鶴屋さん「あたしのキョン君を他の女に取られたく無いだけっさ!」


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13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:57:18.16 ID:2wsgZ71VO

きっかけは本当に多分、たいした事じゃなかった気がする

みくるを追っている彼の目線をこっちに向けたくて……

ただ、それだけだった気がする

それだけ、を起こすために何をどうすればいいんだろう?

鶴屋「考えても、鶴屋さんわからないよ……はぁ……」

みくる「鶴屋さん? どうしたんですか、ため息なんかついて」

鶴屋「ちょっと悩んで考えているのさ。青春してるのさ」

みくる「そ、そうなんですかぁ〜?」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 02:04:16.55 ID:2wsgZ71VO

青春、なんて言ったけどみくるの手前強がりだったさ

みくる「お、お話聞きますよ? 私でよければですけど……」

鶴屋「あははっ、ありがとうみくる。でも、まだ相談する程、内容が進展なくてさ」

みくる「そ、そうなんですかぁ……」

鶴屋「何かあったら、ちゃんと話すにょろ」

みくる「わかりました。じゃあ、私は部活に行きますので、また」

部活かぁ……あの場所に行けばキョン君がいる

鶴屋(みくるはいいなぁ、キョン君に毎日会う事ができて)

鶴屋(少なくとも私よりは……うらやましい限りさ)

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 02:09:37.15 ID:2wsgZ71VO

みくる「さよなら、鶴屋さん」

鶴屋「ま、待ってみくる!」

みくる「?」

鶴屋(思わず呼び止めちゃったけど……どうしよう)

鶴屋「あ、あ〜っ、えっと……その……」

みくる「?」

鶴屋「き、キョン……じゃない、今日は鶴屋さんも見学に行っていいかなっ?」

みくる「え、来て頂けるんですか!」

鶴屋「た、たまにはいいかって」

この段階で、心臓がバクバク言ってる自分がいるにょろ

鶴屋(今はちょっとだけ、会いたい気持ちに負けたみたい……っさ)

みくる「ふふっ、じゃあ行きましょうか」

鶴屋「了解っさ!」

鶴屋(ふふふっ、キョン君に会える。会える)

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 02:15:48.00 ID:2wsgZ71VO

ガチャッ

みくる「こんにちはぁ〜」

キョン「あ、朝比奈さん……に鶴屋さん?」

鶴屋「あ、遊びに来たっさ!」

あれ、部室にはキョン君一人だけ?

みくる「あれ、みなさんはどうしたんですか?」

キョン「ああ、何かみんな用事やら当番やらで、今の所俺だけですね。もしかしたら、今日は来ないかもしれませんね」

みくる「そうなんですかぁ〜、あ、鶴屋さん、座って下さい。お茶入れますから」

キョン「すいませんね、せっかく来て貰ったのに。まま、どうぞどうぞ」

鶴屋「お、お邪魔するよっ」

鶴屋(うわぁ、キョン君の向かいだよ! 鶴屋さんどうしよう……やっぱりドキドキする……みたい)

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 02:22:42.11 ID:2wsgZ71VO

キョン「じゃあ、待ってる間に何かゲームでもしますか?」

鶴屋「ゲーム?」

キョン「ええ、将棋やらチェスやら。あ、遊び方わかりますか?」

鶴屋「あ、あんまりわからないにょろ」

キョン「そうですか〜……」

う〜ん、とキョン君が考え込んでしまった

鶴屋(ど、どうしよう。よくなかったかな、この言動? あ、帰りに本屋さんでルールブックでも……)

キョン「じゃあ、シンプルに挟み将棋にしましょうか」

彼がスッと顔を上げ、こっちを見てくれた

カチッ、と目が合うだけで鶴屋さんの心臓がまたもう一回勢いよく血液を送り出して……ちょっとだけ体温を上げてくれる

鶴屋(これだけで、幸せ感じるさ……)

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 02:27:59.45 ID:2wsgZ71VO

キョン「で、挟み将棋って言うのはですね……」

一つ一つのルールを丁寧に説明してくれる

その指先の動く細かい動きとか、話しかけてくれている唇の動きとかを、私は目で追っていた

キョン「……という具合ですね。わかりましたか?」

鶴屋「え? あ、えっと……」

キョン「分かりにくかったですか? すいません、説明下手で」

鶴屋「キョ、キョン君のせいじゃないよ! 私って物覚えが悪いからさ、ははっ。でも、駒の動かし方はわかったよ」

キョン「じゃあ、とりあえずやってみましょうか。習うより慣れろですよ」

鶴屋「わかったさ!」

キョン「では、行きますよ」

みんな「ふふっ、楽しそうですねお二人とも」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 02:33:51.03 ID:2wsgZ71VO

鶴屋「ここをこう動かして……どうっさ!」

キョン「ふふっ、そこを動かすとほら、こっちの方が」

鶴屋「あっ、一気に四個も捕られてるっさ……ズルいにょろ」

キョン「そ、そんなに可愛く言ってもダメですよ。勝負は勝負ですから」

鶴屋(か、可愛い? 今可愛いって言ってくれた?)

鶴屋「か、か……」

キョン「あれ、鶴屋さん?」

鶴屋「も、もう一回……(言ってほしいな)」

キョン「あ、リベンジですか。わかりましたよ。今日は古泉も来ないみたいですから、とことん付き合いますよ」

鶴屋「にょ、ろっ」

違うけど、言えるわけないさ

可愛いって聞けただけで、今日がもう終わってもいい位に幸せ感じてるっさ……

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 02:45:29.48 ID:2wsgZ71VO

キョン「ふぅ、飲み込みが早いですね鶴屋さんは」

鶴屋「ルールが単純だからね〜。何回かやれば慣れるっさ! でも勝てないにょろ……」

みくる「ふふっ、キョン君は古泉君との勝負でもいつも勝ってますからね。強敵ですよ」

鶴屋「そっか〜……」

みくるは、私の知らない事を知っている

部活でゲームをする姿、学校では見る事のできない休日の彼

鶴屋(私よりいっぱい)

みくる「あ、鶴屋さん、お茶入ってますよ。勝負に夢中だったんで、お邪魔したら悪いかなって……」

鶴屋「……うん、ありがとう、みくる」

一口、ちょっと冷めたお茶をすすってみる

緑色の綺麗な液体が私の口の中に流し込まれてくる

冷めたせいかな。なんだか……

鶴屋「苦いや……」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 02:57:14.68 ID:2wsgZ71VO

キョン「じゃあ、今日は帰りますか」

みくる「そうですね。もう外もちょっと暗いですし」

鶴屋「そうだね。なんだか今日はお邪魔しちゃって悪かったね」

キョン「いえいえ、そんな事ありません。鶴屋さんだったら、いつでもお邪魔して欲しいくらいですよ」

鶴屋「ほ、本当かい? 本当にお邪魔しちゃっていいのかい?」

キョン「ええ。鶴屋さんなら、きっとみんな大歓迎ですよ」

みくる「私も嬉しいですぅ〜」

自然と顔がニヤケちゃいそうだったけど、ここは我慢

顔をちょっとそらしながら……気持ちを悟られないように、彼を見ないで強気に発言する


鶴屋「ま、まあ考えておくよ」

キョン「おお、なんだかツンデレっぽい……」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 03:03:37.19 ID:2wsgZ71VO

