古泉「陰毛が生えているのかいないのか直接本人に聞いてみましょう」


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3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 10:20:15.42 ID:m3Xenkaw0

家に帰ると、何故か白飯の代わりに赤飯が夕食に並んでいた。
何か良い事でもあったのかと母親に問うと、
含み笑いをして、妹が顔を真っ赤にしていた。
父親は、新聞を読む振りをしつつ、えへん、えへんと咳払いをする。

ここまでくれば俺にも分かる。

妹が、初潮を迎えたのだ。

妹は、大人の階段を昇ったのだ。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 10:25:59.38 ID:m3Xenkaw0

子供っぽいと思っていた俺の妹も、初潮がくるようになったのかと思うと感慨深い。

俺は妹の部屋に忍び込み、ショーツを漁る。

子供パンツ、と言いたくなるようなものばかりだが、これからは違う。

何故なら妹は既に女であり、女性としての身体を持つ以上は、
子供ではないのだから。

目ぼしいショーツをポケットに詰め込み、俺は部屋に帰る。

しかし、今日の妹の態度は明らかに変だった。
もしや一丁前に男女差を意識して恥ずかしがっているのではあるまいか。

そんなことを思いつつ、俺は自慰に耽り、そのまま眠った。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 10:30:38.35 ID:m3Xenkaw0

朝。

目覚ましの音で目が覚める。

妹のダイブは無い。
寂しい限りだが、これも成長なのか。

俺はパンツをはき、妹のショーツを本棚の奥のエロ系置き場に突っ込んだ。

制服を着て、一階に下りる。

妹と挨拶をする。

目を合わせてくれない。
少し悲しい。

「身体の調子はどうだ?」

と聞いてみる。

グーで殴られた。
あまり痛くはないが、心が痛い。

俺は詩人なのだろうか。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 10:36:09.80 ID:m3Xenkaw0

坂道を歩きながら、昨夜と今朝の事を思い出す。

えらく厄介な、そしてデリケートな問題だ。

果たして俺一人で対処できるだろうか。

不安になってきた。

谷口が声をかけてくるが、いつも通り無視をする。

「おっす国木田」

「おはようキョン」

二人で下駄箱に向かう。

谷口がうろついて目障りだ。
正直にその事を告げると、肩を落として去っていった。

「キョンははっきり言いすぎだよ」

ヒヒヒ、と笑う国木田。

俺の上履きには死んだゴキブリが三匹、入っていた。

そのままはく。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 10:42:36.97 ID:m3Xenkaw0

教室に入ると、既にハルヒが来ていた。
相も変わらず仏頂面だ。
元がいいのだから笑顔の一つも見せたらいいのに。

国木田がヒヒヒと笑う。
こいつはこいつでおかしい。

ふと、俺の明晰な頭脳にナイスアイディーアが閃く。

ハルヒも女性のカテゴリーに入るはずだ。
つまりは、初潮を迎えた時も経験しているわけで。

俺は聞いてみた。

「お前今、生理か?」

ハルヒは唖然とした表情を見せたあと、椅子から立ち上がり教室から出て行った。

ナプキンでも換えに行ったのだろうか?

国木田がヒヒヒと笑う。

俺もヒヒヒと笑う。

岡部がきたので笑うのはやめた。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 10:48:33.50 ID:m3Xenkaw0

授業中。

いつもの作業、机の落書きを消すことをしながら、妹の初潮を考える。

これからどう接すればいいのだろうか?

変態、という文字を消す。

いつも通りには戻れないのか?

