キョン「これが俺の答えだ」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:41:18.23 ID:q+crdj4/0

春と言うにはまだ肌寒い初春の朝、俺は物思いにふけっていた。
相も変わらず俺のベッドの毛布を寝床にかまえたシャミセンが、寝覚の悪そうな顔付きで顔を洗っている。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:51:52.21 ID:q+crdj4/0

そんなシャミセンを俺はしばらく理由も無く眺めていた。いや、理由ならあるな。
自分でもよおくわかっている。なぜなら、いまや俺の心理状態はメランコリーの境地に達しており、俺にもまだまだこんな感情が残っていたんだなと、一人感心しているのがその証拠さ。
俺は2ヶ月かかってやっとクリアしたRPGゲームのエンディングを眺めている時の、なんとも不思議な、それでいて淋しいようなあの感情を100倍にしたような心境に陥っていたが、そんな思いを一人はべらせているとドカドカと朝の悪魔が俺の部屋に駆け上がってくる音がした。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:56:56.91 ID:q+crdj4/0

ガチャリ
自室のドアが開く。どうやら毎朝俺を心地の良いノンレム睡眠から現実へと引き戻す事を日々の日課、もとい楽しみとしている忌まわしきコイツは少しばかり驚いたようだ。
『キョン君起きてたんだ〜。なぁんだつまんないの』
俺はお前の玩具か?
それからそろそろその奇妙な呼び方は止めてもらいたい。もう中学生なんだからちゃんとお兄ちゃん、等とカワイらしく呼んでみたらどうだ?もっとも俺には妹属性も無いがね。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:10:31.02 ID:q+crdj4/0

>>7悪い慣れないうちは勘弁な

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:11:38.28 ID:q+crdj4/0

暗めの紺色のセーラー服に身を包んだ妹は、もう聞き慣れてしまった
奇妙なシャミセンのごはんの歌を口ずさみながら、これ以上迷惑な事は無いと
言わんばかりの表情を浮かべる愛猫を抱えて部屋を後にした。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:16:50.00 ID:q+crdj4/0

俺はいつもより少し早く家を出た。
駅までの道のりのさなかで、まだ自分のはく息が
空気中を白く濁らせる気温に少々のストレスを感じつつ、
何時ものように電車に乗り、そして降り、
三年間よく嫌にならずに足しげく登ったなと
自分を褒めてやりたくなる毎度の坂道を見上げた。
何時もと変わらず俺を拒むように延びる坂道を上がっていくと、
けだるそうに揺れる見馴れた後頭部を発見した。
言わずともわかるだろ?谷口さ。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:29:02.25 ID:q+crdj4/0

だが生憎今日は朝から奴の1ミクロンも意味をなさない
一方的な会話を聞いてやる気分ではない。
こんなけったいな坂道でも名残を感じておきたい
という感情が不思議と俺にはあったからな。
誰しも思い出にふけりたい瞬間はあるものさ。
ハルヒなら何の遠慮も無しに駆け上がりそうなものだが…。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:34:35.64 ID:q+crdj4/0

幸い俺の思考回路は
脳内を1000メートルダッシュなんてしないように出来ているようで、
わずかな物にも哀愁を感じられる気分になっていた。
小さく揺れる谷口の頭を眺めながらえっちらおっちら歩いていると、
色々な事を思い出した。アホな自己紹介に、これまたアホな団の設立。
草野球大会、
孤島で起こった殺人事件、
繰り返す夏休み、
三年前の七夕、
パラレルワールド、
雪山の遭難、
宇宙戦争に映画とは到底呼べないシロモノを作ったりもした。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:41:46.58 ID:q+crdj4/0

そこには何時も能面を被った
無口な宇宙人や戦うウェイトレスでありバニーでありカエルであり
サンタクロースでありナースであり、そして俺のすさんだ心を
何時も癒してくれたメイドさんでもある愛くるしい未来人や
ニマニマした面がやけにカンに障る超能力者がいた。
そぉいやとうとう異世界人は出てこなかったな?