鶴屋「ツ、ツンデレ?」

キョン「あ、ああ、気にしないで下さい。興奮してしまった故にちょっと口がすべってしまって……」

みくる「キョン君は変な所でマニアックですからね」

キョン「ははっ、止してくださいよ朝比奈さん。さ、その話はおしまいです。部室を閉めますよ」

言われるままに、部室から出る

鍵を閉める彼の背中を見つめて……私の今日が終わった気がした

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 03:10:16.38 ID:2wsgZ71VO

キョン「もう結構暗くなっちゃいましたね」

鶴屋「そ、そうだね」

キョン「よかったら、途中まで送りますよ? 夜道は危ないですからね」

鶴屋「えっ」ドキッ

朝比奈「本当ですかキョン君!」
……そっか、みくるもいるんだもんね

鶴屋(やっぱり二人っきりなんて無理だもんね、わかってるよ……)

キョン「じゃあ、行きますか」

鶴屋「わ、私は寄る所があるから遠慮するっさ」

みくる「鶴屋さん?」

キョン「そうなんですか、じゃあここで。さよなら、鶴屋さん」

みくる「さよなら〜」

鶴屋(あ……)

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 03:20:31.12 ID:2wsgZ71VO

遠くなってく二人の背中を見ながら……自分があの場所にいたらどんなに幸せなんだろう

きっと下校の時間が一日の中で一番楽しい時間になって、色んな場所に寄り道して

一緒に楽しい時間を過ごせるんだろうなぁ

鶴屋(でも、今はバイバイにょろ……)

ゆっくりと、一人の道を歩いて行く

彼の姿はもう見えない。真っ暗な道が余計に寂しい気がした

一人の足は自然と本屋さんに向かっていた

鶴屋(え〜っと……)

鶴屋(あれ、見つからないにょろ……)

鶴屋「すいません、挟み将棋の本ってありませんか?」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 03:34:25.88 ID:2wsgZ71VO

次の日

鶴屋「はぁ……結局挟み将棋の本は見つからなかったにょろ……」

ポケーッと、学校までの道をフラフラと歩く

キョン君とたくさん話せた嬉しさと、可愛いっていう言葉がずっと頭の中でリピートされて……

随分な寝不足になってしまったみたい

キョン「あ、鶴屋さん。おはようございます」

鶴屋「キョ、キョン君?」

そんな眠気で構築された体に、彼からの挨拶一言

鶴屋(朝から心臓が、また鳴ってるよ……)

キョン「後ろ姿が見えたんで、ご挨拶を。いやあ昨日は楽しかったですね」

鶴屋「そ、そうだねっ」

鶴屋(楽しかった……キョン君が楽しいって言ってくれた)

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 03:43:46.99 ID:2wsgZ71VO

楽しい、可愛い、送っていく……

鶴屋(昨日だけで、こんなに言葉いっぱい。ああ、もう溶けちゃいそうだよ……)

キョン「鶴屋さん? どうしました、ボーッとして?」

鶴屋「えっ? あ、ははっ何でも無いさ! ささ、学校入ろう学校」

フラフラっと駆け出した足、寝不足の私には、この朝の日差しとちょっとの坂道が辛かったみたい

バランスが崩れて、そのまま……

鶴屋「あっ……」

キョン「鶴屋さん! 危ないっ!」
……

目の前に、あるはずの地面が無い

痛さが身体中を走ると思っていたのに、その痛みの変わりに……

大好きな人の腕が私を掴んでいて、制服のいい匂いとか、彼の体温とかそう言うのが……私の身体を包み込んでいる

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/06/23(水) 06:27:14.38 ID:2wsgZ71VO

しばらく、彼は私を抱きしめるみたいな形になって……そのまま時間が止まってた

キョン「だ、大丈夫ですか? 転ばなくてよかったですよ」

鶴屋「……」

キョン「鶴屋さん?」

彼はもう、パッと手と腕を離してしまっている

それでも、私の体には彼とくっついていた余韻だけが残っていて……

背中にうっすら汗をかいていて、まるで身体中が発電所になったみたい

言葉が出たのは、彼の言葉を聞いてかはちょっと間が空いた時だった

鶴屋「だ、大丈夫だよっ……その、えっと……」

元気な声が特徴な私が、こんなに話せないなんて、なんだか変な感じがするにょろ……

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 06:33:23.62 ID:2wsgZ71VO

鶴屋「あ……ありがとう、ね。キョン君」

キョン「いやあ、怪我が無くてよかった。綺麗な顔に傷がついたら、学校どころじゃなかったですよ」

鶴屋「もうっ、またそんな事言って……そんな事言われても何もあげないよっ!」

本当は飛び上がるくらい嬉しいけど、ここはちょっとだけ我慢

キョン「ははっ、何も無かったとこで学校に入りますか。遅刻したら、かないませんからね」

鶴屋「そうだね……うん、行こうかキョン君!」

ちょっと好きな人に触れただけで、起きた直後にあったみたいな、もやもやした気持ちが無くなってて……

彼と並んで学校に入るだけで、今日がとても楽しい一日になる

そう感じていたさ


ハルヒ「…………」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 06:45:11.27 ID:2wsgZ71VO

国木田「やあ、おはよう」

谷口「う〜っす」

キョン「よう」

……

外見は平然を装いながら、椅子に着席をする

俺だって、思春期真ん中の男の子だ。先ほど、触ってしまった鶴屋さんの身体……

いや、身体と言っても決して嫌らしい部分など触っていない

触りたかったと言えば嘘にはならないが、それを真実な気持ちとしてここに表現するのも自分の理性が許さない

とにかく今は……彼女の匂いだけが俺の頭の中に残っている

キョン(ああ、いい匂いだったなあ鶴屋さん。やっぱり朝シャンプーしてくるとあんな匂いが?)


キョン(偶然とは言え、抱きつく形になったし、ああ……今日一日生きていけそうだ)

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 06:51:44.57 ID:2wsgZ71VO

ガラッ

そんな幸せなお花畑を思い返している中、教室の扉が勢いよく開く

大半の生徒は気にしないであろう普通の音だが、俺の目は嫌でもその……入り口に立っているハルヒに向けられた

ハルヒ「……」

なんだろう、気持ちムスッとした表情でこちらを睨んでいる、ように感じる

キョン(何か約束とか言い付けあったっけか?)

昨日までのSOS団の活動を、頭の中でササッと整理をしてみるが、何も見つからず

キョン(まあ、機嫌悪いのはいつもの事か?)

