佐々木「おはよう」キョン「はあ…佐々木さん?」


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12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 10:05:00.11 ID:Xq8pqTWoO

佐々木「薄情な奴だね。親友を忘れるとは。とはいえ、こちらも一年間キミに連絡を取ろうともしなかったんだからお互い様かな」

佐々木のしゃべり方調べてここまで書いたら始まってたので期待。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 10:21:58.24 ID:Xq8pqTWoO

佐々木と名乗ったそいつは今度はそう長々と語り始めた。しかし、こんな男みたいなしゃべり方をする奴、いくら俺でも忘れるだろうか。
俺は自力で思い出すのを諦め、もう一度その男喋り少女の方を見た。
「どうだい、まだ思い出せないかな」
「すまないが、人違いじゃないか?」
「ふむ、ではキミはキョンというあだ名を付けられてはいないのかい?」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 10:33:13.85 ID:Xq8pqTWoO

確かにその通りだ。認めたくはないが俺はその間抜けなあだ名で呼ばれている。だがそんなもの知りようはあるだろう。

「さては俺を引っ掛けようとしてるんじゃないだろうな。中川か誰かの友達か?」

「確かに、中川とも友達と呼んでいいかも知れないな。だけど、別に引っ掛けようとしているわけじゃない。」

そう佐々木と名乗ったそいつ、いや、佐々木は楽しそうに宣った。

「…………」

「なんなら、卒業アルバムでも見てみたらどうだい?」

「ああ、そうさせてもらうよ」

「じゃあ、僕はこれから用事があるから、思い出したら連絡を寄越してくれ」

そういって男喋り少女佐々木はどこかにいってしまった。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 10:43:33.95 ID:Xq8pqTWoO

その後、帰宅した俺は母親に小間使いをさせられ、提出物を終わらせていないことに気付き、
慌てて片付けていたこともあり、再びあの少女のことを思い出したのは夜になってからだった。

棚の奥底に眠っていた卒業アルバムを引っ張り出し、クラスメイト達を懐かしみながら探してみたが、

それらしい少女はついに見つからなかった。それどころか、名簿を追ってみたところ、坂崎の次は佐野となっていた。

やはり、人違いか、担がれただけだろうと俺は思い、また卒業アルバムを奥に仕舞い、風呂に入り、寝る頃には半ばそんなことは忘れていた。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 10:50:25.05 ID:Xq8pqTWoO

そう、その時は、何も気付いていなかった。いや、それが予兆だったなどと言えるのは、ずっと後になるのは当然だった。

俺は、いや、俺達は、既に事件のただ中に巻き込まれようとしていたのだ。

もちろん、それにあいつが関わらない筈がない。

そう、あらゆる事件に自ら巻き込まれに行く迷惑女、涼宮ハルヒが。


え、何これ続けんの?

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 11:05:49.73 ID:Xq8pqTWoO

翌日のことである。

昨日のことなどすっかり忘れて、ついでに机の上に置きっぱなしの提出物のこともすっかり忘れて、俺は普段通り学校に向かった。

昼休みになるや否やいつも通り教室を出ていったハルヒを気に留めるわけもなく、国木田と谷口の三人で弁当を食べ始めた。

国木田を見ていて、ふいに昨日の佐々木さんとやらを思い出した俺は、俺よりは記憶力があるだろうこいつに話してみようと考えた。

「なあ、佐々木っていたか?」

「どうしたんだいキョン。藪から棒に」

箸を休め、国木田は顔を上げた。


ネタが思い浮かばないし、俺そのうちいなくなるかも知れないよ。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 11:14:32.30 ID:Xq8pqTWoO

「いや、昨日元クラスメイトと名乗ってきた奴がいてな」

「クラスメイトって中三の?」

「ああ、そうだ。佐々木なんていう女子いたか?」

「女の子なんだ。うーん、覚えてないな、どんな子?」

国木田が、当然の疑問をぶつけてくる。

「どんな子って言われてもな」俺は昨日の男みたいなしゃべり方を思い出して答えた、「ああ、しゃべり方が独特だったな」

「独特ってどんな風に?」

「男みたいだった」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 11:20:21.03 ID:Xq8pqTWoO

「ふーん、知らないな。ナンパされたんじゃない?キョン」

「な訳ないだろ」

やはり、俺は間違っていなかったと確信し、俺はミニトマトに箸を伸ばそうとした。しかし、

「ん? 男みたいなしゃべり方の佐々木だ?」

今まで黙って聞いていた谷口が唐突に話に割り込んできた。

「なんだ谷口、知ってるのか」

一つの既視感のようなものを感じながら、俺は続きを待つ。

「知ってるも何も同じ中学校だったぜ。涼宮が目立ってたから陰に隠れてたが、あいつも変な奴だったな。」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 11:26:58.36 ID:Xq8pqTWoO

