古泉「あなたが好きです」


メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:ハルヒ「ホモセックスを観察したいから協力しなさい!」

ツイート

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 17:40:07.62 ID:UzPEb9oO0

ハルヒ「は?」

一瞬何を言われたのかよく分からなかった。

思わず聞き返してしまったあたしに古泉くんはさっきと同じ調子でもう一度言った。

古泉「ですから、僕はあなたの事が好きなんですよ涼宮さん」

ハルヒ「え………」


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 17:41:31.19 ID:UzPEb9oO0

聞き間違いじゃなかったみたいだ。どうやら古泉くんはあたしの事が好きらしい。

ってちょっと待って。何よそれ、古泉くんがあたしを…

ハルヒ「好き?」

古泉「ええ、お慕いしています。ずっと前から」

古泉くんはいつも通りニコニコ笑っている。嘘かホントか分からない。

でも古泉くんって、冗談でこんな事いう人間には見えないけど…


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 17:46:33.72 ID:UzPEb9oO0

ハルヒ「………」

古泉「………」

あたしが反応に困っていると、古泉くんもちょっと困ったような顔をして申し訳無さそうに頭を下げた。

古泉「すいません、困惑させてしまいましたね。今の発言は取り消します、気にしないで下さい」

ハルヒ「えっ?」

きょとんとして顔をあげると古泉くんはまた笑顔に戻っていた。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 17:50:17.55 ID:UzPEb9oO0

古泉「引き止めてしまってすみませんでした。さて、帰りましょうか」

ハルヒ「ちょっと待って!」

部室から出ようとした古泉くんをあたしは慌てて呼び止める。

古泉「何ですか?」

ハルヒ「勝手に告っといて勝手に帰ろうとするなんて却下よ。それとも冗談だったとでも言うつもり?」

古泉「いえ、冗談ではありませんが…ただあなたが困っているようだったので」

ハルヒ「そ、そりゃあたしだっていきなり告られたら少しは驚くわよ!」


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 17:56:12.28 ID:UzPEb9oO0

そこらの奴だったら速効でフってやるだけだけど…まさか古泉くんに言われるとは思わなかったもの。

正直言うと内心では結構動揺してるんだけど、それに気付かれないように強気に言葉を続ける。

ハルヒ「古泉くんが本気でそう言ってるならあたしだって考えるわよ」

そう言うと今度は古泉くんが驚いた顔を見せた。

古泉「………と、いいますと?」

ハルヒ「とりあえず、今度の日曜日にデートしましょう」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 18:00:35.58 ID:UzPEb9oO0

次の日の放課後、あたしはなかなか部室に入れないでいた。

ハルヒ(何か…入りづらいわね)

昨日、この部屋で古泉くんに好きだと言われた。

返事は一応保留という形にしたけど、勢いでついデートに誘ってしまった。

今までそういうものに誘われる事はあっても自分から誘った事なんて無かったのに。思い出すと少し恥ずかしい。

とにかく、部室に入ったら古泉くんに顔を合わせる事になるだろう。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 18:06:37.97 ID:UzPEb9oO0

昨日の今日だから何となく照れるというか気まずいというか…こんな時ってどんな顔をすれば良いんだろ?

わからないから、柄にもなく躊躇って扉の前で立ち尽くしたまま悩んでいた。

古泉「入らないんですか?」

ハルヒ「ちょっと待ってよ、まだ心の準備が……って古泉くん!?」

古泉「すいません、クラスの用事で遅れてしまいました。で、心の準備って何です?」

ハルヒ「ななな、何でもないわ!入るわよっ」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 18:14:23.39 ID:UzPEb9oO0

びっくりしたー。いきなり背後にいるんだもの。

突然現れるもんだから焦ってつい赤面しちゃったけど、気付かれてないわよね?

部屋に入る時、肩越しにちらっと古泉くんを見上げてみたけどやっぱりいつもの笑顔だった。

あまりにいつもと変わらない様子だから昨日のアレは夢だったのかもしれない不安に思いかけたとき、

古泉「もし宜しければ、今日は一緒に帰りませんか?お話したい事がありますので」

小さな声でさりげなく耳打ちされて、あたしはどうしてだかホッと安堵してしまった。

夢でもなんでもない。古泉くんがあたしを好きだといった事は、事実なんだ。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 18:24:36.18 ID:UzPEb9oO0

その後は部室の中で過ごしたけど、何だかあたしは一人でソワソワして落ち着かなかった。

他の団員は普段通り。有希は本を読んでるし、みくるちゃんは鼻歌を歌いながらお茶を淹れている。

キョンは古泉くんと一緒にオセロをしている…やっぱり古泉くんが劣勢だけど。キョン如きに負けるなんてだらしないわね。

あ、でも彼みたいに完璧な男子だとひとつくらい苦手な事があったほうが逆に良いのかもしれない。いわゆるギャップ萌えってやつ?

