ハルヒ「何が足りないのかしら…?」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 22:40:54.37 ID:Wq3yNy+F0

「古泉君はどう思う?」
「さすがに主語を仰って頂かなければ返答は難しいのですが…。」
「みくるちゃんよ。ロリ巨乳でドジッ子メイドなのに、何故か人気が今一つ足りない気がするのよ。
 有希の方が人気あるみたいだし。」
「それはあれだ。
 確かに長門は分かるが、朝比奈さんは余りの神々しさ故に近寄り難いだけだろうな。」

とはいえ長門が人気者か。
…意外だな。

「アンタの意見は聞いてないけど。」
「しかし、彼の意見に関しては僕も同意ですね。
 朝比奈さんは、今で充分魅力的な女性だと思いますよ?」

朝比奈さん。そんなに頬を赤らめないでください。

「確かに二人はそうかも知れないけど、ここの生徒には有希の方が人気があるみたいよ。
 バニーのビラ配りもあんまり意味が無かったみたい。」
「目のやり場…でじゃないのか?」
「…ふん。やけに二人ともみくるちゃん側に回るのね。」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 22:43:38.96 ID:Wq3yNy+F0

「有希。お茶淹れて頂戴。」
「す、涼宮さん。お茶なら私が…」
「良いのよ今回は。有希が淹れなきゃ意味無いからね。」
「…分かった。」

部室内に長門が作業する音のみが響く。
小気味好いとまでは行かなくとも、詰まる部分は無かった。
ハルヒは目の前に置かれたお茶を一気飲み。遠慮を知れ。

「美味しいじゃない。みくるちゃんより良いわ。」
「長門さん、僕も頂いて宜しいですか?」
「…あなたは?」
「俺も貰っていいか?1杯だけで良いぞ。」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 22:45:50.76 ID:Wq3yNy+F0

初めて長門の家を訪れた時の再来は御免蒙る。
残念だが、俺にとっては朝比奈さんの入れたお茶こそ至極の一品だ。

「これは美味ですね。さすが長門さんです。」
「そう。」
「美味いが…朝比奈さんのお茶の方が一枚上手だな。」

俺の一言で朝比奈さんの顔が綻んだ。
いかに長門といえど、こういう事は経験が物を言う。
朝比奈さんが淹れたという点でさらに補正が掛かる。

「古泉君はどっちが上だと思う?」
「甲乙付け難い、ですね。
 残念ながら、どちらとも言えません。」
「自分が茶道に精通していると言うなら、お前が淹れてみたらどうだ?」
「嫌よ。私は飲む側専門だから。」

我が儘な奴…俺も飲む側なのは同じなんだが。
自分で淹れるより、朝比奈さんに淹れて頂いた方が効力は遥かに大きいものだしな。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 22:47:57.95 ID:Wq3yNy+F0

お茶談義がしばらく続いた。
中身は薄っぺらく、無駄な時間を使ってしまっただけのようだったが。

ぱたん。

長門が本を閉じる音。
そういえばいつから読書に戻ったんだ?

「もうこんな時間ね。あたしは先に帰るから、戸締りしときなさい。」

帰る時くらい、もう少しゆっくり出来ないものか。
「それでは僕も失礼します。」

「あの、キョンくん…
 じゃあ、私は着替えますから…
 戸締りは任せてください。」
「じゃあ、お願いします。それでは。」

…とはいえ、放課後に女性一人を残しておくのもな。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 22:50:59.54 ID:Wq3yNy+F0

少し心配だ。用心するに越した事はないしな。
…朝比奈さんと共に下校という目論見も多少はあるのだが。
しかし長い。あれから30分。
女性の着替え事情など当然分からない。
が、いくらなんでも時間がかかり過ぎている。様子を見に行くべきか。
さすがに着替えは終わっているだろうがノックは欠かさない。
失敗は成功の母だな。

コンコン
はい、と小さな声が聞こえる。

「キョンくん…どうしたの?」
「朝比奈さんこそ、何かあったんですか?
 少し時間掛かってるみたいですけど…」
「一人だから、ちょっと勉強しようかなって。」

声からはいつもの朝比奈さんを感じられない。
加えて夕刻の逆光により、その顔色を窺う事も出来なかった。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 22:53:03.74 ID:Wq3yNy+F0

「さすがに勉強なら邪魔は出来ませんね。帰りますよ」
「あ、でもやっぱりやめることにします。
 ちょっとお話しませんか?」
「良いんですか?勉強は」
「折角キョンくんと二人なんだから、勉強は後で良いです」

この上なく嬉しい事を言ってくれますね。
もちろん朝比奈さんのお誘いを蹴ることなど絶対にあり得るものか。

「俺で良ければいくらでもお付き合いしますとも」
「ふふ、ありがとうございます」

顔は見えない。しかしなんとなく朝比奈さんが微笑んでいるのは分かった。
その笑顔にはどんなものも敵わないだろうな。

「今日は本当にありがとう」
「俺は何かしましたか?」
「私のお茶の事、美味しいって言ってくれて……」
「俺は事実を述べただけですよ。
 いつもお茶を頂いているので、分かります」
「あの後、ちょっと長門さんのお茶を飲んでみました。
 ……私のより、美味しかったですよね……?」

涙が、浮かんでいた。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 22:55:10.94 ID:Wq3yNy+F0

「そんなことはありません。
 長門には悪いですが、朝比奈さんのお茶の方が美味しいですよ」
「ううん……
 嘘でも、私の方が良いって言ってくれて、ありがとう……」
「朝比奈さん。自信を持ってください。
 長くお茶を淹れてきたあなたの方が勝っています」

精一杯の気持ちを込める。
なんとなくではあるが、もう朝比奈さんのお茶が飲めない気がしてしまったから。
この人は自信を無くしているんだ。

「ありがとうキョンくん……私、頑張ります。
 キョンくんはそう言ってくれるけど、私は納得していないから。
 皆が、それに私が満足出来る美味しいお茶を淹れられるように頑張ります。」

両拳を握り小さくガッツポーズ。
可憐なその仕草からは、大きな決意をしっかりと感じ取れた。
やっぱりあなたは素敵です。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 22:57:06.11 ID:Wq3yNy+F0

翌日。
掃除当番によって部室に着くのが遅かった俺は、いつもと違う光景に気付いた。
朝比奈さんが制服、そして長門がメイド服を着用していたことだ。

「今日から、有希にお茶を淹れてもらうことになったから。」
「昨日の長門製がよっぽど気に入ったのか?」
「もちろん。キョンも有希のお茶飲んでたら考えも変わるわよ。」

俺は朝比奈製のお茶が飲みたいのだが…
それはやはり長門に失礼だろう。
迷った挙句出した言葉は

「そうかい。」

一言だけ。
朝比奈さんを見やると、弱弱しく微笑んだ。
私の事はいいですから遠慮しないでください、そんな具合…か?
朝比奈検定はまだ合格出来そうにないな。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 22:58:46.40 ID:Wq3yNy+F0

「今日は将棋をやりませんか?
 試してみたいことがあります。」
「良いぞ、やるか。」
「ではよろしくお願いします。」

かたん、と朝比奈さんが立ち上がる。
が、

「あ……」
「……?朝比奈さん、どうかしましたか?」
「……いえ、何でもないです。」

目線を机に戻すと後ろから手が伸びてきて、お茶が置かれる。
「飲んで。」
「ありがとうございます、長門さん。」
「……悪いな。」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:01:37.29 ID:Wq3yNy+F0

今まで、この役割を担当してきたのは朝比奈さんだ。
特に今日みたいにやる気を出している時には、双方の応援のためにお茶を淹れてくれた。

さっきのは無意識に反応してしまったんだろうな。
お茶を淹れてあげたい。でも、もうそれは私の役割じゃなくなってたんだ、と。
……俺はやはり、朝比奈さんのお茶が良い。

「――ました?」
「ん?」
「いえ、長い思案だと。さすがにこの一手は効きましたか?」
「これで返せる。」

さも致命打のようにわざとらしくぱちん、と音を響かせる。
その程度、戦法とは言えんな。

「そう来ましたか……」
「置き方を知ってるだけじゃ、まだまだだな。
 次は弱点と、切り返された時の対応も学んで来い。」

あまりに有名な戦法を持ってきたもんだ。
これぐらいなら俺も知ってる。
さて、これで……

「王手だ。」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:04:58.76 ID:Wq3yNy+F0

「周囲の駒の配置もグダグダ。
 軍全体が機能してないじゃないか。」
「すみませんね。参りました。」

ぱたん。

「さて、それじゃ私は先に帰るわ。」

と言いつつも扉の前で止まる。
「…ま、いいわ。じゃあね。」
「ねぇキョン?入る時は蹴り飛ばして開けられるのに、出る時は出来ないっておかしくない?」
「蹴る事を前提に置くな。」

ドアを荒々しく開け、ハルヒは出て行った。

「相変わらずですね。
 思えば確かに片側だけでは、とは思いますが、
 僕はもう今の状態に慣れてしまった以上、特に不便に感じる事は無いのですが。」
「明日はこの扉は両方から使えるようになるかも知れないな。」
「もうなってる。」

…本当になってる。
しかし長門よ、何時の間に着替えた。
これも宇宙人の為せる技か。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:07:05.45 ID:Wq3yNy+F0

「これぐらいでわざわざ力を使われたか。
 ……アイツは余裕が無いな。」
「確かに、願望にしては規模が小さいですね。
 特に問題は無い……と思いますよ。
 では、僕はこれで。」
「私も。」


―――――――――――――

「……やっぱり、あいつらが居なくなると静かなものです。」
「ふふ……そうですね。」

三人が帰った後、俺は朝比奈さんと二人で対峙していた。
朝比奈さんは何か用事があるようには見えないが、帰る気配が見られない。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:09:57.32 ID:Wq3yNy+F0

静まり返った部室。
どこか愁いを帯びた表情は、触れることに躊躇いを感じてしまうような雰囲気を漂わせる。
沈黙を破ったのは朝比奈さんの方からだった。

「キョンくん…帰らないんですか…?」
「えぇ、まだ。」

再び静寂が二人を包む。
朝比奈さんが帰路に着かないのは、少なくとも何か事情があるんだろうな。
未来人的なお話なら手のつけようがないがね。

「朝比奈さん。時間はありますか?」

力無さげにつつっと顔を上げる。

「あ、はい…」
「もし宜しければ、お茶を一杯頂けませんか?」
「でも、私はもう…」
「お茶汲み係とかは関係ありません。
 朝比奈さんのお茶が飲みたいんですけど、どうですかね?」
「…はい。」

久しぶりに飲んだあなたのお茶、全く衰えていませんでしたよ。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:12:28.53 ID:Wq3yNy+F0

放課後は相も変わらず団活に勤しむことになる。
どうやら団長様の中では、お茶汲み係は長門に固定されてしまったらしい。
メイド服に身を包んだ読書好きの少女もすっかり慣れたようである。

「あんた、昨日お茶飲んだ?」
「いきなり何だ。お前が帰った後に飲んだが、それがどうした?」
「湯呑みの配置がちょっとずれてるのよね。
 ついでにみくるちゃんのも。」

お茶汲みに従事しない、淹れてくれたお茶はパソコンから目を逸らさず受け取る。
そんなお前がよく気付いたもんだ。
その観察眼だけは尊敬に値するね。

「見た感じ二人で飲んでたみたいだけど、さて、どっちが淹れたのかしら?」
「朝比奈さんに決まってるだろう。俺じゃ話にならないんでな。」
「やっぱり分かってないわね。
 そんなの、有希に淹れてもらったほうが良いわ。
 みくるちゃんじゃ駄目なのよ。」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:15:15.93 ID:Wq3yNy+F0

今の発言は気に入らん。
よくそんな言葉が出てくるな。

「確かに長門のお茶が美味いと思うのは俺も同じだ。
 しかし、納得がいかないな。」
「根拠は実力差よ。
 なんなら飲み比べしてみれば良いじゃない。
 有希、みくるちゃん、お茶を淹れて。」

ハルヒの瞳には意思の炎が宿っていた。
俺には何故ここまで朝比奈さんを否定するか理解出来ない。

「分かった。」
「……はい。私も、やります。」

同じお茶っ葉、同じ急須。
公平な状況であるはずだった。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:18:32.83 ID:Wq3yNy+F0

朝比奈製のお茶と長門製のお茶が各人の前に置かれる。
最初に手を出したのはハルヒ。
その表情が苦渋に歪む。

「不味いわ。有希のと比べる必要も無いわね。
 むしろ比べたりしたら有希に失礼よ。」
「……え……?」

何だ、コイツは。
憤りの激流を何とか押さえ込む。

「ハルヒ!」
「文句があるなら、みくるちゃんのお茶を飲んでからにしなさいよ。
 分かるわよ。」

鼻をつく臭い。
お茶を口に含んだ時、ハルヒの言ってる事が理解出来た。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:21:20.47 ID:Wq3yNy+F0

不味い。
はっきり言って俺が淹れた方が遥かに美味い。
そもそもこれはどんな淹れ方をしたのか。
他の団員の答えは、それぞれの顔色が示していた。
あの長門までもだ。

「そんな……すぐやり直しますっ!」

跳びつくように急須へ。
しかし結果は同じようなものだった。
むしろ、より悪化したようにも思える。

「駄目ね。話になんないわ。」
「涼宮さん、もう少しだけ待ってください……」
「しつこいわね。もう終わりよ。こんなお茶飲む価値も無い。
 今日は解散。」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:23:46.74 ID:Wq3yNy+F0

お茶を流し台へ捨て扉へと向かうハルヒを引き止める。

「待てよ…」
「何よ?」
「今やったことを朝比奈さんに謝れ。」

そんなうざったそうな顔をするな。本気で殴ってしまうだろうが。

「実際飲めたものじゃ無かったし、捨てるしかないでしょ?」
「味は関係無いだろ。平常な思考があるんなら、人が淹れてくれたお茶を捨てない。」
「私の勝手よ。あんたの考え押し付けないでくれる?
 さっさと通しなさい。」

何だ、まさかここまで勝手な奴だったとは。
殴るべく握り拳を作ったが、無意識下で何を願ったか、俺の身体は扉の前から容易く除けられた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:27:36.55 ID:Wq3yNy+F0

文芸部室に流し台なんて有ったかなっと。



さて、どうするか。
あの糞団長への鉄拳制裁は今は我慢して、まずは床に座り込んでいる朝比奈さんのフォローが先だな。

「朝比奈さん。」
「キョン……く……私…」
「まずは落ち着いてください。椅子に座りましょう。」
「ぐすっ……えぅっ……」

普段より控え目な朝比奈さんだが、今は一層弱弱しい。
それこそ本当に壊れてしまいそうなぐらいだ。

「古泉。ハルヒを止めなかったのは何故だ。
 あんな非人道的行為まで許されるのか?
 アイツが神だからか!?」
「……1つ、確認しておきたい事があります。
 そちらが先で宜しいですか?」

