古泉一樹の笑顔


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2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:01:36.44 ID:7WhMuFx/0

高校三年生の夏。こういうSOS団平部員という身分ではなければ俺も高校最後の夏休みを過ごすのだろうが、流石は我らが団長様というべきか、SOS団にそんな個人の休みなどは雀の涙にも等しく毎日暑さに耐えながら坂道をえっちらほっちら上り部室を目指す。
やれやれ、今日も何事もなく終わればいいが。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:04:25.67 ID:7WhMuFx/0

と、言っても思考が支離滅裂、おそらく頭のネジどころか頭の基板がどこかに吹っ飛んだハルヒの事だ、今日も何かやらかすに違いない。
昨日も朝比奈さんのコスプレを変えるとかなんとかで大騒ぎになった。
俺としてもそれはとても素晴らしい案だとは思うが、それでも彼女の意志を尊重すべきである。

「やっと着いたか……」

何度上ってもこの坂だけは慣れる事はないだろうな。本当に疲れさせてくれる坂だぜ……。


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:05:15.37 ID:7WhMuFx/0

人は気付かぬ内に大きな過ちを犯してしまう時がある。
その間違いに気付けば良いものだが、人という生き物はそんなに大層な考えを持つのは僅か少数ばかりで、多くの人間は見てみぬ振りをする。要するに臭いものに蓋をするというやつだ。
このため、大人になるということは、過ちを認めるということである、と俺は悟りを開いている。


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:06:06.57 ID:7WhMuFx/0

だからな、ハルヒよ。
今回はいくら知らなかったとはいえ、気付いてもらうぞ。
俺もお前も、結局SOS団が好きなんだからな。


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/31(月) 00:06:48.03 ID:7WhMuFx/0

「古泉が休み?」

「そうなのよ。何度電話しても出ないし、何かあったのかしら」

意外だ。おそらく長門以上にハルヒにいろんな意味で興味を持っている古泉が休みとは。

「どうだろうな……。まさか古泉が無断欠席するなんて考えられん」

「ええ。キョンならともかく、あの古泉君が休みなんて緊急事態だわ」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/31(月) 00:07:28.75 ID:7WhMuFx/0

キョンならともかくってなんだ。お前は普段から俺をそんな目で見ていたのか?

「当たり前じゃない。キョンなら平気で面倒な時に休みそうだわ」

やはり、というかコイツの中で俺の評価は散々らしい。まあ知ってたが。

「そうねえ。折角だしお見舞いに行きましょ。キョン!フルーツの大盛り!みくるちゃんはナース服よ!」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/31(月) 00:08:10.00 ID:7WhMuFx/0

「うう、また着るんですかぁ……?」

「当たり前でしょ!いつ着るのよ?」

今日以外にも結構な頻度で着てるけどな、メイド服と交互で。
ちなみに朝比奈さんが部室に来ているのは決して留年したわけではなく、大学が休みだからである。ビバ、夏休み!

「ほら、有希も早く準備して!」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/31(月) 00:08:51.17 ID:7WhMuFx/0

「……止めておいたほうがいい」

「……え?」

俺が驚いたのは言葉の意味じゃない。
ほんの少しだけ、多分俺しか気付かないんじゃないだろうか。そのぐらい微妙だが。
長門の言葉には、棘があった。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:09:32.30 ID:7WhMuFx/0

「どういう意味よ、有希」

「彼はひどく体調を崩していて此処に来る程度も困難な程衰弱していた。今行くと彼に迷惑をかけるだけ」
「行ったの?」

こくりと静かに長門は頷いた。
――お前は嘘をついているな、長門よ。

「行くなら明日」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:10:13.22 ID:7WhMuFx/0

「それもそうね。じゃあ、今日は解散!」

「おいおい、良いのか?」

「良いわよ。どうせ古泉君が来ないんなら意味ないし」

こいつは一体何をするつもりだったんだ。とはいえ早めに終わってくれるのは助かる。
いろいろ聞きたいこともあるしな。
ハルヒに気付かれないよう、長門にアイコンタクトを送り俺は部室を出た。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:11:06.61 ID:7WhMuFx/0