それにしても、古泉くんはいつも通り過ぎる。ちょっとくらいソワソワしたりしないのかしら…。

一緒に帰ろうと言われて、あたしはこんなにも落ち着かないでいるっていうのに。一人だけ気にしてるなんてどうにも癪だわ。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 18:30:04.78 ID:UzPEb9oO0

そう思いながらじーっと古泉くんを見てると視線に気付いたのか古泉くんがこっちを見て、少し首を傾けて微笑んだ。

あたしはハッとして慌てて顔を逸らす。いつの間にか見つめちゃってたとは不覚だった。

ちょっと気持ちを落ち着けてまたちらっと視線を向けたけど、もう古泉くんはこっちを見なかった。

ハルヒ(それはそれで何だか寂しい…って、別に寂しがる理由なんてないじゃない!)

そんな風に落ち着かないながらも時間は過ぎていって、夕焼けの色が窓に差し込んだ頃パタリと有希が本を閉じる音が部室に響いた。

キョン「ん、もうこんな時間か。すまんが今日は妹の宿題見てやる約束だから先帰らせて貰うぞ」

みくる「はぁい、お疲れ様です。…あっ、あたしも今日は用事があるので帰りますね」

長門「………」

キョンはさっさと部室から出て行き、有希も無言のまま本を鞄にしまって帰っていく。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 18:36:04.74 ID:UzPEb9oO0

古泉「…では、僕も今日はここで失礼します」

古泉くんも席を立った。あれ?帰っちゃうのかしら…だってさっき、一緒に帰ろうって…

なんて一瞬心配したけどそれは杞憂だった。

古泉くんはちらっとみくるちゃんを見てから、あたしに軽く目配せをした。

あっそっか、みくるちゃん着替えなくちゃいけないから先に行ってるって事ね多分。

そして着替え終わったみくるちゃんも出て行って、部室にはあたし一人になる。…あたしも帰ろう。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 18:45:39.68 ID:UzPEb9oO0

鍵を閉めて靴箱に向かうと古泉くんが待っていた。あたしの姿に気付いて軽く手を挙げている。

古泉「すいません、勝手に待たせて頂いてました。ご迷惑だったかもしれませんが」

ハルヒ「別に迷惑って事はないけど」

古泉「そうですか、良かった。では暗くなる前に帰りましょうか」

ハルヒ「そうね」

あたしと古泉くんは校門をくぐって並んで歩き出した。二人の間には近すぎず遠すぎずの微妙な距離がある。

…ああ、何かしらこれ。何でこんなに緊張してるんだろうあたしは。

ハルヒ「で、話って何かしら?」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 18:54:00.78 ID:UzPEb9oO0

緊張して黙り込んだままなんて耐えられない。あたしは平然を装って訊ねた。

古泉「はい、今度のデートの事についてなんですが、まだどこへ行くかも決めてなかったでしょう?」

ハルヒ「そういえば…そうね」

古泉「涼宮さんはどこか行きたい場所などありますか?」

行きたい場所。そう聞かれると意外と咄嗟に出てこないものだ。

ううん、遊ぶ場所なら適当に思いついたりもするんだけど、"古泉くんと二人きり"という条件をつけた途端にどこに行けばいいのか全く見当も付かなくなってしまう。

あたしが悩んでいると古泉くんは朗らかに笑った。

古泉「特別希望がないようでしたら僕がプランを組んでおきますが」

ハルヒ「待って。あたしから誘ったんだからちゃんとあたしが決めるわよ!」

古泉「そうですか?では、楽しみにさせて頂きますね」

ハルヒ「そうよ、あたしにどーんと任せなさい!!」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 18:59:16.27 ID:UzPEb9oO0