「変ってしゃべり方がか?」

確かに変かもしれないが、谷口に変と言われる程だろうか。

「いや、しゃべり方なんだが、男には男口調で、女には女口調で喋ってたな」

「ふーん、キョンの好きそうな子だね」

と、国木田。

「なんだそれは」

「聞きたくないのかよ」

「いや、続けてくれ」

「それに、あいつはあいつでかなり告白されたみたいだが、全部断ってたみたいだな。」

「ほう、そうか」

「俺は違うからな」

谷口が慌ててそう付け足す。全く、相変わらずな奴だ。

「相変わらず分かりやすいね、谷口は」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 11:34:43.44 ID:Xq8pqTWoO

「そう、もう1つ思い出した」

谷口が若干声を大きくして、誤魔化すように続ける。

「あいつ、一人だけ結構涼宮と喋ってやがったな」

なんだって?

「ああ、お前みたいに、引っ張り回されたりはしてなかったがな」

「へー、そんな人がいたんだね。」

「まあ、佐々木が受験で忙しくなるまでだったけどな」

と、その谷口の一言で、俺達は残り少ない弁当を片付ける作業に戻った。その佐々木のことはあとでハルヒに聞いてみるとしよう。

別にそのくらい聞いたって構いはしないだろう。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 11:50:03.31 ID:Xq8pqTWoO

午後の授業はあっというまに、そう、俺が食後の一眠りをしている間に過ぎ去っていった。

俺は我らが放課後の天使、朝比奈さんを見るべく、部室へと向かった

俺が朝比奈さんの美味しいお茶を楽しんでいると、ハルヒが現れ、特に何か思い付いたような笑顔もなく、ネットサーフィンを始めた。

「なあ、ハルヒ」

「何よ」

「佐々木って知ってるか?」

「佐々木ってどの佐々木よ。いい? キョン、物事は分かりやすく言わないと伝わらないの」

お前には言われたくない、という言葉を飲み込んで、俺はもう一度尋ねる。

「お前と一緒の中学校にいた佐々木だよ」

「ああ、その佐々木? 何であんたが知ってるのよ」

ハルヒが訝しげな目で見てくる。しかし、俺には何ら疚しいこともない。

「ちょっと小耳に挟んだんだよ。仲良かったのか?」

「仲が良かったというわけではないわ。ただ、喋り方が面白かったから話してみただけ」

ハルヒにしては珍しく、昔を懐かしむような表情のようだった。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 12:00:08.70 ID:Xq8pqTWoO

「そういえば、佐々木はどうしてるのかしら。私学に行ったらしいんだけど」

「へえ、そうなのか。」

「何、一目惚れでもしたの? 駄目よ、SOS内は恋愛禁止なんだからね」

そう睨むな、別にそういうわけじゃない、ただの興味だ。

「ふーん、まあ、いいわ。」

そういうと、ハルヒはまた画面を見始めた。それにしても、中学時代のハルヒにも、友達のようなのはいたんだな。今までは考えても見なかったが。

そうして、その日の団活はその後事件が起こることもなく終わった。

その夜、家の電話がなった。

もうすぐ出かけることになったんだけど。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 12:25:33.03 ID:Xq8pqTWoO

「キョンくんでんわー」

「俺は電話じゃありません!」

未だに小学校低学年のような応対をする我が妹に兄として注意をする。

「何かねー、女のひとー」

俺の注意を無視して、妹が続ける。女の子? ハルヒか?

「ハルにゃんとは違うひと!」

ハルヒじゃなければ誰だ、と考え、すぐにある一人を思い付いた。

「はい?」

電話の向こうから、予想通りの声が聞こえてきた。

「もしもし、キョンかな?」

「やっぱり佐々木か」

「思い出してくれたのかい?」
「いや、すまない、それより何で俺の電話番号を知ってるんだ。東中学出身だと聞いたんだが」

これは当然の疑問だろう。納得のいく答えを聞かせてくれ。
「簡単に言えば、僕は東中学の出身になってしまったみたいだ」



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 12:32:58.52 ID:Xq8pqTWoO


「メモにとっていたからね、いや、そんなことより、変なんだ」

そんなこととはなんだ。俺にはプライバシーはないのか

「僕の周りが少しおかしい、というか僕の過去がねじ曲げられているような感じかな」

古泉みたいなことをいう奴だ

「意味がよくわからん」

「僕は東中学出身じゃないはずなんだ」

「わかったわかった、誰の差し金か知らないが、そいつにもういいと伝えてくれ」

そう電話を切った後、初めてこれはまた何か事件が起こっているんじゃないかと思い付いた。

しかし、佐々木の声には全く緊迫感が無かったし、大丈夫だろう、俺はそう思い、この話を考えようとはしなかった。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 21:30:31.05 ID:Xq8pqTWoO

次の日、俺は自分の甘さをもう一度見直さなければならないということを思い知らされた。

といっても、たとえ早く行動できたところで、俺に何ができたわけでもないだろうが。せいぜい、また、長門や古泉に相談したくらいだ。

だが、心の準備ってのは必要だろう? 言い訳を考える時間とかさ。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 21:43:56.37 ID:Xq8pqTWoO

