キョン「ここが軽音部か」澪「あれ……キョン?」


メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:偽アカギ「フッ……大学入試か……」

ツイート

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 17:06:02.14 ID:Fl+yB0jTO

キョン「…………なんだ、だれもいないのか」(ハルヒのやつ先に行ってるって言ってなかったか?)

澪「ちょっと……キョ……ン?」

キョンは誰もいない音楽室の片隅に並んだ四つの机の一つに腰を下ろした。腹が音を立てて部屋全体に鳴り響く。

キョン「ハルヒめ、味見とかいって人の弁当全部食いやがって。お詫びに角砂糖あげるから許して……だと? たまには俺もガツンと……。ヤバい眠くなってきた。まあだれもいないし寝るか」


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 17:17:24.92 ID:Fl+yB0jTO

ゆさゆさ

澪「キョン? ねえキョンなんでしょ?」
(まさか私に気づいてないの?)

ガラガラっ

ハルヒ「よっしゃ。キョン早速練習開始するわよって、こらキョン起きなさい」

キョン「……ん、むぅ。なんだハルヒか」

ハルヒ「なんだじゃないわよ。起きなさい」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 17:43:50.10 ID:Fl+yB0jTO

ハルヒ「キョンと私しかいないってのも寂しいものね。まあいいわ、兎に角キョン。起きなさい」

キョン「誰かさんが人の弁当全部食ったからやだ」

ハルヒ「なんですって! 角砂糖あげたんだからいいじゃない」

キョン「俺は蟻か」

澪「まあまあ二人とも」

澪は机にへばりつく少年と、それを引き剥がそうとする少年の間に割って入って争いを止めようとした。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 17:52:38.61 ID:Fl+yB0jTO

正確には間に割って入ろうとした。

すかっ。びたーん。

澪「いだっ」

澪の体は二人をすり抜けて勢いよく床へと倒れこんだのだ。その瞳は自分にふりかかる様々な現象のせいで潤っていた。

澪「あれおかしい。なんで? 一体私の体どうなったの?」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 18:07:46.71 ID:Fl+yB0jTO

(キョンは無視するし、女の子も私に気付いてないみたいだし、体はすり抜けるし、律達はいないし。って今日何曜日だっけ? カレンダーっと)

澪は壁に掛けられたカレンダーを覗き込む。

(あれ? おかしい。なんで200X年のカレンダーがもうあるの? 今は200Y年のはず。これ来年のカレンダーよね? 未来に来てしまったのかな? そう思うのが妥当ね。キョンもここに入学出来てたみたいだしよかった。)

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 18:11:59.48 ID:Fl+yB0jTO

澪がカレンダーとにらめっこしている間にキョンはハルヒに引き摺られいつの間にかベースをぶら下げて立っていた。

キョン「ハルヒ君! なんだねこれは?」
ハルヒ「ベースよ」

キョン「んなもんみりゃわかる」

ハルヒ「ならいいじゃない」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 18:18:34.85 ID:Fl+yB0jTO

澪「それ私のベース」

澪はキョンからベースを取り上げようとするがまたしてもそれには触れられなかった。

ハルヒ「さあ弾いてみて」

キョン(こいつはまた無茶を言い始めたぞ)

ハルヒ「まさかキョン弾けないの?」

キョン「ああ弾けない」

ハルヒ「じゃああれは嘘だったのね?」

キョン「何の話だ?」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 18:27:14.12 ID:Fl+yB0jTO

ハルヒ「昨日わたしに言ったこと覚えてないの?」

キョン「俺なんかいったか?」

ハルヒ「俺……実は弾けない楽器ないんだって言ったじゃない」

キョン「いった覚えが全くないんだが。こはいかに?」

ハルヒ「確かに言ったわよ。私の夢で」

キョン「ハルヒさま。一つお願いを申し上げつかまつりまする所存であります」

ハルヒ「なによ?」

キョン「夢は夢。現実は現実であります」

ハルヒ「細かいことはいいから弾いてみなさい」

キョン(こうなったハルヒは聞かないからな。……仕方ないやるか)

澪(キョンがベースか………興味あるな)

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 18:32:24.88 ID:Fl+yB0jTO

キョン「ふうっ……」

ハルヒ・澪(わくわく)

ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボババババババババババババババババババババババババボボボボボボボボ……

ハルヒ・澪「ふ〜ん」

ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボババババババババババババババババババババ

ハルヒ・澪「ふ〜ん」

ボボボボボボボボババババババババ

ハルヒ・澪「あれ?」

ボボボボボボボボボボボボババババババババババババ

ハルヒ「ちょっとキョン?」


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 18:43:37.75 ID:Fl+yB0jTO

キョン「なんだハルヒ」

ハルヒ「さっきから二つしか音がでてないんだけど」

キョン「言っただろう。弾けないと」

ハルヒ「少なくとも胸をはって言うことじゃないわね」

ガラガラ

そのとき部屋のドアが勢いよく開かれた。そこには三人の少女が立っていた。一人は前髪をかき上げた快活そうな少女、一人はただただ涙を浮かべている少女、もう一人ははっきりとした眉をもって一見おしとやかそうだが、その目には敵意が感じられた。

