やる夫が長門を召喚して聖杯戦争に挑むようです


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トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:タラヲ 「お兄ちゃん達の二次嫁を晒すでーすぅ」

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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 19:59:04.27 ID:ZhWUP7md0



そこにはやる夫を見下ろす形で一人の少女がたたずんでいた
窓から注ぐ月の光が部屋を青白く染め上げ、神秘的な情景を醸し出していた
そして少女の唇が微動し、こうつぶやいた

「質問する。あなたが私のマスターか」

そのとき、やる夫にとって月の光に照らされたその少女はどんなモノよりも美しく見えた



話は数時間前にさかのぼる

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:01:58.77 ID:ZhWUP7md0

section-1



「ああッ!長門ッ!イッちゃうおッ!うおッ!」

やる夫は自室でオナニーをしていた
彼にとって休日というものはオナニーを行う神聖な時間であり
彼女たちと触れ合う至高の時間でもあった

「ふぅ、やっぱシャナちゃんをオカズにするよりは長門をオカズにしたほうがいいお」

そういってやる夫は長門のキャラクターブックにかかった自らの子種をティッシュで拭き始める

「やっぱり一番いいのは長門だお」

楽しそうにつぶやく、やる夫17歳(童貞)だった

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:03:54.61 ID:ZhWUP7md0




数分後、チャイムが部屋の中に響いた

「入っていいおー」

やる夫の声が聞こえると同時にドアが開き彼の友人が入ってきた

「おーす。元気にしてるかー。つーか床下エロゲーだらけだな…」

「おはようだお、やらない夫!って、もしかしてエロゲー貸してほしいのかお?」

「んなわけねーだろw さ、はやくゲームでもやろうか」

やる夫にとって休日というものはオナニーを行う神聖な時間でもあり
彼女たちと触れ合う至高の時間でもあるが、それ以上に友と楽しみを共有する素晴らしい時間でもあった

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:07:57.44 ID:ZhWUP7md0

「なあ、やる夫」
ゲームのコントローラを操作しながらやらない夫が話し始める
「おれ聞いたんだけどさ、中学のときバイトのつもりで
落し物必ず見つけますって書かれたプラカード掲げて公園徘徊してたってホント?」
「まあ、そうだお」
けだるそうにやる夫は答える
「すげーよな、やる夫www でももっとすごいのが、その頼まれた落し物は確実に見つけてたってことwww
手がかりもなしに55回中55回も見つけたんだろ?
なんでそんなに見つけられるの?もしかして超能力でも持ってるとか?」
「何故だか分かるんだお、それよりもやらない夫のいとこのやる美は元気かお?」
「答えになってねーwww」
少し疑問に思ったがまあいいか、とやらない夫は話を続ける
「やる美は来月から結婚するって。早く子供が欲しいって言ってたなー。それと機会があればオレたち3人で昔みたいに遊ぼうって
言ってたぞ」
「おめでとうだお!やる美におめでとうっていっておいてほしいお!」
「おうよ!」
彼らの会話はいつもよりも盛大に盛り上がっていた


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:10:53.45 ID:ZhWUP7md0




時刻は5時になり、夕日が紅い色彩を部屋の中に飾っていた

「じゃ、おれ帰るから」
「さよならだお!」

じゃあな、と言ってやらない夫はドアを閉めようとした、が

「あのさ…」と言って閉まりかけたドアから身をのり出した
「1つ言っておきたいことがあるんだけど」
「なんだお?」
やらない夫の表情がさっきとはうって変わって真剣なものになった
      ヨシカ
「1組の宮藤芳佳」
「が、どうかしたのかお?やる夫は水泳の時間の芳香ちゃんのスク水姿大好きだおw」
やらない夫とは違ってふざけた、くだけた調子で答える
「彼女のこと、やっぱ知らないんだな。昨日の夜、宮藤芳香が自宅のベランダから飛び降り自殺をした」
瞬間、場の空気が凍りついた

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:13:23.53 ID:ZhWUP7md0




「なんでだお…」

この事実はひそかに彼女に思いを寄せていたやる夫にとってショッキングなものだった

「わからない、昨日のニュースでやってたんだがな、見てなかったようだな。やる夫、彼女のこと
好きだったろ。だからどうしても言いだせなかった。ごめん」

「ああ…」

やる夫は力なくその場にへたり込んだ
それによって床に置かれていたエロゲーの箱が音を立ててつぶれた

「おれ、好きっていうか彼女に憧れてたんだよ。すぐに誰とでも仲良くなれる明るい性格で、
何事にも前向きで一所懸命ってところにさ。だからさ、なんでこんなことになったかってこと知りたいんだよ」
ショックを受けているやる夫を気にしながら、やらない夫は続ける

「きっと、今連続して起きているあの事件とかかわりがあると思うんだ
だからさ、何か知ってることがあったら警察に話したりして協力してくれよ」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:15:52.40 ID:ZhWUP7md0



「分かったお…」

それを聞くと、やらない夫は、今度こそじゃあな、と言って去って行った

「芳香ちゃん…」

やる夫はつぶやくと立ち上がって寝室まで行き、布団の中ににうずくまった
嫌なことは明日にでもなればきっと忘れることができる
そんなことを思いながらやる夫は眠りの中へ落ちて行った
今にも落ちそうな夕日がつぶれたエロゲーの箱を照らし続けていた

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:19:18.13 ID:ZhWUP7md0


このvipシティで聖杯戦争が行われようとしていた

聖杯戦争とは選ばれた七人の魔術師たちによる戦争であり、戦う目的は数十年に一度現れ、
あらゆる願いを叶えるという万能の器「聖杯」を手に入れるためである

「聖杯」は七人のうち一人しか手にすることができないため、魔術師たちは最後の一人になるまで殺しあわねばならない

なお、聖杯戦争に勝ち抜くためには7人の使い魔(サーヴァント)のうちの一人と契約し、他のマスターを殲滅しなければならない

そして、ルイズは数時間前に自らの協力者であるサーヴァントを召喚した

ルイズの右手に痛みが走りそこにはマスターとしての資格である「令呪」が浮き出ていた

「召喚に成功したわ!」

喜ぶルイズだったが、

「ちょっと、あんた! サーヴァントの分際で調子に乗ってんじゃないわよ!」

「聞いてるのかっつってんのよ!このバカ犬!」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:22:56.05 ID:ZhWUP7md0


彼女にとってサーヴァントとはご主人様には決して逆らうことのできない奴隷のようなものである
しかしサーヴァントは先ほどから彼女を無視し続けているため、彼女の怒りは極限まで達していた
なんで言うこと聞かないの! 無視するの! そう怒鳴りながら、ルイズは乗馬用の鞭で自分のサーヴァントを叩こうとした

叩こうとしたのだが、いつのまにか彼女は宙に浮いていた

「―――――――――ッ!」

そのサーヴァントはあろうことかマスターであるルイズのあごを鷲掴みし、軽々と持ち上げていた
そしてサーヴァント、その男は言った

「気に入らないことがあったら人を鞭で叩くってか。いったいどんな教育受けてんだよ」

そういいながら男は万力の如き力でルイズの顎を締め付けていく

「勝手に呼び出しやがって。おれは聖杯が手に入ればいい。それだけだ」

締め付ける力がどんどん強くなっていき痛みが徐々に増していく

ルイズは持っていた鞭で痛みの根源である男の腕を打つが男は微動だにしない

その男の腕は鍛え抜かれた筋肉で覆われていた。
その至る所にある傷跡が彼がいかなる人生を経験してきたのかを物語っていた

「やめさせたきゃ、おれら(サーヴァント)にとっての絶対命令権である「令呪」でも使えよ」

痛みに耐えきれなくなってきたルイズの目に涙がたまっていく

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:27:33.30 ID:ZhWUP7md0


「令呪」とはマスターとしての証以外にもサーヴァントに対して絶対命令の力を持つもので
三回まで使うことができる
使いようによってはサーヴァントの能力を一時的に底上げすることも可能とする
「使ってみるか?たった三回しか使えない令呪を」
男は冷たく無機質な目で、ぼろぼろと涙を落としていく少女の様子を眺めている

対するルイズは泣きながらも手を強く握りしめ男を睨みつける
「絶対に令呪は使わないってか。まあ正直こんなくだらないことで令呪を使わなくてホッとしたぜ
非があるのはあんたの方だしな」
そういって男は手を離す

痛みから解放されたルイズは苦しそうにむせ始めた
「おれは偵察に行ってくる。これからは好き勝手させてもらうからな」
そういってサーヴァントは窓の外へ消えていった

―――――みんなを見返してやるためにサーヴァントを呼び出した。それなのになんなのあいつッ……

少女は悔し涙で顔をくしゃくしゃにしながら言うことをきかないサーヴァントを
言うことをきかせられない自分を呪った

年季の入ったぼん時計の振り子の音のみが虚しくリビングルームに響きつづけていた
「何なのよ…… もう……」
部屋に残された少女は悔しそうにぼそりと呟いた

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:29:38.88 ID:ZhWUP7md0

section-2

宮藤芳香が飛び降り自殺した
やる夫にとってこのニュースは不愉快極まりないものだった
そのせいかやる夫は熟睡することができず夜の2時という中途半端な時間に起きることになってしまった
ソファにもたれかかってやる夫は今日知ったことを頭の中で整理し始めた

―――――だからさ、何か知ってることがあったら警察に話したりして協力してくれよ

何か引っかかる
洗面所に行って顔を洗い気を引き締める

―――――すげーよな、やる夫wwwでももっとすごいのが、たのまれた落し物は確実に見つけてたってことwww

彼は協力してくれと言った。
警察に話し“たりして”、と

だからこそ、

協力してくれと親友に頼まれたが故に、好きだった宮藤芳香の自殺の全貌を知りたいが故に、
やる夫は夜の闇へ飛び出して行った

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:31:43.73 ID:ZhWUP7md0


やる夫の目的地は宮藤芳香が飛び降りた“内藤マンション”
そこはやる夫の家からは10分もかからないとこに存在する
彼女が飛び降りた詳しい原因を探るための場所がすぐ近くにあるのは、やる夫にとっては好都合なのだが

「どうしてもここを通らないといけないおか…」

やる夫はぶるぶると震えvip公園の前で立ち止まっていた

「通りたくないお…でも、やる夫には通らなければならない理由があるお!」

勇気を根性を命を振り絞ってやる夫はその公園に足を踏み入れた

それもそのはず、この公園はハッテン場として名高い場所なのだから

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:34:12.01 ID:ZhWUP7md0


周りをきょろきょろと見渡した後やる夫は猫背で早足で公園を走っていく
公園の出口まであと10メートル
よかった、誰もいなくて
よかった、誰もヤッてなくて
安堵感が体を駆け巡っていく

そして出口にさしかかった時、その男はいた

「やらないか」

その男は言った。
速かった足取りは完全に止まってしまい、やる夫は完璧に硬直してしまった
最悪の事態、最恐の出会い
恐る恐る振り返ると出口付近のベンチに一人の若い男が座っていた
そしてその男は突然やる夫の見ている目の前で、ツナギのホックを下ろし始め、もう一度よく聞き取れる声で言った

「やらないか」

やる夫は全力疾走でその場から逃げ出した

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:37:47.75 ID:ZhWUP7md0


やる夫は自他とも認めるオタクである
彼の見たアニメは数知れず、彼の読んだ漫画は程知れず、彼のオカズにした二次元キャラは桁知れず、
趣味のためだけに生きてると言っていい人間だった

だが、それと同時に彼は天才でもあった
全国模試では常に1位をキープし、スポーツではいくつものトロフィーを所持する
過去、高校生であるにも関わらず様々なスポーツの強化選手としてスカウトを受けたこともある
とくに走ることにおいては世界新記録を簡単に生み出せるほどとまで言われた

だがそんな記録をあざ笑うかのように今、ツナギの男はやる夫の横を走っている

「なんでだおッ……」

汗にまみれながら全力疾走するやる夫に、男は汗一つかくことなく並走していた
実力の差は圧倒的だった

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:40:32.86 ID:ZhWUP7md0


楽しそうに並走を続けながらツナギの男は言った

「君はいい目をしている。食べちゃいたいくらいにね。でもこれは命令だから、すまないねぇ」

男の手から溢れた光が収束し、槍へと形を変えた

「じゃあ、ごめんよ。死んでくれ」

そう言って男は横を走るやる夫を槍で殴った

「おッ…」

バキリ、と腕の骨が砕ける音がした
激痛がやる夫の体を突き抜けていき、殴られた衝撃でやる夫は遠くまで吹き飛ばされた

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:45:26.36 ID:ZhWUP7md0


12メートル蹴り飛ばされたやる夫は腕の痛みによってうずくまっていた
      イ カ
「やさしく終わらせるつもりだったんだが、駄目じゃないか、動いちゃ」

ツナギの男は余裕を持ってこちらへ歩み寄ってくる

「誰か助けてくれだお!」

やる夫はねじ曲がった腕を押えながら、大きく叫んだ

「残念だったね、ここ一帯には結界が張ってあるから声なんて聞こえやしないんだよ」

そう言うと男は開いていた20メートルの距離を一瞬にして縮め、逃げるやる夫の脇腹に蹴りを入れた

何かが砕ける音と、つぶれる音が同時に響き、やる夫は再び蹴り飛ばされた
どうあがいても逃げられないのか
この男は一体何なのか
自分はこのまま死ぬのか
激痛の中やる夫は思った

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:49:22.43 ID:ZhWUP7md0

section-another

それから5分後、
ルイズとそのサーヴァントは流れゆく強い魔力の風と、サーヴァントの召喚時における強い光を受け、立ち止まっていた

「この感覚…サーヴァント同士が戦っている…」

彼女は今この町で起きているある事件がこの聖杯戦争にかかわりがあるとみて
夜な夜なサーヴァントを連れて探索していた。1週間、大した収穫がなかったものの、ここにきて大きな収穫を目の当たりにしていた

「ならマスターもいるだろうな。行くのか?」

男はルイズに言った。

「行くにきまってるじゃない、少しでも手がかりを集めるためにもねっ!」

「まあ、あんたが行っても行かなくてもおれは行くがな」

そう言って2人はともに走り出した

section-another end

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:54:39.02 ID:ZhWUP7md0


やる夫は自分の家の中で倒れていた

彼の右腕はあらぬ方向に婉曲し、粉砕されたあばら骨は内臓器官に突き刺さり、吐き出した血は周りの箱を真っ赤に染め上げていた

運が良かったことが二つ、運が悪かったことが一つあった
運が良かったことのうちの一つはやる夫が襲われた公園のすぐそばに自分の家があったこと

もう一つは何度も攻撃を受けながらも、死なずにここまでたどり着けたこと

そして運が悪かったことは
                 ホ
「人間の身でここまで逃げれるなんて、ますます掘れちゃうなあ」

でも殺さないといけないんだよなー、と残念そうに呟きながら男はやる夫に近づいていく

圧倒的な性能差、絶望的な能力差、不条理なまでの状況差

(このままやる夫は死ぬのかお……? このわけのわからない状況の中で、まだ死ねないのに……)

心臓が激動し、自分の死が目の前に迫っていることをやる夫は思い知らされる
絶望の中、やる夫は手を握りしめる

その手の中には長門のキャラクターブックが握りしめられていた

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 20:59:08.10 ID:ZhWUP7md0


いつの間にか、やる夫はそれを握りしめていた
その本はやる夫の汗と握りしめた際に生じた力によってクシャクシャになっていた

―――――協力してくれよ

そう言ってやらない夫はやる夫を頼った

そして、やる夫は謎の死を遂げた宮藤芳香のためにも真実を見つけ出すと誓った
駄目じゃない…… やらなければ……
再び、やる夫の目に力が宿る
さらに強くキャラクターブックを握りしめたために、音を立てて本が破れていく
そしてやる夫は再び誓った

「やる夫は…… やる夫はまだ死ねないおッ!」

突如、握りしめたキャラクターブックから強烈な光が放たれ、それは室内を青白く染めあげた

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:02:16.86 ID:ZhWUP7md0


「なっ……!? 召喚だと!?」

ツナギの男は驚きを露わにしながら、人間離れした跳躍力で窓の外へと跳んで行った

目がくらむ中、その光源を凝視しようとするやる夫

「何なんだお、一体!」

その光がなくなった後、やる夫は目の当たりにした


そこにはやる夫を見下ろす形で一人の少女がたたずんでいた
窓から注ぐ月の光が部屋を青白く染め上げ、神秘的な情景を醸し出していた
少女の唇が微動し、こうつぶやいた

「質問する。あなたが私のマスターか」

そのとき、やる夫にとって月の光に照らされたその少女はどんなモノよりも美しく見えた

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:06:24.21 ID:ZhWUP7md0


やる夫の目の前にたたずむ少女。それは紛れもない「長門有希」だった

「分けわかんないお!つーか、なんで長門!?やる夫は夢を見てるのかお!?」

混乱するやる夫。それを無視して長門は話し始める

「今回の聖杯戦争における私のマスターであると認識した。マスター指示を」

「これはやっぱ夢なのかお!?でもすごく折られた腕が痛いお……」

「マスター指示を」

やる夫の意も介さず話し始める長門に、やる夫は怒りをあらわにして言った

「あーもう! 何なのかって聞いてるんだお! もーいいお! とりあえずあのゲイのおっさんをブッ殺せだお!」

把握した、と小さく頷いて長門はツナギの男が跳んでいったほうへ文字どうり“飛んでいった”

「すごいスピードで向かってったお…… ていうか、なんか浮いてたお……」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:11:10.31 ID:ZhWUP7md0


外灯によって照らされた公園の中央でツナギの男と長門が対峙していた

「へえ。サーヴァントの中にもこんなかわいいお嬢さんがいるもんなんだな」

男の子じゃないのが少し残念だが、と言ってツナギの男は持っていた槍をゆっくりと構える

「該当する真名を検索中…… 阿部高和に該当。マスターの命令により排除を開始する」

と、短く言って手のひらを前に掲げる長門

瞬間、バンッと弾ける音がして長門の手のひらから光の弾が放たれた
ゆうに百を超えるだろう弾の雨が肉眼ではとらえきれないほどのスピードで、男を撃ち殺さんと放たれる

「この量でこの魔力の圧縮量…… やっかいだな」

つぶやくと男は光の雨の中を疾走しそれを全部避けていく
外れた光の球は地面をえぐり直径5メートルほどのクレーターをつくっていく

「速すぎて残像が見えてるお……」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:16:40.07 ID:ZhWUP7md0


「コード214」

長門は光の弾を発射しながら呟いた
すると男のいた地面から火柱が勢いよく、いくつも発生し、周囲のの遊具をドロドロに溶かしていく

「すごく熱いじゃないか!」

男は紙一重で火柱を避けていく
そして

「イクぞッ!」

と叫んだ瞬間、男は長門の背後に移動した
それに気付いた長門は振り返って、追撃を試みようとする
だが、それよりも早く


  ゲ イ ・ ホ ル グ
「男を穿つ魅了の肉棒!!」



男の肉棒が長門のお尻を貫いた

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:19:01.22 ID:ZhWUP7md0

だが、長門はいつの間にか男との間に距離を取っていた

「空間転移か…… うまく当たらなかったようだが……」

男が語り終えるのと同時に、長門の腰から鮮血が噴きだした

「長門――――――ッ!」

力の限りやる夫は叫びながら、長門のほうへと駆けよっていく

「やめるんだお!こんな女の子相手に!」

「ああ、じゃ、やめようか」

さらばだ、いい目をもった少年、と男は言ってどこかへ跳んで行った
唐突すぎる終り方にやる夫は呆然としていた

「なんだかよくわからないけど助かったお…… ってそれより長門ッ! 大丈夫かお!?」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:21:13.45 ID:ZhWUP7md0


この後、やる夫は長門の魔術で傷を治してもらう
そうして少し落ち着いた後、詳しく説明を受けた

聖杯戦争とは何なのか
サーヴァント、マスターの関係
3回までの絶対命令権「令呪」
     キャスター
長門は「魔術師」のサーヴァントであること
やる夫は魔術の才能が少しあるためマスターとなったこと
そして先ほどの阿部高和との戦闘で負った傷を治癒するための睡眠が、今の長門には必要だということ

「やる夫には魔術の才能があったなんて知らなかったお。
それにしても、あんなにすごい戦いをしていたのに、寝ている姿は天使だお」
                 カンサツ
安らかに眠る長門をやる夫は興奮して視姦していた

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:23:06.97 ID:ZhWUP7md0


(やっぱり長門は可愛いお…… ちゅーしたいお……)

と、興奮したやる夫は長門の小さな唇を奪おうと顔を近づける

(寝息がかかっくるお…… いいにおいだお…… たまんないお……)

だがしかし、その無垢な唇を奪えるあと数センチのところで長門の大きな瞳は、今にも自分の唇を奪おうとする下種な男の姿をとらえていた

長門が起きたことに気付き、あたふたとするやる夫

「違うお!こ、これは魔力を共有する手段の一種で…」

無言の長門の右ストレートがやる夫を殴り飛ばした

(痛いおー!って長門のキャラ付けちょっと違うおー!)

殴り飛ばされながら突っ込むやる夫
だが、やる夫はこのとき長門がやる夫をかばうがために殴って「移動させた」ことに後で気付く

そして壁にぶつかったやる夫は見た
弓矢が体中に突き刺さり、至る所から血を流す長門の姿を

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:26:28.97 ID:ZhWUP7md0


「長門――――――ッ!!!」

叫ぶやる夫
その声を聞きつけた“侵入者”は獣のごとき荒々しさでやる夫に飛び掛かり、やる夫に大剣を振り下ろした
だが、やる夫の目の前に構成された長門の魔力の壁によってその攻撃は弾かれた

すぐさま後退した“侵入者”である男は再び斬りかからんと剣を構え、

やる夫はその姿を見た


それは剣と言うにはあまりにも大きすぎた

大きく 分厚く 重く そして大雑把すぎた

それは正に鉄塊だった


「該当する真名を検索中…… ガッツに該当。」

section-2 end

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:29:32.10 ID:ZhWUP7md0

section-3

初めてやる夫が「ベルセルク」を読んだのは中学二年生の時
主人公「ガッツ」の狂気と勇姿、恋と葛藤に魅了され、やる夫の中では一番面白い漫画として君臨した
もしも自分がガッツだったら。もしも自分がガッツの仲間のうちの一人だったら
そのようにやる夫はよく妄想したことがあった

そう、やる夫はガッツに憧れていたのだった
      ガッツ
そして今その憧れが、やる夫と血にまみれた少女に対して殺意をむき出しにしていた

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:32:45.45 ID:ZhWUP7md0


ガッツは弾丸のごとく弾け、深手を負った長門へと詰め寄った

「コード98」

長門がつぶやくとやる夫の視界がグニャリとゆがんだ

「こ、今度は何だお!」

気がつくと先ほどいた公園にやる夫はいた

「もしかして空間転移ってやつかお!?」

自分を逃がすために移動させたのか、とやる夫は瞬時に理解する

(じゃあ、長門は!?)

そう思ってやる夫は自分の家のほうを振り返る
その瞬間、やる夫の家が吹き飛んだ

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:34:51.28 ID:ZhWUP7md0


それはとてつもない轟音だった
やる夫の家をかつて構成していたであろう木材やカワラが、かつての原形をとどめないほどに破壊されたあげく、空中に吹き飛ばされていた
そして、やる夫は確認した
吹き飛ばされていくガラクタの中、人形のようにぐったりとした状態で吹き飛ばされる長門と
その少女を今にも両断しようと大剣を構えるガッツ

「やめるお―――――――ッ!」

やる夫の叫びが、冷たく無機質な冬の空気にこだました

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:37:59.03 ID:ZhWUP7md0


やる夫は無我夢中で走った
黒い剣士のことも気にせず
そのマスターの存在も忘れて
どうか無事でいてくれ
この思いが今のやる夫を支えていた

そして、瓦礫の塊と変貌した我が家に着いたやる夫は長門の姿を発見した
グッタリと瓦礫の上に長門は横たわっていた

「長門―――――――ッ!」

動かない長門を抱きかかえる
長門の体中に弓矢による傷が深く付いていた
右目に矢が刺さり、まるで涙のように血が流れていた

「脈は……」

やる夫は急いで長門の脈を確認する

「脈…は……」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:41:26.59 ID:ZhWUP7md0


結局、長門は無事だった
無事、といっても命に別条はないだけであり、回復には少し時間がかかるらしい
幸い、やる夫の近所には空き家しかなく、戦いに巻き込まれた人はいない
また、壊された空き家や、やる夫の家は長門の魔術で復元したため、建造物の被害はなかった

何故長門は助かったのかとやる夫は長門に尋ねる
長門いわく、斬りかかる瞬間に「消えた」らしい
おそらく彼のマスターが何らかの意思で令呪を使い呼び戻したのではないかと長門は推測していた

そして長門は家に戻るとすぐさまベットの上で眠りはじめた
だが、再びやる夫は長門に変な事をしようとは考えなかった

「確かに長門は可愛いから色んなことしたいけど、今日はもう疲れたから眠るお」

聞きたいことはまた明日にでも聞こう、そう思ってやる夫は今度こそ深い眠りに落ちていった

section-3 end

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 21:43:46.23 ID:ZhWUP7md0

section-another

「てめぇ……ッ」

ガッツは今までにないくらいに激昂して、ルイズの胸ぐらをつかんだ
それによってルイズのシャツが音を立てて破けた
ガッツの怒る理由。それはあと少しで敵のサーヴァントを倒せる、というところで
マスターであるルイズが令呪を使って呼び戻したからであった

「やってられるか…… 令呪なんて構うもんか……」

ガッツのこぶしがルイズを殴ろうと振り上げられる

「考えが……あるのよ……ッ」

とっさにルイズが言った
その眼にはガッツに対する恐怖心で涙がたまっていたが眼差しはまっすぐガッツの眼を見ていた

「言ってみろよ。ただし回答次第じゃ、ただじゃおかねーからな」

今にも爆発しそうな怒りを抑えながらガッツが言うと、ルイズは涙声でその「考え」を語り始めた

section-another end

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:07:43.59 ID:ZhWUP7md0

section-4

朝起きたとき、やる夫はある違和感に気付いた
においである
キッチンから放たれる嗅ぎなれないそれが、やる夫を酷く困惑させる

「何のにおいだお?サーヴァントの襲撃かお?毒ガスとか…」

昨夜の忌まわしき記憶がよみがえる

そう、血にまみれた少女の―――――

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:09:19.92 ID:ZhWUP7md0


やる夫がいる部屋とキッチンをつなぐ扉がひとりでに開く
そしてやる夫は衝撃を受けた

そこには紅く鮮やかな色をした―――――


トマトが輪切りになっていた

その隣にポテトサラダ、アジの塩焼き、味噌汁、納豆、豆腐、白米のご飯が
いくつもの皿の上に陳列していた

「お?」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:10:40.75 ID:ZhWUP7md0


「うまいお!すごくうまいお!」

顔をほころばせながら朝食をとるやる夫
その隣には静かに味噌汁をすするエプロン姿の長門
長門はマスターであるやる夫の体を気遣って、栄養のとれた食事を作っていたのだった
朝昼晩の三食共にピザばかり食べていたやる夫にとって今回の食事は少々ボリューム不足だったが
その不満を忘れさせるほど、長門の手料理は絶品だった