ツカツカと歩いてくるハルヒを特に気にせず、俺はまた今朝の余韻の世界に浸る事にした

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 06:59:31.45 ID:2wsgZ71VO

キョン(鶴屋さんの髪の毛……)

ハルヒ「おはよう」

キョン(温かかったなあ、肌……)

ハルヒ「……おはよう」

キョン(あんなラッキーもう無いよなあ。今日だけで俺の運は全部……)

ハルヒ「挨拶くらい返しなさいよ、このバカ!」

ダンッ、と机にハルヒのカバンが叩きつけられる

いや、聞こえてなかったわけじゃないんだぞハルヒ

だか、これだけで今朝の余韻は台無しだ

キョン「ああ、おはようハルヒ」

ハルヒ「全く、朝から何ニヤニヤしてんのよ」

キョン「いやあ、ちょっと考え事をな」

ハルヒ「……」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 07:06:45.67 ID:2wsgZ71VO

そのまま、彼女はフンッと言う態度で席に座ってしまった

……後ろから、またドカッという音と振動が伝わってくる

キョン(さて、ハルヒが不機嫌な理由を聞くか、また今朝の思い出に浸るか)

ハルヒ「……」

放っておくと、昼休みや放課後の部活が怖い。とりあえず、聞くだけ聞いてみるか

キョン「なあ、ハルヒ?」

ハルヒ「……なによ?」

キョン「なんか嫌な事でもあったか?」

ハルヒ「別に、何も無いわよ」

キョン「いやいや、そういう時に限って人は何かあるんだ。よければ話してみても……」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 07:16:06.60 ID:2wsgZ71VO

ハルヒ「何も無いってば!」

いつになく、態度が強情で突っぱねているような彼女……

これ以上話を聞くのが、多少不安でもありここで会話を終えたらもっと状況が悪化しそうでもあるが……

キョン「話したら、ちょっとは楽になるかもしれないぞ?」

ハルヒ「……」

キョン「な、なんだよ? そんなにジロジロと?」

ハルヒ「朝から、女の子とくっついている人の言葉はやっぱり違うなって思ったのよ」

キョン「……なっ!」

ハルヒ「さっきいいもの見させてもらったから、ちょっとだけからかってみただけよ?」

キョン「見てたのか……」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 07:25:27.71 ID:2wsgZ71VO

ハルヒ「朝から、愛しの彼女とギューッ……なんて羨ましい話ね」

キョン「待て待て! 誤解だっ! 鶴屋さんが転びそうになったから、受け止めただけであってだな……」

何を慌ててるんだ俺は。いや、そもそもハルヒが突っかかってきたのが悪いのであって……

ハルヒ「朝から女の子を助けたんだから、そりゃあニヤニヤしちゃうわよね。ふふっ、意外と純なのね」

まだ彼女は意地悪な笑顔で、笑っている

今はどっちの顔がニヤニヤしてるのか、わかりゃしないくらいだよ全く

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 07:30:16.04 ID:2wsgZ71VO

朝から、なんでこんな絡まれ方をしなくちゃならないんだ

キョン「……からかうなよハルヒ」

ため息と共に、小さな言葉が出る。ほんの数分のやり取りなのに、すっかり憔悴してしまった

ハルヒ「あら、私はもうからかう気は無いわよ。でも後ろの、その、ほらっ」

スッと指差した先には、腕組みをしている谷口と、苦笑いをしている国木田が立っていた

谷口「キョン君……その話、詳しく聞かせてもらおうか?」

国木田「ごめんね、キョン君」

ハルヒ「ふふっ、お友達にもモテモテね、キョン君?」

生きてきた中で、こんなにも始業のベルが待ち遠しく思えた日があっただろうか?

キョン「……やれやれだ」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 07:38:04.41 ID:2wsgZ71VO

結局、タイミング良く始業のベルに助けられたが……

谷口「尋問の時間が、昼休みまで延びただけだからな」

国木田「お昼ご飯、楽しみにしているよ」

先に釘を刺されてしまった……逃げ場無し

ハルヒ「……」プイッ

ハルヒはハルヒで、また不機嫌な様子になりながら、窓の外に目をやっている

何かを話し掛けようとも思ったが、彼女から溢れる雰囲気がそうさせてくれない

キョン(ふぅ……)


一緒になって、俺も窓の外をボーッと見上げる

あれだけのゴタゴタはあったが、腕にはまだ鶴屋さんを抱きしめた……ぬくもりのようなモノが残っていた

キョン(まだ俺、幸せみたいだな)

とりあえず、午前中は生きていられそうな気がした

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 07:48:42.11 ID:2wsgZ71VO

鶴屋(ボーッっと、ね)

午前中はずっと空を見ていたような気がした

偶然とは言え、キョン君が抱きしめてくれた事実と余韻……

いつもは授業を真面目に聞く私の集中力が切れるには十二分な理由だった

鶴屋(はぁ、今日も部室に遊びに行っちゃおうかなぁ……)

鶴屋(あ、でも行きすぎたら迷惑かな? でも来てくれていいって言ってたし……)

鶴屋(昨日はハルにゃん達がいなかったから、今日行っても逆に大丈夫だよね、うん!)


恋愛してる時は、何でも理由を見つけて好きな人に会いたくなる

でも今は、そんな当たり前の気持ちと行動には気付かなくて……ただひたすらにキョン君に会いたい

それだけが、私の今日だった

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 07:58:14.91 ID:2wsgZ71VO

キョン「だーかーらー、何度も言ってるだろ。鶴屋さんが転びそうになったから、助けた。それだけだ」

谷口「……と言ってますが涼宮さん?」

ハルヒ「その割には、結構長い時間くっついてたみたいだけど?」

キョン「そりゃあ、まだ鶴屋さんがフラフラな様子だったからな。いきなり手は離せなかったんだ」

国木田「でも、長くくっついてたって事は彼女も満更じゃないとか?」

ハルヒ「ねー。また明日の朝も同じ事が起きないかしら?」

キョン(そんなに何度も起こるわけがないだろ……と言うか、なんで当たり前のように四人で弁当食べてるんだよ)

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 08:04:45.76 ID:2wsgZ71VO

ハルヒがこういう輪に入っている……なんだか慣れない光景だ

ハルヒ「まあ、彼女と一緒に登校していれば何時かはまたそんな事だって……」

国木田「確かに、一人で歩いているよりはチャンスあるかも」

キョン(しかも、なんでちょっと馴染んでるんだよ……)

人間、共通の敵がいると打ち解ける事が容易になる、とはよく聞いたが……

ん、敵?

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 08:08:31.97 ID:2wsgZ71VO

俺が敵?

