キョン「線が視える…」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:17:47.89 ID:xY/l2mX/O

その日もいつもと同じ
日常を坦々と過ごすはずだった
そう、俺の眼に異変が起きるまでは

「直死の魔眼」

「……直死の魔眼?」

長門が相変わらず簡潔に説明する
何だそれ、直死の魔眼?

「……おい」

俺は古泉に一瞥をくれる

「説明するより実際にやってもらった方が分かりやすいでしょう。試しに朝比奈さんの体に視える線を指でなぞってください」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:19:49.81 ID:xY/l2mX/O

「指でなぞればいいのか?」

一体何のために

「胸部を推奨する」

「僕は首を」

「それじゃあ朝比奈さん失礼します」

俺は2人を無視して朝比奈さんの腕に視える線を指でなぞろうとする

「ふぇ?はい、どうぞ」

朝比奈さんもよく分かっていないようだ
俺は差し出された朝比奈さんの腕に視える線を指でなぞる
………と

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

異変は起きた

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:23:22.82 ID:xY/l2mX/O

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

「……え」

状況を理解するのに数秒かかった
朝比奈さんの腕は俺の指により切り落とされ

「あ……ぁ……あっ……い、痛い…あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

鮮血が吹き出している

「……え……なんだ……これ……」

鮮血が俺の顔と制服を赤く染める


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:25:27.21 ID:xY/l2mX/O

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!助けて!!助けてぇ!!」

「…………」

何故だろう
朝比奈さんの悲鳴に聴き入れてしまう

「……もっと」

俺は朝比奈さんの残った片腕を

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

切り落とした

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:27:32.48 ID:xY/l2mX/O

「あぁ……気持ちいい…」

俺は朝比奈さんに近づき、指についた血を舐める

「ヒィッ!!……あっ……あっ……いや、いやぁぁぁぁああああ!!」

何故そんなに怯えるんです俺の顔はそんなに変ですか

「あぁ……最高の気分だ……」

俺は朝比奈さんの体中に視える線を全て指でなぞる

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!やめてぇ!いやぁぁぁぁああああ!!」

鮮血はなお止むことはなく部室内を赤く染めあげる
俺の体や顔は既に全て赤く染まっていた

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

線という線を全てなぞる
否、
線が視えずとも切り落とす

「いやぁぁぁぁああああ!!あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:31:08.11 ID:xY/l2mX/O

「あぁ……気持ちいい……」

既ににそこに朝比奈みくるという存在はない
あるのはただ、過去に朝比奈みくるであったというだけの肉片だけだ

「あぁ……」

俺は肉片をかき集め抱き締める
……と、

「…………ぁ…」

そこで俺の意識は途絶えた

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:34:39.58 ID:xY/l2mX/O

                                                                                    「ん……ここは…」

「やぁ、お目覚めですか。おはようございます」

ここは……長門の家か
そこには顔を覗き込んでくる古泉に

「…………」

お茶を淹れている長門

「…………」

そして
                                                            朝比奈さんが、俺の隣で眠っていた

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:44:27.99 ID:xY/l2mX/O

「……う…」

頭痛がする
頭が割れそうだ

「……俺は一体何をしていたんだ?記憶がないんだが」

「初めてですからね、これを」

そう言うと古泉はテレビをつけた

「……嘘……だろ……」

そこには
肉片を愛しそうに抱き締める俺が
うつっていた

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:50:58.57 ID:xY/l2mX/O

「うっ……」

吐瀉物が喉元まで流れ込んでくる

「……何だよ……これ……」

激しい嘔吐感を催す
当たり前だ
こんなものを見させられたら誰だって……
だが、

「…………」

何故俺は、画面に見入っているのだろう

「そこにうつっている肉片は朝比奈さんですよ」

古泉が微笑みながら恐ろしいことを言う

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 21:57:43.07 ID:xY/l2mX/O

「どういうことだ?朝比奈さんならそこにいるだろ」

「長門さんに元に戻してもらいました。そもそも朝比奈さんが未来から来た理由は涼宮さんの監視だけじゃありません」

何だと言うのだ
俺は無言で続きを催促する

「あなたの練習のためですよ」

「……何のだ?」

「あなたのその眼です」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 22:02:54.72 ID:xY/l2mX/O

