キョン「涼宮ハルヒの憂鬱・・・?」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 18:42:20.16 ID:uvXzgtJW0

ssのネタが思い浮かんだので作ってみました。
読んでいただけたら嬉しいです。
つまんなかったらすみません。

少しだけ書きためたので、前半はサクサク投下できそうです。


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 18:44:22.69 ID:uvXzgtJW0

学校から帰りいつも通り夕食を終え、自室でくつろごうかと思った時に携帯電話が鳴る。
こんな時間に電話をかけてくるなんて、どうせハルヒだろうと思い画面に目を向ける。
表示された画面に予想とは反してハルヒの名はなく、着信画面にその名前があるのは珍しい人物であった。

「話がある。今からうちに来て欲しい」

と告げられ、俺はすぐさま家をでる準備に取り掛かり、5分もしないうちに家を出た。
珍しくあいつから電話がかかってくるってことは・・・
きっとまた良くないことが起こるんだろうな、などと思いつつ自転車を走らせた。
なぜ俺が理由も告げずに呼び出されるような理不尽な頼みを素直に聞き入れ、
行動に走っているのかというと、電話の主には今までとてもお世話になっており、
時には命までも救われた経歴があるからだ。
そして、一昨年の12月18日以降できる限り彼女の力になると心に決めている。
しかし、その考えとは裏腹に俺なんかが彼女にしてあげられることはほとんどなく、
逆にそれ以降もお世話になりっぱなしなのは言うまでもない。


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 18:45:35.45 ID:uvXzgtJW0

だからこそ今回の電話は、ため息混じりで家を出たものの悪い気はしていない。
彼女の頼みとあれば他の何事を差し置いてでも最優先すべきことなのだ。
しかし、わざわざ電話で呼び出してくるとは珍しい、何か異変がおきたのか?
また朝倉涼子みたいなのが現れたのか?それとも異世界人でも攻めてきたのか?
もしかすると、そんなのは杞憂でただ単純に遊びに誘ってくれているだけなのか。

・・・まぁさすがにそれはないか。
さすがに2年近くSOS団の活動をしていると、
世界の改変やら未来人からの依頼やら宇宙人同士のいざこざやらで、
常人では考えられないくらいの経験値も持っており、
今回の電話があってもこうやって平然としていられるわけである。
やれやれ、俺も普通じゃなくなっちまったのかな。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 18:46:51.92 ID:uvXzgtJW0

などと考えているうちに彼女のマンションに到着し、
エントランスで部屋の番号を押す。

「入って」

という彼女の声と共に自動ドアが開き、
エレベーターを使いつつ部屋向かう。
 部屋をノックし、ドアが開けられる。
そこにはいつもセーラー服を纏っているとても愛らしい宇宙人っ子長門有希の姿があった。

「よう、長門から電話なんて珍しいな。一体何があったんだ?
また他の宇宙人が攻めてでもきたのか?」

などと玄関の前で冗談交じりに尋ねてみる。

「入って」

相変わらずの無表情かつ平坦な口調で喋る長門。
だが、どこか微笑んでいるようにもみえる。
昔に比べ随分と感情がでるようになった。
まぁその違いは俺くらいにしかわからないんだけどな。
2年前の長門とは違いほんの1ミリ程だが表情を作っている。
昨年までは1ミクロンだったんだから大した進歩だろう。1000倍も違う。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 18:48:08.77 ID:uvXzgtJW0

部屋へ招きいれられ、出されたお茶を飲む。
我が団のお茶くみ係兼副々団長兼書記の朝比奈さんのそれとは違った渋いお茶が特徴だ。
うむ、たまにはこういうのも旨い。

「それで、今日は一体なんのようだ?」

長門は真剣な表情となり。と言っても見た目は全く変わらないが。
すっと立ち上がり、隣の部屋から数冊の本を持ってきた。
なんだ?またオススメの本でも貸してくれるのか?
それだったら部活で渡してくれてもいいだろうに。