目の前の湯呑みに触れながら、古泉は口を開く。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:31:02.24 ID:Wq3yNy+F0

「朝比奈さんには申し訳ありませんが…有り得ない味です。
 ただお茶を淹れるのに失敗しただけではこの味は出ないでしょうね。
 しかし、その有り得ない味が現実の物となったのは…」
「ハルヒの力か?」
「ええ。少なくとも僕はそう見ています。
 恐らく、長門さんの勝利を願ってのことでしょう。」

そうかい。言いたい事は分かった。
で、それとお前がハルヒの言動を容認した理由に関連性があるとは思えないんだが。

「これは失礼。まず最初に言っておきますが、私は容認していたわけではありません。
 抗えない力が働いているのですよ。もちろん涼宮さんの力です。
 その影響により、私は自分の意思とは無関係に涼宮さんの擁護に入ります。少なくとも彼女を止めることはしないでしょうね。」

ついに催眠術まで身に付けやがったか。忌々しい。

「しかし長門の勝利を願ったにしても、朝比奈さんにしたことは許されるもんじゃない。」

身体を震わせ、嗚咽を零す朝比奈さんに目をやりながら言う。
そこまで言って、1つ疑問が浮かぶ。

「…ん?俺は何ともないぞ?」
「それに関しては分かりません。
 朝比奈さん側についているのは後はあなただけなのですが…
 僕と長門さんは既に影響を受けています。
 このままでは、どこまで広がるか分かったものではありませんよ。」
「相変わらずマトモな対処法は無いんだな。」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:34:50.40 ID:Wq3yNy+F0

ハルヒの力は本物だ。
いつどのように作用するかはあいつ次第。どう変わるかも分からない。
厄介な事この上ない。

「いつも通りに行くなら、朝比奈さんこそがお茶汲み係に相応しいと思って頂ければ良いのですが…」
「長門がワザと不味いお茶を淹れれば良いんじゃないのか?」
「涼宮ハルヒの力がある。
 私は手を抜けない。」

長門よ、初めて喋ったか。

「お手上げだな。
 長門お得意の情報操作とやらも、ハルヒには通用しないんだろ?」
「ある程度の抵抗は可能。
 ただしそれすらも書き換えられる可能性が高い。」
「…朝比奈さん、お茶を一杯淹れて頂けませんか?」

朝比奈さんは肩を大きく震わせた。
いきなり突拍子もない事を言うな。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:37:45.03 ID:Wq3yNy+F0

「話が読めん。」
「今回は有効範囲なるものがあるかもしれません。
 涼宮さんが帰路に着き、この部室から離れたせいでしょうか。
 今、心情の変化がありました。」
「……もう一回頼む。」
「口頭では説明し難いのですが…
 私はついさっき、朝比奈さんのお茶が飲みたくなりました。
 何故かは分かりませんが、涼宮さんの影響を受けなくなったからでしょう。
 恐らく朝比奈さんのお茶の味にも変化が見られるかも……」

肝心の朝比奈さんは机に目を落としたまま。
聞こえていただろうか?

「朝比奈さん…」
「あ、えっと…さっきので茶葉が切れてしまったので…」
「おや、それでは仕方ありませんね。
 ひとまず今日はここまでにしましょうか。」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:40:39.73 ID:Wq3yNy+F0

立ち上がった古泉はこちらを見て言った。
「あなたにお話があります。」

「今度は何だ?」
「涼宮さんが部室を出る前に確認しておきました。
 茶葉は無くなってはいませんでしたよ。」
「まだ有ったのか?」
「えぇ、たっぷり。」

なら、分からない。何であんな事を言ったんだろうか?

「朝比奈さんの中で、お茶は軽いトラウマのようなものになっているようですね。
 仮に上手くいったとしても次はいつ失敗するか。
 場合によっては毒物への変化すら警戒しなくてはなりません。」

不愉快だ。やめろ。

「失礼。とにかく今回の件について情報が欲しい所です。
 あれほどに長門さんのお茶に執着する理由。
 それとここ最近は不安定ですね。
 本来ならあなたに頼る所なのですが…」
「俺は冷静になれそうもない。そっちに任せる。」
「出来るだけのことはしましょう。期待はしないで頂きたいですが。
 やはりあなたからの接触が最も効果的だとは思います…」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:43:39.28 ID:Wq3yNy+F0

かくして長い一日が終わり、重い足を引き摺って帰宅。
何とか制服は脱ぎ、そのままベッドに倒れこむ。
そのまま心地良い感覚に包まれて、夢の中へ…。

「ねーねーキョンくんー!
 どうしたの?何かあったの?」
「んあ…?」
「お腹痛いの?風邪ひいた?」

そういえば、帰宅時、妹が出迎えてくれたんだったな。
挨拶を返してなかったのか…

「大丈夫だ。
 眠いから、寝させてほしいんだが。」
「う…ん…」
「そんな顔するなよ。本当に何とも無いから。
 心配させて悪かったな。」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:47:08.21 ID:Wq3yNy+F0

時計を見れば、22時。
健全な一男子高校生にしては随分早い就寝だが、あちこちのギアが軋む体は休息を求めている。
たまには休暇を取らせてやらないとな。
肝心な時に筋繊維達にボイコットされては困るのだが…
妹が部屋から出て行こうとしない。
大きな目が俺を捕らえていた。

「何かあったのか?俺の事ばっかり気にかけるんじゃないぞ。」
「ううん。やっぱりキョンくんが心配だから。」
「お前くらいの年の子はな、年上にただ甘えてれば良いんだ。
 今からそんなに気を遣われるとショックを隠しきれん。」
「イヤなことがあったら言ってね。
 ……約束だよ?」
「分かったよ。
 さ、もう寝た寝た。」

んむ〜、と頬を膨らませながら妹様は部屋を出て行った。
まさかあいつに気を遣われるとは…そんなに疲れてるように見えたのか。
妹の成長に対して、喜び半分寂しさ半分の自分がいるんだけどな。


「キョンくん、約束だよ……
 約束……」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:51:16.46 ID:Wq3yNy+F0

妹の愛を込めた目覚まし技を受ける前に目が覚めた。
睡眠時間は約8時間。十分過ぎるくらいに取ったし……
始業まではまだ時間があるな。
時間はあるんだ、ゆっくりしていこう。
馴れ親しんだ布団の抱擁を受けるため、もう一度まどろみの中へ…

「キョンくん二度寝駄目だよ!」
ドズゥッ!
「はおぅ!」

油断した。

「寝てたら学校に遅れちゃうよ?私ももう行かなきゃいけないのに…」
「そうだな…」

自分も時間が無いというのに、わざわざ起こしてくれたのか。
…やり方に難有りだが。

「キョンくん……ハルにゃんと話してあげてね……」
「はいはい。分かったから早く行きなさい。」
「……ちゃんと約束してくれないと行かない!」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/01(月) 23:55:21.89 ID:Wq3yNy+F0

「ハルにゃんと喧嘩したの……?ねぇ……?
 やだぁ……やだよそんなの……」

泣いていた。いつもいつも馬鹿みたいに大騒ぎをするあの妹が。
あんなに大粒の涙をぽろぽろと。
自分のよく知る人物の喧嘩が嫌なんだろう。
俺は妹を抱き締め、頭を撫でてやった。

「悪かったよ。
 そうだな……ちょっと喧嘩しちまったんだ。仲直りするから、泣き止んでくれ。」
「ほんと……?」
「……約束する。
 もう、学校へ行きな。」
「……わかった……。」

目をぐしぐしと擦ってにぱっと笑顔。
いつもの妹に戻り、家を出て行った。


妹よ。すまないが、約束は守れないかもな。
俺は本当に不出来な兄だよ。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 00:00:57.40 ID:pun13jtj0

今日は早めの登校と行くか。
たまにはそんなのも良い。

しかしその日は暑かった。
今までの登校からそれなりに慣れていたはずの坂は、
少々早く訪れた気候と見事な結束を見せ、生徒達の体力を奪うという役を精一杯に演じていた。

「暑い…」
いかんいかん。独り言は変態道への第一歩だ。
…まさかここまで暑いとは思わなかった。
正直今日はおかしいぞ?

大体半分辺りだろうか。
考えるのも面倒くさくなるような熱気の中。
いつもの長髪は縛られ、いつもの元気はどこへやら。
今にも溶けそうな歩き方の鶴屋さんが居た。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 00:08:21.77 ID:pun13jtj0

さすがに普段のままでは暑いのか、髪を上で縛っていた。

「鶴屋さん、おはようございます。」
「おっ、キョンくん……
 こんな所で会うとは珍しいね……」

ボリュームが足りない。
鶴屋さんの魅力が完全に失われているじゃないか。

「それはごめんよ……戻すから……
 ………んー!しかし暑いねー今日は!
 思わず髪を切りたくなっちゃうよ!」
「はは…あの長髪が拝めなくなるのは少々残念ですよ…」

天候に負けない元気さだな。
この人は自然に場の雰囲気を明るくすることが出来るみたいだ。

「ねぇキョンくん?
 みくるの事なんだけどさ。
 なーんかあったのかな?」
「団活で色々ありまして。」
「そーなんだ。
 いやーみくるってば嘘が下手なんだから!
 よしっ!私も団活に行っていいかい?」
「良いですよ。お願いします。」

鶴屋さんならきっとなんとかしてくれる。
なんだかんだで頼りになる人だからな。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 00:12:31.69 ID:pun13jtj0

さて、学校に着いていきなりの問題だ。
ハルヒに色々言いたいことがある。

「ハルヒ。」
「…何よ。今気分最悪だから話しかけないでくれない?」
「俺はお前の態度の方が最悪だと思うんだが。」
「アンタ……喧嘩売ってんの!?」

がたんと椅子を蹴り飛ばし、胸倉を掴まれる。
その姿にクラスメイト達が一斉に止めに掛かった。

「なーにやってんだよキョン。」
「そうだよ。どうしたの?」

谷口に、国木田か…
冷静になれそうにないが…

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 00:16:53.34 ID:pun13jtj0

「朝比奈さんがお茶を淹れてくれたんだ。
 それをあいつは『不味くて飲めるか』ってそのまま捨てやがったんだよ。」
「涼宮さん、お茶が嫌いとかって事は?」
「朝比奈さんは長い間お茶を淹れてくれてる。
 それをアイツはずっと飲んでたさ。」
「周りのヤツラは何やってたんだ?」

これは、どうするか…

「皆で止めた。無駄だったがな。」
「そうかい。でもこれで分かっただろ?アイツの勝手さがよ?」

勝手、ね…

「キョーン。お前ホントどうしたんだよ?」
「悪い。とりあえずそういう事なんだ。
 またしばらくイザコザがありそうだが、優しく見守っておいてくれ。」
「ちゃんと仲直りして欲しいかな。やっぱり二人はお似合いだし。」
「下らんことを言うな。」

冷静にならないとな。
クラスメイト達に迷惑はかけられないだろう。
それからハルヒは1、2時限をサボった後に教師達により確保。
現在4時限目。俺の後ろにはハルヒが居る。

あれだけの事で胸倉を掴まれるとはな。
少しカルシウムが足りないんじゃないか?牛乳でも飲んで、魚の骨をぱりぱり食べてれば多少マシになるのではなかろうか。
ピリピリムードの授業により胃を痛めていた奴。きっと俺だけじゃないだろうよ。
心の中で謝っておく。うちの馬鹿団長が迷惑かけたな。
それにもう少し継続されそうだ。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 00:21:59.30 ID:pun13jtj0

昼食休憩。
チャイムと同時に席を立ち教室を出て行ったハルヒ。やはりというかなんというか。
ほぼ入れ違いのタイミングで現れたのは、いつもの爽やかな笑顔を貼り付けた古泉だった。

「一応報告はしておこうと思いまして。
 昨日から本日正午にかけての、閉鎖空間の発生件数はゼロです。」

今回もか。
このパターンは、大抵ハルヒが何らかの精神的異常を抱えているときだ。
しかもその度にあの御三方は俺に頼る。
割と疲れるんだぜ?

「今朝のお話は聞きました。随分荒れたようですね。」
「先に言っておくが、あいつの手を出すタイミングが早過ぎたんだ。」
「仮にそうだとしても、もう少し穏便に話を進めるように努めて頂きたいのです…
 今は無いとはいえ、次の閉鎖空間の発生が非常に強大な物になる可能性も有り得ます。
 涼宮さんの力は、未だに全容が明らかになってはいないのですよ?」

はっきり言うと、下がりたくは無い。

「お前は、ハルヒの影響を受けているのか?」
「今の所は特に。閉鎖空間の発生件数に関しましても、これと言った結論が出せない状態です。
 それと、涼宮さんと関係があるか定かではありませんが…
 世界各国で異常気象が多発しているようです。
 日本も、今日の気温は例年を遥かに超える高さです。
 機関には『審判の日』なんて意見も出ました。」

恐怖の魔王で世界の終わりか。笑えん。
その日の放課後、ハルヒ、朝比奈さんは団活に顔を見せなかった。
せっかく鶴屋さんに来て頂いたのにな。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 00:27:31.61 ID:pun13jtj0

翌日。
朝のニュース番組では、気象情報のお姉さんが大忙しのよう。
今日は真冬並みか。

教室へ向かうと、ハルヒはいつものように頬杖をつき、外を眺めていた。
机に座るとクラスメイト達がこちらの様子を窺っているのがよく分かる。
そこ、おもしろい物なんて見られないぞ。

それにしても、閉鎖空間が発生しない…か。
古泉の言う通り、穏便に行こう。
触らぬ神になんとやら、だ。
まさに文字通りの意味で。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 00:34:12.14 ID:pun13jtj0

俺は、そう楽観視していた。

昼休み。
チャイムと同時に携帯が振動する。

長門
「部室まで来て。朝比奈みくるの事。」

なんだ?朝比奈さんの身に何か?
谷口達への謝罪も、メールの返信も適当に、俺は部室まで走った。


「長門!」

部室のドアを開けるとそこには古泉も居た。

「古泉まで…朝比奈さんがどうかしたのか!?」
「落ち着いて。
 朝比奈みくるは、この時間軸には存在していない。」

存在していない…?

