キョン「ホラー映画ならそろそろ誰か脱落するころあいだな」


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1 名前:BATさんとは名乗らない[] 投稿日:2009/05/05(火) 00:33:56.18 ID:GC9l8QouO

S朝倉「どうもこんばんは。システム朝倉、縮めてS朝倉です」

S朝倉「いまから始まるのは前作『キョン「・・・まるでバイオハザードだな』の続編になります」

S朝倉「前作を知っている人は是非読んでやってください。知らない人は………自己判断でね!」

S朝倉「ちなみに前作で好評だったのか酷評だったのかわからないけど、選択肢制度はヤメました」
S朝倉「ではどうぞ!!」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 00:37:39.42 ID:GC9l8QouO

夜、コンビニエンスストア。

古泉「随分と物騒なことをいいますね。そんな展開をあなたはお望みなんですか?」

キョン「・・・んな訳あるか。たんに今の状況がホラー映画みたいだっていいたいだけだ」

古泉「なるほど確かにそうですね。終わりの見えないホラー映画。とくに昨今はパッピーエンドばかりではなく、バッドエンドもしくはトュルーエンドのようなすっきりしない終わりというのも多く存在します」

古泉「さて、ではこのあなたを中心とした物語の終演はいったいどのようなものなのでしょうか?」

キョン「わかったら苦労しねぇよ」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 00:40:53.12 ID:GC9l8QouO

古泉「そうですね。でしたらハッピーエンドにむけてせいぜい苦労することにしましょう。僕としてもこのようなバケモノがうごめく世界等、ごめんですから」

キョン「あぁ、まったくだぜ」

俺と古泉は薄暗いコンビニの店内にいる。
食料がある点では苦労はしないが、このままここで隠れていても世界は元に戻ったりしないので、いつまでものんびりとしてる訳には行かない。

そう、俺とハルヒが再開しない限りこの死のウィルスが蔓延した世界は続いていく。

キョン「・・・ハルヒ、死ぬんじゃないぞ」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 00:43:42.39 ID:GC9l8QouO

この死が隣り合わせに存在する非常識な世界で俺はなんとか命を繋いでいる。森さんや古泉、そして長門のおかげだ。

長門とは今は別行動中だが、あいつなら必ず無事だろう。
しかしこれからどうなるか。

キョン「……まあとりあえず歩きで機関の地方支部とやらに向かうしかないか」

古泉「するしかないでしょうね。乗っていた車はもう使えないですから」

古泉のその言葉で俺は長門と別れた後の事を思い出していた。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 00:46:28.39 ID:GC9l8QouO

前日、夜明け前。走行中車内。

今、走行中のワンボックス車の中には俺と古泉、それに運転手である森さんの三人がいる。

キョン「・・・古泉」

古泉「長門さんなら心配いりません。大丈夫だと言った以上必ず無事でいてくれます」

キョン「当然だ、俺だって長門を信じてる。そうじゃなくてな、今この車は機関の地方支部とかいうところに向かっているんだよな?」

古泉「えぇ、そのとおりです」

キョン「もしかして、ハルヒがそこにいるのか?」

古泉「いいえ、これから向かう場所に涼宮さんはいません。僕たち機関も涼宮さんの現在位置を把握できていないのです」

キョン「そうなのか、くそっ」

窓の外をみると感染者と思わしき俳諧する人達と、既に絶命して倒れている人達の姿が目に映る。
車だって俺達の以外一台も走っちゃいない。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 00:49:58.10 ID:GC9l8QouO

現在、この周囲は長門いわく特異ウィルスとやらが蔓延しているらしい。

らしいと言うよりすでに実感してるので間違いない。感染し発症すると百パーセント死にいたり、空気感染もするという反則的な力を持つ殺人ウィルス。

しかも発症から死ぬまでのでの間はウィルスの脳への影響で、理性を失った化け物になってしまう。

古泉「………ウィルスが蔓延しているこの世界は、何者かが改変した世界であり。世界を元に戻すにはあなたと涼宮さんの中にあるという情報因子を共鳴させなくてはならない」

古泉「そして共鳴させるには生きたままのあなたと涼宮さんが一定以上近づく必要がある」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 00:52:35.35 ID:GC9l8QouO

古泉「つまり、あなたと涼宮さんが再開すれば世界は元に戻る。そういう事でしたよね」

キョン「ああ、長門が言うにはな」

古泉「その改変したなに者かについてはお聞きにならなかったのですか?」

キョン「いや、聞いたんだが。長門にまだ言うべき時ではないと言われてな。教えてもらえなかった」

古泉「言うべき時ではない………ですか……」

森「確かに犯人も気になりますが、今は世界を戻す事に重点をおきましょう」

運転中の森さんが落ち着いた声でそう言う。こんな状況なのに少しも動揺してない。
なるほど夏の孤島でのメイドは仮、こっちの森さんが本来の姿って訳だ。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 00:55:33.02 ID:GC9l8QouO

森「現在、涼宮ハルヒさんの捜索を機関の仲間達が全力で行っています。見つかれば連絡が入るでしょう。ですからあなたはこれから行く機関の支部で身を隠していて下さい。私達が全力で感染者達からお守りします」

キョン「そんな、俺だってハルヒを探すの手伝いますよ!」

森「なりません。あなたの命には世界がかかっています。今のあなたは自分の身を守ることが使命だと理解してください。全てを利用し、時には犠牲にし、あなたは涼宮ハルヒさんとからなず再開してください」

