ハルヒ「世界を!」キョン「革命する力を!」


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4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:04:11.85 ID:sLcYPza8O

序章

いっそ雨でも降ればいいものを、半ば監禁状態にある俺達へのあてつけかと思えるような、ピクニックでもすればそりゃあもう最高に気持ちがいいであろう素晴らしい天気の、ある春の日の放課後のことだ。
おてんと様がその身を焦がして外に出ることの素晴らしさを訴えかけてくれているにも関わらず、悲しいかな、我らがSOS団団長にはこれっぽっちもその主張は届いてはいないらしい。
あいつは例によって、文芸部室にこもっての不健全極まりない活動を俺達に強制していた。
こんな日くらい、健康的な活動をしてみたいものだ。今なら喜んで市内探索に付き合うぜ。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:09:58.79 ID:sLcYPza8O

「何よ、だからさっきから言ってるじゃない。天気がいいから外でやろうって。」

お前がとても外ではできない活動を強制しているから、俺達はこんな辛気臭い部屋に閉じこもっているんだろうが。
いや、文芸部室に居候している身で辛気臭いなんて言い切っちまうのは長門に悪いのかもな。だがこの日の外の空気と比べると余計に、この部屋の空気は辛気臭いと形容したくなるものだった。

「ま、いいわ。あんたみたいな下っ端の意見にいちいち耳を傾けていられないしね。
ほらほら、もう一回最初からいくわよ!」

ハルヒの活動再開の号令で、俺のクレームは強制終了させられる。…まあ、いつものことだがな。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:11:28.48 ID:sLcYPza8O

さて、今回の俺達の活動の不健康ぶりをしばしご覧いただこうか。

「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでゆく。」

まずは古泉が、少女漫画のイケメンがやりそうな、何とも言えない変態的ナルシスト的表情を浮かべながら、髪をかき上げる妙なポーズをとり、これから続く電波数珠繋ぎの先陣を切る。

「…我らは雛だ、卵は世界だ。」

全く抑揚の無い声で続くのは長門だ。
こいつの場合は常にこうだから、話し方からやる気があるんだかないんだか判断できん。
気持ちやる気なさそうな気はするがな。

「せ、世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでゆくっ。」

朝比奈さん、噛まずによく言えました。
しかし、この人はどうしてこうも可愛いのか。朝比奈さんを必死にさせることで、更なる可愛さが引き出されているね。
この異質な台詞にもこのことについてだけは、感謝の念を覚える。

そんなことを考えていると、ハルヒがやたらと目配せしてくる。
だからお前からのアイコンタクトは俺には理解できな…ああ、そういえば俺に割り当てられた台詞を忘れていたな。

「せかいのからをはかいせよー、せかいをかくめーするためにー。」

とまあ、こんな具合である。これを延々と練習させられているのだ。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:15:06.45 ID:sLcYPza8O

さて、予備知識無しにこの一連の台詞を聞いた人は、我々をどんな集団だと思うんだろうね。
どっかの怪しい宗教団体か、はたまた頭のイカれた危ない秘密結社か。いやいや、こういったものに憧れる年頃の、恥ずかしい子供達って線もある。
そのどれもが、俺達SOS団のこれまでの活動内容と照らし合わせてみると、それほど見当外れではないのが心苦しい限りではあるが、それはさておき。
これだけは理解して頂きたい。
俺達は、教祖様のありがたいお言葉にマインドコントロールされているわけでもなければ、地下に潜って世界を覆そうなんて計画を立てているわけでもない。増してや、平凡な日常の大切さは人一倍分かっているつもりだ。
…ただ、一人の例外がいるというだけで、な。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:17:19.08 ID:sLcYPza8O

「こら、バカキョン!真面目にやれ!
あんた、やる気あんの!?」

ねえよ。

「んなっ…!
…あーあーやだやだ。これだから斜に構えて大人になったつもりになって、それがかっこいいと思ってるガキは嫌なのよねー!
あんたね、青春は一度きりなのよ!今は何にでも本気で取り組んでおかないと、大人になってから後悔すんのよ!」

少しばかり心当たりがあっただけに、俺の心は多大なダメージを負った。
だがしかし、その本気を向けろという方向が電波トレーニングってんじゃ、説得力も300倍に希釈されるってもんだぜ。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:20:29.25 ID:sLcYPza8O

とまあ、毎度毎度SOS団メンバー、特に、斜に構えて大人になったつもりになって、それがかっこいいと思ってるガキの俺に多大な負担を強いる団長殿だが、今回の件に限ってはハルヒとは別に、もう一つ元凶がある。
ハルヒに届いたという、『世界の果て』だなんてふざけた名前を名乗る人物からの手紙だ。
ハルヒの今回の行動は、この手紙に影響されてのものだということらしい。らしい、というのは、ハルヒを除くメンバーはまだ手紙を見せてもらってはいない、というわけだ。
ハルヒは俺達に、敵1グループを焼き払うこともできなければ半分の確率で死者を蘇生することもできそうにない、何の役に立つのかさっぱり分からん呪文の練習を指示しつつ、やたらとしつこくねちっこく手紙を検証している。
光に透かしてみたり、ルーペで隅々まで観察したりな。こいつは将来ニセ札監視員にでもなるつもりか?