「理由はともかく朝比奈さんは現在、元居た時代に帰っている、という事です。」
「朝比奈みくるからの伝言。『ごめんなさい。』」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 00:39:38.30 ID:pun13jtj0

ごめんなさい、って何だ…?
まるで永遠の別れみたいな…

「何だよそれ…戻ってくるんだよな…?」
「そこまでは分かりません。」
「またハルヒかよ…
 今度は朝比奈さんが居なくなれば良いって…?」
「今回の涼宮さんの件、朝比奈さんが大きく関わっています。
 一旦帰還して報告…といった所では?
 今の所、こちらの世界では病欠ということになっています。」

冷静になって考えれば、あの朝比奈さんが別れの挨拶も無しに去るだろうか。
きっと大丈夫だ。
そう信じ込まなければ、この溢れる激情を止める術が無くなるから。

「長門…また何かあったら言ってくれ。」
「分かった。逐一あなたへの連絡を入れる。」

重い足を引き摺り、逃げるように部室から出た。

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 18:04:38.65 ID:pun13jtj0

朝比奈さんを……探そう。
あるいは、朝比奈さん(大人)から何らかのアプローチがある可能性もある。
古泉や長門の話を信じないつもりではない。
望み薄だがとにかく何かしないと落ち着いていられなかった。
まずは……教室か。

「キョンくんじゃないかっ。
 珍しいね!どうしたの?」
「朝比奈さんは今どちらに……?」
「それがみくるは休んじゃっててね?
 夏風邪は長引くから気を付けないといけないのにねっ」
「そうですか…」

失礼しました、と背を向けようとすると肩を掴んで引き止められた。

「キョンくん。話してくれないかな?
 何があったか。」

鶴屋さんが真面目な顔だ。
この人の瞳は、妹と似通ってる所があるな。
見つめられると逃げられない。

俺は、事の顛末を話すことにした。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 18:15:26.60 ID:pun13jtj0

「ハルにゃん……酷いね。
 それはやり過ぎだよ。」
「朝比奈さんは、やはりショックだったんでしょう。」
「そうかも知れないね。みくるってばずっと元気無かったよ。
 よしっ!お姉さんに任せてっ!
 何とかハルにゃんと話をしてみるよ!」
「ありがとうございます。」
「大事なSOS団の皆の為だからね!」

鶴屋さん、感謝します。
あなたの言葉が、ハルヒに届けば良いのですが。
今の所、有無を言わせないハルヒのあの態度に唯一意見出来る人物かもしれない。

名誉顧問の想いも撃墜してしまうようじゃ、本当に一人になってしまうぞ。
鶴屋さんが催眠術にかからない事を祈るばかりだ。

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 18:25:55.93 ID:pun13jtj0

「ハルヒは団活に姿を見せないかもしれません。
 教室はどうですか?」
「そうだね、そうするよ。
 ありがとっ」
「とんでもない。お世話になっているのはこちらの方ですよ。」
「いやーっ後で何か奢ってくれると嬉しいなっ」
「えぇ、必ず。」

鶴屋さんの笑顔は……こちらまで元気になれる。
ただひたすらローだった俺の精神状態は、確実に癒されていた。

「じゃあ、今日放課後ねっ」
「はい。」

光が差した。
事情を知らない人があのハルヒと話す訳だ。
俺がハルヒと喧嘩をした日なんて古泉からのお説教が入るしな。
さて、どうなることか。

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 18:37:25.58 ID:pun13jtj0

放課後……早々に席を立つハルヒ。
だが鶴屋さんが教室に入ってきて押し留めた。

「ハルにゃん、ちょーっと良いかな?」
「……何?」
「まぁまぁ!話があるっさ!」

鶴屋さんの目は「後は任せて」と語っていた。
ちゃんと読み取れました。

俺は何も出来ない。正確にはしたくない。
鍵なんかじゃないんだ。
出来た人間ではないんだ。

鶴屋さん……お願いします。

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 18:46:59.15 ID:pun13jtj0

ハルヒ、朝比奈さんが居ない部室。
しかし鶴屋さんの事がある。
古泉達の話では動きはほとんど無かったようだが、帰るわけにはいかなかった。

「お帰りにならないのですか?」
「あぁ。用事があってな。」
「そうですか。では施錠をよろしくお願いしますね。」
「分かってるよ。」

二人なら、俺が鶴屋さんに協力を要請したことに気付いていそうなものだけどな。
敢えて何も言わなかったんだろうか。
俺(というか鶴屋さん)に任せて大丈夫だと判断されたのなら嬉しいのだが。

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 18:55:35.53 ID:pun13jtj0

ドアが開く。
が、そこに立っていたのは鶴屋さんではなく、意外な人物だった。
朝比奈さん(大)だ。その御顔が既に曇り切っているのは何故か。
「キョンくん……」
「何か、あったんですか……」
「お願いがあるの……もう、私に関わらないで、このまま放っておいて欲しいの。」

それはどういう事だろうか?
また色々な部分に「禁則事項です」を入れつつ、何かヒントを出してくれると期待していたのだが……
入るなり一言目がこれでは残念である。

「今までは仲良くしないで、だったけど……
 もうそれじゃ済まない所まで来てるの。
 これはキョンくんの為。私の為。
 だから、お願い……」
「俺の良く知る朝比奈さんは、帰ってきますか?」
「……明日に。」
「俺は、帰ってきた朝比奈さんの力になります。
 ですから、お願いは聞けません。」

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 19:08:57.99 ID:pun13jtj0

「今の朝比奈さんを放っておくことは、俺には出来ませんよ。」
「……キョンくん。」
「何ですか?」
「どうしても支えになりたい?」
「はい。」

そんなこと……考えるまでもない。
朝比奈さんを支えてあげることが出来るなら、労力を惜しむつもりはない。
絶対に。

しかし、何かが変だ。
体が……透けてる?

そして……

「そんなに想ってくれてありがとう。
 色々伝えたかったけど時間が無いの。
 それがあなたの意思なら、止めないわ。
 さようなら。」

ぷつん。
まるでテレビの電源を切ったような。


目の前に居た朝比奈さん(大)が、『消えた』。

136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 19:17:07.99 ID:pun13jtj0

消えた……?
どういうことだ?今のが時間跳躍ってヤツか?
ふと、似たような消え方をした朝倉を思い出した。
情報連結の解除……だったか?

しかしわざわざこの時代に来られたということは、俺が朝比奈さんを助けるとそんなにマズイのか。
緊急を要する事態なのか?

朝比奈さんなら分かるだろうか?
しかし朝比奈さん(大)の事を話すのは良くないな。
或いは長門なら?

考えを巡らせていると、またドアが開く。
鶴屋さんである。
その顔は晴れやかで、少なくとも事態は好転しそうだった。

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 19:27:32.35 ID:pun13jtj0

「やっほーキョンくんっ」
「どうでしたか?」
「いやーハルにゃん反省してるってさ!
 みくるが帰ってきたら謝るって約束もしたよっ」
「そうですか。ありがとうございます。」
「後の詳しい事は……乙女の秘密だよっ!
 ちょっと事情があったんだけどね、おっとここから先は内緒だよっ」

健康的な白い歯がよく見える。
にははと笑う鶴屋さんの顔には一点の曇りも無かった。
どうやら本当に上手くいったみたいだ。
ハルヒが謝ったところで朝比奈さんの傷が癒えるかと言えば、当然そういう訳にはいかないだろう。
あいつのやったことに変わりは無いんだからな。

「はは……ありがとうございました。」
「いやいや。感謝されるようなことをした覚えは無いよっ」
「……今日はもう帰りましょうか。」
「いやいやその前に一つ良いかな?」

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 20:03:46.35 ID:pun13jtj0

これは珍しい。
鶴屋さんは椅子に腰掛ける。

「キョンくんは、みくるの事が好きなのかな?」
「……はい?」
「みくるの為に頑張ってるじゃないかっ」

朝比奈さんは超絶美少女。男の10割が所見でくらっとなるだろう。
もちろん俺もそうだった。
あの小動物のような可愛らしさは、守ってあげたくなるものがある。
しかし……この想いはアイドルか何かに向けてのような感情ではないのか?
付き合うとかそういう事は望んでいない……というより叶わないだろうから望まない。
それに朝比奈さんは未来人だ。不可能だろう。

「まだ分からないかなっ?
 ついからかってみたくなっちゃってね?」
「そうですか……」
「ライバルは多いけど、キョンくんなら応援するよっ」

俺は何も答えてない。
一人で話を進めないで頂けませんか?

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 20:16:24.05 ID:pun13jtj0

「いやーごめんごめん!
 それじゃあねキョンくん!
 何かあったらまた声掛けてくれたら嬉しいなっ」
「えぇ。ありがとうございました。」

鶴屋さんとハルヒがどのような話をしたのかは分からない。
ただ乙女の秘密とまで言われたら、そこは踏み込んではいけないんだな。

さて、俺も帰るか。
鶴屋さんのお話は聞けたし、もうすぐ完全下校の時間だ。
お茶を飲み干し、部室を出ようとする。
すると……

こん、こん

控えめなノック。今度は誰だろうか?
扉を開ける。
そこに居たのはハルヒだった。

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 20:27:02.72 ID:pun13jtj0

「あ……」
「ハルヒ……」

鶴屋さんの話では、反省の意を示したようだが……
実行されてない限り、俺の中ではそれは意味を持たない。

「あの……キョン。ごめん。」
「何だいきなり。」
「キョンが迷惑してたの分かってる。
 鶴ちゃんに話を聞いてもらって、本当に反省したわ。」
「俺じゃない。謝るのは朝比奈さんにだろう。」
「そうね……でもごめんなさい。
 みくるちゃんにも明日謝るわ。それに有希と古泉君にも。」

これは珍しいな。あのハルヒがここまでしおらしいのは。

「朝比奈さんが帰ってきた時に見せてもらおうか。」
「……また明日。ありがと。」

意外にあっさりだ。
誠意を見せてもらうさ。
朝比奈さんの受けたダメージは大き過ぎたんだからな。

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 20:39:02.90 ID:pun13jtj0

最近、体の調子が悪いな。
まるで激しい運動の後の全身筋肉痛のようだ。
さっさと飯を食って寝よう。

「キョンくん嬉しそう。」
「何がだ。」
「?」
「……あぁ、ハルヒと仲直りしたんだよ。」

仲直り?
……まぁそういう分類になるのか。

「ホント!?」
「ああ。」
「キョンくんありがとー!」

頭を撫でてやる。屈託の無い笑顔だ。
本当に心配していてくれたんだな。


ん?そういえば……

「なぁ……『ハルヒと喧嘩した』なんて言ったか?」

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 20:48:13.16 ID:pun13jtj0

俺は、そんな覚えは無い。
コイツは俺の様子がおかしいことを察知しただけのはず……

「ハルにゃんから聞いたの。
 キョンと色々あってね、って言ってたから。」
「どこでだ?」
「学校の帰り道だよ?
 ハルにゃん病院に行ってるんだって。
 喧嘩しちゃって疲れてるのかな?」
「病院……?」
「でも良かった……
 仲直りしてくれて……」

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 20:49:53.44 ID:pun13jtj0

病院……ハルヒが?
扉の開閉方向なんて下らない事まであっさり変えてしまうヤツだ。
病気なんてアイツなら一発で治せるんじゃないだろうか?

「ごちそーさま。
 そういうわけでちょっと疲れてるんだ。
 妹よ。俺はもう寝るから。」
「分かった。
 おやすみなさーい。」

ふあ……眠いな。
休もう休もう……

眠りが深かったんだろうな。
枕元の携帯の着信に、俺は気付かなかった。

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 21:01:40.68 ID:pun13jtj0

翌朝。
「キョンくーん。
 起きてよー……」
「無理……ホント無理……」
「……えいっ!」

どずんっ

「……!」
「朝だよ!遅刻しちゃうよー!」
「ぐぅ……起きるから……」

時計は……いつものペースで間に合う時間帯だな……

「ねぇキョンくん。」
「ん?」
「おはよう。」
「あぁ、おはよう……」

何が言いたいんだこいつは……

「早くしないとハルにゃん怒るよー?」

ん?ハルヒ?

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 21:08:45.55 ID:pun13jtj0

玄関にはハルヒが居た。
両手はいつものように腰に当ててはいない。

「あ……おはようキョン……」
「どうしたんだ?」
「今日ね、一緒に行かない?」
「俺は構わんが……」
「ありがとう。
 待ってるわね。」

一体全体これはどういうことだ?
こんなハルヒを俺は知らんぞ。キャラが違う。
アイツなら開口一番に「遅い!」だろう。

「いってきまーす!」
「あ、妹ちゃん行ってらっしゃい。
 ほら、早くしないと遅刻するわよ。」
「……ちょっと待ってろ。」

仮にも女の子を待たせるわけにはいかないな。

ちなみに携帯にはメールが一件。
ハルヒからだった。
どうやらこの朝の事を言ってたようだ。

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 21:19:53.49 ID:pun13jtj0

通学路。
「最近……本当に天候が変よね。」
「テレビで学者が大騒ぎしてたな。」

ちなみに今日の天気は10月中旬辺りの涼しい一日らしい。
本当に忙しいことだ。

「お前はどの季節が一番好きなんだ?」
「今十分振り回されてるからね。
 いつも通り、四季がある方が良いに決まってるでしょ。」

その言葉、確かに聴いたぞ。
この世界の異常がハルヒの仕業なら、明日には(あるいは次の瞬間かもしれないが)元通りさ。

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 21:25:14.99 ID:pun13jtj0

この天候にも関わらず、ハルヒは若干大人しいようだ。
違和感があり過ぎる。
コイツなら地球滅亡だの地底帝国の侵略だの恐怖の魔王だの大騒ぎすると思ったんだが。

古泉の機関の人間は、ハルヒのような脳構造をした奴ばかりなのかもな。
ハルヒ教の狂信者達は、自らの崇める神に極端に近しいらしい。


にしてもハルヒはハルヒなりに重く捉えているようだ。
普段からそうしおらしくしていれば男も寄ってくるだろうさ。
そして案外、その中に……次は異世界人か?
まぁそんな類の奴が混じっているのかもよ。

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 21:33:58.50 ID:pun13jtj0

「さて、どうするんだ?」
「教室に行ってみるから。
 みくるちゃんが来てたら、直ぐに話に入るわ。」
「俺も行って良いか?」
「もちろんよ。」

またコイツが暴走を起こした時の為に、俺が朝比奈さんを守らないとな。
鶴屋さんも居てくれてるだろうし、被害を最小限に食い止める事ぐらいは出来るだろう。

「もし居なかったら、どうする?」
「朝の内に回れる所は全部回ってみる。
 一時限が終わったら、教師に出欠の確認を取って……
 昼休みも、放課後もちゃんとね。
 もし学校を休んでたら、お手上げだけど。」

そうかい。ある程度は覚悟してるんだな。

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 21:41:07.27 ID:pun13jtj0

教室の前……

「ねぇキョン……様子を見てきてくれない……?」
「何だ、お前らしくないな。」
「うるさいわね。ちょっと、行きづらいじゃない?」
「お前も遠慮を知るようになったか。嬉しいことだ。
 じゃあ、行ってくるさ。」
「お願い……」