「ちょっと、キョン! 大ニュースよ!」

俺が学校につくと、ハルヒが目を輝かせて詰め寄ってきた。落ち着け、せめて鞄くらいは置かせてくれ。

「佐々木が来るの!」

なんだそれは、いいかハルヒ、物事は分かりやすく言わないと伝わらないんだ。

「うるさいわね。団長のあたしが一を言ったら、団員は十を知るくらいになりなさい」

やれやれ、全く横暴な奴だ

「で、佐々木さんがなんだって?」

「うちの学校に来るらしいのよ!」

なんだって? もう一度言ってくれ。

「だから、佐々木が北高に転校してくるの!」

「…………」

このとき、俺は初めて理解したね。また面倒か事件に巻き込まれたという事にな。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 21:55:31.42 ID:Xq8pqTWoO

「昨日ね、久しぶりに気になったからちょっと佐々木のこと調べてみたのよ」

「どうやってだ?」

「どうでもいいでしょ、そしたら佐々木が転校するって話を聞いて」

なんだ、無茶苦茶なことをしたのかと思ったが、親からの情報か

「なんでわかったのよ」

「なんとなくだ」

気づくと周りの奴らがこっちを見ている。おい、なんだ谷口、その「いつものことか」みたいな視線は。心外だ

「キョン、聞いてる?」

「すまん、聞いてなかった」

「だから、佐々木をみんなに紹介しようと思うの!」

「そうか、それはよろしく頼む」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 22:04:52.54 ID:Xq8pqTWoO

俺はもうハルヒの話などどうでも良かった。とりあえず佐々木が来るまでに奴らに話を聞かなくては、

ということを考えていて、大事な、佐々木が転校してくる日を聞き洩らしてしまった。

だから、HRに担任が転校生の紹介を始めたとき、いや、佐々木が俺に親しげに話しかけてきたとき、俺はハルヒの方を見ないようにした。

無駄な努力だったがな。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 22:17:38.53 ID:Xq8pqTWoO

「さっさと白状しなさい! 佐々木といつ知り合ったの?」

「何回も言ってるだろ、ついこの間だって」

「佐々木は中学時代からの親友っていってるじゃない。ねえ?」

「ああ、その通りだよ涼宮。」

佐々木さんとやら、お願いだから面白そうに笑ってないで空気を読んでくれ。でないと俺はこいつに殺されてしまいかねん。

「あ、そうだ涼宮、できればこの学校紹介してくれないかな?」

「あ、それもそうね。キョン、先に部室に行ってなさい。詳しくは後で聞かせてもらうからね」

なんだ、なかなかに機転が利く奴じゃないか。これでようやく話を聞ける。


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 22:26:03.67 ID:Xq8pqTWoO

部室につくと、俺とハルヒ以外の三人はもう揃っていた。

「お待ちしてましたよ」

「お前らも気付いてたか。やっぱりハルヒの仕業か?」

そうですね、と古泉は若干困ったように言った。

「長門さんに説明してもらいましょう」

「昨日、涼宮ハルヒから情報のフレアを察知した、恐らくあなたの発言がきっかけと思われる。」

なんと分かりやすい。ん? しかしそれは昨日だけなのか?

「そう」

「じゃあそこはやっぱり俺を引っ掛けようとしただけなのか」

「そこ、というのは?」

と、古泉。なんだ、知らないのか。

「あの、お茶です、キョン君、古泉君も長門さんも」


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 22:36:24.51 ID:Xq8pqTWoO

「ありがとうございます。朝比奈さんは今回のこと何か知ってますか?」

「ご、ごめんなさい、一応事実は知っていたんですけどそれ以上は」

大丈夫ですよ。大体そんな所だろうとおもってましたから。

「それで、その、そこ、というのは」


「いや、一昨日その佐々木が俺に話しかけてきたんだ。同級生だったってな」


「あなたの、ですか?」

「ああ、もちろん俺に身に覚えはなかったんだが」

「彼女は嘘をついているように感じましたか?」

「いや、全く。といっても、よく知らないしな、本当のところはどうかわからん。」

「そうですか……」

そう言って古泉は何かを考え始める。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 22:51:35.38 ID:Xq8pqTWoO

「どうした? 何か思うところでもあるのか?」

「いえ、まだ分かりませんが、少し、思うところがありまして」

「みんなー! おっまったせー!!」

タイミングを見計らったかのごとく蹴破るようにドアを開けてハルヒが現れた。その右手には佐々木が掴まれていた。


「紹介するわ! 謎の転校生その2、佐々木よ!」

謎とはひどいな、中学のときの友達なんだろうに。

「涼宮、ここは?」

佐々木はここに来たものが必ず口にする疑問を呟く。そしてハルヒもいつものように絶対に理解できない答えを返す。

「ここは我がSOS団の活動場所よ! で、あっちが副団長の古泉くん、で、そこの二人は有希とみくるちゃんよ!」

「なるほどね、で、そのSOS団というのは?」

「それはね!」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 23:01:47.61 ID:Xq8pqTWoO