相変わらず長門の部屋は無機質で、実に質素な家具の配置をしている。家具を置かない辺りはきっと長門の趣味なんだろう。

「本題を言うぞ」

当たり前だが今日長門の家に来たのはわけがある。
「古泉一樹のこと?」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:11:47.52 ID:7WhMuFx/0


「ああ。どうもキナ臭い予感がしてな」

しかもその予感は当たっているらしい。
「座って。少し長くなるかもしれない」

「分かった」

「貴方は古泉一樹についてどこまで知っている?」

また単刀直入にきたな……。そうだな。
古泉一樹。エスパーでライトなホモ野郎。SOS団副団長。優男だが意外と友情に熱い。

「まあ、このぐらいだな」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:12:28.74 ID:7WhMuFx/0


「よく見ている。流石」

ありがとよ、と言いたいところだが言ってしまえば俺までホモになってしまうので言わない。

「ただ、貴方は家族構成についてなど彼のプライベートは知らない」

「そういやそうだな」

少しだけ長門は躊躇った様子だったが、やがて諦めたように口を開いた。

「古泉一樹の両親は既に死亡している」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:13:09.95 ID:7WhMuFx/0


「は?」

「……。古泉一樹の両親は彼を生んだ後、記念旅行の旅先で事故に遭い死亡。奇跡的に生き残った彼は孤児院に預けられ、気の合う友人達と小、中学校と過ごすが、中学一年生の時自分が授かった能力を知り半ば強制的に機関に所属。英才教育を受け今に至る」

「……相当悲惨だな」

言葉が出ない。そりゃ、バイト続きで親御さんが何も言わないというのはおかしいだろうが、それでもそんな過去があると誰が予想できようか。まさかSOS団副団長の背景にそんな過酷な人生があるとは……。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:13:50.95 ID:7WhMuFx/0


「……話を続ける。昨日の20時37分46秒にやや中型の閉鎖空間が発生した。それに古泉一樹も参加しいつものように戦い続け、結果として勝利したものの……」

嫌な予感がする。もしや……。
それを察したのかどうかは分からないが長門は静かに首を振った。

「古泉一樹は無事。安心して」

「ああ、それなら良かった」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:14:31.83 ID:7WhMuFx/0

流石に何かあったら目覚めが悪いからな。

「ただ、昨日の戦いの中で不幸にも重傷者が出た。それが」

夏だというのに少しだけ肌寒く感じた。気のせいか、気の遠くなるような寒さで思わず身震いする。
長門の顔は以前変わらないがそれでもどこか寂しい。きっと俺だけでなく他の誰が見ようがそんな感想を持つに違いない。

「それが森 園生」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:15:12.61 ID:7WhMuFx/0



「嘘だろ?」

咄嗟に出てしまったがあり得ない話だ。いや、違う。あり得て欲しくない。

「嘘ではない。昨日の晩森園生は仲間の一人を庇い頭部を激しく打ちつけてしまった。そして今現在意識を取り戻してはいない」


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:15:53.57 ID:7WhMuFx/0

もちろん長門がジョークを言うはずがない。ここで軽く微笑しながら「……嘘」という長門がいたらそれはいつぞやの消失の長門で今の長門ではない。
だがしかし。唐突すぎてリアリティがなさすぎると思う俺は間違っていないのだろうか。

「以前から古泉一樹は森園生のことを姉のように慕っていたフシがある。両親がいないのだからどこか彼女に母性を求めていても不思議ではない」

確かにな。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:16:34.38 ID:7WhMuFx/0

「それが事実かどうかは別として、古泉一樹が塞ぎこんでしまったのは事実。……今の彼の姿はあまり良い状態ではない。昨晩私の所に電話してきた彼は驚くほど取り乱していた」

「そうか……。長門」

「なに?」

「古泉のところに連れていって欲しい」

「……了解した」


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:17:16.10 ID:7WhMuFx/0

何故言ったのか自分でもよく分からない。ただ、反射的に脳に言葉が浮かび、それをそのまま口にしただけだ。


少しばかり歩いたアパートに古泉は住んでいた。失礼かもしれないが、あまり状態のいいアパートではない。
インターホンはなく、そのままドアを叩くようだ。

「古泉、いるか」

トントンと叩いた後、少しの間があったが、やがてドア元に人の気配がする。
「……あなたですか」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:18:16.80 ID:7WhMuFx/0

