佐々木「キョン、セ・リーグCSファイナル第一戦が始まるよ」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 17:46:33.61 ID:LkRbfwfw0

「うわ、なんですか」

 笑顔のままで素っ頓狂な声をあげるという愉快な反応をしつつ、今日の対戦相手がようやく現れた。

「あれ、今日はアラビアのハーレムを再現されているのですか? 僕もみなさんと同じようにすればいいのでしょうか」

 気色の悪いことを言うな。今お前に求められてる役割は、ハルヒの恫喝によってこんなマネをさせられてる仲間の救出だ。

 ああ、最優先で助けるのは俺だからな。これ以上こんな目にあわされていたらマジで死ぬぞ。

「僕とあなたの認識には大きな齟齬があるようですね。僕の目にはあなたが救出されるべき存在であるようには映らないのですが」

「そうよ、キョン」

 視力というよりも認識分野に問題のありそうな野郎に紹介すべき脳外科医をリストアップしようとした俺をさえぎるように、ハルヒのアホが横槍を入れてきた。

「あんたね、あたしや佐々木さんだけじゃなく有希やみくるちゃんまで居るのよ? それを拒否しようなんて八百万の神々から天罰が下るわ」

 状況説明が遅れたな。端的に言おう。

 平日の授業が終わりSOS団活動もほどほどに引き上げてきた今は、午後六時を回ろうかという時刻だ。

 そして、俺ハルヒ長門朝比奈さん古泉というSOS団メンバーに加えて、佐々木と橘、ついでに妹まですし詰めにされてるここは俺の部屋である。

 そんな状況でなぜ俺が苦しめられているのかといえば、ここに居合わせる女子メンバー全員に精神的サブミッションをかけられているからなのだ……。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 17:47:30.95 ID:LkRbfwfw0

 ここ最近の習慣となってしまった佐々木の抱き枕になりながら、今日の対戦相手であるアホを待っていたときのことだ。

 まず橘が顔面蒼白の面持ちでこの部屋を訪れた。かけるべき言葉を探している俺など意に介さず、俺に抱きつく佐々木へとタックルをかました。

 ホークスファンであるこいつにとってCS敗退はさぞ辛かったろう。だが、あえて相手をする気にもなれなかった。まあ、困るのは佐々木だしな。

 寸詰まりの団子虫のような陣形を取りつつ、やはり似非ハンサム野郎を待っていた俺の前に現れたのは、朝比奈さんと長門を伴ったハルヒだった。

「いいわね。さっき話した通りにやるのよ。みくるちゃんは背中から、有希は正面よ」

「キョンくんごめんなさい……。えいっ!」

 意味不明な発言は日常的なことであるからツッコむ気にもならなかったが、北高を代表する美少女たちの奇行には声をあげずにいられなかった。

「な、何してるんですか朝比奈さん。おい、長門。お前までハルヒのお遊びに付き合うんじゃない」

 長門は、ベッドに腰をかけていた俺の膝にちょこんと座り、朝比奈さんといえばチョークスリーパーホールドを仕掛けるようにして俺に抱きついていた。

 元凶のハルヒはといえば、佐々木の反対側から俺に胴締めタックルを仕掛けてきているのだ。

 目を開ければ長門の白く細いうなじが像を結ぶ。そして俺の背中には朝比奈さんの成長ホルモンを吸い尽くしているような物体がやわらかくつぶれている。

 こんな場面を朝比奈原理主義者に見られたらどうする。隠れ長門ファンだって江戸時代のキリシタンより多いんだぞ。俺を社会的に抹殺するつもりなのか?

「おいハルヒ、これは何の冗談なんだ? 今すぐに説明するかやめさせろ!」

 迂闊に暴れることもできやしない。下手に動いて誰かをベッドに押し倒すような展開にでもなったら、間違いなく俺は首を括らねばなるまい。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 17:48:20.93 ID:LkRbfwfw0