「直死の魔眼によって殺されたものは通常生き返りません。しかし朝比奈さんは別です。死んでも直せるように施されています」

「意味が分からない……一体何の練習だっていうんだ」

「直死の魔眼に目覚めたばかりですからね。朝比奈を使って、直死の魔眼に慣れるのが目的です」

一体さっきから何を言っているんだこいつは
俺が朝比奈さんに危害を加えるとでも言うのか

「朝比奈さんを見てください。どうです?切り刻みたくありませんか?」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 22:07:49.23 ID:xY/l2mX/O

「何を言っているんだ」

「どうです?朝比奈さんの鮮血に体を染めたくないですか?」

「……」

「朝比奈さんの内臓を取り出したくありませんか?」

「……おい」

「朝比奈さんの苦痛に歪む表情を見たくありませんか?」

「……いい加減にしろ」

「ふふっ、何故先程から朝比奈さんから目を逸らしているのですか?」

「……っ!?」

「いいですよ……我慢しなくても」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 22:26:53.68 ID:xY/l2mX/O

「これ」

長門が無表情でナイフを手渡してくる
鋭利な刃物だ
これで人を切ったらさぞ

「……」

気持ちが良いだろうなぁ

「……あぁ」

そう呟いて俺は
眠っている朝比奈さんの体に刃物を突き刺した

「長門さん、今のは?」

「……点」

鮮血が長門と古泉に降り注ぐ
だが、2人とも全く気にならないようで話を続けている
こんなに気持ちが良いのに

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 22:28:31.14 ID:xY/l2mX/O

「もう点が視えているとは。流石ですね」

「点?何のことだ?」

俺は朝比奈さんに跨り、体を刺し続けながら聞いた

「なに、点を刺せば刺された相手は死ぬ。それだけですよ」

それだけか
勿体ないことをしたな
朝比奈さんの悲鳴
聞きたかったのに

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 22:37:57.20 ID:xY/l2mX/O

                                                                                    「…………っ」

嘘…だろ…

「……あ…ぁ……あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

朝比奈さんの体から咄嗟に飛び降りる

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」

「嘘じゃありませんよ。これをやったのはあなたです」

「ヒィッ!!」

朝比奈さんの死体から離れようとするが内臓が体に巻き付き、朝比奈さんごとついてくる

「落ち着いてください」

「な、何でお前等はそんなに落ち着いてんだよ!?人が死んでるんだぞ!?俺は人を殺したんだぞ!?」

「これのことは気にすることはありません」

「直しておく」

「直しておくって、人を物みたいに何なんだよ!?」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 22:42:21.98 ID:xY/l2mX/O

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

俺は発狂し

「…………」

そこで意識は途絶えた

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 22:47:38.91 ID:xY/l2mX/O

                                                                                    俺は学校に登校し、自分の机に腰をおろした
前日にあれだけのことがあったにも関わらず登校するのは、自分でもどうかとは思うが
日常を過ごし、忘れたかったのだ

「……くっ」

目障りな線は見え続けてはいるが

「よっ、キョン!元気ないな!どうした!?」

谷口が肩を叩きながら話し掛けてくる

「おう、ちょっと悩み事があってな……」

谷口に感謝する時が来るとはな
谷口が話し掛けてくるや、くだらない話をすることは、俺にとっては日常そのものだ

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 22:52:58.41 ID:xY/l2mX/O

「何だ!?恋の悩みか!?それならこの俺に任せろ!!」

「ばーか」

俺は谷口の肩を軽くはたいた……

「ぎゃあぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

だけだというのに

「あぁぁぁぁぁああああああああああ」

谷口の肩から先は、床に落ちていた

「きゃあぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

机、椅子、近くにいた生徒全ては鮮血に染まり

「うわぁあぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

教室は混乱する

「……しまった」

俺は、谷口の肩に視える線を気付かずに切ってしまったのだ

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 23:14:29.11 ID:xY/l2mX/O

                                                                                    「…………」

結局戻ってきてしまった

「…………」

「もう学校には行かれないんですか?」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 23:15:13.58 ID:xY/l2mX/O

「当たり前だ。俺が行ったらまた誰かを傷つけてしまうだけだ」

「こんなものがあるんですが」

そう言うと古泉は眼鏡を取り出した

「何だそれは……」

「覗いてみてください」

古泉は俺の顔の前に眼鏡を持つ

「……っ!?」

「どうです。今日はあなたにこれを差し上げるためにやってきました」

「線が視えない!」

俺は古泉から眼鏡を取ろうとする
が……

「おっと、ただで差し上げるとは言ってませんよ」

なんてことを言いやがった

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 23:23:58.56 ID:xY/l2mX/O

「古泉、てめぇ」

「簡単なことですよ、人を殺してほしいだけです」

「……なん…だと?」

「極悪人ですから誰かが始末しなければならないんですよ」

「……誰だ?」

「この方たちです」

「……嘘…だろ……、鶴屋さんに、…………佐々木…だと?」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 23:27:40.29 ID:xY/l2mX/O