教室の扉を開ける。
やはり自分のクラス以外の教室の中を覗くのは勇気が要るな。

朝比奈さん、朝比奈さんは……居た。
隣に居るのは鶴屋さんか。
何か話しかけているようだが、あまり耳に入っていないご様子である。

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 21:53:34.47 ID:pun13jtj0

「居た。行くぞ。」
「ちょっと待って……心の準備が……」

だからコイツは誰だっての。

十分に時間を置き、心の準備とやらを終えるハルヒ。
そんなことしている内に時間はどんどん無くなっていくぞ。

「よし……行くわよ。」
「大丈夫か?」
「大丈夫も何も、謝らなくちゃいけないじゃない。
 この期に及んで下がるなんて最低よ。」

妙に顔色が悪いハルヒと共に教室に入った。

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 22:02:16.58 ID:pun13jtj0

教室の戸を開けると、中の生徒達の約7割がそれに反応する。
その中には鶴屋さんも含まれていて、朝比奈さんに何か耳打ちした。
朝比奈さんはこちらに気付くと一気に顔を真っ青にし、俯いてしまった。

「あのね、みくるちゃん……」
「ひぅっ……!」
「話したい事があるの。
 聞いてくれる?」

朝比奈さんの様子に気付いた生徒達。
喧騒が一気に向きを変えている。

「もう……嫌です……私なんか、要らないんですよね……?」
「みくる。ハルにゃんの話を聞いてあげなよ。」
「……ごめんなさい。最低な事をしたわ。
 本当に反省してるの。」
「……」
「許して欲しいなんて思ってない。
 みくるちゃんが望むなら、私がSOS団から居なくなるから。」
「それだけは絶対嫌です……」
「それは逃げてるだけじゃないのか。ハルヒ。」

悪いかなとは思いつつも口を出させて頂いた。
他人に恨まれる自覚が出来ていたのか……
しかし、逃げるなんて被害者が最も望まないことだろうに。

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 22:11:33.50 ID:pun13jtj0

「そうね……ごめんなさい。
 それでね……」

キーンコーン

始業のチャイムだ。
教師が入室して、生徒達に着席を促す。

「みくるちゃん……今日の団活、待ってるから。
 話の続きがしたいの。」
「朝比奈さん。それでは失礼します。」

なんというタイミングなんだか。

「みくるちゃん……来てくれるかしら……」
「反省の意は伝わっただろう。
 なんなら昼休みに行ってみても良いさ。」
「そうだったら良いんだけど……」
「本当にらしくないな。」

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 22:19:14.90 ID:pun13jtj0

昼休憩のチャイムが鳴る。

「キョン、みくるちゃんの所に行ってみるわ。」
「あぁ。頑張れよ。」

どうやら杞憂に終わったか。
この問題は二人で話すべきことなのかも知れないしな。
俺と鶴屋さんは、それの手助けをしただけ。

「なーキョン。どうなったんだよお前ら。」
「見ての通りだ。ハルヒが考えを改めたらしくてな。
 俺としては良い方向だと思える。
 アイツを応援してやるさ。」
「そうかぁ?
 お前らのあの態度を見る限り、とても今のような状態に戻れるとは思えないな。
 頭でも打って、考え方がおかしくなっちまったんじゃないか?」

アイツは生まれた時に頭をぶつけて若干ネジが飛んだのかもな。
だが俺は至って普通だ。
自分でもよくハルヒを応援する気になったなと思うが。

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 22:27:26.42 ID:pun13jtj0

昼休みが終了。
ハルヒが教室に戻ってきた。

「どうだった?」
「みくるちゃん……居なかったわ。」
「鶴屋さんに聞いたか?」
「二人とも居なかったから……
 さすがに電話してまで会いに行くわけにもいかないでしょ?」
「仕方ないな。放課後に来てくれることを祈ろう。
 お前の意思は伝えたんだから、後は待つしかないんじゃないか?」

分かってるわよ、と机に突っ伏すハルヒ。
いきなり寝る気か?

「最近、夜眠れないのよ……
 起こさないでちょうだいね。」

191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 22:37:46.19 ID:pun13jtj0

放課後……
こいつをどうする?
結局あれから寝っぱなしじゃないか。

「おいハルヒ。起きろ。」
「ん……?」
「もう放課後だ。団活に行くぞ。」
「そんなに寝てたんだ……」
「あぁ。朝比奈さんと話をするんだろう?」
「分かってる……行くわ。」

部室に向かう俺とハルヒ。
朝比奈さんは今日も来ないかもしれない。
しかし実際にもうやるべきことが無いのも事実だ。
ハルヒも分かってるように、押しかけたって何にもならないしな。

「お前は何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「有希と古泉くんにも謝らないといけないでしょ。
 だから何て言おうか考えてただけよ。」
「あいつらなら悪いようにはしないさ。
 誠意を込めて伝えれば、届くさ。
 同じように朝比奈さんにもな。」

194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 22:47:12.89 ID:pun13jtj0

言ってる間に文芸部室前に。
「……」
「先に行ってくれって?」

繊細な面を持ってるもんだ、と感心しつつ、押し引きどちらからでも動く扉を開ける。
古泉も長門も居るな。ちょうど良い。

「どうも。」
「あぁ。
 ……どうした?入ってこいよ。」

何をやってるんだか。
影に隠れているハルヒの腕を引き、部室の中へ。

「涼宮さん……どうかされましたか?」
「あ……その……
 話があって……」
「遠慮なさらないで、何でも仰って頂いて構わないのですよ?」
「古泉くん……有希も……
 悪かったわ……」

195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 23:00:20.61 ID:pun13jtj0

「みくるちゃんの事で、私我が侭ばっかり言ってて……
 二人の気分悪くさせてたって思って……」
「涼宮さん。」
「な……何?」
「仰ることは分かりました。
 ですがその言葉はまず朝比奈さんに向けるものではないでしょうか?
 僕達は、あなたと朝比奈さんが無事に元通りになることを望んでいます。」
「……みくるちゃんと話してから、ここに来るから。」
「そこまで気を遣わなくてもいいんですが……」
「ありがとう……」

それまで黙っていた長門が立ち上がる。

「有希……?」
「あなたが朝比奈みくるに対して行った事は決して許されない。」

ハルヒの顔が段々と沈んでくる。
しかしそこに降ってきた言葉は優しい声質をしていた。

「私は止めなかった。
 だから私も、朝比奈みくるに謝罪しなければならない。」

197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 23:06:46.97 ID:pun13jtj0

長門はハルヒの力によって意見を持つことを許されなかった。
それでもこいつは、このような提案が出せるのだ。

「そうですね……僕も長門さんに同意です。
 全員に罪がありますね。」
「古泉くんも……」

……そうだな。
確かに古泉の言う通りだ。
俺もなんだ。

『私に関わらないで――』

あの時の朝比奈さんの言葉が頭をよぎるが……

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 23:14:43.15 ID:pun13jtj0

「みくるちゃんが来るかもしれないじゃない」と言ったハルヒは、団長席から降りようとはしない。

「もうすぐ完全下校の時間です。
 今日は諦めた方が良さそうですね。」
「う……ん……
 仕方ないわね……」
「それでは施錠します。
 忘れ物はありませんか?」

四人で下駄箱まで向かう途中、古泉が耳打ちをしてきた。
だから近い。何故毎回お前は近いんだ。

「あの涼宮さんを説得するとは、さすが鶴屋さんですね。」
「やっぱり知っていたんだな。」
「敢えて口出しをする必要も無いと思いまして。」
「やれやれだ。」
「あなたと鶴屋さんを信じてのことですよ。
 機関の者にも随分頼りにされているようですのでね。」

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 23:22:42.24 ID:pun13jtj0

ちょっとは自分達で動いてほしいもんだ。

「いつものあなたならそうですが、今回は少々訳有りですからね。
 御自身の意思で進んだのでは?」

こいつらは趣味が悪い。

「それは失礼。
 疲弊し切った我々にとって、久々の休日です。
 羽を伸ばせる時には伸ばしたいのですよ。
 それに今回の事は感謝しています。
 閉鎖空間に関しては未だ懸念事項ではありますが……」
「何も分かっていないのか?」
「えぇ。
 過去の事例を考えると、一日に数回発生していたものです。
 ここまで綺麗に途絶えてしまうと不安が大きくなりますよ。」

確かに……
今までの分が一気に放出されたりしないだろうな?

209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 23:30:33.79 ID:pun13jtj0

「その可能性は分かりません。
 お恥ずかしいことに、あなたの質問のほとんどに答えられそうにありませんよ。」
「そうか。」

『ハルにゃん病院に行ってるんだって。』

待てよ……妹が言ってたな。

「ハルヒが病院に通ってるらしいんだ。
 風邪を引いた様子も無いようだし……
 何か知らないか?」
「病院ですか……いえ、特には。
 涼宮さん本人に聞いてみてはいかがですか?」
「それは今回の件が終わってから考えるさ。」

何か深い事情があるのかもしれない。
それを今のタイミングで持ち出すことは有り得ないだろう。

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 23:38:47.82 ID:pun13jtj0

俺達は朝比奈さんが団活に戻ってくるのを待った。
鶴屋さんと定期的にメールを取り合っており、良い傾向に向かってはいるようだ。
天候は相変わらず激しい変動を見せている。
ハルヒのせいではないのか?
そして一週間が過ぎた。

会話が無い部室。
控えめな、それこそ本当に消えてしまいそうなノックの音が響く。
直感的に悟ったさ。朝比奈さんだと。

「みくるちゃん!?」

すぐさまハルヒが立ち上がり、扉を開ける。

「ひゃあっ!」

その勢いで尻餅をついた女生徒。
間違いなく朝比奈さんだ。

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 23:47:50.13 ID:pun13jtj0

「ごめん!みくるちゃん大丈夫?」
「は……はい……」
「えっと……」
「……」

落ち着いた二人は、扉の前で向かい合っている。
さすがに空気を読んださ。皆が黙っていた。
もちろん廊下に居る鶴屋さんも。

「あのね……みくるちゃん。
 本当にごめんなさい。」
「……実際に美味しくないお茶ですから、仕方ないです……」
「みくるちゃんが頑張って淹れてくれたお茶なのに……」
「いえ……今まであんなお茶を皆さんに飲ませてたって考えると……
 本当に酷いですよね、私って……」
「ううん、あの時は何かがおかしかったのよ。
 いつものみくるちゃんのお茶はすごく良かった。」

223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/02(火) 23:57:19.62 ID:pun13jtj0

「朝比奈さん。今ここでお茶を淹れてみては如何でしょう?」

だからお前はそのハルヒ並に突拍子もない意見を出すのはやめてくれ。
まぁコイツの場合は説明の順序がバラバラなだけなんだが。
朝比奈さんのお茶がいきなり不味くなったのはハルヒの能力。
それと同時に古泉達の心情の変化も起こったらしい。
ということは……

「今なら美味しいお茶が飲めそうですよ。」

今も何か変化があったという事か?

「みくるちゃん……お願いしても良い?」
「……でも……」
「ここが挽回のチャンス。」
「……分かりました……でも、私が先に試飲してからでお願いします……」

227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 00:05:17.33 ID:vUVHRdGK0

部室全体に拡がるお茶の香り。
もう、今までのものと違う事は明らかだったさ。

「ちょっと……先に失礼します。」

ずず、と朝比奈さんが一杯。

「……!
 み、皆さん、飲んでみてください!」

即座に全員に湯呑みが渡される。
その速度や普段の倍はなかろうか。

「うん……美味しいわよ。みくるちゃん。」
「あ……ありがとうございます……」

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 00:13:41.87 ID:vUVHRdGK0

「私ってば…本当に馬鹿ね。
 いつもこんなに美味しいお茶を淹れてもらっておいて、あんな酷い事……」
「いいんです、涼宮さん……
 私は、怒ってなんていませんし、皆に喜んでもらえただけで……」
「ありが、とう……みぐるちゃん……」
「涼宮さん……ひぐっ……」

俺の肩にぽん、と手が載せられる。鶴屋さんだ。

「もう大丈夫そうですね。」
「いや、良かったよ本当に!
 これで無事ハッピーエンドだねっ!
 おっと一樹くんそんな隅に居ないで輪に入りなよっ」

あの人のおかげだな。
結局何を話してあぁなったのか、真相は闇の中なのだが、気にすることはないだろう。
終わり良ければ。有終の美。
こうやってちゃんと納まる所に納まったんだから良いじゃないか。

「長門。美味いか?」
「…………」
「どうした?」
「何も。……何?」
「お茶が美味いなって」
「私も、そう思う」



「……エラー……」

234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 00:21:57.77 ID:vUVHRdGK0

今日はここまで
支援、保守に感謝します

ちょっと話の続きなんだけども

例文
「私は止めなかった。
 だから私も、朝比奈みくるに謝罪しなければならない。」

上記の例文を直してみてほしい
二段目はともかく一段目の読点は外すべき?

