佐々木「キョン、2010年度日本シリーズ第二戦が始まるよ」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:09:23.62 ID:mwz5ov+80

「どう? キョン、トリックオアトリートよ!」

 何をとち狂ったのか、SOS団長であるハルヒがチャイナドレスを纏っている。

 背後には、メイド服に続く定番衣装となったウェイトレス姿の朝比奈さんと、これまた定番である魔女ルックの長門が控えていた。

 俺がノーマル側の人間であることを理解してもらうために言っておくが、ここは我が家のリビングである。決して、どこぞのホテルのパーティー会場ではない。

 リアクションに迷う俺に業を煮やしたのか、ハルヒは怒声に近い大声で、

「あんたね、今日が何の日だか忘れたとは言わせないわよ。我がSOS団がこんなに楽しそうなイベントを無視するなんてありえないもの!」

 今日、と言われてようやく気付いた。十月の最終日、遠く西洋ではハロウィンなる伝統行事が開催される日なのだ。

 だからといって、西洋由来の祝祭に東洋丸出しの衣装で臨むハルヒはどうかと思う。

 長門や朝比奈さんは、一応西洋式のいでたちをしているわけだからな。

 まあ、差し迫った文化祭に出展する『長門有希の逆襲 Episode:00』が未だにクランクアップを迎えず、着たきりとなっている非常事態にはこの際目を瞑るが。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:09:50.50 ID:mwz5ov+80

「あたし、一度でいいからこの制服着てみたかったんですよね。やっぱりかわいい」

「ねえねえ、キョンくん。あたしも着替えたよー」

 SOS団かしまし娘へのコメントを考えている間に、橘と妹の着替えも済んでしまったようだ。

 当然の如く衣装を用意していなかった二人は、しかし仮装パーティーへの参加を声高に表明し、その結果北高の制服に身を包むこととなった。

 ミドルティーンである橘は、その容姿も相まって、非常に似合っている。こいつが前科持ちでなければ賞賛の言葉を漏らしてしまったことだろう。

 だが、問題は妹である。現役小学生、しかも六年生にもなって低学年児童にしか見えないコイツが北高制服を着ていると、猛烈にツッコミを入れたくなる。

 しかも、胸のあたりに詰め物(水風船あたりか?)をしているのは、制服を貸与してくれた恩人である朝比奈さんへの当て付けとしか思えない。



 妹を叱るべきか、はたまた大人然と忠告に留めるべきか迷っていたところに、いよいよ最後の仮装者が現れた。

「キョン、どうだろうか。僕は変ではないかい?」

 羞恥に双頬を染めた佐々木の姿に、俺の気が変になりそうだった。

 佐々木もまた衣装の持ち合わせがなく、北高の制服に身を包むこととなった。しかし前者と大きく異なるのは、それが『俺の制服』であることだ……。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:10:20.64 ID:mwz5ov+80

 まず最初に言っておく。佐々木は僕という一人称を使っているが、決して性同一性障害を患っているわけではない。

 仮装に際し、橘や妹のように北高女子生徒の制服に身を纏う予定であったのだ。

 しかし、その制服が二着しかなかった。ハルヒと朝比奈さんの分だ。長門は魔女ルックであるが、マントの下に制服を着ているからな。

 熟慮の結果、俺の制服を着せるという結論に至る事となった。客人である古泉には着替えがないという消去法的選択によるものだ。

 ちなみに、古泉の制服を着せるという案もハルヒから提案されたのだが、俺が却下した。なぜだかしらんがムカついたからな。

「キョン、何か言ってくれないだろうか。異性の服に身を包む状況下では、やはり恥ずかしさが先立ってしまうからね」

 外見はどうしようもなく女性である佐々木が、俺の制服を身に着けている姿というものは、どことなく倒錯を感じさせ、

 その非日常的世界に俺の意識は吸い込まれてしまった。感想? そんなもん言えるかよ。口にしたら恥ずかしさで死んじまうぞ。

 しかし、僅かに身を揺らす佐々木が、もじもじと羞恥に耐えているように見えて、俺は当たり障りのないであろう質問をかけてしまった。

「佐々木、俺の制服は……その、大丈夫か? なんか気になるところとかないか」

 そうだね……、と回答に迷うような素振りを見せる佐々木であったが、やがてその口を開いた。場が騒然とするような破滅の呪文と共に。

「ふふ、なんだかキョンの匂いがするよ」

「佐々木、今すぐその制服を脱げ」――俺は即座に言い放った。

 冷静な佐々木には珍しく、紅潮した顔に驚きの表情を浮かべていた。その珍重なる瞬間をもう少し目に焼き付けておきたいところだったのだが、エロキョンと喚き散らすハルヒによって阻止されることとなった。