「長門の手料理また食べたいお。それとありがとだお」

げぷっと鳴いて感謝したやる夫に向けて長門は

「簡単なこと」

と言った

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:13:36.98 ID:ZhWUP7md0


長門はまだ良好と言える状態ではなかった
ガッツとの戦闘の傷は6割ほど治ったが
ランサー                 ゲ イ ・ ホ ル グ
槍兵のサーヴァント、阿部高和による「男を穿つ魅了の肉棒」の傷は2割も治っていなかった

初めて会った時と変わらない無表情で長門は説明した
      ゲ イ ・ ホ ル グ
「もし、「男を穿つ魅了の肉棒」を受けたものの性別が男なら、かすれただけで
即死だった。私の性別は女だが、それでもアレは非常に危険」

その説明、特に男なら、の部分を聞き再び震えあがるやる夫


「私はここで傷を治す。でも、あなたに何かあれば空間転移ですぐに向かう。
ずっとあなたを見てるから。安心して」

―――――ずっとあなたを見てるから

その言葉にときめきながら、やる夫は学校へと向かった

「料理もよかったけどエプロン姿の長門もよかったお。いわゆる新婚気分ってやつだお」

section-4 end

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:16:33.05 ID:ZhWUP7md0

section-5

「やらない夫、おまえはあの事件についてどう思う?」

昼休み、食堂でやる夫の先輩であるドクオはりんごジュースを飲みながら
やる夫に尋ねた

「食事中にその話しないで下さいよ」

やらない夫は自分の先輩であるドクオと話していることも忘れ、ぶっきらぼうに答えた

「でも、周りのみんなもその話で持ちきりだお」

やる夫が長門の弁当をつつきながら周りの人たちを見渡した
食堂、否、街中すべての人間が“あの事件”の話をせずにはいられない状況にいた

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:20:53.64 ID:ZhWUP7md0


「連続女子高生飛び降り自殺」。二週間前から発生している事件で内容は22人の女子高生が飛び降り自殺を遂げたというもの
全員15〜18歳の女子高生で、どの生徒もトラブルを起こすような性格でもなければ、巻き込まれるような人柄ではなく
周りの人たちから信頼される明るく礼儀正しい子たちだった

そう、宮藤芳香のような

「この二週間で22人もだ。狂ってるとしか言いようがない……」

手の甲に爪を食いこませながらドクオは苦々しげに言った
やらない夫はうつむいて黙っていた
つられるようにしてやる夫も黙ってしまい、彼らのテーブルに気まずい空気が流れた

そのとき、やる夫は宮藤芳香と初めて話した時のことを思い出していた

「困っている人がいたらね、自分に、わたしにできることをすればいいの」

至極、当たり前であり常識的な一般論だが、彼女が言うとこの言葉は「当たり前の言葉」ではなく
「特別な言葉」に変わったことを思い出していた

―――――わたしにできることをすればいいの

彼女は万弁の笑みで言った
そして、それにやる夫は強く共感した

だから、やる夫は今この場の空気を破壊した

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:23:26.31 ID:ZhWUP7md0


「今日やる夫の家で焼き肉パーティするお!」

唐突な切りだしにやらない夫とドクオは目を丸くした


「こんなときに何言ってんだよ…… 空気読めよ……」

やらない夫の言葉が刃物のようにやる夫の胸を深くえぐった

それでも、やる夫は構うことなく言い続けた

「何言ってんだよ、ってそれはやらない夫の方だお!!! さっきまでやる夫の弁当は誰が作ったかって
盛り上がってたくせに、今ではこんなにしょんぼりして、いつものやらない夫じゃないお!!!
それにこんなに落ち込んでるときだからこそパーティをするんだお!!!!」

やる夫の声は食堂中に響き渡り、周り人々の注目を浴びていた

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:25:47.61 ID:ZhWUP7md0


数秒後、人々の注目はしだいに無くなっていき、いつもどうりの食堂のざわつきへと戻っていった

「いつから始めるんだ?」

「夜の7時の予定だお」
                  ・・・・・・
ドクオがやる夫に聞くと、じゃあまた、やる夫の家で、とドクオは言って食堂を去っていった

「ホント、何言ってんだろうな、おれ…。じゃ、7時に肉いっぱい持って行くよ」

そう言って席を立ち

「ごめんな…… それと、ありがとよ……」

やらない夫は呟きながら席を立っていった

(ありがとう、芳香ちゃん…)

やる夫は今は亡き彼女に感謝した
そして、今日行われるパーティに思いをはせた

家にいる長門の存在も忘れて

section-5 end

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:28:42.37 ID:ZhWUP7md0

section-6

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは学校ではアイドル的存在だ
勉強ができ全国模試は常にトップクラス
おまけにスポーツ万能で、いくつかのトロフィーを所持
そしてなによりも少々乱暴だが時折見せる女の子としてのかわいらしさ
そう、ツンデレであることが彼女の人気の秘訣だった

そんな彼女からやる夫は

「話があるから放課後、校舎裏に来て」

といった甘い香りのする手紙をもらい

あれ?もしかして卒業までに妊娠させちゃうフラグ?

と、浮かれていた

そんなベリーベリーストロベリーな期待も
     マスター
「あなた魔術師でしょ?」

というルイズの問いによって儚くも打ち砕かれる

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:31:23.70 ID:ZhWUP7md0


「なんで知ってるんだお…… もしかして、ルイズもマスターなのかお……」

ルイズは髪をゆっくりと撫でながら「ええそうよ」と余裕をもった声で言った

「嘘だお…だってサーヴァントがいないお……」

この事実を認めようとしないやる夫に

「サーヴァントぐらいいるわよ!」

ルイズが怒鳴り口調で言うと同時に彼女の使役するサーヴァントであるガッツが霊体から実体となって、やる夫の前に現れた

「長門を襲ったやつだお…」

瞬間、青白い雷光が目の前に炸裂する
それは破壊を目的とした魔術ではなく、「空間転移」の魔術による軌跡
そこにはガッツと向き合う長門がいた

二人のサーヴァントの出現により、この場所に冷酷な殺意と絶対の敵意が渦巻く

戦闘が始まる、そう思ったルイズとやる夫だったが
二人は一向に動かなかった

ガッツが動けば瞬きをする間もなく長門が大剣で両断され
長門が動けば一呼吸をする間もなくガッツが魔術によって爆ぜる
そんな距離に、空間に、拮抗状態に彼らは存在し
               コト
そしてなにより己がマスターの被害を考えての行動だったからだ

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:35:48.74 ID:ZhWUP7md0


「ちがうったら、ちが―――――――う!」

ルイズの唐突な抗議にやる夫は驚くものの、二人のサーヴァントたちは拮抗状態を解くこともせず、敵愾心をひたすらに剥きだしているだけだった

「私はやる夫に協力してほしいだけなの! 戦うつもりはないんだから引っこんでてよ、ガッツ!」

二度目の抗議にガッツは、不服そうな顔をして素早く後退した
長門の静かな殺意は黒い剣士のマスターであるルイズに向けられていた

「どういうことだお?」

当然のように疑問をぶつけるやる夫
敵同士なのに、なぜ?
昨夜やる夫たちを襲ったのに、なぜ?
あのルイズが、なぜ?

その問いにルイズが答える

「私は魔術の名門でもあり聖杯戦争始まりの三家とも言われる“ヴァリエール家”の一人、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
第四回聖杯戦争に選ばれた誇り高き魔術師よ」

ルイズはエッヘンと無い胸を張って言った
やる夫は「あー、ようするに英検準二級ぐらいすごいのかお」と頭の中で納得した

「(なんかすごくムカつく顔して納得してるけど別にいいわよね…)なんで協力するのかって話だけどね」

そしてルイズは言った
今、巷で話題になっている“連続女子高生飛び降り自殺”の原因は、聖杯戦争に参加する“マスター”である可能性が高いと

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:40:24.10 ID:ZhWUP7md0


やる夫は何か言おうとするものの、ルイズは構わずに話し続ける

「だからそのマスターを捕まえるために協力してほしいの。昨夜、あなたたちを襲ったくせして、こんなこと言っても信用されないかもしれないけど、
あなたたちを襲ったことは本当に悪かったわ。けど、芳香をあんな目に遭わせたやつかもしれないって考えてたら……」

ルイズにとって宮藤芳香は唯一、心を許せる親友だった
そのことを知っているからこそ、やる夫にはルイズの涙に潤んだ瞳にやり場のない怒りと、逃れようのない悲しみが混じっていることが納得できた

それを見たやる夫はルイズの瞳を真っ直ぐ見ながら言い放った

「わかったお! ルイズのためにもみんなのためにも、やる夫は喜んで協力するお!」

やる夫の声はハッキリと聞きとることができるほど、とても力強いものだった
そして、暗かったルイズの表情が晴れていき、嬉しそうに彼女は呟いた

「その……あ……ありがとね……っ」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:43:02.81 ID:ZhWUP7md0


「夜の7時にあなたにやってほしいことを話すわ。忘れてたら絶対に許さないんだからね!!!」

デレモードからツンモードに変化したルイズは胸の前で腕を組んで、やる夫を見つめていた
一時はどうなるかと焦ってた両者は、少し落ち着きを取り戻しつつあった
だがやる夫には胸につっかえる疑問が一つ残っていた

「なんで、やる夫に協力してくれって誘ってくれたんだお?」

なぜあまり話したことのないやる夫を無条件で信用してくれるのか? この問いにルイズは「はあ」とため息をつくと、やる夫に言った

「あんた学校で自分の評価聞いたことある?みんな言ってるわよ
100年に一度の天才のくせに、その頭脳をオタク趣味にしか使わないバカだとか
人類最速の脚力を持っているにもかかわらず、それをエロゲーの限定版予約のためにしか使わないバカだとか
スポーツ選手のスカウト受けたのにもかかわらず、エロゲーの時間が減るから嫌だって断ったバカだとか…」
「要するにやる夫は使いやすいバカだっていいたいのかお…」

聞くんじゃなかった、と後悔するやる夫
そんなやる夫にルイズは言った

「確かにみんなあんたのことバカだバカだって言うけどそれと同時にみんなあんたのことこう言ってるわよ
是非とも友達になりたい人だとか
空気が読めないけど逆にいい空気を作ってくれるいい人だとか
いじめられてるところを助けてくれた恩人だとか
褒めてる上に惚れてる人もいれば憧れてる人もいるのよ
そ、それに少なくとも私にはあんたが周囲に害悪を振りまく悪人には見えないしね……!」

それがあなたを信用する理由よ、と顔を赤らめて言うとルイズは脱兎のごとく去っていった

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:46:52.01 ID:ZhWUP7md0

58
やる夫にはそのセリフがとてもうれしかった
だからこそ、やる夫もルイズのことを信用することにした
そして意外なことに長門も彼女を信用していた

「悪気がなかったといってもあれだけ長門を傷つけたのに、どうして信用できるのかお?」

やる夫の問いに長門はいつものペースで答えた

「もし彼女が私たちを後で裏切るつもりでいるなら、昨夜私にトドメを入れることなくサーヴァントを令呪を使って呼び戻した行為は辻褄が合わない」

そんな回りくどいことは非効率的、と言うと

「それに先ほどの宮藤芳香の話から考察するに彼女は悪い人間ではないと推測できる」

長門は平坦な口調で語り終えると彼女がいる空間が歪み始め、空間転移によってその場から彼女は家へと帰った

(やっぱりルイズも長門もいい人だお)

この聖杯戦争で彼女たちに会えて、味方になってくれて本当によかったとやる夫は思った

ちなみに、やる夫がトリプルブッキングの図式が完成していることに気づくのは夜7時になってからのことである

section-6 end

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:52:47.89 ID:ZhWUP7md0

section-7

やる夫の学校は事件のこともあって、いつもより早く終わった
時刻は3時30分、家に着くとすぐにやる夫はソファーにもたれかかった

「疲れたお。そういえば長門はどこだお?」

疑問に思ったちょうどそのときキッチンから長門が出てきた
その両手にはトレイ、そのうえにはティーカップと紅茶の入ったポット、
イチゴのショートケーキ、ビスケットが置かれていた

「3時のおやつだお!」

やる夫は目を輝かせた

やる夫はいつも間食の時はスナック菓子やカップラーメン、ピザといった脂分のあるものしか食べなかったが
この日やる夫は目覚めた

「紅茶うまいお!このビスケットもかなりいけるお!」

お茶の作法なんて関係なしにガッツくやる夫だった

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:55:23.07 ID:ZhWUP7md0


「やる夫は長門に言わなきゃならないことがあるお」

やる夫の一言によって、一瞬で場の空気が張り詰めた
そう、やる夫は協力してほしいと長門言ってなかった

だからこそ言った

「今さらだけど、やる夫は悪いことをするマスターを懲らしめるために、この聖杯戦争に参加するお! だから長門の力を貸してほしいお!」

自分の気持ちを隠すことなく、偽ることなく、堂々と、力強く言った
それを聞いた長門はやる夫に向けて手を伸ばした
この欲望に満ちた殺し合いにはふさわしくない、細くか弱い少女の手を、やる夫は強く握りしめた

やる夫はにこりとほほ笑んだ

長門はいつものように無表情だった

それでもやる夫は嬉しかった

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 22:57:51.27 ID:ZhWUP7md0


その後、やる夫は聖杯戦争についていくつかの質問を長門に投げかけた
   ランサー       ゲ イ ・ ホ ル グ
「あのゲイのおっさんが「男を穿つ魅了の肉棒」って叫んでたけどなんでいちいち叫ぶんだお?
あんなでかい声出すとかかっこつけすぎ、夢見すぎ、アニメの見すぎだお」

技名を叫ぶことで次の攻撃を相手に予測させてしまうのになぜ?
この愚行にやる夫は朝から疑問を抱いていた
                   シンボル
「サーヴァントはサーヴァントたらしめる象徴を持っている。それがそのサーヴァントの武器、
または特殊能力として与えられる。その象徴の真名を言うことによってその本来の力が解放される」

「くそみその阿部さんはただの人間のはずだお…… なんであんな人間離れした能力持ってるだお……」

「その作品の知名度が高ければ高いほど、サーバントの能力は底上げされるもの」

(やっぱり長門は賢いからとっても話がわかりやすいお…)

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:00:54.47 ID:ZhWUP7md0


「どうしてやる夫は長門を召喚できたんだお?」

やる夫には魔術師としての素質はあるのだが、魔術に関しての知識は一切なく
サーヴァントを召喚するための儀式など行った覚えなどなかった

その問いに対して長門は答えるのではなくやる夫の瞳をじっと見つめるだけだった

どうしたのか、と焦るやる夫
沈黙の後、いつもの淡々とした口調で長門は語り始めた

「サーヴァントを召喚するためには触媒を必要とする。私の場合、やる夫が持っていた
私のキャラクターブックを触媒とし、契約のために付ける呪印はあなたの精液で済ませた」

やる夫は飲んでいた紅茶を盛大に噴き出した

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:02:21.64 ID:ZhWUP7md0


「それとさっきから体がすごく軽いけどどうしてだお?」

「あなたが寝ている間に身体強化魔術を処置しておいた。車にひかれても死ぬことはないくらいの肉体になっている」

「背中に羽が生えてるみたいに軽いお!サーヴァントなんて楽勝だお!」

「マスター相手とその使い魔に対しては大きく有利になるがサーヴァント相手の場合気休め程度の能力向上でしかない」

「それでいいお!ありがとうだお長門!」

嬉しそうにはにかむやる夫

「長門はいつ呼び出されたんだお?」

やる夫の素朴な疑問に長門は紅茶を一口飲んだ後静かに答えた

「変わりないいつもの日常から召喚された」

「じゃあこの戦いが終わったらそっちの世界に遊びに行くお!ってありゃ?これって死亡フラグだお」

ほほ笑むやる夫とは正反対に、長門は相変わらずの無表情で言い放った

「それは無理。われわれのいた世界は人間の空想から想像されたものでしかなく
観測者、換言すれば読者でしかないやる夫には干渉することは不可能なこと」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:03:55.64 ID:ZhWUP7md0



やる夫は残念そうにうなだれながら、さらにもう一つ疑問をぶつけた

「それはそうと長門の願いって何なんだお?」

聖杯はマスターだけでなくサーヴァントも使うことができる
いったい彼女は何のためにこの戦いに参加し
何のために聖杯を使うのか

「私の願いは……」

私の願いは、最後まで言いきる前に玄関のドアが乱暴に叩かれた

「おーい。ドクオとやらない夫だぞー。カギ開いてるから勝手に入るぞー」

そう言ってズカズカと入ってくるドクオたち

「あ、忘れてたお」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:04:42.51 ID:ZhWUP7md0


今日やる夫の家で行うと言った焼き肉パーティのことを思い出すやる夫
時刻はすでに7時

「ちょっと入ってくるんじゃないお!」

そう言って入ってくるやらない夫たちの進行を両手を大きく広げ玄関で食い止めるやる夫

「何するんだよやる夫。分けわかんね…… ってか、そこの彼女誰よ……」

居間からこちらをじっと見つめる長門の姿がやらない夫から玄関から丸見えだった

「いつの間に女つくったんだ?やる夫くん?」

ドクオがにやにやしながら問いかけた

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:06:56.25 ID:ZhWUP7md0


どのように説明しようかと混乱するやる夫

「ちがうんだお!これには深いわけが…」

そうやってあたふたしているうちにやる夫は気づいた
開きっぱなしになっている玄関の扉の前に角を生やして立っているルイズの存在に

「へえ、大事な話するってのに何この2人…」

今にも爆発しそうな怒りを抑えルイズはやる夫に問い詰めた

(なんかもういろいろとヤバいお…)

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:08:05.87 ID:ZhWUP7md0


それから15分後

「もう十分焼けてるお!じゃ、いただくお」
「おい!この肉はこのやらない夫様のものだぞ!」
「ちょっとそれは私がとっておいたものよ!勝手に取らないでよ!」
「肉ばかりは栄養バランスに悪い。このモヤシも食べるべき」
「長門の言う通りだぞ!だからこそ先輩であるドクオ様に渡すべきだ!」

なんだかんだ言って彼らはとても盛り上がっていた

ルイズはやる夫をこっぴどく叱咤しようとしたがやらない夫たちが持っている袋
の中から見える牛肉のパックを見て彼女はそれをやめた
そして思い出す

―――――今日やる夫の家で焼き肉パーティするお!

彼女は今日、食堂で彼らの口論を聞いていた

――――――それにこんなに落ち込んでるときだからこそパーティをするんだお!

そんな彼らの思いを壊すまいと彼女もこのパーティに参加することにしたのだった

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:10:11.27 ID:ZhWUP7md0


宴会は7時から10時まで行われた
やらない夫とドクオは酔いつぶれて床に突っ伏していた

「そういえばガッツはどこだお?」

やらない夫たちに聞こえないようルイズに話す

「屋根の上で敵サーヴァントが襲撃をかけてこないか見張ってるわ」
「ありがとうだお!」

そして、やる夫はあるものを持って屋根へと向かって行った

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:13:38.48 ID:ZhWUP7md0


屋根の上へとやる夫は上っていく
風は思ってたよりも強く冷たく、体に吹き付けるそれはやる夫の先ほどまでの陽気な気分を奪っていく

「こんなところまでやってきて何の用だ」

こちらを睨みつける黒い剣士にやる夫はいったんたじろぐ

「い、一緒に飲むお!」

やる夫は持っていた缶ビールを上にさしだしたが

「馴れ合いは嫌いだ。そういうことはおれのマスターとでもやっててくれ」
「ごめんだお…」

拒絶の言葉を聞いて落ち込むやる夫にガッツは言った

「謝るくらいなら来るな。もう一度言うがおれは馴れ合いが嫌いだ
だが酒は好きだ」

そういうとガッツは手を差し出した

「はいだお!」

やる夫が差し出した缶ビールをガッツはしっかりと受け取った

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:16:05.32 ID:ZhWUP7md0


「ガッツは聖杯でどんな願いを叶えるんだお?」

その問いにビールを一気に飲み干してガッツは言った

「叶えてもらう願いなんてねーよ」

「え?」

「いいか。願い、夢は与えられるものでもなく叶えてもらうものでもない。自分でつかみとらなきゃ意味がないんだ
                                  ネガイ
誰かに、何かをやってもらってそれで満足?おれは満足できねぇ。てめえの夢ぐらいてめえで掴め。それがおれの答えだ」

静かに空を仰ぎ、どこか遠くを見るかのようにガッツは言った

「じゃあ何でこの戦いに参加してるんだお!?」

やる夫は当然の疑問を口にした
サーヴァントは自らの願いを聖杯にかなえてもらうためにマスターに力を貸し聖杯戦争に参加する
だがガッツは違った

「聖杯戦争のシステムはな、戦いを始めるためにはどんな手段を使ってでもサーヴァントを
召喚させるんだ。だからおれは無理矢理この戦いに参加させられてるだけだ」

舌打ちをするガッツを見たやる夫は早く戻りたいのだろうなと思った

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 23:22:51.91 ID:ZhWUP7md0


そして、ガッツは語り続ける

「聖杯を手に入れれば確実にもといた世界に戻れるらしいが、手に入れれなかったら場合
戻れるかどうか分からない。だから俺は絶対に聖杯を手に入れる
おれはあんたとの協力関係がなくなれば容赦なくあんたを殺せる。おれのマスターも同じだ」

ガッツは酷く冷たい視線をやる夫に浴びせながら、自身の真意を口にした
いつかおれたちは殺しあう
この事実をやる夫は認めたくなかった

「だけどこの間だけでも協力しようだお」

やる夫がいかにも困ったかのような顔で言った

「不本意だがこの間だけはな」

ガッツはため息をついて、やる夫の思いを受け取った

section-7 end

104 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 00:28:10.19 ID:y3lFntiW0

section-8

宴は終わりを告げ、酒臭いにおいを漂わせていきながらドクオとやらない夫が帰っていった
その姿を見届けながらこの時間がずっと続けばいいのにと、やる夫は軽い寂寥感に見舞われた

「じゃあ二人は帰ったことだし本題に入るわね」

ルイズが言うとやる夫は

「やらない夫がお土産を置いて行ったみたいだからちょっと待ってほしいお」

と実に不愉快そうに言って玄関の方へ歩いて行った

ルイズが何だろうと玄関の方を見ると、雑巾片手に玄関にぶちまけられた吐しゃ物をかたずけるやる夫の姿があった

106 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 00:32:39.86 ID:y3lFntiW0


「今終わったお」

掃除が終わったやる夫は、全身にファブリーズを吹きかけながらソファに座る
その様子を確認したルイズは、鼻をつまみながら不愉快そうに話しを始めた

「いい、今度こそ本題に入るわよ。まず、やる夫に質問だけど、あなたの中学生の頃の話ってホントなの?」

中学生の頃の話。落し物の持ち主を何の手がかりもなく見つけたという噂。この言葉だけでやる夫はルイズの訊きたいことを理解する

「ホントだお。で、その力を使って悪いマスターの居場所を突き止めてほしいってことかお」

「そういうこと。だからまず最近の事件現場、内藤マンションへこれから行くの」

内藤マンション、そこはルイズの親友であった、今はもう亡き宮藤芳香が飛び降りた場所だった

107 名前: ◆T7tlKj9HXY [] 投稿日:2010/03/06(土) 00:37:27.20 ID:y3lFntiW0


やる夫には不思議な力があった
それはモノに触れることによって、それの周りで起きていたことや所有者の情報が頭の中に入り込んでくるというもの
過去、やる夫はその力を使って落し物を見つけて届けるということをやっていた
ただ、やる夫はなぜ自分がこの力を持っているのかよくわからなかったものの、
やる夫はこの力のせいで周りから奇異の目で見られる可能性があることにある日気が付いたため、二度と使わないようにと決め込んでいた

「探索系の魔術ね。先祖の人が魔術師だったとか?」

ルイズが内藤マンションへの道中、やる夫に話しかけた

「やる夫は孤児院で育ったから、親のことはよくわからないお」

「あ……ごめん……」

別に謝ることでもないお。そう言うと三人は無言のまま歩き始めた

109 名前: ◆T7tlKj9HXY [] 投稿日:2010/03/06(土) 00:43:52.10 ID:y3lFntiW0


内藤マンションの駐車場の一カ所に、多くの花束やお菓子の袋、缶ジュースが置かれていた
そしてアスファルトの黒に溶け込むかのように、その場所は朱色に染まっていた
やる夫とルイズ、長門はそこで腰を低くして合掌した
やる夫の表情は硬く、そして重苦しいものになっていた
ルイズは無言で唇をかみしめながら涙を流していた
長門は他の二人と違って表情に変化はなかった
合掌が終わると

「犠牲者を最小限に抑えるため出発時、使い魔を放った。何かあればすぐわかる。だから安心して」

長門は無表情で、しかしはっきりと聞こえる澄んだ声で二人に言った
「長門、ありがとうだお」

やる夫は長門に感謝の言葉を駆ける。そして、ゆっくりと彼女がかつていた場所に腰をかがめた
「芳香ちゃん、ちょっとお邪魔するお」

そう言ってやる夫は朱色に染まった地面に手のひらを置いた
     シーク スタンバイ
―――――探索、開始
探索系の魔術。地面から、そして空間から多くの情報が脳内に流れてくる

彼女の落下時のセリフ「ゴメンネ」、
頭蓋が砕ける音「ゴシャッ」
男の罵声「バッカじゃねーの?」
次の惨死現場「×××でいいかなー」

地面から手を離すとやる夫は二人に言った

「急ぐおッ! 早くしないと次の人が……!」

110 名前: ◆T7tlKj9HXY [] 投稿日:2010/03/06(土) 00:48:10.76 ID:y3lFntiW0


長門の空間転移によって、やる夫たちは学校近くにある廃工場へと跳んだ

「なんでここで次の事件が起きるって分かるのよ!?」

暗くホコリくさい工場の中に自分たちの敵となるマスターとサーヴァントが潜んでいないか、ルイズは真剣に確認しながらやる夫に尋ねた

「ここで何かするって言ってたのが見えたんだお!」

ルイズの問いにやる夫は答えながら、近くにあった鉄パイプを手に取った

「前方から反応を確認。数は一人」

目と鼻の先、闇に覆われた空間に向かって長門は指を指した
長門の魔術による光が陰鬱な室内の闇をかき消しはじめる
そして彼らの眼前には






血だまりに横たわる死体があった

113 名前: ◆T7tlKj9HXY [] 投稿日:2010/03/06(土) 00:52:30.65 ID:y3lFntiW0


「ルイズに言いたいことと聞きたいことがあるお」

「なに?」

あふれ出たやる美の内臓器官は綺麗な断面図をのぞかせるほどにパックリと裂け、そこから消しゴムと同じくらいの大きさをした何かが顔を出していた

「この人はやる夫とやらない夫ととても仲が良かったお。もうすぐ結婚するから幸せの絶頂で
《早く子供が欲しい》と言ってたって、やらない夫から聞いたお。」
          ・・・・
そしてやる美の亡骸とあるものを見ながらやる夫は叫んだ

「でもなんでやる美のおなかの中に子供がいるんだお!」

てらてらと光る内臓からこぼれたそれは、赤くそして未熟なまでの胎児だった

115 名前: ◆TPRwAxWoYOh1 [] 投稿日:2010/03/06(土) 00:57:30.45 ID:y3lFntiW0


「ごめん。今まで黙ってたけど、飛び降り自殺した人たちはみな妊娠してたの
みんな男性とは付き合ったことのないいい子ばかりなのに。これは使い魔から得た情報よ
そして、警察機関はこの事件が異常過ぎるため、包み隠さず報道すれば市民を混乱させるから、その細部はひたすら隠し続けているの」