「いや、ちょっと待ってくれ、SOSというのは、モールス信号に使われる救難信号のことではなく、

何かの略称なんだろう? 恐らくどちらかのSは『涼宮ハルヒ』のSなんだろうけど。」

「さすが佐々木! 相変わらずね。」

「誉め言葉として受け取っておくよ」

佐々木の本気なのか冗談なのかも解らない発言を無視してハルヒが続ける。

「SOS団って言うのはね、(S)世界を(O)大いに盛り上げるための(S)涼宮ハルヒの団の略なの」



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 23:09:34.66 ID:Xq8pqTWoO

「なるほど、世界を大いにね、面白い」

佐々木は心底面白そうにくっくっと喉を鳴らした。

「じゃ「じゃあ、このグループ、いやSOS団は、世界を盛り上げるために何をするんだい? まさか、宇宙人を見つけたりだとか、そういう目的だったりしないだろうね?」

「よくわかったわね、佐々木」
「本当にそうなのかい。それはそれは」

と、佐々木はもう一度笑った。

「それで、僕はどうすればいいんだい?」

「もちろん、六人目の団員として、世の中の不思議を見つけてもらうわよ!」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 23:46:13.44 ID:Xq8pqTWoO

ちゃんとした説明もなしに、ハルヒがそう叫ぶ。こっちは悪い予感しかしないね、まったく。

その夜、予想通り古泉から電話があり、いつもの駅前、SOS団御用達の集合場所へ呼び出された。

季節は夏に向かって進んでおり、夜でも気温は高いように感じられた。

駅前では、長門と朝比奈さん、それに古泉、おまけに佐々木まで一緒になって俺を待ち構えていた。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/21(月) 23:53:18.43 ID:Xq8pqTWoO

「やあ、キョン、待っていたよ」

「もうその演技はいい、ハルヒとお前は、どう見ても旧知の仲だったろ」

「そう見えたかい? なら、僕には演技の才能でもあるのかな?」

まだしらを切るのかこいつは。

「全くだ、ハルヒの呼び方とハルヒに対する口調が男みたいだったのは、知らなかったとは思えないね。」

「涼宮さんが、僕のどういう点を面白く思ったのかを考えたのさ、噂はかねがね聞いていたからね。

それと、僕なら涼宮さんのことをどう呼ぶかを考えてみただけだよ」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:10:40.61 ID:7WFO3LisO

「お二人とも、いいでしょうか」

おお、すまなかったな、古泉。お前らのことを忘れていたよ。

「佐々木さん、一つ二つ質問をしてもよろしいでしょうか。」

「ああ、構わないよ。」

佐々木の快諾を見て、古泉は一切いつもの笑みを崩さずに続けた。

「涼宮さんがあなたに話しかけたとき、あなたは何故動揺せずにすんなりと受け入れたのです?」

「動揺なら既に散々していたからね。今さら驚くこともなかっただけだよ」

佐々木が冗談めかしていう。ふざけているのか、本当なのかいまいち分かりにくい言い方だ。

「では、佐々木さんはこの転校のことを知っていましたか?」


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:12:34.67 ID:7WFO3LisO

「昨夜にはね。見覚えのない制服とかが置いてあったし、それに両親の様子を見てたらね。」
なんだと?ちょっと待て

「昨日の電話では一言も聞いてないぞ」

「言う前にキョン、キミが電話を切ってしまったからじゃないか」

「…………」

「なるほど、長門さん、どう思います?」

俺の沈黙をよそに、古泉が尋ねる。

「佐々木さんの話していた内容は」


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:13:56.07 ID:7WFO3LisO

「彼女は、嘘をついている様子はない。」

長門は短くそう言った。

「では彼女の言っていることは本当だと?」

「少なくとも、彼女自身はそう思っている」

「なるほど、確かにそうですね」

古泉はまた一人で納得している。

「じゃあ何か、こいつは俺の同級生だったってのか?」

「最初からそう言っているじゃないか。」

ちょっとお前は黙っていろ



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:16:28.57 ID:7WFO3LisO

「わからない、ただ、情報の齟齬については涼宮ハルヒが無関係であることはほぼ確実。それは情報統合思念体にも言えること」

「もちろん、機関もです」

「わ、私たちもです」

「そうか」

つまり、全く何もわからないってことだ。

「すいません、佐々木さん、ありがとうございました。」

「いや、礼には及ばないよ。しかし、キョン、君は随分個性的な良い友達を持っているようだな。羨ましいよ」

「放っておけ」

「いや、本心からそう思っているよ、じゃあ、また明日。」

そうして、佐々木は最後までゆるやかな笑みを絶やさずに帰っていった。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:17:18.86 ID:7WFO3LisO

「独特な女性ですね」

古泉が俺にそう話しかける。何故同意を求めるんだ。と、そういえば、こいつに聞かにゃならんことがあったんだった

「さっきお前が言ってたことってなんだったんだ?」

「ええ、今日ここにきてもらったのは、それを伝える為でもあったんです。
もし、彼女が言っていることが、本当だとしたら」

「本当」

長門が遮る。

「ええ、そうでしたね。すいません。つまり、彼女は何らかの記憶修正を受けたか、あるいは大規模な情報修正があったということです。」


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:18:47.46 ID:7WFO3LisO

それを誰がやったのかは解らないのか?