「何で……この2人が…?」

「鶴屋さんは想像出来るんじゃないですか?彼女は今、鶴屋家の裏山にいます。そこまではお送りいたします」

「なっ、おい!?」

俺は、どこからともなくやってきた森さんたちに連行された

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 23:35:02.23 ID:xY/l2mX/O

                                                                                    「……ハァ…ハァ」

俺は裏山を登る
とりあえず鶴屋さんと話をしよう
そう思ったのだ

「ハァ…ハァ…」

険しい山道を登る
……と

「……ん?」

鶴屋さんはいた

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 23:36:28.82 ID:xY/l2mX/O

「やぁやぁキョン君!どうしたんだいこんな所に」

「鶴屋さん、探しましたよ」

ふぅっ、と俺が息を落ち着かせた瞬間

「……えっ」

鶴屋さんは日本刀で俺に切り掛かってきた

「ぐあっ!」

かろうじて避けるが、尻餅をついてしまう

「えっ?……何で?」

「おや?キョン君はまさか本当に刺客じゃなかったのかい?」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 23:46:29.23 ID:xY/l2mX/O

「……うぐ…鶴屋さん、あなたは一体何をしたんですか?」

「あれ?キョン君はやっぱり刺客かい?まぁいいや!死んでもらうっさ!」

「うあっ!」

鶴屋さんは俺に切り掛かってくる

「ぐうっ!!」

かろうじて躱し、刀を構える

「鶴屋さん、何で……」

「いいナイフにょろね!……悪いけど聖杯は……誰にも渡さないっさぁ!!」

「ぐぅっ!!」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/28(日) 23:54:23.18 ID:xY/l2mX/O

「聖…杯…?」

「キョン君は何も知らないんだね!」

「ぐぅっ!!」

日本刀をナイフで防ぐ

「うぐっ、あがっ…」

鶴屋さんの攻撃はなおも止まない
くそっ、この人本当に人間か……

「しぶといっさねぇ、キョン君!!」

……と

「あがっ!!」

俺は体を切られ
何かが目覚めた

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:05:23.03 ID:1rpBfpv9O

「……キョン君、何やら雰囲気が変わったねぇ」

「そうですか?それはどうも」

「でも……死んでもらうっさ!!」

鶴屋さんの体の半分が獣のそれに変わる

「……っ」

俺は攻撃を躱し、躱すと同時に鶴屋さんの体を切る

「くぅっ……やるっさねキョン君」

「獣に成り下がったあなたに興味はない。あなたを殺します」

俺は静かにそう告げた

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:09:55.52 ID:1rpBfpv9O

                                                                                    勝負はあまりにも呆気なくついた

「ぐぅっ……」

「鶴屋さん、聖杯とは一体何ですか?」

鶴屋さんの体は人間に戻っている
元の鶴屋さんと同じだ

「……あがっ…」

「苦しみたくなかったら早く答えてください」

方腕がちぎれ、全身傷ついているという事以外は

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:11:40.92 ID:1rpBfpv9O

俺は鶴屋さんの内臓を無理矢理引っ張りだす

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

「聖杯とは何ですか、鶴屋さん」

「あ゛…ぁ゛……あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:16:50.29 ID:1rpBfpv9O

                                                            そうして俺は、鶴屋さんから聖杯のことを聞いた
願えばなんでも叶うという願望機
ならば、
俺のこの眼もなくす事が出来るはずだ

「…………ぅ……」

……と
そこで俺の意識は途切れた

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:21:00.45 ID:1rpBfpv9O

                                                                        「おはようございます」

最近このパターン多いな
目が覚めるとそこは、相変わらず長門の家だった

「お疲れさまです。鶴屋さんの死亡は確認済みです」

「あぁ……あまり記憶がないんだが、鶴屋さんは一体?」

「あなたはまだ気にしなくても大丈夫ですよ。この調子で次もよろしくお願いしますね」

「いや、俺はやらない」

「……何故です?」

「俺は聖杯を手に入れる」

「……聖杯」

俺は全てを話した

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:28:13.30 ID:1rpBfpv9O

「聖杯を手に入れるのと、人を1人殺すのと、どちらが簡単だと思ってるんですか!?」

古泉が珍しく声を荒げる

「聖杯を求める輩には、鶴屋さんみたいに悪用しようとしてる奴もいるんだろ?なら、俺のこの眼も社会のために使えていいじゃないか」

「……聖杯」

朝比奈さんが部屋の隅で呟やく
24時間、朝比奈さんは部屋の隅に座り俯いている
毎日何度も俺に殺されるんだ
殺されるだけの毎日
ああなってしまっても仕方ないだろう
本当に申し訳ないです