「ああ。それと長門もいる。……少し話がしたい。話ができないのなら構わんが……」

少々躊躇ったのか、やはり間が開く。そして弱々しく、「どうぞ」と声がした。

「邪魔するぞ」

古泉のアパートの中には生活必需品、そして部屋の隅に束ねてあるボードゲーム以外ほとんど何もなかった。
そんな部屋の真ん中に、虚ろな目をした古泉は座っている。ならうようにして俺も長門も座った。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:18:57.96 ID:7WhMuFx/0

「すみません、たいしたもてなしもできず……」

「なに、構わんさ。……長門から話は聞いた」

「そうですか……」

しばらくの沈黙が続く。時間を感じさせるのは水道の水が滴る音だけで、後は何もない。

「……正直言って、今の僕は涼宮さんが憎いです。彼女が、彼女がいなければ」

「古泉……」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:19:39.28 ID:7WhMuFx/0

「だってそうでしょう?僕の力だってそうですし、今回の件も彼女が原因だ。これで何も思わない人間がいますか?」

「それは」

「僕は、僕は普通でいたいんですよ!あなたのように普通で平凡で!友達と遊び、休日に映画に行って、気苦労なく夜に寝る、そんな生活が欲しいんですよ!!」


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:20:20.23 ID:7WhMuFx/0

……古泉のそれは慟哭だった。
普段の優しい男が決して見せることがない、悲痛の叫びだ。
常日頃こいつがハルヒをどう思っていたかは分からない。だが、今の古泉はハルヒに対して嫌悪しか抱いていない。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:21:00.94 ID:7WhMuFx/0

ああ。俺には分からんさ。こいつの気持ちが分かることができない。それは悔しくもあり、同時に悲しくもある。
だが。それは俺の話だ。
俺では慰めることは無理でも、違う奴はできる。

「涼宮ハルヒは決して悪くない」

「長門さん……」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:21:41.98 ID:7WhMuFx/0

「今回のは確かに不幸な事故。でもそれは彼女のせいでももちろん森園生のせいでもない。彼女を憎むのはお門違い」

長門の言葉は至極単純。だが、それには重みがある。
かつて普通に憧れ、それを欲した。そして、諦めた。
長門だからこそ重みがあり、長門だからこそそれが伝わる。
例え一から十まで教えずとも、それだけで諭すことができる。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:22:22.69 ID:7WhMuFx/0

「彼女がいたから私たちは集まれた。朝比奈みくるも、私も、そしてあなたと古泉一樹も」

今の長門はとても凛々しい顔をしている。まるで、間違いを犯した子供を叱る母親のように凛然としたものだ。

「自分の立ち位置をよく考えて欲しい」

「……。すみません、今日は、もう帰ってもらえますか」

「……ああ。悪かったな」

古泉の顔は依然として晴れることはなかった。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:23:03.81 ID:7WhMuFx/0

夕暮れをバックにして帰るには丁度いい日だな。

「古泉は……」

「彼なら大丈夫」

言い終わらないうちにきっぱりと長門は言い放つ。本当に変わったよ、こいつは。

「お前が言うんならそうだろう。だがな」

「分かっている」

やはり長門は物分りがいい。当然の如くこちらの真意に気付いているようだ。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:23:44.96 ID:7WhMuFx/0

「反対しないのか」

「情報思念体には念を押されている。また、古泉一樹及び朝比奈みくるは反対する。でも」

少しだけ、本当に少しだけ長門は微笑む。
風が凪いで長門の髪を揺らす。それがまたミステリアスで、微笑む長門の魅力をより一層強くした。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:24:25.86 ID:7WhMuFx/0