「はい、それどころか、この一年の間で、いつ行われたのか、どのくらいの時間をかけて行われたのかが全く解らないということです。

涼宮さんと関係があるのか、ないのかということも含めてです。」

そんなの考えてみるまでも無いさ、あるに決まっている。

「ええ、僕も全く関係ないとは思っていません、北高に彼女が来たのは涼宮さんの影響でしょうしね。

ですが、少なくとも涼宮さんには最初の情報修正や記憶修正は不可能ではないかと考えています。」

古泉はそこで一旦話を切った。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:19:48.58 ID:7WFO3LisO

「なんでだ?」

「涼宮ハルヒから、何らかの情報のフレアがあった場合、情報統合思念体や、古泉一樹がそれを察知できなかったのは不自然。」

「それに、見ず知らずの人の記憶を変えたり、自分にその記憶を植え付けたりする意味も彼女にはないでしょうから」

考えてみたらその通りだ。だとしたら、一体誰がそんな意味不明なことをやったんだ。第一、何故佐々木が選ばれた? 誰でも良かったのか、やはりあの話し方か。

「この際ですからお話しておきます。」

まだ終わってなかったのか。なんだ? 古泉


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:21:25.81 ID:7WFO3LisO

「以前、我々に対抗する勢力があるという話をしましたね?」

「ああ、あの誘拐女とか、いけすかない未来野郎のときか。」

「ええ。前者の方ですが、彼女たちは我々が涼宮さんに選ばれて、能力を得たのに対し、能力を得られなかった者たちの代表なんですよ。」

へえ、ある意味憐れなやつらなのかもな。

「それが何の関係があるんだ?」

「ええ、ここからが重要なのですが、実は、彼女たちは、自分たちこそ、本来あるべき姿と信仰し、能力を与える存在も、閉鎖空間を操る存在も、涼宮さんではない人物と主張しています」

古泉は笑顔を絶やさずに、しかしどこかいらついてるかのような雰囲気も出しながらそこまで言った。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:22:27.05 ID:7WFO3LisO

「まさか、それが佐々木だとか言い出すんじゃないだろうな。」

悪い予感とは的中するものであり、俺はその台詞を口に出したとき、激しく後悔した。

「その、まさかですよ。」

全く、俺だってこんなこと言いたくはないんだぜ? でもな、言いたくもなるんだよ。わかるだろ?

「やれやれ」

俺は溜め息をついた。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:23:35.25 ID:7WFO3LisO

「じゃあその対抗勢力の仕業というわけでもないんだな?」

「ええ、恐らくですが、彼女たちも我々と同じで基本的には一般人だと思います。」

「朝比奈さん」

「は、はい、多分違うと思います」

古泉と朝比奈さんの二人は、大体予想通りの答えを返してきた。だが、もう一つ、考えられることがあることを俺は覚えていた。

「長門、雪山での奴は、そのくらい出来ないか?」

「わからない」長門は、そこで顔を少し上げ、はっきりと「可能性はある」と続けた。



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:24:35.49 ID:7WFO3LisO

「組織は、しばらく黙認するようです。佐々木さんが僕達の近くにいることは、ある意味でいいことでもありますからね。」

なんでもないことのように言う古泉。朝比奈さんは朝比奈さんで

「私は、ただ対策を取る必要はない、としか……」

と、なんとも申し訳なさそうな表情で言ってくれたし、長門は

「情報思念体は、彼等、便宜的に『天蓋領域』と名付けられたものの解析に全力を尽くしている。この件に関しては、現状静観ということになっている」

と続けた。つまり、しばらくはそのままでいろということだ。
「何にせよ、あなたが鍵であることは、以前に増して重要になっていることは確かなようです。気をつけてください」

「お気遣いどうも」

ハルヒだけでなく、佐々木の相手もせにゃならんのか。骨が折れそうだ。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 23:52:54.99 ID:7WFO3LisO

そんな感じで、その日は解散した

時は流れて四日後、土曜日。

前日に、佐々木を交えての初めての市内探索の決行を宣言したハルヒに心中で呪いの言葉を呟きながら、

睡眠を欲している体を酷使していつもの集合場所へと向かっていた。

この数日間で、佐々木と関わっていくことに対し、一種の諦めのような物を感じ始め、

小難しいしゃべり方をするのは古泉と変わらないなら、野郎と喋るよりは見かけが良い美少女と喋っていた方がマシだと思うようになった。


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/22(火) 23:59:42.18 ID:7WFO3LisO