○○「それ……それ……」

ハルヒ・キョン「それ?」


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 18:56:00.77 ID:Fl+yB0jTO

○○「それにっ……触るなっ」

額が剥き出しの少女はそう一喝し、キョンの肩から掛けられたベースを奪いとった。

ハルヒ「何をするのっ?」

○○「触るなって言ってんのよ!!」

ハルヒ「なんで触っちゃいけないのよ? 置いてあるんだからいいでしょ?」

○○「これは、これは澪のっ。澪のっ。うわぁぁ〜ん」

ハルヒはその少女が泣き始めてしまったので一歩後ろに下がった。

△△「律さん……。唯さんまで泣いてしまいます」

律「ムギ……。だって……」

紬「ほら立ってください。ね?」

紬と呼ばれる少女は律という泣き崩れた少女へと手を差し伸べた。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 19:04:47.86 ID:Fl+yB0jTO

澪(あ、律、紬、唯もやっぱり私が見えてないんだ。ほんとに不思議ね)

紬「突然手荒な真似してすみませんね。これには大事なわけがあるんです。だから今日のところはお引き取り願えますか?」
キョン「はあ。こちらこそすみません。ほらハルヒいくぞ」

ハルヒ「言われなくてもわかってるわよ」

ハルヒはその場から地団太を踏むように出て行ってしまった。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 19:11:33.91 ID:Fl+yB0jTO

唯「澪ちゃ……澪ちゃ…」

紬「ほらほら唯さんまで、泣かないの。私だって……」

キョン「それでは失礼しました」

紬「また明日の放課後いらして下さい。あなたひとりで」

キョン「?」

紬「話したいことがあります」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 19:14:50.03 ID:Fl+yB0jTO

>>58
携帯だからめちゃくちゃ遅くなるがいいだろうか?


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 19:47:49.46 ID:Fl+yB0jTO

翌日
〜放課後〜
キョン(なんか今日は廊下で会った長門の様子が変だったな。変な感じがするとかなんとか。ハルヒに至っては口すら聞かないし、はあ。困ったもんだ)
キョン「失礼します」

キョンが足を踏み入れると、紅茶の香りが鼻孔をくすぐった。

澪「あっ。キョン」(……やっぱり見えてないんだ、ムギもだけど)

紬「いらっしゃい。来てくれたのね。」



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 19:51:21.96 ID:Fl+yB0jTO

キョン「ええまあ。先輩の言うことを無視する訳にもいきませんからね」

紬「日の話をしましょう」

キョン「律さんと唯さんでしたっけ? いないんですか?」

紬「ええ。思い出してしまったんです去年の不幸を。今日は学校にもきていません」

キョン「それは悪いことをしてしまいました」

紬「いいんですよ。あなたに罪はありません。仕方がないんですから」

紬「それでは本題に入りますね。
去年も当然ながら文化祭がありました。私達は例年すばらしい演奏と言われる軽音部としてENOZというバンド名で文化祭にでようと練習していました」


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 20:40:48.80 ID:Fl+yB0jTO

澪は二人が話す隣に座って頷きながらその話を聞いていた。

紬「ある一時点までは楽しかったのですよ。でも……文化祭当日の朝に突然状況は変わってしまったのです

私達は前日から興奮してしまって大変でした。なかなか寝付けなくて落ち着こうと電話しあって……。



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 20:43:51.09 ID:Fl+yB0jTO

紬「文化祭の朝私達はそれぞれみんなに、頑張ろうとメールを送り合いました。

バンドのみんなが学校に着き、それぞれ個々の楽器の調整ををしていました。

でもひとりだけ……足りなかったのです。

その子はいつも私達の先頭に立ってくれるこで、遅刻などしたことなど一度も無い子だったので不安になったのです」


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 20:48:07.44 ID:Fl+yB0jTO

紬「私達はその子を待ちました。

メールを送っても電話をかけても返事が無かったからです。

待っても待っても来ず、ついには演奏の時間がきてしまいました。

私達はステージに立つと、ヒロインは遅れてきてこそ華があるものだと思い込んだのです」


77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 20:49:49.47 ID:Fl+yB0jTO

紬「演奏が始まってしまうので前置きにと私達は即興演奏をしました。

即興演奏も終わってしまい、いよいよ本番というところになりました。

そして鳴ったのは音でした。

バンドの音ではなく電話の音。

ドラムの子、髪を上げた子、律さんのもとへと一本の電話が」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 21:23:13.55 ID:Fl+yB0jTO

紬「電話の主は先生でした。内容は今すぐ病院へというもの。
まさかと思い、私達はその場を棄てて走りました。

夏の暑い日のことでした。自転車に飛び乗り、全身から汗が噴き出しても、私達には全く暑いと感じることはありませんでした。

嫌な予感のせいで悪寒が凄くて」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 21:27:15.66 ID:Fl+yB0jTO

息が切れようが喉が渇こうが必死に漕ぎました。

病院のフロントに病室を聞いて部屋まで一気に走りました」

紬「……個室でした。ただその子のベースだけがその子を見守るようにそこに佇んでいました。
その子は酸素吸入器をあて、体は痛々しい包帯で巻かれていたのです」







澪「ムギ……何……の……話を……して……い……るの?」




87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 21:33:39.29 ID:Fl+yB0jTO

紬「律と唯は声も出せずにただその子のもとにへたり込んでしまったのです。

その子の心拍数は安定していましたが酸素吸入器を外せばすぐにでもという話でした……。

親御さんがせめてもと言うことで。

事故です、バスにトレーラーが突っ込んでなんて……。

そして一週間後に彼女は……」

澪「……」


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 21:35:28.19 ID:Fl+yB0jTO

紬「皮肉なものです。楽器は無傷なのに彼女は……もう。

唯は一見抜けてはいますが割と根強い子なので立ち直りはよかったのです。

しかし律は深い傷を負ってしまいなかなか立ち直れませんでした。

それもそうでしょう。

昔からの唯一の親友を失ったのですから」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 22:00:26.46 ID:Fl+yB0jTO

紬「律が立ち直るには長く長く時間が掛かりました。半年くらいでしょうかね。

私もあの子を思い出すと涙が出そうになります。過ぎたことはと思っても……。


だからこのベースには思い出がたくさん詰まっているんです。ほかの人になんて触らせたくないのです」



99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 22:03:53.26 ID:Fl+yB0jTO

部屋の外


ハルヒ(キョンのあとをつけたら……。
死んだ? だから何よ? うじうじしてたら死んだ子が報われないでしょうに。もういいわ、私が一発目をさまさせてやる!!)