キョン「そ、そんなこといわれても……」

古泉「すでに事態は取り替えしのつかない状況です。あなたと涼宮さんの中にある情報因子で元に戻す、という機会を失ったら世界はこのまま続いていくしかなくなる。そうなれば我々人間に命運はないでしょう」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:00:35.25 ID:GC9l8QouO

古泉「プレッシャーをかけたい訳ではありませんが、それが事実です」

キョン「そうだな……わかった……」

森「……!」

古泉「森さんどうかしましたか?」

森「地面が揺れています。地震です」

キョン「地震?車に乗ってるのによくわかりますね」

森「揺れが長い、しかもこの揺れかたは……」

森「いけない!二人とも何かにつかまって下さい!」

キョン「え」

キキッー

ドンッ

車の急ブレーキのすぐ後、下から突き上げられるような強い衝撃が襲ってきた。

俺達がのっていた走行中の車は宙に浮かび激しく横転。

俺の意識は一度そこで途切れた。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:06:32.88 ID:GC9l8QouO

昼、コンビニエンストトア。

キョン「ん………あ?」

キョン「………ここは」

スッ

古泉「どうも、おはようございます」

キョン「うあっ古泉!?顔が近けぇ!!」

古泉「これはすいませんでした。起きそうな気配だったので覗きこんでいたんです」

キョン「起きがけで脅かすんじゃない。心臓に悪いぜ。しかも、なんでお前、俺の部屋に……」

古泉「説明……したほうがいいですか?」

キョン「いや、思い出した。そうだったな寝ぼけ漫才してる場合じゃなかった。と言っても説明は欲しいな。今どんな状況だ?見た感じここは薄暗いコンビニの中のようだが」

古泉「えぇ、あなたの言う通り、ここはコンビニエンスストアの店内です。大分散らかっているね。状況は……聞かないほうが良いかもしれません。よくありませんから」

キョン「把握しないことには初まらん」



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:08:43.83 ID:GC9l8QouO

古泉「確かに。では手短に説明します。僕らが乗っていた車が走行中に大地震にあい横転。使いものにならなくなった車から這い出し、なんとかこのコンビニの中に、逃げ込んだ」

キョン「……わかりやすい説明ありがとよ。体の節々が痛む理由がわかったぜ」

古泉「森さんは辺りの偵察と物資の確保を行っています。そろそろ戻る頃でしょう」

キョン「よかった森さんも無事なんだな。しかし偵察って大丈夫なのか?ここらにも感染者はうろついてるんだろ?」

古泉「感染者はいますが森さんなら大丈夫でしょう。なにせ車が横転した後、襲いかかる感染者の中あなたをここまで運びこんだのはあの人なんですから」

キョン「そ、そうなのか?」

古泉「凄い人なんですよあの人は、とにかく森さんの心配はいりません。さてとあなたが起きた事ですし……」

キョン「……どうした?キョロキョロして」

古泉「ランチタイムとしましょう」

古泉は近くの棚から適当な物を取ると、いつものスマイルを浮かべた。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:11:39.37 ID:GC9l8QouO

昼過ぎ、コンビニエンスストア。

森「おいしそうですね。私にもなにかいただけますか?」

キョン「あ、森さん!」

俺は弁当を、古泉がパンを食べていると森さんが、帰ってきた。

感染者だらけの外に出ていたというのに随分と涼しげだ。うーむ、古泉の言う通りだな。森さん恐るべし。

古泉「お帰りなさい森さん。少し調べて見たのですが。無人になってからまだ一日しかたってませんので店内の物はまだ食べることが出来そうです。リクエストがあれば持ってきましょうか?」

森「そうですね。いえこんな機会めったにありませんから、後ほど自分で好きな物を選んでみます」

森「今はそれより連絡事項の伝達を行うことにしましょう。二人とも食べながらで結構なので、聞いて下さい」

キョン「わかりました」

古泉「お願いします」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:17:23.97 ID:GC9l8QouO

森「まず周囲の様子ですが、明け方の大地震によって建物が崩れていたり、地面が一部ひび割れ、めくれあがっていたりと悲惨な状況でした」

キョン「そんなに……」

森「それと感染者ですが、かなりの人数が俳諧していました。見つからずに移動するのが困難な数です」

古泉「町中の人間が感染している訳ですから、当然といえば当然ですね」

森「しかしながら、このコンビニは地震対策の取れた作りをしていて倒壊の危険はないですし、シャッターを閉めて静かにしていれば知能の低い感染者達は侵入してこれない」

森「現状私達の身の安全は確保されていると判断します。食料もありますしね。今の事柄に関して何か意見はありますか?」

俺と古泉が首を振ると森さんは話しを続けた。

森「無線機だけでも持って来れないかと考えて、私達が乗っていたの車にもいってきましたが炎上してしまっていて無線機は壊れていました。しかし火じたいはもう消えていたので、車内の使えそうな物は一通り持ってきました。これです」

森さんが、持ってきたというものを並べた。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:19:56.84 ID:GC9l8QouO