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 00:02:51.88 ID:qsrII/Sl0

え?誰かを忘れてないかって?
あぁ。もちろん一連の事件の中心には
何時だって何でもアリの現世界の理論を木っ端みじんに粉砕する
スーパーガールがいたな。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 00:04:02.81 ID:qsrII/Sl0

思えばよくもまぁあんな無茶苦茶な奴が卒業まで退学にならなかったもんだ。
もしもハルヒの行動を肯定し、配慮を行う学校関係者がいるなら
俺は顔を見てみたいね。
天上天下唯我独尊という八文字熟語をそいつは知りもしないはずさ。
幸にも俺は谷口に発見される事なく校舎へとたどり着いた。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 00:05:15.94 ID:qsrII/Sl0

卒業式なんてものは文面に表してしまうと大変退屈なものである故、割合しよう。
俺自身、記憶にひっかかったものと言えば
保護者回覧席に小さく座っていたスーツ姿の朝比奈さんの輝かしさと、
壇上の真上高度8メートル位に描かれた北高校の章卒を
キッと睨みつけるハルヒの横顔位だからな。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 00:24:56.83 ID:qsrII/Sl0

ちなみにコイツは校章や補助系呪文の効果を持つ

ながったらしい校長のスピーチに怒っている訳ではなく、

コイツの表情をつかさどる筋肉はどういう表情をしていいかわからない時や
感情を隠したいときにはとりあえず怒り顔を形成するという特徴がある事を
俺は知っているからな。

そんなハルヒの横顔を見て俺は不覚にも小さく口元を緩めてしまった。

ーちょっと待て。

なんだこの感情は。ありえん。

俺はきっと三年間の疲れと、かろうじて卒業にこぎつけた安堵から、疲れが表にでているんだろうな。

きっとそうに違いない。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 00:27:43.53 ID:qsrII/Sl0

卒業式も無事に終わり、俺は当然のように文芸部室へと足を運んでいた。

習慣というものは恐ろしいものだな。

恐らく今日で歩くのも最後になるであろう部室への渡り廊下を歩きながら

今日、この卒業式の日に、我らがSOS団の団長様はいったいどんな表情をみせてくれるのだろうと俺は少しもどかしい気持ちになっていた。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 00:59:15.06 ID:qsrII/Sl0

俺は文芸部室の前で足を止めた

今となってはノック無しに目の前の扉を開いたところで

生着替え真っ最中の天使には会えないとわかってはいても

これまた習慣というやつはなかなか体から離れてくれないもので

俺は朝比奈さんが卒業した後も

いちいち毎回ノックを怠らなかった

もちろん今日だってそうさ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 01:09:12.66 ID:qsrII/Sl0

ノックをした後、俺は5秒程の沈黙のはて

扉を開いた。そのにはいつもどうりの景色

窓際に生物反応がまるで無い様な空気を放つ長戸の姿があった

こんな日でも長門はきっちり、まるでそこが自分の低位置であるかのように

窓辺でハードカバーを開いていた。

「長門、お前だけか?」

長門はいつもどうり、目線を本から反らさないまま小さく頷いた

パソコンが設置された中央の机

団長と書かれた三角錐が今日は寂しくも見える

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 01:22:02.73 ID:qsrII/Sl0

ふと哀愁にふけっていると、小さくノックがなった

のんな部室のドアを律儀にノックする人なんて用意に想像はつくだろ?

つい先程も眩いばかりのスーツ姿を網膜に焼き付けておいたところだしな。

「ふぇ。お二人だけでしたかぁ?」

「わざわざ卒業式まで、ありがとうございます」

「いえぇ。とぉっても感動しましたぁ。時間が経つのは早いものですぅ」

朝比奈さん。あなたが言うと違和感ありまくりです。

「お茶を入れますねぇ」

久しくご無沙汰であった、この世で恐らく最も価値があるであろうお茶を口に出来る事に俺は正直心躍った。

すいません。お言葉に甘えて。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 01:25:32.13 ID:qsrII/Sl0

「ふぇ。お湯がありませんねぇ…少し待ってて下さい。お水を汲んできますねぇ。」

いえいえ朝比奈さんにそんな雑用をさせるわけにはいきません。俺が組んできますよ。

「ありがとうございますぅ」

いえいえ。朝比奈さんのたてたお茶が飲めるのならお安い御用です。

ヤカンを片手に俺は部屋を出ようとした。なんだか雑用すらも哀愁を感じるぜ。

「待って」

俺の足をせき止めたのは長門の声だった。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 01:40:39.56 ID:qsrII/Sl0

今日初めて声を聴いたな。どうしたんだ長門?

