キョン「今日は席替えか」 


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 01:52:35.07 ID:GxYoV0fy0

キョン「どうやらハルヒはいつもの場所みたいだな」

「俺の席はーーー」

「げっ、最前列且つ教卓の目の前だと?」

「最悪だ・・・」

長門「・・・」

キョン「ん?」

長門「・・・」

キョン「長門?」

長門「そう」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 02:01:44.07 ID:GxYoV0fy0

キョン「俺の席の隣で一体何をしているんだ?」

長門「今日からここが私の新しいクラス」

キョン「そんな勝手なことが認められるわけないだろ」

「早く自分のクラスに戻った方がいいぞ」

長門「情報操作を施してある。何ら問題はない」

キョン「やれやれ。またハルヒ絡みか?」

長門「それは違う。これは私自身が望んだこと」   

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 02:08:21.65 ID:GxYoV0fy0

1時限目が始まる前に席替えをしたと思って下さい。

キョン「つまりどういうことだ?」

長門「・・・」

キョン「まっ、いいか。長門と席が隣同士なら教卓前でも楽しくやっていけそうだ」

長門「そう」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 02:17:49.62 ID:GxYoV0fy0

教師「授業を始めるぞ。席に着け」

キョン「1時限目は日本史か」

「って、あれ?」

長門「なに?」

キョン「どうやら教科書を忘れてしまったみたいだ・・・」

長門「見る?」

キョン「いいのか?」

長門「・・・」コクン

キョン「すまない、長門」

長門「いい。けど条件がひとつある」

キョン「交換条件か。いいぞ、なんでも言ってくれ」

長門「今日の放課後、私の家に来て欲しい」  

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 02:26:17.65 ID:GxYoV0fy0

キョン「長門の家にか?喜んで行かせてもらう」

長門「そう」

キョン「交渉成立だな。席くっつけてもいいか?」

長門「わかった」

キョン「すまん、よっと」

長門「これであなたも授業に参加できる」

キョン「ははっ、別に寝てやり過ごしてもよかったんだけどな」

長門「今のあなたは教卓の前の席。きっとすぐに叱られる」 

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 02:36:39.45 ID:GxYoV0fy0

キョン「全くだ。はぁ・・・これから先がおもいやられる」

長門「その心配は必要ない。あなたの面倒は私がみる」

キョン「恩にきる、長門」

長門「気にしないで」

教師「ごほん、随分と彼女との話に夢中みたいだな」

キョン「あっ、いえ。その・・・」

教師「少しは時間と場所を弁えたらどうだ?」

キョン「すみません・・・」

教師「では気を取り直して授業を始める。教科書81Pを開け」    

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 02:45:16.44 ID:GxYoV0fy0

1時限目終了後

ハルヒ「あんた達さっき何していたのよ」

キョン「別に。ただ俺が教科書を忘れたから長門に見せてもらっただけの話だ」

ハルヒ「ふーん。その割には随分と仲よさそうだったじゃない」

キョン「部活仲間と席が隣同士なんだ。楽しくないはずがないだろ」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 02:51:40.74 ID:GxYoV0fy0

ハルヒ「うっさいわね。それぐらいわかってるわよ」

キョン「妙に突っかかってくるな。どうしたんだ?」

ハルヒ「有希、私と席を変わりなさい」

キョン「何言ってんだ。今更そんなこと出来るわけないだろ」

ハルヒ「キョンは黙ってなさい」

キョン「む・・・」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 02:59:36.60 ID:GxYoV0fy0

ハルヒ「有希、もう一度言うわ。私と席を変わって頂戴」

長門「いや」

ハルヒ「これは団長命令よ。私の命令に逆らう気?」

長門「その命令には従えない」

ハルヒ「へえ、どうしてよ?」

長門「私はこの席がすこぶる気にいった」

ハルヒ「・・・それはキョンが隣にいるから?」

長門「そうかもしれない」

ハルヒ「・・・そっ、もういいわ」

キョン「おいっ、ハルヒ!全くなんだってんだ」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 03:07:09.13 ID:GxYoV0fy0

しえん感謝です・・・!

長門「電話」

キョン「ん?ああ、古泉からか。少し席を外す」

長門「そう」

キョン「どうした」

古泉「突然のお電話申し訳ありません」

キョン「いいから早く用件を話せ」

古泉「実はですね、大規模な閉鎖空間が隣町で確認されました。この時間に発生するのは稀なんですがね」


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 03:12:54.83 ID:GxYoV0fy0

キョン「それで?」

古泉「何か原因に心当たりはありませんか?涼宮さんと同じクラスのあなたなら分かるかと思いまして」

キョン「生憎だが俺は知らん」

古泉「そうですか・・・」

キョン「いや、変わったことが一つだけあったな」

古泉「なんでしょう?」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 03:21:50.57 ID:GxYoV0fy0

キョン「詳しいことは知らんが長門が俺のクラスの一員になっていたんだが」

古泉「なんですって・・・?」

キョン「それに席替えをしたんだが長門と席が隣同士にもなったな」

古泉「・・・涼宮さんのお席は?」

キョン「いつもの窓際最後列だ」

古泉「そういうことでしたか。長門さん、一体どういうおつもりで・・・」

キョン「ん、それが何か関係しているのか?」 

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 03:27:26.20 ID:GxYoV0fy0

古泉「いえ、この話の続きは後日致しましょう。とりあえず僕はこれからバイトに行かないといけませんので今日の活動はお休みすると涼宮さんにお伝え下さい」

キョン「ああ、わかった。怪我するなよ」

古泉「んっふ、ありがとうございます。それでは失礼します」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 03:34:38.78 ID:GxYoV0fy0

長門「おかえり」

キョン「ああ、ただいま」

長門「・・・」ジー

キョン「何を見ているんだ?」

長門「あなたが席を外している間に配られた」

キョン「どれどれ。ああ、本を発注するためのカタログか」

長門「・・・」ジー

キョン「何か欲しい本でもあ見つかったのか?」

長門「・・・」コクン

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 03:45:29.36 ID:GxYoV0fy0

キョン「そうか。よしっ、欲しいのはどれだ?買ってやるよ」

長門「本当?」

キョン「ああ、本当だ。だから遠慮なんてするな」

長門「では、これとあれとそれとこれとーーー」

キョン「・・・待った」

長門「なに?」

キョン「遠慮するなとは言ったがそんなに買える程金を持ち合わせていない」

長門「そう・・・」

キョン「うっ・・・、一冊で我慢してくれ」

長門「わかった」

「ではこれにする」

キョン「了解。発注しておくから届いたら渡すな」

長門「感謝する」

キョン「ははっ、どういたしまして」

ハルヒ「何よ・・・有希ばかり」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 03:56:03.35 ID:GxYoV0fy0

3時限目

長門「起きて」

キョン「んっ・・・」

長門「あなたに数式の答えを解くよう指名された」

キョン「スー・・・スー・・・」

長門「・・・」

キョン「・・・・・・っいでっ!」

ハルヒ「何授業中寝てんのよ!バカキョン!」

キョン「ハルヒ、お前・・・!俺に何を投げやがった!」

ハルヒ「別になんだっていいじゃない。そんなことよりも問題を当てられているのに起きないあんたが悪いのよ!」

キョン「うっ・・・確かにそうかもしれんが・・・」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 04:14:48.37 ID:GxYoV0fy0

ハルヒ「何授業中寝てんのよ!バカキョン!」

キョン「ハルヒ、お前・・・!俺に何を投げやがった!」

ハルヒ「別になんだっていいじゃない。それよりも問題を当てられているのに起きないあんたが悪いのよ!」

キョン「うっ・・・、確かにそうかもしれんが・・・」 

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 04:20:56.70 ID:GxYoV0fy0

ハルヒ「でしょ?素直に私に感謝したらどうなのよ」

キョン「くっ・・・」

教師「涼宮の言うとおりだ。ほら、早く問題を答えろ」

キョン「えっと・・・」

教師「どうした?」

キョン「計算中です」

教師「それなら早くしろ」

キョン「(はい教科書も開かないで寝ていた奴が答えられるわけがないだろ。意地悪しやがって)」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 04:27:53.37 ID:GxYoV0fy0

長門「(・・・)」コソコソ

キョン「(え?)」ヒソヒソ

長門「(・・・)」コソコソ

キョン「(・・・!すまない、長門)」ヒソヒソ

「ーーーです」

教師「・・・正解だ。次からは寝るなよ」

キョン「はい、すみませんでした」

「(ありがとな、長門)」ヒソヒソ

長門「(本のお礼)」コソコソ

ハルヒ「・・・ぎりっ」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 04:37:26.15 ID:GxYoV0fy0