意気込み、ハルヒはどこかへいってしまった。


澪(私は気づいたら此処にいた。

なぜか昨日はここからでようとしてもダメだったし。

見えない鎖に縛られるみたいに。

そっか私……死んだのか……結局なにも出来なかった……。

寂しいし皮肉にも怖がってたお化けに自分がなるとは)

澪の目から溢れたものはその場に水溜まりを作った。


102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 22:10:28.08 ID:Fl+yB0jTO

キョン「そうだったんですか、すみません本当n」

ガラガラ

キョン「長門?」

長門「危険です。下がって下さい。閉鎖空間出現の可能性があります」

長門は周りには見えない澪の前に立ち手をかざした。

澪「え?」

長門「微弱な電磁波を感知。情報統合思念体の意思に従い空間の解析を開始。スキャンします。

空間の一部に未確認領域を発見、人間可能視野までより映像の微細化を開始。



達成」


長門が手をかざした空間は、一度崩壊し再構築され人の形を創っていく。
そして黒髪の少女が完成した。

紬「み……お? そ……んな。私は目がおかしいのかもしれません」

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 23:05:39.11 ID:UlyhItCd0

澪「へ? わたしが……見えてるの?」

澪は涙をぬぐって紬の体を触ろうと肩に手を置こうとするがやはりするりと通り抜けてしまった。

澪「なんだ……。やっぱりそんな筈無いよね」

長門「違う。実体に触れる、触れられることは不可能。しかし、存在するだけならば可能」

そして次に紡がれた言葉で澪の涙腺は壊れた。






紬「澪。おかえり…」



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 23:23:27.64 ID:UlyhItCd0

澪「突然でよくわからないんだけど、うん。ただいま」



長門「一時的な空間保持プログラムを解除。構築済み空間の崩壊始動。脚部消滅」

突如空間が歪み、足もとから澪の姿が消え始めた。

キョン「おい長門。どうしてこの人の足が消えるんだ? 運命的な再開なんだ。 どうにかならないか?」

長門「不可能。しかしこの映像が消滅するのみであり根本が消滅することはない。
ただ色を付けられたものの色がなくなるということだけ。素体は残る。
念縛霊、自縛霊が複合されたこの霊体はめったやたらには消えない。安心して」

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 23:48:56.37 ID:UlyhItCd0

紬「澪が消えるかと思ってしまいました。でもまた会えるんですよね?」

長門「情報統合思念体へ交信はする。本来これは私たちの管轄外。加えて音声変換、映像維持を
するのは現段階のプログラムでは不可能。可能性は低い」

紬「そんな……まだ律と唯が……」

長門「可能性が低いだけ。ゼロではない。最悪私の独断で行うので問題はない。
現段階でのプログラムを強化修正する必要がある。さまざまな問題対処のため時間が必要。故に一時的にプログラムを崩した。
明日までには実装できる」

キョン「ようするに大丈夫なんだな?」

紬「よかった。でも……もう消えてしまいますね澪」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 23:58:45.30 ID:UlyhItCd0

澪「ムギ、泣くなってば。またあしたになれば会えるんだから」

紬「そうですね。ではまた明日。二人にも言っておきます」

澪「消える前に一つ。長門さん?」

長門「有希でいい」

澪「ありがとう、有希。そしてキョン。あなたは去年の文化祭の前のこと覚えてないかもしれないけど私は覚えてるから」

キョン「?」

それだけ言って澪の姿は消えた。

紬「澪はまだそこにいるんですよね? 有希さん、キョンさん。本当にありがとうございました」

キョン「先輩おれはなにもしてないので礼なら長門だけに言ってください」

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 00:01:23.53 ID:p3JYjn2y0

紬「なにがあったか知りませんが澪はキョンさんもにあえて嬉しかったのではないかと思うのです。
だからお礼は澪の分も含めてですよ」

キョン「思い出せない……まあいいか。では先輩また今度。ほら長門いくぞ」

長門「コクッ」

キョンは長門を連れ部屋に残った二人に手を振ってその場を後にした。

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:19:48.06 ID:p3JYjn2y0

翌日



キョンは音楽室。つまりは軽音部の部室にいた。
授業も終わり机に寝ていた。


キョン(朝は妹が「不倫は駄目だよキョンくん」とか教えてもいないのに
どこで覚えてきたのかわからないことを言い始めるし、ハルヒは学校に来てないし
小泉は「今晩暇ですか?」など変な気たっぷりの目線を送ってくるし。
まあそんなアプローチは当然ことわったが。長門は、昨日のプログラム云々だな。
朝比奈さんに至っては会ってすらないからな。
まああの人はあの人で「怖いのはだめなんですぅ〜」とか言っちゃったりして、この場にいたら
俺にしがみついてきそうだからな。……朝比奈さん呼ぼうかな)