キョン「これは……機関ってのは軍事組織なんですか?」

拳銃二丁に(たぶん)手榴弾一個。後よくわからないが警棒のような物が一つ。

古泉「この事態を把握してすぐに手当たりしだい集めたお粗末な武器です。量だけはあったのですが」

森「これ以外は使い物になりませんでした」

キョン「集められるってだけで充分凄いと思うが」

森「古泉あなたはこれを」

古泉「……解りました」

そう言って古泉は森さんから拳銃を一丁受け取った。

キョン「古泉、お前それ使えるのか?」

古泉「一度だけ手ほどきを受けた事がある程度です。扱えるかと聞かれれば、全力で否定しますよ。しかし、あなたに持たせる訳にもいきませんので」

キョン「……確かに遠慮しておきたい」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:24:11.44 ID:GC9l8QouO

森「では後の物は私が所持することにします」

因みに聞いてみたら、手榴弾(たぶん)はマジモンの手榴弾で、警棒はスタンロッドなる物らしかった。

森「それでは次に私達のこれからの行動について、話しあいたいと思います」

物騒な武器をナチュラルに装備した森さんが話しを続ける。

森「先程、この場所の安全性について説明しましたが、いつまでそれを保持出来るか解りません。ですので、当初の予定通りより安全な、機関の支部に向かったほうがいいかと思います」

キョン「といっても外には感染者がうろついているんですよね。どうやって向かうんですか?」

森「車が無くなったいま、徒歩で向かうしかありません。しかし幸な事に支部はもう目と鼻の先です。歩きで30分と言ったところでしょうか」

キョン「うむむ、また微妙な距離ですね」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:27:05.91 ID:GC9l8QouO

古泉「その30分も通常での話です。感染者から隠れ、見つからないようにまわり道をすれば倍以上の時間がかかるでしょう」

古泉「しかしここに留まっていても事態は進展しません。もしかしたら機関に涼宮さんの情報が届いているかもしれない」

キョン「……確かにな」

森「今なにより優先すべきはあなたの身の安全、それと涼宮ハルヒさんとの再開です。危険が付き纏いますが、支部に着くまで我々が全力でお守りします」

キョン「……解りました。歩いて支部に行きましょう。俺の身の安全については、自分自身でも努力しますが、もしもの時はよろしくお願いします」

森「ありがとうございます。お任せ下さい」

キョン「古泉もよろしく頼む」

古泉「えぇ、頼まれましょう」

感染者は夜、睡眠欲にかられ眠りにつく、そんな長門の言葉を思いだした俺の進言によって移動は夜中に行われる事となった。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:31:41.60 ID:GC9l8QouO

夕方、コンビニエンストトア。

カァー、カァー、カァー

キョン「やけにカラスがうるさいですね」

森「そうですね。この異常事態を察しているのか、それともカラスもウィルスに感染しているのかもしれません」

キョン「カラスも……可能性はありますね」

ここには今、俺と森さんしかいない。古泉は奥にある休憩室のソファーで休んでいる。夜中まで交代で仮眠をとる事にしたのだ。

キョン「そういえば森さん、ありがとうございました」

森「なんの事でしょう?」



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:34:11.33 ID:GC9l8QouO

キョン「車が事故にあった後、俺を運んでくれたのが森さんだって古泉から聞いたんです。森さんのおかげで助かりました」

森「なるほど。お礼等いりませんよ。しかし、その様子だと古泉は言っていないようですね」

キョン「なにをです?」

森「私があなたを運んでいる最中、古泉は寄ってきた大勢の感染者の囮になってくれていたのです」

キョン「そうだったんですか?あいつそんな事一言も……」

森「本来わざわざあなたに言うことではありませんから」



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:36:12.32 ID:GC9l8QouO

森「私達は確かにあなたの身を守っていますが、あくまでも打算があるからです。あなたに感謝される資格は我々にありません」

キョン「なに言ってるんですか、そんなの関係ないですよ。俺が危険な時助けてくれた。この一点だけで感謝するには申し分ない理由です。改めて言います。森さんありがとうございました」