考えてみると、こんなに集中攻撃を受けている理由が、そもそもわからない

谷口「……キョンが抜け駆けするなんてなぁ、俺は悲しいぜ全く」

国木田「悲しくて、寂しいよね」

谷口「うるせいやいっ」

キョン(……まあ、ただのチョッカイか)

昼休みが終わればそのチョッカイも終わってくれる

鶴屋「あ、あのキョン君……」
……後ろから、朝に聞いた事のある声がした

振り向くと、フワッといい匂いがする。ああ、こんな匂いだったなそう言えば

キョン「つ、鶴屋さん? なんでここに……」

チョッカイはまだ終わってくれそうも無い

鶴屋「へへっ、来ちゃったよ」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 08:15:09.69 ID:2wsgZ71VO

頭を軽く抑える俺の後ろでは、絶対みんな笑顔で……笑顔と言うか、生暖かい目をしているんだろうな

キョン(振り向けやしない)

目線は鶴屋さんに向けたまま、彼女が話し掛けてくる

鶴屋「いやぁ、今朝はすっかり助けてもらっちゃったね!」

キョン「怪我が無くて何よりですよ。あっはっはっはっ」

自信たっぷりに俺は笑顔だ

後ろからの刺さるような視線は、知らない

鶴屋「そ、それでねお礼と言ってはなんだけどこれ……」

ガサリ、と渡された物はビニールに包まれたシュークリームだった

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 08:21:17.61 ID:2wsgZ71VO

鶴屋「鶴屋さんのデザートだけど、よかったら食べて欲しいっさ! じ、じゃあまたねっ!」

袋を半ば強引に渡され、彼女は走りながら教室の外へ出ていってしまう

いや、強引にとは言ったが受け取り拒否をする気など更々無くてだな……

キョン(あ、お礼いい損ねたな)

キョン(まあ、放課後にでももう一回会ってお礼を……)

ハルヒ「ふーん……」

谷口「助けたねぇ……」

国木田「あははっ」

今はお礼より、背中から突き刺さるこの視線を何とかするのが先か

キョン「いやあ、鶴屋さんも律儀だな」


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 08:27:40.96 ID:2wsgZ71VO

谷口「律儀で、デザート分ける女の子なんかいるかよ!」

国木田「女の子の糖分は大事だからね」

キョン(……お前ら、鶴屋さんの何を知ってるんだよ。って、俺も知ってるわけじゃないが)

ハルヒ「よかったわね。女の子から差し入れなんて」

やはり心なしか、ハルヒの視線が冷たい……気がする

谷口「さぁて、いいもん見れたな」

国木田「そろそろ午後の準備しないとね?」

キョン「なんだよ、いいもんって……」

谷口「言わせるなよ。さっきのでよくわかったから、な!」バシッバシッ

キョン「おお、肩なんか叩いて慰めてくれるのか谷口」

谷口「……うるせいやい」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 08:34:59.44 ID:2wsgZ71VO

結局そのまま午後の授業が始まって……放課後までは何も無かったんだ

授業が全部終わって、さあ部活だと言う前に、俺は鶴屋さんを訪ねていた

とりあえず、シュークリームのお礼と昨日言った部活への誘い……

後者の口約束はともかくとして、お礼だけはすぐにしておきたかった


キョン「いるかな?」

ヒョコッと教室を覗いてみる。中にいる生徒を目で追ってみて……

鶴屋「……」

いた。窓際で空を見上げながら、何だか突っ伏している彼女の姿を、見つけてしまった

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 20:17:15.49 ID:2wsgZ71VO

鶴屋「はぁ……」

お昼休み、キョン君に渡したシュークリーム

お礼のつもりだったのに、ただ押し付けるみたいな形で渡してきちゃった

鶴屋「放課後どうしようかな……」

キョン「鶴屋さん?」

鶴屋「ひっ! あ、キョ、キョン君……ビックリしたよ、って何でここに?」

キョン「あ、すいません。あの、お昼のお礼をしてなかったな、と思いまして」

鶴屋「お礼? シュークリームのかい? あれはほら……今朝のお礼だから、ね?」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 20:26:48.20 ID:2wsgZ71VO

お礼のお礼、わざわざそんな事を伝えに来てくれるなんて……

鶴屋「き、気にしないでよかったのに!」

もっと他に言葉があったと思うんだけど、彼の顔を見ると忘れてしまう

キョン「はい。とりあえず、それを伝えに……じゃあ、俺は部活に行きますから」

鶴屋「あっ、あ……」

そのまま、彼は後ろに手を振りながら去ってしまった

鶴屋「部活、ちょっとだけ行きたかったな……」

鶴屋「いいや、今日は……ね」

いつもよりたくさんキョン君と話す事ができた。それだけで満足じゃないかっ

鶴屋「……ね?」

無理やり納得させるように、自分で返事をする

一人になった教室の窓が、さっきより大きく見えた気がした

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 20:33:08.05 ID:2wsgZ71VO

キョン「よう、っと」

ハルヒ「あら、来たわね」

古泉「こんにちは」

長門「……」

昨日いなかったメンバーが、一同に部室に集まっている

賑やかだと思いつつ、しんみりした部室の雰囲気が好きなのも事実だ

キョン「あれ、朝比奈さんは?」

古泉「まだみたいですね」

キョン「ふぅ〜ん……」

チラッとハルヒの方を見てみる

表情に変化も無く、いつもの様子でパソコンに向かっている

昼の事で何か言われたら、と心配していたがとりあえずは大丈夫みたいだ

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 20:38:37.03 ID:2wsgZ71VO

古泉「では、将棋でもやりますか?」

キョン「そうだな」

パチパチと駒を並べてある途中、部室のドアがガチャリと開く

多分、朝比奈さんが来たんだろうか

みくる「すいません、遅れましたぁ〜」

鶴屋「にょろ、お邪魔します」

キョン「つ、鶴屋さん?」

ハルヒ「あら、いらっしゃい」

ガタリ、とハルヒの机が揺れると同時に、こっちに流し目を送ってくる

その表情は、昼休みの時と同じで笑っている

キョン(お、俺は関係無いからな)

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 20:46:50.31 ID:2wsgZ71VO

みくる「鶴屋さんを誘ってたら、遅れてしまって……昨日の部活の時間に……」

朝比奈さんは、昨日の経緯を細かく丁寧にハルヒ達に説明している

キョン(関係ない。俺には関係ない)

ハルヒ「そう、そんな事がね」

鶴屋「遊びに来て迷惑じゃないかい?」

古泉「そんな事はありませんよ。鶴屋さんなら、みなさん大歓迎ですよ」

鶴屋「えへへっ、よかったさ」
ハルヒ「じゃあ、適当に座ってちょうだい」

みくる「あ、じゃあお茶を……」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 20:54:59.39 ID:2wsgZ71VO

鶴屋「よろしくねっ」

長門「……」コクッ

古泉「あ、鶴屋さん僕の変わりに将棋やりませんか?」

鶴屋「挟み将棋なら知ってるにょろ、昨日キョン君に教えてもらって……」

古泉「おや、そうでしたか」

何だかんだで、部室に馴染むのも早い鶴屋さん

まあ、ある程度の面識はあるんだから心配するほどじゃあ無いか

古泉「では、こちらに座って……」

鶴屋「ふふっ、今日は負けないよキョン君」

キョン「ええ、手加減はしませんよ」

みくる「ふふっ、お茶になります」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:01:33.60 ID:2wsgZ71VO

鶴屋「また負けたぁ……」

古泉「彼は強いですからね。壁を越える事が難しいんですよ」

鶴屋「も、もう一回さ!」

ああ、こうやって新しい感じで過ごす放課後もいいもんだな

気持ちが新鮮になると、人間楽しみを感じる余裕も出てくるもので……

ハルヒ「……」

ただちょっと、長門はいつもの事として、静かにしているハルヒの様子が気になった

キョン(まあ、気にしすぎても仕方ないか?)