321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 21:13:50.02 ID:vUVHRdGK0

団員達と鶴屋さんが帰宅した後。
俺とハルヒは文芸部室に残っていた。
雰囲気?あるわけないさ。


「帰らないのか?」
「アンタこそ」
「お前に話があるもんでな」
「何?」
「妹が言ってたんだがな
 病院に、通ってるのか?」

ハルヒが思いっきり眉間に皺を寄せる。
ある意味見事な顔だ。

「アンタね……女性に対して失礼になるかも、とか思わないの?」
「そういう趣味は無い。
 答えたくなかったら、それで構わないさ」

そうね…、とハルヒは暫く考えた後、口を開いた。

325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 21:25:59.60 ID:vUVHRdGK0

「最近夜に眠れないって前に話したでしょ?
 あれなのよ」
「睡眠薬とか使うのか?」
「そっちじゃないの。
 眠りにつくことは出来るんだけど…その後が問題。
 毎日同じ悪夢を見るのよ」

悪夢か……
俺も忘れたくても忘れられない悪夢の思い出が一つあるけどな。
思い出すとまた穴に埋まりたくなってきた。

「それのせいで、イライラしちゃっててね……
 所詮は夢なのにね。
 アンタとみくるちゃんに八つ当たりしちゃったのよ」
「それは構わないさ。
 俺も朝比奈さんもな。今さっき解決したばかりなんだ。
 蒸し返すのはやめよう」
「……そうね」
「で、どんな夢を見るんだ?」

328 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 21:37:24.85 ID:vUVHRdGK0

「誰も居ない学校に、私が一人で居るの」
「何だ、お化けにでも追いかけられるのか?」
「別にお化けは苦手じゃないわ。
 それよりもっと強烈なものに会っちゃうのよ」

人の見た夢の話など、どうでも良いものだと思っていた……

「青白く光る巨人ね。
 見た目スライムみたいに透けてるんだけど……
 暴れまわって校舎を壊し続けるんだから堪らないわ」

前言撤回。
コイツの場合、どうでも良くないみたいだ。

331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 21:44:34.64 ID:vUVHRdGK0

「その巨人が、校舎を次々壊していって、最終的に私が死ぬ。
 崩れた建物の瓦礫で閉じ込められたり、ソイツに潰されたり」
「毎晩か?」
「毎晩よ。
 どれだけ逃げても一度も脱出出来たことはないわ。
 本当にあの潰された痛みが辛いの」
「それで、病院に?」
「ええ……でもまともに取り合ってもらえなかったし、貰うのは睡眠薬ばっかりだから。
 寝たくないのにこんなもの渡されてもね……」
「ハルヒ。その悪夢って灰色じゃないか?」
「……よく分かったわね。
 そうなのよ。全部が灰色で。
 私の体とその巨人だけは色付きだけどね」

閉鎖空間だ。
巨人――おそらく神人だろうな――が大暴れするあの灰色の世界。

「どうして知ってるの?」
「偶然はあるものだな。俺も全く同じ夢を見たことがあるんでな」
「本当?」
「あぁ」

335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 21:57:59.13 ID:vUVHRdGK0

自分の知っている閉鎖空間について挙げていった。
ハルヒの見た夢との一致が多過ぎる。

「面白い偶然もあるものよね…」
「確かにな」

昔から疑問に思っていた事があった。
古泉達には聞かなかったために確証が得られなかった、あの夜の事。


「ハルヒ、以前ポニーテールで登校したことがあったよな?
 あの時の『悪夢を見た』っていうのはそれの事か?」
「同じような感じね。
 あれからずっと見ることは無かったんだけど……
 でもあの時はちょっと楽しかったわね」
「潰されるのにか?」
「違うわよ。その時は死ぬ前に目が覚めたから。
 それに……人が居たから」

……俺の事か。

342 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:05:23.29 ID:vUVHRdGK0

「で、その世界に巻き込まれた可哀想なヤツは誰だったんだ?」
「教えない」

んべっ、っと舌を出すハルヒ。
中々茶目っ気があるじゃないか。

「その人はそんな世界でも落ち着いてて……私の事引っ張っていってくれてた。
 私なんて何回経験しても駄目なのにね。
 起きてるときは何時も覚えてるのに、夢の中に入るとまるで初めての体験みたいになるのよ。
 だから今夢を見ると、ついその人に頼る為に探してしまうの」

それでも見つからず、苦しんでいる訳か。
圧死なんて、俺はゴメンだな。
溺死、焼死並に辛そうだ。

346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:14:36.19 ID:vUVHRdGK0

妙な提案をしてしまったものだ。
後悔しているさ。

「寝る前に『何か楽しい夢を』と願ってみたらどうだ?
 意気込みというかな……そういうものは狙った夢を見る為に多少なりと効果がある。
 後は夢の中で起こったことは現実でメモをしておくと良い。
 夢と自覚できて、行動範囲を拡げる事が出来るはずだ」
「そういうものかしら?」
「どうせ毎回そのトンデモ空間に飛ばされるんだろ?
 なら一回ぐらい試してみてもバチは当たらないさ」
「やってみるけど……何もなかったら明日怒るわよ」
「お断りだ。どうせ思うか思わないか、それだけの事なんだから」

理不尽。これがハルヒだな。
まだレベルの低い攻撃だが。

完全下校のチャイムが鳴った。

「もうこんな時間か……じゃあキョン、戸締りしときなさいよ」
「ああ、また明日な」

こういう時は一緒に帰ろうとか言ってくれた方が雰囲気が出るだろうに。

348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:26:38.78 ID:vUVHRdGK0

そうだ、古泉に連絡をしておかないとな。

「古泉。閉鎖空間に関しては全く察知出来ていないのか?」
「今の所全く。何にあったのですか?」
「ハルヒ本人から聞いた。
 どうも毎晩閉鎖空間の夢を見るらしい」
「興味深いお話ですね。詳しいお話を」

古泉達が部室を出た後のことを話す。

「――という訳だ」
「涼宮さんに能力を使わせるおつもりですか…」
「アイツは毎晩苦しんでるんだ。少しくらい助け舟を出してやっても良いじゃないか」
「現実世界での影響はお考えですか?」
「どういう事だ?」

いいですか、と古泉は説明を始めた。

349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:35:41.83 ID:vUVHRdGK0

「仮に楽しい夢が見られたとしましょう。
 現実世界でも何か願えば叶うのではないか?と涼宮さんが思ってしまわれませんか?
 何か一つでも願いが叶ってしまえば、もう取り返しがつきません」
「明晰夢に関してはちゃんとした方法が立案されているさ。
 今度ハルヒにそれを『夢に対して通用する方法』として紹介しておけば大丈夫だろう」
「そうですね……もう涼宮さんに伝わってしまっている以上、手遅れですし……」

ちょっと棘がある言い方だな。
確かに軽はずみな行動だったのかもしれない。
反省はしているさ。

「いえ……もしかしたら涼宮さんの夢に招待されることで、
 閉鎖空間に関して何か分かる事があるかもしれません」
「長門にも説明しておいてくれないか?
 お前の方が的確そうだ」
「えぇ、分かりました。
 あとは何か伝え忘れていることはありませんか?」
「いや、特にないな」
「それでは、失礼します」

352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:47:52.09 ID:vUVHRdGK0

帰宅し、なんとか制服を脱ぎ、ふらふらとベッドに倒れこむ。
最早一種の日課になりつつある一連の行動である。

「キョンくんごはんはー?」
「後で良い……」
「またハルにゃん?」
「違うさ……
 その一連の流れが終了したんだ。
 だからこの身体に労いをな……?」
「よくわかんないけど、ごはんいらないの?」
「後で……」
「はーい」

やれやれだ。
とりあえず……一旦寝るか。

俺は眠りに落ちる瞬間、地面に叩きつけられるのを感じた。
やっぱりこうなった。
言わなきゃよかった。

355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 23:00:31.34 ID:vUVHRdGK0

「キョン!キョン!」
「あと五分……」
「そんな場合じゃないでしょ!」

差し込む朝日で目が覚め……なんて事があるはずない。
明るさの欠片も無い、ただ一面灰色。
閉鎖空間に来てしまったか。

「どうなってるのこれ…
 なんで私達こんな所に?」
「分からん……が。
 ここで手を拱いていても仕方ない。動いてみよう。
 何か発見があるかもしれない」
「うん……」

「アンタ……随分平気ね」
「諦めのようなものがあるんでな」

……ふむ、どうやら以前俺がここに来た時とほぼ変わらないようだ。
ハルヒの行動も、恐らくは同じようなものになるだろう。


357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 23:07:24.75 ID:vUVHRdGK0

透明な壁の存在を知って、そして職員室に侵入。
結果は既に分かっているので適当な対応になる。

「部室へ行くか。
 当てもないし、少しでも落ち着ける場所が良いだろう」
「分かった……」

裾を掴む所まで同じ。

部室へ行って、ハルヒが一人で出て……
というのを予想していたのだが……

どうも今回は違うようだな。
部室の明かりが点いていた。

361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 23:15:28.47 ID:vUVHRdGK0

「……誰か居るのね」
「敵という可能性も捨てきれないがな」
「きっと味方よ。行きましょう」

根拠はどこにあるんだ?
ただコイツがこういう以上、大丈夫だろうさ。
初めて能力が有効活用された時かもしれない。

「おや、これはこれは……」
「古泉くん!みくるちゃんに、有希も!」

居てくれたか……一番頼もしい展開になってきている。
と同時にマズイ展開でもあるけどな。
『アイツ等が居ない世界はゴメンだ』という文句が打てないじゃないか。

362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 23:23:25.30 ID:vUVHRdGK0

「僕達も今この世界に来たところです。
 脱出方法を模索していたのですが、どうも上手くいかないようでして。
 それでここで次の手段を考えよう、と」
「良かった……少なくとも、一人で居るよりよっぽど希望があるわ」

「古泉、長門、出る方法は見つからなかったのか?」
「はい。そもそものこの世界の仕組みが全く分かりません」
「……」

同じく、と長門の目は語っていた。
しかし、どうするんだこれ?
やっぱり以前の通り、神人が現れて、俺とハルヒは……?
思い出させるな。長門、俺を消してくれ。

「どうする……?」
「もう一度、周りを探してみよう。
 何があるかを探すんだ……」

窓から一気に青白い光が差し込む。
もう来やがったのか……

365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 23:32:06.99 ID:vUVHRdGK0

「何……あれ……」
「!……逃げるぞ!」

全員が廊下へ飛び出した直後、部室が薙ぎ払われる。
文芸部室は、タダの外に通じる道となってしまった。

「ねえキョン……
 あれ何よ……?アンタなんでそんなに落ち着いてるのよ!?」
「黙って逃げる事だけ考えてろ!
 あんなモノ俺は知らん!」

俺は朝比奈さんの手を引き、とにかく全力で走り続ける。
俺達に向けられた殺意の塊は、俺達の直ぐ後ろを破壊し続けていた。

366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 23:40:01.48 ID:vUVHRdGK0

今回はえらくはしゃいでやがるな。
明らかに狙いは俺達じゃないか。

階段を駆け下りる。
朝比奈さん、躓かないでくださいよ!


「まず外に出ることだけを考えましょう!
 あの怪物には、校舎など障害物ですらない。
 校舎を破壊され続けては、攻撃だけでなく、飛んでくる残骸まで回避しなくてはなりませんから」

相変わらず冷静だなコイツは。
妥当な判断してやがる。
もちろん外に出た所で勝算など無いだろうが。


371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 23:47:59.18 ID:vUVHRdGK0

多少は距離を開けることは出来たか…
神人はまだ校舎を破壊している。
動きが止まったかと思うと、首がぐりんっとこちらを向き……
そして、一気に走り出した。
ちくしょうホラーゲームみたいじゃないか!

「仕方ありません。応戦しましょう。
 長門さん、彼らのサポートをお願いします」
「任せて」
「おい、大丈夫なのか?」
「この非現実を見せる方法なら涼宮さんが夢と思い込む確立を高めますよ。おそらく…ね。
 互いに最善を尽くしましょう。
 僕と長門さんでやれることはやります。
 あなたは涼宮さんと朝比奈さんを連れて出来るだけ遠くへ」


では行きましょうか、と呟く。
光球を神人の腕目掛けて発射、と続けて自らを光球とし、古泉は神人へ向かっていった。

373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 23:57:21.49 ID:vUVHRdGK0

「古泉くん……」
「あれは古泉一樹に任せて、
 私達は逃げるべき」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫」

今回の神人は様子がおかしいぞ。
古泉は一人で無事に生還できるのか?

「いやっ……!」

朝比奈さんが頭を押さえ、座り込む。
どうしたんですか?聞くまでもない。

神人の拳が飛んできた。
速い。

378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:05:34.65 ID:pTt3q2iP0

「―――――」

長門、頼む!
長門は俺達の前に立ち、あのバリアーを展開……しなかった。
自らの腕を用い、受け止めたのである。

「動かないで」

何故力を使わなかったんだ?
いや、以前のように使えなかった?
そうしている内に神人の腕を押さえ込む長門の手は爛れ、指が落ち、限界であることを告げた。
古泉は何をやってるんだ!

383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:13:55.05 ID:pTt3q2iP0

長門の額に汗が浮かび、表情が苦痛に歪む。
あの長門だぞ。
朝倉に体中串刺しにされても平気な顔をしていたアイツが。

「離れて。危険」
「有希!」
「ハルヒ、離れろ!」

ハルヒと朝比奈さんの腕を掴み、俺は一気に下がった。

「……あなた達は逃げて。」

奴の腕と長門に集中していて気付かなかったのか。
真横からの神人の足が長門の身体を容赦なく運ぶ。
俺達は掠っただけで済んだのだが、長門は直撃。
まるで人形が転がるように、長門は四肢をだらん、としたまま地面を跳ねさせられた。

385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:19:19.05 ID:pTt3q2iP0

「有希ぃぃぃっ!」
「ハルヒ!逃げるぞ!」
「ふざけないで!有希を助けないと!」
「もう、無理だ!
 朝比奈さんも!早く!」

神人の顔が歪み口が裂け、吐き気を催すような顔でにたぁ、と笑う。
振り上げられる拳が……

「やめろ……!
 長門!」

倒れたまま動かない長門へ向けて、一直線に振り下ろされた。


392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:26:22.40 ID:pTt3q2iP0

嘘だろ……
長門がこうもあっさりと?
古泉もいつの間にか居なくなっている。
ハルヒも朝比奈さんも、完全にその場にへたり込んでしまっていた。
最早、抵抗の術は無い。

「……もう、無理だろ……」

以前、ハルヒと二人で閉鎖空間に居た時の神人とは別物だ。
その腕を振るい、暴力の限りを尽くすだけではない。
俺達だけを追いかけたり、抵抗出来ない長門を甚振る。
明確な意思があるように思えた。

……死の瞬間ってスローモーションになるらしいな。本当だった。
目の前にヤツの怪腕が迫ってきてるというのに、こんなこと考えてる余裕があるなんてな。

480 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 20:19:56.78 ID:pTt3q2iP0

目が開かれる。
見慣れた天井。間違いなく、俺の部屋。
……最悪の気分だ。
夢だったのか?あるいは、閉鎖空間という現実?

「キョンくーん!
 あ、起きてるー!」
「あぁ、おはよう……」

ボディプレスをかけてくれる妹が居る。
それだけで安心できたさ。あの空間からとりあえず出られたんだ。
感謝する。

「なにが?」
「悪夢を見てしまってな。お前が居てくれて安心したよ」

おい、何一気に顔を赤くさせているんだ。

「ゆ……夢で良かったね!」

部屋から飛び出していった。
何だ、一丁前に照れているのか?