森「そうですか………はい、そうですね。難しく考える必要はないのかましれません。では私も改めて」

森「どういたしまして」



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:39:32.10 ID:GC9l8QouO

夜、コンビニエンスストア。

キョン「そういや古泉、森さんに聞いたぜ」

古泉「何をでしょうか?」

キョン「俺がここに運ばれてる最中、囮になってくれたんだってな」

古泉「なるほど。そのことですか」

キョン「ま、礼は言っとくぜ。ありがとな」

古泉「お礼ですか。しかし僕達には僕達の理由があって」

キョン「あぁあぁ、古泉ちょっとまて、森さんにも言ったんだがな。どんな理由があろうと俺が助けられたのは事実だ。感謝の言葉ぐらい受け取ってくれ」

古泉「………ふぅ」

キョン「な、なんだそのため息は」



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:41:53.15 ID:GC9l8QouO

古泉「いえ、僕は難しく考え過ぎていたのかと思いまして」

キョン「なんか森さんも同じこと言ってたな」

古泉「そうなんですか?その後、森さんはなんて?」

キョン「ん、いやなんてことはない、どういたしまして、だってさ」

古泉「どういたしまして、ですか………」

キョン「おい、古泉」

古泉「あぁすいません。何でしょう?」

キョン「何でしょうじゃねぇよ。なに考え込んでるんだ。俺は礼を言っただけなんだ。踏ん反り返るなり、遠慮するなりすればいいんだよ」

古泉「そうですね。ならば、言わせてもらいましょうか」

古泉「友人なんですから当然ですよ」



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:45:13.48 ID:GC9l8QouO

深夜、街中。

真夜中になり俺達は、コンビニエンストトアを出た。
予想通り、外は静まり返っている。

森「確かに昼間と違って感染者の姿がみえませんね」

キョン「長門が言うには感染者は本能に忠実になるそうで、睡眠欲にも忠実なんだそうです」

古泉「倒れている人は先程から何人か見受けられましたね。無惨に食い散らかされていましたが、いったいなんの仕業でしょう」

森「出来るだけ怪しいところには近づかず、音を立てずにいきましょう。急がねばなりませんが、焦ることのないように」

キョン「わかりました」



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:48:27.03 ID:GC9l8QouO

10分程、大通りを道なりに進む。今のところ感染者に出くわさずにこれている。
このまま、回り道をせずに行けそうだ。俺がそんなことを考えていると。

ピタッ
森「……」

先頭を歩く森さんの足がとまった。

キョン「どうかしま、」

古泉「シッ」

キョン「んぐ!?」

古泉に口を押さえられた。
なにしやがる、と文句を言いたいところだが、二人の目線の先にあるものに気付いて、そんな気は失せた。むしろ、黙らせてくれた古泉に感謝だ。

あんなのに気付かれたらシャレにならん。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:50:53.19 ID:GC9l8QouO


グシャ、ギシャ、ズシャ

大通りの向こうでグロテスクな音を立てて餌を啄んでいるのは、黒い影、否、カラスだ。

大通りを分断する程なのだから、かなりの数だ。

外見に特異なところはないが、その大量のカラス達は人間の死骸に群がっている。

無惨に散らかってっいる人間の残骸は一人二人のものではなく数十人単位だ。どういう状況だかわからないが。

もしあんなのに襲われたら感染者より厄介だ。

森「………」
クイッ

キョン「……」
コクッ

森さんの合図で俺達は横道にはいった。



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:54:22.56 ID:GC9l8QouO

古泉「あのカラス達はウィルスに感染していたのでしょうか」

細道を進んでいると古泉がそう呟いた。

キョン「どうだろうな。動物にも感染するもんなのか。たんに腹が減ってたのかもしれないし。けど今まで見て来た散乱してる死体はあいつらの仕業で間違いない」

キョン「しかし、あれはどんな状況だ?なんであんな道端に人が大勢いたんだ」

古泉「確かに。カラスに食べられていたのが、感染者にしろ、死体だったにしろあの場所に固まっていたのは何故でしょうか」

古泉「それにカラスが啄んだだけにしては、死体がバラバラになり過ぎていたように思います」



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 01:58:02.87 ID:GC9l8QouO

森「どちらにしても危険は避けるべきです。大通りから逸れますが、この先の住宅街を抜けて行きましょう」

キョン「どれぐらい遠回りになるんですかこっちの道」

森「距離事態に対して差はありません。どちらかと言えば近いぐらいです、ただ」

キョン「ただ?」

古泉「見通しのいい大通りと違い、周囲の警戒が困難なのですね」

森「そうです。しかし大通りぞいにそって行けないとなると、私はこの先の住宅街を抜けるしか道巡を知りません。勿論、方向から予想することもできますが」

キョン「道に迷ったらもともこもないですね」

森「はい」

古泉「では行きましょう。それしかないのですから」

キョン「あぁ」



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 02:00:15.24 ID:GC9l8QouO

深夜、高級住宅街。

住宅街といえど深夜となると平常でも静まり返っているものだ。

しかし、地震の影響で崩れている家やらがあるため嫌に不気味に感じる。
廃墟ってのはこんな雰囲気なんだろう。

キョン「………」

古泉「………」

森「………」

無言で住宅街をひたすら歩く。倒れている人間はことごとく啄まれていた。ハイエナみたいなカラスどもの仕業だろう。

移動速度は確実に落ちている。角を曲がるときにも注意を怠れない。

しかし今はとにかく進むしかないんだ。



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 02:02:50.78 ID:GC9l8QouO

森「お二人とも、気付いていますか?」

住宅街に入ってからしばらくすると森さんが歩みを止めずに呟いた。

古泉「はい。おそらく先回りしているのでしょう。そうとう頭がいいようです。襲ってこないというのが逆に不気味ですね」

キョン「数も少しずつ増えてるしな」

俺は視線を上に向けた。
そこには電線に止まるカラスが確認出来る。最初は二、三羽だったのだが、今は数十羽にもなっている。
増える一方だが、襲ってくる気配がない以上、こっちから仕掛ける訳にはいかない。

森「今はとにかく進みます」

俺と古泉は頷いて返した。



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 02:04:59.88 ID:GC9l8QouO

またしばらく歩き、

キョン「うわっ」

そして角を曲がった俺は声を上げてしまった。

今までとは桁違いのカラスの大群が、俺達を待ち構えていたかのように見下ろしていたのだ。

森「左回りで行きましょう。数が多過ぎます」

古泉「そうですね」

しかし、左回りで進んだ先には。

キョン「くそっ、こっちにも嫌がる」

森「道を戻って他のルートを……!」

バサバサッ、バサバサッ、

戻ろうとした道にも数百というカラスが集まっていた。

キョン「囲まれた!?」

古泉「………どうやら我々は罠にはまってしまったようです」

キョン「………くっ、こんな数に襲われたら………」



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 02:09:38.93 ID:GC9l8QouO

森「………」

古泉「………」

キョン「………?」

カラス達は俺達を囲み、見下ろすだけでさっぱり動こうとしない。どういうことだ?