ニヤニヤ


199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:43:41.19 ID:p3JYjn2y0

この部屋に今見えるのは彼の姿だけであるが、それは人の可能視野の範囲内に言えることであって
実際のところ、ここにはもう一人存在するのだ。

澪(キョン……? 変な顔……何考えてるんだ? でもこの体はほんとにつまらない……。
こうやってキョンに触れようとしても触れないし、気づいてすらもらえない。ほんとに退屈。早く有希こないかな……)

ガラガラ

キョン「お、長門きたか」
澪「有希!」

長門「徹夜がつらいゆえに早急に実行に移す」

キョン「プログラムなんたらができたのか?」

長門「できた。しかし、対涼宮ハルヒ用非干渉用妨害プログラム及びに、空間改ざんプログラム、音声変換機能、
持続性……並べればきりがない。そして一つ肝心なことがある」


200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:44:51.01 ID:p3JYjn2y0

キョン「なんだ?」

長門「この霊体をすべての人間の目に晒すのは統合思念体の意思により拒否された。あちらの世界にまで問題が
発展するから。だけど、限られた人数のなかでならという許可が下りた。よって再会願望をもつ人間が来るたびに
私がプログラムを崩壊、改ざん、追加、そして構築する必要がありそれには時間とエネルギーを費やす
だから一日に同じ時間枠の中でしか、霊体【秋山澪】を認識させることはできない」

キョン「よくわからん」

長門「とどのつまり、同日に一度しかプログラムは実行できないということ」

キョン「長門がつかれるということか」

長門「そう。話は終わり。早速構築を始める」

ガラガラ

201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:45:43.55 ID:p3JYjn2y0

キョン「紬さん!」

紬「あら、キョンさん。今日もいらしてくださったのですか? ありがとうございます」

唯「ムギちゃん!! やっぱり嘘じゃん。澪ちゃんがいるなんてひどいウソついて……。
そんなこというから今日だって律ちゃんせっかくきたのに帰っちゃったんだよ」

澪「唯……」

紬の後ろにいたらしき人物は部屋にはいるや否や怒声をあげたが、紬が説明する前に長門が睨んだ。

長門「うるさい、邪魔をしないで」

唯「びくっ!!」

紬「ごめんなさい、長門さん。ほら唯も騙されたと思って、ちょっと見てて」


202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 07:46:26.73 ID:p3JYjn2y0

長門「今日は一人追加?」

紬「ええ、律はお聞きの通りで……」

長門はキョンの隣へ移動し隣の席に手をかざした。

長門「わかった。追加人数1。プログラムの改ざんを開始、変換完了。離れて」

キョン「なんだ。また俺の隣か……」

長門「そこにいるんだから仕方がない」

唯「ムギちゃんあの人何か言ってるよ?」

紬「黙ってみてなさい!!」

唯「はぃひ!!」


205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 08:16:32.77 ID:p3JYjn2y0

長門「実行段階に移行。個々間の情報ネットワークを展開。データー処理開始。
順調。サーチ完了。空間の電磁波とプログラム融合の開始。終了。これより映像化を実行」


その言葉とともに唯が約一年前のあの文化祭の前の日、最後にみた姿がぼやけはじめた。

唯「……あ……あ」

その姿は最初は陽炎のようにゆらゆらと揺れていたが、次第に安定していく。

唯「ま…………さか」

そして。


体が完成した。

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 08:20:16.22 ID:p3JYjn2y0

唯「み、お、ちゃ、……みおちゃぁぁぁぁぁん」

唯はその名の人物のところへ走りだして抱きつこうとした。でもその体は通り抜けて勢いよく机の中に突っ込んだ。

キョン「……あ〜あ」
紬「あらら……」

唯「いたた……あれ? みおちゃん?」

澪「フフ唯……全く変わってないな」

唯「澪ちゃん」

またもや学習しない唯は澪に突っ込むが床にヘッドスライディングする。

べちゃあ。

澪「唯……」

紬「唯、澪にはどう頑張っても触れないんですよ」


208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 08:38:45.85 ID:p3JYjn2y0

唯「なんで? どうして? 澪ちゃんそこにいるんだよ? ほら手が届くよ?」

紬・キョン「……」

長門「それは霊体と色覚jy」

そこまでいいかけて長門は声を止められた。目の前に遮られた澪の手によって。

澪「唯。私は死んだでしょ? 死んだ人はどうなるかわかる?」

唯「天国に行く?」

澪「うん。でも私は天国に行けずにここにいるの。お化け……なんだって」

唯「でも澪ちゃん足あるよ? お化けはあしないんでしょ?」

澪「それはよくわからないけど、でもお化けみたい」

唯「おばけかぁ……全然怖くないお化けだね!!」

澪「そうだね」

唯「澪ちゃん」

澪「うん? なに?」

唯「おかえり」

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:07:22.70 ID:p3JYjn2y0

澪「それだけ? ほかには聞かないの?」

唯「澪ちゃんは澪ちゃん。澪ちゃんはそこにいる。だからもういいの」

澪「そっか。とりあえずただいま」

唯「澪ちゃんほらほら座って座って。お話ししよ」

澪「わかったから唯急かすなって」

紬「久しぶりですねこうするのも、紅茶をいれましょうか、マフィンでいいですか?」

唯「うん」

わくわく

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 09:13:25.59 ID:p3JYjn2y0

ちょっと出かけてくる。
ちなみに帰りは夜になりそう、それまでできたら保守頼みます

249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 21:53:17.03 ID:p3JYjn2y0