「でも!あなたは魔術師じゃないでしょう!?サーヴァントはどうするんですか!?」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:32:56.55 ID:1rpBfpv9O

「俺のサーヴァントはキャスターだ」

「キャスター?一体いつ契約したんですか!?だいたいそれが本当だとしてもキャスターじゃ優勝なんか出来るわけがない!」

「……長門…でもか?」

「……っ!?どういうことです?」

「情報統合思念体が聖杯戦争に興味を持っているみたいでな。こね戦争を観察したいんだと」

「……なるほど」

「だかあくまでも観察だ。長門の力は大幅に制限される」

「……本気なんですか?」

「……ああ」

「……分かりました」

それでは、と言い残し古泉は去った
                                                            そして古泉は
                        死んだ

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:43:38.80 ID:1rpBfpv9O

                                                            古泉が死んでから1週間が経った
聖杯戦争は既に始まっている
……だが

「……はぁ」

誰がマスターかも分からず、誰からも攻撃されることもなく
1週間は過ぎた

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:48:16.80 ID:1rpBfpv9O

                                    「……ああ。今すぐ行く、それじゃあ」

1週間経った日の夜に、佐々木から電話がかかってきた

「……」

長門が無言で問い掛けてくる

「1時間後に、公園に来い。だとよ」

「分かった」

「あいつも、マスターなのか?」

佐々木は、切りたくない
親友を切るなんて
ましてや、嬉々として切るなんて
許されることではない

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 00:57:05.73 ID:1rpBfpv9O

                                                                        「やぁキョン。会いたかったよ」

「ああ、久しぶりだな」

俺の後ろには長門がいる
あいつの近くには……誰もいない……か

「……ふぅ」

あいつはただ、俺に会いたかっただけか
……だが、安心したその瞬間

「……え?」

俺の前に、体を短剣のようなもので突き刺される長門が立っていた

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:01:38.53 ID:1rpBfpv9O

「くっくっ、すまないね」

「長門!」

「……平気」

そういうと長門は短剣を体から引き抜いた

「……佐々木」

「すまないね、勝手な行動はするなと言ったはずだよ。周防さん」

そう言うと、佐々木の後ろから小さな女の子が出てきた

「お前は、マスターだったのか?」

「くっくっ、君ともあろう男が愚問だね、キョン。周防さんはアサシンのサーヴァントだ。どうやら彼女たちの親玉が聖杯戦争に興味を持ったらしくてね」

「用件は何だ」

俺は低く、抑えた声で言った

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:06:47.15 ID:1rpBfpv9O

「勘違いしないでくれキョン。僕は君と争いにきたわけじゃない。むしろその逆?共同戦線を結ぼうと思ってね」

「……なら、お前とは戦わなくていいということか?」

「ああ」

佐々木は微笑む
だが、1つ確認しなければならないことがある

「佐々木、お前は聖杯に何を望む?」

「くっくっ、別に何も望みはしないさ」

「どういうことだ?」

「聖杯を手に入れたら、聖杯には関与しないというわけさ。だから……聖杯が人を殺そうが何をしようが、僕はそれが見たいだけだ」

「……なっ……本気か……?」

「ああ」

「何で……お前はそんな奴じゃないだろ……」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:12:20.69 ID:1rpBfpv9O