なんて胸を張って言ってみたものの、結局どこに行くかなんて当日になっても決まらなかった。

待ち合わせをしたのは駅前。約束の時間よりも早めに来てみたのに、古泉くんはもうあたしの事を待っていた。

ハルヒ「おはよう。早いじゃない古泉くん」

古泉「それはもう、今日という日を何よりも楽しみにしてましたから。涼宮さんとデートできるなんて夢のようです」

ハルヒ「そ、そうよ。あたしとデートできるなんて、誇ってくれてもいいんだからねっ!」

率直に喜びを表現する古泉くんに、あたしは強気の口調を保ったままそう返す。

…何だか今日は気温が高いみたい。何だか顔がほかほか火照ってきちゃったわ。

待ち合わせたのがお昼だったから先に近くの喫茶店で昼食を済ませて、それからあたし先導で向かったのは…

古泉「水族館ですか。良いですねぇ、久し振りに来ましたよ」


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 19:11:01.20 ID:UzPEb9oO0

水族館。まぁデートとしては無難な選択よね。ありきたりな気もするけど…だって思いつかないんだから仕方無いじゃない!

よくよく考えてみたら、実はあたしってちゃんとしたデートをするのは初めてだったのよね。

今までデートしたい相手なんてこれっぽっちもいなかったし。不思議探しでキョンと二人になった事があったけどあれはデートとは呼ばないわ、断じて。

古泉「見て下さい涼宮さん。大きなマグロが泳いでますよ」

ハルヒ「あ、ホントだ。うん、なかなか美味しそうね!……それにしても、見当たらないわねぇ…」

古泉「何か見たいものがあるんですか?」

ハルヒ「決まってるでしょ、半漁人よ半漁人!これだけたくさん魚がいるんだから一匹くらい紛れてても良いと思わない?」

古泉「おっしゃる通りです。では僕も一緒に探してみましょう」

ハルヒ「じゃあ、どっちが先に見つけるか競争よ!絶対あたしが見つけるけどね!」


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 19:20:51.26 ID:UzPEb9oO0

キョロキョロ水槽を見渡しながら少し駆け足気味に順路を進んでいくと、さっきまでより広い空間に出た。

見上げると天井のほうまで水槽になっていて、視界いっぱいに青色の世界が広がっている。

ハルヒ「わぁー、綺麗……ねぇ、古泉くんも早くこっちに――きゃっ!?」

上の水槽を見上げたまま振り返ろうとした瞬間、つい足がもつれてバランスを崩してしまった。

そのまま倒れてしまいそうになったけど、その前にあたしの体はとんっと抱きとめられていた。

古泉「大丈夫ですか?涼宮さん」

ハルヒ「……!!」

頭のすぐ傍でしたその声で古泉くんだと分かった。ゆっくり顔を上げると至近距離で目が合った。

思いっきり心臓が跳ねた。あたしは慌ててパッと体を離して古泉くんと少し距離を取る。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 20:10:58.05 ID:UzPEb9oO0

ハルヒ「だ、大丈夫よこのくらい。ありがと古泉くん」

古泉「いえいえ、あなたに怪我が無くて良かったです」

ハルヒ「う、うん…」

まだ胸がドキドキうるさい。こんなのあたしらしくもないのに、全然鳴り止んでくれそうにない。

気恥ずかしいのとバツが悪いのとで黙っていると不意に古泉くんがあたしに手のひらを見せてきた。

ハルヒ「?なに?」

古泉「宜しければ手を繋ぎませんか?ここは薄暗くて足元も見えにくいでしょう」

ハルヒ「なっ…!…え……て、手!?」


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 20:22:08.31 ID:UzPEb9oO0

古泉「はい。…・…と、すみません。やっぱり僕ではご迷惑でしたか」

ハルヒ「べっ、別に迷惑って事はないけど…」

古泉「そうですか。では、どうぞ」

古泉くんは笑顔で手を差し出してくる。あたしはちょっと迷ったけど結局その手を取る事にした。

手のひらに遠慮がちに手を重ねてみるとゆっくり優しい力で握られた。まるで壊れ物を包むみたいにそっと。

ハルヒ(ああ……そっか)

指先から伝わってくる温もりを感じながら、その時やっとあたしははっきり実感した。


古泉くんって、あたしの事が好きなんだ。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 20:32:28.74 ID:f1nHBlqq0

デートをして以来、あたしと古泉くんはたまに二人で出かけるようになった。時々一緒に帰ったりもする。

前より二人で過ごす時間が増えていって、あたしはそれが嫌じゃなかった。ううん、どっちかというと―――…

…でもあたしはまだ告白の返事をしていない。自分の事のはずなのに自分でよく分からない。

そんな状態だから心の中はモヤモヤしてて、だけど古泉くんはいつも笑顔であたしの隣にいてくれた。

それは凄く心地が良くて、嬉しかった。きっと、答えを出せる日はそう遠いことじゃない。

そんな風に思い始めていた頃だった。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 20:41:24.51 ID:f1nHBlqq0