481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 20:27:23.19 ID:pTt3q2iP0

昨日のことを確認してみる必要がある。
俺はいつもより30分も早く自宅を出発した。

玄関の扉を開けたその先には…

「お早うございます。」
「……ちょうどこっちから話がしたかった所だ。」

古泉が居た。

「昨夜の涼宮さんの様子はどうだったと思いますか?」
「聞く必要があるとは思えないな。
 お前も呼ばれたのか。」
「となると、あれは夢では無かったのですね。」

本当に願ったのだろうか。
どこが楽しい夢だ。
結果的に、俺達もハルヒもロクな目に遭ってないじゃないか。

483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 20:40:40.98 ID:pTt3q2iP0

「お前はあの後どうなったんだ?」
「情けない話ですが、歯が立ちませんでした」
「以前は閉鎖空間に入ることすら、まともに出来なかったんだろう。
 よくやったさ」
「お心遣い、感謝します。
 あなた達は、どうなったのですか?」
「お前と同じさ。
 俺達はそもそも何も出来ないし、長門も駄目だった」

昨日の光景は脳裏に焼き付けられてしまっている。
忘れたくても忘れられないだろう。
長門は俺達を逃がそうと、神人に立ち向かってくれた。
それを嘲笑するかのように、蹂躙の限りを尽くしたアイツのことは。

「長門さんですら……神人を止める術は、もう無いと言っていいでしょうね」

どうやらそうみたいだな。
自然に納まるのを待つしかないってのか。

486 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 20:55:45.39 ID:pTt3q2iP0

「……神人は涼宮さんを攻撃したのですか?」
「長門の次は俺だった。
 そこで目が覚めたから、分からないんだ」

さすがにハルヒに夢の内容を細かく聞くことは出来ないだろう。
下手に口を滑らせてもマズイ。

「なぁ古泉……神人は意思を持っているのか?」
「破壊行動を尽くすのみの存在……今までそのようなことは無かったはずです」
「神人が、確かに笑った。
 あれほど不快な顔を見たのは初めてだ」

一体どうなっている……
出鱈目過ぎるんじゃないのか?
どうするんだ古泉。今頃お前らの組織は大恐慌状態だろう。


488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 21:04:02.50 ID:pTt3q2iP0

「それが、相変わらず閉鎖空間の気配は感じ取れませんでした。
 今日は朝比奈さんと長門さんとで情報の交換を行って、機関に報告するつもりです」

これは珍しいな。
三勢力の協力か。

「朝比奈さんと長門さんにもお話を伺う必要がありますね。
 僕達が共に呼ばれたということは、恐らく彼女達も同じ体験をしたはず」

朝比奈さんには、俺の意識が途絶えた後のことを話して頂こう。
繊細な朝比奈さんだ。
あの極限状況の中に居てはそう覚えていたい事ではないだろうし、気が引ける。

「朝比奈さんも任務を背負っている人間です。
 お気持ちは分かりますが、向こうもそうは言ってられない状況なのかもしれません……」

489 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 21:10:35.69 ID:pTt3q2iP0

「部室に行きましょう。
 事前にお二方と打ち合わせています」

古泉に促され、部室へと向かう。
俺が何か力になれることはあるのだろうか?
この類の展開では、俺はいつも置いてけぼりを喰らう。
それは非常にもどかしくあった。
俺だって人間だ。事情をある程度理解しているからこそ、疎外感を大きく感じてしまうものさ。

「失礼します。」
「あ……古泉くん、キョンくんも……」
「おはようございます、朝比奈さん。長門も」

どうやら二人共無事のようだ。
特に長門の身体のことは、心配していたんだが。

491 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 21:20:36.96 ID:pTt3q2iP0

「わざわざありがとうございます。
 昨晩起こった事について、お話がしたかったのですよ」
「キョンくんも昨日……?」
「彼もそのようです。
 我々四人は、全員が涼宮さんの夢に呼び出されたのですね」
「この世界からの消失が確認されている。
 前回と同じ」
「そうですか。
 確認したいのですが、僕達と長門さんがあの世界から居なくなった後、
 涼宮さんとあなたはどうなりましたか?」

朝比奈さんは俯いてしまった。
やっぱり話し辛い内容なんだろうな。

「私も……あの後すぐに、その、踏まれちゃって……
 そこから覚えてないんです……」
「……つまり涼宮さんがどうなったか。
 あの夢の結末は分からないわけですね」
「ご……ごめんなさい……」

493 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 21:27:36.34 ID:pTt3q2iP0

一気に小さくなっていく。
古泉、そんなに朝比奈さんに迫るな。
まるで食べられたりしないか怯える小動物のようじゃないか。

「ハルヒは、毎回自分が死んで終わりを迎える、と言っていたからな。
 俺達の後にハルヒを、という展開が一番確率が高いだろう」
「なるほど。
 しかし一つ疑問が浮かびますね。
 涼宮さんは、何故閉鎖空間の夢を見続けるのでしょうか」

確かに、そうだ。
本人は「悪夢」と言っていた。
だから病院に行った訳だし、俺に事情を話す時の顔も真剣そのものだったんだ。
何故「あんな夢見たくない」と願わないんだ?

「閉鎖空間の発生が涼宮さんの夢の中だけ、というのも気になりますしね。」

497 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 21:39:03.71 ID:pTt3q2iP0

「困りました。もし良ければお二人に諮詢させて頂く所だったのですが……
 話は中々進みそうにありませんね。
 もうすぐ授業が始まります。
 ここまでにしましょう」
「キョンくん……涼宮さんの傍に居てあげてね……」
「はい。分かってますよ」

古泉と朝比奈さんは部室から出て行った。

椅子には長門が座ったままなのだが……
聞いてみるか。


「長門。
 神人に殴られそうになったとき、素手でいこうとしたのは何故だ?」
「あの世界はあらゆる情報が不規則。
 制御がほとんど出来なかった。
 身体能力、その中でも腕の強化が限界」
「つまり、力はほとんど使えないって事か」
「そう」
「長門。」
「なに」
「助けてくれてありがとな。
 そんな状態で、よくあの化け物に立ち向かったよ」
「構わない。それが私の役目。
 あなたと、涼宮ハルヒに手を出させたくなかった」

長門の瞳にほんの少しだけ、意思が見えたような気がした。

500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 21:48:27.37 ID:pTt3q2iP0

「そうだ。もう一つ良いか?
 朝比奈さんがやっている時間移動って、実際に目の前で使われたらどんな風に映るんだ?
 以前朝比奈さんの大人バージョンと話してな。
 身体が透けていると思ったら、いきなり消えてしまったんだよ」
「それは、時空移動ではない。
 正真正銘、朝比奈みくるという存在の消失」

存在の消失?
物騒な話じゃないか。まるで死んだかのような……

「死の概念は分からない。
 二度と会えないという面では似ている」
「会えないって……」
「朝比奈みくるの行為が、この時代に居る朝比奈みくるへ変化を促した。
 その結果、本来あるべき朝比奈みくるの一生涯が書き換わった」

503 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 22:01:52.38 ID:pTt3q2iP0

よく漫画や小説で使われる展開だな。
未来人は過去の世界に対しての干渉を許されない。
過去が変われば未来も変わる。
下手な行為を起こせば、世界が変わってしまうんだ。
そして、それをやってしまったのか?
何故?
というか、朝比奈さん(大)は何かをやらかしてしまったのか?

「……他に聞きたいことはない?
 出来る範囲で答える」

長門の声で意識は現実に戻る。
他は……無いな。うん。

「あぁ、そろそろ俺も教室に行く。
 ハルヒの様子も気になるからな」
「……分かった」

長門の目線がほんの少し下がったように感じた。
なんだ、そんなに質問してほしかったのか?

505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 22:09:15.77 ID:pTt3q2iP0

遅刻寸前だったが、何とか教室に駆け込む。
息も絶え絶えに、自身の席へ。

「よ、ハルヒ。」
「キョン……効果無かったわよ。
 むしろ悪くなったわ。どうしてくれんのよ。
 あんな夢、もう二度と見たくないわよ!」
「そうか……
 安易な発言をして、すまなかった。」

当然だ。
一人ぼっちの世界。
待ち焦がれていた仲間が来て、光明を見出す所だったはず。
それなのに仲間が次々と殺されていく。
最悪な形で裏切られているな。

「今日の団活は?」
「行くわ。
 行かなかったら、みくるちゃんが心配するだろうしね。」

507 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 22:18:10.21 ID:pTt3q2iP0

放課後。
「あ……涼宮さん、こんにちは。」
「みくるちゃん。
 ……お茶、貰っても良いかな?」
「はい!」

嬉しそうな顔だ。
昨日の一件で、一気に絆が深まったんだろう。

「はい、どうぞ」
「うん、ありがとみくるちゃん」

お茶を淹れてくれた朝比奈さんに対して礼を言うハルヒなんて、見た事がなかったからな。

509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 22:27:32.44 ID:pTt3q2iP0

「どうも。
 遅れて申し訳ありません」
「遅いわよ古泉くん。
 副団長と言えど、しっかりしてくれないと」
「以後気を付けるようにしましょう」

閉鎖空間のことは隅に避けておいて、ハルヒの調子は元に戻ってきているようだ。
この喋り方でないと落ち着かないんだよ。

「涼宮さん、何か良い事でも御ありでしたか?」
「皆と一緒に居られて、幸せ者だなって思ったのよ。
 私の我が侭に付いて来てくれてね」
「そのようなことはありません。
 僕達も毎日の大騒ぎは楽しみにしているのです」

ちょっと余計な発言じゃないか古泉。
元気過ぎるようになったらどうするつもりだ。

519 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 23:20:53.44 ID:pTt3q2iP0

「おや、あなたも毎日が楽しかったのではないですか?」
「そうなの……?」

余計な事を。
あぁそうだよ。何だかんだ言って楽しんでたさ。
勿論それによる損害も多少はあったがな。
ただし安いもんさ、とは言えない。あくまで労力と幸せの等価交換の域だ。
だからお前が迷惑掛けただとかそんなこと言う必要はない。

「そうですよ……
 キョンくんが一番、涼宮さんと何かすることを楽しんでいるんですから」

ちょっと朝比奈さんまで!

「ほ……本当に……?
 無茶とかしてるだけじゃないの……?」
「するかよ」

だからそんなのはお前のキャラじゃないだろう。

521 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 23:27:58.31 ID:pTt3q2iP0

「そ……そうね。
 SOS団を設立して良かったわ。
 皆が楽しんでくれてるなら……」

柄にも無く頬を紅潮させるハルヒ。
不覚にもときめいてしまったじゃないか。

「なぁハルヒ。明日は五人で遊びに行かないか?
 ストレス発散にすっきりしに行こう」
「たまには休憩も必要よね……
 じゃあ明日の団活は皆で出かけましょう!」
「私は参加出来ない」

長門……?
長門が断るなんて、これは珍しいな。
そもそも長門に用事なんて……

「残念ね……」
「私の事は気にしないで。
 行ってきても構わない」
「すみませんね長門さん」

523 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 23:39:13.29 ID:pTt3q2iP0

その後は雑談で済んださ。
まさかハルヒの前で、閉鎖空間に関して議論するわけにはいかないだろう。
長門がかたん、と最小限の音で椅子から立ち上がり、退出。
その日の団活はお開きとなった。

「……どこへ行きましょうか?」
「僕は食べに行ってもいいですし、娯楽施設でも構いませんよ」

疑問が一つあった。
長門は、本を読んでいなかった。
いつもと違うと感じたのはそのせいか。

「じゃあ、カラオケ、ボウリング、ゲーセン辺りかしら?
 ある程度時間を潰したらご飯食べに行きましょ」

あいつ、まさか……

「俺も帰る!お疲れさん!」
「あ、ちょっとキョン!?」

本が読めなかったのか?

609 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 20:11:26.38 ID:a9iPRWs50

「長門!」

すぐさま追いつき、長門の腕を掴む。
すると長門はびっくりしたように素早く身を引いた。
普段は何をされても大したリアクションを返さないじゃないか。
となれば、今の反応からして腕に問題があったんだな。

「腕を、見せてくれ」
「……外見から分かる部分の再構成を優先した。
 全体はとても間に合わない」

見た感じは普通だ。
普段生活する分には違和感は持たれないだろう。

だが、隠れている部分。
袖を捲くると爛れた腕が姿を現した。

610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 20:17:26.01 ID:a9iPRWs50

「これは……昨日のものか?」
「そう。
 痛覚が確かにある。
 腕を動かすわけにはいかない。
 それが明日の約束に参加しなかった理由」

何故すぐに治せない?
朝倉との超人バトル、まぁ本人達曰く情報戦らしいのだが、
あの時は自身の身体どころか、教室まで一瞬で修復したじゃないか。

それに痛覚って……どういうことだ?

「それが、エラー。
 上手く言語化は出来ない。
 最も分かり易く伝えるなら、この世界でも力が使えなくなってきている。
 そして、明確な感情の芽生えが起きている」

613 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 20:30:21.42 ID:a9iPRWs50

つまりそれは、お前が普通の人間に近付いているということなのか?

「間違ってはいない。
 情報統合思念体とのコンタクトも安定しない。
 何かが起こっているのは確か。
 原因は不明」

あの長門がだ。
最初の頃はそれはまさに機械的。
しかしてその正体は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。
知り合って直ぐなのに家に呼ばれるとは思わなかったな。
お世辞にも色気があるとは言えない告白を受けてしまった訳だが。
その長門が顕著な感情の芽生え?