 どうして俺がエロだとか糾弾されねばならんのだ。佐々木なりのジョークなのだろうが、男性の体臭を感じて微笑む親友の奇行は糾さねばならないだろ……。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:10:39.63 ID:mwz5ov+80

※このスッドレは『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズに登場したキャラクターが、キョンを賭けて担当チームを応援するスレです。
※原作『涼宮ハルヒの驚愕』までのネタバレがあるかもしれません。アニメだけしか観ていない方はご注意下さい。
※話の流れは実際の試合展開に順じます。
 → 地上波「東海テレビ」、BS「NHK-BS1」、CS「JSPORTS2」で視聴できます。

【主な登場人物】
 ・古泉一樹:中日ドラゴンズファン
 ・キョンの妹:千葉ロッテマリーンズ

 ・キョン:読売ジャイアンツファン
 ・佐々木さん:北海道日本ハムファイターズファン

【お知らせ】
 ・当スレの佐々木さんとキョンは、2009年日本シリーズに登場したキャラクターと同一ではありますが、
.  諸事情により(一年間の時間遡行を受け)二人で試合観戦した記憶を失い、親友という関係に戻っています。

 ⇒『諸事情』について知りたい方は、2010年パ・リーグ開幕カードをご参照下さい。
   三回戦:ttp://www.vipss.net/haruhi/1269230814.html
   ※「ハルヒSSまとめサイト+α」さんより

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:17:49.18 ID:mwz5ov+80

一回表 竜0−0鴎 チェンジ P:チェン
西岡 投ゴ
清田 右飛
井口 遊ゴ

「結局、大松は選手登録を外れる事となったのだね」

 隣に寄り添う佐々木が、少し残念そうに口を開く。

「ああ、そうだな」

 そう答えるのが精一杯だった。

 何せ、小柄な佐々木にとって、俺の制服は大きすぎるらしく、その袖をだらしなく余らせているくらいなのだ。

 しかも、襟ぐりに至っては、ネクタイを締めているにもかかわらず大きく開いており、

 見てはいけないものが顔を出しそうな気配さえ漂っているのだから……。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:23:14.61 ID:mwz5ov+80

一回裏 竜0−0鴎 一死一塁 P:マーフィー
荒木 左安
井端 左飛

「アライバの一二番、往年の中日を彷彿とさせるね」

 何でもできるコンビだからな。相手にとってこれほどイヤな一二番コンビもないだろ。

「ふむ、バントはしなかったのだね」

 まあ、今回は強攻策が裏目に出ちまったみたいだが。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:27:16.99 ID:mwz5ov+80

一回裏 竜1−0鴎 二死一二塁 P:マーフィー
森野 中安
和田 中タイムリー!
ブランコ みのさん

「変化球が高目に浮いたとはいえ、見事なバッティングだ」

 荒木も一度は止まったんだがな。三塁まで行くとはさすがとしか言えないぜ。

「これでワンナウト一三塁、しかも打者は和田だ。ここは試合が動きそう――ふむ、さすがだね」

 和田があっさりタイムリーか。なんだか今年のCSファイナル第一戦を見てるようだぞ。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:33:12.66 ID:mwz5ov+80

一回裏 竜4−0鴎 二死二三塁 P:マーフィー
野本 二失
谷繁 よんたま(押し出し)
大島 左二タイムリー!