鶴屋「負けた〜……」

みくる「ふふっ、お疲れ様、鶴屋さん」

今はただ、目の前にある小さな幸せの事だけを考えていよう

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:08:00.71 ID:2wsgZ71VO

みくる「じゃあ、私達は失礼しますね」

鶴屋「今日はすっごく楽しかったよ、ありがとう」

ハルヒ「また適当に遊びに来てちょうだい」

鶴屋「うん!」

朝比奈さんと鶴屋さんは、帰りに寄る所があるとかで……

長門と古泉も、よくわからない内に帰ってしまっていた

結局、部室に残っているのは俺とハルヒだけだ

キョン「じゃあ、俺たちも帰るか」

みんなのいる前では何も言われなかったが、昼間のあの意地悪な表情を俺は忘れてはいない

何かある前に、さっさと帰ってしまいたかった

ハルヒ「ちょっとだけ、話があるの」

キョン「話?」

まだすぐには帰れないみたいだ

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:17:02.21 ID:2wsgZ71VO

ハルヒ「……」

夕暮れの部室の中で、押し黙った男女が一人ずつ

また何かちょっかい出されるのか、と思ったがハルヒの表情からしてそんな様子でも無いらしい

ハルヒ「さっきも、鶴屋さんの事見てニヤニヤしてたわね」

キョン「何を言うかと思ったら……なんだよそれ」

話している内容は、昼休みの時とさほど変わってはいない

周りで茶化す友人と、笑った表情が見えないだけで

ハルヒ「今朝の一件で、好きになっちゃった?」

キョン「突拍子も無いこと言うな。俺の気持ちはそんな簡単に変わるもんじゃないぞ?」

ハルヒ「へえ、誰か好きな人でもいるのかしら?」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:21:46.02 ID:2wsgZ71VO

キョン「そういう意味じゃない。気持ちがそう簡単に動いてくれないんだよ」

ハルヒ「じゃあ、好きって迫られたら、動くのかしら?」

キョン「んー、分かりやすい形になれば、意識はすると思うな」

ハルヒ「そう……」

……

夕焼けが山の向こうに隠れて、もう部室の中も少しだけ夜になっている

見えない空間の先で、ハルヒは確かにこう言っていた


ハルヒ「……本当に、鈍感な男ね」

キョン「……?」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:27:32.94 ID:2wsgZ71VO

キョン「ハルヒ?」

ハルヒ「……変な話して悪かったわね。もう遅いから、帰りましょう」

キョン「お、おい」

ハルヒ「じゃあ、またね」

それだけ言い残して、彼女は部室から出ていってしまった

キョン「なんだよ、鈍感って……」

一人の帰り道、鈍感な男なりに色んな事を考えてみたんだ

ハルヒの言った言葉の意味、朝比奈さんの可愛さ、鶴屋さんの温かい感触……

思考が混ざりすぎて、結局何一つとして問題は解決しなかったが……

キョン(まあ、また明日会って話せばいいさ)

鈍感で、楽天的な男の一日はここで終わった

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:35:27.71 ID:2wsgZ71VO

キョン「今日は古泉だけか?」

古泉「ええ。ですがすぐに誰か来ますよ」

言葉通り、長門がすぐに部室のドアを叩く

そして朝比奈さんも……今日は鶴屋さんは来ていないようだ

みくる「今日は今日で、別の用事があるみたいですよ?」

キョン「ふ〜ん、そうなんですか?」

古泉「ふふっ、寂しいですか?」

キョン「誰がだ。来るも来ないも鶴屋さんの自由だからな」

古泉「それはそうですが……」

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:39:51.47 ID:2wsgZ71VO

キョン「とにかく、将棋だ将棋。さ、先攻後攻どっちだ?」

焦っているのか俺は?

そんな事はない。部室に一人メンバーが来ない事が確定した

それだけの事じゃないか

キョン「さ、来い古泉!」

古泉「先攻も何も、あなたの陣地には歩しか並んでないじゃないですか。王がいないままやりますか?」

キョン「……」

古泉「ふふっ、それとも昨日の挟み将棋をまだ引きずっているんですかね?」

俺の知らない所で、気持ちだけが焦っているみたいだ

何がそんなに気になっているのか、俺は知らない

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:44:32.00 ID:2wsgZ71VO

結局、部活も終わり古泉と二人、校舎を歩いている

ハルヒも最後の方で顔を見せたが、本当にすぐに帰ってしまった

なんだか、期待はずれのような顔をしていたのは覚えている

古泉「今日も勝てませんでしたね」

キョン「まあ、そんなもんさ」

古泉「ふふっ、最近は将棋ばかりですからね。明日からはチェスにしましょうか?」

キョン「ああ、俺はなんでもいいぞ」

古泉「ふふっ。……おや?」

ピタッ、と古泉が足を止め、自分のカバンをガサガサと探っている

キョン「んー、どうした?」

古泉「……忘れ物みたいです。先に帰ってて下さい。ちょっと教室まで取りに行きますので」

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:50:01.00 ID:2wsgZ71VO

キョン「なんだ、それくらいなら下駄箱で待ってるぞ?」

古泉「ダメです」

いやにキッパリ言うな。何かあるのか?

キョン「……まあ、そう言うなら無理には待たないが」

古泉「ええ、先に帰ってて下さい。では、また明日」

彼は小走りで、廊下の奥に消えてしまった

キョン「……俺も帰るか」


110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:53:48.56 ID:2wsgZ71VO

ここから少し歩けば、そこはもう下駄箱だ

下校時間はとうに過ぎている。周りに生徒がいるわけでもなく、ただ静かな出入口だけが広がっている

キョン「……?」

その空間に一人、ポツンと下駄箱の影に隠れるようにして立っている女の子……

キョン「あれ? 鶴屋さん?」

鶴屋「あ、き、来たねキョン君」

間違いない、確かに鶴屋さんだ

用事で帰ったと聞いていたのに、なぜこんな所に?