「私も同行する」

ヤカンに水を汲むだけだ。まさかナイフで刺される事もないだろうに、どうしたんだ?

「……」

長門は俺の手からヤカンを奪うと振り返らず歩いていく

なんだってんだ?らしくない。朝比奈さん、少々お待ちを、直ぐに戻ります。

長門は部室を出てすぐの所で俺を待っていた。

どうしたんだ?何かあったのか?

「話がある」

しばらくの沈黙が続いた後長戸が言葉を続ける

「とても重要な事」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 01:43:16.97 ID:qsrII/Sl0

まさかまたハルヒが何かやらかしたのか?

卒業が嫌だと言って三年生を繰り返したりなんて事は無いだろうな。それだけはご勘弁願うぜ。

「そうではない」

じゃあなんだってんだ?まさか長門からハルヒに関する以外の問題を聞くとは思わなかったが…

「……」

長門は少し躊躇っているようだった。ココ三年間で長門も随分と表情が増えた用意思うが、ここまで深刻な顔をした長戸を見るのは、俺も初めての事だった。

どうしたんだ?今までさんざんな目にあってきたんだ。もう何を言われたって俺は驚かないぜ?

「そう…」

長門は少し俯いたまま、それでも口を開きにくそうにしていた。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 01:46:56.57 ID:qsrII/Sl0

「そう…」

長門は少し俯いたまま、それでも口を開きにくそうにしていた。

なんでもこいってんだ。もう驚く元気もハルヒに全てこの三年間で持っていかれちまったからな。今更何が起こってもどうって事ねぇぜ?まさかハルヒのやつも今更この世界をぶっ壊そうとはしないだろうしな。

「今のこの時間平面状の世界を改変する能力を持っているのは涼宮ハルヒだけでは無い」

それなら十分理解しているぜ?長門、お前も一度は…

「今回は私でもない」

…っていうと。まさかまた九曜とやらがいらぬ事を企ててるとかか?

「そうではない。九曜と呼称されたソレは、現在の時間平面状にはもう存在していない」

じゃあ誰が何をしようとしてるんだ?もったいぶらないで教えてくれよ?

「……」

長門は少し間を空けた後、静かに、力なくこういった。

「今、この平面世界を変えようとしてるのは…アナタ…」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 02:02:13.92 ID:qsrII/Sl0

長門の思いがけない言葉に俺はあっけにとられた。

ダムが決壊したかの如く、長門は続けて淡々と言葉を並べていく。

「厳密に言うと、アナタ自信にその力がある訳では無い」

「補足するならば…この時間平面上での時間平面座標を狂わせる存在。それがアナタ」

「飽和状態を維持できない状況になった」

「今までその異変に気付けなかった。これは私の責任でもある」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 02:04:52.94 ID:qsrII/Sl0

ちょっと待ってくれ。説明しようと努力してくれているのはわかるが、俺は…

「つまりはこういう事ですよ」

俺の言葉をニヒルなその声で切ったのは他でも無い古泉だった。いったい今までドコにいたんだ?

「アナタ自体にはその力はありませんが…」

「そもそもアナタという存在自体が、この世界ではイレギュラーな存在という事です」

「そうですよね?長門さん」

「そう…」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 02:20:14.84 ID:qsrII/Sl0

ちょっと待ってくれ。俺がイレギュラー因子そのものだって事か?

そんな事は断じて無いはずだ。

何しろ俺は宇宙人でもなければ未来から来たわけでも無い。

ましてや超能力なんて持って無いんだぜ?

「実は少し前から、そうですね…今年の初めの頃には我々の機関もその事実には気付いていました」

「説明が遅れた事は申し訳無いと思っています。でもアナタ自信にそれをうちあける訳にはいかなかったのですよ」

「何しろ、この問題に関して、我々…いや、きっと長門さんの上司も判断に困っていたのかと思われます」

「何しろこれは由々しき自体です。この事実を涼宮さんが知ってしまうと…」

「これは情報統合思念対にも予測が出来ない事実…」

「そういう事です。かといって、今回の場合、事実を隠し通す事は出来ません」

「事実を隠し続けたとしても世界の方がそれについていけません。かといって涼宮さんにこの事実が知れてしまう事も予測が出来ない危険な事です」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 02:31:11.59 ID:qsrII/Sl0

ちょっと待ってくれつまりは俺が長門や古泉や朝比奈さんのような、普通の人間じゃない様な一人だって事なのか?