「エラーから押し出し。マーフィーは場の雰囲気に飲まれてしまったかも知れないね」

 井口の守備も惜しかったんだがな。中日にとっては大きなプレイになっちまったか。

 チェン相手にこれは厳しいな。まだ失点する可能性を考えれば試合が決まっちまうかもしれん。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:37:55.51 ID:mwz5ov+80

一回裏 竜4−0鴎 チェンジ P:マーフィー
チェン からさん

 チェン相手に、初回4失点か。

 ますますCSの中日巨人戦を思い出しちまうな……。

「ん?」

 ふと右側に目をやると、チャイナドレスに身を包んだハルヒが座っていた。

「…………」

 無言でテレビを睥睨しているのは機嫌の悪い証拠だろう。

 しかし、なぜそんな格好で脚を組むんだ? ますます目のやり場に困るだろうが……。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 18:51:45.40 ID:mwz5ov+80

二回表 竜4−0鴎 チェンジ P:チェン
サブロー 一邪飛
今江 左飛
金泰均 中安
里崎 からさん

「さすがチェンね。憎たらしいほどいいピッチングだわ」と、ハルヒ。

「ああ」

「金泰均もすごい粘りだったね。厳しいコースもことごとくカットして、ヒットに繋げたのだから」と、佐々木。

「ああ」

「ちょっとキョン! あんたね、人の話を聞いてるの? もっとまともな返事をしなさい!」

 待てハルヒ、これが俺の精一杯なんだよ。

 妙な格好をしたお前ら二人に挟まれて、まともな思考を要求するなんて無理な話なんだ……。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:00:51.90 ID:mwz5ov+80

二回裏 竜4−0鴎 無死一二塁 P:マーフィー
荒木 右安
井端 よんたま(荒木盗塁成功)

「ふぅん、ロッテの先発ってあのサブマリンじゃなかったのね」

 ハルヒの疑問も当然だろう。初戦を取ったとはいえ、マーフィーの体たらくを見ればそうも言いたくなる。

「涼宮さん、それはロッテが初戦を取ったからなんじゃないかな」

 ぶかぶかの制服に身を包んだ佐々木が、ひょっこりと身を乗り出す。

「西村監督は、この連戦一勝一敗で充分って星勘定をしてるんじゃないかしら」

「渡辺俊介の変化球は、マリンスタジアムの強風でさらに切れ味を増すから」

 佐々木の冷静な解説は、辛うじて耳に届いた。

 しかし一方で、俺は身を乗り出す佐々木に頼みごとをしたい気分であった。

 佐々木、前かがみになるもんだから、重力によってお前の襟が大きく開いているんだ。それに早く気付いてくれ……。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:04:02.23 ID:mwz5ov+80

二回裏 竜4−0鴎 無死満塁 P:マーフィー
森野 よんたま

「あら、またフォアボール? ロッテはますますピンチじゃない」

 俺の理性については、そろそろピンチを脱したいところだ。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:09:21.20 ID:mwz5ov+80

二回裏 竜6−0鴎 一死二塁 P:マーフィー
和田 中二タイムリー!(森野捕殺)

「6点失点でようやく降板か」

「ある程度負けを計算しているとはいえ、このままでは中日打線を勢いづかせてしまうからね」

 昨日の沈黙が嘘みたいなバッティングだからな。

 12球団一の防御率を誇る中日投手陣に、打線がついてくれば、ロッテにとって厳しいことはまず間違いないだろう。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:17:14.31 ID:mwz5ov+80

二回裏 竜7−0鴎 チェンジ P:マーフィー → 小野
ブランコ からさん
野本 左タイムリー!(左失)
谷繁 三ゴ

「中日打線が止まらないわね。勢いがあるとはいえ、野本もいいところでタイムリーを打ったものだわ」

 これで7点差か。

 序盤とはいえロッテ側には暗いムードが漂ってくるかもしれないな……。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:25:42.86 ID:mwz5ov+80

三回表 竜7−0鴎 チェンジ P:チェン
岡田 遊ゴ
小野 からさん
西岡 三ゴ

「小野が打席に立つのか」

「仕方のない選択だと思うよ。中日の攻撃は最低でも6回残されているのだから」

「ロッテ側とすれば、勝ちパターンの投手を温存したいという思惑があるのだろう。昨日登板したことだしね」

 なるほど、ロッテ側としたらこれからの戦いも見据えての打席だったのか。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:29:42.93 ID:mwz5ov+80

三回裏 竜7−0鴎 一死二塁 P:小野
大島 一ゴ
チェン 左二

「チェンが二塁打かよ」

「流れを象徴するようなヒットね。中日からすれば、息の根を止めるチャンスなんじゃないかしら」

 ハルヒ、あまり物騒な物言いをするな。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:31:45.27 ID:mwz5ov+80