カァー、

キョン「……?」

カァー、カァー、カァー

カァー、カァー、カァーカァ、カァー
カァーカァーカァー、カァー、カァーカァーカァー、

キョン「なんだいきなり鳴き始めたぞ」



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 02:11:39.92 ID:GC9l8QouO

一斉に鳴くカラス達。数が数なだけにかなりの大合唱だ。耳を塞ぎたくなる。

森「なるほど、カラスは頭がここまで良かったのですね。それともウィルスが彼らの知能を高めたのでしょうか」

カチャ、

そう言って森さんが拳銃をホルダーから抜いた。その視線の先には……!!

ウアァァ、オォォ、アァァァ

キョン「感染者!?」

森「気をつけてくたざい二人とも。カラス達は私達を襲わせる為に感染者を呼び寄せています」



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 02:22:28.50 ID:GC9l8QouO

ウァァァ、ガァァァァ、アァァァァ

崩れかかった家の中から、わらわらと現れる感染者達。

キョン「こ、こんなにいやがんのか!?」

カァーカァー、カァー、カァー、

ウアアアア、オォォ

感染者の数はもう数十人。大音響のカラスの鳴き声によってまだ増え続けている。

森「このままでは感染者が集まる一方です。一点突破します。古泉、続きなさい!」

古泉「はい!」

ドンッ、ドンッ、ドンッ

森さんが拳銃を撃つと古泉も拳銃を取り出した。
扱えないとかいってたわりにはスムーズだ。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 02:24:35.78 ID:GC9l8QouO

拳銃に撃たれ絶命した感染者には大量のカラスが群がった。カラスのやつらはこれが狙いのようだ。
感染者だろうが、否感染者だろうが死体が増えれば、危険なく餌にありつける。

森「こちらに来て下さい!」

キョン「わ、わかりました」

古泉と森さんが感染者の壁に僅かな隙間を作る。俺はその通り道を走り抜けた。しかし、そこにはまだ感染者が、やばい、近すぎる!!



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 02:27:46.66 ID:GC9l8QouO

森「伏せて!」

キョン「っ!」

声に反応して身をかがめる。

森「はぁぁ!」
バチバチバチバチッ

森さんは腰に携帯していたスタンロッドで目の前の感染者を薙ぎ倒した。

森「無事ですか?」

キョン「は、はい、ありがとうございます」



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 02:30:32.89 ID:GC9l8QouO

古泉「くっ」

森「古泉!?」

古泉「大丈夫です。行きましょう。このままでは本当に囲まれてしまいます」

遅れて古泉も感染者の群れを抜け出してきた。

森「走ります、大丈夫ですか?」

キョン「はい」

立ち上がった俺は森さんに頷いて返した。

カァーカァー、カァーカァーカァー、カァー、カァー、

カラス達は巨大な黒い影となり、俺達の上を旋回している。周囲に餌の在りかを知らせるかのように。



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 06:50:00.30 ID:GC9l8QouO

S朝倉「グッモーニン!!いい朝ですね。S朝倉です」

S朝倉「はい、それはもうぐっすりと寝ていましたとも」

S朝倉「繋いでくれた人達、ありがとね。それでは再開!」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 06:55:19.52 ID:GC9l8QouO

カラス達のせいで周りの感染者は眠りから覚めてしまった。ならばもう出来るだけはやく機関の支部につくしかない。
しかし、目覚めた感染者は俺達の予想を遥かに越えた数だった。

古泉「こっちは数が多過ぎます。引き返しましょう」

ドンッ、ドンッ、

拳銃で感染者を撃つ古泉が後ずさる。

キョン「来た道だってもう感染者だらけだぞ!」

森「向こうからも来ていますね」

唯一残されていた道の先にも感染者が大群になって押し寄せてきていた。
もうそれは壁ではなく全てを飲み込む波のようになっている。



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 06:58:16.15 ID:GC9l8QouO

キョン「くそっ」

どうすればいい!?ここで死ぬ訳にはいかない。

森「しかたありません。これを使いましょう」

そう言って森さんが取り出したのは手榴弾だった。

森「これを今からあの大群の中に投げ入れます。何処まで一掃してくれるかはわかりませんが、駆け抜けるだけの穴は開けてくれるはず」

古泉「迷っていても感染者が増えるだけです。やるしかありません」



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:01:25.04 ID:GC9l8QouO

森「私が先頭を行きます。後方は古泉、まかせましたよ」

キョン「お、俺は?」

森「あなたは私の後ろで古泉の前です。いいですか?あなたは決して足を止めてはなりません。我々に何が起きようとです」

森「機関の支部の場所ですが、このメモに簡単にではありますが目印になるもの書いて起きました。私の身に何かあればそれを頼りにしてください」

キョン「身になにかって!」

古泉「今、一番大事なのはあなたなんです」

森「時間がありません。受け入れなさい。あなたには責任がある」

メモを差し出す森さんと、その隣に佇む古泉の瞳は俺に有無を言わせない。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:03:28.16 ID:GC9l8QouO