「私は構わない。貴方が決めること」

「そうか」

以前バグとして認識していたものを、今の長門は確実に理解している。これがおそらく長門を変えた理由だろうね。

「ハルヒの能力を俺はばらす」




35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:25:06.98 ID:7WhMuFx/0

『ハルヒ、今出れるか』
『なによ。まあ暇だけど』
電話越しのハルヒの声色はさほど不機嫌でもない。そういやこいつも変わったといえば変わったな。
『公園で待ってる。大事な用なんだ』
『……いつになく真剣ね。分かったわ、公園ね!』
やたらと張り切った様子で電話を切る。元気だなオイ。


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:25:48.07 ID:7WhMuFx/0

十分程度か。ハルヒは少しだけ息を切らせて公園に来た。

「悪いな」

「いいのよ。で、話しってなに?」

「ああ。ちょっとあそこのブランコに座ろうぜ」

「いいわよ」

日はすっかり暮れ、辺りは薄暗い。くしくもあの日と同じようなシチュエーションだ。

「久し振りね、キョンと一緒にこのブランコ座るの」

「まあな」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:26:29.12 ID:7WhMuFx/0

――今となっては笑い話にしかならないが、二年のあの春、俺はハルヒに告白しようと試みた。

『好きな奴とかいるのか』

この時ほど緊張したことはない。もちろん確信ではないが、いけると思った。
だが。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:27:19.19 ID:7WhMuFx/0

『え、SOS団の皆には内緒よ……。私、古泉君が好きなの……』

惨敗だった。
今考えればやたらと古泉に好意的だったとか、様々な要因は見つかる。しかしその時の俺の頭の中には毛ほども考慮していなかったのだ。

『あんたは?』
『え……?』
『いるんじゃないの?だって聞いてきたんだし』
『あ、ああ。俺は――』

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:28:00.61 ID:7WhMuFx/0

「はあ。全くキョンに先を越されるとはねー」

「お前の助けがあってこそだけどな」

「大事にしなさいよ?あんたに釣り合わないどころかお釣りが万単位で返ってくるわよ」

「分かってるよ。休みには遊んでるしな」

「お弁当も作ってもらってるしね」

「……改めて人に言われると恥ずかしいな」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:30:32.40 ID:7WhMuFx/0

佐々木のようにくっくと笑いながらハルヒはブランコをこぐ。

「いいじゃない、ラブラブで」

「……お前はさ、いつも言ってるよな。不思議なことがあればいいのにって」

「当たり前よ」

「でもな。案外身近なところに不思議ってのはあるんだよ」

「そうかもね」

「……世界はお前を中心にして回ってるって言ったら、信じるか?」



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:31:13.29 ID:7WhMuFx/0

ピタっと、お互いブランコをこぐのをやめた。
数秒立ったのち、ハルヒは口を開いた。

「面白いこと言うわね。新手のギャグ?」

「いや、そんなんじゃなくてな……」

「帰るわよ。じゃあね」

ハルヒが立ち上がる。
当たり前だ。こんなことを言う方がどうかしている。
それでも。
伝えなくてはならない。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:31:54.01 ID:7WhMuFx/0

「待ってくれ!」

「なに?まだ用事?」

「俺は、俺はなハルヒ」

「ふ。ふふ。アッハッハ!」

「……?」

「なに取り乱してんの、ジョン!」

「な、ハルヒ……!?」


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:32:35.12 ID:7WhMuFx/0

「やっぱりね。そっか、あんたがやっぱりジョンよね」

ハルヒは例えるなら朝比奈さん大人バージョンのように大人っぽい顔立ちになった。

「薄々気付いてたわ。桜もそう。有希の熱の時だってそうだし、極めつけにあの夜の学校もそう。
あ、ことごとくあんたの後ろになるのもそうかしら。何となくだけど自分には特別なものがあるんだろうなあってね」


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:33:16.12 ID:7WhMuFx/0

「じゃあジョン・スミスもか」

「他人の空似じゃ、ね。似過ぎるほどあんたと一致してたら何かあるのかぐらい疑うわよ」

「おいおい、俺の気苦労は何だったんだ?」

「知らないわよ。あえて言うなら、ご愁傷様?」

「やれやれ……」

全く、ハルヒも人が悪い。知っててなおあんなことやってたのか。


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:33:57.22 ID:7WhMuFx/0

「ハルヒ、古泉のところに行こう。古泉は今ちょっとばかし疲れててな。お前の喝をいれてやってくれ」

「任せなさい!私はSOS団団長なんだから!」



よお古泉。悪いな、二回も来ちまって。
嫌な予感がするって?おいおい、そんな嫌な顔するなよ。悪かったよ。
実はな、今日ハルヒを連れて来てるんだ。ハルヒ、入っていいぞ。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:34:38.38 ID:7WhMuFx/0