キチガイ、という文字を消す。

新しい関係。新しい兄としての接し方を模索しなければならない。

学校来るな! という文字を消す。


いつのまにか、ハルヒが後ろの席に戻ってきていた。

机の落書きを消すのを中断し、大きな屁をする。

国木田がヒヒヒと笑う。

谷口がヒヒヒと笑う。

三人まとめて廊下に立たされる。
水の入ったバケツを持たされるなんて、漫画でしかみたことねえよ。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 10:55:29.65 ID:m3Xenkaw0

バケツが重いので、俺は提案した。

「谷口がこの水を全部飲めばいいんじゃないか?」

二対一の民主主義の勝利。
谷口は合計六杯のバケツの水を飲み始めた。

国木田がヒヒヒと笑う。

俺は笑わない。
お前とは違うんだ。


ふと見ると、朝比奈さんがとぼとぼと歩いている。

「おっぱ、じゃなくって……おっぱいさん。どうしたんですか?」

「キョンくん……」

朝比奈さんの顔色は悪かった。
普段を栽培マンとするなら、さしずめ今はセルジュニアといったところか。

「もしかして……生理ですか?」

俺はヒヒヒと笑った。

谷口が四杯目のバケツに手をつける。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 11:01:59.77 ID:m3Xenkaw0

朝比奈さんは笑わなかった。

「キョンくんには、デリカシーが足りないと思います!」

怒られた。

国木田が谷口の腹を蹴る。
谷口が水を吐き出す。
飲み直しだから、水道からまた、バケツに六杯の水を汲んでこなくてはならない。

「実は、妹が初潮を迎えたんです」

「そうだったんですか……」

最初からこう言えば良かったんだ。

「ところでおっぱ……おっぱいさんは、生理ですよね?」

「え、えと……はい。今から保健室に行こうかと」

「なら、教えて下さい。初潮を迎えた妹と、どう接すればいいのかを」

国木田がヒヒヒと笑う。

「……なら、一緒に保健室に行きましょうか?」

俺と朝比奈さんは、手をつないで保健室に向かった。

誰かが、ヒヒヒと笑った気がする。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 11:16:19.09 ID:m3Xenkaw0

保健室は団室だった。

俺の知らないところで、変更されたのだろう。
朝比奈さんはメイド服に着替えると、お茶を淹れてくれた。

真っ赤なお茶だ。

「朝比奈さん、これは?」

もはや朝比奈さんはおっぱいさんではなくなっていた。
メイド服を着ていれば朝比奈さんなのだ。
だから朝比奈さんに俺は問う。

「お赤飯ですよ」

やっぱり。
俺は赤いお茶を飲み下す。
血の味がする。

「妹ちゃん、初潮を迎えたのは昨日ですよね」

朝比奈さんは俺の心を読む。

「ちゃんと、してあげないといけませんよ?」

長門が、ハードカバーの本に目を落としながら、ヒヒヒと笑った。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 11:23:27.25 ID:m3Xenkaw0

「男の俺には、よく分かりません。どうしたらいいのですか?」

朝比奈さんがヒヒヒと笑う。

長門もヒヒヒと笑う。

古泉は笑わない。こいつは男だからだ。

「仮に、僕たちが女性だとしましょう。しかし、それはやはり仮の話でしかありません」

真っ赤なお茶を飲みながら古泉が言う。

「これは経血ですからお茶ではありません」
「しかし、貴方になら分かるはずです」

確かにな……。
俺は昨日の妹の表情を思い浮かべる。

あれは、そう。戸惑っている顔だった。

「ならば」

古泉が言う。

「兄の貴方がうろたえていてどうするのですか?」

古泉がヒヒヒと笑う。

俺もヒヒヒと笑った。
その後、古泉に罵詈雑言を浴びせた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 11:30:22.14 ID:m3Xenkaw0

まだ授業が残っている。

団室のドアを開けようとすると、その前にドアは開かれた。

「お赤飯炊くわよ!」

団長命令で、大釜やもち米、小豆などの材料を買出しに出かける。

途中、谷口は六十杯目のバケツの水を飲んでいた。
国木田がヒヒヒと笑う。

薪をくべ、寄り合わせた新聞紙に火をつけ放り込む。

赤いお茶を飲みながら待つ。
いや、これは経血だからお茶ではないんだったな、古泉。

古泉がヒヒヒと笑う。

良い匂いが団室に充満する。

「炊けた! 炊けたわ! お赤飯! お赤飯が炊けた!」

俺の知らない地方の踊りを、ハルヒが踊る。
朝比奈さんも、長門も、古泉も踊る。

俺だけが、蚊帳の外だ。

みんなが。ヒヒヒと笑っている。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 11:39:04.50 ID:m3Xenkaw0