キョン「……わかりました」

俺は頷き、メモを受け取った。

森「………それでは行きます!」

森さんが手榴弾のピンに指をかけた、その時。

ウギャャャ、ゲギャャャ、アァァァ

感染者の叫び声が辺りに響いた。

キョン「……なんだ?」

前方の感染者の大群からだ。唸り声とは明らかに違う。その叫びは、どんどん近づいてくる。



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:06:05.50 ID:GC9l8QouO

いや正しくは叫び声を上げる感染者がこちらに広がってきている。

ギャァァ、グァァァァ、ゲギャャャ
ガァァァァ、グワァァァ

バキッ、パキッ、グチャ、

森「なにかが大群のなかを移動してきています」

古泉「……あれは!?」

キョン「またバケモンかよっ!!」

フシャアアアアアアアア

感染者の大群を薙ぎ払い、その巨体は姿を表した。



78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:08:08.78 ID:GC9l8QouO

姿はコウモリのように見えるが体長が約2メートルはある。

重さで飛べないのか、巨大コウモリは、羽についた手を使い、はいずり回るように移動している。

シャアアア
ギャァァ、

感染者に次々と噛り付き、その残骸を周囲に撒き散らす。

シャアアアアアアア

口を開き威嚇するような行動をしたバケモノコウモリは、その巨体をこちらに向けた。

森「来ます!」

ギシャァァァ

地面を鷲掴みするように一歩踏み出した巨大コウモリは、まっすぐこちらに突進してきた。



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:16:39.42 ID:GC9l8QouO

巨体とは思えないスピードだ。
とても逃げられない。

森「二人とも端に………っ!!」

キョン「っ!」

古泉「くっ!」

俺がとっさに身を端に寄せると、そのすぐ脇を巨体が通過していった。

キョン「あ、あぶねぇ」

シャアアアアアアア、

ギャァァ、グアァァァ、

巨大コウモリは俺達を通り過ぎると感染者達の中に突っ込んでいき、周囲を貪り食いはじめた。

キョン「や、やけにあっさり俺達をスルーしたな」

古泉「コウモリは本来、超音波を使い、獲物の位置を探ります。我々より向こうの大群のほうを認識したのかもしれません」

森「……」

森「……あれが感染者を一掃してくれたおかげで、前方の道が通れるようになりました。今のうちに行きましょう」

キョン「はい」



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:18:09.03 ID:GC9l8QouO


カァー、カァーカァー、
バサッ、バサッバサッ

俺達が駆け抜けると死体を啄んでいたカラス達が、いっせいに羽ばたいた。

キョン「大通りの死体の山もあの巨大コウモリの仕業か」

古泉「そして全てをおびき出したのカラス達でしょう。あれが暴れてくれれば自分達は安全に、死体という大量の餌にありつけるという訳です」

キョン「……狡猾さに恐怖すら覚えるぜ」

すぐに戻ってくる羽ばたき音を背に、俺達その場所を走り去った。



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:58:36.55 ID:GC9l8QouO

夜明け、河川敷。

キョン「朝日か、眩しいな」

感染者を避けながら、何とか俺達はこの橋に辿りつくことが出来た。
森さんの話しだとここを渡れば、機関の支部はもうすぐらしい。

キョン「さっさと渡っちまおう」

古泉「そうですね。眠っていた感染者達も活動を開始していますし、急いだほうがよさそうです」

古泉「それにしても橋が無事で助かりました。地震の影響で崩れていてもおかしくなかったですから」

キョン「だいぶ危なそうだけどな。あちこにちひびがはいってる」

森「………」

古泉「……森さん、どうかなさいましたか?」

そういえばさっきから口数がすくないな。



101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 08:51:30.73 ID:GC9l8QouO

S朝倉「寝てはないけどウトウトと」

S朝倉「けど大丈夫。再開するわね」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 08:53:33.33 ID:GC9l8QouO

森「……古泉、あなたは揺らぐことない信念をもっていますか?」

橋の前で足を止めた森さんがうなだれたまま呟いた。

古泉「森さん……?」

森「私にはあります。力と知識を授かった時、私の使命は決定したのです。強制的に与えられたものだと言う人もいますが、それがなんだと言うのでしょうか」

森「確かに有無を言わさず与えられた力です、しかし、その後にとった行動は紛れも無く私が選んだもの。誰に強要されたものではない」

森「今、私が背負っているのは私が選んだ、私の使命です、くっ」

キョン「森さん!?」

うわごとのように呟く森さんの体は、痙攣するように奮えだした。



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 08:55:56.21 ID:GC9l8QouO

森「だ、だからこそ悔しいのです。その信念がウィルスごときに飲み込まれようなんて、うぅ」

古泉「森さん……まさか……!?」

森「……私の中でウィルスが発症しかけているのでしょう……」

キョン「な!?」

森「……くらくらするのです。まるで頭の中をなにかに侵食されるかのように。意識も時折り薄れます。ウィルスの影響でしょう」

キョン「そ、そんな、なんで急に」

森「……急にでもないのかもしれません。これのせいでしょう」

古泉「その傷は……」

森「巨大コウモリの突進を避けたときに爪をかすめてしまいました。対した傷ではないのですが………この傷をおったとき、体がゾワリとわななくのを感じました。それは次第に強まり……」