唯「えへへ〜。おいし〜ね〜澪ちゃん」

澪「……私、食べられないんだけど……」

唯「はうっ!! そだった」

澪「唯は相変わらずだね。あんまりかわってなくてよかったよ」

紬「ほんとかわってないですよね」

唯「あはは〜そぉ〜? そんなことないよ〜」

澪「ありすぎて怖いくらいよ」

わいわい

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 21:54:08.30 ID:p3JYjn2y0


澪、唯、紬で話し合っているところでキョンは遠巻きに紬を呼んだ。

キョン「紬先輩ちょっといいですか?」

紬「なんですか、キョンさん?」

キョン「大変聞きにくいことなんですけど……」

紬「いいですよ。何でも聞いてください」

キョン「唯先輩って会話聞いてて思ったんですけど……頭があれな人なんですか?」


253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 21:57:29.79 ID:p3JYjn2y0

紬「……きましたか。そうですね、端から見たら変に思うかもしれないけどいい子なんですよ。

普段一緒にいるとたまにキョンさんみたく思ったりしますけれど面白い子ですし。

集中力なんてすごいですよ。一年で即興演奏なんて簡単にできるようになってしまいましたし、

いまならひとつの曲を覚えてこいっていったら多分一日で覚えてきますよ。きっと。

そのせいで、ギター弾いてたら一日経ってたとか、

テスト勉強まったくしなくて追試やら補習やらとかで周りに迷惑をかけてましたけど」

キョン「そりゃまたいろいろすごい。でもなんで? そんなにすごいならENOZの方たちも有名になりますよね?
でも今は名前すら聞きませんよ?」


254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 22:02:19.96 ID:p3JYjn2y0

紬「私たちは一時期は裏で有名にになりましたよ。先生方も何とか隠蔽はしてくださったのですけど……。

不幸なバンドとか呼ばれてしまって。表ではあまり話していい話題ではありませんよね? だから今はもうその話をする人はいないんです。

皆、あの日から腕は落ちてません。

澪がいなくなってから私たちは練習を欠かさなかった日はないです。でもバンドとして再び演奏することはないでしょうね。

なぜなら、バンドの土台がいなくなってしまったのですから。

ほかの人に……なんてほいほい入れ替えられるモンでもないでしょう?

それにいつか彼女が……戻ってきてくれるなんてありえない希望を心の片隅に抱いているせいかもしれません。

でもその希望の種も咲きました。彼女は物に触れられないけど、でも、彼女がいることで唯もやる気を出したみたいですし、バンドが

再開されるかもしれません。律次第ですけどね」

255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 22:06:32.34 ID:p3JYjn2y0

キョン「たのしみだ。もしそうなったら文化祭でもやるんですか?」

紬「文化祭まであと4日ですし、フリーステージでしたら三日前に申請すればいいようです。何とかなるかもしれませんね、
代わりのベースとボーカルがきついかもしれませんが、昨日キョンさんといた涼宮さんでしたか?
あの奇行で有名な子なら何とかなる気がしたんですけど」

キョン「ハルヒ……ですか。じゃあ誘ってみます。明日までに絶対」

紬「私たちも律の説得をがんばりますね」

キョン「お互いがんばりましょう、では俺は今日はこのへんでおいとまします。先輩またあした」

そういってキョンはその場を後にした。

266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 23:35:01.40 ID:p3JYjn2y0

文化祭三日前


軽音部部室
ガラガラ……しーん

律「なんだ……やっぱり。澪がいるわけないか。

みんなひどいウソをつきすぎだよ。

でも……少し期待しちゃっんだよ……み……お……」

澪「律……」




律は机に伏すとそれ以降なにもしゃべらずに黙ったままだった。

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 00:01:41.78 ID:VgCzamem0

三十分後

ガラガラ

唯「やっと数学終わったよ〜。もう全然わからなくてこまっちゃうよ〜」

紬「もう唯ったら、毎日の積み重ねですよ」

唯「あ……律ちゃん」
紬「あ……律、来てくれてましたか」

律「二人とも……。もう誰も信用できなくなったよ
あんなに私を誘っといて結局澪はいないじゃない、もういい加減にしてよ。
わたし、そろそろ我慢の限界なんだ……だから」

がらがら

長門「今日は一人?」

律「だれ?」

唯「魔法使いさんだよ〜。有希ちゃん今日もありがと〜」

長門「礼はいらない。勝手にやっているだけ」

270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 00:15:41.33 ID:VgCzamem0

紬「今日も有希さんは謙虚ですね。今日はキョンさんはいないのですか?」

長門「いない。涼宮ハルヒを探しに行っている」

紬「そうですか。ではいつものをお願いします」

長門「わかった」

長門「うんたん♪(省略)」

律にも澪の姿が見えるようになった。

律「私……え? なんで? わたしどうしちゃったの?」

律は突然のことに動揺して言葉を無くしてしまったようだ。

紬「私たちはちょっと出ましょうか」

紬は唯と長門を連れて部室を出た。


274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 00:33:16.48 ID:VgCzamem0

澪「久しぶり律」

律「そんな……澪なの?」

澪「私以外に誰に見える?」

律「巨乳星人」

澪「だれだ!」すかっ

澪は律の頭をはたいて突っ込みを入れたがその手はただ律の頭を通り抜けただけだった。

律「澪? まさか……体がないの?」

澪「みたい。死んじゃったから魂だけってことになってるみたいだけど」

律「ほほ〜う。つまりはお化けと?」

澪「みたい。怖い話はもうやめ。で、なんで足震えてるのよ律?」


276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 00:59:46.59 ID:VgCzamem0