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:24:02.54 ID:sLcYPza8O

結局この日は、もう幾度か台詞を練習すると、あとはいつも通りのダラダラとした時間を過ごし、普段よりやや早めに解散となった。
これは好都合だ。ハルヒを除くメンバーは、もう一度集合する必要がありそうだったからな。
しばらく時間を潰してハルヒが帰ったのを確認し、俺は部室へ向かう。
もちろん、例の手紙について話をするためにな。

部室に着いたのは、俺が最後だった。

「よう。早速なんだが、何なんだありゃ。古泉、またお前のところの差し金じゃないだろうな。」

もしもそうだったら、俺達が気に病む必要は無くなるんだがな。
半ば冗談で言った説を、やはり古泉は否定する。

「いえ、断じてそれはないですね。
実は今長門さんと少し話をしていたんですが、あの手紙、普通じゃないんですよ。機関の技術では到底、再現できないくらいにね。」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:29:09.35 ID:sLcYPza8O

「具体的にあの手紙の特殊性を解説すると、まず、情報的なアクセスに制限がかけられているという点が挙げられる。」

「つまり、長門さんの能力で手紙の内容を覗き見することができない、というわけです。」

俺のおつむの出来をよく知る古泉が、長門の言葉に解説を挟む。

「そう。だから、あの手紙に書かれた内容は、今のところ不明。」

ハルヒの頭の中身を解析しちまえば、手紙の内容を知ることができるんじゃないか?

長門は意外そうな表情で顔を上げる。

「…いいの?」

や、すまん冗談だ。いくら相手がハルヒとはいえ、脳味噌の中身を直接覗いちまうのはさすがに問題があろう。

「そうですね。直接覗くのであれば、むしろ手紙の方でしょう。
その方が手っ取り早い。」

しかしぶん取って見るのも、あいつが相手だと苦労するだろうな。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:35:43.08 ID:sLcYPza8O

「違いありませんね。機関のエージェントを涼宮さんのお宅へ忍び込ませて、手紙を盗み出す…という手もあります。
が、どちらにせよ…」

「手紙に対する物理的なアクセスは、最終手段とすべき。
それによって何が起こるか予測ができないため、安易な接触は危険。最悪、それを狙ってトラップが仕掛けられているということも十分考え得る。
何より、まだ手紙の内容が重要視される状況にはない。リスクを冒してまで内容に執着する必要は、今はないと考えられる。」

今は内容よりも外堀の方が重要、ってことか。

「その通りです。では、話を戻しましょう。
つまり、手紙の特殊性についてです。」

古泉は長門に視線を向ける。

「了解した。
あの手紙が涼宮ハルヒの下へ辿り着いた経緯についても、考察の余地がある。
これまであの手紙と見られる物体の存在が観測されたというデータは無く、物理的には、涼宮ハルヒの机の上に突如として発生した、としか表現のしようがない。
これは、何らかの特殊な能力の発現による現象と見て間違いない。」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:40:53.69 ID:sLcYPza8O

じゃあ、『世界の果て』ってのは、何かの変態パワーの持ち主ってわけか。

「そう考えていいはず。あるいは、涼宮ハルヒの能力を利用したということも考えられるが、やはりそれをするためにも何らかの能力は必要になってくる。」

「さらに僕からも付け足させていただくと、これは結局は先ほどの内容の話に帰結することにもなるのですが、
涼宮さんの興味を強く引いた、という点も十分特異であると言えましょう。」

そうだな。単に不思議でヘンテコな文章だというだけであれば、あいつは興味を示さないだろう。
長門や古泉や朝比奈さんの正体をバラした時、あいつは一切意に介することはなかった。
古泉の言う通り、心の奥底では常識に凝り固まっているからだ。
だがしかし、常識的な文章だとすれば、それもまた興味なんか示さないであろう。こちらは解説の必要すらないくらい分かり切ったことだ。
そう、狙ってあいつの興味を引くのは、実は難しいのだ。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:52:02.37 ID:sLcYPza8O

「さすがですね。涼宮さんのことをよくお分かりでいらっしゃる。」

クスリ、と古泉は笑う。

「そうでもないさ。肝心の、あいつの興味を引き出すネタが、俺には思い付かないからな。」

「しかし、ヒントはある。」

ああ。長門の言葉で、俺達は例の呪文を唱える。

「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでゆく。」

「我らが雛だ、卵が世界だ。」

「世界の殻を破らねば、我らは生まれじゅに死んでゆく。」

「世界の殻を破壊せよ、世界を革命するために。
うーむ…」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:52:53.44 ID:sLcYPza8O