昼休み

キョン「ようやく昼休みか」

「長門は弁当なのか?」

長門「そう」

キョン「俺も弁当なんだが一緒に飯食わないか?」

長門「わかった」

キョン「後はそうだな・・」

「ハルヒ!」

ハルヒ「・・・なによ?」

キョン「お前も一緒に飯食わないか?」

ハルヒ「・・・」ぷいっ

キョン「なんだ無視か、まあいいが。長門、部室で飯食べるよう」

長門「そう」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 04:56:18.75 ID:GxYoV0fy0

いつもの部室

キョン「ハルヒがいないと此処も平和で落ち着くな」

「お茶飲むか?」

長門「飲む」

キョン「了解。ちょっと待ってろ」

「・・・」アセアセ

長門「大丈夫?」

キョン「心配するな。あまりなれていないだけだ・・・」アセアセ

長門「そう」

キョン「ーーーよしっ、できたぞ。どうだ長門?」

長門「・・・非常に味が濃い。舌に残る苦みが口の中を不愉快にさせ、それでいてーーーーーー。とっても美味しくない」

キョン「な・・長門・・・?」

長門「失礼した」
 

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 05:09:50.88 ID:GxYoV0fy0

朝か・・・。

キョン「ところで長門は普段何食べてるんだ?」

長門「これ」

キョン「コンビニ弁当か」

長門「温めるだけで食べることができる。非常に便利」

キョン「それはそうかもしれないが自分で弁当を作ったりはしないのか?」

長門「その必要性はない。しかし料理の知識は備わっている」 

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 05:17:08.32 ID:GxYoV0fy0

ねむい・・・

キョン「なら是非とも長門の手作り弁当を食べてみたいものだな」

長門「・・・」

キョン「だめか?」

長門「そんなことない」

キョン「それなら明日の弁当は長門にたのんでもいいか?」

長門「・・・」コクン

キョン「サンキュー、長門。明日楽しみにしてるからな」

長門「そう」 

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 05:39:07.87 ID:GxYoV0fy0

昼食後

キョン「まだ時間があるな。何かしたいことないか?」

長門「これ」

キョン「オセロか」

長門「いつもあなたが古泉一樹と遊んでいるこれは楽しそうに思えた」

キョン「ルールはわかるのか?」

長門「わからない」

キョン「了解。じゃあルールを説明しながら対戦でもしよう」

長門「お願いする」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 05:44:01.68 ID:GxYoV0fy0

長門「・・・」

キョン「・・・」

長門「私の勝ち?」

キョン「・・・ああ、そうだな。全部とっちまったもんな」

長門「真っ白」

キョン「教えながら対戦していたんだが・・・ははっ」

長門「もう一度やりたい」

キョン「・・・ああ、好きなだけ付き合うよ」 

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 05:53:16.48 ID:GxYoV0fy0

キンコンカンコン

キョン「チャイムが鳴ったみたいだな」

「さて、片付けて教室に戻るか」

長門「・・・」袖掴み

キョン「長門?」

長門「まだ遊びたい」

キョン「そうは言ってもだな、授業が始まる」

長門「もう少しだけ・・・」

キョン「また明日の昼に部室に来て遊ぼう」

長門「・・・」

キョン「それじゃだめか?」

長門「・・・約束」

キョン「ああ、約束だ」

長門「・・・ありがとう」ぼそっ

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 06:01:15.30 ID:GxYoV0fy0

5時限目

キョン「グーグー」

長門「寝ている」

キョン「グーグー」

長門「・・・」

キョン「グーグー」

長門「・・・」

キョン「グー・・・・」ガダッ!!!!机を蹴る音

長門「!」びくっ

クスクス

 クスクス

  クスクス

キョン「・・・」カア

長門「ユニーク」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 06:08:46.07 ID:GxYoV0fy0

放課後

キョン「今日の部活は休みだって?」

ハルヒ「そうよ。みくるちゃんと古泉君にも伝えておいてね」

キョン「それはいいが、どうしたんだ?」

ハルヒ「たまには休みを上げようと思っただけよ」

キョン「そうかよ」

ハルヒ「それじゃあね。頼んだわよ」

キョン「・・・よく分からないが朝比奈さんに連絡して俺達も早く帰るか」

長門「・・・」コクン

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 15:27:25.91 ID:GxYoV0fy0

長門の家

キョン「さて、長門の家に着いたわけだが何をするんだ?」

長門「特に何も」

キョン「そうか。ところで」

長門「なに?」

キョン「暖房はつけないのか?」

長門「環境に応じて体温が自動調整されるため暖房機器を使用する必要性はない」

キョン「・・・一般人の俺にそんな機能はないんだが」

長門「うかつ」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 15:36:38.53 ID:GxYoV0fy0

キョン「スースー」

長門「起きて」

キョン「・・・んっ」

長門「・・・」

キョン「すまん、寝ちまった。今何時なんだ?」

長門「20時15分48秒
キョンもうそんな時間か。そろそろ帰らないと」

長門「待って」

キョン「ん?」

長門「夕飯を用意した。是非あなたに食べてもらいたい」

キョン「長門の手料理だと・・・?」

「喜んで御馳走になる」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 15:57:56.81 ID:GxYoV0fy0

キョン「・・・」モグモグ

長門「・・・」ジー

キョン「・・・」モグモグ

長門「どう?」

キョン「美味しい」

長門「本当?」

キョン「ああ、本当に美味しいよ」

長門「そう」ホッ

キョン「おかわりもらってもいいか?」

長門「どうぞ」

キョン「すまん」

「この調子で明日の弁当も頼むな」

長門「わかった」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:02:41.45 ID:GxYoV0fy0

キョン「・・・」モグモグ

長門「・・・」パクパク

キョン「長門、あれとってくれるか?」

長門「・・・」スッ

キョン「サンキュー」

長門「・・・」パクパク

キョン「・・・」モグモグ

長門「とって」

キョン「はいよ」スッ

長門「感謝する」 

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:07:10.19 ID:GxYoV0fy0

キョン「・・・」モグモグ

長門「・・・」パクパク

キョン「って、よく俺の言いたいことがわかったな」

長門「あなたこそ」

キョン「ははっ、今のやりとりはなんか夫婦みたいだったな」

長門「?」

キョン「す、すまん。今のは忘れてくれ」

長門「そう」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:14:38.16 ID:GxYoV0fy0

夕食後

キョン「夕飯も御馳走になったしそろそろ帰るな」

長門「泊まる?」

キョン「・・・それはいろんな意味で危険だから遠慮する」

長門「そう」

ガチャッ

キョン「それじゃあまた明日学校で。夕飯ありがとな」

長門「また明日」

バタン

長門「・・・」

「・・・わからない。何故彼をこんなにも愛おしく感じるのか」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:21:33.70 ID:GxYoV0fy0

翌朝 キョンの家

ガチャ

キョン「行ってきます」

長門「おはよう」

キョン「うおっ!長門か。朝からどうしたんだ?」

長門「一緒に登校する」

キョン「俺とか?」

長門「・・・コクン」

キョン「そうか。待たせて悪かった」

長門「いい」

キョン「ああそうだ、長門」

長門「なに?」

キョン「おはよう。さっきは言いそびれちまったからな」

長門「・・・そう」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:28:18.89 ID:GxYoV0fy0

登校中

古泉「おはようございます、お二人方」

キョン「古泉か。その体、大丈夫そうには見えないな」

古泉「ええ、そうでしょうね。昨日は神人との連戦で休む暇もありませんでしたよ」

キョン「それは災難だったな」

長門「無様」

古泉「・・・」

キョン「・・・」 

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:34:19.87 ID:GxYoV0fy0

古泉「ゴホンッ、ところで長門さん。あなたにお尋ねしたいことがあります」

長門「なに?」

古泉「昨日の件はどういったおつもりですか?」

キョン「昨日の件って?」

古泉「すみませんがあなたは黙っていてください」

キョン「けっ」

古泉「長門さん、お答下さい」

長門「別に」

古泉「特に理由はないと?」

長門「そう」 

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:41:41.21 ID:GxYoV0fy0

古泉「ではあなたは理由もなく涼宮さんの逆鱗に触れるような真似をしている、そういうことですね?」

長門「・・・」

古泉「ごまかしても無駄ですよ。僕にはわかります。あなたの気持ちが」

長門「・・・」

古泉「ですが今の状態が長く続けば世界は崩壊へと向かい続けます」

「御自分の置かれている身をどうかよく考え直して下さい。それでは」

長門「・・・」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:46:53.13 ID:GxYoV0fy0