うつむきながら、謝るルイズにやる夫は怒りを隠すことができなかった

「何で黙ってたんだお!」

ただ、ひたすらにやる夫はルイズに怒りをぶつける
これほど重要な事実をルイズが黙っていたことに、そして理不尽なまでに友人の幸せを壊されたことへの行き場のない苦しみのために

「ごめん…… でも認めたくなかったのよ…… 芳香がこんな酷い目にあったなんて……
酷すぎて認めたくなかったのよ……」

うつむいたまま懺悔するかのようにルイズは言った

117 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:02:44.10 ID:y3lFntiW0


ヒュン、と急に音がして、やる夫の前で火花が散った
それは長門の魔術による防御壁によって《敵》の攻撃が防がれたものだった
驚いたやる夫とルイズは、二階の窓際にたたずむ敵を凝視した

「おまえがやったのかお!?何でこんなことするんだお!?」

やる夫の問いにそれは黙っていた
長門は二人を守るため、敵を殲滅するために戦闘態勢へと入る

「内輪で盛り上がっているところ悪いがお前らには死んでもらう」

黒いコートを着た襲撃者が言うと同時に工場の出口、やる夫たちの後ろからあるものが飛び出した

「ガッツ!」

ルイズが叫ぶと、霊体化して見えなかった彼女の守護者が実体化することで、それの行く手をさえぎった
      キャスター
「まったく、魔術師のサーヴァントといい、おれのマスターといい、何でこうも戦場に似合わないお姫様ばかりなのかねえ」

ガッツはため息をつき敵対するそれ―――――炎髪灼眼の少女に向けて言った

secton-8 end

118 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:07:10.34 ID:y3lFntiW0

section-9

一切無駄のない、誰が見ても見とれるくらい美しい弧を描きながら大太刀がガッツめがけて一閃される
だがガッツにとってこの初撃は呆れるくらい鈍いものだった

「人間の尺度で見ればあんたのそれは一流のものだろう。サーヴァントとしては三流だがな」

皮肉を言いながら二撃、三撃と少女の斬撃を悠々とかわしていく

「あっけない幕切れだったな」

大剣を持つガッツの腕に力が入り絶対不可視の一閃が放たれる
空気が轟音を立てて切り裂かれ、細い少女の首を切断する

はずだった

「――――――――っ!」

瞬間、少女の足元が爆発し、一メートルあった間合いが瞬時に詰められる
そして少女から放たれる致命の一撃
その奇襲をガッツは力の限り体を横に曲げることでその攻撃を回避する
だが次の二撃は今までとは比べ物にならないほどの神速を秘めていた

121 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:12:47.23 ID:y3lFntiW0



「C1」

長門が短く無感情に言うと同時にガッツが光によって包まる
そして、いつの間にかガッツは長門の空間転移によって炎髪の少女と間合いを取っていた

「あんたには借りができちまったな。にしてもこいつ…」

(初撃で相手を油断させ次の一手は全力で仕留めるってか。今までに相手の虚をつく戦法には幾度もお目にかかったが、
まさかこれほどまでに油断させる奴がいるとはな)

炎髪の少女が味方であったなら確実に称賛していただろう、その戦闘能力の高さにガッツは畏怖していた

そして、サーヴァントたちは敵の次の一手を予測、思考するための制止を行うことで一定の拮抗状態を保っていた

123 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:18:56.81 ID:y3lFntiW0


「やる夫!!! 来るわよ!!!!」

ルイズが叫ぶと、二階にいた黒コートがやる夫に向けて剣を投擲した
数は六本。魔術による強化が施され、切れ味は鉄をもたやすく両断するほど
投擲対象が普通の人間なら、それが放たれたことも分からないうちに串刺しになるだろう
だが、やる夫は普通の人間ではなかった

やる夫は持っていた鉄パイプを瞬時に魔術で強化することで、迫りくる三本の剣をたやすく弾いた

「詠唱するから時間を稼いで!」

すかさずルイズが呪文を唱え始める
その隙を狙って黒コートが二階から跳ねる

そして、黒コートがルイズの頭上めがけて剣を一閃する

「おっ!!!」

すかさずルイズの前に立ったやる夫は鉄パイプを横に薙ぐことで男の斬撃を受け止めた

やる夫の身体能力は今朝、長門によって施された魔術により常人を超えたものになっていた
黒コートと鍔迫り合いをする中、やる夫は自身の戦闘能力が黒コートと同等、もしくはそれ以上のものであることを瞬時に察した

「絶対ルイズには手を出させないお!それに何でこんなひどいことをするんだお!」
    ムクロ
やる美の躯を背に、やる夫は黒コートに向けて怒りに満ちた感情をぶつけた

125 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:22:57.98 ID:y3lFntiW0


黒コートとやる夫のエモノ同士がギリギリと音を立てて火花を散らす

ふん、と黒コートは鼻をならすとと不愉快そうに語り始めた

「先ほどのあんたらの会話きかせてもらったが、つまりこういうことが言いたいのか
おれが聖杯戦争のドサクサにまぎれて《やる美》や他の女どもを妊娠させた挙句、自殺にまで追い込んだと。
悪いがオレはそんな快楽主義者でもないし破壊主義者でもない。ましてや下種になり下がった覚えもない」

「やる夫!離れて!」

ルイズの叫びに呼応して瞬時にやる夫は飛び退く

途端、やる夫たちが先ほどまでいた場所にルイズの魔術が発動し、そこを中心に床のコンクリートや周りの資材が粉々に吹き飛んだ

「四対二じゃさすがに分が悪いな。悪いがここでいったん引かせてもらう」

黒コートが言うと炎髪の少女が弾け、そのマスターを抱えてその場から立ち去った

「待てお!」

やる夫は彼らを追おうと走り出したが長門が目の前に立ちふさがり彼の邪魔をした

「戦いの影響によりこの工場はあと二分で崩壊する。ここが崩壊すればここの傾斜の下にある民家が埋もれる危険性がある。
私はルイズに修復を手伝ってもらうことを望む」

しばしの沈黙の後やる夫は首を縦に振ることにした

128 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:29:52.86 ID:y3lFntiW0


長門とルイズが工場に修復の魔術をかけたため、ここが崩壊することはなかった
「で、結局この事件の元凶はあいつらなのか?」

ガッツがちらりとやる夫の方に目をやった
「違うお。ここでやる美の記憶を見た時あいつじゃなかったお」

やる夫は死人のような形相で、コンクリートの上に置かれたやる美の亡骸にシーツをかぶせた
「じゃああいつらは何だったんだろうな。そもそも不自然すぎるぜ。四対二で分が悪いことなんて百も承知だったろうに」

一向に釈然としない、とガッツは手のひらを返した
なぜ彼らが戦いを挑んだのか、一つ疑問が浮上した浮上する

「でもこの事件を起こした元凶、犯人は知ってるやつだったお。」
「誰なの!?早く教えなさいよ!」

その言葉にルイズは酷く反応し、やる夫の胸ぐらをつかみ乱暴に揺さぶった

「落ち着いてほしいお。これから言うから」

ルイズは落ち着きを取り戻し「悪かったわね」と謝罪した
それから深呼吸をして気持ちを整えたやる夫は事の真相を語り始めようとする
「……その犯人は………」

ガタンッ!
大げさに乱暴に工場の扉が開く音がした
工場の中は広いため音は幾重にも反射してなかなか消えることはなかった
そして、そこにはやる夫たちの視線を一斉に集める形でやらない夫が立っていた

131 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:37:26.12 ID:y3lFntiW0


一斉に皆の視線を受けるやらない夫

「違うお!やらない夫じゃないお!」

やる夫は運悪食い合わせた彼がその元凶ではないと必死に否定する
そんな彼らにやらない夫は歩み寄りながら、普段の口調で話し始める

「何でお前らがいるんだよ…… わけわかんねーよ……」

やらない夫のセリフにやる夫たちも同じ疑問を抱いていた

「いやおれはさ、やる美からここで大事な話があるから来いってメールもらったから来たんだけど…」

肝心のやる美が見当たらないと周りを見回す
やらない夫には、そこの汚れたシーツに覆われているのがやる美だとは思うまい
そもそも正確には、やる美はここには存在せず、ただここに存在するのは《やる美だったもの》でしかない

「見てないか?つーかなんでお前らがいるんだよ」

やる美の所在も自分たちがここにいる原因も、やる夫たちには答えることができなかった

132 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:39:37.45 ID:y3lFntiW0


急に冷たく強い風が窓から入ってきた

風はルイズの髪をなびかせ、廃工場に溜まっていたホコリを飛ばしていき、長門の傷をジクリと痛ませた

そして、その突風はやる美を覆っていたシーツを大げさに乱暴に吹き飛ばした

やらない夫の網膜に残虐で残酷でそして無慈悲な光景が焼きつく

呼吸や瞬きをすることも忘れてやらない夫はその場で涙を流していた

134 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:43:57.50 ID:y3lFntiW0


「元凶であるマスターとは私が話しあうから。と言っても話し合いで済めばいいのだけれど。やる夫は何かあった時のために
多目的教室Tで待っててね。一応戦闘のための武器は隠しておいたから」

そう言ったルイズは重苦しい足取りでやる夫たちと別れた

あれから十分前、やらない夫は悲鳴ともつかない叫び声を上げて、やる夫たちの前から姿を消した
その後、警察に通報しやる夫たちはその場を去った
やる夫はやらない夫のことを思って、逃げる彼をとどめた上に、長門の力を以て惨劇の記憶を消そうとも考えたが、彼の姿はもう見えなかった。
仮にこの惨劇を忘れたところで、明日には警察機関からこのことがやらない夫の耳に届くため、それは意味のない行為であった

「やる夫には何もできなかったお…… 誰も守れなかったお……」

家に着いたやる夫は床にへたり込んで、自身の無力さを非力さを呪った
長門はただ黙ってやる夫に毛布をかけた

「ありがとうだお、長門…」

section-9 end

136 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:47:01.23 ID:y3lFntiW0

section-another

人気のない暗く狭い路地裏でやらない夫は一人で壁を殴り続けていた

――――――――なんでやる美が、なんで……

こぶしから血がだらだらと流れ続け、壁には赤い点が描かれる

――――――――どうしておれは何もできなかったんだ…… どうして……

やらない夫はやる夫と同じ孤児院出身で家族というものを知らなかった
養子として貰われたものの、その家庭になじむことができずに酷く肩身の狭い思いをした
だが親戚であるやる美は彼にとって特別な存在だった

特別視するわけでもなく
見下すこともなく
他と隔てることもなく
それが自然であるかのように
彼が家族であるかのように
やさしく、明るく包み込むかのように
孤独だった彼を救ってくれた

そんな彼女は何者かによって絶望の淵へと突き落とされた

――――――――なんで

138 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 01:51:27.57 ID:y3lFntiW0


痛みに構うことなく、やらない夫は機械的に壁を殴り続ける
――――――――る

こぶしの骨が砕け皮膚を突き破ったがそれでも構うことなく殴り続ける
――――――――てやる

強く奥歯を噛み締めたため歯が何本か砕ける音がした
――――――――してやる

そのうち痛みが一切感じれなくなり彼の中には黒く燃えたぎる殺意しか残らなくなった
「殺して……やる………ッ!!!!!!」


「その純粋な殺意。やはりお前こそふさわしい」



サーヴァント
 役者はそろった


私に最高の悲劇を見せてくれ

section-another end

146 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 02:17:14.17 ID:y3lFntiW0

section-10

午前七時。空は灰色の絵の具を一面に塗りたくったかのような雲で覆われ、午後の天気が雨になることをやる夫に予感させた

「はあ……」

ソファーにもたれかかりながら、やる夫はため息を尽いて長門が作ったツナサンドを食べていた
だが、食べるという表現は適格ではない。味わうためでなく、胃を膨らますためだけに、もくもくと機械的に惰性でかじっていた

「平気?」

長門は相変わらず抑揚のない声でやる夫に話しかけた
だが、心の中では今のやる夫を心配していることが何となくだが、やる夫には感じられた

「やる夫は大丈夫だお! でも、それより心配なのはやらない夫だお……」

148 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 02:22:06.04 ID:y3lFntiW0


この街には「やなせたかし」というパン屋がある
老若男女問わず人気があり、テレビでもたびたび紹介されたことがある
最近はイタリアの三ツ星シェフがそこでパンを食べて大感激したという話もあり、小さな店であるものの世界中からも注目される有名な店だった
そこでやる夫とドクオは昼食をとっていた

「なんでやる美さんがあんな目に遭わなければならないんだ……」

沈痛な表情でドクオは周りに聞こえないようにつぶやいた
今日やらない夫は学校に姿を見せなかった
やる夫とドクオは心配して彼の家まで会いに行ったものの、やらない夫は不在だった

「当分そっとしておいた方がいいのだろうか……」

ドクオは大きくため息をついた
そんな二人の元へ店主のジャムおじさんがやって来る
そして、「サービスだよ」と言ってカレーパンをトレイの上に二つ置いた

150 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 02:26:44.12 ID:y3lFntiW0


小教室Tでルイズはこの事件の元凶が来るのを待っていた
やる夫は件の能力で元凶のマスターの姿ともう一人の人物を見たと言った
もう一人の人物に関してはあまり情報を得ることができなかったが、元凶のマスターの協力者としても
きな臭い部分があるということで、やる夫はルイズにその人物に探りを入れるよう頼んだ
そして、ルイズはいつでも戦いを始めれるように魔術による防御壁を張り始める

「ガッツ。もし何かあったらそのときは頼んだわよ。」

霊体化して姿の見えない相棒に彼女は頼んだ

「手が震えてるが大丈夫なのか」

必死に震えを隠そうとするルイズを横にガッツは肩をすくめた

「まあ落ちつけよ。もしものときは俺に任せてくれればいいさ」

151 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 02:30:17.76 ID:y3lFntiW0


教室の扉が開く

「思ったより遅いじゃない」

ルイズの不満に彼は「ああ、すまない」と謝りながら律儀に扉を閉めた

「生徒会の仕事で長引いちゃって。それで話ってなんだい?」

穏やかで、あくまでも礼儀正しく振舞う。そんな彼が元凶のマスターにつながっているとは到底思えなかった
それでも、やる夫は怪しいと踏んでいた。
だからこそ、ルイズは震える手を押さえ、手を強く握りしめて、彼に尋ねた




「率直に聞くわ。あなた、マスターでしょ。生徒会長、いえ、夜神ライト」

172 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 10:30:05.23 ID:y3lFntiW0

***

間違えて文章一つ飛ばしてしまいました……
何やってるんだよ……

とにかく、次の文章は>>166>>151の間に入っているということでお願いします


「それは違うよ」

夜神ライトは余裕を持ってルイズの問いに答える
「君も知っての通り僕の家系は古くから代々魔術を受け継ついできたし僕自身、夜神家の次期当主だ」

でもね、とライトは不満を露わにして語りだす

「僕はこの聖杯戦争に選ばれなかった。この前も言っただろ。残念ながら僕はマスターに選ばれなかったって」

言葉には、かすかにいらだちが込められていた
ルイズにはライトは窓の鉄格子を手が赤くなるほど握りしめているのが見えたが、表情は暗雲からかすかに放たれた逆光でで見ることができなかった

153 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 02:40:37.81 ID:y3lFntiW0

***
このあたりからサーヴァント同士の戦いが増えていくわけですが、残念ながら今日はこのあたりで終わろうと思います

どなたか保守をなさってくれる方がいたなら、ぜひともお願いします

ちなみに再開は今日の朝9時、遅くて11時くらいにするつもりです

それでは再会を祈りつつ……

166 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 10:01:10.32 ID:y3lFntiW0

section-another
*
昨夜の不快で奇怪で後悔に満ちた回想

冬独特の肌を突き刺すような冷たさと、血と臓物のにおいが充満する今にも崩れそうな廃工場。
ルイズと長門が見守る中、やる夫はここで起きたことを例の捜索能力で探っていた
        シーク
―――――探索、開始

記憶が、記録が彼女の意思から、場の空間からやる夫の頭の中へ流動し再生される

それは×××がマスターの力を濫用し、サーヴァントの力に依存して
繰り返し自由で気ままな楽しい日常を送るものだった

そして、やる夫は理解する
×××にとって

オンナ
玩具たちには自由意志など存在せず

欲望が果てるまで、悲鳴が終わるまで、力が尽きるまで、凌辱が無くなるまで

徹底的に遊び尽くし、奪い尽くし、壊し尽くす

ただそれだけの存在
「夜神も混ざればいいのに」

最後に×××の不満そうな声が聞こえた

section-another end

167 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 10:08:39.70 ID:y3lFntiW0


「あなたほどの才能を持った人が選ばれないなんて信じられないわ」

あなたの話は信用できないわ、とルイズはライトに対する疑心を語った
ルイズが彼を信用できない要素は二つ
一つは今語った内容で、もう一つはやる夫が口にした「夜神ライトが怪しい」というものからだ

「信じられないのも仕方ないのかもね。正直僕自身も信じられない。でも、君には信じてほしいんだ」

先ほどと違って落ち着きを取り戻したライトは優雅に微笑む
対するルイズはただ腕を組んでじっと彼を睨んでいた

168 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 10:11:56.00 ID:y3lFntiW0


「さきに元凶のマスターの×××と話をつければいいじゃねーか」

ライトが来る数分前、ガッツはぶっきら棒にその疑問を洩らしていた
しかし短気で自己中心的な×××と話をすれば、戦いになりかねないとルイズは判断したために、
先に話の通じそうな夜神ライトと話をつけたのだった

彼女は自分を信じて、やる夫を信じてライトを疑ったが、それと同時にライトも信じていた
夜神ライトがアタリだったとしても温厚で礼儀正しい彼の性格上ここ、つまり学校では
一般人を巻き込んで戦うことはないとルイズは踏んでいた
だが、このままでは収穫を得ることができそうになかった

だからルイズはライトに言った

「ごめんなさい夜神君。どうやら間違えたみたい。じゃあ、」

ライトが気付く暇もなく、驚く暇もなく、悲鳴を上げる暇もなく、後悔する暇もなく

「死んで」

姿を現したガッツの一閃によって真っ二つとなった

169 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 10:17:32.58 ID:y3lFntiW0


「ああ…っ!!!! はあッ!!! はあ……ッ!!!」

ライトの全身から汗が滝のように流れ出す
全身の筋肉が与えられた恐怖によって弛緩したため、ドサッ、と音を立ててライトは床に尻もちをついた
ライトの前にはガッツが真っ二つにした椅子があり、無言で殺気を放つガッツを震えながら彼は凝視していた

「おいッ!!!! 僕は違うって言ってるだろッ!!! じゃあ聞くが何で僕は殺されかけたにもかかわらず、
こうやってサーヴァントを出さずに悠々と話し合いなんかしてるんだッ!!!!」

171 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 10:21:02.67 ID:y3lFntiW0


ライトは激動する胸を必死に押さえながら、懸命に身の潔白を訴える
その姿からはついさっきまでの余裕と優雅さは感じられず、ただ自分の身に降りかかった脅威に恐怖している
無言で見下ろすルイズに息を整えることなくライトは続ける

「僕には夜神家の当主として死ぬわけにはいかないんだッ!!! お願いだから考えなおすんだッ!!!!」

173 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 10:34:28.16 ID:y3lFntiW0


ライトの頼みにルイズは答えるのではなくある質問をぶつけた
「最近話題になってる事件、もちろん知ってるでしょ」

少し息を整え胸をつかみながらルイズを見上げて言った
「ゼーッ!!! ゼーッ!!! ああ、宮藤さんのことは残念だったよ。きっと調子に乗ったマスターの仕業だろうな……ッ
―――――――っておい!!! まさか僕がその元凶だと言いたいのかッ!?」

「さっきまではそう思ってたけどこの状況でサーヴァントを出さないようなバカなマスターなんて、
あなたには似合わないしね」

ルイズは賭けに出たのだ
話し合いで尻尾をつかめないのなら、相手を挑発することで尻尾をつかもうと考えた
もしアタリなら確実にライトを敵に回すだろう
だが、リスクもあればその分のリターンもある
アタリで得られるものは敵の情報とその目的
ハズレでも正義感の強い彼は何か協力してくれるのではないかとルイズは期待していた(ただ、彼が関わりたくないというのなら
ルイズはそれに答えるつもりであり、彼女は決して彼を利用するのではなく、自分と同類である魔術師としての意見が聞きたいだけである)

いくら挑発されようと彼ならここでは戦わないだろうと思っての(ライトが学校で戦いが起こせない理由は前述)
大胆かつ的確にアタリかハズレを当てる方法だった

177 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 10:45:28.23 ID:y3lFntiW0


「私はね、その元凶を知ってるの。×××なんだ……」

「本当なのか……?」

徐々に熱が冷めてきたライトは驚きながら、その真偽を確かめた

「ええ。それで調べてるうちにあなたとそいつにつながりがあるんじゃないかって可能性が出てきてね」

「ああ、そういうことか」

そして、完全に落ち着きを取り戻したライトは立ち上がってズボンの埃をはたいた後、真剣な目つきでルイズを見据えた

「彼は生徒会の女の子を前々から狙っててね。あまりにもしつこいようだから注意してたんだけど、僕はそれを機に彼と仲良くなったんだ」

―――――芳香を追いつめたあいつと仲良く?

ルイズの思考回路が怒りによって支配されていき、彼女はライトを睨みつけた

「仲良くと言っても一緒に下校するくらいだよ。それにこの話を聞いて彼と仲良くする気なんて、毛ほどもなくなったよ」

神経をさかなでるようなことを言って本当にごめん、そう言ってライトは頭を下げた
その言葉にルイズはライトに対して大きな信頼を感じた

「とにかく、僕も彼の横暴には黙っていられそうもない。何か協力できないことはないかな」

―――――――彼はやつとつながってなかったけど、大きな収穫はあった。それになんだかとっても嬉しい

ルイズは嬉しそうに、可愛らしく、一人のマスターとしてではなく、一人の少女として笑みをこぼした

178 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 10:50:30.69 ID:y3lFntiW0


「それとっ! こっちこそ、こんな手荒なまねをしてゴメンなさい!」

深々と頭を下げるルイズに、全然気にしないよ、と笑いながら手を振るライト

「ありがとう…… それで協力してほしいことだけどね。私は放課後に×××を呼び出して話をするの。
もしかしたら×××と戦うかもしれないから放課後5時までに出来るだけ……
いえ!! 絶対にすべての人を学校から帰らせて! おねがいだから!!」

再び深く頭を下げて懇願するルイズ

「ああ!分かった!みんなのためにも君のためにも約束するよ!」

ライトは爽やかに堂々と力強く自分の意思を語ると同時にルイズの両手を握り、真剣で真っ直ぐなまなざしをルイズに向けた

「あ……あう……」

途端にルイズの顔がみるみるリンゴのように赤くなっていった

197 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 17:14:43.10 ID:y3lFntiW0


放課後が始まるチャイムが鳴り教室にいたクラスメイト達がガヤガヤと騒ぎ出す
あるものは帰宅のためにカバンをかたずけ始め、
あるものは部活へ行くために体育館へと足を運び、
あるものは友達との会話を楽しそうに満喫し、
そして、そのうちの一人であるやる夫は、2分前に届いたルイズからのメールを読んでいた

“夜神くんはシロ。それだけじゃなく彼はこれから私たちに協力してくれるの! これから彼はこの件に関してやることがあるから、
絶対に邪魔しないでね! じゃあ、やる夫は多目的教室Tで長門を呼んで待っていてよ!”

            / ⌒  ⌒\
           / (●) (● \
         /   (__人__) \
          |  u.    `Y─┴──┴──┐
           \,,     :|   【メール】   |
           /⌒ヽ(^う  夜神くんは  |
            `ァー─イ.    シロ     |
           /    :|_________|
             /      /
          /      ⌒ヽ
      ___/  / ̄ ̄`)  ノ
     (__r___ノ     (.__つ
やる夫は夜神ライトとは仲が良く、何度も夜神家に招待されたこともあって、彼の性格を知っていたためルイズが彼を信用するのも納得できた

(にしても、このメールからしてルイズはライトにメロンメロンな気がするお)

198 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 17:18:33.24 ID:y3lFntiW0


“わかったお”

すぐに短めの文章をルイズに返信すると、やる夫は目的地の多目的教室Tへと向かうために自分のカバンをかたずけ始めた

「やる夫くん」

そんなやる夫の背中に《彼女》は声をかけた

「どうしたお。戦場ヶ原さん」

   l: :::/:::/: : ;':::: : /'|.:|、: : : : : 、: : : : : :::|: : : : : :ハ
   |:.:::l:.::l: : ::i::/:.:/ |.:| ∨:.: ::、::\: : : :::|: : : : : : :ハ
   |: :::|:::|: : ::|;':.:/、  |.:| ∨: : :::、: :ヽ::、::|: : : : : :i: :|
   |: :::|:::|:: : :|:.:/  \|.:|   \::_:_:ヽ: :\:|: : : : :.;|: :|
   |: ::::|::|:: : :|:/ __.、 |.:ト    '´,_`ー、:::、::|: : : :;イ|:;/
   |: :;ハ:|: : ::|,アマ弐z、ヽ|    ,ィfテマア:::.|: : :/::|ノ'
   |: :{ |:: : :|、 弋z;リ,゛       弋z;リ ,''`:|:/:: :|....
   |: :ヽ_|::|:∧´" ̄         ` ̄゛`ハ:::;'::: :/:|
   |: ::|:.:|::||:::_:ゝ       i:.       ,/:_:/:::_;/:::|
   : ::|:::|::|:::::::∧    、___,    ´人 ̄|::::.:.リ
  : :ノ::::|:|:::::,':::::::ヽ、        ,.ィ´: : \|:: :/
/:/|::::::|j:::/::::::::_;ノ `ヽ、__ ,...イ::::::\: : : :|::/、

199 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 17:22:30.56 ID:y3lFntiW0


威圧するかのように、見下すかのように、超然とした態度で、
それでいてどこか儚げに戦場ヶ原ひたぎは疑問を投げかけた

「あなた、今日元気ないわね。朝、鏡を見てたら、つらくなって死にたくなったとか?」

「いきなり酷いこと言うお…… それに、やる夫はそこまで自分の顔に絶望したことはないお」

「冗談よ。顔は酷いというよりも覚えやすい、特徴的と言った方がいいかもね。妖怪みたいで」

「褒めてるのか中傷してるのかどちらかにしてほしいお」

「中傷しているのよ」

「だんだん死にたくなってきたお」

200 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 17:26:08.87 ID:y3lFntiW0


                   /     . :/         {  ノ、   }   ヽ   ヽ\
                ′   . :       { ハ/  \ {: .   i     丶
                  i    . :/          ト(〃f行ミメ、 八: .   }_」   }
                  |   . :′        |  ゞl以    ヽ _.ノノ}  /     \
                   |  . :/     {: .    |             ィ行ノイ   ト  _ >
                    |/ /  イ    ハ: .   |          、 l以{: : .   }
                  / // }i  / ヽ: .             〉  }: : }
                    /     八 /    \_ {              .: : /   .′
                         )/} 、            -‐ _,    /: :./   /
                  /         . :′ 丶              . : : :/ / ′「実はね、昨日の午後11時半くらいに、友達の家から自宅に帰るときにね
              /   . :/  . : : :′     、        ィ: : : /ィ/
                /   . :/  . : :_:.′             / {`ヽ/              やらない夫くんを見かけたの」
            /   . :/    /Y/             /⌒: :ー.   }
              /   . :/   〈/∧         /: : : : : : .   :}
          /   . :/      V/∧       /: : : : : : : . . :
           -―――{: .     V//; 、      /〉、: : : : : : :  ′
.     /´         : .     '////ヽ    /∨∧: : : : : : ′
  /           ヽ: .    '//////\    ∨∧: : : : : ′
                   ∨: .   i////////\  ∨∧ヽ、:/ヽ、
/                    }: : : . }//////////\ ∨∧//\ \

201 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 17:29:20.42 ID:y3lFntiW0


やらない夫を見かけた、その言葉を聞いたとたんにやる夫の心臓が跳ねあがった

「ほんとかお!?やらない夫は大丈夫だったお!?」

戦場ヶ原に更に迫りよるとやる夫は感情的に言った

「顔が近い。それと唾を飛ばさないでくれる?」

「ごめんお…」

申し訳なさそうに謝るやる夫に戦場ヶ原はハンカチで顔を拭きながら話を続ける

「すごく落ち込んでいたわ。やる夫くんも元気ないようだし、もしかして、やらない夫くんと喧嘩でもしたの?」

「まあ、そんなところだお」

学校ではやらない夫の境遇について知る者はやる夫とルイズ、ドクオ、夜神ライトしかいない
やる美のこと、今後の事件の犠牲者に関しては警察機関および報道機関は沈黙することに決めていた
犠牲者、というよりは自殺者は今回で23人になり、以前真相はつかめないまま。
故に、これ以上の情報公開はいたずらに市民の不安をあおるだけのものと上層部が決めたからだった
同じ孤児院出身同士でかつ、やる夫とやらない夫の先輩であり親友であるからこそ、やる夫はこのことをドクオに伝えたのだった

202 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 17:32:35.76 ID:y3lFntiW0


「知らない人と一緒に歩いてたわ。暗くて顔はわからなかったけど。
私の聞きたいこと言いたいことはそれだけ。早く仲直りしなさいよ。」

そう言って戦場ヶ原は去っていった

終始こちらを突き放すような冷たい口調だったが、それでも彼女はやる夫とやらない夫のことを心配してくれた

――――――――何が何でも街のみんなを、大切な人たちを絶対に守るんだお

悲しみに、後悔に、悲劇に沈む暇があるのなら、ただ前を向いて自分にできる限りのことをやろう
やる夫は今度こそ誓った

203 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 17:35:27.27 ID:y3lFntiW0


空を覆う灰色の雲は完全に太陽の光を遮断し、ルイズが待機する教室内を薄暗くしていた
ルイズは教室の電気を点けようとはしなかった。この後始まる×××との話し合いで一歩間違えば
この学校付近を火の海に、血の海にしかねないという責任感と不安が彼女の中で渦巻いていたため、
単純な行為すら行うことのできる余裕は持ち合わせていなかった

(そもそもあいつとの話し合いが成り立つものなの?)