「聖杯を見たいと言うのは人間として正しい欲求だと思うけど」

「……佐々木、お前はそんな奴じゃなかった…」

「僕と組むか否か。どちらだキョン。組まないのであれば僕は容赦しない」

「……周防と言ったな。お前の仕業か?」

周防は何も答えない
感情のない眼でただこちらを見つめているだけだ
否、あれはただ、己がマスターからの指示を待っているだけに過ぎない

「佐々木、俺はお前のサーヴァントを消滅させる」

「……そうかい。戦うしかないか……残念だよキョン」

そう言った佐々木の顔は、悲愴な気持ちが顕著にあらわれていた

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:18:01.22 ID:1rpBfpv9O

「いけ、周防さん」

「なっ!?」

佐々木が指示を出すと周防は俺に襲い掛かり長門に防がれ、世界は灰色に染まった

「……何だこれ?閉鎖空間か?」

「くっくっ、固有結界と言った方がいいかな」

「あなたはマスターを」

周防と応戦しながら長門が俺に指示をおくる

「……ああ」

決意を決めろ
殺さなくていいんだ
ただ、気絶させれれば

「ふぅ」

息を整える
恐いことは佐々木と闘うことではない
佐々木を……殺してしまうことだ

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:22:30.21 ID:1rpBfpv9O

「うぉぉぉおおおお!」

俺は佐々木にナイフを向け、襲い掛かる

「……あぐっ!」

……だが
それは周防の短剣により阻止された

「……くっ、足が……」

長門はどうした?
周防は長門と戦っているはずだか
俺は辺りを見回す
……と

「……うそ……だろ」

そこには
全身を短剣で貫かれた長門が、横たわっていた

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:27:10.97 ID:1rpBfpv9O

「長門!!」

俺は長門に駆け寄ろうとするが

「くっ!」

周防の短剣により阻止される

「くっくっ、キョン。単純に言うとね、僕の閉鎖空間内では周防さんは強くなるんだよ」

「くそっ……」

周防が俺に短剣を投影する

「ぐうっ!」

その数は10を超えており、捌ききれない

「…………あっ」

終わった
防ぎようのない短剣が俺の胸に突き刺さり

「マッガーレ」

確かにそんな声がした

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:34:32.16 ID:1rpBfpv9O

短剣は俺の胸に突き刺さる前に俺曲がり、周防の腕は捻れ曲がり骨が突き出ていた

「―――――」

周防が声にならない声で喘ぎ、跪く

そうして

「マッガーレ」

今度は確かに聞こえた
……と同時に

「―――――」

周防の首は捻り切られ、頭が俺の前まで飛んできた
首から血を吹き出す姿はどこか、滑稽だった

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:39:16.35 ID:1rpBfpv9O

「なっ……!?」

一部始終を見ていることしか出来なかった佐々木が走りだす
次は自分の番だと理解したのだろう
……だが

「マッガーレ」

ただその一言で佐々木の足は捻り曲げられる

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

足を捻り曲げられた激痛に悲鳴をあげる

「マッガーレ、マッガーレ、凶れ、マッガーレ」

声の主は容赦しない

「あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

ついには佐々木の足は捻り切られた

「あっ……あっ……」

もう立つことは出来ない佐々木は、這いずりながらも逃げる

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:45:56.79 ID:1rpBfpv9O

「あっ……あっ……いやぁ……キョン…助けてくれ……キョン……」

俺は佐々木に向かって走りだす
……だが

「マッガーレ」

無慈悲にも、死の宣告は告げられた

「あ゛ぁ゛………あ゛………」

佐々木の体は腰を捻られ、上半身と下半身を捻じ曲げられようとしていた

「佐々木!!」

俺は佐々木に向かって必死に走る
今はただ、走ることしか出来なかった

「あ゛…ぎ……い゛だい゛……助けて……あ゛…………」

佐々木の体は腰を軸に、上半身と下半身が捻られていく
既に体は不自然な形になっている

「あ゛……ぁ゛……」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:50:15.57 ID:1rpBfpv9O