ハルヒ「ねぇ、古泉くんは?」

みくる「そういえば遅いですねぇ…何かあったんでしょうか」

放課後、部活動の時間が始まってからだいぶ経つというのに古泉くんの姿がない。

ハルヒ「キョン、あんた知ってる?」

キョン「知らん。別に良いだろあんなの居なくたって」

ハルヒ「よくないわよバカキョン!……有希は?古泉くんから何か聞いてない?」

長門「……」


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 20:47:16.93 ID:f1nHBlqq0

有希は本に視線を固定したまま静かにふるふると首を横に振る。でもその後すっと腕をあげて窓の外を指差した。

窓に近付いて示された方向を見てみると向かい校舎の廊下に人影が見えた。その姿はすぐにどこかの教室へ入ってしまったけど、一瞬見えた背中には見覚えがあった。

ハルヒ「今のって…古泉くん?」

長門「……」

こくりと頷いた。やっぱり古泉くんなんだ。部活の時間だっていうのにあんな所で何してんのかしら?

ハルヒ「あたし、ちょっと迎えに行ってくるわ」

キョン「わざわざ行かんでもそのうち来るだろ」

ハルヒ「駄目よ!団員が一人でも欠けてたら我が部の活動は始まらないんだから!」

キョン「お前だって来ない時があったじゃないか…そもそも始まったってどうせ特にする事ないだろ」

ハルヒ「うるさい。とにかくあたしは様子を見てくるから、皆ちゃんと大人しくしてるのよ」


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 20:55:52.46 ID:f1nHBlqq0

キョン「やれやれ…」

キョンが何かぼやいてたけど気にせず部屋を飛び出す。

さっきちょっとだけ見えた光景。古泉くんの前に教室に入る人影がひとつ見えた。つまり誰かと一緒にいる。

一体誰なのかしら、うちの団員を勝手に連れ出すなんて言語道断よ。そこんとこきっちり解らせてあげなくっちゃ。

ハルヒ(確かこの辺りだったわよね……ん?)

目的の部屋の扉を開けようとした時、変な声が聞こえた。なにかしら、何だか泣き声…?みたいだけど。

まぁここで考えてても意味無いわね。あたしは扉をガラリと開けた。


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 21:15:35.37 ID:f1nHBlqq0

ハルヒ「…………」

古泉「…………」

ハルヒ「…………」

古泉「…………」

ハルヒ「…………」

女生徒「…………っ、ひっく…」

ハルヒ「………お邪魔しました」


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 21:20:01.76 ID:f1nHBlqq0

そのまま扉を閉める。今見た光景は視界から完全に遮断された。

あたしはそのまま踵を返して走って部室に戻り、鞄だけ取って無言のままその場から立ち去る。

みくる「涼宮さーん、帰っちゃうんですかぁー!?」

部屋を出るときそんな声が聞こえてきたような気もするけど、あたしの意識には届かなかった。

ハルヒ(何だったのかしら……さっきの…)

一人で帰路を辿りながら、ぼんやりとついさっきの事を思い出してみる。

確か古泉くんがいて………………泣いてる女の子を………


押し倒してた。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 21:33:19.50 ID:f1nHBlqq0

改めてそう認識した時、あたしは強い眩暈を感じた。胃の中がムカムカして気分が悪いし頭もガンガンする。

ハルヒ(あれは本当に古泉くん?何なのよ…あんな所で一体何して……)

脳裏に焼きついた映像がちっとも離れない。本当に気分が悪い。

それにさっきからどういう訳だか胸の辺りがズキズキ痛む。張り裂けそうな苦しさが胸を圧迫して呼吸もうまく出来ない。

ハルヒ「…………うっ、う、……っく…」

いつの間にか口から嗚咽が漏れていて、気付いたらあたしは泣いていた。

止める事も出来ずに涙はどんどん頬を流れていく。

誰もいない教室に女の子を連れ込んでいた古泉くん。

彼が何をしようとしていたかなんてあの光景を見れば一目瞭然だ。自ずと出てくる答えは一つしかない。


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 21:42:35.28 ID:f1nHBlqq0

ハルヒ(古泉くんがあんな事してたなんて……)