×××は最近ずっと学校に来ていなかった
彼の尻尾をつかもうとしてもその姿はどこにもなく一切探す当てがなかった
だが、今日に限って彼は学校に来ていた
すぐにでもこれ以上の犠牲者を出さないためには今日しかないという思いで、この教室で彼を待つことにした
ルイズはただ×××に「これ以上の無駄な犠牲者を出すな」と頼むだけの話なのだが
自らの欲望のために《想定外の余計な犠牲者》を未だに出し続ける者がこの条件を飲んでくれる可能性は薄かった
だがそれでも、たとえ戦いになったとしても宮藤や、やる美、多くの犠牲者の苦痛を彼に知らせてやりたいがため
に彼女はこの選択肢を選んだ

204 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 17:38:04.49 ID:y3lFntiW0


大量の水分を蓄えたために今にも降り出してきそうな黒雲がゴロゴロと雷を鳴らした
極度の緊張によりルイズの額から汗が一滴、頬を伝って流れていく

バタンッ!
突然、教室の扉が乱暴に開けらる
扉を開けた男はそのままズカズカと中へ入っていき愉快そうにルイズに言った

「何? 急に呼び出したりして? もしかしてルイズもおれと付き合いたいとか?」

のんきに話し始める男に、ルイズは吐き気と殺意を抑えながら彼に尋ねた

      /             ヽ       ヽ  ヽ
.     /  i              ヽ       ヽ   ヽ
     ,'   !     \   ヽ     ヽ       ヽ  ヽ
     i .|  |   \ i\ゝ_,-i     i        ヽ  `ヽ、
      !l!  ヽ !  ヽ L-ゞf!_ ト、    |  ヽ     ヽ、   ` ー-
     リヽ、,-ヾ、. ‐fソ_,ィ-テリ !     !  ヽ ヽ      \        「あなたが今、町を騒がせている元凶のマスターね。伊藤誠」
       / ヽ`ヽ. /´ ヾァ   |     |l  !ヽ \      \
     /  rヽ 〉ノソ ',      !     !ヽ ヽ \ `ー
    /    ノ し/. ノ     .|    l ヽ、ヽ、 ヽ、 __ \
.   l    r‐ ´   ヽ _  ,-, !    .l _/::::::ー--‐´/::::`:ヽ\
   rL _  i       ` 7 ‐ /     ト/:::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::ヽ ヽ
   |   `ーfァ        /  i     l/:::::::::/:::::::::/:::::::::::::::::::::::::', ヽ
  イ.     |       /  |     |:::::::::/:::::::::〈::::::::ヽ、_::::::::::::i
./ `ー-、 ノ ー、     /   l       l:::::::::i:::::::::::::\::::::::ヾー、_::l
ヽ           i    !    l      l::::::::l::::::::::::::::::::ヽ:::::::`ヽ、`!


206 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 17:40:16.08 ID:y3lFntiW0


その質問に誠は一旦、首をかしげてこう言った

.     /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
     /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : 」_: : / 〈  {} |/  レ  {} }|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|     「マスター? 何のこと?」
   厶ヘ ハ         、     {ハ/ V
      \_!      _ '     !
        ヽ    /   `t   /
      ___,r| \  {    / /
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、
::::::::::::::/:::::::::∧    /二\ |::::::ヽ::::::::::::\
::::::::::::/::::::::::::::∧ヽ  /: : : : :}ヽ!::::::::::〉:::::::::::::::!

213 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 18:51:19.93 ID:y3lFntiW0


             , -‐ ´      ` ー、
          /            `ー-、
        ,‐´          、      `ヽ、
        f‐             ヽ     ヽ  ヽ
       /        /     ヽ  ヽ  ヽ\ ヽ
      /      _  l       ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i
        l   / /  ヽ l、  ヽ   l ハ/f-f、 }l l、 |リ
      l    l    l_l_lr- {_ゝヽ ヽ  |//fc リ /! /リ
      l   |.:.   } l ハ、=ゞ==リ  /  ムソ /イ 〈
     ノ    l.:.   l イ /´七C、ム/:::::::..    lゝ、ヽ、     (コイツ…… あくまでもしらを切るつもり…?)
`ー−´   _-‐!.:.   ヾ l  弋ソ  ..:::::::::::..    }l  ̄
ー----- f´:::::::ヽ.:.:   ヽ、    ,__ -=   /ヽ、
:.:.:.: _-―‐´、:::::::ヽ.:.:.    ヽ、  /    ̄ノ/!   ヽ、
:.:.:.:ヽ::::::::::::::ヽ、:::::\:.:.:.   ヽ、_ー‐ニ‐´:::::!.:.   ヽ、
.:.:.:.:.ヽ、ヽ:::::::::::ヽ、_::::ヽ、!    ヽフニイ:::/::::::/ヽ:.:.    ヽ
:.:.:./ヽ、ヽ:::::::::::::::::`ー-ヽ.:.    ヽl ll::::l:::::::/::::ヽ、.:.   ヽ
.:.:.:i::::::::::ヽ::\::::::::::::::::::::::}.:.    } l 7::|:::::/:::::::::::}.:.:.    }

その言葉にルイズは誠に対し怒りを込めた目で睨みつける
その威圧に誠は困り切ってしまい、ついには口をつぐんでしまった



214 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 18:55:20.72 ID:y3lFntiW0


気まずい沈黙が教室に流れる。が、すぐさまそれを説いたのは誠だった
彼は大げさにため息をつくとめんどくさそうに口を開いた

「あーあ。しょうがない。ライダー、殺っちゃって」

瞬間、鼓膜を破りかねない程の暴力的な金属音が室内に響く

驚いたルイズは一瞬手のひらで耳をふさぎ、目を強くつむったが、今の状況を確認するため眼前の光景を目視した
そこにはガッツがルイズの前で大剣を盾にして、相手のサーヴァントの拳による一撃を防ぐ姿があった

「ほう…… 元人間にしては素晴らしい反応だ…… いや、元人間だからこそか……」

流れるような黒髪と190センチはあろう、すらりとした長身
そのサーヴァントは身を素早く引き、鉄拳をガッツに向けて放った

「私を退屈させるなよ!元人間!」

215 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 18:59:19.70 ID:y3lFntiW0


敵サーヴァントから放たれる幾度もの拳の雨をガッツは大剣を使って防ぎきる
が、防御によりガッツの肉体面の破壊は免れたものの、殴られた衝撃は大剣に何千回と強い振動を起こし、それが肉体を伝わって彼の脳髄を揺さぶる

―――――腕力がケタ違いすぎる

この攻撃はガッツが持つ近接戦闘における《攻撃力の高さ》というアイデンティティーを
ことごとく凌ぐものだということをガッツに強く認識させた

「ああッ!!!!!」

脳髄への衝撃をものともせずガッツは前方のサーヴァントへと斬りかかる
その一閃は周囲の椅子や机を紙細工のように吹き飛ばしながら敵サーヴァントを追撃する

それでも相手はガッツの猛攻に怯むことなく、すかさず両腰に付けられていた大型拳銃を抜き、片方の銃でその追撃を防ぎ止め、
もう片方の銃ですかさず弾丸をルイズに向けて速射した
空を切る弾丸は5発
それには戦車に大きな穴をあけるほどの魔力が込められている

ガッツは放たれた凶弾がルイズの体を粉々に消し飛ばす前に、彼女の体を目にもとまらぬ速さで抱きかかえる

「きゃっ!」

ルイズの声が聞こえたが、構うことなくガッツはそのまま壁にタックルを入れる
ガッツが壁を破壊すると、床を蹴って前方へと跳んだ

先ほどまでガッツとルイズがいたところには弾痕である《大きな穴》が開いていた
その穴から上がる煙を見ながら誠は、自分の従者へ不満を遠慮することなくぶつけた

「どうしてあの至近距離でマスターごと殺れないんだよ!! 吸血鬼だから強そうだって期待してたのに使えないじゃないか!! アーカードは!!」

220 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 19:16:58.56 ID:y3lFntiW0




                / ' .:/     .:〃.:/       ヽ    .:.l.:.:.:.:.:.:
            /:/ ./   ̄.`X /.:.:.:{  {    ヽ:  ',:. ヽ  .:.!.:.:.:.:.:.
            l :| :.l   .:.:.:/l.:.:l\:∧ :.',    .:.j:. 厶:.-ヘ ̄|`.:.:.:.::
            l :| :.:! | :.:.:.:! ヽ{_ V\ヽ:ハ   .:.:/jイ/ \:.:l.:.:|.:. .:.:.:.
            ヽヘ:.:.从 :.:.:.lィ彡≠=ミ、 ´ } `ー/ ,ィ===ミヽヾ:j  :.:.:.:
              |`ヽ!ヽ:.:.:.{´       _ノ /       ヾくリ :.:.:.:.:     「やっぱりあいつだったのね!!!」
              | :.:ハ.:.:.\ヽ      __'_        ,' :.:.:.:.:.
                ノ_厶| : .:.:l       / `ー─ヘ.        / :.:.:.:.:.:
             厂::::::::: |  .:.:',.     ,' /´ ̄ ̄ヽ l       / :.:.:.:.:.:.:.
            _l:::::::::::::::l   :.:.ヘ     f {: : : : : : : }l    イ  :.:.:.:.:.:.:.
        _ -‐彡j::::::::::::::,′ :.:.:.:.\  ヽヽ ___ ノ/   /〃  :.:.:.:.:.:.:.:
      /  .{:::::::::::::::::::/   :.:.:.:ヽ ヘ、 ` ー一''´ イ/ ,′  :.:.:.:.:.:.:.:
     / .:.:.:./::\:::::::::::/    :.:.:.:.:.:∨\_≧ー-‐≦_/ /i     :.:.:.:.:.:.:.
   〃 .:.:.://:::::::::::\: /    :.:.:.:.:.:.:.l    ∧ ∧    /:::{    :.:.:.:.:.:.:
   { :.:.:/:.:/ :::::::::::::::: /     . :.:.:.:.:.:.:.:.|  ,/ ∨ ヽ /:::::::ヽ   :.:.:.:.:.:.

先ほどまでいた教室を見ながらルイズは激昂する

「あの調子じゃあ、罪悪感なんて全然感じてないだろうな」

呼吸を整えながらガッツは前方を見据え、大剣を構える

「絶対に、絶対に許さないんだからッ!」





221 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 19:21:56.58 ID:y3lFntiW0



杖を構えいつでも応戦できるよう殺気を、意識を前方に飛ばし気を引き締める
そんなルイズの頭に、ガッツは大きく分厚い手の平をやさしく静かに置いた

「マスター、あんたはここにいても足手まといだ。あいつはケタ違いに強い。
おれはあのサーヴァントをここから通さないだけで精一杯かもしれない。
だから、あんたはやる夫たちと合流して隙があれば、あのいけすかないマスターをとっちめてやってくれ」

ガッツは最近言うことを多少聞くようになったものの、ルイズが召喚した時は言うことを一切聞かず
自由気ままに周辺の探索をしていた
それは己の自信の表れであり、事実ルイズは彼の自信に値する実力を十分に見てきたため、
そのことについては一切文句を言わなかった
だがいま彼ははっきりと「精一杯」と自身の実力が及ばないことを認めていた


222 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 19:28:33.11 ID:y3lFntiW0


「分かったわよ……」

ルイズはうつむきながらガッツの頼みを承諾した
―――――――自分に、私にできることをやればいいの

今はもういないあの子の声がふと頭をよぎる
(そうよね。ここは相棒に任せて、自分はもう一人の相棒のところへ行こう)
               /                \
               /        /          :.:.:..丶
             / /  /   :/     \  :.:...   :.:.:.:. ヽ
            ./ /   l   .:.l: /  \ .:.ヽ丶:.:`、 :.:.:.:. ハ
            l  l   | .!.{ :.:.{:._{_,  :._ヽ:斗:ト:.',.:.:.l:. :.:.:.',:.:.}
            |  |   l.:l厶.:イヽ:.ヽ  :.:..ハ.:l_}ヽ..}ヽ|:.:.:.:.:.:}:/
            i  i   :V _ヾ{z=k:ハ..:.:/' ィ戈''〒ヾl:.:.:./∧
           ノ :∧.  :ヽ ,ィf戈. ノ! }.:/  V≧ソ /:/:K:.:.:.ヽ
          / .:/ :ハ   :.:',` ヘ≧=' '´   ´ ̄   イ:.:.:.:.|:.:.ヽ:.:.}     「ガッツ……絶対に死なないでね……」
         / ..:.:/ :.:.:ヘ.  :ヘ .:::::::::::::::::  '  :::::::::::::. !:.:.:.:.l :.:.:.:.:/
       /  :.:.:/ :.:.:.:.:ム  :.:.'、               , ′:.:∧:.:.:.:.{
       ヽ  :.:.:{  :.:.:./ .l   :.:.ト、     '´’   イ:.:.:.:.:./ ヽ_:.:.:ヽ、
         )ノ :.:.ヽ:.:.:.j   !  :.:l. > 、__, ィ'´ /:.:.:.:.:./   `ヽ:.:.::.:.: ̄ `ヽ
     , -一'  :.:.:/ :.∧  }  :.:.:V |  〉く   ./  :.:/      l:.:.::.:.::.:.::.:.: }
    /   .:.:.:.:/ .:.:.{ \/   .::.:.l W⌒ヽ//   /:/      ヽ :.:.::.:.::.:.:.,'
.   /    .:.:.:.:/ .:.:.:.:.l /   :.:.:.:} マ=マ' /  /.:.:ヽ      ∧:.:.:.::.:.:/
   {   :.:.:.:/ .:.:.:.:.:.:./    .:.:.:.人 弋7  {   :.:.:.:.:ヽ___ / l:.:.:.:.:/
   `ヽ :.:.:.:ヽ :.:.:./     .:./   ヽV∠-ヘ   :.:.:.:.:.:\       !:.:.:.:.{
     ノ  :.:.:.} :.:.{    ..:.:.:./    /    ヘ   :.:.:.:.:.: ヽ.     |:.:.:.:.:ゝ __ノ!
 ヾニ二 人 :.:/  :.:.ヽ   :.:.:./    ∧     \  :.:.:.:.:.:.:.j     |:.:.:ヽ:.:_ノ

ルイズは真っ直ぐガッツを見つめて祈るようにつぶやくと、力の限りやる夫の待つ場所へ走って行った

223 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 19:33:52.65 ID:y3lFntiW0


「やる夫!」

ガッツとアーカードの戦いによって校舎が破壊されていく音の中で、ルイズはこちらに向かってくるやる夫に向かって叫んだ

       ________
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  / o゚((●)) ((●))゚o \    「ルイズ!! 大丈夫だったかお!?」
  |     (__人__)     |
  \     ` ⌒´     /

あたふたと心配するやる夫を見てルイズは「平気よ」と胸を張って言った

「でもね…やはり伊藤誠がこの事件の元凶だったわよ。酷いことをしているのにも関わらず何とも思ってないようだったわ。」

「そうなのかお…」

やる夫はコブシを固く握りしめることで、伊藤誠に対する今にも爆発しそうな怒りを必死に抑えた

224 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 19:37:57.92 ID:y3lFntiW0


口内に響き渡る凄まじい発砲音とコンクリートを容赦なく削る音が、その戦いの激しさを物語っていた

「今はガッツが伊藤誠のサーヴァントを足止めしているわ。恐らく、あいつらの周りにいたら確実に巻き込まれるから、
伊藤も私たちと同じようにサーヴァントのもとから離れてるわ。だからその間に伊藤を捕まえるのよ!」

「任せるだお!」

片手に握りしめられた日本刀(戦闘が起きた時のために、あらかじめルイズがやる夫の待機場所に隠しておいたもの)をやる夫は横に振り払う

そして、やる夫はルイズの先頭に立って憎むべき、排除すべき、償わせるべき害悪の所在を探し始めた

225 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 19:42:35.41 ID:y3lFntiW0


「長門とライトくんは?」

心配そうな表情でルイズは二人のことを尋ねた
ちなみに、ルイズの夜神ライトに対する呼称が、いつの間にか《くん》付け(しかも名字じゃなく)になっていたものの、
やる夫にはツッコむのが面倒だったため、あえてスルーすることにした

「ライトはさっきメールで“僕は無事に学校中の人たちを帰らせた。だから僕は帰らせてもらう。また明日学校で”、
って送ってきたお」


もしライトが学校にいる人たちに魔術による暗示をかけて帰らせていることが伊藤誠にばれたら、確実に彼はただでは済まないだろう
だが、そんなリスクを冒してまで彼はこの学校にいる人たちの安全を少しでも保障しようとした
ライトは人一倍正義感に燃える人間だった
しかし、いざサーヴァント同士の戦いが始まったなら先ほどのリスクが可愛らしく思えるほどの死の境地に
彼は立つことになる
いかにライトといえどそればかしはキツイものだった

「やる夫はそう考えているお!だからライトのことは責めないでほしいお!」

「それくらいわかってるわよ!で、長門は」

無責任なんて思わない、と意思表示したルイズはすかさず疑問を口にした

「ガッツのところへ行ったお!長門は強いお!だから絶対に負けないお!」

「精一杯」とガッツは言ったがはたして長門の協力でどれだけ戦況が変わるのだろうかとルイズは思った

227 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 19:47:01.95 ID:y3lFntiW0

section-another

::::::::::::::::::::::::::::!./ノ //:::::::::|_
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:::::::::::::::::::::::::::::::ノ::/. .. /::::::::!
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::::::::::::,ヘ::::|  ヾ |:| ヽ、:::ノ/ ,ヘ |
:::::::,、::! |::::|  |! ||  ヾ三ノヾ !
ト、:i| |:|. |::::!  _リ_,. }ミ| } /
 |:|. |:| |:/ /´ _,,,,-‐''  ミ| ノ
 !:| .jノ / ノ ∠= ッ   ,ミ/ /
 |:!  //  /  u | / 「がああああああああッ!!!!!!」
ヾヽ/_/(・) /    |-'
__ゝ-ッ' -― '´  / |
 彡 三≡   / / l|
 |  u    u ;;ノ /|
ー' 、==   _;;; ,'
   ノ __,. 、ヽ   /
__,∠r''ユ⌒}  , /
┴''"  /` フ  //
   _/ヽ/  //
ニニノヽノ  /
工⊥‐''´  /
___..ノ /
  ___/:::
獣のような叫び声をあげガッツはアーカードへと横からの一撃をたたきこむ
だが対するアーカードの方がそれよりも獣じみていた
否、獣そのものだった

228 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 19:52:27.08 ID:y3lFntiW0


アーカードはガッツの一撃を片手の銃身で弾くと同時に、もう片方の銃をすばやく床に放り投げ、素手のまま拳を放つ
ガッツはわざと体を後ろへ崩すことで、頭部を《殴りつぶし》に来た鉄拳を紙一重で避ける

刹那、ガッツの瞳に楽しそうに口を歪めるアーカードの姿が映った

そして、そのまま放たれた拳は平手へと形を変えガッツの胸ぐらを荒々しくつかむとアーカードはアゴがあずれんばかりに口を開き
吸血鬼の象徴であるその鋭利に尖った歯をガッツの首へ向けて突き刺そうとする

「コード1241」

突如、今まで魔術によって姿を隠していた長門が現れ、魔術を詠唱するとアーカードの頭上にバレーボール程の二つの光の弾が形成される

「―――――――ッ」

アーカードがガッツの前から全力で跳躍した瞬間、先ほどまでアーカードがいた空間が二つの弾から発射された光の槍で貫かれた

「コード32、アクション01」

アーカードが跳躍から床へ着地して態勢を整えるのを待たずして数千もの光の剣がアーカードを囲み
容赦なく光の槍を発射した

229 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 19:57:18.22 ID:y3lFntiW0


アーカードがいた空間である校舎半分はあとかたもなく瓦礫と化し、そこから見えるものは
長々と上がる煙しかなかった

「ありがとよ、長門」

「別に構わない」

瓦礫の前に立っている長門へとガッツは感謝の意を示した

昨夜の戦いでガッツは炎髪の少女のサーヴァントに油断をしていたため、長門に救われることとなった
だが、この戦いでガッツは八割の実力を出しきってなお長門に救われる羽目となった


長門が来たことによって戦況は多少なりと良い方へ傾いたのは確実であり、
アーカードが生きていたとしても校舎を瓦礫に変える攻撃を受ければかすり傷ではすまないことも明確だ

それでもガッツはアーカードが普通のサーヴァントとは違って思えた

(何なんだこの違和感……)

長門も何か納得のいかない顔をしていた

230 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:03:02.51 ID:y3lFntiW0


「それは恐怖というものだ」

長門の背後から姿を現した傷一つないアーカードは楽しそうに語りかけた

(いつの間に……!)

奇襲に気付くことなく虚を突かれた二人

「コード2、ぐ……ッ!」

呪文を言いきるのを待たずして、アーカードの蹴りが長門の腹部へ炸裂する

とっさに長門は腹部に魔力を一点集中させ吸血鬼の暴力を緩和したものの、その努力も虚しく、
めり込んだそれは長門のあばら骨を粉々に粉砕し、内臓器官を滅茶苦茶に押し潰し
その衝撃が背骨を真っ二つに叩き折る

そして冗談みたいに軽々と少女は廊下の突きあたりの壁まで蹴り飛ばされた

「あああああああッ!!!!!」

力の限り叫ぶことでガッツ派自分自身の中で芽生えていたアーカードに対する《恐怖心》を麻痺させ、
左手の義手を前に向けて、それに装着された連射式ボウガンを全弾発射する

それを見たアーカードは獣のように姿勢を低くして、降りかかる矢の雨の中を獣のごとくジグザグに疾走することで、
それらを回避していく
ガッツは止めることなく矢を放ち続ける

(かなりヤベえじゃねえか……!!)