森「……いま私の正気をも侵そうとしています」



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 08:58:06.20 ID:GC9l8QouO

森「これを……私にはもう不用なものです」

森さんはスタンロッドや手榴弾、拳銃を俺に手渡すと、距離をとるように下がった

キョン「森さん達はウィルスに感染しないんじゃないんですか、今まで平気だったから俺はてっきり」

古泉「……我々に症状が出ていない理由、それは我々自身にもわかりませんでした」

森「おそらくですが、我々には空気感染に対する免疫があったのでしょう。しかし、完全な抗体では……ない」

古泉「直接、傷口から入ったウィルスには抗えないという訳ですか……」

森「う……うぅ…」

キョン「も、森さん!」

森「近づかないでください!!」

キョン「!」



108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:03:04.57 ID:GC9l8QouO

古泉「限界なのですか?」

森「………はい、自分の理性の枷が外れつつあるというのは思った以上に恐ろしいものです。今、あなた達に危害を加えないという保証が出来ない………」

森「いやだんだん、そんな事すら、どうでもいいと思い初めている」

森「……ただ貪欲に、全てを……壊して……食べて……犯して……ぅああああああああ!!」

キョン「森さん!」

古泉「下がってください!」

キョン「だ、たが古泉!!」



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:05:07.01 ID:GC9l8QouO

森「……い、いきなさい。ふたりとも……いますぐ……に」

古泉「……森さん、ありがとうごさいました。かならず、彼と涼宮さんを引き合わせます」

古泉「……行きましょう」

キョン「………あぁ、わかった。森さん、ありがとうございました。俺かならずハルヒに会います」

森さんを一人残し、俺達は橋を渡った。
振り返ることなんてしない、森さんもそんなことは望んでいないのだから。

森「……ありがとう、ですか。ふふっ、どういたしまして……二人共、どうか無事で………」

森「………」

森「…」



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:08:17.42 ID:GC9l8QouO

朝方、大通り。

キョン「あれだ!あの高層ビルだ!」

メモの目印と周囲を照らし合わせた俺は、隣を走る古泉に確認をとる。

古泉「はい、間違いありません。機関の支部です」

キョン「ちと体力的に辛いがこのままいくぜ!」

古泉「えぇ、かまいません。急ぎましょう」

ウアアア、アァァ、ガァァァァ

周囲の感染者がどんどん目覚めている。足を止める訳にはいかない。

ザッ
?「止マりナサい」



113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:10:40.15 ID:GC9l8QouO

その時、俺達の前に意外な人物が立ち塞がった。

キョン「え?な、なんで」

古泉「……森さん?」

森「フフ、残ネン、ながらココマデでスヨ、二人とモ」

そう、ついさっき別れたばかりの森さんだった。

キョン「どうして森さんがここに、もしかして発症ってのは何かの間違いで、」

古泉「!」

古泉「近づいてはいけません!!」

キョン「え」

森「返しテモライます」

キョン「うわ!」
ドン

森さんは拳銃を奪うと俺を勢いよく突き飛ばした。



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:13:06.56 ID:GC9l8QouO

キョン「も、森さんなにを……?」

森「アァ、たまりませン、その顔、ゾクゾクします。ドうかそノ表情のまま」

カチャ

森さんは銃口をゆっくりと俺に向ける。そして。

森「コワレナサイ」

ドンッ

キョン「!!」

俺は銃声を聞いて、とっさに目をつぶった。しかしいつまでたっても体に痛みが走ることはない。

森「フフ、酷いじゃないデスか、古泉、ワタシに発砲スルナンテ」

恐る恐る目を開けると腹から血を流す森さんの姿が飛び込んできた。
古泉が撃った?森さんをか?