「佐々木!!」

佐々木に追い付き、佐々木に駈け寄る

「う……」

佐々木の腰は何重にも曲げられ、骨は突き出ていた

「い゛だい゛……い゛だい゛……よ……あ゛……ぁ゛……」

なおも佐々木の体は捻れ曲げられていく

「マッガーレ、マッガーレ、凶れ、マッガーレ」

腰だけでなく、残った3本の手足さえも容赦なく捻れ切られた

「あ゛あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

佐々木が悲鳴をあげる
腰と違い手足は簡単に捻り切られたのだ

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:53:54.35 ID:1rpBfpv9O

「……佐々木、今楽にしてやる」

「あ゛あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

俺は集中して佐々木の体を見つめる

「……佐々木、助けてあげられなくてすまん」

そう言って俺は
佐々木の点をナイフでついた

「…………」

「出てこいよ、古泉」

俺は静かに、低く抑えた声で呟いて

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 01:58:35.33 ID:1rpBfpv9O

「やぁ、危ないところでしたね」

「……何故お前が?」

「ふふっ、死んだことにしといた方が動きやすいですし」

「……よくも佐々木を」

「助けて差し上げたのにそれはないでしょう。……………おかしいですね。佐々木さんが死んだのに閉鎖空間がなくならない」

「……あ…」

「……?どうしました?」

古泉の後ろにはいつの間にか神人が立っていた

「あがっ……」

そうして
古泉は一瞬のうちに神人に踏み潰された

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 02:04:25.80 ID:1rpBfpv9O

そこには、いてはならないものがいた

「……ハルヒ、何で…」

「みくるちゃんが全部教えてくれたわ」

「朝比奈さんが!?」

「よくもこんな楽しいことがあるのにのけ者にしてくれたわね」

「お前、聖杯を手に入れてどうするつもりだ?」

「決まってるじゃない。新しい世界を創造するのよ」

なるほど、朝比奈さんに教えられたのは聖杯戦争のことだけか

「お前、SOS団は?何で古泉を殺した?」

「別に新しい世界にはいないんだから。今死のうが、後で死のうが関係ないでしょ」

「そうか……ハルヒ、お前の願いを許容することは出来ない」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 02:12:28.20 ID:1rpBfpv9O

「なんでよ?あんたは私と一緒に新しい世界で生きるの。きっと楽しいわよ!」

無邪気な笑顔でハルヒは言う
悪意がある悪意より、悪意がない悪意の方が恐ろしいとはこの事か……

「あっ、ちなみにこれ私のサーヴァント。バーサーカーよ!格好いいでしょ!?」

まるで玩具を自慢する子供のように見せびらかす

「ハルヒ、聞け。俺は」

「あら、まだ有希生きてるじゃない。やりなさい、バーサーカー」

俺の話を聞かずに、神人に指示を出す
今のこいつはまるで普通に歩くかのように人を殺す
神人が拳を振り上げ長門を叩きつぶそうとする

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 02:25:43.35 ID:1rpBfpv9O

「くっ……」

俺は神人を凝視する
これだけ大きいのだ
外しはしない
点を
神人が拳を振り落す前に点を突く

「ぐあっ」

脳が焼けるようだ
関係ない
拳はもう振り落とされた
集中しろ

「ぐうっ……」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 02:31:21.32 ID:1rpBfpv9O

腕は振り落とされ、既に神人の腰の位置にまで達している
……と

「……っ!……視えた!!」

脳が焼け焦げそうだ

「ぐあっ……」

右眼から景色が消えた
関係ない
左眼はまだ視える

「うぉぉぉおおおお!!」

俺は足に視えた神人の点に向かって走りだす
神人の腕は既に長門に当たる直前だ
神人は屈みこむ体勢になっている

「くそっ……」

間に合わない

「うぉぉぉおおおお!!」

俺は点に向かってナイフを投擲した

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 02:40:49.27 ID:1rpBfpv9O

大地を震わす轟音が鳴り響いた
大地は震え、砂煙がたち辺りの状況がつかめない

「……ぐぅっ」

脳が熱い
そんなことより長門の安否を確認しなければ

「…………ぁ…」

長門の体は神人の腕により潰されている

「……良かった」

俺は安堵のあまり座り込みそうになるが耐え、ハルヒを見た
長門を潰した神人の腕は既に実体はなく、俺が点を突いた瞬間に消えたのだ

「え……何で…何でそんなことするの……」

ハルヒがまるで不可思議な現象が起きたかのような顔で問い掛けくる
その顔は悲愴な気持ちに染められている
……だが

「さすがキョンね!そんなことが出来るって私に見せてくれたのね!エヘヘッ」

無邪気な笑顔に反転した

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 02:49:20.80 ID:1rpBfpv9O

「実はバーサーカーは何体でも出せるのよ!!エヘヘッ、凄いでしょう!何かこの空間が私の固有結界っていうやつらしいわよ!」

「……なっ」

嘘だろ…
神人がまだ何体もいるなんて……

「くそっ」

俺の体もうもたない

「まぁ、雑用にしてはよく頑張ったわね!団長にはまだまだ適わないけど!ふふんっ」

ハルヒは胸を張る
……と同時に神人が地面から浮き出てくる

「くそっ、5体もいるのか……」

「凄いでしょう!!固有結界!団長である私にだけ持つことを許された能力よ!」

136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 02:53:21.73 ID:1rpBfpv9O