232 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:06:38.71 ID:y3lFntiW0


アーカードはガッツと開いていた距離を45メートルから20メートルへと縮めていた
イビツ
歪に、禍々しくその口を歪めると吸血鬼は瞬時に加速する

―――――――ガッツまでの距離15メートル

発射していたボウガンの矢が無くなると、足元に突き刺しておいた大剣を素早く抜き、向かい来る破壊者へ構え始める
が、ぐらり、とガッツの意思に反して体が横へと傾いた
「まず……っ」

以前アーカードの攻撃を防いだことによってガッツの脳髄が揺さぶられたのを吸血鬼は思い出す
「中々楽しめたぞ」

―――――――ガッツまでの距離10メートル

アーカードは過去形で感謝すると姿勢を崩したガッツへ銃弾を4発撃ちこむ
それを大剣ですべて防いだものの衝撃までは防ぐことができず、ガッツは廊下に倒れこんでしまう
その拍子で大剣はぎりぎり手の届かない位置へ音を立てて倒れこむ

―――――――ガッツまでの距離5メートル

ガッツは胸のポケットにしまわれた五本の小型ナイフを迫りくる怪物へ向けて投擲する
だが、放たれたナイフはアーカードの腕によってたやすく弾かれる

―――――――ガッツまでの距離1メートル

大剣による迎撃もできず、ボウガンの矢は完全に尽き、ナイフは全て弾かれ、祈るように
ガッツは胸のポケットにしまわれた短刀を構え、超越者と対峙する

233 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:10:43.27 ID:y3lFntiW0


「そんな貧相なもので……っ」

アーカードはつまらなそうに呟いて短刀の刃を粉々に叩き砕く

ガッツは絶望に満ちた表情で空中に散る短刀の破片を凝視しする

「次はどうする?」

アーカードの指がガッツの両肩にしっかりと食い込み、そこから滝のように血が溢れだしていく
ガッツは完全に逃げることができなくなっていた

―――――――ガッツまでの距離0メートル

「武器さえなければ恐れるに足りんサーヴァントだったな」

言葉とは裏腹に吸血鬼は満足そうに笑ってガッツへと顔を近づけた

235 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:14:52.20 ID:y3lFntiW0

目と鼻の先でアーカードがガッツの頸動脈を残酷に食い破るため、刃のように研ぎ澄まされた乱杭歯をあらわにする
「それではいただこう」
今晩の夕食を前に吸血鬼は嬉しそうに、うまそうに、かぶりつこうとして―――――――
ヾ、 i;;;;;;:;i!;;;;i!;;;;;;:;;;;;;:;;;;;i/;;;;;;:;;i/;;;;;;:;;;;,';;;;;;く:::::::∠二彡-‐';;;;;;:;/ , ';;;;;;;:;;ノ;;;;;;;:;;;;;;;:;;;;;;;:
\ヾ;;;;;:;;;;;:;;;;;:;;;;;:;;;;;:;;;;;:;;;;;:;;;;;:;;;;;:;;;;;:;r-、;;;;;`、:::::::::::::::ノ;;;;;;:;;;;ノ /==='";;;;;;;:;;;;二彡;;;;;
/ゞ〉、;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;:,';;;;;;;i\;;;;;;ヽ::\;;;;;',:::::  彡'" ̄_二;;;;;;:;;; ̄ ̄-ー;;;;;;:;;;;;;:;;;;;;:
/ //;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/!;;;;;;;;;/: ;;;;|;l  ヾ;;;;;;',:::::ヾ;;i    く;;;;'"====='' ̄;;;;;:;;;;;:;;;;;:;;;ノ ̄ヽ、
/ / i::;;;;/ |;;;;;;;;;;;/ | ;;;;;∧ ;;;;;|;|   liヾ;;! :::::!;;!    _三;;;;;:;;,二三三彡;;;;;:;;;;;:_/, ‐-、
| .| |::;;;i |;;;;i!;;;,' | ;;;;;i ',;;;;;;|;!   || !| :::::|;;!    二;;;;:;;;;:;;;;:;;-ー==;;;;:;;;// /二ニ''i
レ'  !;;;;;| !;;;;|;;;;! i ;;;;;|  ',;;;;|!|   |! リ  ::レ::...   ̄''=ー--二三-ー /   /ニ二ゝ|
.)、 ヾ;;! `,;;i;;;;| ',:;;;;;!  ヾ;;i!|        rー--;;;;、_   ...:::::::::::ヾ二三;;|  ノ-ー、  !
{.;;_`ーヾ|   ヾ;;;| ヾ;;;;|   \! /  ,,ノ´;;;r--ー''~      ::::::::::::ヽ三ニ| {    | ノ
  `=、;;_`ヽ、_,ヽ!  ヾ!r====ー''" _;;;∠ -‐ー_         ::::ヽ三! ヽ __,ノ /    「あんたの負けだ」
    `i T'‐- ヾ!  ヾ(_`‐-、r‐tー‐r';‐、-ー'"ソノノl     ノ_r   :::::::::: ヾ )  ./;;;;;
  ___,| `‐==‐''|  ;;;    ::;;;ヾ  `'‐'‐--'//          ノ`''"::::: /  ./ヾ;;;
  |::::::::',    ''"!  ;;           ̄           //:::::::: ,'___ノ::|
  l:::::::::ヽ=-   l==‐                    -‐' v':::::::::  ::l    ::l
  ヽ::::::::::ヽ   !  ;;                  ,、         ノ/ :::|;i
   |:::::::::::|;\  |  ;;                ノ_;>          :l;;|   i
  ノ::::::::::ノ;;;;;;ヽ.,'                           -ー'`'-'::;!;;   |
──ー- 、;;;;;;;/        ヾ                  ̄ ̄- ̄/;;;;!  i
        ヽ(       __ rー'                    ./;;;;;;'  ,'
          `ー-ー、"_ _ ________ _ __ _ゞ         /;;;;;;:;;;'  ,
           ヽ;;;;;;;;;;ヽ` ‐-、-ー_ー _=--‐ '"´        -=,  ´;;;;;:;;;;;:;'   ,'
          `フ;;;;;ヽ 、   ̄  ̄   /          /;;;;:;;;;:;;;;:;;;;:'  ./
              ',;;;;;;;;;;ヽ`` ー―--‐'"          /;;;:;;;:;;;:;;;:;;;:;;;:'
              i;;;:;;;:;;;:l              , ´
                |;;:;;:;;:;;:;ヽ、      ヽ\_   ./
              l      ` ───---ー ' ´
飾っていた絶望をガッツが剥ぎ棄てるのと同時に、左手の義手に仕組まれた大砲が吸血鬼めがけて火を噴いた

236 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:20:22.10 ID:y3lFntiW0


硝煙と血と肉と内臓の臭いが混ざり合い、何とも形容しがたい異臭が立ちこめていた

「ガ……ッ」

苦悶を漏らすアーカードの腹部には大砲による一撃で大きな穴が開いていた
その穴からグチャグチャに焼け焦げた臓器がズルズルと床に落ちていく

「ア……ッ」

何か言おうと吸血鬼は口を動かすが、発声に必要な横隔膜をほかの臓器ごと吹き飛ばされたため、
ガッツにその言葉を伝えることはできなかった

その損傷は確実に時間を待たずしてアーカードを死に至らしめるものであったが、それをものともせずにアーカードは
再び拳をガッツへ放つ

だが、体の三分の一をガッツによって損失したために体の重心が狂い、繰り出された拳はあらぬ方向へと放たれる
その隙を見逃すこともなくガッツは大剣の元へ跳びつき

「ああああああああああああああッ!」

大剣の柄を握ると吸血鬼の背後へ跳びかかり、アーカードを一刀両断した

237 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:26:11.36 ID:y3lFntiW0


アーカードの体は頭上から股にかけて真っ二つに裂かれた
ガッツの大剣と吸血鬼の朱肉が高速で摩擦したため、切り口からはプスプスと音を立てて煙が上がっていた

ガッツは二つに分離したアーカードの亡骸に一瞥をくれると、
ボロ雑巾のように蹴り飛ばされた長門の方へ、手にした大剣を引きずりながら近づいていく

「生きてるか?」

アーカードとの戦闘で生じた疲労と損傷により、一言話すだけでもガッツにとっては苦痛を伴うことだった
血と汗にまみれた手を血だまりに横たわる長門へと向けた

「あばら骨と内臓器官および脊椎を損傷。まだ使用可能な器官には応急の処置を施し、使用不可の器官はスペアと交換」

だから大丈夫、と長門は言ってガッツの手を握った
そのままガッツに引っ張られる形で立ち上がると「ありがとう」とむせながら、つぶやいた
そしてしばらくの間、長門はただ無言でガッツを見つめ続け、そして唐突に口を開けた


238 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:30:05.33 ID:y3lFntiW0


    _/                 \
ー ニ ァ    /   /, /   、   `ヽ.  \
    / ,   〃 /  /' │   :lヽ    ハ   \
  / /  // /  /  │   :| !    i|  l   ヽ
 / イ   l | │ j  ∧     l |\  i| │   \
 l/ |   | l ∧ ハ  l  '.   ハ j  ヽ i| │   } ̄
││  l|│ナ下/-ヽ |  ヾ /_ム'― 弋| │  ! j
 j. │  |i V ,ィテ圷、ヽ   ∨ ィチ示k l:  ト  W 「対象の再生を確認、直ちに戦闘態勢に移る」
    ヽ  |  ハ` Vf:::::i}       Vf:::::i} Y|  ム N
     ヽ |ヘ i l  ゝー'       `ー'' ハ! ,) }i|
      `l ヽム        '         /:/ ルイN
        ',   |ヘ、     ‐       ィ' / / il
        ヽ lヽ >,、       イ/7 /
       \! V厶|>ー <レ_'/ //
          >'´/ノ       L、ヽ
         j-'   | ____   |  \
     ノ¨´     |´  _`ー<|    \

両断したはずのアーカードの死骸を中心に、周りにちりばめられた肉片が不気味にうごめき、黒い砂となって主の元へと戻っていく
まるでビデオを巻き戻ししたかのような光景だった

section-another end

240 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:41:25.74 ID:y3lFntiW0


学校の中心部にあたる中庭に向かってやる夫は渡り廊下を歩いていた
中心部へ向かう理由はやる夫の能力を使えば学校で起きている状況を理解したり、
どこに伊藤誠がいるのかを把握する必要があったからであり、
その能力を効率よく使うには中心部に向かうのが最適と判断したからである

「それにしてもこの刀なんか変だお……」

歩きながら、やる夫は手にした日本刀の違和感をルイズに訴える
        -‐‐'´      `ヽ、
     /             \                /.〉
    /  /         ヽ    \             //
   /  /  /        i ヽ   ヽ             //
  |  /   /   / /     |  i    }          //
  | |   |   / /     /|  _L   |            //
  | |  -:十卅十|ト、/ /レ ィi「 /|   リ          //
  | |   |ィ厂テトミ 从.{ f爪}「 〉|  ィリ         //
  | |   |i {.辷リ      {心リ イ/ィ            //
 / ∧   i|       、 `¨ /   |\        //フ 「その刀はね、たまたま私の家にあったものなんだけどね、
/   i|   ',   ,. - :ァ   ∧  |ヽ \     /}/} }
  / ∧   \  ` -'  イ| \ \∧ }   //_^Y       かの剣豪、宮本武蔵が使っていたといわれる名刀なのよ」
 /  /⌒|    \` ー r<ー┐  \  \|   //_/,.}
./  /::::::::i|    i >rく \:::\.   \  \ /イ/¨´/
   〉:::::::/     iト、//ヽ\|::::::::\   \  | r  /
/ ̄ ̄___ノ i|::::\| Tア|:::::/:::::::\   } |/  /
      ___ノ‐::::::: ∨/:::/::::::::::::::∧ / ∧_ノ\_
     <::::::::::::::::::::::::::::::ゝ::|::/::::ー:::::::::ノ’  |/   イ |
\ \  \ー――‐:::::::::/::::\:::::::/    ∨__/  \
::::::\ \  \::::::::::::::::/::::::∧:/ /     |       \


242 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:44:38.58 ID:y3lFntiW0


ルイズは語り続ける

「何十年、何百年の歳月を得たものには強力な魔力が宿るの。それに魔術による加工を施したから、かなりのワザモノよ」

手にしたときから妙な感覚がしたがこれが正体だったのかとやる夫は納得した

「さすが魔術師の家だお…」

244 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 20:49:16.69 ID:y3lFntiW0


「やる夫に二つ言っておくことがあるわ」

「なんだお?」

「伊藤誠は魔術師じゃないわ」

ルイズの家柄であるヴァリエール家と夜神家は聖杯戦争のシステムを作り出した名門である
彼らは少しでも聖杯戦争で有利になるため、それに参加するであろう魔術師たちの名や評判をみな調べ上げている
しかし、やる夫のように魔術師としての素質があるだけの魔術師ではない人間に関してはまったく情報を持っていないのである

これには伊藤誠も含まれる

「あいつはたいして強くはないだろうけど、油断だけはしないでね」

「分かったお。で、もう一つは?」

「もし、どちらかが一方の足を引っ張りそうになったら構わず見捨てる。誓ってくれる……?」

「……わかったお」

やる夫には納得できなかったが、ルイズが友人として、亡くなった宮藤芳佳のためにも絶対に報わなければならないという
意思が伝わってきたため、首を縦に振ることにした

251 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 21:52:18.94 ID:y3lFntiW0


やる夫たちが中庭に着くと、空を覆う雲から大粒の雨が降り出し、二人のの背中を濡らしていった

         シーク スタート
――――――探索、開始

コンクリートをはねる雨粒の音が響き渡る中で、やる夫は手のひらを地面に置く
そして、そこから今校舎で起こっている状況を読みとる

ガッツと長門の戦況:最悪
戦況の予測:絶対の敗北
伊藤誠の所在地:体育館
強化魔術陣の中心地:体育館

やる夫は手のひらを地面から離すと、心配そうな目を向けるルイズに言った

        /::::::::::  u\
       /:::::::::⌒ 三. ⌒\
     /:::::::::: ( ○)三(○)\    「まずいお…… 早くしないとマズいお……」
     |::::::::::::::::⌒(__人__)⌒  |
      \::::::::::   ` ⌒ ´   ,/ 

252 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 21:55:53.42 ID:y3lFntiW0

*「どういうこと!?」

やる夫の報告を聞いたルイズの表情が一瞬にして険しいものへと変わる

「今、長門たちが戦っているサーヴァントは強化魔術によって、デタラメに強くなってるんだお!
このままじゃ二人とも負けてしまうお!」

「じゃあどうすればいいのよ!?」

大声で叫ぶルイズに、やる夫は落ち着くよう諭しながら言った

「その強化魔術が発動している中心部に行けばいいお! ちょうどそこには伊藤誠もいるお!
だから今から、やる夫たちは体育館に行ってあいつを倒せば、この強化魔術も無くなるお!」

だから急ごうお! と言って、彼らは体育館へ繋がる廊下へと走っていった

254 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 21:59:44.10 ID:y3lFntiW0


「きゃっ!」

体育館の入り口まであと少しというところで、ルイズは廊下に倒れこんだ

ルイズは最近寝ることも惜しんで事件の元凶を探していた
その疲れから、何もない廊下でルイズがつまずいたのも、やる夫には納得することができた

「大丈夫かお!?この戦いが終わったら絶対に休んだ方がいいお!」

やる夫は心配そうに手を差し出す
だが倒れこんだ際にルイズのスカートがめくれ色白く、肉付きの良い太ももがあらわになり、
疲れていたやる夫は思いのほか癒された
         ___
       /     \ キリッ
      /   \ , , /\
    /   ( ●)  (●)\
     |       (__人__)   |    「ほら! 手を貸すお!」
      \      ` ⌒ ´  ,/
.      /⌒〜" ̄, ̄ ̄〆⌒,
      |  ,___゙___、rヾイソ
     |            `l ̄
.      |          |
少女の太ももを何度も見ながら、やる夫は手を差し出した
 

255 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:03:14.56 ID:y3lFntiW0


だが、彼女は立ち上がることはできなかった

ルイズのふくらはぎにはフォークが突き刺さり、その出血による痛みから動くことができなかった


     /  /   l /    ハ      \  、   ヽ  ヽ
    i  /l   l /l   / /  \ ヽ   、 ヽ  i   i i ヽ l
    l  i l  __l_l_l_|i___| ll.    リ i   li__A-ナ、  l l lリ
    l  l  i   l l ヽ\ ¨ヾー-- レl  ナレ l /l / /l/ /
     l ハ  ヽ  ヽ,ヽ- ,==-_   ノ /_,∠、l/ //ノ
     l l ヘ  ヽ  iヾ`(::ヽ-ー)`   ̄ '7ヽつ,ヾィ' '/イ 「やる夫…… 先に行って……」
     リ ヘ  \ ヽ  ̄ ̄ ̄      `ー-'  / / l
     /  ∧ ヘ  \ヽ         丶     .i / lヘ
   / / ヘ i  ヽヽ             / / il \
  / ´    〉 l   ヽヽ   二二ン     / /   l   \
./      / ヘl    ヽヽ 、 _ ¨¨  , ・ '/   /   ヘ   \
    , - 、/  l    ヽヽニ―=、' l¨¨, `l  /    ヘ    \
   /      l     i i\ /ヘ l / l i      ヘ、_    ヽ
  /       l      l l  \ゝ'-'-- 、l l      \ヽ  l l

ルイズの表情は苦痛でゆがみ、呼吸が徐々に乱れていく

256 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:07:27.21 ID:y3lFntiW0


負傷したルイズを見て、やる夫の脳裏に先ほどの誓いが思い出される

―――――もし、どちらかが一方の足を引っ張りそうになったら構わず見捨てる。誓ってくれる……?

そして、やる夫は自分のなすべきことを思い出し、動けないルイズに言った

「ここはやる夫が食い止めるからルイズは急いで傷を治すお!」

ルイズの前に立つとやる夫は眼前の敵へ悠然と刀を構える
その雄姿を目の当たりにして少女はふと思った
               /        /          :.:.:..丶
             / /  /   :/     \  :.:...   :.:.:.:. ヽ
            ./ /   l   .:.l: /  \ .:.ヽ丶:.:`、 :.:.:.:. ハ
            l  l   | .!.{ :.:.{:._{_,  :._ヽ:斗:ト:.',.:.:.l:. :.:.:.',:.:.}
            |  |   l.:l厶.:イヽ:.ヽ  :.:..ハ.:l_}ヽ..}ヽ|:.:.:.:.:.:}:/
            i  i   :V _ヾ{z=k:ハ..:.:/' ィ戈''〒ヾl:.:.:./∧
           ノ :∧.  :ヽ ,ィf戈. ノ! }.:/  V≧ソ /:/:K:.:.:.ヽ   (あれ……? やる夫の背中ってこんなに大きかったっけ……?)
          / .:/ :ハ   :.:',` ヘ≧=' '´   ´ ̄   イ:.:.:.:.|:.:.ヽ:.:.}
         / ..:.:/ :.:.:ヘ.  :ヘ .:::::::::::::::::  '  :::::::::::::. !:.:.:.:.l :.:.:.:.:/
       /  :.:.:/ :.:.:.:.:ム  :.:.'、               , ′:.:∧:.:.:.:.{
       ヽ  :.:.:{  :.:.:./ .l   :.:.ト、     '´’   イ:.:.:.:.:./ ヽ_:.:.:ヽ、
         )ノ :.:.ヽ:.:.:.j   !  :.:l. > 、__, ィ'´ /:.:.:.:.:./   `ヽ:.:.::.:.: ̄ `ヽ
     , -一'  :.:.:/ :.∧  }  :.:.:V |  〉く   ./  :.:/      l:.:.::.:.::.:.::.:.: }
    /   .:.:.:.:/ .:.:.{ \/   .::.:.l W⌒ヽ//   /:/      ヽ :.:.::.:.::.:.:.,'
.   /    .:.:.:.:/ .:.:.:.:.l /   :.:.:.:} マ=マ' /  /.:.:ヽ      ∧:.:.:.::.:.:/
   {   :.:.:.:/ .:.:.:.:.:.:./    .:.:.:.人 弋7  {   :.:.:.:.:ヽ___ / l:.:.:.:.:/
   `ヽ :.:.:.:ヽ :.:.:./     .:./   ヽV∠-ヘ   :.:.:.:.:.:\       !:.:.:.:.{



257 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:11:37.82 ID:y3lFntiW0


敵から銀色に輝く3本のフォークが放たれる。
昨夜のマスターによる剣の投擲と比べれば、避けるのはたやすかったが、避ければ後ろにいるルイズを確実に貫くだろう
それを理解するとやる夫はその銀弾を手にした刀で相手へとはじき返した

「シュッ!」

敵は奇妙なうめき声とともに向かい来るフォークを避けていく
そして、距離を詰めた敵はやる夫の頭蓋へ棍棒を振り下ろした
棍棒は魔力で強化されたものであり、いくら長門の能力で身体強化されているといえど、受ければ確実に頭蓋が砕けるほどの威力を持つ

だが、その一撃もやる夫にとっては遅いもの
やる夫は体を軽く反らすだけでそれを凌ぎ切り、手にした名刀を一閃する

「キッ!」

敵は素早くバク転して、やる夫の反撃を回避すると手にした棍棒を構え、再び得物に狙いを定める

行く手を阻む敵は唯一一人
負傷者であるルイズを背にしても十分戦えるほどの実力をやる夫は有していた

(やる夫なら勝てるお……)

だからこそ、やる夫は勝利を確信するが、

(でも、やる夫じゃ傷つけれないお……)

相手の顔を確認すると同時にそれが無理なことだと決定した

258 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:15:33.92 ID:y3lFntiW0


               _
              /  \―。
            (    /  \_
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         ...―/          _)
        ノ:::へ_ __    /      「ちんちん シュッ!シュッ!シュッ!」
        |/-=o=-     \/_
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      |○/ 。  /:::::::::  (:::::::::::::)
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          しw/ノ___-イ
           ∪

やる夫と襲撃した者は、やる夫と仲の良いジャムおじさんだった

260 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:19:28.45 ID:y3lFntiW0


パン屋『やなせたかし』は街の名スポットであり、そこを経営するジャムおじさんは町の人気者でもある

その温厚な人柄とパン職人としての実力が多くの人間を虜にしていた
その虜となったのはやる夫も同じであり、彼にとっては尊敬する人物にあたった

そして、そんなジャムおじさんをやる夫は傷つけることができなかった
               _
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        ノ:::へ_ __    /      「ちんちん シュッ!シュッ!シュッ!」
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          しw/ノ___-イ
           ∪

261 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:23:50.09 ID:y3lFntiW0


変わり果てたジャムおじさんの棍棒による猛攻をやる夫はただ防ぐことしかできなかった

それは何の技術もないただ叩きつけるだけの攻撃だったが、手を出せないやる夫はそれをひたすら耐えることしか許されなかった
そして攻撃による衝撃で次第に腕の感覚が麻痺していく
                   アイツ
「誤算だったわ…… どうやら伊藤は魔術を使えた様ね…… それに、ちょっとやそっとのことじゃ気絶してくれそうにもないわ」

治癒魔術で傷を修復しながらルイズは申し訳なさそうに言った
ジャムおじさんは魔術により強制的に操られ正気を失ったあげく、
その姿は今までの優しい印象をことごとく覆すような狂気で満ちていた
               _
              /  \―。
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         ...―/          _)
        ノ:::へ_ __    /      「ちんちん シュッ!シュッ!シュッ!」
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       /::::::ヽ―ヽ -=o=-_(::::::::.ヽ
      |○/ 。  /:::::::::  (:::::::::::::)
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          しw/ノ___-イ
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卑猥な言葉を浴びせながらやる夫の頭蓋を砕こうと、闇雲に棍棒を叩きこむ

262 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:27:20.50 ID:y3lFntiW0


とうとうその衝撃にやる夫は耐えられなくなり、手にした刀を弾かれてしまう
それは薄暗い校舎の中で銀色に刀身を輝かせ、綺麗な曲線を描いて床に突き刺さった
               _
              /  \―。
            (    /  \_
             /       /  ヽ
         ...―/          _)
        ノ:::へ_ __    /      「ちんちん シュッ!シュッ!シュッ!」
        |/-=o=-     \/_
       /::::::ヽ―ヽ -=o=-_(::::::::.ヽ
      |○/ 。  /:::::::::  (:::::::::::::)
      |::::人__人:::::○    ヽ/
      ヽ   __ \      /
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        \lヽ::::ノ丿      /
          しw/ノ___-イ
           ∪

そして容赦なく、次の一撃がやる夫の頭蓋に向けて放たれた

263 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:32:25.78 ID:y3lFntiW0


目の前の光景が、自身の思考が突如スローモーションになる

避けるタイミングを完全に失い、この一撃は今までとは違って重々しく感じる
そして、自分に迫る棍棒は瞬きをする間も許さずに確実に自分の命を奪うだろう
この一撃を防げるものはせいぜい自身が持つ二本の腕だけである
だがたとえ、それで防いだとしても腕は頭蓋ごと粉々に粉砕されることは明確であり、何もしなくても結果は大して変わらない

では、自分が死んだらどうなるのか?
今、後ろで自分を信じて見守る少女に残酷な結末が下されることは決定的だ
そして、力尽きたガッツと長門はアーカードに食われることも間違いなしだ
それで、伊藤誠はさらに暴走を続けるのだろう

ジャムおじさんを止めればそんな結末は避けられる
でも、それは大好きな、尊敬する彼を傷つけることになる

大好きで尊敬する一人と、仲間たちや町のみんな、どちらの命が重いのかなど天秤に掛けずとも分かり切ったことだ
しかし、それは天秤にかけていいものだろうか?

「結局貴方は嘘つきなのね」

突然、戦場ヶ原の声が聞こえた

264 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:36:35.50 ID:y3lFntiW0


確かに大切な人たちを守ると約束した。だが、約束である《大切な人たち》を守ることの達成のためには、
《大切な人たち》の一人であるジャムおじさんを傷つけなければならない。これにより大きな矛盾が生じる。
だからこの約束の達成なんて無理だし、それは仕方のないことだ

「ええ、きっと無理でしょうね。でも、あなたは約束が守れないと分かったら、その守れなかった責任から逃げ出すのね。その責任すら取れないのに
図々しくも「守りたい」だなんて言わないで。」

逃げ出してなんかいない。ただ、傷つけないという選択肢を選んだだけだ

「あなたは選択肢なんて選んじゃいない。選ばないだけ。ただ傍観しているだけの偽善者よ。さも、自分が正しいかのような口ぶり、止めてよね、気持ち悪い。」

じゃあ一体どうしろというんだ

266 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 22:40:31.75 ID:y3lFntiW0


                   /     . :/         {  ノ、   }   ヽ   ヽ\
                ′   . :       { ハ/  \ {: .   i     丶
                  i    . :/          ト(〃f行ミメ、 八: .   }_」   }
                  |   . :′        |  ゞl以    ヽ _.ノノ}  /     \
                   |  . :/     {: .    |             ィ行ノイ   ト  _ >
                    |/ /  イ    ハ: .   |          、 l以{: : .   }
                  / // }i  / ヽ: .             〉  }: : }
                    /     八 /    \_ {              .: : /   .′
                         )/} 、            -‐ _,    /: :./   /      「知らないわよそんなの。私に聞かないでよ。
                  /         . :′ 丶              . : : :/ / ′
              /   . :/  . : : :′     、        ィ: : : /ィ/        でも、一つだけ分かることといったら、
                /   . :/  . : :_:.′             / {`ヽ/
            /   . :/    /Y/             /⌒: :ー.   }             このままじゃ貴方は卑怯者として生涯を終えるってことくらいね」
              /   . :/   〈/∧         /: : : : : : .   :}
          /   . :/      V/∧       /: : : : : : : . . :
           -―――{: .     V//; 、      /〉、: : : : : : :  ′
.     /´         : .     '////ヽ    /∨∧: : : : : : ′
  /           ヽ: .    '//////\    ∨∧: : : : : ′
                   ∨: .   i////////\  ∨∧ヽ、:/ヽ、
/                    }: : : . }//////////\ ∨∧//\ \

279 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/06(土) 23:55:00.81 ID:y3lFntiW0


責任から逃げ出し、選択肢を選ばず、傍観者として偽善者として卑怯者として死ぬ。
最悪で最低の終わり方だな。じゃあ、もし選択肢を選んだら?