何となく、ハルヒが好きそうなキーワードが散りばめられているのは分かる。
しかし、だ。やはりこれ単体では、あれだけの興味は引けないだろう。

「ひょっとすると、この文章が示唆する、何らかの現象も併せてご覧になったのかもしれませんね…。」

まさか…。

「そう。」

その一言で、俺、古泉、朝比奈さんが揃って長門の顔を見る。
多分、全員で同じ言葉を頭に浮かべながらな。

「…世界を革命する力の発現を。」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 09:56:57.65 ID:sLcYPza8O



「とにかく、気をつけて下さい。
まだ具体的に何か問題が起こったわけではありませんが、だからこそ、これから何が起こるか全く想像がつきません。」

「そう。あの手紙だけで終わりということは考えにくい。」

ああ。お前らもな。
お互いに十分警戒することを誓い合い、その場は解散となった。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 10:02:36.06 ID:sLcYPza8O

しかし、だ。もう毎度のことだが、気をつけてと言われても、何の特殊能力も持たん俺にはどうしようもない。
いや、心配してくれる人間がいるというのは非常にありがたいことだし、注意を促された時にどうしようもない、なんて言うことの失礼さだって知っているさ。
それにも関わらずこういうことを口走る、というのは、まぁ、なんだ。要するに、だ。
またしても俺は俺の意思とは関係なく、早速ヘンテコな事件に巻き込まれてしまった、というわけだ。

…それは、下駄箱を開けた瞬間、突如として訪れた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 10:23:33.98 ID:sLcYPza8O

『あなたに決闘を申し込ませていただきます。』

靴の代わりに入っていた、女の字でそう書いてあるメモを俺の視神経が認識した瞬間、何やら鈍い衝撃が俺の後頭部を襲う。
そして、意識が遠のいていく中で、俺は何やらおかしな幻聴を聞いていた。
まずいな、今ので脳がやられたのかもしれん…。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 10:24:38.23 ID:sLcYPza8O

『『カシラカシラ、ご存じかしらー?』』

『さぁ、このアイマスクをつけてくれ!』

『はぁーい!』

『さぁ、この飛行機に乗ってくれ!』

『はぁーい!』

『さぁ、この車に乗ってくれ!』

『はぁーい!』

『…よし、着いたよ。それじゃ、僕たちは帰るから。
アイマスクを外して、頑張ってここで生活してくれ!』

『はぁーい!』

ガォォォン!

キシャアアア!

『え?』

『…何も知らずに流れに身を任せていると、取り返しがつかなくなること』

『果たしてあなたはご存じかしら?』

『『カシラカシラ、ご存じかしらー?』』

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 10:41:36.48 ID:sLcYPza8O

次に目が覚た時には、俺は何やら人工の広場のような場所の隅にいた。
何だよ、ここ。巨大なお盆のような…

「っていうか、高っ!」

どういうことだ?円盤の縁から下を覗いても、雲しか見えない。
…天国?随分殺風景な極楽浄土があったもんだ。

「…目が覚めましたか?」

その声の主が、俺の仮説が誤りであったことを証明してくれた。
こいつと一緒に天に召されるなんて、絶対にありえないからな。認めねえよ。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 11:27:55.49 ID:sLcYPza8O

「…橘京子か。」

「はい、橘京子ですよ。」

お前の名前を確認したんじゃねえよ。一刻も早く記憶からデリートしたい名前を再登録しやがって。
俺が聞きたいのは、お前がどうしてここにいるか、だ。

「ふふっ、その前に。もう一人、ここに来ている人がいるんです。
ほら、あそこですよ。」

そう言った橘は、頭上を指差す。
…なんだ?でかいカンオケ…

「…ハルヒ!?」

そこには、薔薇の花が大量に敷き詰められた巨大なカンオケの中で、真っ赤なドレスを着て眠っているハルヒの姿があった。
しかも、カンオケは空中で、立った状態で静止している。
ハルヒも薔薇の花も、重力を無視して棺にへばり付いているような状態だ。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 11:44:18.73 ID:sLcYPza8O

「…なんだよ、これは。」

「囚われのお姫様ですよ。…ご安心下さい、あなたがあたしの言うことに従ってくれる限り、涼宮さんに危害が及ぶようなことは、ありませんから。」

いつの間にか橘は、俺の横で棺を見上げていた。

「人質に取るって行為自体が、危害を加えていることにならねえのか。
大体、何なんだお姫様って。コイツはそういう単語が世界一似合わない女だぞ。」

「あなたには。」

俺の反論を断ち切るようにそこだけ強調すると、さらに橘は続ける。

「…これから、あたしと決闘をしていただきます。」

そういや、あのメモにもそんなことが書かれていたっけな。

「ルールは簡単です。胸の薔薇を散らされた方が負けです。
決闘の勝者が、お姫様を目覚めさせる王子様たる権利を得ます。」

それを聞いて、ふと俺は、自分の格好を確認する。
…何だこりゃ。いつの間にか、中世の、それこそ王子様のような、白い服に包まれていた。
腰に剣、そして胸に一輪の薔薇。
橘も同じような格好だ。ただ、あいつの服は黒い。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 12:07:45.30 ID:sLcYPza8O