「あ゛ぁ゛あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

俺は地面から頭だけ出ている神人を凝視し、点を見つける
既に体の機能は所々働かなくなっている

「ぁ゛…ぁ゛……あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

激しい脳の痛みに耐える

「凄い根性ね。さすがだわ!キョン!!」

「ああ……」

俺は低く抑えた声で、だがはっきりと言った

「生きてるのなら、神様だって殺してみせる」

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 02:58:30.43 ID:1rpBfpv9O

「うぉぉぉおおおお!!あぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

俺は3体の神人を消滅させた

「あ゛…ぁ゛……」

だが体は既にボロボロで、残った左眼には既にぼやけた景色しか視えない
はっきりと視えるのは線だけだ

「…………っ!」

何故今さら気付いたのだ
固有結界、要は結界だろ
なら、

「……う゛……」

俺は体を無理矢理起こし、閉鎖空間という存在の
線を……切った

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:03:44.44 ID:1rpBfpv9O

俺が閉鎖空間の線を切ると同時に
パリンッと
何かが割れる音がした

「え……嘘でしょ……」

そうして、閉鎖空間は消滅した

「……」

ハルヒは呆然としている
助かった、体が動けないから物理的にこの殺人衝動を抑えることが出来る

「……ハア…ハア…」

俺は体を引きずりながら、ハルヒに歩みよる

「ハルヒ、お前の負けだ。お前の記憶を殺す。大人しくしてろ」

「嫌よ!まだ私は閉鎖空間作れるんだから!」

「くそっ……」

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:10:31.81 ID:1rpBfpv9O

ハルヒが閉鎖空間を作り出そうとし、世界が灰色に染まろうとした刹那
ハルヒは死んだ
否、朝比奈さんにより殺された

「……え…何故……あなたが」

「ふふっ、あはははは!!私はもう嫌だったんです!キョン君に殺され続ける毎日が!」

「……朝比奈さん」

「私だって任務だと思って最初は我慢してたんです!でも、痛いものは痛いし、辛いものは辛いんです!!」

何と声をかけていいのか分からない

「知ってました?あの体、人形なんですよ?私が死ぬと新しい私が目覚める。記憶が全部引きついでです!」

「……知りませんでした」

「私は人形なんですよ!だから聖杯を手に入れて、本当の私を手に入れる」

「……」

「キョン君、死んでください」

そう言うと朝比奈さんは、ナイフを振り落とした

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:15:13.97 ID:1rpBfpv9O

「…………ぐっ」

目を開けると、全身に短剣を貫かぬかれている長門が、俺の盾として立っていた

「……あぐっ」

そうして長門は、自分の体から短剣を1本抜き出し、朝比奈さんの胸に突き刺す

「あなたの体はそれで最後。もう目覚めることはない」

「そう……なんですか……良かった……」

朝比奈さんは、微笑みながら死んでいった

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:21:07.41 ID:1rpBfpv9O

「長門……大丈夫か……」

「今治療する」

「ああ」

そう言うと長門は呪文を呟きだし

「……え」

俺の体の傷は癒えていき、それにともない長門の体は消えていく

「聖杯を壊すことを推奨する。あなたの思考に合わせた最善の結論」

「長門!!」

そう言い残して長門は
消えた

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:27:06.84 ID:1rpBfpv9O

俺の傷は完全には癒えることはなかった
右眼は見えないままだし、左眼が少し視えるようになったぐらいだ

「ぐぅ……」

体は……動くか

「あれが……聖杯……」

俺の目の前には
神々しい光を放つ杯が浮いていた

長門を生き返らせる、みんなを生き返らせるという願いが頭に浮かぶ

「ぐぅ……」

だが、それは出来ない
この願望機は偽物
ならば殺すしかない

「あがっ……」

俺は聖杯を凝視する

「うぐっ………」

長門に癒してもらった左眼がまたぼやけていく

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:30:37.66 ID:1rpBfpv9O

「……視えた」

俺は聖杯の点をナイフで突いた

「ぐうっ……」

そうして聖杯は消え、俺の脳は完全に、焼き切れた

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:37:18.90 ID:1rpBfpv9O

                                                                                    俺の意識が無くなる直前に聞こえた

「大丈夫、キョン君は死なないよ」

……と

目が覚めるとそこは、俺の部屋だった

「……っ!?」

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:39:29.10 ID:1rpBfpv9O

どういうことだ
俺は起き上がり、体を確認する

「傷が……ない……」

線も視えない

「……なんで」

【大丈夫、キョン君は死なないよ】

あの声は一体……

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:43:20.04 ID:1rpBfpv9O