律「いや〜あはは。なんか信じられなくて。澪が本当にいるとは……でも本当に死んじゃったんだよね
わかってたんだよ、本当は。でももう二度と澪が私に強烈なツッコミを入れることもできないんだって
改めて実感させられたよ。もう澪の胸で泣くこともできないんだって……」

そういう律の声は震えていて目からは一筋のしずくがこぼれおちた。

澪「律……ごめんね」

律「澪が謝ることじゃないよ。でも私もいつまでも澪に甘えていちゃいけないってわかった。
澪がここにいるってことは成仏できてないんでしょ?」


279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:21:15.52 ID:VgCzamem0

澪「有希は自縛、念縛がなんとかって言ってたけど」

律「私小さいころに聞いたことがある。自縛は自らが未練を残しているから成仏できない。念縛は周りの人に未練があるから
成仏できないって。原因はバンド絡みだよな澪? 今年の文化祭で派手にやれば澪も成仏できるかな?」

澪「わからないけど、可能性はゼロではないと思う」

律「じゃあバンドやるぜ。澪に心配させないためにも」

澪「律……」

ガラガラ

紬「唯、そろそろ入ってもいいみたいですよ」

律「唯、ムギ!!バンドやるぞ〜!!お〜」

唯・紬「お〜!!」

280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:27:53.81 ID:VgCzamem0

ガラガラ

キョン「失礼します。紬先輩ちょっといいですか?」

紬「はいはい。なんですか?」

キョン「その……ハルヒが見つからないんです。申し込みは今日までなので急いで探し回ったんですが、
あいつ学校に来てないんですよ。ほんとに申し上げにくいんですけどボーカルの件は……」


ガラガラ

ハルヒ「文化祭でバンドデビューよ!!」

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:00:12.27 ID:VgCzamem0

キョン「おい、ハルヒおまえ今までどこに」

ハルヒ「キョンはいいから黙りなさい」

ハルヒ「このしみったれた空気をぶっ飛ばす曲を作ってきたからこれを演奏するわよ」

キョン(またこいつはわけのわからないことを言い始めたぞ)

ハルヒ「ENOZのメンバーも全員調べてきたから、状況は把握してるわ」

澪・紬・唯・律「……」

ハルヒ「これがキーボード、これがギター、ドラム、ベースの楽譜よ。ベースは有希? 器用だからいいでしょ?」

長門「わたしは構わない」

キョン(器用だから? あいかわらずな無茶理論。長門も長門でいいのか!?)

ハルヒ「ボーカルはわたしで決まり拒否権はなし。合わせるのは文化祭前日。いいわね?
それでは、また明後日」

そう言い残してハルヒはその場から消えた。


284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:21:24.82 ID:VgCzamem0

澪・紬・唯・律「……」

キョン「なんかすみません先輩」

紬「いえいえ。でも気まぐれな人ですね
合わせは明後日ですか……できますよね?」

唯「あはははは〜。もちろんできるよ〜」

律「あの一年……いい度胸してるわ。やってやるわよ」

長門「余裕」

キョン「じゃあ、おれはかえります。明後日見に来ますね」

ガラガラ



澪(あ……キョン。 話したいことあったのに)

289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:35:22.34 ID:VgCzamem0

参加申請も終わりいろいろあって
文化祭前日

部室にはハルヒ以外の全員が揃っていた。

澪「みんなちゃんと練習できたみたいだな」

律「あったりまえよお。律さんは天才だからなっ」

唯「がんばったよ〜」

紬「はい。もう完璧です」

長門「最初から余裕」

キョン「たのしみだな」

キョンがそういったときなぜか律はキョンと、澪を除けものにして
メンバーを集合させて内緒話を始めた。どうやら何かの相談らしいが内容はよく聞こえない。


290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:45:19.39 ID:VgCzamem0

内緒話も終わったようで律は言った。長門がその前に猛烈なスピードで何かをつぶやいていた気がしたが。

律「澪、いま有希があなたを学校内ならどこでも歩き回れるようにしてくれたから、キョンくんとお話しておいでよ。
話したいことあったんでしょ?」

澪「なんでそれを? でも演奏もききたい」

律「私たちは親友だろ澪? それに澪達には当日にびっくりさせてやるからいっておいで」

澪「わかった。ありがとう律。じゃあ行ってくるよ」




292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:58:43.64 ID:VgCzamem0

キョン達がでていってから数分後、ハルヒは部室へと飛び込んだ。

ハルヒ「さあ!合わせるわよ」


校庭


校庭の隅の芝生の上に二人は座っていた。はたから見たらキョン一人だが、キョンからみると二人なのだ。

キョン「で、澪先輩話したいことって何ですか?」

澪「うん。お礼を言おうと思って」

キョン「なんか俺しましたっけ?」

澪「やっぱり覚えてないか……キョンはいまから一年前位に覚えていることない?」

キョン「一年前一年前……ああそういえば河原で変な人に三日連続で歌の練習に付き合ったことがありました」




294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 03:40:23.95 ID:VgCzamem0

澪「ば、ばかっそれ私よ」もじもじ

キョン「えっ、あ、そういえば髪長かったですしね」

澪「あれは唯が声からしちゃって、急きょ私が歌うことになったのよ。
でもおかげで助かった。一人じゃだめで、キョンがいたから声がしっかり出せるようになった。
でも、本番で歌えなかったから意味ないんだけど。
たぶんこれだ。自縛の理由。例え律たちが満足できたからって、私がダメなんじゃ意味ないもんね。
でもいい、成仏したってことにしてみんなの前から消えれば、迷惑掛けることもないし。
あ、辛気臭い話をごめん。とにかくいろいろありがとうってことを言いたかったの」