キョン「おいっ!」

古泉「そうそう。あなたも極力涼宮さんのご機嫌を損ねない様にお願いしますね」

キョン「そんなの今に始まったことじゃないだろ」

長門「いえ、長門さんがあの様子ではすべてはあなたの行動次第ですから。失礼」スタスタ

キョン「なんだってんだ」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:50:30.61 ID:GxYoV0fy0

長門「帰る」

キョン「帰るって学校はどうするんだよ」

長門「・・・」スタスタ

キョン「長門!」

「全く・・・。本当にどうなってんだよ」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:55:36.45 ID:GxYoV0fy0

長門の家

長門「・・・」

キョン「・・・」

長門「あなたは学校に行くべき」

キョン「そうはいかん」

長門「私のことは放っておくべき」

キョン「断る」

長門「・・・なぜ?」

キョン「俺には心なしか長門が悲しそうにみえるからだ」

長門「・・・」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:03:04.89 ID:GxYoV0fy0

キョン「長門が落ち着くまで傍にいてるよ」

長門「・・・あなたの気持ちは非常に嬉しい」

キョン「だったら」

長門「しかしあなたはここにいてはいけない。帰って」

キョン「・・・」

長門「・・・お願い」

キョン「・・・わかった」

ガチャッ

バタン

長門「・・・」

「・・・きっと彼を傷つけた。胸が痛い。苦しい。悲しい。どうして・・・」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:16:06.46 ID:GxYoV0fy0

学校

キョン「なんとか遅刻しないで間にあったな」

「ん?ハルヒの奴はまだ来てないのか。珍しいこともあるもんだ」

「まあ大方寝坊でもしたんだろう。その内来るだろ」

「んで長門は休みっと」

「・・・今日の帰り家に寄ってみるか」

「っと、担任が来たな」

生徒「起立。礼。着席」

担任「今日は涼宮は風邪で休むそうだ」

キョン「(ハルヒもか・・・。あいつらしくないな)」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:25:38.04 ID:GxYoV0fy0

昼休み

キョン「ようやく昼休みか」

「さっ、飯だ飯だ」

「って、今日は長門の弁当を食べれるって思って持ってきてないんだった・・・」

「長門の弁当・・・」シュン

「仕方ないが今日は購買で済ますか」

「・・・って、財布もない」

「不幸だ・・・」

「・・・」

「部室でお茶を飲んで飢えを凌ごう・・・」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:35:29.05 ID:GxYoV0fy0

部室前

キョン「腹減った・・・」

ガチャ

長門「・・・」

キョン「・・・」

長門「・・・」

キョン「・・・長門?」

長門「そう」

キョン「今日は休むんじゃなかったのか?」

長門「これをあなたに」

キョン「弁当?」

長門「約束したから。あなたをがっかりさせたくなかった」

キョン「長門・・・」

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:54:51.85 ID:GxYoV0fy0

長門「私は帰る」

キョン「待て」

長門「・・・」

キョン「気持ちは嬉しいが一人で重箱を食べきれるか。だから一緒に食べないか?」

長門「・・・」

キョン「どうだ?

長門「ごめんなさい」

キョン「・・・そうか。明日は学校にーーーって土曜日だったな」

長門「もういい?」

キョン「あ、ああ。呼び止めて悪かった。またな長門」

長門「・・・」

ガチャ

バタン

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:02:43.90 ID:GxYoV0fy0

キョン「はあ・・・」

ガチャ

キョン「ながーーー!」

古泉「おや」

キョン「・・・古泉」

古泉「奇遇ですね。こんな時間に部室で会うなんて。ん?」

キョン「・・・やらんぞ」

古泉「ふむ、その重箱。お一人ではたべきれそうにありませんね」

キョン「何が言いたい」

古泉「僕もご一緒しても構いませんか?」

キョン「・・・」

古泉「んっふ、無言は肯定と見なしますよ。それではご一緒させていただきます」 

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:14:32.39 ID:GxYoV0fy0

古泉「これは長門さんがお作りになられたのですか?」

キョン「ああ」

古泉「とても美味しいですね」

キョン「そうかよ。それで?」

古泉「なんでしょう?」

キョン「何か用件でもあるんじゃないのか?」

古泉「鋭いですね。全くのその通りです」

「今日涼宮さんは風邪でお休みしましたね?」

キョン「それがどうした」

古泉「是非ともお見舞いに行ってあげて下さい」

キョン「なんで俺が」
  

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:21:17.91 ID:GxYoV0fy0

古泉「あなたは本当に涼宮さんが風邪を引いてお休みしているとお思いですか?」

キョン「はあ?」

古泉「おやおや、ここまで行ってわからないとは。全く、あなたらしいですね」

キョン「そうか、喧嘩を打ってるならかうぞ」

古泉「いえいえ、その様なおつもりはありません」

「ですがお見舞いには行って上げて下さい。この通りです」

キョン「頭を下げられても困るんだか・・・」  

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:32:54.58 ID:GxYoV0fy0

古泉「それだけあなたには涼宮さんのお見舞いに行って欲しいのです」

「それで答えを聞かせてもらえないでしょうか?」

キョン「・・・検討する」

古泉「曖昧な返答ですがいいでしょう。是非とも前向きなご検討をお願いします」

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:40:02.78 ID:GxYoV0fy0

キンコンカンコン

古泉「おや、時間のようですね」

キョン「なんとか残さずに食べ切れた・・・」

古泉「んっふ、僕のお力添えがなければ完食な無理だったと思いませんか?」

キョン「ふん、感謝ぐらいはしてやるよ」

古泉「これはこれは。あなたから感謝されるとは珍しい」

キョン「うるせー。いいから教室戻るぞ」

古泉「かしこまりました」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:48:40.93 ID:GxYoV0fy0

放課後

キョン「今日も活動は休みか。朝比奈さんは元気にしてるのだろうか」

「さて、ハルヒのお見舞いは・・・。どうすっかな」

古泉 この通りです

キョン「・・・たまにはあいつの頼みをきくのも悪くないな」

「だがその前にこの重箱を長門に返しに行かせてもらう」

「それぐらいはいいだろ」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:56:49.82 ID:GxYoV0fy0



ハルヒ「私が学校をサボるなんてらしくないわね」

「みんな心配してるわよね?」

「特にキョン。お見舞いに来てくれなかったらぶん殴ってやるんだから!」

「あら、あそこにいるのってキョンじゃない」

「私には気づいていないのかしら」

「いや、好都合だわ。これからどこに行くのか監視してやるわよ」

「・・・私の家に来てくれるのよね?」

「キョン・・・」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 19:09:53.26 ID:GxYoV0fy0

ケーキ屋

ハルヒ「ふうん、ケーキなんか買ってどうするつもりなのかしら」

「てか、あれだけ絞り取ってもまだお金あるんじゃない。これなら当面は活動の資金源には困まらなさそうね」

スーパー

「今度はなに買うのかしら。果物に飲み物?」

「・・・もしかしてあたしのお見舞いに行く準備をしてるの?」
 

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 19:16:24.02 ID:GxYoV0fy0

ハルヒ「ふふっ、バカキョンにしては気がきくじゃない!」

「ケーキまで用意してくれるなんてそれほど私のことが心配なのね!」

「そうと決まれば早く家に帰って具合の悪いふりをしていないといけないわね!」

「ふふっ♪」

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 19:20:38.49 ID:GxYoV0fy0

キョン「なんかハルヒの笑い声が聞こえたような・・・」

「いや、気のせいか?」

「まあ、見舞い品はこんなもんでいいな」

「よしっ、とりあえずは長門の家に行かないとな」


124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 19:30:42.14 ID:GxYoV0fy0

長門の家

キョン「長門、俺だ。開けてくれ」

長門「・・・」

キョン「頼む」

ガチャ

キョン「長門・・・」

長門「・・・なに?」

キョン「突然すまんな。これ、弁当箱返しに来たんだ」

長門「そう」

キョン「家に上がってもいいか?」

長門「いいの?」

キョン「ん?」

長門「あなたが上がるというなら私は止めない」

キョン「・・・長門?」



125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 19:33:20.86 ID:GxYoV0fy0