キョン「どうしたんですか?」
鶴屋「あ、ぶ、部活が終わる時間でちょうどよかったから……こ、これを買ったの知らせたくて……」

緊張しているのか、言葉がしどろもどろだ

ハキハキとしていない様子の鶴屋さんも、なんだか可愛らしい

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:59:42.07 ID:2wsgZ71VO

彼女の手には一冊の本が握られていた

キョン(将棋に関する入門本だ)

鶴屋「こ、これね、つい買っちゃったんだ。オマケで挟み将棋の事もちょっと書いてあって、それで……」

キョン「そうなんですか。じゃあ明日から部室の方で……」

悪い古泉。チェスはまた次の機会になりそうだ

というか、次の機会にする

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:06:21.42 ID:2wsgZ71VO

鶴屋「う、うん! そ、それでね、あの……」

キョン「?」

鶴屋「よ、よかったら一緒に、か、帰り……」

キョン「かえり?」

そこまで聞いて、彼女はいきなり……

鶴屋「……や、やっぱり何でも無いっ!」


勢いそのままに、彼女は走り出してしまった

キョン(鶴屋さん、耳まで真っ赤だったな……)

あんな鶴屋さんは、もう見ることが出来ないかもしれない

キョン(昨日の抱きしめといい、今日の反応といい……)

ここ数日、鶴屋さんの姿を見る事によって、俺の心臓がよく動く気がする

キョン(俺も、何か変だな)

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:12:19.36 ID:2wsgZ71VO

鶴屋(恥ずかしい、恥ずかしい……)

一緒に帰ろう、その一言が言えなかった

鶴屋(きっと今、顔とか真っ赤なんだろうな、恥ずかしい……)

キョン君に見られただろうか?

鶴屋(でも、彼の前だと何でも恥ずかしいんだ……仕方ないよね)

仕方ない

そう言って、私はまた一人で歩いてる。もしかしたら、キョン君がとなりにいてくれたかも……

この二つの感情が頭の中でグルグルしてる

鶴屋(はぁ……鶴屋さん、どうしたらいいのかな……)

鶴屋「こんなの、わからないよ……」


116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:20:31.18 ID:2wsgZ71VO

次の日、お昼休み

鶴屋「はぁ……」

みくる「鶴屋さん、元気無いですね?」

鶴屋「ん〜、ちょっとね」

みくる「以前の悩み事ですか?」

鶴屋「まあ、そんなとこっさ」

みくる「まだ、お話できませんか?」

鶴屋「まだちょっと、ね」

友達には悪いけれど、やっぱり元気が出てくれない

何を悩んでるのか、自分でもよくわからないのに……

鶴屋(ううん、自分だから、かな?)

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:25:32.86 ID:2wsgZ71VO

みくる「あ、あの鶴屋さん? 今日の放課後時間ありますか?」

鶴屋「ん?」

みくる「実は、涼宮さんがお話があるって……」

鶴屋「私に?」

みくる「ええ、部室で待ってるって……」

鶴屋「わかったよ、じゃあ放課後に部室に向かうにょろ」

みくる「はい、お願いしますね」

話ってなんだろう?

わからないけど、放課後の部室って事はキョン君も来るのかな?

鶴屋(そうだったら、嬉しいな……)

鶴屋(うん、嬉しいな……)

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:34:01.19 ID:2wsgZ71VO

放課後

ガチャッ

鶴屋「お邪魔するっさ」

ハルヒ「あ、来たわね鶴屋さん」

部室の中には、彼女が一人だけ

予想はしてたけど、やっぱりキョン君はいなかったにょろ

鶴屋「そ、それでお話って?」

ハルヒ「……」

鶴屋「ハルにゃん?」

ハルヒ「……」

うう〜ん、なんだか重圧感がすごいにょろ……

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:39:54.58 ID:2wsgZ71VO

何も言わないで、ずっと窓の外を見つめている

私も、何も言えないままにずっと時間が過ぎていく

でも、途中……

ハルヒ「鶴屋さんってさ……キョンが好きなの?」

彼女が口を開く。いきなり空気が震えたみたいに……私の体にも少し、ビリビリした感じが走る


鶴屋「え……」

ハルヒ「キョンの事が好きなの?」

何を言ってるのか、わからない

それは本当に私に言っているのかい?

ハルヒ「鶴屋さん?」


鶴屋「え、あ……えっと……好き、なのかもしれない……」

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:49:26.97 ID:2wsgZ71VO

彼女の雰囲気に負けて(自分で勝手に感じただけだけど)こんな曖昧な答え方になってしまった

ハルヒ「なんか、ハッキリしない答えなのね」

鶴屋「……」

ハルヒ「好きじゃないの?」

鶴屋「わからないけど……キョン君の事を考えると、胸がドキドキするのさ……」

ハルヒ「もう、それだけわかっていれば十分じゃない……」

ハルにゃんは、落ち着いた様子で私の話を聞いている

この図式が、もうわからない

でも……

鶴屋「気付くとキョン君の事を考えてて……」

ハルヒ「うん、うん」

鶴屋「助けてもらった日だってずっとドキドキが止まらなくて……」

ハルヒ「そうよね」

鶴屋「一緒に帰りたくて、一緒に遊びたいからゲームの本だって買って……」

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:58:01.48 ID:2wsgZ71VO

気付くと私は、色んな事を話していた

親友にも言えなかった気持ちの内を、自分でも気付かなかった彼への想いを……

鶴屋「それで、丁寧に私にルールを教えてくれてね……あ、優しいけど何か鈍いって言うか……」

ハルヒ「やっぱりそうよねぇ」
鶴屋「うんうん。それでね、それで……」

……

鶴屋「……なんだか、変な事ばっか話しちゃったにょろ」

ハルヒ「ううん……鶴屋さんの気持ち、わかったから。聞かせてくれてありがとう」

鶴屋「私の気持ち……」

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:02:48.40 ID:2wsgZ71VO

今まで話したのは、全部私の気持ちだ

気持ち……じゃあ、ここで話を聞いている彼女の気持ちは?

ハルヒ「そっか、鶴屋さんがねぇ……」

鶴屋「あ、あの! ハルにゃんはどうなのさ?」

ハルヒ「え、私?」

鶴屋「そ、そうだよ。私は部活の中身まではあまり知らないし、クラスの事も見てないから、細かくはわからないけど……」

鶴屋「多分、ハルにゃんだって……だって……」

ここまで言って、唇が震え始めた事に気付く

彼を好きなのは私だけじゃない、何となくそんな気持ちがわいてきて……

よくわからない悲しさばっかが、さっきからずっと押し寄せてくる

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:10:09.63 ID:2wsgZ71VO

ハルヒ「……ふぅ」

彼女が、ため息ひとつ


ハルヒ「私はね、私は……わからないのよ」

鶴屋「……わからない?」

ハルヒ「キョンが他の女の子と話していて……ちょっとだけ胸がズキッてする事はあるわ」

ハルヒ「それに、部活で会えないとなんだか落ち着かないし、話せればちょっとは嬉しいし……」

鶴屋「そ、それならハルにゃんだって……」

ハルヒ「でもね、私はまだそれだけなのよ?」

鶴屋「……どういう事?」

ハルヒ「そこから先の感情が、まだ私にはわからないの。それこそ、さっき鶴屋さんが話してくれたみたいな強い感情が無いのよ」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:16:07.39 ID:2wsgZ71VO