 そして、苦境を脱するべく灰色の脳細胞をフル回転させていた俺の前に、最後の刺客が現れた。

「キョンくん、あたしもー!」

 小学六年生の妹は何かの遊びと勘違いしたのか、ベッドのスプリングをジャンプ台にして俺の頭へと飛びついてきたのだ。

 こいつがミヨキチのような成長を遂げていなくて良かったと心から思う。学年平均を大きく下回る体重のおかげで俺の首は折れずにすんだのだからな。


「古泉くん、これは敗者に与えられた罰ゲームなの。だからあたしは仕方なくこんなことさせられてるんだからね」

 ハルヒが『仕方なく』という部分にアクセントを置いたのにはさすがにムカついた。誰がこんなことをしてくれなんて頼んだんだよ。

 それにこんな罰ゲームなんて聞いたこともないぞ。第一、長門や朝比奈さんまで巻き込むなよ。二人はCSで負けてないだろ。

「有希もみくるちゃんもCSに出場できなかったでしょ。だったら敗者じゃない」

「あれ? 一人じゃ恥ずかしいからみくるちゃんも一緒にやって欲しいって……ふにっ!」

「み、く、る、ちゃん。あんたは黙ってなさい」

 ここからではハルヒの腕しか見えないが、何か重要な発言をしようとした朝比奈さんの頬をむにむにと弄んでいるのだろう。

 頼むから俺を解放してくれ。このままじゃ今日の本題に入れないだろ。

「ふふ、今日の試合は面白くなりそうですね。どうぞお手柔らかに」

 いつものアルカイックスマイルを貼りつけた対戦相手が、喉を鳴らしている。

 ずいぶん楽しそうじゃないか古泉、この恨みは試合で晴らしてやるからな……。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 17:49:13.16 ID:LkRbfwfw0

※このスッドレは『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズに登場したキャラクターが、キョンを賭けて担当チームを応援するスレです。
※原作『涼宮ハルヒの驚愕』までのネタバレがあるかもしれません。アニメだけしか観ていない方はご注意下さい。
※話の流れは実際の試合展開に順じます。
 → NHK BS1、CS「J sports 2」などで視聴できます。

【主な登場人物】
 ・キョン:読売ジャイアンツファン
 ・古泉一樹:中日ドラゴンズファン

 ・佐々木さん:北海道日本ハムファイターズファン

【お知らせ】
 ・当スレの佐々木さんとキョンは、2009年日本シリーズに登場したキャラクターと同一ではありますが、
.  諸事情により(一年間の時間遡行を受け)二人で試合観戦した記憶を失い、親友という関係に戻っています。

 ⇒『諸事情』について知りたい方は、2010年パ・リーグ開幕カードをご参照下さい。
   三回戦:ttp://www.vipss.net/haruhi/1269230814.html
   ※「ハルヒSSまとめサイト+α」さんより

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 17:58:33.49 ID:LkRbfwfw0

先発:東野−チェン

「先発は東野とチェンか」

 ハルヒ主催の罰ゲームは古泉の登場により終焉を迎えることとなった。

 あいつらは今キッチンで夕食を作っている。佐々木や橘まで参加しているようだ。

 やれやれ、ようやく試合を観れるようになったぜ。

「チェン投手は予想通りでしたが、そちらは中3日の東野投手ですか」

「ロッテの成瀬を倣ったわけでもないんだろうがな。東野が一番調子いいんだろ」

「なるほど、両エースの投げあいが楽しみですね」

 古泉のアルカイックスマイルが偽悪的に歪められる。やれやれ、ナゴヤドーム9連勝中だから余裕でも見せてんのか?

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:01:58.21 ID:LkRbfwfw0

一回表 竜0−0巨 一死 P:チェン
脇谷 からさん

「おや、坂本選手はスタメンを外れたのですか」

「阪神とのCSじゃ打ってたからな。ケガでもしたのかもな」

「ふふ、我々のチームとしては僥倖といってもいいアクシデントですね」

 こっちとしたら最悪だよ。やれやれ。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:06:06.42 ID:LkRbfwfw0

一回表 竜0−0巨 チェンジ P:チェン
亀井 中飛
小笠原 右飛

「相性のいい小笠原まで凡退か」

「チェン投手の調子もいいようですね。試合から離れて久しいので少し心配していたのですが」

 巨人がつけこめるのは試合感くらいだしな。やれやれ、初回から気が重いぜ……。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:10:31.15 ID:LkRbfwfw0

一回裏 竜0−0巨 一死二塁 P:東野
荒木 中安
英智 投犠打

「おや、さっそくの得点機ですね」

 ランナー二塁で、森野和田ブランコかよ……。最悪じゃねえか。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:16:26.19 ID:LkRbfwfw0

一回裏 竜1−0巨 一死一塁 P:東野
森野 左タイムリー!