現在のところ俺の被害は、ゲームをしている俺と古泉に横から口出ししてくることだけだ。

これが一々的確だから余計に腹がたつのだが、試しに古泉とオセロをやらせてみたところ、見事に負けていた。何でだろうね。

集合時間15分前に駅前についたときには、やはり俺以外の全員は既にそろっており、「遅い、罰金!」の一言とともに、今日もまた俺のおごりと相成った。

しかも今回は一人分多い、勘弁してくれ。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:06:14.87 ID:doobX+MpO

一人増えて六人になったということで、午前中は三人の組が2つ、ということになった。まあ妥当なところだろう。

くじの結果、俺と佐々木と朝比奈さんは印なし、古泉と長門は印ありで、ハルヒは古泉達とともに行動することになった。

「いい、佐々木。デートじゃないんだから、二人が遊ばないように監視しておくのよ!」

というなんとも残念な注意に、やはり佐々木は

「わかったよ、涼宮」

と即答した。やはり息ぴったりじゃないかとか、なんで佐々木は注意いされないんだとか、色々いいたいこともあるが、ともあれ、俺たちは出発した。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:12:04.49 ID:doobX+MpO

「さて、どこにいく?」

端から真面目に探索気はない俺は、一応新人である佐々木に意見を求める。

「別に僕はどこでもいいよ。なんなら先程の喫茶店に戻ってテーブルや椅子の形に不思議を追い求めても構わない」

ほんの少し、こいつは本気で不思議を探索するつもりなのかも知れない、と考えていた俺はその言葉を聞いて幾分安心して、同じようにほっとしといる朝比奈さんにも意見を求める。

「朝比奈さんは、今何か必要なものとかあります?」

「大丈夫、今は特にないです。」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:17:01.08 ID:doobX+MpO

朝比奈さんはにっこり笑って返してくれたのだが、この場合、実は何かあってくれた方が助かるのだ。

何もすることがないからといって、その場で突っ立っていても仕方ないし、佐々木の言うように喫茶店に戻るのも面白くないので、

とりあえず歩き始めた俺たちは、デパートの催事場で華道の展覧会を知らせるポスターを発見し、そこに行くことを決めた。



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:22:22.06 ID:doobX+MpO

展覧会は生け花に全く興味の無い俺にとっては、すごいのかそうでないかもわからず、ただのアホガキのようにぼーっと見ているしかなかった。

佐々木は一々俺に解説をしてくれていたが、何とか流の由来やらを説明されたところで、

難しい話は華道よりも理解が困難な俺には、時折聞こえる聞いたことのある花の名前から、

「ああこれがその花なのか」と次元の低い発見を喜んでいた。

朝比奈さんは初めは物珍しそうに、「へー」とか「面白いです」とか可愛らしく言っていたが、

最初の衝撃から抜け出した後は、俺に説明することを諦めた佐々木の解説に熱心に耳を傾けていた。

俺は生け花よりもそんな二人の姿を見ている方がよっぽど楽しかったね。


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:30:41.51 ID:doobX+MpO

今度は特に注意を受けるでもなく探索が開始され、俺たちは並木道をただ適当に歩こうということに決めた。


「ハルヒに信頼されてるんだな」

今朝からのハルヒの反応を見て、感じたことを話題のきっかけ素直に口に出した。

「僕がかい?」

「お前以外に誰がいる。」

「確かにその通りだね。キミに霊感があるわけではないだろうし。でも、そうかな、キョン。僕にはただ君が心配されているだけのように見えるけど」

「確かにそれもあるかも知れないがな、それでもハルヒと一年程付き合ってきた俺らくらいには信頼されているように見える」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:35:09.88 ID:doobX+MpO