そして、俺はその本のタイトルを見て驚愕した。
そこに書かれていたものは・・・


   『涼宮ハルヒの憂鬱』


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 18:50:13.00 ID:uvXzgtJW0

おいおい。何の冗談だこれは?
あいつは本でも書いたのか?
よく出版社が刷る気になったもんだ。
長門の方に目を向ける。

長門はもっとよく見てみろと言わんばかりの視線をこちらに向けている。
「著者 谷川 流」・・・?
ハルヒが書いたんじゃないのか。ど
ういうことなのか頭で整理できない。
ページをめくって本を読んでみると、そこにはあたかも俺が書いたような文章が並べられている。
いや、俺が書いたようなとは語弊があるな。
俺はこんな上手な文章書けないし、俺の知らない単語まで使われている。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 18:53:16.79 ID:uvXzgtJW0

さらに読んでみる。
その『涼宮ハルヒの憂鬱』には忘れもしない1年の1学期、
俺たちSOS団の成り立ちと閉鎖空間内での出来事が書かれていた。
これは俺にしか知らないはず。なぜこんなものがある。
俺が書いたのか・・・?

そんなわけがない。
俺が書いたのなんて1年くらい前にハルヒに恋愛小説くらいのもんだ。
それに谷川ってだれだよ。谷口の間違いじゃないのか。
いやいや、俺以上に学力が残念な奴がこんな本なんて書けるわけがない。
自分でも何を考えているのかよくわかない状態で混乱している中、長門が口を開いた。

「こことは違う平行世界が構築されている。
そちらの世界がこちらの世界と同期されようとしている。」


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 18:56:10.52 ID:uvXzgtJW0

…相変わらずのことだがどういうことかさっぱりわからん。
がよくないことであることは間違いなさそうだ。
俺の理解不足を感じとってか長門はセリフを継ぎ足した。

「その平行世界に私達は生命体として存在しない。
私達は谷川流が考え出した架空の人物。
その世界とこちらの世界が同期されようとしている。
その原因の一部が涼宮ハルヒ-」

また、ハルヒか。久々にとんでもパワーが炸裂したな…。
ふと、最近ハルヒにおかしいところはなかったかどうかを思い出してみる…。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:02:01.00 ID:uvXzgtJW0

時は少しだけ遡り、三日前。
俺は1ヶ月程で2年生も終わりで、
3年生に進級できるか不安いっぱいではあるが
、いつも通りの生活を送っていた。
教室で突然ハルヒが言い出したのは、

「キョン、今日はちょっと早めに部室に来なさい!いいわね!」



そして俺はハルヒの言いつけを守り、
足早に文芸部兼SOS団の部室に向かった。
部室へ入るとハルヒの他に
いつも通り座って本を読む長門と
相変わらずの笑顔で微笑んでいる超能力少年古泉一樹の姿があった。

「キョン、遅いわよ!早くしないとみくるちゃんが来ちゃうじゃない!」

もうこいつの怒鳴り声も聞きなれたもんだ。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:05:14.22 ID:uvXzgtJW0

「では、今日の会議は朝比奈さんに関わる話ということでしょうか?」

相変わらずのスマイルで聞く古泉。

「そうよ!みんないい?
みくるちゃんの送別会やるからそれぞれ企画して意見を持ってくること!
くれぐれもみくるちゃんには内緒よ!いいわね!?」

そうなんだ、我々SOS団の巨乳&メイド&未来人の
我がアイドル朝比奈さんはもうすぐ卒業式を迎えようとしていた。

それは分かってはいたのだが、SOS団のメンバーから一人欠ける姿が想像できないし、
したとしてもそれを考えるたびに切なくなるばかりで考えないようにしていた。
きっと誰かがなんとかしてくれるだろう、
朝比奈さんが留年することだってあるだろう、
うんそうに違いない。

なんて現実逃避していた。

しかし現実は朝比奈さんが卒業する方向へ向かっていた。
ハルヒの口から送別会なんて単語が出たことによって、それを実感せざるを得なかった。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:10:19.93 ID:uvXzgtJW0