「よし、荒木はセカンドに戻ったか」

「いえ、打球はレフトですから回すでしょう」

 おい、古泉。いくらラミレスだからって――おい、生還されてんじゃねえよ!

「三塁コーチの好判断でしたね。ふふ、幸先の良いスタートです」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:20:02.34 ID:LkRbfwfw0

一回裏 竜1−0巨 一死一二塁 P:東野
和田 よんたま

「和田にはフォアかよ」

「和田選手は打率こそリーグ三位に終わりましたが、出塁率では青木選手を抑えての一位ですからね。すばらしい選球眼です」

 これ以上ランナーを溜めるのはマズいぞ。踏ん張れよ、東野。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:25:55.02 ID:LkRbfwfw0

一回裏 竜4−0巨 二死 P:東野
ブランコ 左タイムリーツーベース!
藤井 右タイムリー!(藤井二塁憤死)

「実に惜しい当たりでしたね。あと僅かでホームランでした」

「一点で済んで良しって場面だ。これでクリーンナップは凌いだからな」

「おや、藤井選手を侮ると思わぬしっぺ返しを被るかもしれませんよ。ふふ、ほらね」

 藤井に2点タイムリーかよ……。チェン相手に4点のビハインドは厳しいぞ……。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:29:43.69 ID:LkRbfwfw0

一回裏 竜4−0巨 チェンジ P:東野
谷繁 右二
堂上 一邪飛

「おや、谷繁選手まで続きましたね」

「東野、最悪じゃねえか……」

「ふむ、堂上選手までは続きませんでしたが、初回で4得点とは望外の結果ですね」

 試合が決まりかねない失点じゃねえか。出鼻を挫かれたどころか、とんでもないカウンターパンチをもらっちまったな……。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:36:54.16 ID:LkRbfwfw0

二回表 竜4−0巨 チェンジ P:チェン
ラミレス 二飛
慎之助 遊ゴ
由伸 二ゴ

「そちらは左バッターが目立ちますね。投手を除けば、右はラミレス選手と長野選手のみですか」

「吉見先発って読んだわけでもなさそうだがな。阪神とのCSとほとんど変わってねえし」

「その点を鑑みても坂本選手の離脱は大きいですね。ふふ、チェン投手も素晴らしい投球です」

 この回も三者凡退かよ。やれやれ、点取れとまでは言わねえが、もう少し粘ってくれよ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:38:57.10 ID:LkRbfwfw0

二回裏 竜4−0巨 無死一塁 P:東野
チェン よんたま

「おや、チェン投手にフォアボールですか」

「東野のコントロールが乱れてるな。ここは代え時じゃねえのか?」

「ストライクを取るのがやっとといった感じですね。ふふ、この回も追加点が期待できそうです」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:42:17.88 ID:LkRbfwfw0

二回裏 竜4−0巨 一死一二塁 P:東野
荒木 左安
英智 一ゴ(犠打失敗)

「荒木は打ち上げたか。やれやれ、これでワンナウト――」

「ふふ、さすがの古城選手も背面キャッチは難しかったようですね。荒木選手が二安打ですか」

 おい、流れが悪すぎるぞ……。日曜の阪神戦以上に悪い流れじゃねえか……。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:45:33.07 ID:LkRbfwfw0

二回裏 竜4−0巨 二死二三塁 P:東野
森野 一ゴ(進塁打)

「今、慎之助のヘン顔が画面いっぱいに映ってたな……」

「コンタクトがずれたのでしょうか。小さい子供が見ていなければいいのですが……」

 あれはトラウマになりかねないレベルだったな。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:50:10.52 ID:LkRbfwfw0

二回裏 竜4−0巨 チェンジ P:東野
和田 遊ゴ

「やれやれ、なんとか抑えたか」

「主軸の森野選手和田選手にタイムリーがでなかったことは残念ですが、やはり流れはこちらにあるようですね」

 4点でさえ厳しいんだ。これ以上の失点を重ねなくて良かったよ。

 まあ、チェン相手に5点取れるかかなり怪しいところなんだがな。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 18:57:40.58 ID:LkRbfwfw0

