしまった。

何をしているんだ?
こんな事しても何の得にもならないのに。

何故引き返してしまったのかは自分にもよく分からなかった。
頭では分かっていても体は言う事を聞かなかった。
やはり気になるんだな。
あの二人が。無意識のうちに。
そうこう自分の行動を分析しているうちに部室から声が聞こえてきた。
ハルヒの声だ。
何を言っているのかは聞き取れなかった。
それに続いて古泉の声が聞こえた。これもはっきりとは聞こえなかった。
もう少し壁に寄ってみるとハルヒの声がはっきりと聞こえた。


「古泉君の事が、好きです。」


心臓が飛び跳ねた様な感覚。そしていつか感じた苦しい感覚。いや、それ以上のものを感じた。
俺はその場を去った。
聞かなきゃ良かったぜ。

7 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/03/04(金) 02:01:43 ID:cRmSreQgO

………
……

そうして俺は学校を飛び出し、冒頭の状況へと至った。

丁度一週間前、俺の右隣にはハルヒがいた。
内容は覚えていないが雑談をしていつも通りの笑顔を見せるハルヒがいた。

今は、もういない。
いるわけがない。
右隣の淋しさに虚しさを感じる。
本当ならこのまま真っ直ぐ家に帰宅するべきなのだが、この虚しさを埋めたいあまり何処か寄り道をしたくなった。

そうだ。喫茶店に行こう。何時もの喫茶店に。コーヒーでも飲んで帰ろう。
涙を拭い、喫茶店へと向かった。


向かう途中色々な思考が頭を過る。
ハルヒは上手くいったのだろうか?
あの後、古泉は何と答えたのだろうか?
もしかしたら今頃二人仲良く手を繋いで校門をくぐっているのだろうか?
そんな状況を想像してみると案外簡単に想像がつく。絵になるな。なんだかんだ言っても美男美女だ。何だか悔しいぜ。
でも、もしフラれたのならば今頃あいつは泣いているのかもしれない。
そう思った瞬間俺は立ち止まり、引き返そうとしたがやめた。そっと一人にしておくのが一番か。それにあの時、長門が革変した世界で古泉はハルヒが好きだと言った。多分この世界でもそれは変わらないだろう。ハルヒがフラれる訳がないか。

そうこうしている内にもう喫茶店に着いた。色々考え事をしている時ていうのは本当に時間が経つのは早い。喫茶店迄の距離はかなりあったはずだがもう着いてしまった。
気が付けばもう空は暗くなっている。

暖かいな。
喫茶店のカウンターに座りコーヒーを注文すると直ぐに出てきた。

やっぱりブラックは苦い。砂糖を入れよう。
俺もまだまだガキだな。

辺りを見回すと人は少なく不意にいつも座るあの席が目についた。今は誰も座っていない。
もうあの五人で来る事もないんだな。
誰も座っていない淋しさからなのか、そう思ってしまう。

8 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/03/04(金) 02:34:44 ID:cRmSreQgO

コーヒーを飲みきって、会計を済ませて外に出るとかなり寒い。この時期いくら暖かくなると言ってもやはりこの時間は寒い。

帰ろう。
家に向かい一歩踏み出すと駅の入り口に目を奪われた。

見間違える筈もない。ハルヒと古泉だ。
二人はかなり密着している。それに何時も以上の笑顔を浮かべているのがはっきり分かる。

上手くいったんだな…。
おめでとう…。ハルヒ…。
ハルヒを泣かすんじゃねえぞ、古泉…。

俺の存在に気付かない二人にテレパシーを送る。
届くわけないか。
本当に絵になるな、お前達。美男美女のカップルだぜ。

…でもやはり俺は素直に喜べない。
それどころか大きな虚しさを感じる。


二人は何かを話し合った後、ハルヒは駅へと歩み、古泉はその反対の方向に歩き出した。
あいつらも帰るのか?

そう思った瞬間、
ハルヒが古泉の方へ走り寄り、ハルヒの方に振り向いた古泉に、

キスをした。

古泉は驚いた顔で、
ハルヒは目を閉じ、幸せそうに。

見ていられなかった。
俺は逃げるようにその場を走り去った。
街の街灯や車のライトが異様に眩しい。息が苦しい。涙が溢れて来るのが分かった。

家に着くと俺は自分の部屋のベットに突っ付して泣いた。

終わった。
俺の初恋は終わったんだ。あの二人のキスを見て俺は今更ながらそれを実感した。

この気持ちはハルヒに届く事は無いだろう。届いたとしても何も変わらない。もう遅い。


人はよく、『時間が解決してくれる』とか、
『いい思い出になる』とか言うけれど…、


俺のこの苦しい気持ちはいつか本当に時間が解決してくれるのか?

部室でのハルヒの告白の言葉や、あの二人のキスや、俺が失恋して泣いている『今』がいつか本当にいい思い出になるのか?

分からねえ…。
どうすればいいんだよ…?
なあ、教えてくれよ…。


……ハルヒ。


終わり

9 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/03/04(金) 02:41:47 ID:cRmSreQgO

以上で終わります。
読んでくださった方々ありがとうございました。




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