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:17:44.49 ID:GC9l8QouO

キョン「古泉、お前何して?」

古泉「よく見てください。あれはもう森さんではありません。理性が外れ、本能に捕われたバケモノです」

ドンッ、ドンッ、ドンッ

古泉が森さんに向けて、引きがねを引く。

森「フフフフ、ひどい、ヒドイでスね」
スッ、

しかし、森さんは口元に歪んだ笑みを浮かべながら、弾丸をひらり、ひらりとかわす。



119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:21:48.23 ID:GC9l8QouO

古泉「大丈夫ですか?」

キョン「あ、あぁ大丈夫だ。けどあれは……森さんはいったい……」

古泉「発症し正気を……失ったのでしょう。しかしどこか他の感染者とは様子が違うようです」

森「ソノようです」

古泉の言葉を聞いた森さんが、ふらふらと体を揺らす。

森「ドウヤラ会話ヲセイ立させる、ダケの知能ガ私ニハアル。それだけデハナク、このケンジュウの使い方もワカリマスし」

森「フフ、気分もイイデス、カラダもスゴク軽い、あなたがたも感染してはイカガデス?最高でス、コンナコトナラ、あがくことなどシナケレバよかった」

キョン「森さん……」

森さんの言葉使いはどこかおぼつかない。目も虚だ。



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:28:47.26 ID:GC9l8QouO

古泉「………っ」

キョン「古泉!大丈夫か!!」

古泉「えぇ、平気です。見事に拳銃だけを撃ち抜かれたようですから」

とは言いつつ古泉の手から血が滴っている。拳銃の破片が刺さったのかもしれない。

森「アア、形ある物がコワレルサマはイイデスネ、ウツクシイです、あなたがたもコワレルてくださイマセンカ?」

カチャ

躊躇のない拳銃が俺と古泉に向けられた。

キョン「……ちくしょう」

引きがねに指をかける森さんを止めるすべはない。



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:33:04.32 ID:GC9l8QouO

森「!?」

キキッー、ドンッ

キョン「な!?」

しかし引きがねが引かれることはなかった。
猛スピードで突っ込んできた車が森さんを吹っ飛ばしたのだ。

ガシャーン、

森さんはガラスを突き抜け、建物の中に飛び込んでいく。

ガラガラ、

朝比奈「キョンくん、古泉くん乗ってくださいっ」

キョン「あ、朝比奈さん!?」

車の後部座席のドアを開けて姿を表したのはなんと朝比奈さんだった。



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:35:16.54 ID:GC9l8QouO

古泉「……どうして朝比奈さんが」

ウィーン

新川「二人ともお乗りください。感染者達が集まりはじめております」

開いた運転席の窓から顔を出したのは新川さんだった。この人は古泉や森さんと同じ機関の人だ、なんでこの人と朝比奈さんが一緒に。

古泉「乗りましょう」

キョン「あ、あぁ」

俺と古泉が飛び乗ると車は発進した。
森さんが飛び込んだビルがしだいに遠ざかっていく。
中の瓦礫はぴくりとも動かなかった。



130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:39:24.96 ID:GC9l8QouO

機関支部。地下駐車場。

ガチャ
新川「ご安心を駐車場は閉鎖済みです」

そう言い新川さんが車から降りる。俺と古泉、朝比奈さんもそれに続いた。

キョン「新川さん危ないところをありがとうごさいました、けどいったいどうして、朝比奈さんも……」

新川「私は朝比奈みくるさんの救出を行った帰りでごさいました。あの場所を通りかかったのは偶然でしたが、あなたがたの危機と感じた為、あのような荒療治を行わせていただきました」

古泉「……新川さん、森さんのことですが」

新川「なにも言わなく結構です。あの場所にはあなたがたの他に正常な人間はいなかった。それだけのことでございました」

新川さんは目を細める。古泉もそれ以上なにも言おうとしなかった



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:42:48.99 ID:GC9l8QouO

朝比奈「キョンくんも、古泉くんも無事でよかったです」

俺と古泉を見つめている朝比奈さんの目は潤んでいる。

キョン「朝比奈さんも無事で安心しましたよ」

新川「ここでの立ち話も落ち着かないのではありませんか?上へまいりましょう」

朝比奈「はい、ありがとうございます新川さん」

キョン「……ようやく、落ち着けるのか……ん?」

古泉「………」

キョン「おい、古泉、置いてかれるぞ」

古泉は少しの間、無表情に黙りこんでいたが、すぐにいつもの笑顔になった。そして何事もなかったように。

古泉「僕はそちら側に行くことはできません」



134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:44:32.91 ID:GC9l8QouO

キョン「なにを言って」

古泉「このような危険分子があなたの近くにいる訳にはいきませんから」

古泉は袖を少し上げると手首を俺に見えるようにかざした。

キョン「お、お前その傷、もしかして」

古泉「住宅街で最初に感染者に囲まれたときに、引っ掻かれていたんです」

キョン「そんな、ならお前も森さんみたいに……?」

古泉「今のところ自覚症状はありませんが、いつ発症するかもわからない。すいません、あなたと涼宮さんが再開する手伝いを最後までしたかったのですが、リタイヤです」



138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:51:44.55 ID:GC9l8QouO

キョン「まだ分からないじゃないか!傷があるからってウィルスに感染してるかなんて!」

古泉「わからないからこそ、危険なんです。いつ正気を失い近くにいる人間に襲い掛かるか。それがもしあなたや朝比奈さんだったら、僕は自分を許せません」

キョン「古泉……」

古泉「頑張ってください。あなたと涼宮さんにかかっているのですから」


キョン「……やれやれ、お前は肝心なところで、いつも俺に丸投げだな」

俺がわざとらしく、首を振ってみせると、

古泉「ふふっ、そうですか?ならばなおさら今回もよろしくお願いしたいですね」

古泉もいつもの笑みで肩をすくませた。

そうだ、俺にやらなくちゃいけない事があるのならやってやるさ。意地でもな。

古泉「……ではそろそろ」

キョン「別れの言葉は言わないぜ。どうせまたそのにやけ面を、嫌でも見るはめになる日常が待ってるんだからな」

古泉「楽しみにしています」

薄暗い駐車場に古泉を一人残し、俺は朝比奈さんと新川さんの後を追った。



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:53:17.39 ID:GC9l8QouO

地下駐車場、エレベーター前。

朝比奈「あ、キョンくん、あれ?古泉くんは……」

キョン「古泉ですか?あいつなら所用で少し別行動です」

新川「………」

朝比奈「そうなんですか……」

キョン「大丈夫ですよ、朝比奈さん。またすぐに会えますから」

そうだ。すぐにまた、あのSOS団の五人で馬鹿やっていた毎日に戻る。

必ず戻ってみせる。

俺達が乗り込むとエレベーターは扉を閉め、ゆっくりと上昇していった



【機関支部への道編】完

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 10:24:43.11 ID:GC9l8QouO

S朝倉「さてと、原作ふうに名前をつけるならこのシリーズは『涼宮ハルヒの再開』ってところかしらね」

S朝倉「その第2章、【機関支部への道編】、またの名を【古泉編】が無事終了しました。ちなみ前回は【長門編】ね」

S朝倉「もうちょいバトル色を濃くしようと思ってたんだけど」

S朝倉「巨大コウモリとの戦闘とか、森さん(感染)との死闘とかね」

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 10:29:08.81 ID:GC9l8QouO

S朝倉「得に森さん(感染)はもっとボスキャラに仕上げたかったな」

『森(感染)「右手に拳銃!左手にスタンロッド!ウィルスの影響で高められた身体能力!!まるで気分はタイラント!!」』

S朝倉「みたいなね」



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