「それじゃ。…いきますよ。」

どこか遠くで鐘の音がしたのが決闘開始の合図であるかのように、橘はその顔からいつもの笑みを消し、剣を構えた。

「たぁぁーっ!」

「っ…!」

ほとんど不意討ちに近い形で橘に先手を許したが、間一髪でかわす。
こちとら伊達に2回も宇宙人に殺されかけちゃいねえんだよ。

「へえ、意外とやるんですね。」

橘が剣を構え直す間に、できる限りの距離を取る。
体の動きを封じてこないってのはいいことだぜ。
その点に関しては、少なくとも朝倉よりは正々堂々としていると評価してやってもいい。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 12:30:43.00 ID:sLcYPza8O

「だが待てよ!俺は決闘を受けるなんて認めた覚えはねえぞ!」

「分かりませんか?あなたは決闘に勝つしかないのです。
涼宮さんを守りたかったらね!」

意味が分からねえよ…!
だがしかし、とにかく相手が攻撃してくる以上、自分の身は自分で守らなくてはならないのは確かだ。
何となく、長門や古泉の助太刀も期待できない気もするしな。
俺は、自分の装備品リストに加わっていた剣を抜いた。

「ふふっ、戦う気になってくれたのですね。」

橘はそう言うと、再び距離を詰めて斬りかかってきた。
俺は自分の剣で、その攻撃を受け止める。
そして、恐ろしい事実に気付いた。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 12:32:28.42 ID:sLcYPza8O

「…!これ、まさか…真剣か?」

「もちろん、そうですよ?」

くそっ、ふざけんな。
それを聞いてチャンバラに付き合う気を無くした俺は、再び距離を取る。

「お前、薔薇を散らせば勝ち、と言ったよな。
真剣でやり合ったら、それだけじゃ済まないことも考えられるんじゃないか。最悪、命だって…!」

「それは安心して下さい。決着がついてしまえば、決闘でついた傷などは関係なくなりますから。
それに最悪、長門さんに治してもらばいいじゃないですか。」

なんだ、それなら安心だね!…とでも割り切れってのか。
無理があるぜ、いくら何でも。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 12:55:55.51 ID:sLcYPza8O

「大体、お前が怪我をした時はどうするんだよ。
言っておくが、俺には胸の薔薇だけを狙って散らすような剣の腕はねえぞ。」

周防九曜に、長門のような治療マジックが使えるとは思えない。

「あら、心配してくれているんですか?
でも、大丈夫。」

橘は、また攻撃を仕掛けてくる。

「…あなたの剣があたしに触れることは、あり得ませんから。」

カキンカキン、と剣で剣を受ける音だけが響く。
このまま防戦一方では、いずれは…。
だがしかし、俺には状況を打開する策が見当たらなかった。
まぐれ当たりを狙って闇雲に攻撃を繰り出しても、その隙に攻撃を食らって終わり、となるのは火を見るより明らかだ。
やはりもう一度距離を取って…

と、一緒気を離したのがまずかった。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 13:24:05.81 ID:sLcYPza8O

ガギィン!

「うおっ!?」

俺の剣は手を離れ、遥か上空にあった。

「これで、決まりですね。」

そこには、尻餅をついて剣を向けられている、俺の情けない姿があった。

だが次の瞬間、

「危ねえ!」

「きゃっ!」

俺は、橘を押し倒した形で覆いかぶさっていた。
幸か不幸か、不意討ちになったんだろう。橘はほとんど無抵抗で倒れた。

そして――――

上空から俺の背中へ、真っ逆さまに剣が降ってくる。
ズブリ、と、自分の体内に異物が入り込む感触を久し振りに感じた。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 13:32:02.45 ID:sLcYPza8O

「う…っ!」

「キ、キョンさん…?」

冗談じゃないな、どうして俺がこいつのために怪我しなくくちゃならねえんだ。
しかし俺は、自分の体に何かが刺さった状態での活動においては、他人よりも一日の長がある。
慌てず騒がず橘の胸の薔薇をむしり取った。

「これで一応、俺の勝ち、だな。」

その台詞は、言葉にならなかった。
次の瞬間、俺は学校の下駄箱で、相変わらず腐臭のする自分の靴を握っていたからだ。

戻ってこれた、ということは、決闘に決着がついた、ということでいいんだろうか。
多分、俺の勝利という結果で。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 13:45:04.52 ID:sLcYPza8O

自分の腹に手を当てる。剣が腹を貫通したはずだが、傷は全く見当たらない。
なるほど、橘の話した通りだ。

…そうだ、ハルヒ!
すぐに電話をかけて安否を確かめようと携帯を取り出す。
出てくれ、出てくれ…。

結論から言おう。俺が安堵から泣きそうになっているのをよそに、ハルヒは何ら滞りなく傲慢不遜、唯我独尊のSOS団団長様であってくれた。
下手に電話なんてかけてしまったおかげで、10分間に及ぶありがたいお言葉を頂戴してしまったが、まさかそれを皮肉でなく本心からありがたいと思ってしまう日が来るとはな。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 14:07:55.03 ID:sLcYPza8O