朝比奈さんの卒業を迎える切なさと戦いながら、
どんな送別会にしたら喜んでくれるかを考えなければならないのであった。

いつもならハルヒが「もう私の頭の中で全部考えてあるから」
なんて言いだすのに、どうも今回は違うらしい。

「だって、みくるちゃんの為の大事な会なのよSOS団全員で決めないでどうすんのよ!」

ハルヒの考え方も随分まともになったもんだな。
昔だったら「私に任せとけば間違いない」とか、
もしくは面倒くさくて「あんたがやるのよ」とか言ってきた自分勝手主義・唯我独尊の
団長様がこのような提案をしてくるとはね。

俺にとっては嬉しい限りである。
だが、その反面それほどまでに朝比奈さんの卒業がハルヒにとって大きいものだってことだ。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:11:59.39 ID:uvXzgtJW0

古泉が最初に口を開いた。

「皆でゲームでもしませんか、思い出に残るような。
一見普通のことのようですが、シンプルな方が朝比奈さんも喜ばれるのでは?」

うむ、一理ある。
今まで散々朝比奈さんはバニーにさせたり巫女にさせたり、
変な映画に出演させられたりしてきたからな。
最後くらい普通の遊びがいいだろう。

「何でそんな今更ありきりなことをしなきゃいけないのよ!?
もっと一生忘れないくらい思い出に残ることをしましょ!
例えば、みくるちゃんのテレビ出演決定!みたいな!」

どこからそのとんでも発想が出てくるのかね。
ただでさえ朝比奈さんは他の未来人にも狙われるかもしれないという状況の中で
常に穏便にことを進めたいと思っている人なのに。
もっと朝比奈さんが喜びそうなことしてあげたらどうだ。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:21:12.97 ID:uvXzgtJW0

「じゃあその普通でみくるちゃんが喜ぶことってなんなのよ!?」

とハルヒの問いに少し考えて、

「そうだなハルヒがその日一日朝比奈さんの代わりにメイド兼お茶くみ係になるっていうのはどうだ?」

そこで「ふざけるな」とでも一喝されるのかとおもったが
予想に反して、手を顎の辺りにもってきてう〜んと考えている。

「私は団長だからダメね。でもその案はいいわ!
たまにはメイドにも休息は必要よね。
有希、その日は有希がメイドになりなさい!」

団長だからダメの意味がわからない。
長門の方に視線を向けると、
長門は無言のままだが困惑の表情をしていた。
この微妙な変化は俺にしかわからないはずだ。
そんな長門を放っておくこともできず、俺が止めようと思ったら、

「いい」

と長門がコクリと頷いた。
まじかよ、長門のメイド…。
いかんいかん、どういうわけか一昨年の12月から長門を意識しているような気がするな。
でも長門のメイド姿というのは楽しみだ。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:26:59.07 ID:uvXzgtJW0

「キョン、何いやらしいこと想像してるのよ!変態。」
と言わんばかりのハルヒの鋭い視線で睨まれているのを感じていると
ガチャ、バタン

「お、遅くなってすみません…今日は当番だったので、そのう…」

と、朝比奈さんが来てしまった。
まだやっと少しは意見が出てきただけと言うのに…

朝比奈さんが来てからは通常通りの活動に戻り、
その日は学校をから素直に帰宅した。

その夜、電話でハルヒから朝比奈さんの送別会の内容を考えてくるようにと指令が下った。
まぁ言われんでも考えるさ。
俺も朝比奈さんには喜んでもらいたい。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:31:19.59 ID:uvXzgtJW0

次の日の朝、俺はいつも通りの学校へ行き、
授業を受けながら朝比奈さんの送別会について考えていた。
ホームルーム終了後、相変わらず後ろの席のハルヒが

「何かいい案うかんだ?
私は色々あるわよ〜、
みくるちゃんの可愛さを全校生徒の前でお披露目するとか、
ミクル伝説Episode Xとかね!」

それじゃいつもと変わらんだろ。
大体なんだそのXってのは、
秋に「長門ユキの逆襲」を上映したばかりなのにまだ足りないのか。
それにそんなことを朝比奈さんに言ったらまた泣いてしまうに違いない。