「朝比奈みくるへの嫉妬。
 私は一時的とはいえ給仕係。
 その役割に私は遣り甲斐を感じ、従事した。
 あなたからの感謝の言葉を毎日受け取る事が出来、
 そして尽くす事がただ嬉しかった。
 それが今では、私ではなく朝比奈みくるの役目」

嫉妬?遣り甲斐?
長門の口を初めて通る言葉達じゃないか。

615 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 20:43:16.56 ID:a9iPRWs50

「これは子供の我が侭と同義。
 あなたと離れないことで、エラーの増減がさらに活発になる。
 あなたには……嫉妬に塗れる私を見て欲しくない」

随分と嬉しくも寂しいことを言ってくれるな。
つまり、俺が居るとマズイと。そういうことか。
俺だってお前の消滅の可能性を増やすなんて事はしたくないさ。
だが、その為に長門と離れろと?
愚行にもほどがある。

「私は感情的になる事を、押さえなくてはならない」

長門よ。それは違う。
赤ん坊ってのは成長していくものだろう?
……あまり思い出したくはないが、朝倉はよく喋るヤツだったしな。
お得意の情報技が使えなくなるのは少々残念ではある。
俺は長門の協力が無ければ、何度死の淵から転落したか分からん。

しかし、それはそれで良いと思うんだ。
一人間として、お前と対等に付き合っていけるんだからな。
何より嬉しいものさ。
意思を胸に秘めるような、そんな間柄ではないだろう。

616 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 20:52:15.68 ID:a9iPRWs50

「それではあなたを守れない」

俺はそれでも構わない。
第一、そうそう危険な目に遭ってたまるか。
俺はよく喋り、よく笑う長門が見てみたい。

「一時の感情で答えないで欲しい。
 冷静になって」

む、言うようになったな長門。
その表情からは苛つきが感じ取れる。
どうやら感情云々は本当のようだ。

「それではメリットが無い。
 あなたは……間違っている」

遠く離れた部室のドアが開く。
ハルヒか。
タイミングの悪い。

「長門。今日お前の家に行かせてもらっても良いか?」
「認められない。
 余計な干渉は謹んで」

619 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 21:01:24.72 ID:a9iPRWs50

「長門……」
「また、学校で」

階段へ向かって走っていった。
あれも貴重な光景だな。
しかしなんて愚かな事だ。
せっかく芽生えた感情をそのまま無理矢理押さえ込んで、論理的で妥当な道を選ぼうというのかアイツは。
いや、論理的でも妥当でもない気がするな。

「キョン!アンタ何やってんの!?
 用事があるとか言って飛び出しておいて!」

おっと団長様のお呼びか。
長門はあの調子だ。恐らく家に押しかけた所で無視される気もする。
むしろ感情的になっているのはアイツの方に違いない。
明日の帰り、長門の家にでも行ってみるか。
一日辺り時間を置けば、多少は冷静な話が出来るだろう。

625 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 21:14:26.85 ID:a9iPRWs50

「キョンくんお帰りー!」
「あぁ、ただいま」

帰ってくるなり妹が抱きついてきた。
ええい暑い。離れなさい。
にまにましながら全く離れる気配が無い妹を引き摺りながら自室へと向かう。

「ごはんは?」
「もう出来てるなら行くさ」
「ホント?」
「嘘をつく必要が無いだろ」

キョンくんごはん一緒に食べるってー!、と台所へ向け声を放つ。
何も事情を知らない第三者にはまるで引きこもりのように聞こえるだろうな。

「ふう。ごちそうさま」
「ごちそうさまー!
 ねぇキョンくんテレビ見ようよーテーレービー!」

食事を済ませ部屋に戻ろうとする俺を、妹君が引き止めた。
たまには惰眠を貪るのも良いだろう、と思ったのだが……
「あぁ、分かったよ。」
最近の妹への態度は冷たいものがあったな。
麗しの朝比奈嬢のため、SOS団のため、
事態を等閑視する訳にはいかなかったんだよ。
「へぇー、そうなんだー」
聞く気はないな。こいつめ。

626 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 21:19:34.69 ID:a9iPRWs50


洋画もついにクライマックス。
適当に妹に付き合ってやるだけのつもりだったのだが、中々馬鹿には出来ない。

ぶぅぅぅん

ふと、手元の携帯が着信を知らせる。
誰だこの野郎、ここからが良い所なんだぞ

朝比奈みくる

……失礼なことを言ってすみませんでした。

「悪いな、電話が掛かってきた」
「あ、キョンくん!」

627 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 21:27:06.33 ID:a9iPRWs50

「もしもし?」
『朝比奈みくるです。キョンくん?』

電話越しでも変わらないその御声。
わざわざ名乗る所が朝比奈さんらしい。

「どうかされましたか?」
『いえ……こんな時に何ですけど、お礼を言っておきたくて』
「お礼、ですか。そんな、お気になさらなくてもいいんですよ」
『いいえ、私が気にしますから……
 本当にありがとう、キョンくん』
「俺は何もしていないです。
 実際に行動を起こしたのはハルヒと鶴屋さんですよ」
『そんなことない。
 それに、一人で居た私の事を気に掛けてくれたのはキョンくんだから』

きっと今の俺の顔は、素晴らしいほど赤面しているだろう。
このように感謝されることには全く慣れていない。
しかもお相手が朝比奈さんだ。
古泉の仮面を貼り付けたお礼ならいくらでも聞いているのだが。

629 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 21:36:12.28 ID:a9iPRWs50

「ただ、SOS団全員が元通りになれることを望んだだけですよ」
『あの、キョンくん!』
「は、はい?」
『あ……えっと、その……』

言葉を淀ませる朝比奈さん。
何か言いづらいことでもあるのだろうか。
一言一句聞き漏らすまいと、音量を上げて耳を近づけていると……

「キョンくん!
 もう映画終わっちゃったよ!」

妹よ。やはりまだまだ子供だな。
もっと空気を読んでくれ。
手で、悪かった、と合図する俺に対し妹は、
「このアホンダラゲ!」
と来たもんだ。
ハルヒのマネをするのはやめなさい。ハルヒみたいにだけはなるなよ。

632 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 21:45:17.87 ID:a9iPRWs50

『あの、キョンくん……』
「はい。」
『やっぱり、何でもないです……
 電話掛けちゃってごめんなさい……』

うわぁ一気に声が聞こえなくなった。
何とか朝比奈さんに事情を話し、気にすることはありません、と伝えたおかげで、
ボリュームは元通り。結局何を言おうとしたんだろうな。

『それじゃあ……また明日』
「はい。失礼します」

……あぁ、何か大事なイベントを回収し損ねた気がするぜ。

思えば随分妹と洋画鑑賞に時間を使っていたな。
明日のこともある。
そろそろ寝るとしよう。

634 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 21:54:42.43 ID:a9iPRWs50

「一番来るのが遅かった者は罰金!」

毎度毎度俺の財布に氷河期を齎す、この核条例。
財布の中身を思い出しつつ、全力で自転車を走らせる。
……寝坊してしまった。
時間にはギリギリ間に合いそうだが、奢りは間違いないだろう。
原因は、そうだな。
朝比奈ボイスのあまりの心地良さにを思い出していて、という事にしてくれ。
あの声なら、普通に喋るだけでも子守唄になるんでな。

「ギリギリセーフね。
 キョンも来たことだし、行きましょうか!」
「おや、罰金は無いのですか?」

余計な事を言うな。
無いに越したことはないんだ。
そしてやっぱりハルヒの様子はおかしかったさ。

「別に無しでいいわ。
 そんなに何度も払わせるわけには行かないでしょ?」

635 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 22:00:55.27 ID:a9iPRWs50

ボウリング、カラオケと行き、今俺達はゲームセンターに居る。

「あれ、ちょっとやっても良い?」

お馴染みのパンチングマシーンか。
誰もプレイしないせいで、ハイスコアが100キロ、次点90キロ……

「さーって、私の力を見せてやるわよ……?」
「涼宮さん頑張ってくださいっ」

「遊んでストレス発散ですか。
 非常に分かり易い。名案ですね」
「正直に『単純』と言えばいいだろう」

「せいっ!」
3ケタ。記録更新か。

「お世辞などではありませんよ。
 あらゆる手段を試してみるのは良い事です」

実際に効果があったかは分からないさ。
しかし今日のハルヒの笑顔は、きっと本物だったろう。
神だの閉鎖空間だのを抜きにしても良い。
ハルヒが楽しんでいる、欲しいのはその結果だけだった。

639 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 22:07:41.33 ID:a9iPRWs50

帰路。
「では僕達はこちらですので」
「それじゃ、また学校でね」
「明日の不思議探索はしないのか?」
「ちょっと用事があるのよ。
 団長不在で、明日は休み。
 古泉くん、しっかりみくるちゃんを送ってあげなさいよ」
「お任せください」

「何だか一日があっという間だったわね……
 キョン、本当に楽しかったわ。ありがとう」
「いつものハルヒらしく、『雑用係にしては楽しませてくれた』とかはないのか?」
「そう、言って欲しいの……?」
「言って欲しい訳じゃないさ。さっきのようなお礼も良い。」

今更だが、相当恥ずかしい事を口にすることになるな。
聞いてるヤツ。もし居たら耳を塞いでてくれ。

641 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 22:20:30.89 ID:a9iPRWs50

「しかしだな、お前のキャラじゃない。
 いつもみたいな傍若無人っぷりはどうしたんだ?」
「……キョンには、迷惑掛けたから、」
「遠慮してるのか?」
「……悪い……?」

やれやれだ。遠慮の必要がどこにある。
朝比奈さんへの罵倒も確かにあった。
それでもあの人は憤りを覚えてなんていない。
お前がその調子じゃ、元の関係に戻ることが出来ないじゃないか。
いいか、俺はお前に元に戻って欲しいんだよ。

「……私なりに考えてたのよ。
 今まで好き勝手して、皆は嫌な思いしてたでしょうね。
 償いとか、そんなことを言うつもりはないわ。
 ただ、少しずつ私を変えていきたかったの」

意思は、固そうだな。
本人が拒絶するものを、無理に強要する必要は無いだろう。

「たまには、思いっきり我が侭を言えばいいさ」

644 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 22:28:44.21 ID:a9iPRWs50

「ありがとう。
 でもそんな風に私を気遣うキョンだって、キャラが違うわよ」
「言ってろ」
「それじゃあね、キョン」
「何かあったら、遠慮なく言ってくれ。
 まだ悪夢は続いてるんだろ?
 夢の中で、『SOS団集合!』とでも叫べばいい。
 団長の為だ、困ってるなら命令してくれ」
「……そう。またね」

「呼べ」と言った。
神人には、長門も専門家の古泉でさえも勝てない。

それから数日間、閉鎖空間に呼ばれることは無かった。
ハルヒの悪夢は相変わらずのようである。
俺だって助けてやりたかったさ。
しかし俺に何が出来る?

646 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 22:34:41.89 ID:a9iPRWs50

異変は起こった。
部室にて古泉とオセロを興じていた時だった。

「……少々失礼します」

古泉の携帯が着信を告げ、慌しく退室していった。
まさか……閉鎖空間か?
ここ最近音沙汰が無かったのに。

「バイトで何かあったのかしら?」
「だろうな」

「申し訳ありません。
 急用が入りましたので、今日は失礼します」
「いいのよ。
 古泉くん、無茶はしないでね」
「ありがとうございます。それでは」

古泉のあんな顔は初めて見た。

651 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 22:40:06.74 ID:a9iPRWs50

パタン
長門が本を閉じる。
一応腕は機能するようになったみたいだ。

「今日はもう終わりにしましょうか」
「あぁ」

よほどのことがあったんだろう。
朝比奈さんも長門も、何かを感じているのだろうか。

部室を出ると同時に、携帯が振動した。

「お話があります。
 お迎えにあがりますので、校門までご足労願います」

古泉からだった。

652 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 22:45:56.93 ID:a9iPRWs50

「まず最初に報告しておきましょう。
 今夜、閉鎖空間が発生します」
「今じゃなくてか?」
「はい。
 こればかりは、分かってしまうとしか言いようがありません。
 今回は少々事情が異なるようですしね。
 もう一度あの世界に呼び出されることを、覚悟してください」
「……分かった。
 何か策は用意出来るのか?」

事前に分かっているんだ。
前回の件で、ある程度の準備は出来ているか?

「実を言うと、何も出来ないのですよ。
 涼宮さんの夢の中で準備万端にして待ち構えるなど、不可能ですしね」

……なんだそりゃ。

654 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 22:53:48.55 ID:a9iPRWs50

「とりあえず勝てないという事が分かりましたので、今回は全力で逃げることに徹しましょう」

逃げることすら出来そうにないが。

「それともう一つ。仮説を立てました。
 涼宮さんはとにかく誰にも迷惑を掛けないように、
 一切の干渉を許さない閉鎖空間という場を作り出しています。
 まぁ僕達のような例外は居るのですが。
 しかし閉鎖空間は現実世界と隣り合わせです。
 その点を危惧し、本来の閉鎖空間の目的をさらに一段階上げるために選んだ場所が、夢の中だと」

「当然ながら、夢の中では何をしても構いませんからね。
 朝比奈さんのお茶に関して一件ありました。
 あの時も閉鎖空間が発生していたと思われます」
「しかし、何故最終的にハルヒが殺されるんだ?
 ストレス発散とはかけ離れている」

「人間の欲求を満たす方法の一つに、『攻撃』というものがあるのはご存知ですね?
 所謂八つ当たりです。
 誰にも迷惑を掛けない、且つ身近にある『モノ』と言えば、自分なのですよ」

655 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 23:01:16.09 ID:a9iPRWs50

「それは、仮説か?」
「はい」
「やめろ、ただひたすらに不愉快だ」

そうですか、と肩を竦める。

「主な話はその二つです。
 あとこちらはあまり関係ありませんが……
 長門さんと朝比奈さんの様子がおかしいとは感じませんか?」

朝比奈さんはともかく、長門は……

「あぁもちろんこれは僕が個人的に感じただけなので、お気になさらないでください。
 それでは、用事はこれだけです。
 今晩、お気をつけて。」

間髪入れずにかけられた言葉。
俺は何も答えなかった。

658 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 23:08:25.63 ID:a9iPRWs50

自室。
目の前には馴れ親しんだベッド。
入るのは、躊躇われるな。
古泉の言っていたことが本当なら、ベッドに入って意識を手放した瞬間にハルヒに叩き起こされることになるのだから。
睡眠を取らないでいるか?
不可能だろうな。

ベッドに入り、目を閉じる。



さて、ここは……旧校舎か。
傍らにハルヒは居ない。
世界を構築する色から見て、神人が大暴れしているところ。
それに古泉達の姿は見えない。まさか来たのは俺だけか。

……また、アイツが殺される。
ハルヒを探すんだ。

659 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 23:09:52.18 ID:a9iPRWs50

自室。
目の前には馴れ親しんだベッド。
入るのは、躊躇われるな。
古泉の言っていたことが本当なら、ベッドに入って意識を手放した瞬間にハルヒに叩き起こされることになるのだから。
睡眠を取らないでいるか?
不可能だろうな。

ベッドに入り、目を閉じる。



さて、ここは……旧校舎か。
傍らにハルヒは居ない。
世界を構築する色から見て、神人が大暴れしているところ。
それに古泉達の姿は見えない。まさか来たのは俺だけか。

……また、アイツが殺される。
ハルヒを探すんだ。

661 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 23:17:40.13 ID:a9iPRWs50

過去一回キリの経験だけが武器。
神人はハルヒを追いかける。
当然神人の拳はハルヒに向けられているはずだ。

校舎はもう半分が倒壊している。
あそこに行ったら本当に、壊れちまうんじゃないか……そう思ったが、な。

どうせ夢だ。
潰されても構わない!