「少し事情は違いますけども…簡単に説明するとこうなります」

「そもそも、涼宮さんが作り出したとされる、僕達、宇宙人や未来人は、この世界ではあるべくしてある存在だと言う事です。この状態こそが、今僕達が立っているこの世界のデフォルトの状態だった…という事になります」

つまり…世界がずれてるのは俺の方だと?超能力者がいて宇宙人がいるこの世界が本来の姿で、俺はその中では別世界の存在だって事か?

「そうなりますね。かいつまんで話ましょう。アナタは異世界人に該当します」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 03:02:55.90 ID:qsrII/Sl0

なんてこった…。

いきなりそんな事実を突きつけられたところで、信じられる訳が無いだろうが。

だが長門までもがそう言っている以上、それは列記とした事実なんだろう。

…で、俺は何をどうすればいいんだ?

「それはアナタにお任せします。我々機関もアナタの動向を見守るまでですよ。」

ここで長門はやっとの思いで口を開いたように言葉を続けた

「異世界のイレギュラー分子が生み出す、空間の捩れは時に新たな力をも生み出す可能性がある」

「イレギュラー分子事態がこの世界のものでは無い以上、現空間に与える影響の大きさははかりしれない」

長門…何が言いたい?古泉みたいにかいつまんでまとめてくれないか?

「……」

「涼宮ハルヒに時間や時空を改変する能力を与えているのは…アナタ…」

考えもしない事だった。それは長門も同じだったようで初めて見る少し困った表情を見せていた。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 03:11:44.82 ID:qsrII/Sl0

つまりは…ハルヒが奇跡を起こすスーパーガールになっちまったのは…俺の影響だってのか?

ハルヒが神がかった力ってのも実は張りぼてで、実は俺が知らぬ間に裏で糸を引いていたと…

そういう事なのか…?

俺がいなければ…この世界がぶっ壊れるような危機もなく…

ハルヒも普通の女の子としてこの世界に存在する事が出来たって事なのか?

だとしたら俺のもっている今までの記憶は?

ハルヒに会ってからじゃない。北高に入学するまでの記憶は…

いったいどうなってるんだ?…考えれば考えるほど…。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 03:12:25.78 ID:qsrII/Sl0

いや、考えるべきなのは俺の問題じゃない!

ハルヒも本当は普通の女子高生として生きていけた方が幸せだったはずだ!

長門も…読書好きの大人しい女の子としてこの世界に馴染めてたのかもしれない!

責任ばっか背負わせて、人知れず俺達やハルヒや世界の為に暗躍して…

俺の命まで救ってくれて…

古泉だって…俺がいなければそれなりの高校生活を満喫できただろう

朝比奈さんも無駄に時間移動を繰り返すハメにならなくてすんだんじゃないのか?

俺は抜け出せない暗闇に身を投じていくようだった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 03:37:03.63 ID:qsrII/Sl0

長門…それで俺は結局のところどうすればいいんだ?

「…一番簡単な解決方法はアナタが自分の空間に戻る事」

戻るって…簡単に戻れるものなのか?

「それ自体は難しい事では無い。危険性も無視できるレベル。でも…」

…でも…なんだ?

「その場合、アナタの記憶も元の世界の記憶と統合して改変される可能性がある」


それはつまり、俺の記憶がなくなっちまうって事か?

「そう…最低圏内で考えても、この三年間の記憶が残る可能性はゼロに等しい」

…そうか…でも、それで全ての問題は解決できるんじゃないのか?何かまだ問題でもあるのか?