言うまでも無いが、赤飯は手づかみで食べるものだ。

炊きたてだから熱いのだが、俺は我慢してほおばる。
小豆が美味い。

朝比奈さんは赤飯でおむすびを作っている。
リュックを背負ったランニング姿の浮浪者に食べさせるのだそうだ。

古泉は空になった大釜の中に入った。
そこに長門が蓋を閉め、火をかけた。

「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅうふいたら火をひいて、赤子泣いても蓋とるな
そこへばば様とんできて、わらしべ一束くべまして、それで蒸らしてできあがり」

長門が歌う。ヒヒヒと笑う。

ハルヒが仏頂面でやってきて、俺にタッパーを差し出す。

「これ。SOS団から、妹ちゃんに」

ハルヒ、古泉、朝比奈さん、長門の順で、おめでとうと書いてあった。

「一番下、あんたのスペースゥだから」

ハルヒの顔が真っ赤だった。

俺はヒヒヒと笑いながら、おめでとう、と書き足した。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 11:46:06.03 ID:m3Xenkaw0

早速、このタッパーに赤飯を入れねばならない。

しかし、大釜では古泉が炊かれている。
赤飯はどこだ?

俺は赤飯を探してうろうろ学校中を歩き回った。

谷口が、百二十杯目のバケツの水を飲んでいる。
国木田は、もういない。
死んだのだから、当然だ。

岡部に聞くと、赤飯は今ではコンビニにも売ってるらしかった。

俺は金を借りるために団室に戻った。


そこは保健室だった。

白衣を着た鶴屋さんが、俺の手当てをしてくれた。
怪我はなかったのが、盲腸を取ってくれた。
切り口を縫ってはくれなかったので、血が止まらなかった。

「これで、妹ちゃんの気持ちが、少しは分かるかもね」

俺は御礼を言いつつ、ヒヒヒと笑った。

鶴屋さんもヒヒヒと笑った。

その通り。赤飯を手に入れなければならないのだ。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 11:58:15.32 ID:m3Xenkaw0

「キョン。何をしているんだい?」

タッパーを持ちながらうろうろしている俺に話しかけてきたのは、佐々木(仮名)だった。

「そうか。赤飯を探しているのか」

佐々木(仮名)は思案顔をしながら言った。

「あちらの隅っこに、朝倉さんがいたんだ。彼女ならあるいは」

俺は佐々木(仮名)に礼を言い、歩き始めた。
しかし、傷口から腸が出てきて歩きにくい。

「僕が、腸を持つよ。なに気にすることはない。中学の頃は毎晩、持っていたじゃないか」

佐々木(仮名が)ヒヒヒと笑う。

俺は笑わず、隅っこの朝倉へと歩く。
その後を、俺の腸を持った佐々木(仮名)が歩く。
昔を思い出す。
しかし、郷愁に耽ってばかりはいられない。

なにはともあれ、赤飯だ。

朝倉、朝倉、朝倉。

なあ、隅っこってどこだ?

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 12:13:49.36 ID:m3Xenkaw0

隅っこ、というのは団室の事だった。
団室には隅っこがあり、隅っこが団室なのだ。

戻ってきた俺は、ハルヒに聞いた。

「赤飯は、どこだ?」

ハルヒは赤飯おむすびを食べながら、大釜を指差した。
クッタクッタと煮えている。

長門が蓋を開けてくれた。

古泉が赤い顔で出てきた。
ヒヒヒと笑っている。

古泉の指差す方を見ると、朝倉が壁とお喋りしていた。
会話が弾んでるらしく、俺は口を挟むのを躊躇した。

佐々木(仮名)が提案した。

「この腸と赤飯の交換はどうだろう?」

良い案だ。
俺は壁に話しかけた。

「朝倉とお話しているところ申し訳ありません。俺の腸と赤飯を取り替えて頂けませんか?」

壁は、笑わなかった。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 12:21:30.72 ID:m3Xenkaw0