さて、古泉らと互いに警戒を誓い合ったはいいが、俺どころかあいつらの舌の根すらまだ渇いてはいないだろうに、早速とんでもない事態を体験してしまったわけだ。
あまりの間の悪さに、今からまたあいつらに会って報告するというのは、何というか非常に気まずい。
まあ、そこまで急いで対策を練る必要があるのであれば、向こうからコンタクトがあるだろう。
俺の身に起きたことを、少なくとも長門くらいは把握してくれているはずだ。

よし、あいつらへの報告は翌日に回しても問題は無いな!

この日は、そのまま帰路に着くことにした。
やれやれだ。

47 名前:ひょっとして誰も読んでない?[] 投稿日:2009/10/23(金) 14:44:52.93 ID:sLcYPza8O



翌日の昼休みに早速、ハルヒを除くSOS団メンバーで部室に集まり、昨日のことを詳細に報告した。

…意外なことに、朝比奈さんも古泉も、長門ですら昨日俺の身に降りかかった災難をキャッチしてはいなかった。

「ってことは、だ。俺はひょっとして、とんでもない危険を冒していたのか?」

てっきり、俺の身に起きたことを知った上でアクションを起こさなかったんだと思っていたからな。
そうじゃないと分かっていたら、報告を次の日に回して呑気に寝ることなんかできなかったさ。

51 名前:>>48 サンクス[] 投稿日:2009/10/23(金) 14:52:04.00 ID:sLcYPza8O

「そうですね。こちらとしても、できる限り速やかに連絡を頂いた方が動きやすいのは確かです。
が…」

古泉は長門に続きを託す。

「…それほど緊急を要する事態が訪れる可能性は低いと思われる。
あなたに対して仕掛けられた決闘以外には、涼宮ハルヒを取り巻くあらゆる勢力に、特筆すべき活動は見られなかった。
当面は、この決闘にのみ注意を向けておけばだいじょうぶ。」

ん、ちょっと待て。決闘がこれからも続く、みたいな言い方じゃないか?それって。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 15:07:29.45 ID:sLcYPza8O

「そう。橘京子の言動から察するに、今後もこの決闘が一定のルールに従い、幾度も展開されていく可能性は十分考え得る。
そして、今回の件から推察するに、決闘によりあなたや涼宮ハルヒが被害を被ることはない。」

俺が勝っている間は、か…。

「その通りです。今回のことで危惧すべき不安要素があるとすれば、あなたの敗戦で何が起こるか分からない、この一点に尽きると思います。」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:17:39.20 ID:sLcYPza8O

…そういえば、橘京子はどうなったんだ?

「機関からは特に報告はありません。つまり、いつも通り。無事ですよ。」

すると古泉は、またやたらと顔を近付けてきやがった。

「…ご心配ですか?」

離れろ、何のつもりだ。うっとうしい。

「失礼しました。…貴方が彼女に対して、どのような感情を持っていらっしゃるのか気になりましてね。
なにせ、身を挺して守って差し上げたくらいですから。」

別に、どうとも思っちゃいねえよ。いや、むしろ心象は悪いくらいだぜ。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:20:08.86 ID:sLcYPza8O

「ほう?それでは、どうして助けたのです?
納得のできる答えをお聞かせ願いたいですね。」

なんだ、妙に食い下がってくるな。
俺が怪我したって長門に頼れば治してもらえるが、いや、ことあるごとに長門に頼って悪いとは思っているが…あいつはそういう相手がいないだろ。
大怪我してそのまま…ってことも考えらる。
要するに、あそこであのまま怪我させたら、また面倒なことになると思っただけだ。
決してあいつのためじゃない。

「ほう…?」

何だよ、まだ何か言いたいことがありそうだな。
今日はいつにも増してしつこいぞ。どうした。

すると古泉は、困惑したような表情を浮かべる。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:22:25.79 ID:sLcYPza8O

「いやあ、この役柄を長い間演じてきたせいで、感情をストレートに伝えられなくて困ることも多いんですよ。
しかも、相手は鈍感大魔王の貴方。
皮肉を含んだやり取りで感情を伝える方が無理というものでしたね。失礼しました。」

古泉は、今までこいつの口からは聞いたことのないような暴言を吐くと、これもまた見たことのない、明らかな怒りの表情を見せる。

「それでは、貴方にも理解できるようにはっきり言いましょう。
僕は、いいえ僕達は、怒っているんですよ。貴方の行動に対して、ね。」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:23:31.98 ID:sLcYPza8O