キョン「いいんですか?」

澪「仕方ないでしょ? どうにもならないことなんだし。でもまあ今日は付き合ってくれてありがとう、キョン」

キョン「……」

305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 07:24:44.08 ID:VgCzamem0

文化祭当日


結局なんだかんだでついに当日になってしまった。野外、校内にはいろんな店が並んでいる。
途中から、谷口たちとも合流して遊んでいたわけだが、いかんせんつまらん。
だから体育館ステージ一番前の席にこうして座っている。


キョン(昨日は澪先輩あんなこと言ってたけどいいんだろうか)

ふと昨日のことを思い出した。でも自分にはなにもできないし、無駄なことだと思い込み
頭を左右に振ってから、少しまどろみに落ちた。

308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 07:48:01.36 ID:VgCzamem0

目が覚めたのは自分の頭の周りがすかすかすかすか五月蠅かったからだ。

目を開ければなぜか澪先輩が起きろとばかりにめちゃくちゃジャブをおれに打ち込んでいたところだった。

まあ当たらないけど。

澪「お、キョン。やっと起きたな?」

キョン「う、ん、先輩……なにやってるんですか?」

澪「い、いやどうしたら起きるかなと思ってたら起きてしまったという……それだけ。
それより、あと少しで始まる」

310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 08:23:53.92 ID:VgCzamem0

ステージに目を向けるとアンプやドラムがすでにステージ上に並んでいた。

唯先輩はギターの音を合わせていて微妙な音が館内に響いていた。

長門に関しては既に調整が終わっているのか、それともする必要がないと思っているのかはわからなかったが、
余裕そうな表情を浮かべていた。実のところ、無表情だからわからんがそんな気がしただけだ。

キョン「それよりほんとにいいんですか?」

澪「いいんだよ。わたしも全力で楽しんでみることにしたから、そうすればなんとかなるかもしれないしな」

キョン「そうですか」
そんな事を話していると澪先輩は律先輩にステージ上に呼び出された。

なんか律先輩は澪先輩にマイクの真横でここにいろとか言っているようだ。澪先輩は恥ずかしいから嫌だとか言い始めて
もじもじしている。なんか……もう…………たまりません。


311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 08:25:55.50 ID:VgCzamem0

することがない俺はステージ上の長門に話しかけた。

キョン「おい長門」

長門「なに?」

キョン「澪先輩なんとかならんか?」

長門「そこのところはおそらく大丈夫と言っていい。こっちも計画は立ててある。期待して待っているといい」

キョン「ありがとな、長門」

長門「図書館」

キョン「図書館? ああわかった。また今度な」


313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 08:37:06.94 ID:VgCzamem0

育館には結構な人数が集まり始めていて自分の座った席の後ろをみればびっしりだ。

どうやらもう始まるらしい。

だが、ステージには肝心のボーカルがいない。

俺は背中に嫌な汗が流れた。

突然ステージの幕が閉まるとともに中からざわざわ声が聞こえる。

体育館内も一時的に静まり返った。

314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 08:57:22.27 ID:VgCzamem0

だが、次の瞬間幕が一気に開かれた。

なんと、ハルヒは来ていた。どうやらさっきのざわざわはハルヒの服装についてかもしれない。

当然ライブなのにバニーガールがいては滑稽すぎだ。

俺はため息を漏らしたが、そんなことはもういい。もうこの場にそんなことは野暮だった。

突然長門がステージの上で何かをつぶやき始めた。声が聞こえるわけではないが、口がすごい速さで動いている。

長門「映像の投影を開始、座標登録読み込み開始……展長開始。終了。タイプを乗算に変更、データ融合を開始……」

何をするかと思ったが特に意味はないのかと思ったが、何かがおかしい。

だが周りは異変に気づいてはいないらしい。


315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 08:58:37.82 ID:VgCzamem0

俺からみると、ハルヒがいない。ステージにいるのは長門を含めたENOZのメンバーだけだ。

たぶん、長門が行った詠唱はハルヒの精神を澪先輩のものにしたのだろう。

ハルヒが澪先輩に見えるのは澪先輩が最初からみえる俺たちだけだ。

おそらく周りからみれば澪先輩は最初から見えないのだから、ハルヒがバニーの格好をして出てきたところからなんら変化はないらしい。


316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 08:59:34.47 ID:VgCzamem0

ステージ上

澪「あれっ? 私いったいどうなって?」

律「澪、念願のライブだな」

澪「え? え?」

紬「がんばりましょう澪さん」

澪「ムギまで? 何これ?」

唯「澪ちゃん、おもいっきりだよ」

澪「なんなのこれ? 涼宮さんはどうなったの?」

律「落ち着きなよ澪。ただその子の体を借りてるだけ。私たちの初めてのライブなんだ。
張り切っていこうぜ。曲は去年の。 わかってるよな澪?」

澪「意味ががわからなすぎてちょっとパニックだけど……いくか」

律「やるぞ〜、オ〜!」

澪・唯・紬「オ〜!!」

長門「…………」コク




317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 09:01:14.43 ID:VgCzamem0

澪(ハルヒ)「今日は、集まっていただきありがとうございます。去年のことをご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが
このライブは去年のENOZのものだと思ってください。追悼ライブなどではなく、ENOZそのもののライブです。
どうかお願いいたします」

澪(ハルヒ)「それではお聞きください。私たちENOZで【Don't say “lazy”】」

328 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 11:59:56.18 ID:VgCzamem0