「どの道、貴方は救われない、あなたの尊敬する人も含めてね。でも、それでも傍観するよりも救われる人はいるのよ」

結局は天秤に掛け、決断をしなければならない
だが、これは約束を守れなかった自分への罪であり義務であり責務でもある

だから―――――――

だから――――――――――


「ごめんおッ!!!!」


やる夫の叫びとともに拳がジャムおじさんへと放たれた

281 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 00:01:34.83 ID:y3lFntiW0


放たれた拳は棍棒の一撃よりも速く、ジャムおじさんの顔面にめり込んでいた

「シュッ…シュッ…」

動きを止めたジャムおじさんの顔面からやる夫はゆっくりと拳を引き抜く
彼の顔面は深く陥没していた
そして、その手から棍棒が落ち、鈍い音を立てて床にめり込むと同時に彼は力なく床へ倒れた

やる夫は沈痛な表情の中、静かに口を開いた

「ごめんお、ジャムおじさん。でも、悪いのはやる夫が無力だったからで、仕方がなかったなんて言わないお」

傷の治癒を終えたルイズは腰を上げると、ジャムおじさんのところへ歩いて行った
       アイツ
「皮肉にも伊藤が施した身体強化魔術のおかげで死ぬことはないわ。でも顔の原形は元に戻らないと思うわ。」

命に別条がないのは喜ぶべきことだったが、接客を生業とするジャムおじさんにとって顔に大きな傷を負うのは致命的なものだった

だがもし、やる夫がこのままやられていたら、その後、一般人であるジャムおじさんは強制の魔術の反動に耐えきれずに死んでいただろう
そして、さらに多くの人たちも伊藤誠の手によって、苦しんだあげく死んでいったはずだ

(ごめんお…… そして、ありがとうだお……)

やる夫はジャムおじさんに謝罪すると同時に、戦場ヶ原の存在に感謝をした

285 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 00:13:00.46 ID:vFSuD47t0


やる夫は窓の近くにあったカーテンを破り取ると、それを失神したジャムおじさんの顔の上に被せた

「行こう、やる夫」

傷を完治させたルイズは立ち上がるとやる夫に言った
ルイズはやる夫の足を引っ張った上に、ジャムおじさんという新たな犠牲者を出してしまったことから、
彼女は酷く悲愴な表情をしていた

二人は歩き出す
そして三十秒もしないうちに体育館の扉の前に立っていた

そこからは、この世のものとは思えないほどのドス黒い欲望が放たれ、
扉越しに二人を威圧した
まるで体育館自体が生物となったかのような圧倒的な存在感
ただそこに立っているだけで壊されてしまいそうな圧迫感

「ここに伊藤が……」

吐き出してしまいそうな不快感を、やる夫は頬を叩くことによって吹き飛ばす

そして、ゆっくりとその扉を開いた

体育館の中は底知れぬ闇によって支配され、グチュグチュと水っぽい音が一定のリズムで刻まれていた

「――――――――」

空間一面に広がる無限の闇
それによってやる夫たちは視力を奪われ、先へと進むことができなかった。そのためルイズは魔術を使うことでその空間にわずかな明かりをともした
そして、消えていた体育館の照明に光が灯されていった

290 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 00:21:56.24 ID:vFSuD47t0


視界を取り戻したやる夫たちの網膜に焼き付いたそれは、なんとも異様で、不気味で、陰湿で、蠱惑的とも言える光景だった

木張りの床には墨で描かれた直径20メートルほどの魔術陣が施され、
その上には汗と唾液と精液にまみれた女子生徒たちが力なく横たわっていた
その数はゆうに20人をこす
その中にはやる夫やルイズの知っている生徒も含まれた
あるものは制服を無残に切り裂かれ、また、あるものはその火照った裸体を無防備に晒していた
彼女らの桃色の花弁からは、破瓜の血が混じった白濁液が蜜壺から抑えきれずに逆流し、その存在を顕示していた

そして彼女たちを取り巻く形で伊藤誠はいた
伊藤誠はやる夫たちの存在に気づくこともなく、一心不乱にその雄々しくそそり立つ剛直で、ひたすら目の前にいる女子生徒の蜜壺をかき回す

後ろから獣のように犯される女子生徒の瞳には生気が感じられず、口からはしがいなく涎を垂らしていた

「あー、イクイク」

伊藤誠は柔らかく弾力を持った女子生徒のヒップを鷲掴みしながら肉棒をさらに押し込むことで、自らの亀頭の先端を子宮口に当てた

「あっ!」
                                               ヨクボウ
叫ぶと同時に女子生徒の体内で伊藤の剛直が脈動し、今まで溜まっていた白濁液がとめどなく噴出した
なすがままに凌辱を受ける少女は白目をむいてガクガクと痙攣する
伊藤はどろどろと煮えたぎった子種を全て出し切り終えると、いきり立った肉棒を花弁から乱暴に引き抜いた
凌辱者から解放された女子生徒はぐったりと床に倒れこみ、焦点の合わない目から一粒の涙を流した
それを見た伊藤は愉快に笑みを浮かべると、彼女に一言つぶやいた

「あー、おまえも孕んじゃっただろうなー。まあ関係ないか、あとで殺せばいいだけだし」

それを聞いたルイズの中で、何かが音を立てて壊れた

331 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 10:24:31.81 ID:vFSuD47t0


ルイズの家系、ヴァリエール家は才能のある魔術師たちを誰ひとりの例外もなく輩出し続ける名門中の名門だった
だがその「才能ある魔術師」の中にルイズだけは含まれていなかった
それは決してルイズには魔術師としての才能がないわけではなく、むしろ彼女の才能は人並みのものであった。
だが、ヴァリエール家の者として生を受けたからには「人並みの才能」は許されるものではなく「とびぬけて人並み以上」でなければならなかった
それ故に彼女はヴァンミディオン家の“恥部”、“欠陥品”、“汚名”として烙印を押されたあげく、
血縁者たちからは失望の念を浴びせられ、同年代の魔術師たちからは嘲笑の対象として侮蔑される幼少期をひたすら耐えながら過ごした

332 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 10:28:25.35 ID:vFSuD47t0

とうとうルイズは血縁者たちから“どうしようもないお荷物”として指定され、留学の名の元、本国イギリスを離れて極東の地である日本で暮らすよう命じられる

そしてその後の日本での生活だが、彼女は日本の学校でとびぬけて人並み以上の成績を叩きだすことができ、
本国で魔術を習っていた時と違い、尊敬や嫉妬、好意の眼差しで見られることが多かった

しかし、皮肉にも彼女の欲しかったものは学生としての成績ではなく、魔術師としての成績であった

そのジレンマが彼女の性格を排他的なものにし、周囲に人気はあっても友達は一人もいないという環境を作り上げた

そんな彼女にできた唯一の友達が宮藤芳佳である

334 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 10:33:23.41 ID:vFSuD47t0


            _. -‐: : ̄ ̄`ー- .、
           /: : : : : : : : : : : : : : : \
           /: : :._イ|: : : : : \: : : : : : \
        /. . :/:八:|: :ト、:.\ :\: : : : : :.ヘ
          /: ./: :/ | |: :| _\ム\: \: : : ヽハ
.        /,イ: : :ム-! |: :|   __ム、K: :\ : : |:ヽ
      /  |: : / _斗、\|   て示X、ヘ: :ヽ:ハ : \
.         |: ハ イてぅ      辷ソ ノ }: :へ : \: :\
           |: 小i{弋ノ            ∨) )|r、. :\: :\
         }: |ハ    '        /ノノ/レ' \:>ー-
        /: /::人    r‐ァ    /丁:/
          //レ  个 、     _. イ|: : |/              「ルイズちゃんもいっしょに遊ぼ!」
              レ\:.> r<  }√`ー─-、.
               ∨ _|  _/:.:.:.://⌒ヽ\
               _ィ「 ̄ ^\:.:.:. /r=ト 、  \: ̄:.:>
             /{:.:〈_/   \//:.:.|  \   |_:/
             ∧:ハ :人/∧   \: !    \ 、\
            { \\:´⌒>、_  |: |     \ ̄\
             |   > ヽ// ヘ ̄:: |          \
             |ヽ |:: ::/\:ヽ  \:/               )
             } | |:.:/  ∨    _ ̄~二>、,___  _ノ
            ノ l レ _,. -‐  ̄      |    ̄
              |    |/            ',
              |   /                 ヽ
              |  _/                     \
               j  ,'                     \
最初、ルイズは宮藤芳佳の一言に対して激しい不快感を感じたが、自分とは異なる誰からも好かれ、誰にも心を開くその純粋な思いに強く心を奪われた。
そして彼女は今まで居場所のなかったルイズに安心できる居場所を作ったのだった

336 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 10:37:46.23 ID:vFSuD47t0


.    / : . :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:ヽ\: ヽ
   / . .:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:イ.:.:.:.:.:l.:.:.:.:.:.ヽ.:.ヽ.:ヽ
   ,′   .,' . . . . :./.:..:.:/ ;:ハ.:.:.:.|ヽ.:.:.:.:.:l.:.:.:.ヽハ
  ,'.:'.:.:.:.:../.:.:.:.:.:.:.:.:/.:././ ;' l.:.:.:.l ヽト、.:l.:.:.:.:.:.',:',
  l.:l.:.:.:.:.:,.:.:.:.:.:.:.:.:/.:././___;'  l.:.:.:.l '"Τヽト、.:.:.:.:l.:',
  l.:l.:.:.:.:.:l.:.l.:.:.:.:.斗7/´ /   l.:.:./ r=::ェ、 }.:.:.N.:.:'、
  ',:l:.:.:.::::l.:.l.:.:.:.:.:/ .zfちホ   lイ/  f:トこ } ∧:.:ト、.:.:ヽ
    l.:.:::::rY.:.:.:./ {! {::仇_'       弋cタ f::/V \.:.:\
   /.:.:::::{ { l.:.:./.  ヾcツ       ,  /// {/      ̄      「私ね! いつかおばあちゃんの診療所を継ぐつもりなんだ! だから病気になったら私のところに来てね!」
.  /.:.::∧:\l.:.:ハ  /////            从
 /.:.::/ ヽ:lヽV:‐へ       f フ   /
_/.:/   ヽ \::{\::ト 、        /
         ヽ __j」.  `   ┬ '
           /:::::::\    l\`:...、
            ノ \:::::::::\   |⌒ヽ.:.:.:.`.:.:.rx          / ̄ ̄`ヽ
        <.:.:.:.:\\:.:.:.:.:\    ヽ.:.:.:.:.:||.:ト         /    ,,...,,}..
      / ̄`丶:.:\\:.:.:.:.:.\___>.:.:.:.jj.:j ,        {   ,'"    ゛',
      /      \.:.\\.:.:.:.:.:.\   |__〃イ V',       ノ  __,'       ',
     ,''"  ̄ ̄  ヽ\ d、二二ニ\ l二イ::| V',   _,. っ / r'  お薬  ヽ
     l            \ 下 ̄ ̄ ̄∨__/::ノ  ', ', / ∠∠__ f         }
     |        \ .\l \______/::夲く /\/      } ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
     ',              ̄\   /:.:.l⌒レ'   ヽ      f            |
      ヽ                \  l.:.://      ヽ___八     /77 Y } /
       \             \_/          >     \ // / ノ ノ/



337 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 10:41:01.60 ID:vFSuD47t0

いつの日か彼女は万弁の笑みで自分の将来について語ってくれた
きっとなれるよ、ルイズは力強く頷いた。明るく、真っ直ぐな彼女の未来を信じて

だが彼女の未来と尊厳はズタズタに切り裂かれ、辱められ、無慈悲な終わりを告げた

そして目の前の男は芳香の前で同じセリフを吐いたのだろうか

―――――――あー、おまえも孕んじゃっただろうなー。まあ関係ないか、あとで殺せばいいだけだし

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

339 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 10:45:17.76 ID:vFSuD47t0


「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

ルイズが伊藤めがけて疾走する。やる夫の全力疾走をも超えるスピードにより、床の板がギシギシと悲鳴を上げる
彼女の拳は魔術によって強化され、それはジャムおじさんの一撃をしのぐ威力を持っていた

「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

それは言葉でもなければ同時に意味もない、前方の害悪にのみ向けられた呪詛であり、叫びであり、
それに含まれるものは抑えきれずに爆発した殺意という感情でしかない

「あん?」

伊藤が気付くのと同時にルイズの鉄拳が放たれる

―――――――速い

この状況なら彼女の鉄拳は確実に伊藤の頭蓋を粉砕し、脳髄を周りにまき散らすとやる夫は直感した

だが、

「何だルイズか。生きてたとか意外だな」

伊藤誠は首をひねることでその必殺を苦もなく軽々と避けると、ルイズの腹部に拳を叩きこんだ

「うっ!」

そして、ルイズは伊藤誠の足元へと崩れ落ちた

342 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 10:53:04.63 ID:vFSuD47t0


「ルイズッ!!!」

伊藤誠の足元で弱々しく苦しそうに痙攣するルイズを見たやる夫は、手にした刀を構えることで伊藤誠との戦闘態勢に移る

    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : _: : : / 〈 {}  |/  レ {}  }|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|
   厶ヘ ハ         、     {ハ/ V      「悪い子にはお仕置きが必要だな」
      \_!      _ '     !
        ヽ   Tニー‐‐‐,‐''  /
      ___,r| \  `二二´ /
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ ´            (⌒)
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、         ノ ~.レ-r┐、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、  ノ__  | .| | |

誠は唇をいやらしく舐めると、自分の足元にうずくまる少女の髪を乱暴に掴んだ
その蛮行を制止させるため、やる夫は誠へと疾走する

343 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 10:58:14.20 ID:vFSuD47t0


        ノ L____
       ⌒ \ / \
      / (○) (○)\
     /    (__人__)   \
     |       |::::::|     |       「やめるおッ!!!!」
     \       l;;;;;;l    /
     /     `ー'    \

やる夫の声を聞きいた伊藤誠は、物でも扱うかのようにルイズを後ろに押し倒した
生じた隙。そして、やる夫が間合いを瞬時に詰めたのと同時に、誠の胴体めがけて高速の刃が一閃される

しかし、相手はそれ以上の速度と威力を以って、やる夫の一撃を無効化した

「おがっ!!!!!!」

誠から放たれた拳はまるで鞭のようにしなり、やる夫の脇腹へと打ちこまれその体を軽々と吹き飛ばす
空中に飛ばされる中、やる夫は体の重心を立て直したあと木張りの床へと着地する
その衝撃により床の木の板が破壊され、その破片が周囲に飛び散った

―――――――なんなんだお、あいつ……?

性能が違いすぎる
能力が離れすぎている
状況が絶望的すぎる
                              キョウフ
やる夫にとってそれはどこかで感じたことのある感覚だった

「何でサーヴァントと戦ってる感じがするんだお……」

345 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:04:29.24 ID:vFSuD47t0


誠は人間離れした力を持ってはいるものの、それはサーヴァントに及ぶほどのものではなかった
そのため物理現象をも容易に捻じ曲げることのできる絶対命令権、令呪を使ってサーヴァントである長門を召喚すれば、
この状況を一転させられることはやる夫もルイズも分かっていた
だが、それを行うことはしなかった
なぜなら令呪を使ってから効果が発動するまでには多少のタイムラグがかかるため、
その間サーヴァントを召喚すると知った誠にやる夫たちが殺されずにすむ確証がなかったから

もう一つの理由はやる夫とルイズの両方が同時にサーヴァントの召喚をできなかったとき。
長門たちは防ぐだけで精いっぱいなのにもかかわらず、片方だけがここに召喚されることは、
残るもう片方の方がアーカードに瞬殺されることを示していたからである

346 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:09:21.76 ID:vFSuD47t0


             ,::=‐ -
           ..::´::::::::::::::::〃⌒ヽ、
      /::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::\
     /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
       /:::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
.        i::::::/::::::i::::::::!:::::::::::::、::::::::::::::::::::::::::',
      |:::/::::::::i::::::∧:::::::::::::ト、::::::::::::::::::i、::l
.      W::::/:::i:::::/__!::::::::::::匕ヽ:::::::::::::ハ:|
      :r'l:::/!::/セミl::::::ハ:::尨_ハ::::::i:::ト、`!
       !/i」:瓜リ !/ W   小ハl  −、_
        / j、八i  ´  j〉   爪i         ハ      「人の楽しみを邪魔しやがって」
       /   ハ jヽ、  t_ア .ィ   !    〉  , !
      /    |  { > __/ ,!   !   〈   / {
     ,     〈 l   t―- 、 / !  i     v /  {
.    /       , 、  \      '   !     レ゙   i
    {   〈`ヽ  j__ \   ヽ  /   〉    {     ヽ
.    〉 \ ヽ ∨ ) }  >= 、 ,`=v   /    ′    ゙,
   |   丶} ;'  厶_/  //  /!  /    ! {      !
   |     ∨ /  /  //  , !  /    }!     @
   {      ′/、 /  〃丶,′! .゙     ヽj       {
   ヽ     〈  ゙ y   /  /、丿イ       〉       ム
   丿   __>、 ′  ′// 丿      ∠         }
   〈_/┌/ `ー‐ー-r匕r''⌒ヽ z―‐t  /ヽ   / 〈
   く /  八        ∧/ ヘ、 く \ `く  |/     `、
.    リ     `,      /  〉  ∧  ぃ   ̄ソ   ヽ
    \   !   /、 /  / j | \ イ

つまらなそうに舌打ちすると、誠は自分の近くでぐったりと横たわる犠牲者の脇腹を蹴りつけた
そのわずかな動作の際に誠の視界からやる夫の姿が外れたことを、やる夫は見逃すことなかった

347 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:13:56.28 ID:vFSuD47t0


           シーク スタート
―――――――探索、開始

生じた隙。そして、少しでも戦況を好ましいものへと変えるため、やる夫は誠の情報を空間から探り出す

―――――――今までよりも最短で最速で情報を導き、必要最低限で必要不可欠な情報のみを収集せよ

今までとは比較対象にならないほどのスピードで情報がやる夫の頭の中を駆け巡る

性格:短気、臆病
性質:堕落、欲望
身体強化:アーカードによる半吸血鬼化および、獣の因子の譲渡
強化魔術陣の破壊条件:伊藤誠の殺害
弱点:水元素による魔術
勝率:0,02パーセント

「がッ!!!!」

伊藤誠の情報を収集することに成功したものの、瞬時に能力を施行したため、鋭い痛みが全身に走る
やる夫は唇を血が出るほどかみしめることでその痛みを我慢した

だが、痛みを克服できたとしても、誠に対する絶対的な恐怖心だけは克服することができなかった

350 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:21:18.22 ID:vFSuD47t0


       ____
.                             /      \
                              /ノ  \     \
                            / (○)  (○)    \
「何で……こんなことをするんだお……」 |  ‖(__人__)‖     |
  \.‖_⌒´ ‖__/

絶対的な脅威に対して勝算を得るための時間を稼ぐため、そして誠の暴走の真意を聞くために、
やる夫は魔術陣の中心にたたずむ害悪に対して尋ねた

「なんでって、そりゃあ楽しいからだよ。」

まるでそれが当たり前のことであるかのように誠は語り続ける
    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : _: : : / 〈  ノ |/  レ ヽ }|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|
   厶ヘ ハ         、     {ハ,;' ((          「まさか、おれに魔術師の才能があったなんてね。
      \_!         '    ! ( ( ヽ)
        ヽ   'ー―--   /  ヽノζ      すごく驚きだよ! おまけにアーカードの力でこうも強くなるなんて……
      ___,r| \         /    | ̄ ̄ ̄|(^)
    /:/::::| \  ヽ _ , ィ ´     | ''..,,''::;;⊂ニヽ      すごいんだぞ!!!」
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、   .| .,,:: ;;;;ン=- )
/:::::::::::/::::::::|    \  /  ! ,r-''⌒^ニ);;;;ヽニノ ヽ

買ってもらったおもちゃを自慢する子供のように笑顔で言うと、そばに横たわるルイズの髪を再び掴んで、そのまま片手で持ちあげる

352 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:29:00.36 ID:vFSuD47t0


   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : _: : : / 〈  {} |/  レ  {} }|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|   (女の子)   「それに魔術も多少使えるようになったから、
   厶ヘ ハ          、     {ハ   /⌒ヽ_ノ) ) )
      \_!      _ '     !!   ,' ;'⌒'ー''´       結界を張ればどこでもオンナを捕まえてヤリまくれるんだ!
        ヽ  \ーェェェェァt   /   | i|   .|
      ___,r| \  、\_ `ヽ /    ノ ,'.!   .i        結界があるからオンナがどれだけ泣き叫ぼうと、
    /:/::::| \ ::::: \_`\ \'、 ./ //   l|
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧\.、_>'´ ノ'´    U        周りには聞こえないし見つからないから便利だろ!?」
/:::::::::::/::::::::|    \  /"''-  `ー一''´

誠は自身の能力を誇るように説明すると、ルイズの顔を床に叩きつけた
ルイズの表情は痛みと怒りで煮えたぎっていた

「アーカードがくれた獣の因子ってやつのおかげかな?二十回射精しても全然いけるんだ!だからオンナ一人につき三十発はノルマだね」

誠はルイズの両手を片手で後ろに縛り上げると、もう片方の手でルイズのシャツを無造作に破っていく

「でもさ……一発ヤっただけで妊娠しちゃうみたいだから、残念だけど殺さなきゃならないんだよね。証拠残ると足が着くからさ。
まあ、殺すと言っても随分慈愛に満ちた殺し方だよ。ヤリ終わった後で飛び降り自殺しろって暗示をかけるだけでいいんだ!」

誠はルイズのシャツを破き終えると露わになったピンクのブラジャーを力任せに剥ぎ取り、破かれたシャツの布をルイズの口の中へ無理やり押し込んだ
布ごと歯を食いしばりながら、ルイズはまばたきするのも忘れて凌辱者を必死に睨み続けた

353 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:33:51.60 ID:vFSuD47t0



 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
|: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|     「ギャル系の女の子には飽きちゃってさ。
|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
: ::_/: : : / 〈 {}  |/  レ {}  }|:./ヽ: : |       礼儀正しくて、大人しく、さらに優しい上に処女の子をヤることにしたんだけど……
:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|
厶ヘ ハ         、     {ハ/ V       全然ヤレないから困ってたんだよ。
   \_!      _ '     !
     ヽ   Tニー‐‐‐,‐'' /            まあ、この方法はちょっと無理矢理な感じだけど、
      \  `二二´  /
      /ゝ、  . __  イ 、 きっかけを与えてくれたアーカードと聖杯戦争には感謝しないとね」
    /ヽ、--ー、__,|-‐´ \─/
   / >   ヽ▼●▼<\  ||ー、.
  / ヽ、   \ i |。| |/  ヽ (ニ、`ヽ.
 .l   ヽ     l |。| | r-、y `ニ  ノ \
 l     |    |ー─ |  ̄ l   `~ヽ_ノ_
    / ̄ ̄ ̄ ̄ヽ-'ヽ--'  /   処女   /|
   .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/|    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| ______
/大人しい /|  ̄|__」/_清楚な子  /| ̄|__,」___     /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/三十発 ̄ / ̄ ̄ ̄ ̄|/  /|   / .|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/l ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| /
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
ルイズの未発達な胸をまさぐりながら、誠は心底愉快そうに口元を歪める
誠への憤怒と何もできない自分を責める感情から、ルイズの瞳からとめどなく涙があふれた

356 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:40:56.36 ID:vFSuD47t0


           ,...::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..、
         ,..::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::、::::、::.,
        /::::::/:::::/:::::/:;::::::::!::,:::::、:::::::ヾ::::::,::.,
        ,:::::::/:::::/:::::/!::ハ::::::i!::ト;:::::、:::::::,:::::ヾ!
.       i::::::/:::::/:::::/ !:! ';:::::! ';! ';::::、:::::::::,::::::::!      『ああ、それとね、一番気持ち良かった子だけどオレとしては宮藤芳佳だったね。
       i::/:!:::::::/:/i!_-i!- ';::::! '!ー-iト!::::::::!::::::i
       レ::!:::::::/i:i i!_-  ';:::i  -__i! ヾ::::::!::::::!    ヤった時のことなんだけど、可愛かったよなあの子。
.       !::::!::::::ィ イ!:::oト     イ!::::o!ヽ !:::::!:::::::!
      /:::::!i!::/ヘ ゙ 弋::リ     弋::シ ∧::リ:::::::::!    あそこまで純粋無垢な子は恐らくどこを探しても、誰ひとりとしていないだろうね。
      /::::イ! iヘ、ー ///   、   /// レイ! ヾヘ::!
     //  ! ヾヘ:.、   ┌─┐   /:イ/       だからさ、泣き叫ぶあの子をズタズタに犯したときはたまらなかったよ……!』
           丶,:::....  ゝ ノ  ...イ:/ /
             丶ヾ`l   _ イ/レ
              ィ::ヲ    ゝト、
          _, 、:::::::::::,      /::::::::::::..- 、
         ,-ヘ::::.. 、:::::::, ̄`  ´7:::::::::::/.ィ⌒ヽ
        /    \:::...、::::, ̄ ̄/:::: ..イ/    _!
       /   !  ' ;::::、:::-ヽ. /...:::-..::::/  i ! / .i
       ! ヽ  i   ゞ:::::::::>=_ィ::::::::::/   i! /  '
.       !  \ i     >ゞ-卞、      レ i   '
       !  !  !    i:::::/  ヾ::::i     ! !.   '
       !   ! !    レ    ヾ::!     ! !   '
       !   ! !    !      丶    ト リ    ,
.      !    V!_ -─   ̄   ̄  ─- _.i <_ニ>  ,
      /     !             、  レ- ̄   .,
     /     !            -  ̄      .ノ
.     /     i!       _ェ:::、 ̄         /
     ,      i    (ーニ   ゙i:::i        ./

357 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:46:24.61 ID:vFSuD47t0


宮藤芳香の名前を聞いたやる夫は怒りに体を震わせ、黙り込んでいたルイズは布を詰められた口内から怒りを込めた声を上げた
誠はルイズのスカートに手をかけるとそのまま引き裂き、ピンク色のショーツが露わになる



    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|      「いや……たまらなかったからついつい六十回も中出ししちゃってさ。
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : _: : : / 〈  ノ |/  レ ヽ }|:./ヽ: : |        宮藤壊れちゃったんだよね。
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|
   厶ヘ ハ         、     {ハ,;' ((        中出し回数以外にもアーカードがくれた魔力に耐えられなかったって線もあるかもしれないけど。
      \_!         '    ! ( ( ヽ)
        ヽ   'ー―--   /  ヽノζ        そんなこと初めてだったからびっくりしちゃったよ!
      ___,r| \         /   | ̄ ̄ ̄|(^)
    /:/::::| \  ヽ _ , ィ ´    | ''..,,''::;;⊂ニヽ    だってさ、泣きながら涎垂らして「あうあうー」しか喋れな……」
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、  .| .,,:: ;;;;ン=- )
/:::::::::::/::::::::|    \  /  ! ,r-''⌒^ニ);;;;ヽニノ ヽ

やる夫は疾走した
もとより勝ち目など見当たらない相手に対して疾走した
それはただ黙ってこの話を聞いていられるほど今のやる夫の精神に余裕などなかったからであり、
何よりこの話を聞いて一番つらいのはルイズに他ならない
このまま話を聞き続けたら彼女は壊れてしまうかもしれないと、やる夫は危惧していた

360 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:54:44.43 ID:vFSuD47t0


疾走の中、やる夫は誠の額に向けて手にしたものを投げ飛ばす
それはスキー板ほどの大きさをした木片であり、先程の着地時に砕けた床の一部であった
木片は呆れるくらい真っ直ぐな直線を描いて突き進む
誠はそれを片手で叩き落とし、やる夫の先制の一撃を無効化する
だが、その攻撃は大振りであったため誠の胴体ががら空きになる
そして、すかさずやる夫は、先ほどポケットに忍ばせておいた文庫本ほどの大きさの木片を投擲する

「―――――――ッ!?」

それが予想外の攻撃だったのか、誠は空いている片方の手で迫りくる木片を撃墜する
その防御により今度こそ隙ができたと判断したやる夫は、トップスピードで相対する害悪に迫っていく

そして今までにないほどの速度でやる夫の元から一閃が放たれた

しかし、またもややる夫の一撃よりも早く、誠の拳がやる夫の腹部に炸裂する
その一撃はやる夫のあばら骨を何本もへし折り、与えた衝撃がやる夫の体を軽々と吹き飛ばした

やる夫は木張りの床を破壊しながら転がっていき、腹部の痛みをこらえながら急いで態勢を立て直すと、再び刃を誠へ向ける
          ____
        /::::::::::  u\
       /:::::::::⌒ 三. ⌒\
     /:::::::::: ( ○)三(○)\     「身体能力が…違いすぎるお……」
     |::::::::::::::::⌒(__人__)⌒  |
      \::::::::::   ` ⌒´   ,/ 

361 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 11:58:37.71 ID:vFSuD47t0


やる夫は戦闘知識および経験に関してほとんど素人同然で、剣の構えも攻撃方法も防御方法すらも、でたらめであり滅茶苦茶である
だが、その欠点をもともとの身体能力の高さと、長門による身体強化によって補っていた