長門「なんでもない。入って」

キョン「あ、ああ。おじゃまするな」

長門「どうぞ」

バタンッ

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:28:59.00 ID:GxYoV0fy0

キョン「ケーキ買ってきたんだが食べないか?」

長門「それは私のため?」

キョン「ああ、昨日と今日と御馳走になったしな。そのお礼だ」

長門「そう。ならいただく」

キョン「ほら、先に好きなの選んでいいぞ」

長門「感謝する」

「・・・」ジー

「・・・」ジー

キョン「迷ってるのか?」

長門「・・・どちらのケーキも魅力的。私に選択することはできない」

キョン「ははっ、なら半分個ずつにしないか?二つの味を楽しめるぞ」

長門「そうする」

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:35:06.94 ID:GxYoV0fy0

キョン「さて、そろそろ帰ろうかな」

長門「用事?」

キョン「ああ、ハルヒのお見舞いにちょっとな」

長門「行かないで」

キョン「な、長門?」

長門「あなたは私と夕飯を共にするべき」

キョン「しかしだな・・・」

背後からギュッ

長門「お願い・・・」

キョン「長門・・・」ドキドキ

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:44:02.28 ID:GxYoV0fy0

長門「だめ?」

キョン「うっ・・・、それなら交換条件だ」

「頬にキスしてくれたら考えてやる(って俺は何を言っているんだ!?)」

長門「わかった」

キョン「え?」

長門「・・・」

キョン「・・・ん?」

長門「・・・届かない」

キョン「えっと・・」

長門「あなたは配慮に欠ける。かかんで欲しい」

キョン「す、すまん(体は正直だな。ははっ・・・)」

チュッ 

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:47:23.83 ID:GxYoV0fy0

長門「これで契約は結ばれた。あなたには夕飯を食べて行ってもらう」

キョン「喜んで(なな長門の唇や柔らけー。古泉・・・すまん)」ドキドキ 

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:54:31.58 ID:GxYoV0fy0

食事後

prrrrrr

長門「電話」

キョン「ああ(げっ古泉か)」

「・・・なんだ」

古泉「今すぐいつもの公園に来て下さい。もちろんすぐ傍にいる長門さんもです。では」

ツーツー

キョン「ははっ、何でもお見通しってか・・・」

「だとよ長門」

長門「・・・わかった」

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:05:45.74 ID:GxYoV0fy0

いつもの公園

古泉「遅かったですね」

キョン「すまん・・・」

古泉「まあいいです。ところで」

「あなたは涼宮さんのお見舞いには行きましたか?」

キョン「・・・」

古泉「それと」

「長門さん。あなたはいつから急進派になられたのですか?」

「今回の件ではさぞやいいデータがとれたでしょうね」

長門「・・・」

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:16:47.81 ID:GxYoV0fy0

古泉「現在各地でこれまでにない規模の閉鎖空間が発生しております。機関は総力を上げて事態の鎮静化をはかっていますが・・・どうでしょう」

「現状は人手が足りず鎮静化の見込みに見通しは全くたっておりません」

「原因は言わずともおわかりですね?」

キョン「・・・ああ」

古泉「それで今回の件についてどう責任をお持ちになるつもりですか?」 

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:34:20.24 ID:GxYoV0fy0

キョン「それは・・・」

古泉「機関の上層部は情報統合思念体と今回の件について緊急会議を開くことを決定しました」

「長門さん、これが何を意味するのかお分かりですね?」

長門「・・・」コクン

古泉「今からでも遅くはありません。彼のことは諦めていただけないでしょうか?それだけて全てが解決にむかうのてすが」


164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:45:47.15 ID:GxYoV0fy0

長門「・・・」

古泉「すぐにはお答え出せませんか・・・」

「わかりました。では一日だけ猶予を与えますからその時間内で決断して下さい」

「これは今後を左右する重要なことですからよくご検討下さい。よろしいですね?」

長門「・・・わかった」



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:51:07.57 ID:GxYoV0fy0

お答出せませんか×
お答出来ませんか○

古泉「僕からのお話はこれで以上です。それでは僕は仲間の下へと駆けつけなければいけませんのでこの辺で」

「あなたも反省して下さいね。てかしろ」

キョン「わかってる・・・」

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:59:39.84 ID:GxYoV0fy0

キョン「・・・大丈夫か?」

長門「・・・て・」ボソボソ

キョン「ん?」

長門「明日時丁度いつもの公園に来て」ボソボソ

キョン「・・・」

「了解」

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:04:24.92 ID:GxYoV0fy0

古泉以降のやり取りが勢いで書いたらgdgdに・・・


172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:14:44.12 ID:GxYoV0fy0

翌日デート省略

キョン「もうこんな時間か」

長門「・・・」

キョン「楽しい時間はすぐに終わって儚いよな」

長門「・・・」

キョン「でも」

長門「なに?」

キョン「また明日からもこんな日が続いていけばいいよな」

長門「・・・今日は楽しかった」

キョン「俺も楽しかったな」

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:18:02.52 ID:GxYoV0fy0

キョン「また明日・・・も会えるのか?」

長門「・・・」

キョン「大丈夫だ。話を聞く覚悟はもう出来てる」

「だから話てくれ」

長門「・・・わかった」

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:23:52.27 ID:GxYoV0fy0

長門「私は涼宮ハルヒの観測任務から外されることが情報統合思念体と機関の上層部との会議で決定された」

キョン「そうか」

長門「・・・」

キョン「どうした」

長門「ここから先は冷静になって聞いて欲しい」

キョン「だから心配するな。取り乱したりはしない」

長門「・・・そう」

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:31:18.11 ID:GxYoV0fy0

長門「近い内に私と言う個体はこの世界から消滅する」

キョン「・・・・・は?」

長門「私に変わる涼宮ハルヒの観測の後任の派遣も決定された」

キョン「待て待て。それも情報統合思念体が決めたことなのかよ?」

長門「それは違う。これは情報統合思念体の意志ではない」

キョン「だったら・・・!」

長門「私がそう望んだから」

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:35:01.13 ID:GxYoV0fy0

キョン「ははっ、長門自ら処分されることを願ったとでも言うのかよ・・・」

長門「そう」

キョン「・・・納得のいく説明ぐらいはしてくれ」

長門「承知した」

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:42:49.27 ID:GxYoV0fy0

長門「あなた方と過ごす時間を私はいつしか心待ちにしていた」

「その中でも特にあなた」

「私にとってあなと過ごす時間は涼宮ハルヒの観測と同等若しくはそれ以上の価値があることに気がつかされた」

「もっとあなたと共に在り続けたい。これからもあなたと共に」

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:54:16.27 ID:GxYoV0fy0

長門「けどあくまでも私は涼宮ハルヒの観測のために生み出された」

「私の過ちで涼宮ハルヒの精神状態が不安定である以上私があなたと接触することは極めて危険」

「以後同じ過ちを繰り返すこと防ぐために処分が最適と判断した」 

182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:59:40.13 ID:GxYoV0fy0

キョン「おまえはそれでいいのかよ?」

長門「いい。けどもう一度あなたと図書館に行きたかった」

キョン「・・・」

長門「最期に一つだけ聞いて欲しい」

「今の私の気持ちを地球レベルに言語化する」

「私はあなたを愛していた」

「そのことだけは決して忘れないで欲しい」

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:03:52.65 ID:N9xaw0l50

キョン「待て」

長門「・・・」

キョン「俺はまだ納得なんてしてないぞ」

長門「・・・そう。なら強行手段に移る」スッ

キョン「ーーーっ、何をする気だ?」

長門「あなたの記憶を改変する」

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:08:17.91 ID:N9xaw0l50

キョン「本気で言っているのか・・・?」

長門「本気。しかしあなたには選択肢がある」

「このまま私という個体が処分されるのを認めるか、あなたから私に関する全ての記憶を消去するか3秒以内に答えて」

186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:12:39.25 ID:N9xaw0l50

長門「3」

キョン「待てよ。それだと結局は長門という存在が俺の前から消えてしまうだろ」

長門「2」

「楽しかったって言ったのは嘘だったのか?」

長門「1」

キョン「答えろ長門!」

長門「0」

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:17:21.60 ID:N9xaw0l50

長門「あなたの答えをきかせて欲しい」

キョン「ーーーっ」

長門「黙秘は許さない」

キョン「・・・自分の命と俺たちの思い出を天秤かけやがって」

長門「方法がなかった。答えを」

キョン「・・・長門が消えちまうくらいなら俺の記憶を消してくれ」

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:23:21.28 ID:N9xaw0l50

長門「そう」

キョン「・・・長門」

長門「なに?」

キョン「俺もおまえのことが好きだったよ」

長門「・・・そう」

キョン「さあ一思いにやってくれ」

長門「・・・」クルッ

キョン「どうした?」

長門「・・・」スタスタ

キョン「ながーードカッ!!!