「ははは、もしかして嫉妬してりのかい?」

にやにやと笑いながら佐々木が問いかける

「まさか」

まさか、そんなつもりは毛頭無い。

「ふふ、僕としては、願わくはその信頼をキミからも勝ち得ていたかったけどね」

「悪かったな。もう疑ってはいないさ」

「冗談だよ、僕だって君が本当に知らないってことにはもう気付いているからね」

佐々木がどういうつもりでそう発言したのか、それは佐々木の表情からは読み取ることができなかった。


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:41:54.12 ID:doobX+MpO

「土曜日に、こんな過ごし方があったなんて知らなかったよ」

唐突に佐々木がそう呟いた

「どういうことだ?」

「前の学校にいたときは土曜日にも塾があったからね」

なるほど、そういえば私立の進学校に行っていたと聞いたな。

「こんな風に無駄な使い方はしていなかったってか?」

「いや、無駄なんかじゃないさ、とても有意義な楽しい時間さ。キョンともゆっくり喋りたかったしね」

「そいつはどうも」

なんと返していいかわからず、中途半端な返事をする。佐々木は聞こえていないかのように続ける


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:50:46.00 ID:doobX+MpO

「土曜日に友人と一緒にいるなんて、何年ぶりだろう。二年半ぶりくらいかな。」

「そんなにか」

「中学二年生の二学期くらいからだからね」

「へえ。いいのか、そんなに頑張って勉強してたのは、行きたい大学でもあったからじゃないのか?」

「勉強は自分でも出来るからね、それに、息抜きは必要さ。」
成る程優等生は返事が違うね。

「そうかい。ああ、もう一つ聞いていいか?」

「それが既に質問になっているけど、幾つでもどうぞ」

「お前はどうして転校したことになってるんだ?」

「別に何でもいいんじゃない?」

ことも無げに、佐々木はいう。

「例えば、父親の収入が減って学費が払えなくなったとかさ」

「気にならないのか?」

「気にしたって仕方のないことさ。なんであれ受け入れなくてはね」


90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:57:50.51 ID:doobX+MpO

佐々木がそう言って、一旦話が途切れる。暫く沈黙が続き、俺が何か話題がないか緑色の並木に目を泳がせていると、佐々木が思いきったように口を開いた。

「キミは、集団の中で強く孤独を感じたことはないかい?」

「は?」

急に何を言い出すんだこいつは。

「僕にはある。受験のとき、一所に集まる受験生の中にいるとき、電車に乗って通学しているとき、塾で一斉に授業を受けているとき、

僕は集団の中の一でしか無いんだということを強く思い知らされる。行きたい大学に入るという目標があって」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 00:59:10.06 ID:doobX+MpO

「もしその目標が達成されたとしても、それは僕の個を約束してくれるわけではなくて、やはり僕自身は集団の中の一でしかない。

それに気付いたとき、果たしてその目標に意味はあるんだろうかと考えてしまう。結局、考えても仕方ないし、すぐにしまっちゃうんだけどね」

佐々木はそう一息で言うと、また押し黙ってしまった。俺はいまいち話についていけなかったが、なんとなくどこかで聞いた話だとだけは感じた。


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 01:10:58.78 ID:doobX+MpO

言うべき言葉が見つからず、それでも何かしら言うべきだろうと口を開いたが、佐々木はそれを遮って、やはり微笑みを浮かべながら

「集合場所に戻らなくてはね。団長を怒らせてしまうといけないし。」

と言い、来た道を引き返し始めた。それっきりその話題は終わり、気候や並木や行き交う人々の姿など、とりとめのない話を二三ずつ交わすだけだった。

こうしてその日の探索は全て終了し夜中、夢うつつの頭に、ああ、出会った頃のハルヒが同じようなことを言ってたな、

と気付いた。最後だけが正反対だったことも。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 01:20:29.76 ID:doobX+MpO

次の日、日曜日、昨日の分まで昼前までゆっくり寝て、優雅な休日を過ごせそうだと思っていた矢先、招かれざる客によって俺の休日は見事にぶち壊された。

「こんにちは」

誘拐犯、忘れもしない女がドアの前に笑みを浮かべて立っていた。

「安心してください、もうあなたと敵対する気はありませんから」

ぬけぬけと誘拐女はそう言ってきやがった。そんなもん信じられるか。


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 01:34:46.33 ID:doobX+MpO

「だったら今すぐ俺の目の前から消えてくれ」

「ああ、すいません、自己紹介がまだでしたね、私の名前は橘京子」

俺の発言を完全に無視して女―橘京子はいう。

「今日は、佐々木さんのことで話があるの」

ああ、そういえば、古泉がそんなことを言っていたな。

「こっちには話すことなどない、いいから帰れ」

「そうはいきません、ってなにやってるんですか、出てきてくださいよ」

橘が、恐らく自身が乗ってきたと思われる車に向かって呼びかける。

「ああ、もう出ていってもよかったんですか」

車の中から聞き覚えのある声がする。まさか


103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 01:38:39.51 ID:doobX+MpO

「心中は重々お察ししますが、ここは一つ、彼女に従ってもらえませんか」

車の中から古泉がでてくる。なんだってんだ。

「おい、まさかお前寝返ったんじゃないだろうな」

「ええ、寝返ったというのは少し違いますね。我々と彼女らの組織は、敵対状態を解いたのです」

古泉がそう告げると、橘が後を引き継いで

「そうです、佐々木さんと涼宮さんが、私たちの予期せぬ接触をしてしまった今、私たちから佐々木さんにうかつに接触するのは危険と判断したのです」

「それはもともとは佐々木に接触するつもりだったということだな?」



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 01:45:30.30 ID:doobX+MpO

「ええ、もちろん平和的にですよ? それで、しばらく強硬手段に出ないことを約束する引き換えとして、あなたと接触する許可をもらったというわけです」

「勝手な約束するな。で、こいつの言ってることは本当なのか?」

古泉の方を見る。

「ええ、大方その通りです。もちろん、ここから先はあなたの承諾つきという条件ですが、僕も今後のためにも、知っておいた方がいいと思いますね。」

それで、俺に何をしろって言うんだ?