どうしようもなく空しい気持ちだ。

あたしを好きだと言ったのも、一緒にいてくれたのも笑顔も全部嘘だったんだろうか。

今までの思い出が一瞬にして壊されてしまった気がする。

でも…こんなに辛いのは…悲しい気持ちになるって事は…

ハルヒ(そっか……あたし古泉くんのこと…)


好きになってたんだ。


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 21:45:34.22 ID:f1nHBlqq0

こんなに泣いてしまうくらい、心の中で大きな存在になっていた。でも…

今更こんな気持ちに気付いたって何の意味も無い。ただ辛いだけ。苦しい。すごく苦しい。

その後どうやって家まで帰ったのかよく覚えてない。泣いたまま布団に潜り込んで、そしたらいつの間にか朝になっていた。

うまく働いてくれない頭の中はぐちゃぐちゃなまま。鏡を見ると今まで見たこともないような酷い顔が映っている。

ハルヒ「…学校行かなきゃ……」


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 21:56:45.68 ID:f1nHBlqq0

気は進まないけど部屋に閉じこもっていたくは無かった。じっとしてるとどうしても昨日の光景が浮かんできてしまうから。

だけど学校についても全然気分は晴れなかった。あたしの姿を見つけたキョンが話しかけてくる。

キョン「昨日はどこ行ってたんだ?」

ハルヒ「別に…家に帰っただけ」

キョン「はぁ?なんじゃそりゃ…つーかお前、古泉を探しにいったんじゃなかったのか」

古泉。今はその名前を聞いただけで胸が痛い。

あたしは聞こえないふりをして席に座り、そのまま机に深く突っ伏した。

キョン「そういや、結局あの後古泉も姿を見せなかったが…ハルヒ、お前何か知ら」

ハルヒ「うるさい!今気分が悪いからほっといて」

キョン「……そうかい」


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 22:10:36.01 ID:f1nHBlqq0

顔を下げたまま怒鳴るとキョンはそれ以上何も言わなかった。

午前中の授業時間はずっとそんな感じで過ぎていった。学校に来れば少しは気も紛れるかと思ったのに全然駄目だ。

そして昼休みになって、お弁当の匂いと箸を使う音が教室に広がっていく。

ハルヒ(変なの…全然食欲がわかないわ…)

馬鹿みたい。このあたしが失恋如きでこんなになるなんて。

本当に馬鹿みたい。頭の中はまだ古泉くんの事でいっぱいなんて。


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 22:12:25.20 ID:f1nHBlqq0

古泉「涼宮さん」

ハルヒ(何よ、幻聴まで聞こえてきたわ…)

古泉「涼宮さん、涼宮さん」

ハルヒ(…幻聴のくせにしつこいわね…)

古泉「涼宮さん」

ハルヒ「えっ!?」

思いっきり至近距離で聞こえた声にあたしはがばっと飛び起きた。

目の前に古泉くんの顔があって、びっくりして椅子ごと倒れそうになる。なに?何でここに来たの?


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 22:22:01.76 ID:f1nHBlqq0

古泉「…そう睨まないで下さい。少しお時間よろしいですか?お話したい事がありますので…」

昨日の事で、と付け加える古泉くんにあたしは不信の目を向ける。正直あまり聞きたくない。

黙り込んでいると古泉くんは困ったように眉を下げた。

古泉「申し訳ありません。少しだけでも聞いて頂けないでしょうか…」

ハルヒ「………」

渋々、ついていく事にした。中庭まで連れ出され、ようやく古泉くんは足を止める。

古泉「来てくれて有難う御座います。どうしても昨日の事を弁解したくて」

ハルヒ「弁解?」

古泉「はい。昨日は大変お見苦しいものを見せてしまって…あなたに誤解を与えてしまったのでは無いかと」


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 22:32:54.87 ID:f1nHBlqq0

誤解?ってどういう事?あんなの見たままの意味にしか取れないけど…

とりあえずあたしは話を聞いてみる事にする。古泉くんの話はこうだった。

あの女の子は古泉くんと同じクラスの同級生で、この間のテストの点数が破滅的に悪かったらしい。

親には叱られ友人にも馬鹿にされ困りあぐねたあげくクラスで一番成績が良い古泉くんに相談を持ちかけたとか。

そしてとりあえず現在の学力を見てみようと古泉くんが簡易テストを作ったはいいものの、爽快なまでにさっぱり一問も解けず彼女は嘆き悲しみ泣き出してしまい、

更に追い打ちをかけるように持病の貧血を起こして倒れ、咄嗟に古泉くんは彼女と床との衝突を防ごうとした。

古泉「その瞬間部屋に入ってきたのがあなた、涼宮さんだったんですよ」

ハルヒ「……そう、だったの…」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 22:51:53.97 ID:f1nHBlqq0