「じゃああんたは何を考えたっていうのよ」

実は俺はというと昨日の長門のメイド話が出て以来アイデアは思いついておらず、
メイド服を着た長門が朝比奈さんにお茶を入れている妄想が頭から離れなかった。
若い青年男子というものは恐ろしい。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:35:22.76 ID:uvXzgtJW0

「いや、特にはないな」

「ふん、まぁいいわよ。ちゃんと考えときなさいよ!もう時間もあまりないんだし!」

「確かにあまり時間はないな。
それに朝比奈さんが卒業か…寂しくなるな。
ずっと今までのように一緒にいれたらいいのに。」

俺の心に思っていたことがつい言葉に出てしまった。
それに同調するかのようにハルヒは、

「そうね、寂しいわね…」

と一言つぶやいた。
この俺の会話が原因なのかは不明だが、
放課後からある違和感が残った。
1年の夏休みをループしていたような、
冬の合宿で遭難した時のような、
意識していないと忘れそうなそんなちっぽけな違和感だった。
あえてこの違和感を言葉にすると、
常に誰かに見られているような、そんな感じだ。

この2年間の経験上、俺の違和感は信頼できるからな。
よくないことが起こらなければいいが・・・

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:37:35.61 ID:uvXzgtJW0

----って、起こってるし。

回想から戻ってきた俺は、
それが原因か…と思いため息をついた。
でもなんでハルヒが寂しがることとで平行世界なんだ?
なんで小説なんだ?
それに俺は平行世界だとか長門の言っていることも半分も理解していない。

仕方ない、あまり積極的に会いたくはないがあいつを呼ぶか。
ハルヒの精神分析はあいつの専門だ。


数十分後、急に呼び出されたことに文句も言わずに、
それどころか待ってましたと言わんばかりに、

「おまたせしました。遅くなってすみません。どうしました?
何かよくないことが起こったのですか?」

「どうしたもこうしたもハルヒの精神はお前の専門だろ。
今現状がどうなってるのかこっちが聞きたいね。」


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:44:41.01 ID:uvXzgtJW0

「やはり何かあったのですね。
実は我々機関も涼宮さんの微妙な精神の変動には気づいています。
これはお察しの通り朝比奈さんの卒業による寂しさからくる不安定な精神です。
しかしそのことで特に閉鎖空間が多発するようなことはありませんし、
特に涼宮さんの能力が発動した形跡はみられないのですが…。
詳しくお話していただけませんか?」

相変わらずのおしゃべり好きは視線を長門に向ける。
長門は先ほどの『涼宮ハルヒの憂鬱』を渡し、

「こことは違う平行世界が構築されている。
そちらの世界がこちらの世界と同期されようとしている。
その平行世界に私達は生命体として存在しない。
私達は谷川流が考え出した架空の人物。
その原因の一部が涼宮ハルヒ」

と先ほどと同じ長門の説明が入る。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:50:55.78 ID:uvXzgtJW0

古泉は渡された小説をペラペラとめくりながら、

「なるほど、涼宮さんは朝比奈みくるがSOS団から欠員することにより切なさや寂しさを覚え、
この時間がずっと永遠ならばいいと思った。
そこで我々のこの存在を架空のものとすることで永遠の存在を図る。
と言ったところでしょうか…。」

一瞬筋が通ってそうだが、それは違う。
ハルヒは自分の現実が現実じゃないなんて思わないだろう。
もし現実じゃないとするくらいなら夏休みみたいにループにした方がまだ気分がいいだろうからな。
しかし今となってはループすらも起こりそうもない。

「ええ、それは僕もそう思います。
それに涼宮さんの作り出した世界なら
我々機関がわからないはずはないんです、
しかし不安定な精神は観測できてもそれ以上は分かっていない。
つまりその平行世界は涼宮さんの作り出したものではないのです。」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:52:38.38 ID:uvXzgtJW0