ハルヒ「でも、だからってキョンが嫌いなわけじゃないわ」

鶴屋「……それは、何となくわかるさ」

ハルヒ「良い遊び相手をとられた子供なのか、好きな人をとられて嫉妬してるのか……まだわからないの」

鶴屋「……なんで、私に話を?」

ハルヒ「だって鶴屋さんは、気持ちが真っ直ぐに定まってるんですもの。本当に好きになったら、こんな感じなのかな、って……」

鶴屋「気持ちの表れ方なんて、人それぞれだよ……私はこうする事でしか彼に近付けないから……」

ハルヒ「ふふっ、その素直な気持ちが、ちょっとうらやましいのよ」

鶴屋「ハルにゃん……」

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:21:59.94 ID:2wsgZ71VO

ガチャッ

古泉「おや、鶴屋さんに涼宮さん」

キョン「っと、こんにちわ鶴屋さん」

ハルヒ「ちょっとキョン。団長の私に挨拶は!」

キョン「お前とはさっきまで教室で一緒だっただろうが……」
ハルヒ「全く、このバカキョン!」


鶴屋「にょ、にょろ」


古泉「まあまあ、抑えて下さいよ涼宮さん」

涼宮「……まあ、いいわ。それより、今日から鶴屋さんも、そこそこに活動に参加してもらう事になったから」

キョン「待て待て、そこそこに、ってどういう事だ?」

鶴屋「ハ、ハルにゃん?」

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:28:20.78 ID:2wsgZ71VO

ハルヒ「一緒にいれば、多分わかるかもしれないわよ?」

キョン「え?」

鶴屋「えっ?」

ハルヒ「……何でもない。とにかく、これからは鶴屋さんも一緒よ」

みくる「これから楽しくなりますね」

長門「……」コクッ

ハルヒ「あら、来てたのね二人とも。じゃあ、今日の活動は……メンバー全員で将棋大会よ!」

古泉「将棋ですか」

みくる「ふぇ……私あんまりできませんよ〜……」

鶴屋「あ、じゃあ挟み将棋にするにょろ!」

キョン「みんなで挟み将棋ですか!」

ハルヒ「いいじゃないの。さすがノッてるわね鶴屋さん」

鶴屋「えへへっ。今日は負けないっさ」

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:34:49.04 ID:2wsgZ71VO

ハルにゃんが言った言葉……多分わかるかもしれない

鶴屋(本当にわかるのかな……?)

ハルヒ「ふふん取ったわ。これでキョンより私のが有利ね」

キョン「そっちはオトリだ。悪いなハルヒ」

ハルヒ「あっ……な、何よ! 一気に四枚も……」

古泉「まあ、よくあるパターンですね」

長門「……」コクッ

ハルヒ「うう〜……もう一回よ!」

キョン「じゃあ、俺が変わるよ。鶴屋さん、どうぞ」

鶴屋「わ、わかったさ」

ハルヒ「負けないわよ、新人さん」

鶴屋「ふふん、挟み将棋に関してはこっちはベテランさ」

古泉「これは楽しみな顔合わせですね」

みくる「ふふっ、二人ともなんだか楽しそうですね」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:40:35.79 ID:2wsgZ71VO

ハルヒ「これで、二枚取りよ!」
鶴屋「そっちはオトリっさ。これで……」

ハルヒ「あ……」

古泉「全く同じパターンですね」

キョン「だな」

ハルヒ「う〜っ……も、もう一回……」

鶴屋「ふふっ、何度でもかかってくるっさ!」

ハルヒ「次は負けないわ!」

古泉「れから賑やかになりそうですね。色んな意味で」

キョン「ああ、そうだな。ところで古泉、お前の忘れ物って何だったんだ?」

古泉「……さあ。忘れましたよ」

キョン「本当は、あの時鶴屋さんの姿に気付いてたんじゃないのか?」

古泉「ふふっ、わかりません」

キョン「……いい友達だよ、お前は」

古泉「んっふ、どうも」

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:47:09.00 ID:2wsgZ71VO

数日後 部室


ハルヒ「今日もみんな集まったわね」

古泉「はい」

長門「……」コクッ

キョン「ああ」

鶴屋「にょろ」

ハルヒ「さて、今日は契約団員の契約更新日よ」

鶴屋「はいっさ」

キョン「そこそこに、とはそういう事か……」

ハルヒ「当然、契約なんだからお給料を払う義務が私たちSOS団にはあるわ」

キョン「そうなのか、古泉?」

古泉「んっふ」

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:52:30.55 ID:2wsgZ71VO

ハルヒ「というわけで、キョン。鶴屋さんにお給料渡しちゃって!」

キョン「……何で俺なんだ。そんな資金あるわけが無いだろ」

ハルヒ「いいから、さっさと行きなさいよ! ほら、鶴屋さんも」

鶴屋「ふふっ、じゃあいってきますっさ」

キョン「え? 何? 何ですか?」

……バタン


結局、鶴屋さんに引っ張られるまま、俺たちは放課後の街に出掛ける事になってしまった

キョン(話が全くわからない)

鶴屋「ふふっ、ごめんねこんな形で。でも、お給料はちゃんと貰わないといけないからさ」

キョン「お給料って何ですか?」

鶴屋「週に一回、ハルにゃんがね……キョン君から貰えって言ったのさ」

キョン「ハルヒが?」

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 00:00:46.25 ID:jIpjVTBOO

鶴屋「うん。だから、今日は街でね……」

キョン「……」

鶴屋「一緒に……一緒に……」

……

鶴屋「ふふっ、甘くて美味しいさ」

二人で座ったベンチ、隣の彼女は美味しそうにシュークリームを頬っぺたにためている

鶴屋「ほら、キョン君も……」

キョン「い、いただきます」

二人で買ったシュークリームを、並んで食べる……

鶴屋「美味しいね」

笑顔の鶴屋さん。こんな彼女を見る事が出来るなら……


キョン(週に一回のお給料も悪くない……かな)

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 00:10:04.02 ID:jIpjVTBOO

鶴屋「ふふっ。今日はこれからどうしよっか?」

キョン「部室……は、もうカバンも持ってきちゃいましたからね」

鶴屋「じゃあさ、一緒にお散歩して……その後は、い、一緒に」

キョン「……」

鶴屋「キョン君と、一緒に帰りたいな」

……


146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 00:14:18.79 ID:jIpjVTBOO

……

あれから、何度か部室に通って将棋もちょっと覚えたりして

みんなの輪の中に、私も段々と馴染んできて……

長門「……読んでみて」

鶴屋「にょろ?」

みんなと仲良くなれた気がして……

でも、ハルにゃんが言ってた言葉の意味も、彼女の本当の気持ちもまだわからなくて……

それでも……

鶴屋「キョン君が買ってくれたシュークリームが、やっぱり一番っさ」

今日も私は、シュークリームを食べながら、大好きな彼の隣で一緒に笑っている




150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 00:19:41.51 ID:jIpjVTBOO

こんな感じで終了です

スレタイみたいな感じに持っていくには、時間が足りないのでこの辺で

呼んでくれた人、保守してくれた人ありがとう

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 00:39:24.47 ID:UK42LdJn0

乙乙

長門の最後「……読んでみて」が嫉妬フラグにしか見えませんw

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 02:23:54.53 ID:jIpjVTBOO

>>154
長門「……読んでみて」

鶴屋「にょろ?」

『彼を振り向かせる100の方法』

『病ムホドアナタガ好キダカラ』

『純情恋愛小説』

『魔女たちの長い眠り』


スレタイまで行くとしたら、こんな感じ

にょろーん

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 04:13:56.93 ID:jIpjVTBOO

本当に、長門さんが嫉妬ルートか

長門「……」

鶴屋「あ、ありがとうにょろ」
長門「……」

本だけを渡すと、彼女はすぐに部室から出ていってしまった

ペラッ、ペラッ……

ハルヒ「有希が本を渡すなんて、珍しいわね」

古泉「気に入られたみたいですね、鶴屋さん」

鶴屋(あれ、しおりが?)