そう説明されると確かにありそうな話の気がした。

古泉くんは頭が良いし性格も穏やかで優しいから相談しやすいというのも分かる。

そう納得すると何だかフッと心が楽になった。楽になると、自然と口元に笑みが広がっていく。

ハルヒ「ごめんね古泉くん、あたし誤解してたみたい」

古泉「いえ…誤解させるような行動をしてしまった僕が悪いんです。本当にすいません」

そう言うと古泉くんの顔にも笑顔が戻る。あたしの大好きな笑顔だ。だい、すき…な…?

そこでふと我に返った。そうだ、あたしは古泉くんが好きなんだ。そして今は二人きり。

この間の告白の返事をするなら今しかないんじゃない?誤解も解けて何だか良い雰囲気な気がするし…

ハルヒ「あ…あのさ、古泉くん!」


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 22:57:38.54 ID:f1nHBlqq0

古泉「はい、何でしょう?」

ハルヒ「あ……えっと、その……」

古泉「…?」

ハルヒ「……い……………良い天気ね、今日は」

古泉「ええ、全くその通りですね。気持ち良いくらい晴れてます」

ハルヒ「………」

馬っ鹿じゃないの!?何が良い天気よこのすっちょこどっこい!!!

例えばここにもう一人のあたしが居たら、絶対にそう言ってたと思う。いっそ分裂して自分自身に言ってやりたい気分だわ。


90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 23:07:14.36 ID:f1nHBlqq0

ハルヒ「(気を取り直して…)古泉くん!」

古泉「はい、何でしょう?」

ハルヒ「あ、う………来週も晴れるかしら」

ハルヒ(あーもう違う違う違う!こんな事が言いたいんじゃないのに…何で出てこないのよ…)

たった一言でいいのに。たった二文字、「す」と「き」を繋げて言うだけでいいのに。

それが何で出来ないんだろう。やっと気付けた気持ちなのに、それを伝えられもしないなんて。

言わなきゃ、言わなきゃと頭の中がグルグルしてきた頃、古泉くんが朗らかな口調で言った。

古泉「来週も快晴ですよ。そうだ、折角ですから森林公園にでも行きませんか?」

お弁当も持っていったらきっと楽しいですよ、と微笑む古泉くんの顔を見てると心がふんわり溶かされるような気がした。


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 23:12:37.03 ID:f1nHBlqq0

ハルヒ「……そうね!そうしましょう。あ、お弁当はあたしが作るわ!腕によりをかけて作るから盛大に期待してくれていいわよ!!」

古泉「それは実に楽しみです。…あ、そういえば今日の昼食はまだですよね?ご一緒にどうですか」

ハルヒ「勿論構わないわよ!じゃあ、そうと決まればすぐにお弁当を取ってきましょう」

お昼はここで食べる事にして、お弁当を取りに教室へと向かう。

先に立って歩き出した古泉くんの後ろをあたしはわざとゆっくり歩いて、背中に向かって小さく呟いた。


ハルヒ「―――――…すき……」



100 名前:チラシ[] 投稿日:2009/07/07(火) 23:36:22.69 ID:f1nHBlqq0

古泉「……?今何か仰いましたか?」

ハルヒ「ううん、何にもっ!」

振り向いた古泉くんにあたしは笑顔で首を振った。今はこれが精一杯。

いつか面と向かって堂々と言ってやるから覚悟してなさいよね!

急にキッと視線を向けられて驚いた顔をしてる古泉くんを追い越してあたしは駆け出す。

少し離れたところでくるっと振り返ってあたしは大きく手を振った。

ハルヒ「古泉くーん!急がないと昼休み終わっちゃうわよ!」

早く早く!と手を伸ばす。古泉くんは小さく笑ってこっちに駆け寄り、あたしの手を握り締めた。

それをぎゅっと強い力で握り返してあたしは歩き出す。

明日も明後日もその後も、ずっとずっとこうやって古泉くんと一緒に歩いていきたい。そんな気分だ。

願わくば、古泉くんも同じ気持ちでありますように。




―終わり―

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/07(火) 23:53:07.19 ID:f1nHBlqq0

支援してくれた人読んでくれた人ありがとう

また何か書きたいと思います



ツイート

メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:青葉「ハーブティー」熊野「ですわ」