三回裏 竜7−0鴎 一死一三塁 P:小野
荒木 左安

「荒木は3−3なのね。毎回安打してるじゃない」

 さすがにチェンは還れなかったが、中日は押せ押せだな。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:36:11.56 ID:mwz5ov+80

三回裏 竜8−0鴎 二死一二塁 P:小野
井端 二ゴ(二失・二塁封殺)
森野 よんたま

「井端の当たりはゲッツーコースか――って、井口がお手玉しちまったか」

「二塁の守備は難しいものよね。今のエラーも仕方ないんじゃないかしら」

 ハルヒ、お前が誰かをかばっているように聞こえるのは俺の気のせいか?

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:42:12.55 ID:mwz5ov+80

三回裏 竜10−0鴎 チェンジ P:小野
和田 よんたま
ブランコ 右タイムリー!
野本 一ゴ

「三番四番と連続フォアボールじゃない。もうちょっと打者に立ち向かいなさいよ!」

 ハルヒ、無茶言うな。

 次が不調のブランコなんだ。絶好調の和田を歩かせて満塁勝負って思惑も悪くないだろ。

「ブランコまで続いたわね! 中日はどこまで打つのかしら」

 三回終わって10点差か。ロッテにとっちゃ悪夢に近い展開だろうな。

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:50:22.63 ID:mwz5ov+80

四回表 竜10−0鴎 一死一二塁 P:チェン
清田 死球
井口 左安
サブロー 中飛

「♪うーてー いぐち たーのーむーぞー いぐち」

「ふむ、井口が続いてノーアウト一二塁。ロッテとしては少しでも反撃しておきたい場面だね」

 佐々木、その発言の前に井口の応援歌を楽しそうに踊っていたのは俺の幻覚か?

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:55:31.82 ID:mwz5ov+80

四回表 竜10−1鴎 二死一二塁 P:チェン
今江 中タイムリー!
金泰均

「♪ちーばーロッテマーリンズ おーおー まいらいっ!」

「ふぅ、ポストシーズンの今江はやはり怖い存在だね。あの場面でタイムリーとは」

 佐々木、日ハムファンであるお前が、どうして妹と一緒になって踊ってるんだよ。

 いや、それ以前にどこでロッテの応援歌を憶えたんだ?