技術を身体面でカバーする。やる夫にとってこの手段はとても効率的で問題ないものだった
しかしそれは誠のように身体面がやる夫よりも激しく強化された者に対しては意味のないものだった

362 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 12:04:33.78 ID:vFSuD47t0


再びルイズの両腕を締め上げると、誠は地団太を踏んで怒りだした
.     /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
     /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !    「あーもう! お前が全然死なないから、
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V    いつまでたってもルイズをヤレないじゃないか!
  < : 」_: : / 〈  {} |/  レ  {} }|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|      もうッ! こうなったらさっさと終わらせるか!」
   厶ヘ ハ         、     {ハ/ V
      \_!      _ '     !
        ヽ    /   `t   /
      ___,r| \  {    / /
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、
::::::::::::::/:::::::::∧    /二\ |::::::ヽ::::::::::::\
誠はルイズを後ろへ突き飛ばす。そしてゆっくりと体を獣のように四つん這いにする
刹那、やる夫の背筋に悪寒が走り、

やる夫に向けて誠は目にもとまらぬ速さで飛び出した
そのときに生じた衝撃は、轟音を立てながら床を粉々に破壊していく
そして、やる夫に防御する暇も与えることなく、彼の鳩尾を打ち抜いた

「――――――――ッ!」

今までの誠の攻撃がお遊びだったと言わんほどの最大最速の一撃

殴り飛ばされる中、激痛と敗北感がやる夫の心を打ちのめした

366 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 12:18:11.61 ID:vFSuD47t0


眼球はチカチカと点滅し、思考回路はショート寸前
呼吸がままならなくなり、酸素不足で死んでしまいそうになる
毛穴と言う毛穴からは生命の危険を伝えるかのように大量の汗が噴き出す
心臓は与えられた衝撃により不規則に鼓動を刻み、全身の血管が裂けてしまいそうな錯覚に陥る
内臓ごと吐き出してしまいそうな不快感の中、足元に吐しゃ物をぶちまけ、喀血を幾度も繰り返し続ける

やる夫は天井を見上げる形で勢いよくその場に倒れた
朦朧と墜ちていく意識の中、やる夫は理解した

        / ̄ ̄ ̄\_
       /:::/:::::::::::\( ;:;:;)
      /( ;:;:;:;:;ノ:::::::<−> \
    (;:;:;:;;;:;  (__人__)   .:::::)    (勝てないお…… 子細工すら通用しないなんて……)
    ./ ||    ` ⌒|||    ,/
   / / |\/ /  /l |  ̄
   / /__|  \/ / | |
  ヽ、//////) /  | |
   /  ̄ ̄ /   | |
____,/  )--- ヽ   ヽ つ

やる夫と誠の間に絶対的な差として存在する身体能力とうものを、やる夫はいかなる手段を持っても埋めることはできなかった


367 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 12:24:00.97 ID:vFSuD47t0

*     ____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  /  o゚⌒   ⌒゚o  \    (やる夫にできることはここまでだったお、芳香ちゃん)
  |     (__人__)
  \     ` ⌒´     /

悔し涙を流しながら、やる夫は好きだった少女の姿を思い出した

すべてを出し切ったにもかかわらず、誰一人も守ることもできず、救うこともかなわずに全てが終わりを迎える
そして、やる夫の視界が徐々に薄れていき、周りの音もしだいに静かになっていく

368 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 12:29:13.53 ID:vFSuD47t0


     /        l    \         \ ヽ
    /       .:/  | |   .:. :ヽ :\   .ヽ   ヽ ',
    / /  .: :| .:/ .:.:| |:   、.:.:.:.\ :.:ヽ   :|  :.:', |
    l l |  .:.: .:.! .:ハ/: :∧|:.:.  :\:.:.:.lヽ:.:.:\:..:|  :.:.:|: |
    | | |:   .:| :.:|_;.|_|_|__乂:.:.: .:`廾十 ト-:、ヽ:|  :.:.:|: |
   lハ ト、 -K´|ヾ! \:|__ `\:.:.:.:.:.}_ヾ!. |:.:.:ハ/l   :.:.!: |
    ヾ;.\:.| ,ィチfテ¨ヾミ、  ヽ.:.:./,ィチ¨ヾミk、{   :.:.|: |      「やる夫ぉッ!死ぬなぁッ!」
     N ヾ ソ{ 代:、ノリ   ノ/  代:、ノリ バ  ..:.:.:|: |
     | ヘ :.',  と);少゙。      と)_,少゙ /  .:. .:.:./: ',
     ∧ ハ :ヘ  ゚ ::::::    ,   ::::::::::: ゚ /  .:.:. .:./.:.: ヽ
     / .:.:.:| :.:',       ______     /  .:.:.:.:.:/:.:.:.:.. \
   / .:.:.:.:.:.|  ヽ      ヽ     /  .:.:.:.:.:/:.:.:.:.\:.  \
. / .:.:.:.:.:.:.:.:.:|  :.:.\     、__ ノ   /  .:.:.:.:.:.:{:.:.:.:.:.:.:.:\:.:. ヽ
/ .:.:.:.:/  ̄ Y  :.:.:.:.> 、      , イ  ..:.:.:.:.:.├─ ー 、:.:.\:. ',
 .:.:.:.:/、   }  .:.:.:.:.:.∨ー-≧ー ≦-'{   .:.:.:.:.:.:.:.|     l:.:.:.:.l:.:. |
 .:.:./  \  /  .:.:.:.:.:.:.:〉  ∧ ∧  |  ..:.:.:.:.:.:.:.:|     |:.:.:.:.|:.:. |

その時、涙で顔をグシャグシャに濡らしたルイズの叫び声が聞こえた。
四つん這いにされ、無理矢理ショーツを引きはがされたルイズは、あと数秒もたたずに誠のそそり勃つ肉棒によって純白を奪われるだろう
守ることができなかった彼女には謝罪の言葉しか思い浮かばない

(出来ることと言えばせいぜい時間を稼ぐか探索能力を使うことぐらいだったお。戦闘に関する心得さえあれば、って…… ん……?)

ふと、気付く。それは“やる夫にできること”がまだ残っているということ
だがそれはやる夫にとって今まで超えたことのない未知の領域であり、それを行ったときの代償が大きいことも予測できた

370 名前: ◆SS3RIxmGnLCW [] 投稿日:2010/03/07(日) 12:37:08.89 ID:vFSuD47t0

(でもルイズやみんなを失うことの方が嫌だお!)

墜ちかけた意識に火をともし、激痛に動かない体に鞭を打ちながら、やる夫は揺らぐことのない鋼の意思を持って立ち上がった

「うわっ!まだ生きていたのかよ!ホントーにしつこいな!」

誠は不愉快そうに口元をゆがめる
そして、たった2秒で15メートルの間合いを一瞬にして5メートルまで詰める
恐らくあと一秒も経たずして、やる夫の命が絶たれることは確実だ
だから、やる夫はその一秒間の間で事を為さなければならない

だから、

.   / ̄ ̄ ̄ \
  /  \   / \
/  (●)  (●)  \             シーク スタート
|    (__人__)     | ――――――探索、開始
\    ` ⌒´    /
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \


390 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 17:31:12.20 ID:vFSuD47t0


探索対象はかの剣豪、宮本武蔵の名刀
様々な記録と情報が、やる夫の中へと流れ込む

製造時:江戸時代
所持者:宮本武蔵
刀身の材質:鋼
斬撃による伊藤誠の切断:可
蓄積された魔力:四百年

違う、探索するのは記録や情報ではない
やる夫が欲っするものは……
さらに奥深くへと思考を潜らせる
そして、その深淵にたどり着くと目的のそれは存在した

「終われよッ!」

誠の甲高い声が響き、誠の左腕がやる夫の頭上めがけて振るわれる
サーヴァントの力を借りた瞬殺の鉄槌
やる夫にとって不可避だった戦慄の一撃
その一撃を

「な―――――――――ッ!!!!」

誠の振るった腕を刀で切断することで無効化した

393 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 17:43:49.46 ID:vFSuD47t0


切断された左腕は周りに血をまき散らしながら宙を舞い、音を立てて地面へと落ちた

「ひゃあああああああああああああああああああああああああ!」

スプリンクラーのように際限なく拭きだされる血を必死に止めようと断面図を押さえながら、誠はやる夫へ回し蹴りを入れる
激痛を耐えての激怒の一撃。誠の脳裏にやる夫の頭蓋を破壊する瞬間が目に浮かぶ
だが、その一撃をやる夫はまるで予測していたかのように回避すると、間を置かずに刀を一閃した
その動きは誠に捉えることができず、為すがままに顔面を斬り裂かれる
                      /\\;:;::;:;:;
             ,;'""\    /\ . \ \;::;:;
             ,'    \/    \  \ .\:;;
.           ___\    /      \ .\ .\;:
       ,. -'´: : : : : :\/ 宮本’s     \  \_\;:
.     /: : : : : : : : : :/     ソード    \/;;;;;;;/
     /: : : : : : :ヽ、/              ./;;;;;;;/
.    /: : /:: : : / : : :-,,,,,           、/ーx,/
   /: : /: : : 斗--、:|: : :ヽ         /r'` \
   |: : |: : : : : |: / \: :.!"l       / \    \     「何なんでだよおおおおおおおおおおおお!!!!!」
   |: : |: : : : /!/^ {} .| :/ ゙! !    /  ./|\:::   \
  < : 」_: : / 〈    |/  ハ    | /゙ヽ: :| \:::   \
  <:: |. 小{   _,,.. -    |   | レ: :.|ヽ:|   \:::   \
   厶ヘ ハ         、 l,   ||{ハ/ V     \:::   \
      \_!      _ ' l,__|| !          \::   \
        ヽ    /   `t   /            \::   \
      ___,r| \  {    / /               \::   \
    /:/::::| \  ヽ U_⌒ ィ ´                  \::   \
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、                   \::   \
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、                 \::   \
::::::::::::::/:::::::::∧    /二\ |::::::ヽ::::::::::::\                \::   \

396 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 17:49:37.77 ID:vFSuD47t0


左腕の断面図からだけではなく、顔面の刀傷からも信じられない量の血液が噴出する
驚きで誠の顔が醜くゆがみ、がむしゃらに全身全霊をかけてやる夫へと右腕だけによる拳の連打を繰り出す
だが、繰り出した時には、やる夫の姿は目の前になく、すでに誠の背後へと移動して、刀身で誠の背中を貫いていた
素早く刀を引き抜くと噴き出した血が、さらに床を真っ赤に染めていく

(何でこんなに強くなってるんだよ……!?)

劣勢だったやる夫が、優勢だった誠を翻弄し凌駕し圧倒していく理由

やる夫は今回、記録や情報の収集を目的とした探索をしたのではなく、刀に記憶されたもの、
つまり所持者である宮本武蔵が経験し、学んできた戦闘知識の獲得を目的としたものであった。
今までのやる夫の戦闘に関する知識と経験は一切なくその欠点を身体能力で補ってきた。その欠点が今回の探索によって完全に埋められたのだ。
故に、いかなる強大な暴力と言えど、卓越した歴代に名を残す英雄の英知と勇気の前では歯が立つはずもなかった。

398 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 18:18:02.82 ID:vFSuD47t0


必死の反撃も虚しく誠の右腕が切断される

「あああああああああああああ!!!!!!」

悲鳴を上げる中、害悪は理解した
今現在、自分はいつものように狩る側の者なのではなく、為すすべもなくただ無残に狩られるだけの獲物なのだと

401 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 18:23:09.54 ID:vFSuD47t0


名刀が横一閃に誠の腹部を切り裂いた
そして、大きく口を開けた腹部からは内臓が水っぽい音を立ててあふれ出し、噴き出した血がやる夫の体を生臭く真っ赤に濡らしていく

: : : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : |-|l―|-ヽ-: : : ヽ: : : : : : :\: :.\
: : : : : : : : : :/\: : : : : : : : :.:|: ハ :|  \: : : :ヽ: : : : : : :.ヽヽ:.\
: :|: : : : : : :/ /l: : : : : : : : ハ:l  |:|二二、ヽ: : : l: : : : : : : : ヽ\: \
: :|: : : : : ://   |: :|: : : : : :j |:l  |:| {::::`ヽ\: : :ト、: :\: : : : :l  \|
: :|: : : : : :|' |   .|: :!: : : : :./ .リ  レ ヽ::::::::} 〉:.:.| ヽ: :ヽ: : : :|
: :|: : : : : :| .| /´l: :|: : : : /     ヽ `ー' ハ:.:j  ト|: :|ヽ:.:.:|
: :|: : : : : :|/-、ヽ|ll:: : : :/    三 ." ̄  V   l ヽ| ヽ :j     「し、死ぬ…… このままじゃ…… お前は、おれを、殺すのかよ…… 人、殺…し」
: :|: : : : : :|{:::::::::ヽlハ: :./;;    \ ゛'         l }|  V
: :ヽ: : : : :| \::::::ノ/V       ヽ         |_/j
: :: ::ヽ :: : lr‐、_,/ "        . j         |_ノ
: :: :: ::ヽト lT~ "  ,   ,                  j
: :: :: :: : | \l     ;;;      ,==ヾ、       /
: :: :: :: : | | |  ;;;          /_,-‐"^ヾ     /
r―― | | |  ″        | |       `ー-/
ヽ  ̄ヽ l | |            | |        /

誠は体を痙攣させながら、焦点の合わない双眸で助けてくれと、やる夫に訴えかける
だが、そんな訴えに気を留めることなく、やる夫は刀を上段に構える、容赦なく誠の体を切り裂いた
やる夫には誠の言葉がしっかりと聞こえていたが、その言葉の意味を理解しようという気は微塵もなかった

ただ、相手の攻撃がどこからどのように出るのか、それをどう凌ぐか、どのように相手へ致命の一撃を与えるか、
それだけが今のやる夫に許された思考パターンであり、それはかの剣豪が戦いの際、殺しの際に使用したものでもあった

404 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 18:30:29.86 ID:vFSuD47t0


やる夫の攻撃は誠の戦闘意欲が無くなった後にもかかわらず行われた
それは誠の身体能力の高さからして傷の回復が早いのでは、という懸念から行われたものであった
そしてその懸念が一切なくなるほどの傷を与えると、やる夫はピタリと攻撃を止めた

「これでここは安全だお」

刀を横に振るって、刀身にこべり着いた血を吹き飛ばす

「ルイズ、大丈夫かお……」

着ていたものをすべてはぎとられ、陶磁器のように滑らで、張りのある肢体を晒すルイズにやる夫は語りかける
ルイズは裸体を見せ付けまいと、その場にうずくまり、ゆっくりと口を開いた
        /: : : : : : : :/ : /: / : : :./ {: : : : : : : : : : 丶  : : : : \丶、: : : :l
.       /:/: : : : : : :.|: | |:./ ヽ: : l 八 :_: : : : : ヽ: : : }\ : : : : : :\:\: :│
      {/|: : : : l: : : |: レl┼─\l {:-ヘ: : : : ヾ斗七7 ̄\: :ヽ: : : l: : l: : |
       j∧: :.:| : : 乂Vァ≧≠=kz∨ヽ: : : : Wz=≠テ≦、 ∧: : |: : l: : |
           lヽ: ヽ : ヘ 〃 fて ,ハ    }:.: :.:/   fて ハ }ト } : j: :∧.:.|
          }: :|\\:.|ヾ 弋っ;辷リっ  j//  c辷う少'〃 //: :,': :ヽ!  「もう……ホントに、ホントに心配したんだからねッ!
.         /: :ハ: :  ̄ {ヽ( う¨¨´      ,      `¨¨( つイ : : : ∧: : : \
      /: : : : ',: : : O°  :::::::::::::::::  ′   :::::::::::::   l◯ : ,' ヽ: : : : \          このッ、バカッ!」
     /: : : : : : ◯ : : : ',       _  __       ,′ : / : : : : : : : : : \
    / : : : : : : : : :∧ : : : ヽ    /´  `´  `ヽ      /: : : / : : : : : : \: : : : :\
   ,': : : : : : : :/ : ∧: : : : :\  {         }   ィ´: : :∧.: : : : : : : : :\: : : : :ヽ
   i : : : : : /: : _;/ ∧: : : : : : > `ー一   ー‐ ' _<:' : : : :.,'::::::ゝ、 : : : : : : : 丶 : : : :',
   { : : : '´: : :/ ::::::::::ヽ : : : : : :\ > 、_  <// : : : : : :l:::::::::::::\ : : : : : : : :.ヽ : : :
   ∨: : : _/:::::::::::::::::::::',: : : : : : : :ヽ \     / / : : : : : : :|::::::::::::::::::\: : : : : : : : ヽ: :

緊張の糸が切れたのかルイズはボロボロと大粒の涙をこぼした

406 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 18:41:16.48 ID:vFSuD47t0


(強がっていてもやっぱ女の子だお……)

やる夫は安心すると、しくしくと泣いているルイズの元へ行こうとする

そのとき、

「ぐッ!!!!!」

血管に熱湯でも注がれたかのような耐えがたい苦痛がやる夫の全身に走る
探索の能力を限界を超えて使用したため、やる夫に然るべき代償が訪れたのだ

(まずいお……)

やる夫は断然寸前まで追い詰められた意識を、何とかして繋ぎとめた
恐らく、やる夫はあと一分もたたない内にここに倒れ伏すだろう
故に、彼にはそれまでにあることをする必要があった
           __
         .-´   ``ヽ
        /  /  #   `ヽ
      / \          ヽ
     / ( ●) ;;# ─    ヽ    「伊藤誠を殺さなきゃならないお……」
     |::  (__   ( ●)    |
     ヽ    (__ノ  ::::      |
       ヽ       .;;#:::    |
      人           /
     /          _ノ
                 |

415 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 19:50:32.86 ID:vFSuD47t0

***

それでは始めます

【注意書き】
なお、この『やる夫が長門を召喚して聖杯戦争に挑むようです』は、基本的に『Fate stay night』をベースにした
内容なので、Fateに登場するキャラクターの能力や話の展開が非常に酷似する部分もあるかもしれないためため、
そういったものが苦手な人は注意してください。
もちろん、「ただのパクリ」ではなく、Fateのオマージュとして書いているつもりですが、そう見えなかったらゴメンなさい

また、このスレに登場するアニメや漫画の主人公やヒロインは、高確率で傷つけられたり、
辱められたり、殺されたり、拷問されたりするので、彼らに思い入れがある人は読む際には気を付けてください。

417 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 19:55:57.12 ID:vFSuD47t0


伊藤誠を処刑する。その宣告を聞いた誠は死に物狂いで弁解する

「お、おれさ…ちょっと調子に乗ってただけ、なんだよ…… だからさ、もうしないから許してくれよ……」

サーヴァントの力を少しでも与えられただけのこともあって、多数の傷受けても、
致死量の出血をしても、誠は口を動かすことができた

「それに、おまえは…人を殺せるのか……?人殺し、だぞ……ッ」

死刑囚はすがりつくように、祈るように言うと血の気を失った土気色の顔をやる夫に向ける

     /.: ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
    /: : :             \
  /: : : :            \
/: : : : : :               \
: : : : : : : :.._        _      \
: : : : : : : ´⌒\,, ;、、、/⌒`        l   「お前からそのセリフを聞けるとは思ってもいなかったお。
: : : : ::;;( ● )::::ノヽ::::::( ● );;:::    |
: : : : : : ´"''",       "''"´       l   それとやる夫はお前のことを人だなんて思いたくもないお。」
: : : : : : . . (    j    )/     /
\: : : : : : :.`ー-‐'´`ー-‐'′    /
/ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : イ\
: : : : : : : : : :.``ー- -‐'"´        \
: : : : . : : . : : .                   \

やる夫の冷淡にあしらう口調を聞いて、誠の瞳は絶望によって支配されていく

418 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20:01:45.56 ID:vFSuD47t0


(そうだ…… 令呪を使ってアーカードを召喚すれば……)

唯一の希望、令呪を使うことで、この場にアーカードを呼んだなら、確実にこの展開は逆転する
だが、その令呪が刻まれた左腕は切断された上に、二十メートルも向こうに横たわっているという事実が、
さらに誠を絶望の淵に追いやった

「お前が長門とガッツを苦しめたのも許せないけれど、二人は聖杯戦争に参加しているサーヴァントだから、
仕方ないかもしれないお。でも、おまえが欲望のために手を掛けた人たちはどうだお。
何で聖杯戦争と関係のない子たちが巻き込まれるんだお……ッ」

やる夫の鬼のような形相を見て、誠は委縮して体を震わせながら黙り込んでしまう

「お前を殺す理由は三つだお。一つはアーカードの能力を底上げする魔術を無効化するため。
もう一つは苦しんでいる人たちと、苦しんで逝った芳香ちゃんややる美たちにとった行動の責任を取らせるため。
もう一つはルイズに酷いことを言った挙句、酷いことをしようとしたからだお。」

そして、やる夫は誠の首をはね飛ばすため、銀色に輝く刀身を構えなおす

420 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20:06:01.33 ID:vFSuD47t0


その時、やる夫の体が一瞬ゆらついた
そのまま刀身を床に突き刺すことで、自分の態勢と呼吸を整える

(疲れているみたいだお…… だからこそ、早くとどめを刺さないといけないお……)

加速する呼吸を抑えようと胸に手を当てる
だが、先に手に当てられたのは胸ではなく“胸から突き出た一本のナイフだった”

       / ̄ ̄ ̄\
     / ─    ─ \
    /  <○>  <○>  \.   「何…… だお……?」
    |    (__人__)    |
    \    ` ⌒´    /
    /              \

胸を貫通するナイフの根元から、勢いよく血が噴出した

422 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20:10:53.25 ID:vFSuD47t0


「全く。任せてみればこのザマか」

その男はいつの間にか、やる夫の背後に立っていた。
突如、視界の中に現れたことから、ルイズはおろか、あの伊藤誠でさえも、その男の登場に驚きを隠せなかった

男の手には銀色に輝くナイフが握られ、その刃がやる夫の胸を串刺しにしていた

「ふんっ」

その男はやる夫の胸からナイフを無造作に引き抜く
そして、穿たれた傷口からは激しい出血が始まり、やる夫は前のめりに倒れた

「やる夫ッ!」

ルイズの叫び声が体育館に響き渡る。それを聞いた誠は下劣な笑みを浮かべると、その乱入者に命令した

「おいッ! ディオッ! 早くあいつを殺せッ! おれは、こんな目に遭ってるんだぞ……!
ぼさっとしてないでサッサと殺せよッ!! この役立たずッ!!!!」

誠の罵倒に男は反応すると、そのまま誠の方へ近づいて行く
そして、血にまみれた誠の口の中に手を入れると、そのまま前歯をへし折った

424 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20:19:28.57 ID:vFSuD47t0


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああッ!」

またもや誠の絶叫がこだまする
その男、ディオはへし折った誠の前歯を投げ捨てると、今度は誠の奥歯に指を添え、
静かにゆっくりと誠に話し始めた
         | /      ヽ    /    / l  \
         ,イ   l   ヽ l  /    /  /   /
        / |   !,、   l l /    /     ノ レ‐i
       /  |  /  `'-  l|    /_,.‐ヽ   /    |
      /  | /  /ヽ/'''''‐、   |´   ヽ_// ヽ  〉  「確かに私のマスターはお前のような下種と協力すると言った。
      |    |  |ミ./  _ `!  レ    l   _ ミ l /
      _,.-‐ヽ |  /-l  /_ミヽ,| __,.-、   レ-‐´ | l く  だが、私はお前と協力するなどと言った覚えはない。
      ´ ̄\`''´ /三l  | r''''''-'''ヽ! |  /三彡-ク  )
       ヽ L_/'/ ̄ヽ l―\:::::ノ-/ /―フi'´/  /  そもそも私のマスターは学校で騒ぎを起こすなと
        | r‐、 ト、,_ |/ ヽ'i `´l / / //'| l/
        ヽ| r-| ノ 、_ 、\、ノ レi l, / /_/_,,. | l,    お前に言ったはずだが……」
         .lヽ 川  ヽ弋;ッ、`ヽ! l:| l_,.ィ;;フノ  人 |
         |. | |り、  `"´ ̄ヽ! |ヽ! ̄`´   | /ヽ|
         | y-| l,      l |  l     |ノ ノノ
         .| ,i、し!  .    l .| /.     | r'´
         |  | `´!     ヽ!___レ      .!.|
       _,.-''i'´l  l   、_,.-ニ-、_,.-   / .|ヽ-------、_
      // | ヽ  ヽ    r`'''''"´,.   / ノ| `''―――-、ヽ
     / /   |  \  \  `"T"´   / / |--、_     \ヽ
    / /    /    \ \      //   |   \      l.L
   //    /       `''‐ヽ、,,,,,,,,,,ノ‐'´    l    ヽ    ヽ \
「いや、その、ルイズにばれちゃったならひと暴れしても別にいいかなーと……」

ディオは誠の奥歯をねじり取ったため、誠は再び絶叫した

426 名前: ◆H0hQhSqISo [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20:28:14.45 ID:vFSuD47t0


ディオはうずくまる誠の口内から指を引き抜くと、全てのものを蔑むかのような口調で話し始めた

「貴様の勝手な行動のせいで私たちの計画が狂ったわけだが、どうやって責任を取るつもりだ?
まあ、それに関してはここを去ってから考えるとして……」

悲哀や慈愛を一切感じさせない絶対零度の瞳が、ゆっくりとルイズの方へ向けられる

「まずは情報収集といくか。痛いのは苦手かい、お嬢ちゃん」

428 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 20:34:00.95 ID:vFSuD47t0


ここにいる誰もがそのサーヴァントの攻撃の気配を一切感じなかったため、
                         アサシン
ルイズはこのサーヴァントのクラスが“暗殺者”であると判断した
だが、情報収集という名の拷問が現在自分に施されようとしていることと、
自分たちのサーヴァントが確実に間に合わないことを悟ったため
ここで得た情報は何一つ無駄なものでしかなかった

429 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 20:38:21.73 ID:vFSuD47t0


 | 三_二 / ト⊥-((`⌒)、_i  | |
 〉―_,. -‐='\ '‐<'´\/´、ヲ _/、 |
 |,.ノ_, '´,.-ニ三-_\ヽ 川 〉レ'>/ ノ
〈´//´| `'t-t_ゥ=、i |:: :::,.-‐'''ノヘ|            「一つ訊く。お前たちのサーヴァントのクラスと真名、
. r´`ヽ /   `"""`j/ | |くゞ'フ/i/
. |〈:ヽ, Y      ::::: ,. ┴:〉:  |/             および固有能力と宝具を教えろ」
. \ヾ( l        ヾ::::ノ  |、
 j .>,、l      _,-ニ-ニ、,  |))
 ! >ニ<:|      、;;;;;;;;;;;;;,. /|       ___,. -、
 |  |  !、           .| |       ( ヽ-ゝ _i,.>-t--、
ヽ|  |  ヽ\    _,..:::::::. / .|       `''''フく _,. -ゝ┴-r-、
..|.|  |    :::::ヽ<::::::::::::::::>゛ |_   _,.-''"´ / ̄,./´ ゝ_'ヲ
..| |  |    _;;;;;;;_ ̄ ̄   |   ̄ ̄ / _,. く  / ゝ_/ ̄|
:.ヽ‐'''!-‐''"´::::::::::::::::: ̄ ̄`~''‐-、_    / にニ'/,.、-t‐┴―'''''ヽ
  \_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ /  /  .(_ヽ-'__,.⊥--t-⊥,,_
\    ̄\―-- 、 _::::::::::::::::::::__::/  /  /   ̄   )  ノ__'-ノ
  \    \::::::::::::::`''‐--‐''´::::::::::/  / / / ̄ rt‐ラ' ̄ ̄ヽヽ
ヽ  ヽ\   \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/      /   ゝニ--‐、‐   |
 l   ヽヽ   \:::::::::::::::::::::::::::::::/           /‐<_  ヽ  |ヽ

感情のこもってない、絶対零度の冷たい声
ディオの手のひらには一本のナイフが握られている。

ルイズに痛みを与えるための、傷つけるための、怯えさせるための、脅すためのナイフ

ルイズは全身の血管が冷たくなってくような錯覚に襲われる。そして、同時に感じる心臓を鷲掴みされたような恐怖
だが、彼女はそれに臆することなく、ディオを睨み返すことで、拒絶の意思を露わにした

そして、ディオはためらうことなく、ルイズの頬をナイフで切りつけた

431 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 20:42:35.22 ID:vFSuD47t0


ナイフによる傷は、非常に深いものだった
ルイズの頬はぱっくりと裂け、その部分から血がドクドクと流れ出していく
頬を貫通したナイフの刃が、舌までも切り裂き、ルイズの口元を真っ赤に染め上げていく

「ッ―――――――――――」

口内にあふれ出す激痛と鉄の味
だが、彼女は必死に奥歯を噛みしめることで、その痛みを懸命に耐えていた

「ほう、こいつに耐えるとは予想外だな。だが、これはどうかな」

ディオは邪悪な笑みを浮かべると、血に濡れたナイフでいつでもルイズを蹂躙できるよう、
その凶器を今度は彼女の×××に突き立てた

その瞬間、ルイズから血の気が一瞬にして引いて行き、
顔を真っ青にすると、振るえるように凍えるように歯をガチガチと鳴らし始めた

その光景を血だまりの中でやる夫は歯を食いしばりながら凝視していた

432 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 20:45:41.64 ID:vFSuD47t0


(動けお!動けお!動けお!動けお!動けお!)