見ると、長門もその顔に非難の表情を浮かべているように見えた。
朝比奈さんに至っては、顔を紅潮させて、涙目でぷるぷる震えている。

「も、もうっ!キョンくんのばかぁ!」

古泉の回りくどい皮肉の数十倍は破壊力のある、僅か2文字の単語が俺の心臓を抉る。
そして、

「あなた一人の体ではない。もう少し、自重するべき。」

妊婦をたしなめるかのような長門の言葉で、俺はようやく気付く。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:25:25.24 ID:sLcYPza8O

…そうだよな、同じことを、例えばハルヒがやっていたとしよう。その時は、俺は奴をぶん殴ったことだと思う。
橘が敵対組織に所属しているとか、あの時助けなかったらどうなったとか、増してやあの行動の善悪とか、そういう話は一切関係ない。
橘の言う通りに傷のリセットが起こったからよかったものの、わざわざ自らの身を傷付けたんだ。
それが、自分の身を案じてくれる仲間に対してどれだけ無礼なことかくらい、少し考えれば分かるはずのことだ。

「悪かった。もう少し、考えて行動するよ。」

心からの言葉だった。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:28:40.14 ID:sLcYPza8O

「…結構。」

その言葉と共にいつものニヤケ面に戻る古泉と、いつもの無表情に戻る長門。
…しかし、朝比奈さんが泣きやむのには、多少の時間を要した。

「それでは、具体的な話をしましょう。
まず、その決闘が行われた場所ですが…。」

「情報統合思念体の観測範囲外であったため、物理的な移動で辿り着ける場所でないことは間違いない。
閉鎖空間とも違う、別次元の空間だと考えられる。」

「佐々木さんの作る閉鎖空間、ということは?」

この古泉の質問には、俺が答える。

「それもなさそうだな。前に橘に見せられた閉鎖空間とは、全く様子が違っていた。」

「そうですか…。」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:32:52.97 ID:sLcYPza8O

ん?そう言えば。

「長門、俺が決闘していた間、俺の体はどうなっていた?」

「あなたと涼宮ハルヒがこの世界から消えたというデータは、測定されていない。
また、不自然な運動をしている様子も観測されず、だからこそあなたの身に起きたイレギュラーを全く察知できなかった。」

マジかよ。そういやあの決闘の間、こっちではどのくらいの時間が経っていたんだろうな。
時計の確認を怠ったのは失策だったな。

ん?時計と言えば…。
俺は時間を確認する。もう結構いい時間だ。

「そうだ、続きは弁当を食いながらにしないか?そろそろ食っておかないと、時間無くなるだろ。」

「おや、もうそんな時間ですか。そうですね。」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:35:40.47 ID:sLcYPza8O

それぞれが昼飯を机の上に広げ、もちろん俺も、特に警戒することもなく自分の弁当を開く。

…これが、まずかった。
いや、自分で言っておいて何だが、さすがに弁当のフタを開ける時にまで細心の注意を払え、というのも酷な話だろう。
だがそれでも、俺はこう思わざるを得なかった。



ぬかった…!

『あなた決闘』

空っぽの弁当の中に、これだけが書かれていたメモが入っていた。
そしてそれを見た瞬間、覚えのあるあの鈍い衝撃を食らって、俺は意識を失う。
またしても、おかしな幻聴を聞きながらな。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:36:49.52 ID:sLcYPza8O

『『カシラカシラ、ご存じかしらー?』』

『あんた、今日一緒に歩いていた女誰よ!』

『し、知らない。お前の見間違いじゃないか…?』

『写真だってあるのよ!ほら!』

『うっ…!ご、ごめん!つい魔が差したんだ!』

『やっぱり浮気してたのね!』

『すっ…すまん!』

『これで何回目だと思ってんのよ!』

『遂にふた桁の大台に乗りました…!ごめんなさい!』

『でもいいわ、許しちゃう!』

『あっ、ありがとう!』

『(へへへ、ちょろいぜ。)』

『…その場では謝っていても、結局同じことを繰り返すかもしれないこと。』

『果たしてあなたはご存じかしらー?』

『『カシラカシラ、ご存じかしらー?』』

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:41:31.04 ID:sLcYPza8O

目が覚めた俺は、周りの状況を確認する。
やはり、昨日と状況はほとんど同じ、か。
服装、剣、胸の薔薇、そして棺とハルヒ。

昨日と唯一違う点であろう、決闘の相手を探す。



…こいつか。周防九曜。そういや、メモもそんな感じだったな。文章になっていなかった。
周防九曜は、やはり昨日の橘と同じような服装をして、突っ立っている。

遠くから鐘の音が聞こえる。これが決闘開始のゴング…ってことでいいのか?いいんだったよな?
周防九曜は動かないが…。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:46:22.34 ID:sLcYPza8O

「…?どうされました?」

古泉が不思議そうな顔でこちらを見ている。
俺は、今日も具材がたっぷり詰まった、母親特製の弁当のフタを開けたところで固まっていた。
…なるほどな。道理で長門や古泉の機関が動きを察知できないわけだ。
決闘場に行って帰って来るまでの間、こっちの世界では全く時間が経過してはいないらしい。
昨日は時間の経過が分かるようなものが周りに無かったから、全く気付かなかったがな。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:50:20.32 ID:sLcYPza8O