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 19:59:38.48 ID:mwz5ov+80

四回表 竜10−1鴎 チェンジ P:チェン
里崎 みのさん

「その……、ロッテとの試合を観戦していると、ビジター側であっても彼らの応援が球場全体に響いてね」

「それで憶えてしまったのだ。ファイターズを応援している身としては悔しいことなのだが……」

 あのノリのいい応援だったら、意識しなくても憶えちまうか。

 しかし、佐々木。そんなに気にすることはないんじゃないか? 妹だって、佐々木と一緒に踊れて喜んでるくらいなんだからさ。

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 20:06:36.60 ID:mwz5ov+80

四回裏 竜10−1鴎 チェンジ P:小野
谷繁 右飛
大島 左飛
チェン みのさん

「ロッテはこの試合初めて三者凡退に抑えたのか」

「チェンがいわゆる慣例に従ったことも加味されるけれどね」

「これでロッテのムードが少しでも好転すると良いね。見ている側としてはもう少し競った展開を期待したいところだから」

 追いつくのは厳しいにしても、少しは反撃しておかないと4連敗を食らうかもしれないしな。

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 20:16:24.90 ID:mwz5ov+80

五回表 竜10−1鴎 チェンジ P:チェン
岡田 中二
小野 → 青野 からさん
西岡 遊ゴ
清田 二ゴ

「岡田にはツーベースを打たれたけど、やっぱりチェンはすごいわね」

 ストレートも伸びてるし、変化球だって低めに決まってる。

 出来とすれば言うことなしだろうな。

「あとは球数かしら。チェンだってもう一度登板するかもしれないし」

 まあ、投げるとしても100球くらいだろう。となると、この回か次で交代か。

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 20:25:57.27 ID:mwz5ov+80

五回裏 竜10−1鴎 チェンジ P:古谷
荒木 捕邪飛
井端 三ゴ
森野 みのさん

「あら、また三者凡退なのね」

 この点差だしな。中日からすれば大したことないだろ。

 ロッテ側とすれば、これで流れを引き戻したいところだろうが。

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 20:35:09.86 ID:mwz5ov+80

六回表 竜10−1鴎 チェンジ P:チェン
井口 遊ゴ
サブロー からさん
今江 二飛

「101球で6回1失点。ふぅ、来年も中日に残るのかしらね」

 ハルヒの嘆息にも同意したくなるな。

 セ・リーグの他チームを応援する人間からすれば、来シーズンもこんな投球されたくないってのが本音だろう。

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 20:41:23.60 ID:mwz5ov+80

六回裏 竜12−1鴎 一死 P:古谷
和田 左安
ブランコ 中2ランホームラン!
野本 中飛

「和田はさすがね。打撃センスに光るものがあるわ」

「ハルヒ、和田に光るとか抜けるは禁句――おいおい、マジかよ」

「ブランコにホームランが出たわね。中日打線はもう穴がなくなっちゃったんじゃないかしら」

 不調の中軸にも当たりが戻ったわけだしな。ロッテベンチとすれば頭が痛いところだろう。

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 20:49:52.44 ID:mwz5ov+80

六回裏 竜12−1鴎 チェンジ P:古谷
谷繁 よんたま
大島 捕飛
チェン → 平田 遊安
荒木 中飛

「ホームランの後でもずいぶん繋がったわね」

 ホームランのあとは流れが切れやすいって聞くしな。それだけ中日の勢いがあるってことなのかもしれん。

 しかし、妹の奴が静かだと思ったら寝てやがった。まあ、こんな時間になってきたしな。

 佐々木の膝を枕にすやすや眠る妹を見ると、なんだか親子みたいに思えてくるから不思議だ。

191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 20:55:29.81 ID:mwz5ov+80

七回表 竜12−1鴎 二死一塁 P:河原
金泰均 からさん
里崎 よんたま
岡田 中飛

「セーラー服を着た妹ちゃんと、ブレザーの佐々木さんだと、親子って言うより幼子カップルって感じよね」

 ハルヒ、そこにはツッコむな。

199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 21:02:01.32 ID:mwz5ov+80

七回表 竜12−1鴎 チェンジ P:河原 → 三瀬
古谷 → 福浦 →  今岡 遊ゴ

「代打の福浦に左の三瀬を出すのね」

「いかにも落合采配って交代だな。しかし、ロッテも代打の代打か」

「あら、今岡じゃない……。なんだか感慨深いわ……」

 ロッテのホームだったら縦縞のユニフォームだったんだがな。

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 21:08:10.25 ID:mwz5ov+80

七回裏 竜12−1鴎 チェンジ P:吉見
井端 右飛(サブロー好捕)
森野 右安
和田 左飛(清田好捕!)
堂上直 一邪飛

「和田はさすがね……って、ちょっと! あれを捕ったの!?」

「ラミレスに見習って欲しいプレイだったな……。お、返球が森野に当たっちまったのか」

「ちょっと痛そうね……」

213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 21:12:15.77 ID:mwz5ov+80

八回表 竜12−1鴎 攻撃前 P:高橋

「ふむ、これでドアラはCSから成功してないことになるのだね」

「まあ失敗した方が成績いいってんだから、責められたことでもないだろうがな」

「見てキョン、ドアラとロッテのマスコットが戯れているよ。ふふ、かわいいね」

「ああ、そうだな」



「あの……涼宮さん、キョンくんと佐々木さんがいい雰囲気に……」

「うるさいわね、そんなのわかってるわよ!」

「ひぃっ……」

 ハルヒはハルヒで何を遊んでるんだ……。

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 21:21:24.88 ID:mwz5ov+80

八回表 竜12−1鴎 チェンジ P:高橋
西岡 遊飛(荒木好捕!)
清田 一邪飛
井口 左安
サブロー 三ゴ

「中日投手陣がいいとはいえ、サブローの不調はロッテにとって気になるところだね」

 ああ、そういえばCSでもあんまり打ってなかったらしいな。

「大松の離脱、金泰均もまた調子が良くないから、代わりとなるバッターがいないのかもしれないけれど」

「短期決戦において、ここまで不調が続いてしまっては大胆なメンバー交代もありえるかもしれないね」

223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 21:28:49.14 ID:mwz5ov+80