三回表 竜4−0巨 チェンジ P:チェン
長野 みのさん
古城 みのさん
東野 みのさん

「チェンのコントロールは東野と対照的だな」

「そうですね。キレのある球が、きわどいコースに決まっています」

「しかも東野引っぱるのか」

「長野選手、あるいは古城選手が出ていればあるいは交代もあったのでしょうが、まだ二回ですし止むを得ない判断と言えるでしょう」

 しかし、三者連続三振かよ。手も足も出ないってのはまさにこれを言うんだろうな……。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:09:31.14 ID:LkRbfwfw0

三回裏 竜4−0巨 チェンジ P:東野
ブランコ 右飛
藤井 中安
谷繁 からさん
堂上 二飛

「藤井ってやつは当たってるな」

「彼には脚もありますからね。盗塁という選択肢もあるかもしれません」

「東野もずいぶん警戒しちまうか。バッター集中してもらいたいんだが」

「おっと、谷繁選手は三振ですか。いい当たりのファウルが出ていただけに残念ですね」

 やれやれ、この回も抑えたか。コントロールの悪さは相変わらずだが、少し落ち着いてきたみたいだな。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:13:40.37 ID:LkRbfwfw0

四回表 竜4−0巨 無死一塁 P:チェン
脇谷 左安

「お、初ヒットか」

「しかもこの回の先頭ですか。少し警戒しなければなりませんね」

 チェンの出来からすれば、チャンスは少ないだろうしな。一点でもいいから返してくれよ。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:19:37.15 ID:LkRbfwfw0

四回表 竜4−0巨 一死一三塁 P:チェン
亀井 左安
小笠原 二ゴ(二塁封殺)

「よし! 亀井やればできるじゃねえか!」

「ふむ、シーズン絶不調だった亀井選手まで続きましたか。ここが踏ん張りどころですね」

「CS絶好調の小笠原だからな。頼むぜ――って、何やってんだ……」

「ゲッツーとはいきませんでしたか。ラミレス選手も警戒しなければならない相手ですからね、前半の山場です」

 数少ない右だからな。打ってくれよ、ラミちゃん!

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:26:45.80 ID:LkRbfwfw0

四回表 竜4−0巨 チェンジ P:チェン
ラミレス からさん
慎之助 二直

「くそっ、三振かよ」

「少し制球が乱れたようですが、さすがチェン投手ですね」

「やれやれ」

 外野フライも打てないとはな。慎之助も凡退しちまうし、こりゃマズいぞ……。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:29:05.82 ID:LkRbfwfw0

四回裏 竜4−0巨 一死 P:東野
チェン 二ゴ

「チェンは抑えたか」

「投手の打席ですからね。この結果は仕方ないでしょう」

 東野の立ち上がりが散々だったからな。チェンを抑えただけでもほっとしちまうよ。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:32:58.06 ID:LkRbfwfw0

四回裏 竜4−0巨 チェンジ P:東野
荒木 左飛
英智 遊ゴ

「これはこれは、三者凡退ですか」

「一回の出来からは想像もできない結果だな」

「先ほどは危うく失点する場面でしたからね。流れが変わらなければいいのですが」

 こっちとしちゃそう願いたいところなんだがな。チェンの投球見てると厳しい過ぎる展開だぜ。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:39:46.95 ID:LkRbfwfw0

五回表 竜4−0巨 二死一塁 P:チェン
由伸 投ゴ
長野 二邪飛
古城 中安
東野 → 矢野

「やれやれ、もうツーアウトかよ」

「そうですね、この調子で最後まで――ふむ、古城選手には打たれてしまいましたね」

「さすがにここは東野を代えるよな……って矢野か」

「左投手には相性がいいようですね。打たれなければいいのですが」



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:41:20.86 ID:LkRbfwfw0

五回表 竜4−0巨 二死一二塁 P:チェン
矢野 右安

「よっしゃ! ナイスだ矢野!」

「またもや連打ですか。ツーアウトとはいえ、少し流れが悪くなってきましたね」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:42:54.60 ID:LkRbfwfw0

五回表 竜4−0巨 二死満塁 P:チェン
脇谷 死球

「脇谷はさっき打ってたからな。もう一本頼むぜ」

「おっと、デッドボールですか……」

「これで満塁か。頼むぜ亀井!」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:48:50.07 ID:LkRbfwfw0