……

【いつもの店の前で待っている】

鶴屋「……?」

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 04:16:49.63 ID:jIpjVTBOO

眠気が来ない、仲良しルート


長門「……」

鶴屋「あ、ありがとうにょろ」
長門「……」

本だけを渡すと、彼女はすぐに部室から出ていってしまった

ペラッ、ペラッ……

ハルヒ「有希が本を渡すなんて、珍しいわね」

古泉「気に入られたみたいですね、鶴屋さん」

鶴屋(あれ、しおり? 二枚も?)

……

【何かあったら、私に相談してほしい】

【いつものお店で待っている】

鶴屋「……」

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 04:32:00.96 ID:jIpjVTBOO

いつものお店

キョン君からお給料がもらえる、シュークリームの美味しいお店

本を渡してくれた彼女もそこにいた

チョコン、とベンチに座り落ち着いた様子でまたさっきとは別の本を開いている

鶴屋「あ、あの……来たにょろ」

とりあえずは挨拶

長門「……座って」

鶴屋「う、うん、わかったさ」

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 04:36:12.95 ID:jIpjVTBOO

長門「……」

鶴屋「……」

彼女は本をパタリと閉じていたが、そこから先の会話が生まれない

みくると一緒にいても、長門さんとは会話する機会があまり無い

それがこうして二人きりで、同じベンチに座っている。どうしよう

長門「……これ」

鶴屋「えっ?」

彼女がスッと渡して来たのは、小さな白い箱

彼から、何度も貰っている見覚えのある箱だった

長門「……開けて」

鶴屋「は、はいっさ」

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 04:41:52.23 ID:jIpjVTBOO

支援ありがっと


鶴屋「あれ、これって……」

長門「シュークリーム」

言葉通り、箱の中にはいつも彼から貰っている生菓子が入っていた

長門「でも、少し違う」

鶴屋「?」

長門「食べてみて」

鶴屋「い、いただきますっ」

フワリと一口、甘さが口の中に広がるけど……あれ?

鶴屋「イチゴの味がするよ?」

長門「……新発売って、あったから」

彼女の目線の先には、大きな看板が立っている

確かにイチゴ味が新発売と書いてあり、同時に売り切れの札も貼ってある……そんな看板を彼女は指差していた

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 04:45:44.23 ID:jIpjVTBOO

長門「買ったら、すぐに売り切れた」

鶴屋「そうなんだっ、ここのお店普段から人気あるからね。新発売なら余計に……」

長門「……」

鶴屋「あ、まだ残ってるから長門さんも食べなよ! イチゴクリーム、美味しいよ」

長門「イチゴはそれ一つ。あとの三つは普通のクリーム」

鶴屋「え、そ、そうだったんだ……た、食べちゃって迷惑だったかい?」

長門「食べて欲しくて買った物だから……気にしないで」

鶴屋「そ、そうなのかい?」

長門「……」コクッ

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 04:52:30.33 ID:jIpjVTBOO

鶴屋「どうして私に?」

長門「……」

鶴屋「?」

小さな箱を膝の上にのせながら、彼女の頭が少し下を向く

感情をあまり表に出さない彼女だけど……悪い気でここに座っていない事だけはわかる

長門「……お近づきの印」

鶴屋「お近づき?」

長門「言葉で近付くのが苦手だから、こうして……同じ味覚を感じて、意識を共有すれば……仲良くなれる気がしたから」

鶴屋「〜〜!」

なんだろう、小さくモジモジしている彼女が、とても可愛く、いじらしく見えて……

距離によっては、癖で抱きついてしまいそうな、そんな衝動

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 04:57:54.66 ID:jIpjVTBOO

鶴屋「えっと、私のためにありがとうね長門さん」

長門「……」コクッ

鶴屋「今度ここに来た時はさ、私が長門さんにイチゴ味をご馳走するっさ! ね?」

長門「……」フルフル

鶴屋「もう、仲良しなんだから遠慮なんていらないよ! みくるも連れて、三人でここに来るにょろ」

長門「……」

鶴屋「ねっ?」

長門「……」コクッ

鶴屋「ふふっ、決まりだね。じゃあ残りのシュークリーム、一緒に食べようよ、ね?」

長門「……うん」

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 05:05:51.76 ID:jIpjVTBOO

……

長門「今回は、これ」

鶴屋「おっ、新しい本だね。でもこれ新発売のやつじゃないのかい?」

長門「もう、読み終わったから……よければ」

鶴屋「ふふっ、ありがとう有希ちゃん」

長門「……」コクッ


ハルヒ「やっぱり、仲いいのね」

みくる「最近、私が入り込む隙が無いんですよぉ〜……」

キョン(朝比奈さん、俺の隣ならいつでも隙だらけですよ)

古泉「では僕たちは、男同士の友情でも深めますか?」

キョン「……そこ、動かすと詰みだぞ古泉」

古泉「んっふ、相変わらず手厳しい人です」

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 05:11:31.84 ID:jIpjVTBOO

ハルヒ「古泉君が終わったら、次は私よ。今度こそキョンの駒を挟んでやるんだから」

キョン「ああ、好きなだけ挟んでくれ」

鶴屋「あ、私も挟むっさ。普通の将棋もいいけど……挟みたい気分にょろ」

長門「……私も」

ハルヒ「あ、じゃあペア組んで交代で駒を動かすのはどうかしら?」

キョン「ハルヒにしては、いいアイデアだな」

古泉「では、僕は傍観者です」
みくる「私も、応援してますよ、キョン君」

キョン「は、はい頑張ります!」
ハルヒ「負けたら罰ゲームよ! じゃあ、ペアの組み合わせはね、私の独断で……」

鶴屋「えへへっ、仲良し……」

長門「……にょろ」




180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 11:34:32.31 ID:jIpjVTBOO

あがってる。お昼休みに一レスだけにょろーん


長門「……これ、読んで」

ハルヒ「え、私に?」

長門「……」コクッ

本だけを渡すと、彼女はすぐに部室から出ていってしまった

ペラッ、ペラッ……

ハルヒ「有希が本を渡すなんて、珍しいわね」

鶴屋「やっぱり仲がいいにょろ」

ハルヒ(あれ、しおり?)

……

【校舎の裏で、待っている】

ハルヒ「……?」



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