八回裏 竜12−1鴎 チェンジ P:吉見
英智 からさん
谷繁 右飛
大島 二ゴ

「11点差で最終回か」

「大きく点差が開いたとはいえ、終盤のロッテは粘り強いからね。どこまで食い下がるか楽しみだよ」

 しかし、マウンドは浅尾か。落合も容赦ねえな。

230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 21:32:29.54 ID:mwz5ov+80

九回表 竜12−1鴎 二死 P:浅尾
今江 二飛
金泰均 二ゴ

「二球でツーアウトとは。浅尾も好調を維持しているようだね」

「おいおい、ここでピッチャー交代かよ」

「ふむ、調整登板的な意味合いが大きいのだろうね。CSの第二戦以来の登板となるのだから」

 大量点差の勝ち試合でも、無駄にしないんだな。

 やれやれ、原にも見習って欲しいところかもしれん。

234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 21:35:51.21 ID:mwz5ov+80

九回表 竜12−1鴎 試合終了 P:浅尾 → 岩瀬
的場 → 神戸 → 細谷 右飛

「これこそ王者の試合ですね。展開について何も言うことがありませんでしたよ」

 中日を応援する古泉からしたら、言うことなしの展開だっただろうな。

「えー、神戸くん交代しちゃったの? 神戸くんの応援したかったのにー」

 愚妹よ、もう少し違った感想があっても良かったんじゃないか……?

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/31(日) 21:51:50.72 ID:mwz5ov+80

お疲れ様でした!

序盤にマーフィーの乱調があったとはいえ、早々に試合を決めた中日の集中力は見事の一言でした。
一方のロッテ打線はチェンを始めとした投手陣を前に攻めきれず、よもやのワンサイドゲームとなってしまいました。

しかし、三戦目からは千葉マリンスタジアムに舞台を移します。
今日は大敗を喫したロッテが、マリンを苦手とする中日にどう挑むのか注目しています。

次回ですが、明後日の11/02(火)18:00過ぎにスレを立てる予定です。
また次もお付き合い頂けますと幸いです。

本日はお付き合い頂きありがとうございました。

244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/31(日) 23:05:21.05 ID:mwz5ov+80

「…………」

 台風一過であるにもかかわらず、どんよりと重く雲をたれこめた夜空がそうさせるわけでもないのだろうが、

 自室の机に腰をかけた俺は、感情豊かな無口無表情系宇宙人に倣うかの如く三点リーダを垂れ流していた。

 なぜ俺が自室に引きこもっているかと言えば理由がある。試合が終わって早々、俺はリビングを追い出されることとなった。

 古泉と共に蹴りだされた時は文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、なんとか飲み込んだ。あれだけの人数が仮装してたんだ。妹の部屋じゃ狭いだろうし仕方ない。

 古泉はタクシーを誘導するために外に出た。一方、俺はこの机に絡め取られたように動けないでいた。掌で、か細い反射光を放つ指輪を見つめながら。



 指輪を見つめながらサンチマンタリスムに耽る、なんてのはいかにも浪漫主義的で、古泉あたりにやらせたらダース単位でファンが増えるのだろうが、

 残念ながらこの指輪に、衆人の興味を惹き付けるような色っぽい話など付与されていないようだ。

 今から半年ほど前の話になる。長門がこの指輪を俺に届けてくれた。そしてその落とし主は気でも違ったのか、指輪を見つめながら涙を流した。

 それだけの話であるらしい。

 持ち主であるにもかかわらず、このような曖昧然とした表現に終始してしまうことについては容赦願いたい。

 俺が今現在取り出せる記憶には、それだけの情報しか存在していないためである。

 しかし、そのさらに奥、今の俺では辿り着けない記憶領域に、重要な何かが眠っている気がするのだ。

 だから、指輪を眺めてしまう。こいつがただの落し物であるということを、未練がましく認めたがらない自分がいるのだ。

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/31(日) 23:07:44.19 ID:mwz5ov+80