五回表 竜4−0巨 チェンジ P:チェン
亀井 捕ゴ

「今のは失投だったろ……」

「高めに浮いてしまったのですが、ふう、なんとか抑えてくれたようですね」

 亀井もフルカウントまで粘ったんだがな。五回無失点かよ。やれやれ、浅尾高橋で逃げ切られそうだぜ。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:54:44.68 ID:LkRbfwfw0

五回裏 竜4−0巨 一死二塁 P:MICHEAL
森野 中二
和田 一飛

「おや、マイケル投手ですか」

「まあ負けてる展開だしな。順当だろ」

「おお、森野選手がツーベースとは。やはり流れはこちらのようですね」

 マイケルは阪神戦でも失点してたからな。不安はあるが、しっかり抑えろよ。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 19:57:18.95 ID:LkRbfwfw0

五回裏 竜4−0巨 一死一三塁 P:MICHEAL
ブランコ 左安

「おい、打たれんじゃねえよ。しかもレフトか……」

「ここはさすがに止めるでしょうね。無理をする場面でもありません」

「タイムリーにはならなかったが、ここで二安打の藤井かよ」

「ここでの追加伝は大きいですからね。藤井選手には是非とも殊勲打を期待したいところです」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:03:02.10 ID:LkRbfwfw0

五回裏 竜4−0巨 チェンジ P:MICHEAL
藤井 からさん
谷繁 二ゴ

「ふむ、藤井選手は三振でしたか」

「なんとか抑えたがな。2-2から外したあの一球はなんだったんだ……」

「スクイズ警戒だったのでしょうか。落合監督も奇策を講じますが、あの場面では動かないと思うのですが……」

 スクイズを警戒したってことは、巨人ベンチならスクイズが選択肢にあるってことだよな。

 原の思考回路がますますわからなくなってきたぞ……。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:07:48.56 ID:LkRbfwfw0

六回表 竜4−0巨 二死一塁 P:チェン
小笠原 右飛
ラミレス 中安
慎之助 三飛

「なかなか三者凡退とはいきませんね」

「こっちの中軸だからな。あっさり終わってもらっちゃこまるんだよ」

 次は不振の慎之助か。そろそろ打ってくれよ。眠ったままじゃ困るんだ。

「初球を打ち上げましたか。阿部選手の不振は深刻なようですね」

 古泉、そんなことはお前に言われなくてもわかってるんだよ……。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:11:19.15 ID:LkRbfwfw0

六回表 竜4−0巨 チェンジ P:チェン
由伸 一ゴ

「ラミレス選手にこそクリーンヒットを打たれましたが、さすがチェン投手と言ったところですね」

 チャンスは何度かあったんだがな。それをフイにしてたらこうなるだろ。

 やれやれ、完封負けまでチラついてきやがったぞ。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:16:36.60 ID:LkRbfwfw0

六回裏 竜4−0巨 一死一塁 P:MICHEAL
堂上 二ゴ
チェン よんたま

「またチェンにフォアボールかよ」

「チェン投手をランナーに出して疲れさせるという算段なのでしょうか……?」

 いくら原でもそれはないだろ。……ないよな?

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:18:23.81 ID:LkRbfwfw0

六回裏 竜4−0巨 一死二三塁 P:MICHEAL
荒木 左二

「荒木は猛打賞か……」

「チェン投手を走らせるという目論見があるのならば、見事に的中しましたね」

 アホか、それで点取られたら元も子もねえだろ……。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:23:00.86 ID:LkRbfwfw0

六回裏 竜4−0巨 二死二三塁 P:MICHEAL
英智 遊ゴ
森野 敬遠

「やれやれ、ツーアウトまでこぎつけたか」

「しかし、ここから中軸ですからね。森野選手、もしくは和田選手が……おや?」

「おい、森野敬遠で和田勝負かよ。大丈夫なのか……?」

「今日の成績を見てということなのでしょうが、この選択は大きな勝負の分れ目になりそうですね」

 俺には和田のツーベースしか見えねえぞ……。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:26:57.59 ID:LkRbfwfw0

六回裏 竜4−0巨 チェンジ P:MICHEAL
和田 遊ゴ

「あの和田選手が凡退ですか……」

「原の采配は、たまに神懸り的な力を発揮するな……」

「阪神戦でも素晴らしい采配が勝利という最高の形で結実したようですね」

 ああ、そうなんだけどな。今日の先発はもう少し考えて欲しかったぜ……。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:29:31.68 ID:LkRbfwfw0