「佐々木さんの閉鎖空間に入ってもらいます」

「そんなものまであるのか」

「そのようです、僕は入ったことはないのですが」

古泉が残念そうに言う。なんで残念なんだ。


107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 01:55:26.29 ID:doobX+MpO

車はとある街角で止まり、俺は一年前の再現かのように、橘に手を引っ張られ、佐々木の閉鎖空間の中に入った。

「どうです? 涼宮さんのところより、落ち着いているでしょう?」

橘がそう言ってきたが俺は無視して周りを見渡す。ハルヒの閉鎖空間に比べて、全体的に少し明るいような気がする。

それ以外にはあまり目立った変化はないように感じたが、ただひとつ、ハルヒの閉鎖空間と大きな違いがあった。

この空間には《神人》がいなかった、でてくる気配もない。



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 02:02:28.58 ID:doobX+MpO

「この空間は四年前からずっとこのままなんです。佐々木さんは世界を壊す必要がないから」

と、橘は聞いてもいないのに解説をする。

「おっかない涼宮さんの力を平和な佐々木さんに移すのが私たちの目的なんだけど、今は見てくれるだけでいいわ」

確かに、言葉をそのまま捉えるにしても、普段の二人を見比べても、橘の意見は正しいように感じられる。

しかし、俺は少し違和感を感じていた。何か、重要なことに気付けないかのような違和感に。

ハルヒの閉鎖空間のように壊れるわけでもなく、入ってきた場所から出ていって俺の三回目の閉鎖空間への移動は終わった。
橘はさよならといってそのままどこかに消えていって、俺は古泉とともに車に乗り家に帰った。

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 02:14:31.67 ID:doobX+MpO

古泉は何度か俺に謝罪し、感想を求めてきたが、とくにそんなものはなかったからそう言ってやった。

一体俺は橘の言った何に引っ掛かったのか、考えても答えは出てこなかった。

翌日、長門から、天蓋領域とやらは情報の伝達方法が違うらしく、情報改変をしたのかどうかは未だ解らない、なお解析中であるという話をきいた。


116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 02:25:37.59 ID:doobX+MpO

また何日か経ち、そんなことも忘れかけていたころ、掃除当番だった俺が遅れて俺が部室に行くと、いつも通り、メイド服姿の朝比奈さんが、

いなかった。珍しく制服姿のままの朝比奈さんがいて、やっぱり制服姿の朝比奈さんもいいなと、思うよりも早く俺は違う衝撃に襲われる。

「やあキョン。掃除はちゃんとやって来たかい?」

メイド服姿の佐々木が、そこに立っていた。悪くない



119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 02:32:52.12 ID:doobX+MpO

「駄目じゃない佐々木、ちゃんとメイドさんっぽく喋らなきゃ」

「それは残念ながらできないかな。キョンがそんなことをやらされたとして、涼宮はどう思うんだい?」

「そんなの気持ち悪いだけじゃない」

「だろう? 僕も一緒だ。それにしても、この服、僕にはあってないみたいなんだが。」

勝手に名前を出して気持ち悪いとか言わないでくれ、失敬な。

「そうね、特に胸囲が問題ね。なんとかならないかしら。」

「無理じゃないかな。」

などとアホな会話を聞き流して、俺はいつもの席に座った。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 02:46:09.44 ID:doobX+MpO

佐々木は口調以外は完璧にメイドを演じ、その日の団活も長門の合図で終了した。

着替えるために先に出ていくように皆に言った佐々木に、話すことがあったので俺は部室に残った。

「なんでもかんでも無理に従うことはないぞ」

「別に、無理をしているわけじゃないさ、結構楽しいよ」

無理している訳じゃないとはいうが、無理せずメイド服を着れる人間がそういるとは思えない。

「お前は、何が起こってもあまり動じないのか? 適応力が高いというか。」


129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 02:50:05.99 ID:doobX+MpO

「……やっぱり僕には演技の才能があるのかな」

「え?」

「いや、着替えるから出ていってくれ。これでも僕には羞恥心だってあるんだ」

「あ、ああ、すまん」

結局、もう一度聞き直すことはできなかったが、それはあまり必要がなかった。

いやでもそのことを考えさせられたからな。

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/23(水) 03:09:21.08 ID:doobX+MpO

申し訳ありませんが、多分ここで俺が落ちたら変な人に落とされるような気がするし、保守をお願いするのもあれなのでもうこの辺でやめようかと思います。
時間をおいて修正もしていずれ完成したらまたスレ立てるかも知れません。

本当にすいません。乗っ取りにここまで付き合ってくれてありがとうございました。



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