長門「さようなら」



193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:32:27.71 ID:N9xaw0l50

終わりです。
こんな駄スレに最後まで付き合っていただき感謝です。
最後キョンは車に引かれて長門に関する記憶を失ったと思って下さい。
補足としては暫くして記憶を戻したキョンはハルヒの魔の手から避けつつ再び長門と再会して幸せになりましとさ。
ではありがとうございました!

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 01:51:07.35 ID:N9xaw0l50

目が覚める。
どうやら俺は眠っていたようだが妙に現実的な夢を見ていた気がした。
あの夢の中に出てきた女の子は一体誰だったのだろうか。
何かとても大切なことを忘れている。
そんな気がして止まないが、記憶が混雑してるせいもあって、あれは現実に起こり得たことだったのか。
それとも単なる夢物語であったのか。
まるで区別がつかない。
ただ、仮に前者であったとしたら俺はその女の子になんて顔をさせてしまったのだろうか。
いずれ記憶が鮮明になるからその時に改めて考えよう。
ところでここは一体どこなんだ?

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:03:00.25 ID:N9xaw0l50

何となく辺りを見渡すと見覚えのある顔が俺の顔を見て呆然としていた。

「おう、ハルヒじゃないか」

「・・・・」

俺と真っ先に目が合ったハルヒに声をかけてみたが相変わらず口を開けたまま呆然としている。

「朝比奈さんまで。どうかしましたか?」

次に麗しの朝比奈さんにお声をかけると今度は突然大粒の涙を流して泣かれた。

あの、俺なにかしましたか? 

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:18:32.07 ID:N9xaw0l50

朝比奈さん泣かれて狼狽えていると何だか癪に障る声が聞こえてきた気がした。

「あなたは3日の間昏睡状態でいたんですよ」

出来れば無視したい所ではあるがハルヒと朝比奈さんから事情を聞き出せそうにない以上、古泉から話を聞くしかないんだが・・・。

いつものエセスマイルではなく、古泉もまた目尻に涙を貯めて今にも泣きだしそうな表情をしていたためいつもの皮肉は止めておくことにする。

206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:29:51.91 ID:N9xaw0l50

その後、古泉から聞いた話はこうだ。
下校途中に1台の車が俺たちに向かって突っ込んできて際に運悪く俺はその車に跳ね飛ばされたらしい。
その時に頭を強く打ってしまいそのまま俺は3日間昏睡状態だったと。
おいっ、どんだけ俺はついていないんだ。
まさかわが身にも交通事故が降り懸かろうとは・・・。
あいつ等が巻き込まれなかっただけよしとしよう。

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:38:53.63 ID:N9xaw0l50

そんな風に情報を整理していると急に寝ている体をひっばられた。

「おっ、おい!」

正気を取り戻したのか、ハルヒが乱暴に俺の胸ぐらを掴んで来たのだ。

「ハルヒ!俺は怪我人なんだぞ?」

必死に抗議の声を上げるが、そんなことお構いなしに力強く締め上げる。
マジで苦しいんだが・・・。

209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:46:01.66 ID:N9xaw0l50

「涼宮さん暴力はいけませんよぅ」

慌てて朝比奈さんが俺とハルヒの間に割って入り引き離そうとするが無理ですよ。
か弱い朝比奈さんでは野獣如くの力を持つハルヒは止められませんからね。

もう半場諦めて全て成り行きに身を委ねていると、目の前にいるハルヒがか細い声で何かを呟いた。        

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:51:54.02 ID:N9xaw0l50

あまり良く聞き取ることは叶わなかったが

「心配したんだからバカキョン」

きっとハルヒはこう言ったんだと思う。

でないと俺の胸元で泣きじゃくるハルヒの姿に説明がつかないからな。

俺はそっと頭に手を乗せて優しく何度も撫で続けた。

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:01:09.67 ID:N9xaw0l50

それから暫くすると、いつもの調子を取り戻したのか

「あんた退院したら私たちに何か奢りなさいよね!心配かけた罰よ!」

なんて威勢のいい声で命じられるもんだから思わず頷いてしまった。

後ほど、普通は逆じゃないのかと疑問に思ったがベットの傍らにあるテーブルになんともまあ豪勢な果物の詰め合わせが置いてあったもんだから結局最後まで文句は言えなかった。

畜生

213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:09:08.67 ID:N9xaw0l50

その後俺たちは談笑をしたり簡単なゲームをして有意義な時間を過ごした。

まるでいつもの部室いるような錯覚を起こしてしまうかと思ったぐらいだ。

しかし何かが欠けている。

その違和感は相変わらず払拭することが出来ないでいた。



214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:15:59.23 ID:N9xaw0l50

その日の夜。
静まり帰った病室で俺は目が覚めた。
尿意を催したからだ。

「こんな時間にトイレに行きたくなるなんてついてないな」

夜の病院は不気味で本当に幽霊が実在するのじゃないかと錯覚する。
・・・とっとトイレを済まそう。


216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:28:41.78 ID:N9xaw0l50

トイレを済ませたついでに自動販売機を利用しようとロビーへと向かう。

すると、こんな時間に人がいるわけがないのに待ち椅子に制服を着た一人の女の子が座っていた。

暗くて良く見えないが、北高の制服だろうか。

興味心からかこんな所で何をしているのか尋ね様とその女の子に近づく。

小柄で紫色の紙をして手には本を持っていた。

すぐ近くまで来てようやく俺に気がついたのか、始めてその女の子と目があった。

ーーー待て。

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:40:17.19 ID:N9xaw0l50

俺はこの女の子と一度・・・いや、何度も会っているはずだ!

根拠はないが心がそう訴えている。

しかしいつ。どこで。何をしていたのか全く思い出せない。

そんな俺を尻目に女の子が椅子から立ち上がりどこかに立ち去ろうとする。

俺は慌てて引き留めようとするが、その時頭が割れんばかりの頭痛に襲われそこで意識を手放した。

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:43:24.81 ID:N9xaw0l50

寝ます。
一度は終了したスレですので落としても構いません。
需要があれば第2部としてスレ立てしますので。
支援感謝でした!

242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 15:31:01.24 ID:N9xaw0l50

おはようございます。
まさか残っているとは思わなかったw
本当はここから続きを投下できればいいのですが今日明日は投下できそうにないので金曜の夜にスレ立てして2部の始めから再会したいと思います。
せっかくの保守すみませんでした・・・。 

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 21:31:15.25 ID:eFtnvFp20

あらすじ
キョンと長門はいつも仲良し。
だが、二人の仲に嫉妬したハルヒはこれまでにない閉鎖空間を引き起こさせた。
結果、古泉は怪我を負い朝比奈さんは空気になってしまう。
この事態を重くみた長門は苦渋の決断を下す。
キョンの記憶を改変して彼の前から姿を消したのだった。     

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 21:39:54.12 ID:eFtnvFp20

目が覚める。

どうやら俺は眠っていたようだが妙に現実的な夢を見ていた気がした。

あの夢の中に出てきた女の子は一体誰だったのだろうか。

何かとても大切なことを忘れている。

そんな気がしてやまないが記憶が混雑しているせいもあって、あれは現実に起こり得たことだったのか。

それとも単なる夢物語であったのか。

まるで区別がつかない。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 21:49:52.30 ID:eFtnvFp20

ただ、仮に前者であったとしたら俺はその女の子になんて顔をさせてしまったのだろうか。

いずれにしろ記憶が鮮明になるからその時に改めて考えるとする。

ところでここは一体どこなんだ?

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:00:15.82 ID:eFtnvFp20

何となく辺りを見渡すと見覚えのある面々が俺の顔を見て呆然としていた。

「おう、ハルヒ」

「・・・・」

俺と真っ先に目があったハルヒに声をかけてみたが相変わらず口を開いたまま呆然としている。

何を驚いているんだが。

「朝比奈さんまで。どうかしましたか?」

次に麗しの朝比奈さんにお声をかけると突然大粒の涙を流して泣かれてしまった。

あの、俺何かしましたか?