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 03:41:01.73 ID:qsrII/Sl0

「長門さんが考えているのは―
僕達の記憶も改変される可能性についてではないのでしょうか?」

「………」

「図星のようですね。僕達や涼宮さん、それに朝比奈さんも…」

「恐らくアナタに関わった人たち全ての記憶からアナタは消えてしまうと言う事ですよ―
そういう事ですね?長門さん」

2つの記憶を一固体が同時に持つことは有機生命体には出来ない事」
「それと同様に世界が再構築される前と構築後の記憶を同時に持つ事も不可能」

長門はそんな事を考えてくれてたのか?もしかして…
こいつにも、思い出を惜しむ感情があるのか…?
いや…生まれたんだろう…この三年間で…そうだよな長門…。

「ちょっとあんた達」

聴きなれた声にその場にいた三人がとっさに振り返る。

くそったれ!一番聞かせれてはいけない人物に

聴かれてしまった―か?

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 04:00:47.22 ID:qsrII/Sl0

「あんた達こんな所で何してんのよ?部室に行ってもみくるちゃんしかいないし」

「あたしに黙ってこそこそ話しだなんて、関心しないわね?団員にあるまじき行為よ?」

「それでなくとも今日は卒業式なの。大事な日でしょ?」

よかった。ハルヒには聴かれていなかったようだ。

長門が無言で部室に戻って行った。

古泉もいつもの笑みをとりつくろい、場をかわしたようだった。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 04:46:09.82 ID:qsrII/Sl0

「ほら。あんたも戻るわよ」

おおせのままに団長様―

「キョン―あんた…」

なんだよ?………ん?

「…まぁいいわ。とりあえず、緊急のミーティングがあるからはやく来なさい」

「SOS団には卒業なんて無いんだからね!」

へいへい。……ハルヒ…ごめんな…。

「何か言った?」

いやなんでも無い。行こうぜ?

「なんなの気持ち悪いわね」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 04:47:39.88 ID:qsrII/Sl0

部室に戻ると朝比奈さんにヤカンを手渡し、

湯が沸くまでのしばしの間ハルヒの力説を聞く事となった。

「いい?学校を卒業したからって、SOS団は継続するからね」

「部室が無くなるのはなんだか寂しい気もするけど、
いつもの喫茶店ででもミーティングはできるし、特に問題は無いでしょ?」

「あと………」

ハルヒにしては珍しい間があった

「私達SOS団は私が解散宣言をするまで、絶対に離れ離れにはならないんだからね…」

急にしおらしい事を言うもんだなと思った。こんなハルヒはそうそう見れるもんじゃないと思う。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 04:48:49.73 ID:qsrII/Sl0

「絶対よ!!わかったわね!?私に無断でどこかにいっちゃったりなんて、絶対に許さないんだからね?」

俺はハルヒの話をうつつに聞きながら…俺の中での小さな世界の終わりについて考えていた。

ハルヒはその時どんな顔をするのだろうか。俺がいなくなった後のハルヒはどんな余生を送るのか…

SOS団の雑用係りは誰になるのか…

そんな事を考えていた。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 04:56:11.22 ID:qsrII/Sl0

「とりあえず、明日はこれからの活動内容についても議論が必要だと思うし
色々と決めたい事もあるからいつもの駅前に9時に集合ね?
いい?キョン、遅刻するんじゃないわよ?」



その日の夜、家路につくとすぐに電話が鳴った。見なくても相手は容易に推察できる

ああ…長門か?

「今からあの公園で待つ。詳しい話は後で…」

それだけ言うとすぐさまに電話は切れた。できれば忘れたい事実を
俺は忘れる事なんて出来ない事を、もう自分に知らしめた。

公園につくと、長門はいつものベンチで待っていた。
卒業したって事も忘れる位北高の制服が良く似合っている。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 05:04:56.09 ID:qsrII/Sl0

「大事な話が2つある」

「まず一つ目情報統合思念体の決議がなされた」

「アナタは本来アナタがいるべき世界に帰るべき…それが情報統合思念体の意思」

「二つ目」

「…」

長門は少しの間を置いて二つ目を囁いた

「私1固体として、アナタとの情報共有の存続を望む気持ちがある」

―どういう事だ?

「アナタにこの世界に残って欲しいという気持ちが少なからずある」

……俺は小さく微笑んだ。

長門が感情を自分の口で明確に話したのはこれが初めてだったからな。

微笑みたい気持ちもわかるだろ?