壁とは話が通じないようだった。

仕方が無いので、俺は腸を(一部切り取り)朝倉の首に巻いた。

朝倉はヒヒヒと笑っていた。

しかし、胸元から赤飯を出してくれた。
俺は赤飯をタッパーに押し込んだ。

妹のところに急がなければならない。

そこに古泉がやってきた。

「とうとう赤飯を渡すのですね」
「しかし、大事な事を聞き忘れてはなりませんよ」
「それは、陰毛の事です。初潮を迎えた妹さんが、無毛ではあまりにも悲しすぎます」

「陰毛が生えているのかいないのか直接本人に聞いてみましょう」

いつの間にか佐々木(仮名)はランニング男のヌードモデルになっていた。
ここでお別れなのか、佐々木(仮名)。

佐々木(仮名)はヒヒヒと笑った。

「ここからは、貴方一人なのです」

古泉がヒヒヒと笑う。

そのつもりだ、と俺も、ヒヒヒと笑った。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 12:27:27.11 ID:m3Xenkaw0

朝比奈さんが、ヒヒヒと笑いながらお茶を差し出してきた。
しかし、俺は急いでいるので、と伝えると、朝比奈さんは、赤い小便を漏らした。

団室のドアを開け、学校の門を越え、坂道を下る。
赤飯が冷めないうちに。

妹の小学校に入り、妹のクラスを見つけ、俺は乗り込んだ。

「キョン……くん?」

妹は笑っていなかった。

「妹よ! 初潮、おめでとう!」

俺は、タッパーを開け、湯毛のたつ赤飯を妹の顔に押し付けた。

「ヒヒヒ」

俺は笑っていた。

妹の同級生も笑っていた。

小学校教諭も笑っていた。

妹はもがいていた。
しかし、しばらく経つと、動かなくなった。

妹を背負い、保健室に向かった。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 12:33:04.01 ID:m3Xenkaw0

保健室のドアを開けると、そこは団室だった。

当然の事だが、保健室は団室なのだから。

今もなお、大釜に炊かれているであろう古泉に、モールス信号で妹を連れて来たと伝える。
しかし、俺にはモールス信号など分からなかった。

ハルヒがヒヒヒと笑う。
歯茎が気持ち悪い。

妹を、起こす。

「なあ、お前、陰毛は生えているのか? 生えていないのか?」

俺は泣きながら笑っていた。ヒヒヒと。

「キョン、くん……ありが……とう……」

妹は、眠った。
永遠の眠りについた。

俺は泣いた。
肩に手が置かれた。
真っ赤に炊き上げられた、古泉だった。

「こうなれば、直接、確かめるしか術はありません」

ヒヒヒ。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/13(月) 12:41:04.04 ID:m3Xenkaw0

佐々木(仮名)が全裸で手伝ってくれた。
古泉は笑ってるだけだった。
長門は、大釜でまた何か炊いているようだった。
大釜から、眉毛がちらちら見えた気がした。
朝比奈さんは赤い小便が止まらなかった。
ハルヒはランニング大将と赤飯の食べ比べに忙しいようだった。

妹の、子供パンツ……、いやショーツを脱がした。

……。
佐々木(仮名)よ。

「うん。うん」

佐々木(仮名)は、泣いていた。
俺も、泣いていた。
古泉も、泣いていた。
長門も、泣いていた。
大釜からも、泣き声が聞こえた気がした。
朝比奈さんは、最初から泣いていた。
大将も、赤飯おむすびを食べながら泣いていた。

ハルヒは、笑っていた。
ヒヒヒ、ヒヒヒと笑っていた。

いつしか、俺も笑っていた。
ヒヒヒ、ヒヒヒと笑っていた。

 【ヒヒヒ】

44 名前:南部十四朗 ◆pTqMLhEhmY [sage] 投稿日:2010/09/13(月) 12:43:25.12 ID:m3Xenkaw0

 いつもの精神状態でない状態で書きました。
 人間、寝ないとダメですよね。
 ヒヒヒって、いつのまにか笑ってますから。自分が一番怖いです。



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