為すすべもなく凌辱される少女を救おうと、やる夫は立ち上がろうとするものの、
指先一本すら動こうとしない

(動けお!動けお!動けお!動けお!動けお!)

幸い、やる夫を襲ったナイフの一撃は急所を外れていたため、大事には至らなかったが
それによる出血と、“探索”の能力を無理矢理使用したことによる反動で、体は動くはずもなかった
ただルイズの真っ白な裸体が真っ赤に汚されていくのを、指を咥えて見ていることしかできなかった

「訊く。お前たちのサーヴァントのクラスと真名、および固有能力と宝具を教えろ」

ルイズは大粒の涙を流しながら、与えられた痛みと、与えられる恐怖に震えていた
だが、その眼には依然としてディオに対する憤怒が存在していた

438 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:07:57.91 ID:vFSuD47t0


「どうやら無駄のようだな」

ディオはつまらなそうにルイズの×××に突き立てていたナイフを離すと、今度はやる夫の方へ近づいていった

「あん、た…… 何、する、の……」

想像を絶する拷問から解放されたルイズは、前かがみに倒れると、逃れようのない激痛に耐えながらディオに尋ねた
だが、ディオはそれを無視して、やる夫の前まで歩いて行き、ゆっくりと腰をおろして、
ルイズの血がこべり着いたナイフをやる夫の口の中へと差し込んだ
そして、首をルイズの方に向けると、再び同じことを尋ねた

「何度でも聞く。お前たちのサーヴァントのクラスと真名、および固有能力と宝具を教えろ」

ルイズの顔から血の気がさらに引いていき、顔の色が真っ青から土気色へと変わっていく
協力者の命の尊厳を取るか、あくまでも情報の絶対厳守を取るか

やる夫はその場にぐったりと力なく伏せているだけであり、反撃もすることもなく、抵抗することもなく、
サーヴァントの蹂躙を受け入れることになるだろう

「……………………………」

そして、訪れる沈黙

439 名前: ◆2JyllcL/Ll/J [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:16:17.79 ID:vFSuD47t0


だがその沈黙は突きつけられた選択肢を選ばないという意思表示ではなく、
情報の保持の決心を表すものだった
ディオは視線をルイズからやる夫へと戻すと、彼女にはっきりと聞き取れる声で大きく頷いた
 '´  _,. -‐'^ヽ  i ヽ┐
 \  l   r'^ヽ \ノ / l_
 \ _/  ,.-、/  ヘ、 //  l
 ,三.l   i-‐‐,! ,!ミr‐v‐<^i ハ
 ーァ'  /__.二/-弋 、 ,ハ¨i l l
 <_ノ`゙ニ_‐-x  )`ヾV ! /
 '´/i _ヽ.\でアミ、.、ノ _,.ォ'"ノ
 ト-'i"  l ` ̄ /-‐キイヲ'´!
   ミ   ,'     '、  l ∨
           \'´_ブ       「そうか!」
 ハ.    i. r'   ,. _`',.l
  i.     ', 弋ニ´-‐‐〈!l
 . i        `¨´ ̄ニ!
   ヽ、   ヽ `¨"´T^!
 ノ    丶、 '、_,,.. 二ノ
 ─----...,,、_`´: :>''´
 :::::::::::::::::::::::::::`ヽ、!

心底嬉しそうに言って、ディオは手にしたナイフを右往左往に大きく激しく動かし始める
すると、やる夫の口から信じられない量の血が噴き出し始める

「これでもか!!!! これでもか!!!!!」

ディオは作業を止めることなく、子供のようにはしゃぎながら、やる夫の口内をナイフで蹂躙していく
やる夫は白目をむきながら、もがくこともせずにその激痛を受け止める
ルイズは自身に駆け巡る激痛に喘ぎ、目の前の惨状に涙し、友を売った浅はかな自分の存在を呪った

441 名前: ◆2JyllcL/Ll/J [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:24:28.51 ID:vFSuD47t0


気が狂いそうな痛みの中、やる夫はこれでいいと思った
自分を心配し、信用し、信頼してくれた心やさしい彼女が無残な目にあうくらいなら、
自分が身代りになった方がいいと思い、体感する地獄に対して満足感を得ていた
だが、その満足感は仮初めのものでしかなく、いつかそれは死という形に還元され、
やる夫の命を奪うことは確実だった

(でも、やる夫にできることはこれが精一杯だから、別にいいんだお……)

やる夫の舌と歯は(以下略)。その想像を絶する責め苦は三十秒間行われたが、
やる夫にとっては一時間に近い地獄として感じられた

「おれが元いた世界で空条承太郎という男がいてな」

突然拷問を止めたディオは何の脈絡もなく話し始め、やる夫の周りを歩きだした

442 名前: ◆2JyllcL/Ll/J [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:32:59.00 ID:vFSuD47t0


「なかなかの強敵でな、全くもって苦汁をなめさせられたものだったんだが、」

ディオは歩みを止めるとルイズの方へゆっくりと向き直った

「何とな、そいつは私を騙し討ちするために、自分の心臓を自分の手で止めたのだ。」

そして、今度は際限なく口内に溜まった血を吐きだし続けるやる夫の方へ方向転換すると、
ディオの体からは精神の分身である人型の者「スタンド」を出現させる

「何故だかやってみたくなってきたな。行うのは私ではないが。きっと痛いだろうが我慢しろ。
まあ私は器用な方であるが承太郎ほどではないのでな。失敗すればやっと死ねるのだから、それほど気にするな」

ディオは邪悪な笑みを浮かべ、言い終える
するとスタンドの手が、やる夫の体の中へ入っていき、真っ赤に脈動する心臓を鷲掴みした

「このぐらいの力と早さかな?」

スタンドの手のひらがやる夫の心臓をもみほぐしていき、やる夫の心拍数が徐々に上昇していく
その上昇は上限を、限界を知ることなく心拍数は二百五十まで上り詰めていく
血管の形がやる夫の全身にみるみる浮き出ていき、それが彼の体をグロテスクに装飾していく
ついには血液の脈動に耐えられなった内臓の毛細血管はボロボロに裂け始め、やる夫の体を破壊していった

「これが最後だ。お前たちのサーヴァントのクラスと真名、および固有能力と宝具を教えろ」

その質問に答えなければ、あと十秒もたたずにやる夫の心臓は破裂し、
体中から血を噴き出しながら果てることは、この場にいる誰にも予想できた

444 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:37:38.44 ID:vFSuD47t0


           : ./ /  #  ;,;  ヽ
           /ノ  ;;#  ,;.;:: \  :
        :  /  -==、   '==-  ..:::::|
              | ::::::⌒(__人__)⌒ :::::.::::| :   (喋っちゃだめだお、ルイズ……)
        :  ! #;;:..    |    .::::::/.
           ヽ.;;;//;;.; ォ  ..;;#:::/
            >;;;;::..    ..;,.;-\
          : /            \

――――――――もし、どちらかが一方の足を引っ張りそうになったら構わず見捨てる。誓ってくれる……?

いつかの、ついさっきの、彼女との誓いをやる夫は思い出す
思い出したからこそ、自分のことは構わないで見捨ててくれとやる夫は思った

そして彼女もその誓いを全うするために
やる夫を救う気などまったくなかった

まったくなかった

まったく

まったく

まったくのはずだったのに

「言うから…… 言うからやる夫に手を出さないで……」

彼女はやる夫を見捨てることができず、洗いざらい全ての情報を提示した

446 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:42:02.34 ID:vFSuD47t0


「貴様らが所有する弱小サーヴァントのことはどうでもいいとして、
黒コートのマスターに炎髪灼眼の少女のサーヴァント、さらにはゲイのサーヴァーントか。
思わぬ収穫が出たものだ」

ディオは満足そうに言って、自身のスタンドを消滅させる

やる夫の眼球には血管がいくつも浮き出て、そのうちのいくつかが破損したため眼球が赤く染まっていた
今のやる夫は呼吸をすることすらままならない状態であり、動くことなど出来るはずもなかった
ルイズは自分が仲間を売り払った挙句、誓いすら守れず、いたずらに壊してしまったことを悔いてその場で嗚咽していた

447 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:46:20.74 ID:vFSuD47t0


「あの…… さっさと殺した方がいいんじゃないですか……?」

ずっと黙りこんでいた誠が口を開いた
先ほどのディオの叱咤が必要以上に効いたのか、誠は終始敬語で口を訊き始める

「いや、もうあいつらの知っている情報全部吐かせたわけでしょ……? だからもし、ここで生かしておいたら……」

当たり前だ、とディオは短く答えると、やる夫たちの息の根を止めるためにナイフを手に取った

449 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:50:37.61 ID:vFSuD47t0


そしてルイズは歩くことすらもままならない激痛を必死に耐えながら、やる夫の元へ這いつくばっていく

: : : : : : : l: : : :/:.:. : : : :| : : ∧: : : :{:.:.: : : : : : :}:./: :.:| :/j:.: : : ;ハ:.:. : }:.:. : : :}.:.:.ハ: :|
: : : : : : : |: : : |:.:l:.: : : : |:.: : |ハ:.: :__|ノ^: : : : : :jハ`ー!-=|:.―/| }-:.:,'|:.:. : : : :.:.:. : :| :|
: : : : : : : |: : : |:.:l:.: : : :∧:.斗‐ハ: ̄:|\:.:.:. : : : : :│///_;∠_j,'L_/ |:.:. : : /:.:.:. :/|/
: : : : : : : |: : : |:.:l : /:|ハ.:.:.!.  \::{  ヽ.:.:. : : : :j/xィ≦ ̄:仆、:::<|:.: : :/|:.:.:. /
: : : : : : : |: : : |:.:ハ:.: : :|  ヽ:{     \ ハ:.: : : :/  {i込 ノイ ∨7:.: :/: j:.:.:/
:.:: : : : : : l、/:l {小_;斗==≠テ斤   ヽ. }.:.:. :/    と)i辷以⌒) /.:/: //{
:.:.:.: : : : : ヘ\: :>:::::;ィiく  ノハ     ノ_:/         `¨  イ:.:.: : : :}:八     「ごめんね……ごめんね……やる夫……」
:.:.:.:.:.: : : : ∨ Z:::xく弋. i{≧ク少             ///// |.:.: : : : i:.: : \
: .:.:.:.: : : : : : ∨ヘ ;ゞ (⌒)¨¨ ̄            ヽ           |:. : : : ∧:.:.:.:.:.:'.
∧:.:.:.: : : : : : ヘ    /////                     i:. : : :∧:.';:.:.:.:.:.}
:.:.:';.:.:.:.:. : : : : : :'、                                ノ : : :/ ∨:.:.:.:./
:.:.:ハ.:.:.:.:. : : : : : :ヽ              _  ‐〜 ⌒}    ': : : : /   ';:.:.:./
:.:.:.: ∧.:.:.:.:.. : : : : : 丶 ()       /⌒´     _. ┘  イ.:.: : : :/     }/
:.:.:.:/:.:.':,:.:.:..:.:.:. : : : : : \        { _  -‐二   イ .:/:.:. : : ,′   /
:.:.:.:.:.:/\:.:.:.:.:.:.:. : : : : : \                / /:.:.: . : : : ,′  ./
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\.:.:.:.:.:.:.:.:.: : : : :>=-     .  _/   {:.:.:. : : : : :|   .ノ

細く、繊細で、そして血で汚れきった手を、ルイズは死者のように全く動く気を見せないやる夫へと伸ばす

「やる夫……やる夫……」

ルイズとやる夫は1メートルも離れていないが、ルイズにとってその距離は何十メートルも遠く感じられ、
自分の手がやる夫へと届く気配は一向にかった

ディオが口元ををゆがませ、楽しそうに言った

「では、これでフィナーレだ」

450 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:53:21.87 ID:vFSuD47t0


やる夫たちの抵抗も虚しく無情にも、終わりの宣告は告げられ、
ディオのナイフがやる夫めがけて放たれようとされ――――――――


‘バタァン!!!’


音がした。体育館の入り口が開く音。ディオは固まってナイフの投擲を見送ることにした
扉を開けた人物はそのまま体育館の中へ片足をずるずると引きずりながら入っていく。
ルイズはその突然の訪問者を凝視し、驚愕の中呟いたのだった

「何で…… やらない夫が……」

451 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 21:55:40.17 ID:vFSuD47t0


やらない夫の外見は以前に見た時と比べ物にならないほど豹変していた
まず、左の眼球が白く濁って、今にも飛び出しそうなほどその球体を外に晒していた
そして眉間から首筋にかけて荒い亀裂が走り、それがやらない夫の表情を醜く歪めていた
さらに片足を引きずりながら歩く様子は、彼の存在を非常に弱々しいものへとおとしめていた

       / ̄ ̄\
     /  ─   \
    ィ赱、     r赱ミ
.    |   (入__,,ノ  i
     |   (  /u  |     「こっ…… がっ……」
.     |   |! |u   }
.      ヽ ι! .|   }
      _ヽ;:i;l 。゚・ ノ_
    ノ   i:;l|;:;::;     \
  /´   ι! :i;l 。゚     |ヽ
 |    l。,j i:i;l 。゚ i!、o     \
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、.
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))

誰の声かとルイズは耳を疑ったが、そのうめき声の主はやらない夫のものだった

466 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:45:19.13 ID:vFSuD47t0



       / ̄ ̄\
     /   ⌒  \
     |  ミィ赱、i .i_r赱
.     | ::::::⌒ (__人__)   「けっ……くっ……」
.     |    u (  /
.     ヽ    u |u"
      ヽ  i:;l|;uノ
       /    く

不気味に歪んだ口元から出された舌はミミズのように、ナメクジのように陰湿に動き回るだけであり、呂律が一切回っていなかった
しびれを切らしたのか、今まで止まっていたディオの腕が動き、ナイフが弾丸のごとく放たれた
それはやる夫に向けてではなく、やらない夫に向けてのもの
             マスター          サーヴァント
だが、その攻撃はやらない夫の前に現れた巨人によって素手で弾かれた

「ふん、新手のサーヴァントか」

ディオは忌々しげにつぶやくと山のようにその存在を堅持するサーヴァントと対峙する
その巨人から放たれる威圧は体育館の中を振動させ、それはルイズの体を駆け巡る激痛を忘れさせるほどのものだった

467 名前: ◆HR7a9HB3zlhx [] 投稿日:2010/03/07(日) 22:50:26.57 ID:vFSuD47t0


「ひゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ」

絶叫がこだまする。それは巨人ではなく、やらない夫から放たれたものであり、彼はその場にいるすべての者から視線を浴びていた
やらない夫はその視線を気にすることなく、体をいびつにくねらせながら叫び続ける。
彼の視線は体育館の中に横たわる伊藤誠の犠牲者たちへと向けられていた

「ひゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ」

巨人がマスターの二度目の叫びを聞くと、瞬時に対峙していたディオへと突き進んでいく
その身長はゆうに二メートルを超すものであり、それが向かってくることは、ディオに重厚なプレッシャーを感じさせた

「見苦しいッ!!!!」

ディオは吐き捨てるように言って、手にしたナイフを向かい来る巨人へ投擲する

473 名前: ◆HR7a9HB3zlhx [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:00:33.24 ID:vFSuD47t0


屈強な巨人へと放たれたナイフは五本。強力な魔力による強化が施されているため、それは力を入れることなく、
なぞるだけでサーヴァントの体をいとも簡単に切り裂くほどの切れ味となっている

だが、その巨人はナイフを素手ですべてたたき落とすと、ディオへと太く、分厚い筋肉で覆われた拳を放つ
その一撃は空間を振動させるほどの暴力を内包し、これによってディオは態勢を崩してしまう

「ちッ!」

ディオは迫りくる予想外の一撃に威圧されながら、後方へと跳躍する。

“アサシン”のサーヴァント特有の俊敏性を備えたディオにとって、繰り出された鉄拳を回避することは容易だった
そしてディオは跳躍の最中、再びナイフを巨人に向け投擲しようと身構え―――――――

突如、巨人の拳から放たれた爆発によりその身を吹き飛ばされた
その爆発は巨人の前方のものをすべて破壊し尽くしたうえに、空間を焼き尽くし、同時にディオの腕を燃焼させた
ディオの燃焼させられていない手には、やる夫によって切断された誠の腕が握られており、
ディオはそれを誠へ投げつけると必死の形相で怒鳴りつけた

「今すぐアーカードを呼べッ!今すぐだッ!」

身体の一部を欠損したという不利な状況の上に、圧倒的な魔力の質と量、
行使される暴力のケタが違いすぎると悟ったが故に、ディオはアーカードの召喚を誠に申しつけた

section-10 end

477 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:10:24.14 ID:vFSuD47t0

section-another

埃の積もった薄暗い一室で、夜神ライトはソファに腰を下ろすと今まで起きたことを回想し、整理し始めた

一か月前、自分は予想どうり聖杯戦争に選ばれることとなった
それは光栄なことであり誇るべきことであった。

だが、彼のサーヴァントのクラスは“アサシン”であることが悩みの種であった
このクラスは他のクラスのサーヴァントたちよりも戦闘能力に関しては著しく劣り、
秀でる点と言えば暗殺にしか能がないことのみ

そのため彼は自分のサーヴァントだけでは、この聖杯戦争を勝ち進むことはできないと判断した

だから、強力なサーヴァントを持った上に、
協力を得やすい他のマスターと手を組むことで自分の状況を好転させようと計画を練った
そして運良く、たまたまマスターとして選ばれ、多少なりと仲の良かった伊藤誠が、
ライトの協力を受けてくれたことも望み通りの展開だった

だが、彼はその見返りに自らの下劣な欲求を満たす餌場を要求してきた。
これは想定内の出来事であったが、彼の欲望は止まることを知らず、
他の正義感を持ったマスターたちに気づかれる結果を生むこととなってしまった
しかし、ライトはそのマスターのうちの一人であるルイズに、自分がマスターではないと欺きとおすことで、
誠との強力な協力関係を維持し続けようとたくらんでいた

480 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:17:07.01 ID:vFSuD47t0


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.    l::|:::::小:Π:/l/-=彡1 /艾ァテ`シ_:ィfチ::/:/
    V::l: :!::l:|い小/|:ハl:|/  `´    { }ノ´
     Y: l:::::`爪|            〈     「ルイズに探りを入れられたときはホントどうなるかと思ったよ」
      }:!: |::|:::l::| \            ‐ _ノ
      ぃ::|::|:::l::|   丶    __, ,/
      |:∧l\:{    \       /
      l′丶 ヽ     ト、_,ノ
     /           ,′
.  /\.____     人_
/  `−――‐‐- 、` ‐ 、  >、x‐ 、
          \     `ヽ ヽ、  | |   \
          \    \ ` ┘!  \ \
ライトは紅茶を一口飲んで、不敵な笑みをこぼした
そんな彼と対面する形で、ソファに座った彼のサーヴァント、ディオは語りかける

「しかし、あの状況で私を呼び出さず、ただ黙っているだけであのマスターを欺いた上、信頼すらも勝ち取るとはな」

ライトはルイズの賭けに自らも賭けで答えることによって、彼女の疑心を信頼へと変えたのだった

482 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:26:02.85 ID:vFSuD47t0


 〉―_,. -‐='\ '‐<'´\/´、ヲ _/、 |
 |,.ノ_, '´,.-ニ三-_\ヽ 川 〉レ'>/ ノ
〈´//´| `'t-t_ゥ=、i |:: :::,.-‐'''ノヘ|                        アーカード
. r´`ヽ /   `"""`j/ | |くゞ'フ/i/    「それにしても誠は、いや、あのサーヴァントは実にいい手駒だ。
. |〈:ヽ, Y      ::::: ,. ┴:〉:  |/
. \ヾ( l        ヾ::::ノ  |、      あれは通常のサーヴァント四体分もの力を有している」
 j .>,、l      _,-ニ-ニ、,  |))
 ! >ニ<:|      、;;;;;;;;;;;;;,. /|       ___,. -、
 |  |  !、           .| |       ( ヽ-ゝ _i,.>-t--、
ヽ|  |  ヽ\    _,..:::::::. / .|       `''''フく _,. -ゝ┴-r-、
..|.|  |    :::::ヽ<::::::::::::::::>゛ |_   _,.-''"´ / ̄,./´ ゝ_'ヲ
..| |  |    _;;;;;;;_ ̄ ̄   |   ̄ ̄ / _,. く  / ゝ_/ ̄|
:.ヽ‐'''!-‐''"´::::::::::::::::: ̄ ̄`~''‐-、_    / にニ'/,.、-t‐┴―'''''ヽ
  \_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ /  /  .(_ヽ-'__,.⊥--t-⊥,,_
ディオは腕を組みながら、手に入れた戦力をほめたたえる

協力関係の目的は二つある
一つは協力関係によって、他のマスターやサーヴァントを殲滅すること
もう一つは誠たちを裏切ること。

ディオの特殊能力である“身体強奪”。これは相手の体に寄生することによって、その体の所有権や能力を奪うもの
そのためアーカードの隙あらばディオはその体を乗っ取ることで、劣っていた自身の能力を底上げしようという算段だった
しかし、マスターである誠が殺されてはアーカードも消滅するしかなく、
頭の悪い誠が勝手に自滅する恐れもライトには考えられたため保険としてディオに誠を、
監視させておいたのだ。
そして、それは彼らにとって正しい選択肢であり、実際に突然の巨人の襲撃の際にも彼を救うことにもなった
「だが、やらない夫のサーヴァントもかなり厄介だ。かならず戦うときはアーカードとともに戦ってくれ」

ライトの命令にディオはそうだな、とだけ言った

484 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:30:58.75 ID:vFSuD47t0


ディオの欠損した腕は、誠が連れてきていた『おもちゃ』の腕を代用品として使っており、
既に彼の体になじんできていた
誠はライトたちとは別の部屋で、アーカードの持つ力を再び分けてもらうことによって、
体中に受けた傷を治していた

それはあと一時間もたたないうちに完治するであろう
そしてルイズはライトの自動治療魔術により、ディオによって傷つけられた体を治していた
                      ,'   ,:    /| i l l. ill. i  ! ,i l:::::::::
                      ,'   /    / l   l. il|i l  ∧メ !::::::::
                     ,'   ,'   . ,'i lハ ', i. ill    X ',、::::::::::
                   ,'f ,' ,'  i i i! ! i l  i il i   i l.l! iヽ::::::::
                    li'}  ハ: ,'i i、! ', ' ヾi  i i  i l l l ! i:::::::r^
                      i!.i ソ il ir !ミ、、 i  !、 ', ! ',l  i ', ',',::::i
                      l i ,' ハ i !! 廴ツ、ヾ  ':、 i i  i !ヽゝ::::l  「彼女はやる夫たちをおびき寄せるための
                      !.li!.l|!| リ ` ェ、..ヾ ヾ、 ヽ:、 i ! ハ、!l ヾ、::l
                    ! !从      """ヾ:、ヾ: 、弌itーマ、:ヽi   重要なカギだからね。丁重に扱わないと」
                     ′ i           .:: ヽ ー`=.公、`:i
、、_                    _,r:::i     rー-‐ '''' ー ‐ --:: 、:ヽ::i
   `''''"'''ー- 、、、、、、、、、 -‐ー''''''' /:::'.     ``¨':':‐:::::::-::::::::、_  ヽ:;::l
               '"       ./" ゙:,  ゙、   ヽ、,..:::::::::::::::/ , ` 、  `
                __,      ',::、   ゙ヽ 、:_:::::::::::r ;´ ' ヽ、  ` -、
         `;;=--‐‐''''""         ',:::、  `'':::::::::::::;: '   i    ヽ、,
        i´          ,      ',::ヽ    ::::;::i  _ -t^ヽ、_   ゙`
           l          i       ヽ::`:ー ':::::i .ノ:i ノ:::::::: 〉
         '          il      ,.ゞ=ー'"メ /::::レ:::::::::::/
           i           il   _ ,ィニ´ ニヽ    ーヽ:::::::::::::::/
ライトの言葉にディオは再び、そうだな、とだけ言った

section-another end

486 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/07(日) 23:39:53.40 ID:vFSuD47t0

***
今日はこれで終わりです

ご視聴ありがとうございます

493 名前: ◆H0hQhSqISo [] 投稿日:2010/03/08(月) 00:17:23.83 ID:0/QJdM5u0

***

ブログです
http://yaji21.blog68.fc2.com/
それではまたの機会に
              ____
              /ヽ,,)ii(,,ノ\
            /( ゚ )))((( ゚ )\
          /:::::⌒(__人__)⌒:::::\
         |  ヽ il´|r┬-|`li r   |
         \  .!l ヾェェイ l!  /     「やる夫がカッコよく見える?
           /⌒ヽゝ    ノ~⌒ヽ
         l             |      まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!」
         | ,Y        Y  |
          |  | ・     ・ |.  |
          |  l         |  |
         | .|     l   ノ  ノ
         {' `\      /  /
         ,>、   ヽ    /  /ヽ
     .   /  \ \  / /   ヽ   ))
    ((  / .   ◆◇◆◇◆   ヽ
     .  /     ◇◆◇◆◇    ヽ
      /      /◆◇◆◇      ヽ
   .  /      / ◆◇◆ \      ヽ
   .. /     /          \     ヽ
    /    /             \    ヽ
    i   /                 ヽ   .i
    |   |                 |   .|
    |   .|                 |  /
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