ありがとうな…長門…

でも俺は正直この世界からいなくなる事も良いかなと考えているんだ。

「…そう…」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 05:11:03.99 ID:qsrII/Sl0

勘違いしないでくれよ?長門やみんなの事はもちろん大好きさ。

でも…わかるだろ?俺は長門やハルヒや朝比奈さん…もちろん古泉にだって…

できれば平穏で危険の無い人生を歩んで欲しいと思ってる。もう俺は十分に楽しんださ。

本当に楽しかった。感謝してる。結局のところ、どっちが正しい選択なのかは俺にはわからない。

でもこれから先、長門やみんなが平穏に暮らせるなら…俺はそれを望むんだろうと思う。

それから長門…もう休んでいいんだぜ?お前は頑張りすぎだ。

この世界にはもっともっと楽しい事が沢山あるんだ。

お前が感動する本だって沢山あるはずさ。

俺はみんな…平穏に暮らして欲しいと思う。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 05:19:47.98 ID:qsrII/Sl0

長門は黙って俺の目を見据えて話を聞いていた。

ふと長門の左手が何かを掴んでいる事に俺は気付いた。

長門、その、左手に持っているものは何だ?

「これを渡しておく。」

「世界を再構築する為に、アナタが本来の世界に戻る為に必要なキーになるもの」

長門から手渡されたそれは小さな卵のようなカプセルだった。

どうやってつかうんだこれ?

「握ればいい。中にナノマシンの気体が圧縮されて入っている」

「卵を割れば時空改変が始まる。あとはアナタしだい。」

そうか…最後まで世話になったな…もう話は終わりか?

「最後に一つ」

今日は珍しく良く話すな長門。俺は少し嬉しくなった。

「涼宮ハルヒについて」

…ハルヒがどうかしたのか?

「涼宮ハルヒは、感ずいている」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 05:30:02.78 ID:qsrII/Sl0

感づいてるって…まさかあの時話を聞かれていたのか!?

「そういう訳では無い。無意識レベルではあるけども、かなり前から
涼宮ハルヒは私や古泉イツキの存在が、通常とは異なる存在である事に気付いている」

ハルヒが…気付いていた?でもおかしいじゃないか。それなら何故アイツは未だに
SOS団なんてやってるんだ。当初の目的は果たしてるって事になるだろ?

「今涼宮ハルヒにとって、SOS団は団そのものに意味がある対象へと変わっている」

「涼宮ハルヒは現状の状態に満足しているように見える。閉鎖空間がここ2年間生まれていない事を考えると、そのあたりから涼宮ハルヒは気付いていてもおかしくはないと思われる」

なんでもおみとおしだったって訳かよ…。

でもどの道俺がこの世界にとどまり続けちゃまずいんだろ?

ハルヒも普通の女の子に戻って欲しいしな?

あいつも普通になれば恋愛の一つも出来るだろ。

俺はそんな普通の生活をアイツにして欲しいんだよ。

「……そう…」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 05:39:59.54 ID:qsrII/Sl0

じゃあそろそろ行くぜ。ん?長門、どうしたんだ?

「来た…」

来たって何が…

振り返ると、ハルヒがこちらへ歩いてきているのが見えた。

両脇には古泉と朝比奈さんまでいる。

あろう事か朝比奈さんの手にはシャミセンまで抱かれている。

俺が口をあけていきなりの登場を見ていると、とうとうハルヒは俺の目の前まで…

よ…よぉどうした揃いも揃って…。

古泉が方をすくめておきまりのポーズで持って状況を説明した。

「すいません。実は…」

「古泉君に事情は聞いたわ。っていうより、
アンタ本当にあたしが何も気付いていないとでも思ってたわけ?」

ハルヒの目には明らかな怒りが沸いていた。

「という事でして…涼宮さんは全ておみとおしだったという事なんですよ…
僕も正直驚きました。こうなると機関も口無しです…」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 05:53:04.55 ID:qsrII/Sl0

「…で、キョン、あんたいったいどうする気?今日あたしが言った事、まさか忘れた訳じゃないでしょうね?」

ああ…忘れてなんかいないさ…だがもう決めた事なんだ。お前もこれからはあぁぶ!!