俺はリビングに行き状況を確認する

「……っな!?嘘だろ……」

あの日から1年経っているではないか

「……」

俺は座り込む
あまりの出来事に頭が働かない
俺は死んだはずだ……
なのに何故、生きている
……と

「あっ!キョン君起きたのね!」

「……お前は」

玄関から誰かの声がした

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:46:04.58 ID:1rpBfpv9O

「良かったぁ!キョン君目が覚めたのね!」

「何で……朝倉……」

くそっ、もう何もかもが分からない

「混乱しても無理はないわ。ゆっくり説明しましょう」

「ああ、頼むよ。何で俺は生きている?あの後どうなった?俺の家族は?みんなは?何でお前がいる?」

「落ち着いてキョン君、起きたばっかりなんだから」

「……すまん」

「えーとね、……」

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 03:55:47.31 ID:1rpBfpv9O

                                                                                    朝倉から聞いた話はどれも現実味にかけていた


「俺の妹が魔法使いだっただと……」

「そうよ、あなたとは義理の妹。由緒ある家柄の娘よ。本当ならあなたより年上なんだから」

「……」

「あなたの妹は自分を犠牲にしてあなたを救ったの。あなたの魂をあなたの体から抜き取り、新しいあなたの体にうつしいれた」

「だから傷はなくなって線も視えないのか
あのばか……何で俺なんかを…」

「あなたと過ごした日々が楽しかったんでしょうね。彼女はあなたと過ごすまではひどい生活を送ってたみたいだし」

「……う……ぅ…」

嗚咽が漏れる
今さらになって妹がいなくなったのだと実感できた

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 04:01:29.70 ID:1rpBfpv9O

「ちなみにあなたの人形を用意しといたのは長門さんね」

「……う…何でみんな……」

「そしてあなたはキョンの一族の生き残り。その殺人衝動はそこから来ているのよ」

「……キョンの一族…」

「あなたの両親はあなたを引き取った、血の繋がらない親よ。あなたを狙う奴らに殺されてしまったけど」

「…………」

「けどもうあなたは狙われることはないわ。あなたを狙う奴らは殲滅されたし」

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 04:06:15.71 ID:1rpBfpv9O

「えーと、他に説明してない事は……あ、私は長門さんが最後に作ったの。あなたの世話をするように」

「……みんないないのか……」

「……うん。けどあなたたちのお陰で聖杯による被害は出なかった。それがあなたたちの生きた証よ」

「う……ぅ……うわぁぁぁあああああ!!」

俺は慟哭する

「……」

朝倉はそんな俺を、何も言わずにただ優しく抱き寄せる

「う、う、ひっぐ……うわぁぁぁあああああ!!」

俺は朝倉の胸の中で、ただ泣きじゃくった

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 04:09:46.98 ID:1rpBfpv9O

                                                                                    「……すまん」

「……大丈夫よ」

しばらく朝倉の胸の中で泣きじゃくり、やっと落ち着くことができた

「色々しないといけないしね。まだ体も慣れないでしょ?リハビリしないと」

「……ああ」

「一緒にこれからのことを考えていきましょう」

「……分かった」

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 04:14:21.88 ID:1rpBfpv9O

「大丈夫、俺は生きるよ。皆からもらった命だ。絶対に無駄にはしない」

「……うん」

「こうなった原因を探り、二度と同じ惨劇が繰り返さないようにする」

「私も手伝うよ……」

「お前はいなくならないでくれよ……」

「ええ、私はずっとあなたの側にいるわ。それが長門さんの意志でもあり、私の意志でもあるからね」

「そうかい」

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 04:28:15.00 ID:1rpBfpv9O

俺は今、公園にいる
皆がいなくなった場所だ

なんとも寂寥たる眺めであることか

皆はもういないが
今の俺の隣には朝倉がいる

犠牲になった皆の事は俺の胸に刻み込まれ
俺に決意させる

「後は任せてくれ」

俺は静かに、されど断固たる決意のもとに、皆に向かって呟いた

踵を返す
俺の後ろからは、皆からの声援が聞こえたような気がした


END

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 04:29:10.46 ID:1rpBfpv9O

終わりました
ありがとうございましたm(__)m

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 04:34:23.59 ID:1rpBfpv9O

ありがとうございますm(__)m
色々混ぜすぎてしまったのかな……

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/29(月) 08:02:18.52 ID:1rpBfpv9O

読んでくださった方々、コメントくださったありがとうございますm(__)m
そろそろ寝ないと……



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