「で、その平行世界というのなんなんだ?」

「あれ?前話しませんでしたっけ?」

とぼけたような顔をする古泉。

「しらん」

「パラレルワードのことですよ。
今我々がいる現実の他に別の現実が存在するのです。
分かりやすく言うと…そうですね、
以前2年前の5月にあなたと涼宮さんが
閉鎖空間に閉じ込められたとき場合によっては
世界が改変されていたかもしれません、しかし実際は変わらなかった。
改変されなかった世界とされた世界、
この2つがあったとしたらそれらは平行世界の関係になるのです。
さらに言うなら、もしこうだったらという仮定の話をすれば
無限のパターンの現実が平行世界としてあることになります。」

「なんとなくわかる」

以前にも聞いたかも、と思いながらも話を聞く。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 19:59:38.39 ID:uvXzgtJW0

「今回は我々の『現実』と
我々が小説の中の登場人物である『現実』
が同期される、つまり混ざってしまうということです。
これは脅威ですよ。」

なるほど、俺たちの存在する現実と存在しない現実が混ざるわけだからな。
だがハルヒにこんな小説が出てることを知ったらまた目を輝かせて喜ぶだろうな。

「話はそんな単純なものではないようですよ。
この同期と言う意味ですが、ただ単純に混ざるのではなく、
上書きされたとしたらどうします?
我々の存在は実は嘘っぱちで空想の人物となりこの世からいなくなってしまう。」

それは困るな。
俺の現実はここで存在が消えるなんてまっぴらだ。

だがちょっと待てよ、この現象を古泉はハルヒの力じゃないと言った。
しかし長門は原因の一部はハルヒによるものだと言った。
どっちが正しいんだ?


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/04/06(月) 20:02:29.09 ID:uvXzgtJW0

「おそらくどっちも正しいんでしょう?」

古泉は長門の方に視線を向けると、長門はコクリと頷いた後、

「涼宮ハルヒの精神が不安定な状態であることを利用して
情報を変換しようとしている可能性がある。
その何者かは不明。同期された後の世界も不明。
解析、予想は不可。」

「つまりは誰の仕業かも不明、
今後どうなるかは不明ってことですか…。
それはそうと長門さんはどのようにしてこの小説を手に入れることができたんのですか?」

「現在、2つの世界は同期されている途中にあり、
不定期に局所的に発生している空間の歪から一部の情報を交換することができる」

「次はいつその空間の歪とやらができるかはわかりますか?」

「正確にはわからない。でも予測は可能」


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 20:09:21.45 ID:uvXzgtJW0

「では、我々機関がその予想を元に空間の歪みを調査しましょう。
それで向こうの世界の情報が何か得られるかもしれない。
協力してくださいますか?」

古泉の問いかけに無言で頷く長門。

「ありがとうございます。
ではこうしてはいられません、早速取り掛かるとしましょう。
長門さん、機関へ案内します」

すっと立ち上がる二人。古泉が俺の方へ向いて

「あなたにはもっと大役をお願いしてもいいですか?」

と今日一番のスマイルで言う。言わんとすることはわかるんだがな。

「あぁハルヒを寂しくさせるなってことだろ」

「快く引き受けてくれてありがとうございます」



そうして、俺は自宅に帰ることになり、古泉と長門は機関へ向かって行った。
もう夜も遅く俺は家に帰るなりすぐ床についた。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 20:18:55.89 ID:uvXzgtJW0

次の日もハルヒは真剣に朝比奈さんの送別会の企画を考えているようで、
授業が終わるたびに「これなんてどう?」と尋ねてくるが、
どれも朝比奈さんが聞いたら
「こんなのできませ〜ん」と泣く子猫のような愛らしい姿が目に浮かぶものばかりだ。

ハルヒは「私だったら絶対嬉しいのに」何て言っているが
ハルヒと朝比奈さんの喜ぶ基準は全くの逆と言っていい。
ここは俺も真剣に考えなければなるまい、朝比奈さんの為に。
それが世界の改変の役に立つかはわからないけどな。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 20:20:44.83 ID:uvXzgtJW0