話半分、ハルヒの強烈なビンタが俺の左頬をふっとばした。

「あんたそれでみんなが納得すると思ってるの?本当にアホなのね!」

「やっと面白くなってきたんじゃないの!これからのSOS団の活動には
誰一人団員を欠かす訳にはいかないの!!」

「なにからなにまで一人でカッコつけようとして!!」

「あたしには何もしらないふりをして!!」

「あたしの我儘にも文句も言おうとしないで!!!!」

「いつもいつも…いつもいつも…いつもいつも…」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 05:54:45.35 ID:qsrII/Sl0

ハルヒ…悪かったな…最後まで怒らせてしまったな…。

俺は手に握った長門にもらった卵を握ろうとした

「………やだ……」

俺はハルヒの目に…涙が浮かんでるのがはっきりと見えた

「やだ…やだ…やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」

ハルヒの目から大粒の涙が零れ落ちた。

と同時に震度7はあろうかという衝撃が俺達を襲った!!

あたりの森林はざわめいたかと思うと木の根まで地面からむき出しになり

若木は暴風に吹き飛ばされベンチなんtねとうのむかしに吹き飛び粉々になっている

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 06:03:56.78 ID:qsrII/Sl0

「これはまずいです。これまでに無い…信じられない規模の閉鎖空間です!!」

「ひぃぃぇぇぁぁあ!!」

「……世界を蒸発させるレベルの時空波…」

「これは…まずいです……世界が……終わる!!!」

「意味わかんない…やだやだやだやだやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

空は灰色に染まり辺りの質量を持つ様々なものが休息な速度で風化していく

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 06:05:05.74 ID:qsrII/Sl0

ハルヒ…涼宮ハルヒ…

俺の脳裏にコレまでの思い出が浮かぶ

ハルヒと過ごした日々がフラッシュバックする

SOS団

閉鎖空間

くそ…本当は最初からわかっていた事なのに…!!

自分がどうしたいかなんて…!!

周りを考えないなら…自分がどうしたいかなんて…!!

俺本人の意思は!?

俺の考えは!?

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 06:13:43.70 ID:qsrII/Sl0

「小僧!一度しか言わんぞ!選択の時だ!今ならまだ間に合う!」

しゃみせん!?野郎やっぱり話せるんじゃないか!それにしても
選択の時だと!?

俺に全てが掛かってるのか?早く…早くこの卵を潰さないと…!!

世界を元の平和な世界に戻すんだ!!!

俺がどうしたいかだって!?

くそったれ俺が今この世界の命を握ってるって言うのかよ!

辺りはもう公園と呼べるものではなくなっていた。
まわりにあったマンションやビルまで吹き飛ばされ、
ハルヒを軸にした巨大なトルネードまで巻き起こってやがる!!

「あんただって!!もっと面白い世界がいいって思ってたんじゃないの!!?」

「もっと楽しい世界がいいって思ってたんじゃ無いの!!?」

いつかのセリフが耳を掠める…

ごめんな…ハルヒ…

キョン『これが俺の答えだ』

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 06:25:47.80 ID:qsrII/Sl0

俺は…俺は…

俺はなぜか卵を捨て…ハルヒを抱き寄せていた…

ハルヒ…ごめんな…俺はこんなチンプンカンプンな世界でも…

たとえ自分の選択が今この世界を危険にさらそうとしている事がわかっていても…

俺は…俺は…

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 06:26:30.82 ID:qsrII/Sl0

お前と一緒にいたい!!!!!



ハルヒの目から、涙が溢れ出した。

俺は構わず卵を捨て、涙でぐしゃぐしゃのハルヒと唇重ねた…。








69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 06:27:41.72 ID:qsrII/Sl0

ハルヒ…俺と一緒にいてくれるか?いつまでも一緒にいてくれるか?



「………バカじゃないの…」





いつしか辺りは元の静かな公園に戻っていた。


卵はしゃみせんがどこかへくわえて持っていったようだ。


しゃみせんの事だからへたな事はしないだろう。ひとまずは安心していいと思う。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 06:30:48.44 ID:qsrII/Sl0

その後の事は割合しよう。俺は今も愉快なメンツと毎日を楽しくアホに生きている。

そう

世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団

SOS団と…


                          END

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/30(日) 06:32:12.16 ID:qsrII/Sl0

誤字脱字多くてすいませんでした。初めてこういうの書いてすっげぇ疲れた。みなさんおやすみぃ



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