「それより、決闘をしてきたというのは…。」

「ああ。今度の相手は周防九曜。秒殺だ。なにせ、突っ立ったまま全く動かないんだからな。何しに出てきたんだあいつは。」

「それは何よりです。しかし…」

古泉は苦笑する。

「こうも次の仕掛けが早いとは、ね。完全に先を越されました。」

「失策だった。
これからあなたやあなたの周囲の観測を最大限に強化するつもりだったが、準備がまだ整っていない。
放課後までに観測を開始できれば、十分間に合うと考えていた。」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:54:11.66 ID:sLcYPza8O

俺もまさか、この面子が揃っている状況で堂々と仕掛けてくるとは思わなかったな。

「参りましたね…。
今回の周防九曜のような相手ばかりとはいかないでしょうし、それに、これだけ特殊な戦いです。
貴方がいつ負けてしまわれるか分からないというリスクだけでなく、単純に貴方への負担を考えただけでも、なるべく早く情報を集める必要があったんですが…。」

「これで我々は、相手の情報を得る機会を一度、みすみすスポイルしたことになる。
面目ない。」

ま、過ぎちまったことは仕方ないさ。
それに、ヒントだけなら幾つか得られたろ?

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:07:09.71 ID:sLcYPza8O

「そう。これで決闘は、この世界とは空間も時間も共有していない場所で行われることが証明された。」

「そして、もう一つ。全く戦意の感じられない人間が出てきた。これは、裏で指示を出している人間がいる、と見て間違いないということです。」

ああ。

俺は、頭の上に疑問符が見えそうな表情の、愛らしい未来人を見る。
これまで、橘京子、周防九曜と続いたんだ。嫌でもあの、朝比奈さんとは似ても似つかない嫌味な未来人野郎の顔が頭に浮かぶ。それと、佐々木もな。

「…次は、藤原が来るんだろうか?」

「これまでの決闘者の名にあえて法則性を見出して考えるのであれば、そうなりますね。
ですが、決め付けるのは危険でしょう。
なにせ僕達は、未だに相手の意図すら分かっていない段階にいますからね。」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:13:38.95 ID:sLcYPza8O

判断するには情報が少な過ぎる、か…。

結局昼休み中はそれ以上会議が進展することもなく、俺達は急いで昼飯を食って、部室を後にした。

続きは放課後だ。それまでには、長門や古泉が何らかの情報や対策を掴んで来るかもしれない。
だから、頼むからそれまで、決闘なんぞ挑んでくれるなよ。
周防九曜のリベンジマッチくらいなら受けてやってもいいが。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:33:08.30 ID:sLcYPza8O



そして、放課後だ。
俺の祈りが誰かさんに届いたのか届かなかったのかは定かではないが、果たして授業が終わるまで、この日2度目の決闘を挑まれるなんてことはなかった。
しかしながら、ナイフを首筋に当てられたままにされている心境、とでも形容しようか。
もう次の決闘が起こることは、確定事項と言ってもいいだろう。周防九曜がラスボスじゃ、締まらないにも程があるしな。
俺は、いつ決闘が起こるものかとビクビクしながら過ごさざるを得なかったというわけだ。
ああもう、いっそのこと早くやっちまってくれ、いや待て、心の準備をする猶予をくれ、そんな調子で午後の授業時間を過ごしていた。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:50:53.93 ID:sLcYPza8O

「あたし用事があるから、先に部室行ってて!」

そんな俺の気苦労など露ほども知らない、知っていたとしても一切合切意に介さないであろうハルヒは、それだけ言うとコンコルドの如く教室の外へぶっ飛んで行く。
途中、机に思いっきり腰をぶつけていたが、あいつは痛くないのだろうか?
…いや、愚問だったな。奴の痛覚神経は他の神経と同様に、下水管の如き太さを誇るに違いなかった。
一方、ハルヒにはねられた哀れな机は、180度回転して内容物をぶちまけていた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:55:46.27 ID:sLcYPza8O

さてと、だ。
俺はその机を元に戻しつつ、部室にいるであろう3人の顔を頭に浮かべる。
都合のいいことに団長も席を外すらしいし、さっさと合流して、決闘対策の一つや二つを伝授してもらおうと、そんな青写真を描いていた。

…甘かった。

本校舎を出て、部室のある旧館の扉を鼻息混じりで開ける。

『決闘』

…おいおい、下駄箱や弁当の時とは違って、今回は随分と大掛かりじゃねえか。
旧館の扉を開けてすぐのところに、本来あるべき廊下を塞ぐように壁ができていた。
そしてこれまでのようなメモではなく、その壁に直接メッセージが殴り書きされている。

俺は例によって、幻聴を聞きつつ意識を失った。
…幻聴だよな?