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:07:52.64 ID:eFtnvFp20

朝比奈さんに泣かれて狼狽えていると何だか癪に障る声が聞こえた。

「あなたは3日の間昏睡状態でいたのですよ」

・・・古泉か。

出来れば無視したい所ではあるがハルヒと朝比奈さんから事情を聞き出せない以上はこいつから話を聞くしかないんだが・・・。

ちらりと古泉の方に視線を向けると、こいつもまた目尻に涙を貯めて今にも泣きだしそうな表情をしているもんだからいつもの皮肉は止めておくことにした。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:15:51.13 ID:eFtnvFp20

その後、古泉から聞いた話はこうだ。

下校途中に1台の車が俺たちに向かって突っ込んで来た際、運悪く俺はその車に跳ね飛ばされたらしい。

その時に頭を強く打ってしまいそのまま3日間昏睡状態に陥ったわけだと。

おいっ、どんだけ俺はついてないんだ。

まさかわが身にも交通事故が降り懸かろうとは・・・。

記憶が少し曖昧な以外は特に目立った外傷もないのは不幸中の幸いだし、あいつらが事故に巻き込まれなかっただけよしとしようか。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:21:32.05 ID:eFtnvFp20

ホッと胸を撫で下ろして一安心するのも束の間、ベットに横たわっている体を乱暴に引き起こされた。

「おっ、おい!」

正気を取り戻したのか、ハルヒが乱暴に俺の胸ぐらを掴んできたのだ。

「ハルヒ!俺は怪我人なんだぞ!?」

必死に抗議の声を上げるが、そんなことお構いなしに力強く締め上げる。

マジで苦しいんだが・・・。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:26:52.74 ID:eFtnvFp20

「涼宮さん、暴力はいけませんよぅ」

慌てて朝比奈さんが俺とハルヒの間に割って入って引き離そうと試みるがびくともしない。

ははっ、小動物のような朝比奈さんが野獣如くの力を持つハルヒには到底止められませんよ。

半場諦めて全て成り行きに身を委ねていると、目の前にいるハルヒがか細い声で何かを呟いた。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:30:56.90 ID:eFtnvFp20

あまり良く聞き取ることは叶わなかったが

「心配したんだから、バカキョン」

きっとハルヒはこう言ったんだと思う。

でないと俺の胸元に顔を埋めて泣きじゃくる姿に説明がつかないからな。

俺はそっと頭に手を乗せ何度も優しく撫で続けた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:36:50.27 ID:eFtnvFp20

それから暫くすると、いつもの調子を取り戻したのか

「あんた退院したら私たちに何か奢りなさいよね!心配かけた罰よ!」

なんて威勢のいい声で命じられるもんだから思わず頷いてしまった。

後ほど、普通は逆なんじゃないかと疑問を抱いたがベットの傍らにあるテーブルになんともまあ豪勢な果物の詰め合わせが置いてあるもんだから結局最後まで文句は言えなかった。

畜生

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:40:51.69 ID:eFtnvFp20

その後、俺たちは談笑をしたり簡単なゲームをして有意義な時間を過ごした。

まるでいつもの部室にいるような錯覚を起こしてしまうかと思ったぐらいだ。

しかし何かが欠けている。

その違和感だけは相変わらず払拭することが出来ないでいた。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:45:02.04 ID:eFtnvFp20

その日の夜。

静まり返った病室で目を覚ました。

尿意を催したからだ。

「こんな時間にトイレに行きたくなるなんてついてないな」

夜の病院は不気味で本当に幽霊が実在するんではないのかと思えてくる。

・・・とっととトイレを済まそう。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:52:08.81 ID:eFtnvFp20

トイレを済ませたついでに自動販売機を利用しようとロビーへと向かう。

すると、こんな時間に人がいるわけないのに待ち椅子には制服を着た女の子が座っていた。

暗くてよく見えないが、北高の制服だろうか。

興味心からその女の子に近づく。

カツーン。

カツーン。

俺の足音が静寂に包まれたロビーに響きわたる。

小柄で紫色の髪をして手には本を一冊持っていた。

すぐ近くまで歩み寄ると、ようやく俺の姿に気がついたのか。

女の子と初めて目があった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:58:27.90 ID:eFtnvFp20

ーーー待て。

俺はこの女の子と一度・・・いや、何度も会っているはずだ!

何一つ根拠などないが心が強くそう訴えている。

しかし、いつ。

どこでだ。

一体何をしていたのか全く思い出せない。

「元気そうで安心した」

もどかしさに苛立つ俺を尻目に女の子は一言だけそう発した。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:02:10.96 ID:eFtnvFp20

この女の子は俺のことを知っている・・・?

だが俺は知らない。

なぜ。

女の子が椅子から立ち上がりどこかに立ち去ろうとする。

慌てて引き留めようとするが、その時、頭が割れんばかりの激しい頭痛に襲われそこで俺は意識を手放した。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:10:26.91 ID:eFtnvFp20

目が覚める。

どうやら俺は眠っていたようだが妙に現実的な夢を見ていた気がした。

昨夜ロビーで出会った女の子は一体誰だったのだろうか。

夜中目覚めてトイレに行った所までは記憶にある。

問題はその後だ。

その後、俺は一体何をしていたんだ?

すぐには病室には戻ったのだろうか。

それとも夢のようにロビーへと出向いたのだろうか。

記憶が曖昧でまるで検討がつかない。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:16:47.98 ID:eFtnvFp20

だが、昨夜見た夢が実際に起こり得たことだとすると俺はロビーで意識を失って倒れていることになっているはず。

近くにいた看護婦に昨夜の俺の状態を尋ねてみる。

「昨夜ですか?キョンさんはベットで熟睡されておりましたよ」

天使のような笑顔を浮かべてそう告げると仕事中なのかどこかに行ってしまった。

あれは夢だったのか・・・?

どこか腑に落ちないが、看護婦の証言がある以上は納得をしなざるを得なかった。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:21:33.08 ID:eFtnvFp20

それにしても綺麗な看護婦だったな。

朝比奈さんには申し訳ありませんが、あの方はあなた以上にお美しい。

正直言って、たまりません。

性欲を持て余す。

って、なんで看護婦さんにまであだ名で呼ばれているんだ?

カルテには本名が記載されているだろ。

「なんて言うか、不幸だ・・・」

キョンさん♪

いや、悪くはないな。

悪くは。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:28:00.42 ID:eFtnvFp20

支援感謝です!

翌日俺はティッシュボックスを買いに購買へ立ち寄る。

ベット脇に置かれていたティッシュを使い切ってしまったためだ。

会計を済ませて購買から出ると偶然にもあの看護婦と鉢会わせた。

「こ、こんにちは」

緊張のあまり声が裏替えってしまう。

情けない。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:33:06.64 ID:eFtnvFp20

「お身体の調子はいいんですか?」

相変わらず天使のような笑顔を浮かべて俺との会話に付き合ってくれる。

「はい。看護婦さんのおかげですよ」

「ふふっ、早く退院出来るといいですね?」

退院?

そうか、当たり前のことだがいずれは退院しないといけないのか。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:40:24.87 ID:eFtnvFp20

「いえいえ、看護婦さんのお顔を拝めなくなるくらいならいっそこのまま入院していてもいいかもしれません」

って、俺はなんて言うことを口走っているんだ!

「あらあら。ご冗談が上手いのね」

クスリと笑われてしまった。

恥ずかしい・・・。

「それじゃあ私はお仕事に戻らないと。またね」

「はっ、はい!お仕事頑張って下さい!」

最後にもう一度俺の顔を見て微笑むと看護婦さんは仕事に戻ってしまった。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:44:39.00 ID:eFtnvFp20

・・・こうしてはおられん。

俺はティッシュボックスを堅く握り締めると駆け足で病室へと戻った。

「ふう・・・」

今の俺はきっとこうでもしないとあの女の子のことが四六時中頭から離れないんだと思う。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:52:39.43 ID:eFtnvFp20

その日の夜。

俺は病室を抜け出した。

またあの女の子に逢えるんではないか。

そんな淡い想いを抱いて薄暗い廊下をひたすら歩き回る。

ロビーから食堂、他の科が所属する棟まで病院全体を探し続けた。

だが、最後まで女の子と会うことは叶わなかった。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 00:02:44.70 ID:aQpK6qYd0

落胆の表情を浮かべながら重い足取りで自らの病室を目指す。

そして最後の廊下の曲角を曲かけた所で反射的に足を止めた。

誰かが病室の前にいる。

得体の知れない恐怖に慌てて廊下の曲角に姿を隠す。

こんな時間に何をしているんだ?