それはもう……なんというかすごかった。

歌っている先輩たちの表情もとても楽しそうで。

始まりとともに歓声が上がり、終始みんなのテンションは上がりっぱなしで、

いざ曲が終わったらアンコールの嵐だ。

曲が終わってからも余韻が残っていて、まだ演奏してる感じだった。

329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 12:00:45.23 ID:VgCzamem0


律「今のは私たちが去年披露しようと思ってた曲です。一年もお待たせしてしまいました。
本当にごめんなさい。でも、ため込んでいた何かを今日この場で披露できたことでいま、気分は最高潮です」

紬「本当に長かったです。今までつらいこともありましたが、今があってよかったと思います」

唯「これが私たちが二年間でやってきたことです。なんだっけ? 洪大全?」

澪(ハルヒ)「集大成でしょ唯……。あれ?」

会場にはわらいが巻き起こった。


330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 12:02:28.66 ID:VgCzamem0

そのとき俺の目にはハルヒと澪先輩が分裂したように見えた。

いや見えたんじゃなかった。長門のあれが解けたのだ。

完全に解けてしまったらしい今ステージ上には確かに6人いる。

ハルヒ「メンバーを紹介します。

ドラム、田井中律

ギター、平沢唯

キーボード、琴吹紬

アシストとして

ベース、長門有希

そしてわたし
ボーカル、涼宮ハルヒ」

331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 12:03:32.83 ID:VgCzamem0

ハルヒがそういい終わったとき澪の姿が消えた。

ハルヒ以外のメンバーがそれに気づき長門を見るが長門は私じゃないとばかりに首を振っている。

ハルヒ「それではアンコール曲としてこの曲で最後にしたいと思います。

それでは聞いてください。【God knows】」




こうして文化祭ライブは大盛況で幕を閉じた。




332 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 12:04:40.95 ID:VgCzamem0

ここからは後日談になるのだが。

メンバーが演奏を始めたとき、

その曲も十分良かったのだが、二番目のサビあたりで変化が起きた。

ハルヒの立ち位置のちょうどとなりあたり、澪のいたはずの位置に、光の球体がが発生しているのだ。

それは、メンバー全員の体を縫うように通り抜けキョンの周りを回ると再びステージへ戻り、
ハルヒの頭上ではじけて虹となり館内すべてを覆った。まるですべてを優しく包み込むかのように。

そしてハルヒ以外のバンドメンバーは悟ったのだった。

333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 12:06:29.65 ID:VgCzamem0

ハルヒは言っていた。

「なんかライブのとき変だったのよね。頭の中でありがとうとか聞こえてきた気がするのよ」

まあおれも似たようなことが聞こえていたが、あえてそのことは言わない。

そしてハルヒのもとにENOZのみなさんが礼を言いに来た。

長門にも礼を言ったらしいのだが黙って俺たちの教室を指差しただけだったらしい。

俺はハルヒの隣にいたが、みんなが礼を言うのに対してハルヒはただ頷くだけで終始ぎくしゃくしていた。

いつでも軽音部に入ってね、遊びに来てねなど言う誘いに対してあいまいに返事をしたハルヒはどこかへ行ってしまった。

おれも一応いろいろ感謝されたけど……。まあ悪い気はしないな。

それじゃあどこかでうやむやな気持ちでいる我らが団長を探しに行くとするか。

それではまたってだれに言ってるんだ俺。


334 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 12:07:42.81 ID:VgCzamem0

中庭の木の下にハルヒは寝ころんで空をながめていた。

「何してるんだこんなところで?」

「見てわからない?」

そう返すこいつに俺はそのうやむやな感情の原因をこれから教えてやろうと思ったが、
いずれはわかるだろうとその隣に腰を下ろした。

そこに一筋の風が吹き抜けて行った。


335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 12:09:28.94 ID:VgCzamem0

軽音部部室

バンドメンバー三人は紅茶を飲んでいた。

唯「やっぱりムギちゃんも、律ちゃんも聞こえたんだね?」

紬「はい。頭に流れ込む感じで」

律「あはは、澪らしいな」

唯「澪ちゃん……ちゃんと天国行けたかなぁ」

律「澪のことだから大丈夫だ」

紬「私もそう思います。ではちょうど一年ですし今日はみんなでお墓参りに行きましょうか?」

律「そうするか」


336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 12:11:39.14 ID:VgCzamem0

唯「あちょっと待って。そのまえに〜♪」

唯は律のクッキーに手を伸ばした。

律「ちょっと唯。それ私んのだろ。返せ〜」

唯「いや〜。律ちゃんは最近太ったからだめだよ〜」

律「っげ! なぜそれを?」

唯「え? 律ちゃんほんとに太ったの?」

律「なに? まさか唯カマかけたのか?」

紬「フフフ、あらあら」


337 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 12:15:11.77 ID:VgCzamem0

唯「よし、律ちゃんの動きが止まった今がチャンス!! 最後のい〜っこ」っぱく

律「あ〜こらっ唯。かえせ〜!!」

唯「えへへ〜もう飲んじゃった〜」

律「くっそ〜。食べ物の恨みはおそろしいんだぞ!! 唯〜まちやがれ〜」

唯「きゃ〜」


そんな二人を横目に紬はふと澪のベースを見つめた。

それはみんなを見守るかのようにそこにいた。

それは今の光景に『行くなら早く墓参りに行け〜』とでも突っ込みを入れているかのように。

そして今でもそこに彼女がいるかのように。




さんさんとふりそそぐ日の光をはじき返して力強くそこに輝いていた。








ツイート

メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:ハルヒ「今からキョン専属のメイドを決めるわ!」