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:07:06.15 ID:sLcYPza8O

『『カシラカシラ、ご存じかしらー?』』

ワー、ワー

『うおお、こりゃあすげえ!』

『父ちゃん、全然見えないよ!』

『んなっ、そんなところまで見せちゃいますか!』

『なになに、何が見えるのー?』

『子供が見てもつまらんぞ。…うおー!』

『うわーん!父ちゃんの意地悪ー!』

『…そこに届かないと、いくら頑張っても見られないものがあること。』

『果たしてあなたはご存じかしら?』

『『カシラカシラ、ご存じかしらー?』』



『いやあ凄かった、秘密のぬか漬け製法発表大会!帰ったら早速漬けてやるからな!』

『わーい、久し振りの父ちゃんのぬか漬けだー!』

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:10:00.44 ID:sLcYPza8O

「…やっぱりお前が来たか。」

決闘場には、藤原が待ち構えていた。

「フン、僕はこんな茶番に付き合いたかないんだがな。」

「よし、じゃあ、その胸の薔薇をちぎって捨ててくれ。それですぐに帰れるぜ。」

「…そうもいかないんだよ。」

お互いが剣を構えた瞬間、決闘開始のゴングたる鐘の音が響く。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:12:32.61 ID:sLcYPza8O

先手は藤原だった。

「おおおあ!」

藤原の渾身の一撃は、俺が余裕でかわしたために地面を直撃する。

「どうした、未来人。薪でも割ってんのか?」

力み過ぎだ。薔薇を散らすだけでいいんだぜ。殺す気かよ。

「口を慎めよ、現地人…!」

そう言うと、藤原は剣を上段に構えて、鬼の形相で走り寄って来る。

…だから、殺し合いじゃねえんだって。
またしても、藤原の袈裟斬りは床を叩き割る。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:14:07.13 ID:sLcYPza8O

「…お前、ひょっとしてルールを知らないんじゃないのか?」

てっきりこいつらが主催者なんだと思っていたが、そういやそれを裏付ける何かを見つけたわけじゃなかったからな。
こいつも、マジで何が何だか分からずにここにいるのかもしれん。
俺は、皮肉も込めて聞いてみた。

「フン、お前こそ、この決闘の意味を理解してはいなさそうだがな。」

気になる言葉で、俺の問い掛けを暗に否定する藤原。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:16:31.63 ID:sLcYPza8O

だが、たった2回攻撃しただけでもう息が上がってるぜ。それでは何を言っても格好がつかないというものだ。
どうやら、近年問題視されている青少年の体力の低下は、未来では更に深刻になっているようだな。
橘の爪の垢でも煎じて飲んだらどうだ?貧弱未来人。

「さて、それじゃ、そろそろ決めさせてもらうか。」

俺は剣を構え直す。
これだけ時間を稼げば、そろそろ長門も何らかのデータを観測できているはずだ。
とは言っても、向こうでは時間は経過していないんだったか。
まずったな、じゃあさっさと決めた方がよかったか。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:20:32.44 ID:sLcYPza8O

「はああ!」

藤原へ向けてダッシュする俺。
そして、剣が届く範囲まで、お互いの距離が詰まった瞬間だ。
それまで息が上がっていたはずの藤原は突然、鋭い突きを繰り出して来た。
…野郎、弱いフリをしてたってわけか。確実に俺を仕留めるために。



だと思ったよ。

俺の胸の薔薇に一直線で向かう藤原の剣を、ギリギリのところで弾く。

「なっ…!」

「勝ったと思ったろ?残念だったな。」

作戦としちゃ悪くはなかったぜ。
だが…

「橘の方がずっと強かったぜ、貧弱野郎!」

スキのできた藤原の胸の薔薇を、俺は奴の心臓ごと貫いてやる意気込みで散らした。

30 名前:だめだねむい[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:27:31.48 ID:sLcYPza8O

「やあ、お帰りなさい。」

旧館に入ると、バッタリ古泉に出くわした。
…こっちの世界での流れで言えば、そう表現すべきなんだろう。

しかし、俺の今の表情から、決闘があったことは察したようだ。

「部室へ向かいましょうか。」

「ああ。
あ、ハルヒは遅れるそうだぜ。」

「それは好都合ですね。」

古泉と一緒に部室への廊下を歩きつつ、俺はこいつの前で突然表情を変えて、勘違いさせる悪戯を思い付いていた。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 22:01:59.85 ID:sLcYPza8O

>>32
橘戦:スピラ・ミラビリス劇場
(九曜戦:封印呪縛)
藤原戦:天使創造すなわち光
のイメージで書いてました





「決闘場の場所が分かった。」

部室の扉を開けるなり、長門は期待通りの報告で俺達を迎えてくれた。
見れば、朝比奈さんも既に部室へ来ている。

「あ、キョンくん…。」

長門から決闘があったことを既に聞いているんだろう、朝比奈さんは心配そうに俺の顔を見上げる。
大丈夫ですよ、朝比奈さん。相手はあの貧弱未来人野郎でしたから。
朝比奈さんに無礼をはたらいた不届き者を、僣越ながらこの手で成敗させていただきました。



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