放課後、朝比奈さんが来る前の集合で意見を出し合うが、
なかなか意見がまとまらず、
結局朝比奈さんが来て時間切れというパターンが続いている。

帰り道にハルヒが

「もう!早く決めないと時間ないんだから!
明日決まらなかったら帰りに別のところへ集合してでもやるわよ!」

「わかったよ」

と適当な返事をしてやや急ぎ足で帰路についた。

昨日の世界の同期とやらが気になって、なかなかいいアイデアが浮かばない。
長門と古泉がうまくやってくれているといいが。


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 20:25:59.70 ID:uvXzgtJW0

自宅につくとさっそく電話があった。古泉からだ。

「おもしろい情報が得られました。
自体はそこまで深刻でもなさそうです。
説明したいので今から長門さんのマンションに来ることはできますか?」

「あぁ行く。ちょっと待ってろ」

長門の家に招き入れられた俺は、
制服姿の古泉が部屋の中にいるのに気づく。
まさかこいつずっと長門と二人きりだったんじゃないだろうか。
となにやら怒りがこみ上げてくるのは何故だろう。

部屋の中央のちゃぶ台に目をやると昨日までそこになかったものに目が行く。
それは一台のパソコンだった。
すると古泉が

「えぇ、実は見せたかったのはそれです。
このパソコンのネットワークを、長門さんにお願いしてもう一つの世界とつなげてもらいました。」

さすが長門だな。


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 20:28:42.90 ID:uvXzgtJW0

「全くです。
そして長門さんと僕とが学校に行っている間に機関の者がネットワークを通じて情報を集めました。
その結果面白いことがわかったのです」

もったいぶってないで早く言え。
長門に出されたお茶を口に運ぶ。うむ旨い。

「んふ、実はですね。
向こうの世界で『涼宮ハルヒシリーズ』は物凄い人気のある読み物のようです。
アニメ化までされているようです。光栄だと思いませんか?
我々の苦労も誰かが見ていてくれているんですよ。
もちろんあなたの苦労もね」

古泉は『涼宮ハルヒシリーズ』のホームページを
開きながら誇らしげに喋るが、それは喜んでいいのかわからんな。

「そこで機関が様々な情報…と言っても向こうの世界ではウェブ上で流れていることばかりですが、
それを取得しました。そこで一つ目を見張るものがありました」

だから勿体つけるな

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 20:33:01.85 ID:uvXzgtJW0

「それは2ちゃんねるという掲示板なのです。
それはこちらの世界にはないくらい普及しており、
かなり大型の掲示板です。
特にその中でもVIPと呼ばれる場所にかなり人数がいます。
そしてそこでも『涼宮ハルヒシリーズ』の話が持ち上げられています。」

ふむ、掲示板くらいならこっちの世界にもあるから言ってることは分かる。
掲示板で話題にあがるのも、人気小説、アニメなんだから普通だろうな。

「しかしこちらの世界ではとは違う文化があるようですね。
あちらの世界には2次元の女性を嫁にしたいという傾向もやや見られます。
どういう考えでそうなるのかは理解し難いですが、
そういう性質の方もいらっしゃるようです。
その人たちは当然、涼宮さんや朝比奈さん、長門さんを嫁にしたいと思っているようです。」


なんなんだそれは…朝比奈さんはわかるが、
ハルヒを嫁にしたがる人がいるのか。
長門にいたっては宇宙人ということ承知の上でか?
という俺も長門には若干そういう思いがないこともないが。

しかしどこぞの異世界の分からん連中に大事なSOS団のメンバーを嫁にされては困る。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 20:35:41.58 ID:uvXzgtJW0

「さらにもう一つ面白いことがあります。
この掲示板では我々を登場人物として、
谷川氏でない方が2次創作としてノベルを書くとういうSSと呼ばれるものが一部の間で流行しています。
そして見つけたのこのスレです。見てください」


キョン「涼宮ハルヒの憂鬱・・・?」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1239010940/


「っ!」
…そこには俺がこんな境遇に陥っている有り様が赤裸々に書かれているではないか!
なんだこれは!まさかのリアルタイム!?
じゃあなんだ?俺はこいつの指示通りに動いているってのか。
それともこいつが俺の行動を文章にしてるだけなのか。