「涼宮さん……」

「キョンから聞いたわ。森さん、まだ悪いの?」

「いえ……。先ほど目を覚ましたようです」

「そう。良かった」

俺はハルヒの出方を伺う。古泉は未だハルヒをまともに見れないし、ハルヒもまた古泉に対して遠慮がちだ。


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:35:19.30 ID:7WhMuFx/0

「……私、古泉君、いいえ、機関の人に謝らなくちゃいけないわ。私のせいでこんなことになっちゃったんだし」

「……話したんですか」

「ああ。必要な処置だと思ってな」

「処置って……!僕らがどれだけ……」

「私は少しだけ気付いてた」

「涼宮さん……?」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:36:00.06 ID:7WhMuFx/0

「気付いてたけど、それは放置してた。だって気付いてしまったらSOS団の意味はなくなっちゃうもの。勝手な話だけど、私は不思議探索で不思議を見つけるんじゃなく、不思議探索で皆と不思議を見つけにいくことが好きだったのよ」

「いいえ、それすら違うのかも。本当は古泉君に会いたいだけだったのかも」

「え?」

「好きです。古泉君のことが」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:36:41.13 ID:7WhMuFx/0

少しだけ胸が締め付けられる。本当の意味で、この瞬間俺の初恋は終わったのだから。
だがそれは後に思い出せばいい。今は、ぽかんとしている古泉に助け舟を出してやらんとな。

「古泉。確かにお前はハルヒのことをよく思わんかもしれん。それはそうだろうさ。だがな、お前が頑張ってバイトに精を出したおかげで俺達が助かっている」

「そしてその努力の源がSOS団なんじゃないのか?」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:38:07.69 ID:7WhMuFx/0

「古泉君……」

ハルヒは既に押し黙っている。文字通り決死の告白だからな。
そして俺は知っている。こんな時、我がSOS団副団長はどうするかを。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:38:48.59 ID:7WhMuFx/0

「……確かに先ほどまで涼宮さんをよく思っていませんでした。僕の憧れは平凡ですし」

「ただ。僕の唯一の居場所はSOS団であり、そしてそれは僕の能力無しには語れない場所です」

「僕の能力の意味は誰かを守ることであり、そしてひいては涼宮さんのためです」

「今日は失言でした。やはり取り乱すと僕も厄介ですね」

「……僕としても、よろしくお願いしますよ、涼宮さん」

「……ありがと」

よかったな、ハルヒ。おめでとうと賛辞を送るぜ。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:39:31.15 ID:7WhMuFx/0


その日を堺に古泉は普通で平凡な学生となった。
そりゃそうだ。なにせ元凶なるハルヒが自重しているんだから。
実際のところハルヒの能力がどうなったのかは分からない。あの日以来めっきりとその能力は使われていない。ハルヒも普通の女子校生になったということなのだろうか?
けれど、それ以外大きな変化はない。毎日休み以外は不思議探索は行われ、有りもしない不思議を淡々と探している。俺はそれこそが不思議なんじゃないかとさえ思うね。

まあともかくだ。

古泉の微笑に変化が起きたのは言うまでもない。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:40:12.43 ID:7WhMuFx/0

「この服でもいいでしょうか……」

「あんまり堅苦しい服はデートでどうかと思うぞ。もうちょっとラフな感じで」

「そうですかね?」

「そういうもんだ。そういえば古泉、最近変わったな」

「そうですか?自分ではあまり思いませんが……」

「変わったぞ」


微笑みが、笑顔になってるからな。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 00:41:27.09 ID:7WhMuFx/0

終わりです。短いですが付き合っていただきありがとうございました。
機会があればキョンの彼女も書こうと思います



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