俺は、全速力で走り出した。

『その巨人が、校舎を次々壊していって、最終的に私が死ぬ。
 崩れた建物の瓦礫で閉じ込められたり、ソイツに潰されたり』

閉じ込められるって事は隠れている場合もあるってことか。
骨が折れそうだ。

一体どれほどの時が経っただろうか。
探せるところは全て探し尽くした。
こうしている間にも、神人は校舎を破壊し続け、どんどん足場は小さくなっていく。

こちらを認知したかどうかは定かではないが、神人の腕がすぐ目の前に振り下ろされ、校舎の外へ投げ出された。
まだ一階だったのでマシな方だ。
上の階であったら、助かってはいない。

軋む体に鞭を打ち、何とか立ち上がる。そして直ぐに走り出す。
校舎内に居る可能性は捨てた方がいいな。

663 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 23:25:29.50 ID:a9iPRWs50

……校庭の入り口。
そこに蹲っていた。

「ハルヒ……」
「……キョン……?
 ……また呼んじゃったんだ、私」
「ハルヒ、逃げるぞ。
 どこか怪我したのか?」
「ねぇ、キョン……
 私は置いて、キョンだけが逃げて。」
「……何を?」
「またキョンが殺されちゃう。
 私が死んだら、目が覚めるんだから。
 だから……」
「何言ってるんだ!早く立て!」
「もう、こんなの……」
「ハルヒ!」

時間切れ。
神人は既にこちらへ向かって走り出していた。

665 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 23:32:25.88 ID:a9iPRWs50

「くそっ!」

ハルヒの腕を引くが、あんな状態の人間を引っ張って逃げられるはずがない。
神人が俺達の前に立ちはだかるまで、そう時間は掛からなかった。

「何でアンタ、そんなに頑張るのよ……
 もう、無駄でしょ……?
 仕方ないのよ……あいつに勝てないのは当然だから……」
「……ふざけんなよ馬鹿野郎!」

こんなことに時間を使ってる暇はなかったんだけどな。

「あっさり諦めるな。
 何仕方ないなんて言って、受け止めてるだけなんだ。
 こんな世界は嫌だ、って抗え!」
「みくるちゃんも、有希も、古泉くんも……
 皆死んじゃった。
 私のせいで……」
「つまらん事を言うのはやめろ」
「私は、ここで殺されて、皆に償うの」
「……馬鹿野郎……」

光の腕が、目の前に。

668 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 23:42:49.01 ID:a9iPRWs50

「くっ……!」

弾き飛ばされた衝撃で、背中を打ち付けた。

「キョン……しっかりして……!
 何で……こうなるの……?」

しかし大方の事情は読めた。
ハルヒは、こうやって苦しむ事を当然だと思っている。
SOS団の皆に行った事に対する、償いなんだ。
親しい人間から殺されて、そして最後にハルヒまで。
醜悪なやり方だな。まさに下衆と言っても良い。
ハルヒは一度俺達を呼び出し、親しい仲間達が目の前で殺された。
その光景を見たくないが為に一人で夢を彷徨い続けた。

「もう、許して……早く醒めてよ……!」

つまり、分からせる必要があるんだな。
俺達が……まぁ色々あったが、何だかんだ言って楽しかったってことを。

「……なぁハルヒ……
 そういや、来週フットサルの大会があるらしいぞ。
 参加してみるか……?」
「……え?」

672 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 23:51:18.26 ID:a9iPRWs50

「というか……俺は参加したいね……
 また、鶴屋さんや谷口達や妹も呼んで……あれ、フットサルは何人競技だった?」
「キョン……アンタどうしちゃったのよ……?」

ごもっとも。
目の前に死が迫ってきているこの状況で、誰がこんなことを言うのだろうか。
居たとしたらそいつは生死というものを超越した、悟りを開いた仙人並の胆力の持ち主か、あるいは頭がどうかしている奴だ。
もちろん俺は違う。
何度も言おう。俺はどこにでも居る普通の男子高校生である。
そして頭も至って普通だ。

「折角朝比奈さんとも仲直り出来たんだ。
 また、何かSOS団で活動しよう」
「……でも、私は」
「遠慮が要るかよ。何度も言わせるな。
 SOS団の活動がどれだけ楽しかったことか」

あぁそうさ。
散々滅茶苦茶してくれているお前だが、おかげで俺の高校生活は随分色濃くなってくれた。
これがさらに続くとなれば、一生の内9割方の思い出がこの時代に詰め込まれることになるだろうな。

「ハルヒ。明日からフットサルの練習をしよう。
 ただし、朝比奈さんへの千本ノックは無しで頼む」
「……キョン……」

おっと、すまなかったな。
わざわざ待っててくれてありがとうよ。

死が振り下ろされた。
刹那、閉鎖空間の急速な収縮も感じたさ。

673 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/05(金) 23:59:25.23 ID:a9iPRWs50

次の日の団活のことだ。

「皆、ちょっと提案があるのよ」

ハルヒはホワイトボードにチラシを貼り付ける。
来週のフットサル大会についてだ。

「来週、フットサルの大会があるのよ。
 それで、皆さえ良かったら……その……参加してみない?」

よく言った。
疑問符を外せていないのは減点対象、80点辺り。

「了解。任せろ」
「SOS団の名は、フットサル界にも轟く事となるでしょう。
 微力ながら、協力させて頂きます」
「あ……あの、私、後ろ側の方なら何とか……」
「……分かった」

675 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:03:55.68 ID:c75BSNhI0

おい、呆けるな。
自分から提案しておいてそれはないだろう。

「い……良いの?」
「勿論です」
「さぁ団長様。まずは練習場所からだろう。
 サッカー部に交渉に行くぞ」

おっと朝比奈さん、勿論以前のような事にはなりません。
俺が守りますので。

「ねぇキョン」
「何だ?言っとくが朝比奈さんを交渉に使うなよ」
「……ありがと」

俺は感謝されることなんて、何もしてないさ。
お前の夢の中にもう一度潜ることがあれば、そのお礼に素直に答えてやるとしよう。

679 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:08:29.94 ID:c75BSNhI0

「お疲れ様でした。
 何せ中の様子が分からないものでね。
 心配で堪りませんでした」
「そうか」
「まぁ、もう少し様子を見る必要はありそうですね。
 何にせよ、感謝します」

コイツのお礼を聞いても、やはり体温の上昇は無し、と。
当然だ、俺にそっちの気はない。




680 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:10:01.66 ID:c75BSNhI0

「よう、腕はすっかり元通りだな」
「修復が可能になった。
 全処理能力を回す必要も無い」
「力が元に戻ったのか?」
「そう」

その後の長門の説明を止める。
正直何を言ってるのか全然分からん。
長門の能力制限は、ハルヒの宇宙人に対する諦めが原因だそうだ。それだけしか読み取れなかった。

つまり古泉の主張と合わせると、「宇宙人なんて居ないのかも」という考えが宇宙人を消し始めた。
元から居た長門は、長門を宇宙人たらしめる万能パワーを失い、普通の人間に戻るという訳だな。


やはり抱きついてくださるのか。嬉しいことこの上ない。

「キョンくん、良かった……」
「自分でもよくやったと思います」
「……力になれなくて、ごめんなさい……」
「いいんですよ。朝比奈さんが気にすることはありません」
「……ありがとう……」

682 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:18:19.34 ID:c75BSNhI0

週末。
フットサル大会に参加した俺達は、以前の野球大会同様にインチキ技を駆使。
一回戦で辞退することとなる。
臨時収入は無かったので、仕方なく割り勘で勘弁していただだいた。
ちなみに無理をしてでも朝比奈さんの分だけ出してあげたかったが、丁重にお断りされてしまったのはまた別の話。

そして明日は不思議探索だ。
探査メンバーのクジ次第で、また何か妙な告白があるかもしれないな。
まぁそれでも良いさ。
非日常にならいくらでも巻き込んでくれて構わない。

今回は罰金有りだろうから、とりあえず財布の中身を補充しておくとしよう―――――

686 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:24:24.52 ID:c75BSNhI0

お話はここまで。
随分と悲惨な有様だったけど、保守してくれてありがとう。

702 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:35:02.92 ID:c75BSNhI0

ホントありがとう
いつの間にか規制が解除されてて初のスレ立てだったんだが、
こんなに楽しい物だったんだな
また何か構成出来たらわざわざ黒歴史を晒そうと思う

このレス自体が新参であることを物語っております

708 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:39:28.38 ID:c75BSNhI0

続いて、蛇足SSを投下していきます。
完全妄想話なので、俺は絶対に気を悪くしないさーという人以外はご退場をお勧めします。


709 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:41:10.75 ID:c75BSNhI0

時は流れ、三月。
朝比奈さんは未来へと帰ることになった。
ハルヒ達への説明は、遠方へ就職、という事だ。

「みくるちゃん……本当にお疲れ様」
「はい……」
「またいつか会える日を心待ちにしていますよ」
「また」
「古泉くん……長門さん……」

涙を一杯に溜めて、朝比奈さんは皆と抱き合う。

「朝比奈さん。
 向こうでも、頑張ってくださいね。
 応援しています」
「キョンくん……」
「何かあったら、いつでも呼んでください。
 SOS団全員で駆けつけますよ」

今思った。
この未来から過去への派遣は、必ずこのような別れがやってくる。
どれだけ辛いことだろう。
そして朝比奈さんの上司は、それを分かっているのか?

714 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:44:09.87 ID:c75BSNhI0

「さぁ、最後にみくるちゃん!何か一言ちょうだい!」
「皆さぁん……本当に、ぐしゅ、ありがとうございましたぁ……
 すごく、楽しかったです……」

思わずこちらまで涙が出てきそうになるじゃないか。
もう、そんなに顔をくしゃくしゃにしないでくださいよ。

「す、涼宮さん……」
「何?」
「最後に、一人ずつで、ぐす、二人っきりで、話がしたいです……」
「えぇ、勿論良いわよ」
「じゃあ、長門さんから……」
「分かった」

二人は退出していった。

「寂しくなるわね……」
「仕方ないんだ。仕事なんだからな」
「最後に一人ずつ、ですか。
 ……せめて涙を零すことが無いようにしないといけませんね。
 笑って送り出さなければ……」

「古泉一樹」
「おや、次は僕ですか
 それでは、行ってきますよ」

715 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:47:08.52 ID:c75BSNhI0

朝比奈さんの事だ。
恐らく時間の歪み云々は関係無しに、ただ友人に挨拶がしたかっただけなんだろうな。
ところで長門、目が赤いのは気のせいか?

「……妙に緊張してきちゃうわね……」
「あまり固くなってると、朝比奈さんが受け入れられなくなるぞ」
「う……分かってるわよ……」

「涼宮さん。お呼びですよ」
「ありがと、古泉くん」

「ふぅ……」
「何の話だったか……なんて聞くのは野暮だな」
「はい、好判断です」

静まり返った部室。
古泉も長門も、何も言葉を発しない。
次は、俺の番だ。
一体何の話があるのか。
永遠にも思える時間が過ぎていった。

716 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:51:36.90 ID:c75BSNhI0

扉が開く。
「ぐすっ……キョン……アンタよ……」
「……あぁ。」
「みくるちゃん……ひぐっ……」

ハルヒだって、人間だ。
そんな当たり前の事を今更再認識した。
はっきり言って、コイツが泣くとは思っていなかったさ。

さて、行くか。

「……キョンくん……」
「お話とは、何ですか?」
「ずっと、お礼が言いたかったの……
 今までずっと、キョンくんは私を助けてくれたから……」
「俺は、当然の事をしたまでですよ」
「お茶が美味しいって、いつも言ってくれた……
 本当に、ありがとう……」

本当の事なんだから仕方ない。
俺の手を自身の両手で包み込み、潤んだ瞳+上目遣いの鬼連携。
理性を抑えるのに苦労する。

「あなたが、好きです……」
「……?」

717 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:56:36.97 ID:c75BSNhI0

待て、何と言った?
とりあえず俺は聴力検査で引っ掛かったことは一度も無い。
突然の発症か何かで無ければ、今朝比奈さんの口から紡がれた言葉は、一般世間で言う所の「愛の告白」というヤツだ。

「これは、私の我が侭です……
 キョンくんがもし受けてくれたとしても、私は元の時代に戻るから……
 それでも、我慢出来なかった……
 私の気持ちを、知っておいて欲しかったんです……」

決して、付き合うことは許されない。
朝比奈さんは任務を放棄してこの世界に残らなくてはならないからだ。
それが出来るか?
朝比奈さんの、向こうでの生活はどうなる?

「朝比奈さん……俺は……」
「いいんです……キョンくんは優しいから。
 ごめんなさい。話はそれだけなの……」

呆けている俺に、「聞いてくれてありがとう、さようなら」と一声だけ掛けて、朝比奈さんは部室に入っていった。

720 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 00:59:37.11 ID:c75BSNhI0

「あ、おかえり。みくるちゃん」
「はい、ありがとうございました。
 もう、時間がありませんから……
 お別れです……」
「それでは、また」
「はい……後片付けを、よろしくお願いしますね……?」
「みくるちゃん……コスチュームはちゃんと残しておくから……いつでも……」

もう、会えなくなってしまうんだな

「皆さん、さようなら……
 ありがとう、キョンくん……」

―――――

ハルヒは目をぐしぐしと擦り、指示を飛ばす。

「皆。片付けるわよ。
 早く片付けなきゃ学校側に目を付けられるわ。
「分かった」

「長門」
「……朝比奈みくるの時空移動を確認した」
「そうか……」
「もう、間に合わない」

何と言えば良かったんだ?
仕方ないだろ、朝比奈さんと俺は、そもそも住む世界が違うんだ……

724 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 01:07:32.63 ID:c75BSNhI0

扉を閉めると、一気に涙が溢れてきた。
キョンくんに迷惑掛けちゃったな……

「皆、ありがとう……」

私は、移動を開始した。


今でも、思ってしまう。
彼に気持ちを伝えなければ、彼を好きにならなければ。
過去の人間に恋をする、それは禁忌。
そして私はそれを犯した。
必要以上に、彼と接し過ぎたんだ。

でも、彼と会えて良かった。
本当に楽しかった毎日。
こちらでの生活をふいにしても、あの人達と過ごせたことを幸せに思う。
これから私は一人。
でも、大丈夫。
目を閉じれば、あなたが居るから。
耳を澄ませば、あなたの声が聞こえるから。

最後の最後まであなたを惑わせた、私の事は忘れて。
涼宮さんとお幸せにね。
あなた達はちょっとヤキモチ妬いてしまうくらい相性が良いから。
きっと相思相愛になれるから、頑張ってね。
さよなら、キョンくん。

726 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 01:13:07.29 ID:c75BSNhI0

それじゃ、投下はここまで。

734 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 01:28:54.44 ID:c75BSNhI0

確か未来人は過去に飛ぶ前に精神操作を行う
だからきっと記憶を掘り起こすことも可能
みくるは禁忌を犯した
それがバレてみくるは二度と過去へ飛べなくなる→朝比奈さん(大)がキョンの前に居ることはおかしい

みくる(大)が「関わるな」と言ったのは、みくる(小)が必要以上にキョンを好きになることを防ぐため
だが、あのタイミングで忠告したことにより、かえってキョンの意思に火が付いた

って感じかな


回収か出来てなかったか。次回の課題として心に留めておきます
伏線の回収がしっかり出来たSSってかっこいいよね

762 名前: ◆jJBMkxyuJI [] 投稿日:2009/06/06(土) 08:41:48.16 ID:c75BSNhI0

>>761
はいな
ありがとう



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