七回表 竜4−0巨 無死一塁 P:チェン
MICHEAL → 松本 左安

「おお、松本が打ったか」

「今の初球は不用意でしたね」

「まあな、松本もよく打ったぜ」

 松本が先頭で出たとはいえ、あと三回しかないんだ。チェンを引き摺り下ろすくらいのイニングにしてくれよ。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:37:05.09 ID:LkRbfwfw0

七回表 竜4−0巨 二死一塁 P:チェン
古城 遊併殺
矢野 左安

「最悪じゃねえか……」

「この併殺は大きいですね」

 次の矢野が打っただけにな。せめてランナー一人くらいは残して欲しかったぜ……。

「おや、ここで高橋投手に交代ですか」

 やれやれ、ここで自慢の中継ぎ陣が登板か。阪神戦のようにとまでは言わないが、せめて完封負けはしないでくれよ。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:44:17.54 ID:LkRbfwfw0

七回表 竜4−0巨 チェンジ P:チェン → 高橋
脇谷 よんたま
亀井 からさん

「よしよし、脇谷よく見たぜ」

「高橋投手は、チェン投手と比べるとやや調子が悪いようですね。まあ、チェン投手ができすぎとも言えるのですが」

「ここでホームランの一本も出れば――って亀井あっさり三振してんじゃねえか……」

「さすが高橋投手といったところですね。マウンド度胸も一級品です」

 やれやれ、7安打で無得点かよ。さすがにこれはひどすぎるぞ。

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:49:50.02 ID:LkRbfwfw0

七回裏 竜4−0巨 一死二塁 P:藤井
ブランコ よんたま
藤井 捕犠打

「藤井? おいおい、明日からの先発ちゃんと考えてるのか?」

「阪神戦でもゴンザレス投手やグライシンガー投手を中継ぎで起用していましたね」

「そうなんだけどよ。中途半端に中継ぎで使って、肝心の先発試合で調整失敗なんてことにならなきゃいいんだがな」

「慣れない中継ぎ登板ですからね。そういったリズムの面では不安が残るかもしれません」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:55:01.58 ID:LkRbfwfw0

七回裏 竜5−0巨 一死一二塁 P:藤井
谷繁 左安
堂上直 三タイムリー!

「また一三塁かよ……」

「何度か見たような場面ですね。我々のチームも追加点が取れていませんし、そろそろタイムリーを――おお、さすが堂上直倫選手ですね」

「小笠原、今のは捕れたんじゃないのか……?」

 せっかく凌いできたってのに、ここで追加点かよ。やれやれ、いよいよ追い詰められちまったな……。

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 20:59:05.11 ID:LkRbfwfw0

七回裏 竜5−0巨 チェンジ P:藤井
高橋 → 井端 左飛(谷繁タッチアップ)
荒木 右飛

「ここで井端か」

「井端選手は視力に不安があったようですが、今期最終戦に間に合ってくれました」

 やれやれ、井端も荒木も抑えたか。しかし一点は余計だったぜ……。

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 21:06:47.39 ID:LkRbfwfw0

八回表 竜5−0巨 一死一二塁 P:浅尾
小笠原 一失
ラミレス からさん
慎之助 左安

「お、エラーで出たか」

「ブランコ選手のスローイングは不用意でしたね」

 ラミレスは三振だったが、慎之助がヒットで続いてくれたな。

 勝利の方程式を打ち崩れれば、流れだって向いてくるはずだ。由伸、打ってくれよ。

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 21:13:53.53 ID:LkRbfwfw0

八回表 竜5−0巨 チェンジ P:浅尾
由伸 捕邪飛
松本 中飛

「さすが浅尾投手ですね。味方のミスにも動じませんでした」

 浅尾の出来にも舌を巻いちまうが、こっちのタイムリー欠乏症には嘆息しちまうよ。

 やれやれ、明日のためにもせめて一点くらいは取ってくれよ?