 この指輪には何かが隠されている。そんな何か予感めいたものが、俺には感じられる。

 三日坊主がディフォルトであるこの俺が二日と空けずにこれを眺めてしまうのだから、やはり何かがあるのだと思う。

 そして指輪を眺めていると、いつも同じイメージが脳裏を支配する。

 俺は何かを捜し求め、アンデルセンの童話に出てきそうな暗い森を深く深くへ進んでいる。

 手にはあの指輪を持ち、小さな宝石から指し示される弱い光を頼りに、森の最奥へと誘われるように足を踏み入れているのだ。

 藪を漕ぎ、倒木を乗り越え、奥へ奥へと進むと、日の光さえ通さなかった森が前触れもなくぷっつりと途切れる。

 森の先は開けており、その数十メートル先には深い渓谷が横一直線に伸びている。彼方には色とりどりの花が咲き乱れるという如何にもガキが想像したような庭園が見えた。

 そして俺は、庭園に純白のドレスを纏った女性を認めるのだ。必死に目を凝らすものの、その容貌は白いヴェールによって遮られ、誰であるかはわからない。

 向こう岸に行きたいのだが、架けられた吊り橋は何者かの手により落とされており、眼前に横たわる渓谷を渡ることができない。

 俺は向こう岸に行けず、しかしその女性から目を離せず、じっとその場を動けないでいる。見えない蔦に、足を絡め取られたように――



 フロイト先生あたりに診察をされたら、『欲求不満』の一言で片付けられそうなイメージだ。

 だが、俺はそこに何かを大切なものが隠されているのではないかという疑念を捨てられない。

 そして、そのイメージの終わりはいつも唐突に訪れる。掌に零れ落ちる水滴に気付き、現実へと引き戻されるという下らないオチによって。

246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/31(日) 23:09:30.17 ID:mwz5ov+80

「キョン、ここに居るのかい? 制服を返しに来たよ」

 しまったと思ったときには手遅れだった。俺は身動き一つ取れないまま、無様に落涙した姿を目撃されることとなった。

「…………」

 佐々木は無言だった。それもそうだろう、高校二年にもなって女々しく泣いてる男なんて見たら、誰だって絶句する。

 俺は取り繕うように目を拭ったが、不思議なことに佐々木はこちらを見つめたまま身動き一つしなかった。

 それがあまりに長く続くので、さすがに言い訳でもするべきかと思った頃、ようやく佐々木が口を開いた。

「どうして……? その指輪は長門さんが……」

 その言葉に、俺は二度驚いた。

 一度目は、佐々木の声に生気が感じられなかったからだ。まるで抜け殻のように、佐々木は呆然と音を漏らした。

 二度目に俺を驚かせたのは、佐々木が呟いた言葉に長門の名前が含まれていたことである。

 この指輪は長門から直接渡されたものだ。佐々木はもちろん、誰の手も介していないのである。

 では、どうして佐々木が、この指輪と長門との関連性を知っているのだろうか。佐々木は、俺の知らない何かを知っているとでも言うのか?

247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/31(日) 23:11:35.64 ID:mwz5ov+80

 しかし、そんな疑問を投げかける前に、タイムアップとなってしまったようだ。

「キョンくん、佐々木ちゃん、どうしたの……?」

 妹の小さな声が部屋の入り口から投げかけられる。最悪なことに、その背後にはハルヒまで立っていた。

 二人が心配そうにこちらを見つめている。

 そりゃ心配にもなるだろう、暗い部屋には机に備え付けられたライトしか点灯しておらず、そこで俺と佐々木が見つめ合っていたのだから。

 何か言葉を飲み込むように俯いたハルヒの姿は、見ていて辛かった。



 それからは何事もなかったかのように事態は推移していった。

 ハルヒは何も見ていなかったかのように振る舞い、朝比奈さんに絡み付いているし、佐々木も普段の冷静さを取り戻し、橘と談笑しながら帰宅の途についた。

 しかし俺だけは、あの佐々木の姿がいつまでも拭い去れないでいた。

 佐々木を呆然とさせたもの、それはこの指輪である。そして、その事実が佐々木と指輪に何らかの関連性があると訴えている。

 その正体を知った時、胸にわだかまる暗い霧が晴れるのだろうか。その霧が晴れた時、俺は何を思うのだろうか。

 全てはまだ霧の中だ。正直俺にだって不安はある。

 しかし、俺は先へと踏み出さずにはいられなかった。指輪がもたらすあのイメージ、渓谷の先の庭園には温かな記憶の面影が垣間見えたのだから。

                                        <2010年度日本シリーズ第三戦につづく>



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