「それはこちらの世界では後者で、あちらの世界では前者なのでしょう。
平行世界とは普段交わることは絶対にありえませんのでこのようなことは起きないはずなんです。」

とういうことは俺が考えていることは向こうの世界では文章にされていて、
ごく一部だけとはいえ、見ているっていうのか。
周知だけに羞恥ってレベルじゃねーぞ。
長門のメイド姿を想像したことや朝比奈さんの卒業と共に俺の○○も卒業したいとか、
もしかしてばれているのか?
いかんいかん、もっと真面目なことを考えなくては・・・う〜ん、ダメだ!エロしか想像できん!

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 20:37:53.79 ID:uvXzgtJW0

「気持ちは大変よくわかりますが落ち着いてください。
考えれば考えるほど悪い方向に行ってしまうかと思います。
別に見られていると言っても別の世界の方達じゃないですか」

古泉の一言で我に帰った。
俺としたことが取り乱してしまったな。
しかし、どんなに経験値をつもうとイレギュラーな事態にはなかなか対応できないものである。

「それで結局、こういう掲示板があるからなんだっていうんだ?」

「涼宮ハルヒの感情と彼らの願望が同調したことにより、
世界が同期されそうになっている可能性が高い。」

と、長門の説明を付け加えるように古泉が

「つまり、世界を改変されそうになっているのは
あちらの世界で涼宮さん達を愛してやまない彼らが原因だったのです。
そして恐らくは彼らも涼宮さんと同じく無意識でこのよう現象を引き起こしているのです。」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 20:45:50.34 ID:uvXzgtJW0

やれやれ。これは解決方法なんてあるのか?
異世界の奴らの考えてることなんてどうすりゃいいんだよ。
ほら見ろ、さっそく長門が嫁にされてるぞ。
ネット上に流すか?「SOS団は誰の嫁にもなりません」ってな。

「その程度のことでは無理でしょう。
第一、その書き込みが、まさか我々本人がしているとは誰も思わないでしょうからね。
ここはやはり・・・」

「ハルヒになんとかしてもらうしかないか・・・」

明日からやることは一つ、朝比奈さんの送別会を、
朝比奈さん本人の為だけではなく、
ハルヒにとっても寂しさを楽しさで塗り替えられるくらいの良いものに仕上げること。
それが一番の近道だと思った。


そうして、長門の家を出て自宅に帰り、
真剣に送別会について考えた。
今までこんなにSOS団の行事に力を注いだことがあろうかというくらいに。


が、次の日の放課後、自分の意気込みとは反対に(良い方向に)思わぬ急展開を迎えた。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 21:05:18.89 ID:uvXzgtJW0

放課後、朝比奈さんより早めに文芸部室に到着し、
昨日までと同じように送別会について話し合っていた。

ガチャ、パタン
「みなさん・・・揃ってますか?」

やや遅れ気味に部室へと姿を現したばかりの朝比奈さんは
突然そんな意味ありげなことを言い出した。

皆の視線が集まり、ちょっとビクッっとなる朝比奈さん。
緊張しているようだ。

「あ、あの・・・。実は今日は皆さんにもらって欲しいものがあるんです・・・」

「あら、なぁに?」

なんだろうと、意外そうに返事をするハルヒ。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 21:14:35.58 ID:uvXzgtJW0

「こ、これなんですけど・・・」
団員1人1人に手渡しで渡されていく。
これは・・・アルバムか。

そこには今までSOS団の活動のあらましが写真になって綴られていた。
そして、写真の一つ一つに元書道部とは思えない丸っこい字で彼女の思いがよせられていた。

ただの岩の写真ですら、

「これは、キョン君と一緒に動かした岩。
最初はチョコレートを隠すためだけに来た場所だったんだけど、
まさかもう一度後で二人で来るとは思いませんでした(はぁと
あ、でもキョン君にとっては時間が逆ですね」