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 21:18:24.90 ID:LkRbfwfw0

八回裏 竜5−0巨 チェンジ P:クルーン
英智 投ゴ
森野 からさん
和田 遊ゴ

「おや、ここでクルーン投手ですか」

「終盤の出来は最悪だったからな。実戦登板させて調子見るってことなんだろ」

「ふむ、球は荒れていますが、調子は悪くなさそうですね」

 プレッシャーのない場面だからな。今は良くても、抑えで出てきたときに仕事ができるか、やっぱり不安だぜ。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 21:21:33.83 ID:LkRbfwfw0

九回表 竜5−0巨 一死 P:岩瀬
古城 からさん

「来たか、ファイナルフォーメーション……」

「守備固めのことでしょうか……?」

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 21:27:29.96 ID:LkRbfwfw0

九回表 竜5−0巨 二死一塁 P:岩瀬
矢野 よんたま
脇谷 からさん

「岩瀬投手も好調のようですね」

「いよいよ追い詰められちまったか」

 やれやれ、完封負けだけは勘弁して欲しかったんだがな。

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 21:33:42.22 ID:LkRbfwfw0

九回表 竜5−0巨 試合終了 P:岩瀬
クルーン → 谷 三ゴ

「8安打で完封負けかよ」

「ピンチの場面もありましたが、要所をしっかりと締めてくれましたね」

 パ・リーグじゃロッテがCS優勝を決めたから、うちにも流れがあるかと思ったんだがな。

 やれやれ、初戦としては最悪の負け方だぜ。

 まあこのまま終わるつもりもねえし、原だってなんかやってくれるだろ。

 今日のところは負けちまったが、明日に期待するとするかね。

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/20(水) 21:46:19.20 ID:LkRbfwfw0

お疲れ様でした!

敵地甲子園で大逆転勝利を収めた巨人でしたが、
苦手とするナゴヤドーム、そして中日の安定した投手陣の前に勢いを絶たれてしまいました。

何度かピンチを迎えながらも、ことごとく後続を抑えた中日投手陣の好投が目立ちましたね。

今後の予定ですが、また明日も18時頃にスレ立てしようと思っております。
TATESUGI値の調整などで、試合開始に間に合わないかもしれませんが、見かけた際にはよろしくお願いします。

本日はお付き合い頂きましてありがとうございました。

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/20(水) 23:00:11.09 ID:LkRbfwfw0

 中日投手陣の前に完封負けを喫したショックが拭いきれず、俺はまだ自分の部屋でダラダラしていた。

 まあ話し相手もいることだしな。もう少し時間を潰させてくれ。

「古泉、お前にも好きな選手とかいるのか?」

「おや、まるで選手個人を熱狂的に応援する方が、あなたの傍にいるようではないですか」

 まあな。うちのリビングで稲葉ジャンプにいそしむ女子高生を知ってるが、ここで話すようなことでもない。

「まあいいでしょう。そうですね。あなたの問いに簡潔に答えるならば『イエス』という回答を示さねばなりません」

 誰だ? 浅尾あたりか?

「ふふ、浅尾選手が魅力的であることは否定しません。ドラゴンズのファンであれば、誰しも彼に興味があるでしょう。もちろんこの僕も例外ではありません」

 えらく勿体つけた言い方だが、浅尾じゃなさそうだな。だったら誰なんだよ。

「僕の好きな選手は和田一浩選手ですよ」

 和田か。なんつーか意外だな。あいつは生え抜きでもないだろうに。

「そうですね。彼はドラゴンズの生え抜きではありません」

 じゃあどこがいいんだ? 確かに打撃成績は抜群だが、それが全てってわけでもないんだろ?

「彼は愛知県の隣である岐阜出身です。そして岐阜では中日の主催試合が行われるなど、ドラゴンズファンの多い地域でもあります」

「そんな環境で育った和田選手はライオンズに入団し、日本一に貢献するほどの活躍をされました。そして国内FA権を取得した際、中日へと移籍したのです」

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/20(水) 23:01:39.45 ID:LkRbfwfw0