気づかれないよう息を殺して慎重に様子を確認する。

小柄な女性。

北高の制服の上に紺色のカーディガンを羽織っている。

その姿は間違いない。

あの女の子だ。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 00:10:05.13 ID:aQpK6qYd0

手には一輪の花が握られており、誰かのお見舞いに来たことが伺える。

しかしドアを眺めたまま一行に病室に入ろうとはしない。

痺れを切らし、その女の子に声をかけようと足を踏み出すと。

突然姿を消した。

「うかつ。あなたの監視に気づかず対処に遅れた」

背後から声が聞こえる。

「へ?」

振り返る間もなく一瞬にして俺は意識を失った。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 00:15:13.15 ID:aQpK6qYd0

目が覚める。

どうやら俺は眠っていたようだが妙に現実的な夢を見ていた気がした。

昨夜一輪の花を手に誰かのお見舞いに来てくれていたあの女の子。

果たしてあれは夢物語だったのだろうか。

俺の答えはノーだ。

考えみてみろ。

そうそう都合よく夢なんて見るもんか?

ましてや毎回似たような夢を見るんだ。

ありえないだろ。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 00:18:11.21 ID:aQpK6qYd0

だが夢物語でないとするとなぜ俺はいつも意識を失いベットで目が覚めるのか。

その説明が一切つかない。

その点は順を追って解明したいと思う。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 00:25:55.23 ID:aQpK6qYd0

昼下がり。

病室が妙に騒がしい。

寝転がっていた身体を起こして病室の状態を確認すると、あれはシスターだろうか。

修道服に身を包んだ女性がツンツン頭の男性に向かって腹が減ったと喚いたりかみついていたりしていた。

聞いた話によるとあの男性は上条さん、女性はインなんとかさんと言うらしい。

彼もまた不慮の事故に会い記憶を失ったそうだ。

当然あの女性のことも覚えていない。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 00:30:43.18 ID:aQpK6qYd0

だが、心だ。

心があの女性を悲しませてはいけない。

大切な女性だったんだと強く訴えているらしい。

だから記憶がなくてもあそこまで自然に振る舞える。

上条さんか・・・。

あんた、かっこいいよ。

是非ともお近づきになりたかったが、後日他の病院に移ってしまった。

残念だ。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 00:35:42.93 ID:aQpK6qYd0

その日の夜。

なぜか俺は病室では無く、薄暗い廊下のど真ん中にいた。

確か寝ていたはずなんだが・・・。

首を傾げて思慮にふけていると視界の隅に何かを捉えた。

花?

それも昨日女の子が手にしていた種類の花だ。

それを拾い上げてふと、顔をあげるとーーー。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 00:48:29.74 ID:aQpK6qYd0

目が覚める。

時刻はまだ深夜2時を過ぎたばかりだった。

あれは間違いなく夢だ。

自信を持って言える。

だが、あの夢の続きが気が係りでなかなか寝付けない。

同じ病室の患者を起こさないように俺はひっそりと病室を抜け出した。

薄暗い廊下を歩き夢に出てきた場所へと向かうと何かが床に落ちていた。

それを拾い上げる。

やはりそうだ。

あの女の子が手にしていた花だ。

周囲を見渡すと奥の廊下の曲角に誰かが姿を消した。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 00:56:44.75 ID:aQpK6qYd0

あの女の子だろうか?

不思議に思い後を追う。

その場所にたどり着くと再び奥の曲角に姿を消す誰かの後ろ姿を捉えた。

まるで俺をどこかに導いている、そんな気がした。

その後繰り返し追いかけっこをしていると、いつのまにか屋上へ続く扉の目の前にたどり着いた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 01:07:51.39 ID:aQpK6qYd0

女の子がいるのだろうか。

それとも屋上に何か大切な思い出でもあったのだろうか。

呼吸を整えてドアノブに手をかける。

「まあいい。行けば何かわかるんだろ」

屋上へと出る。

外の世界は雪が降っているらしく、刺すような冷たい風に身体を振るわせながら懸命に女の子の姿を探す。

そんなに広くはない屋上を隅々まで探し回るが最後まで女の子の姿を確認することが出来なかった。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 01:11:28.37 ID:aQpK6qYd0

屋上にいると思ったが違ったか・・・

フェンスに背中を預けて空を見上げる。

相変わらず雪だけがしんしんと降り続いていた。

ユキかーーー。

いつだったかな。

それはいつぞやの風景を思い出させた。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 01:16:54.90 ID:aQpK6qYd0

確かあの日の夜も雪の降る屋上で夜景を眺めていた。

振り返るとそこにはーーがいてーーーーと告げられて。

俺はーーーーと言ってーーしたんだよな。

それにーーも頷いてくれた。

「大切な思い出だったんだがな・・・」

肝心な記憶だけがばっさりと抜け落ちていた。

俺は暫く屋上で雪を眺めていた。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 01:26:46.70 ID:aQpK6qYd0

それからはあの妙な夢を見ることも、女の子の姿を確認することもないまま退院の日を迎えた。

相変わらず、分からないことばかりだが確かに言えることが一つだけある。

あの女の子は間違いなく俺の大切な人だった。

それだけは自信を持って言えた。

心が。

心がそう強く訴えているのだから。 

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 01:32:54.43 ID:aQpK6qYd0

退院に当たって荷物の整理をしていると一枚の栞がひらひらとベットの上から舞落ちた。

はて、本なんて持ち込んでいなかったはずなんだが。

それを拾い上げると

一言だけ栞に

退院おめでとう

そう書かれていた。

あの女の子なりに俺の退院を祝ってくれているのだろうか。

俺は大事にそれをポケットにしまった。

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/27(土) 23:51:52.81 ID:aQpK6qYd0

学校編

「行ってきます」

妹とお袋に見送られて玄関を出る。

妹が不安気な表情を浮かべて俺を見つめていたから、出来る限り早く帰って安心させてやることにしよう。

大分心配かけたしな。

さて、今日から学校に復学することになったわけだが。

なんとなく気になって家の辺りを見渡す。


110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/27(土) 23:55:55.91 ID:aQpK6qYd0

・・・誰もいないか

いや、誰とも約束をしてないんだから当然だろ。

何馬鹿なことを考えているんだが。

いつまでも寝ぼけてはいられないぞ。

マフラーを巻き直してわが家を後にする。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/27(土) 23:58:57.29 ID:aQpK6qYd0

そういえば。

あの女の子も北高の制服を着ていたっけかな。

ははっ、案外俺の同級生だったりしてな。

まあ何にせよ。

学校に行けば何かまた思い出すだろうな。

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 00:09:05.28 ID:C1DQYrZl0

久しぶりに教室に入る。

するとあれほど賑やかだった教室が一瞬にして静まり返った。

それもそうだろうな。

一ヶ月以上も休学していたんだから注目を浴びるのも仕方ない。

誰にも視線を合わせず自分の席を探す。

どうやら事故に遭ってから席替えは行っていないようだ。

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 00:14:50.93 ID:C1DQYrZl0

忌まわしき教卓前の席に座ると隣の席の奴が俺の肩を叩く。

ん?

視線を向けるとそいつは黒板を指さしていた。

何事だと思い黒板に目をやると。

退院おめでとう!

っとカラフルな文字で黒板が装飾されていた。

呆気にとられていると今度はクラッカーの音が一斉に鳴り響いた。



116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 00:21:09.90 ID:C1DQYrZl0

サプラーイズ。

一体誰なんだ、こんな素敵な企画を考えてくれたのは。

感激の余り暫し言葉を失っていると

少しは何か反応を示すなりしてくれたらどうなのよ!