など、
俺へ対してのメッセージが含まれていた。
おっと、これ以上は読ませないぞ。俺だけが見るものだからな。

恐らく、団員それぞれに向けて書いてくれたのだろう。
ハルヒにはハルヒ宛ての。
長門に対してはどんな文章だろう?
朝比奈さんは未だに長門が苦手なようだからな。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 21:21:26.39 ID:uvXzgtJW0

正直に言うと、俺はこの時涙が出そうになった。
2年間という長いようで短かった、
だがその中身は人生の一生を費やしても経験のできないようなことばかりの濃縮された2年間だ。
その活動の内容を鮮明に思い出させてくれた。そして朝比奈さんの俺に対する気持ち。
この2年間で、いや人生で一番幸せだと思った瞬間だ。

朝比奈さんの思いの込められたこのアルバムに価値をつけようものなら、
家にあるもの全部売り払っても足りないくらい、
いやお金では決して買えない大切なものをあらためて感じさせられた。


SOS団に入った頃の俺よ、おまえはそこに入って正解だ。
これから殺されそうになったりもするが、そこがお前の居場所なんだ。
と、写真に写った昔の自分に向けて思いをとばしてみる。


(しかし、5人同時に写っている写真があるのはどういうことだろう?
もしかしてタイムトラベルしてまで撮影してくれたのか?)

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 21:23:32.44 ID:uvXzgtJW0


ハルヒを自分のあてに綴られたアルバムに一通り目を通した後、

「実はね、もうすぐみくるちゃんの送別会をやろうと思っていたの。
私達みんなで良い会にしようと思って意見を出し合ってたんだけど、
なかなか決められなくて。
みくるちゃんをあっと驚かせようと思ったんだけどね。
でも、やっぱりみくるちゃんも一緒に考えましょう!
だって、あなたもSOS団の一団員なんですもの!
団の行事はみんなで考えみんなで実行するのよ!」


一瞬、きょとんとした朝比奈さんは、

「はい」


誰もが虜にされるような、今までで一番かわいいらしい笑顔でそう答えた。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 21:31:17.68 ID:uvXzgtJW0

その週の土日に無事送別会は行われた。
ありがたいことに長門のメイド姿も拝ませてもらった。
朝比奈さんのメイド姿もこの世のものとも思えないくらい可愛いが、
長門が着るメイド服も言葉では言い表せない魅力があったな。
メイド服で静かに立っている姿はまるで絵の中に描かれた天使の様だった。
今更ながら、あっちの世界の「2次元を嫁にしたい」ってのが分かる気がした。



その後、長門の話によれば、
例の平行世界とはこれ以上ひっつくことはないらしい。

朝比奈さんのお陰で世界が救われたということだ。
俺たち3人のやってたことはなんだったんだってことになるが、
それはそれで俺は満足していた。



ハルヒからあんな言葉が出たことが凄く嬉しかったからだ。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 21:36:34.14 ID:uvXzgtJW0



 送別会でハルヒが朝比奈さんに言った言葉----



「いい、みくるちゃん?あなたは卒業してもSOS団の団員なんだからね!
きちんと自覚しておくように!
ちゃんと定期的に連絡いれるのよ、もちろん私からもするわ。」


「私達の友情は学校の違いなんかには影響されないんだから!」




友情-----か、ハルヒがそんなこと言うなんて最初で最後かもしれませんよ、朝比奈さん。

俺はハルヒの意外な発言に泣き出してしまった朝比奈さんのその顔をこれから一生忘れることはないだろう。
心の底から嬉しそうなその涙を。


「これからもよろしくお願いしますね。」
誰も聞こえてはいないだろう声でそう呟いた。



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100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/06(月) 21:58:50.68 ID:uvXzgtJW0

あとがきですが、


いつも突然現れる奇怪な事件を
今回は「みくるとの友情によって解決される」
というのが書いてみたくて考えました。

ssのタイトルは「涼宮ハルヒの友情」にしようかと思ったのですが、
落ちが分かってしまうので使えませんでした。


読んでくださった方ありがとうございました。

では、失礼します。



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