「条件が緩和されたとはいえ、フリーエージェント権を取得するためには長期間一軍に登録され続けなければなりません」

「そしてライオンズの中心選手となりながらも、その座に留まることなく、幼少の頃から憧れていた球団を選択したのです」

「彼の本心は計り知ることができません。しかし、憧憬を抱いていた球団へ入るため研鑽を重ねていたと考えると、なんと一途な方であると思わずにはいられません」

「僕は彼のそういった一途さに、シンパシーに似た憧れを抱いているのです。まあ、全ては僕の想像に過ぎませんがね」

 古泉の長口上を聞くことになるとは思わなかったぞ。単なる雑談のつもりだったんだがな。

 シンパシーってのは共感って意味だったか。となると、和田に対する思い入れはかなりのものなんだな。

「シンパシーというよりは、エンパシーに近いかもしれません。長年の望みが叶った和田選手と僕とは状況が違いすぎますので」

 シンパシーとエンパシーの違いなんざわからんがな。古泉、それじゃお前に積年の想いがあるような言い方じゃないか。

「僕としたことが迂闊でしたね。あまり話したくないことだったのですが、特にあなたの前では」

 冷たい言い方だな。少なくとも俺はお前のことをSOS団の仲間だって思ってるんだぜ。できることがあるなら協力は惜しまないぞ。

「いえ、そういう意味ではないのです。そうですね、あなたが頼りにならないということではなく、単純に頼めることがないということです」

 そうかい、何か頼めることができたら言ってくれよ。ああ、ハルヒのアホを制御しろとかは無理だからな。

「そうですね。心得ておきます」

 古泉の微苦笑が一瞬寂しげに見えたのは、俺の気のせいだろうか。

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/20(水) 23:03:40.09 ID:LkRbfwfw0

「しかし、今日の試合開始前はおもしろいものを見せていただきましたよ」

 あのことは一秒でも早く記憶から消し去ってくれ。俺だって長門を頼れるなら即刻記憶を消してもらうよう泣きついてたところだ。

「涼宮さんたちもあなたを喜ばせようとしてやったのではないでしょうか。ふふ――

 ――あなたがうらやましいです。

 古泉の台詞に、皮膚が粟立つような寒気を感じた。なぜだろうと記憶を探ってみると、この言葉を聞いた時期が思い当たった。

 どうりで寒気を感じるはずだ。これを聞いたのは高校一年の冬なのだ。身も心も凍てつくような世界で、古泉(詰襟)が発言していた内容とそっくりなのである。

 そういえば、あの時の古泉はハルヒに偉くご執心だったな。俺なんぞジャガイモ程度にしか見ていなかったのか、ハルヒへの思慕を公言してたくらいなのだからな。



 ……ちょっと待て。あの世界じゃ、長門以外の人格は何の変化も受けていないはずじゃなかったか?

 それじゃ古泉の願いってのは――

 いやいや、それはないだろう。あいつは誰よりハルヒに振り回されてるんだ。そんな古泉がハルヒを好きになるって、どれだけM気質なんだよ。

 長門もうっかり古泉の性格に手を加えちまったんだろう。やれやれ、長門も意外なところでうっかりミスをするもんだ。

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/20(水) 23:04:57.45 ID:LkRbfwfw0

「何か考え事をされているようですが、どうされたのですか」

 気がつくと古泉がこちらを見つめていた。ええい、顔が近いんだよ、顔が。

「何でもねえよ。ちょっと昔のことを思い出してただけだ」

 古泉に見つめられることがなぜか気忙しく感じられ、注意を逸らすつもりで質問をしてしまった。我ながら迂闊な発言だったと思う。

「それで、お前もこのケッタイな賭けに参加してるんだろ? 勝ったらどうするつもりなんだよ」

「そうですね。僕が勝ったら……」

 古泉は難しそうな顔をしながら、滑らかなカーブを描く顎に手を当てている。

 その様子が、勝った場合のことを考えているというよりも、発言していいのか迷っているように見えたのは、俺の考えすぎだろうか。

「僕が勝ったら、涼宮さんの望みを叶えるでしょうね。彼女が幸せになること、それが僕の願いですから」

 そんなにハルヒが大事なのかよ。だったら俺の幸せも願って欲しいぜ。

 そう茶化してしまえば、古泉はいつものように微苦笑を湛えてくれたのだろうか。

 けれど、そんなことは口にできなかった。だってそうだろ? こいつは、神様に振り回されっぱなしの超能力者は、自分の幸せさえ願っていないのだから。

 完封負けを喫したショックなど、いつの間にか吹き飛んでいた。しかし、いつの間にか湧き上がっていた灰色の雲が俺の胸の中をしばらく漂っていた。

                                        <セ・リーグCSファイナルステージ第二戦につづく>



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