すぐ傍からハルヒの罵声が聞こえる。

どうやらこいつがこの企画の発案者らしい。

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 00:28:55.42 ID:C1DQYrZl0

「そうは言ってもだな・・・」

何だか気恥ずかしくて言葉を濁す

「焦れったいわね!いいからこっちに来なさい!」

乱暴に席を立たされると、そのまま教卓に引きずり出されてしまった。

「さあ、キョン!今の心境をみんなに話してあげなさい!」

「うっ・・・」

みんなの視線を一身に浴びる。

「えっ・・・と」

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 00:32:05.07 ID:C1DQYrZl0

その後、俺は何を話したのか一切覚えていない。

ただ、みんなに盛大に笑われて恥をかいた。

その記憶だけはしっかりと脳裏に焼き付いていた。

畜生。

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 00:43:07.64 ID:C1DQYrZl0

放課後、担任の岡部から小包みを渡された。

どうやら以前発注した本が届いたらしい。

小包の中身を確認すると確かに一冊の本と領収書が納められていた。

はて、こんな本を購入した記憶はないが。

だが宛先には俺の住所と名前が書かれているもんだから俺の本なんだろう。

まいったな、読書なんてしないんだが・・・。

仕方ないな。

処分するのも勿体ないから部室に寄付でもしておくことにする。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 00:52:26.19 ID:C1DQYrZl0

翌日の放課後。

何気なく部室の本棚を眺めていると昨日寄付したはずの本がない。

誰か借りてったのだろうか。

念のため、ハルヒらに確認をとるが誰も本を借りてないらしい。

妙だな。

椅子から立ち上がり本棚の隅々まで探すが見あたらない。

しかし、その代わりに本棚からは病室で見かけた両面無地の栞が見つかった。

その栞にもただ一言だけ

本ありがとう

そうお礼を述べられた文章が書かれていた。 

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 01:03:22.27 ID:C1DQYrZl0

あの女の子か。

そういえば、あの女の子は読書が好きだったんだっけな。

もしかしたらその女の子のために日頃の感謝の気持ちを込めて本を買って上げたんだろう。

「ははっ」

なぜか自然と笑みがこぼれる。


124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 01:07:46.37 ID:C1DQYrZl0

そうだな、栞の裏に俺の言葉を書いたらどうなる。

少なくとも読んではくれるだろう。

そうと決まれば

鞄からペンを取り出して栞の裏面に言葉を書く。

遅くなって悪かった、と。

そう書き上げて再び本棚の位置に栞を戻す。

気づいてくれるだろうか。

明日が楽しみで仕方ない。

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 01:18:07.22 ID:C1DQYrZl0

翌日。

栞の返事が気になって朝早くから学校に来てしまった。

職員室から部室の鍵を拝借して部室の鍵を開ける。

そして本棚を確認すると。

「おっ」

栞が昨日と違う位置に置かれていた。

もしかして。

期待を胸に栞を手にとって内容を確認すると手書きで

いい。

とだけ書かれていた。



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 01:23:21.24 ID:C1DQYrZl0

極端に内容が短い気もするが、あの女の子と会話する手段が見つかった。

それだけでも大きな収穫だった。

こうして俺とあの女の子は栞を介して文通?を始めた。 

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 01:31:33.84 ID:C1DQYrZl0

それから文通を続けていく内にあの女の子の詳細が判明してきた。

名前は長門有希。

北高に通っていて俺とは同級生らしい。

その割には一度も顔を見たことはないがな。

しかし本人がそう言うならそうなんだろ。

ついでに病院でのことを聞いてみたが、それについては一つも答えてはくれなかった。

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 01:45:15.04 ID:C1DQYrZl0

そんなある日。

今日もまた栞の返答をしに朝早くに部室へと向かう。

だが栞がない。

本棚の隅々まで探すが一向に見あたらない。

「書き忘れたのか?」

首を傾げて思慮にふけていると誰もいないはずの部室から声が聞こえた。

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 01:51:29.56 ID:C1DQYrZl0

「こんな朝早くから部室に何のようです?」

古泉が部室の入り口を塞ぐ形で立っていた。

「別になんだっていいだろ」

不機嫌さを隠そうともしないでぶっきらぼうに答える。

「ふむ、毎朝早くから部室に来ているのにですか?」

何かとても意味深長な言葉を投げかけられた。

133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 02:01:09.56 ID:C1DQYrZl0

「あなたが毎朝早く登校する理由はこれですよね?」

そう言って、ひらひらと栞をなびかせる。

「古泉、おまえ・・・!」

栞を取り返そうと古泉に突っかかるが、上手く交わされたあげく足を引っかけられて床に倒れ込んでしまった。

「最近あなたの様子が妙にご機嫌そうでしたから監視させていただきました」

「ですがまさか彼女と連絡を取り合っていたとは・・・。これはさすがに想定外でした」


135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 02:14:56.96 ID:C1DQYrZl0

「ところで、あなたはどこまで記憶を取り戻しましたか?」

俺に問いを投げかけながら、鋭い視線を向ける。

「・・・交換条件だ」

「なんでしょう?」

「その栞を俺に寄越せ。そしたら答えてやる」

「ふむ」

口元に手を当て俺の要求に考えを巡らす。

今回ばかりはその栞の返答を何としてでも知りたかった。

136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 02:25:53.50 ID:C1DQYrZl0

なぜなら、昨日俺は栞に直接長門に会えないかと尋ねていたからだ。

その答えだけは何としてでも把握しておきたかった。

すると俺の願いが通じたのか。

「わかりました。その要求は飲みましょう」

そう言って手にした栞を本棚の位置に戻した。

俺は慌てて本棚に駆け寄って栞をポケットにしまい込む。

「それであなたの答えを聞かせてもらいましょうか?」

一息つく間もなく古泉が答えを催促する。

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 02:32:07.52 ID:C1DQYrZl0

「・・・名前だ」

「後は?」

「読書好きなことぐらいしかしらん」

「・・・本当にですね?」

念を押して確認されたが、全て事実だ。

相変わらず俺と長門の関係性は何一つ思い出せてはいないからな。

「わかりました。あなたを信じましょう」

厳しい表情から一変していつものエセスマイルに戻る。

どうやら話はここまでのようだ。

緊張の糸が解けてホッとする。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 02:43:27.17 ID:C1DQYrZl0

「ただし、これ以上は栞を介したやり取りを禁じます。いいですね?」

「・・・わかった」

渋々とだが俺は古泉の意見に頷いた。

残念だが見つかってしまっては諦めざるを得ない。

俺の答えに満足したのだろう。

「それでは失礼致します」

古泉は律儀にもお辞儀をして部室を後にした。

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 02:48:19.71 ID:C1DQYrZl0

部室には俺一人が取り残された。

朝礼が始まるにはまだ時間があるな。

ポケットに手を突っ込む。

果たして栞にはなんと書かれているのだろうか。

仮に拒絶の言葉が書かれていたらこれ以上女の子と通じるものはない。

緊張が走る。

そっとポケットから栞を取り出してーーーー。 

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 02:54:15.25 ID:C1DQYrZl0

最初で最後の安価
>>143

その栞にはーーー
1.「・・・ごめんなさい」
2.「・・・承知した」

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 02:56:06.87 ID:l0tDKPNG0

2

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 03:13:52.65 ID:C1DQYrZl0

週末の土曜日。

俺は朝早くから図書館に来ていた。

当然まだ開店時間ではないから外で待機している。

あの時、俺は栞に

週末の土曜日図書館で会えないか?

と長門に尋ねて、次の日了承の意を貰ったのだ。

古泉に文通での会話を禁止にはされたが、栞の内容までは理解していなかったようだ。

でなければ週末の土曜日までに色んな根回しをされていただろうからな。 

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 03:28:32.90 ID:C1DQYrZl0

しかし待ち合わせ時間を指定していなかったのは痛かったな。

あれからは連絡を取る手段がなかったし。

まあ待ち合わせ場所を決めていないよりは大分ましだが。

さて、長門は何時に来てくれるのだろうか。

病院のロビーで会って以来の再会なんだ。

非常に待ち遠しい。

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 03:40:07.51 ID:C1DQYrZl0

そもそもなぜ再会場所に図書館を選んだんだ俺は?

もっと他にも良い場所があったはずだ。

洒落た喫茶店とかな。

以前の俺だったらそのことに首を傾げていただろう。

だがこの図書館もまた俺と長門にとっては思い出深い場所だったんだ。

読書好きの長門のために俺は図書カードを作ってやった。

その時の様子を今でなら鮮明に思い出すことができる。

「まだ、来ないか・・・」

時間は昼を回る前だった。

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 03:50:55.94 ID:C1DQYrZl0

時計が12時を指し示す。

そろそろ腹が減ってきた。

一応図書館のすぐ傍にコンビニがあるが、そこに行ってしまえばすれ違いになってしまうかもしれない。

すると俺がいないもんだと判断して帰ってしまう可能性だって否めない。

その事態だけは何としてでも避けたかった。

空腹を紛らわせるために本を一冊借りに行く。

どれも小難しそうな本ばかりだが本を読む以外やることがない。

適当に本を選んで読み始めるがすぐに深い眠りへとついてしまった。



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