佐々木「君は世界を救うスーパーヒーローに憧れていたんだろう?」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 14:50:19.89 ID:J1ZNd3cmO

prrrr

prrrr

キョン「!」

キョン「珍しい事もあるもんだ。佐々木か」

カチャ

佐々木『やぁ』

キョン「よう、久しぶりだな。どうした」

佐々木『つれないな。用件だけで済ませたいのかい』

キョン「そういう訳でもないさ。元気にしてたか」

佐々木『ああ、僕は変わらないよ。君はどうだ』

キョン「相変わらずさ。毎日どこぞの暴走団長に引き連れ回されてるよ」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 14:52:08.62 ID:J1ZNd3cmO

佐々木『羨ましい事だ。僕はたいして代わり映えのしない平々凡々な日々を送ってるよ』

キョン「俺はその生活が羨ましいね」

佐々木『変わらないね、一歩引いた立場を好むのは』

キョン「すすんで主役を買って出たいとも思わんしな」

佐々木『くつくつ。君らしいよ。時にキョン、今週末は何をしている?』

キョン「土曜日は団活だな。日曜日は暇だが。お前から誘ってくれるとは珍しい」

佐々木『まだ誘いはかけていないが、図星だよ。日曜日会わないか?』

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 14:54:47.57 ID:J1ZNd3cmO

キョン「良いぜ。積もる話もあるしな」

佐々木『僕もだよ。君に是非聞いてもらいたい話がある』

キョン「よし、じゃあ日曜日に。迎えに行こうか?」

佐々木『いや、遠慮しておこう。君に足労をかける訳にもいかないしね』

キョン「俺は構わないけどな…。じゃあ駅前の喫茶店でどうだ」

佐々木『うん、わかった。少し早いが朝10時で良いかな』

キョン「起きられるかな…」

佐々木『遅刻は厳禁だよ。久しぶりの再会なんだ、お互い気分よく会おうじゃないか』

キョン「もう3時間遅くしてくれればなぁ。ま、努力はするさ」

佐々木『うん、よろしく頼むよ。じゃあ…久しぶりに会えるのを楽しみにしてるよ』

キョン「ああ。おやすみ」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 14:59:51.72 ID:J1ZNd3cmO

【土曜日・不思議探索】

ハルヒ「今日も収穫なしだったわね。キョン、真面目に探してる?」

キョン「なんで俺だけに…。探してるよ」

ハルヒ「だってあたしとペアにならなかったのアンタだけじゃない」

キョン「ちゃんと探してるさ。なあ長門」

長門「…」

ハルヒ「もう、しょうがないわね。明日も探索しようかしら。皆暇?」

みくる「はい、私は大丈夫ですよ」

古泉「もちろんです」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:03:45.81 ID:J1ZNd3cmO


キョン「すまん、俺は」

ハルヒ「待ちなさい、あんたに拒否権はないわ。どうせ暇でしょ?」

キョン「それがそうでもないんだ。古い友人に会う約束をしててな」

ハルヒ「ふぅん?佐々木さん?」

キョン「そうだ。前に会ったことあるだろ」

ハルヒ「あの子とねぇ。デート?」

キョン「アホか。そんなんじゃない、久しぶりに話するだけだ」

ハルヒ「……まぁいいわ。じゃあ明日は探索中止。月曜は遅刻するんじゃないわよ」

キョン「ああ、すまんな」

古泉「ふむ…?」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:07:37.71 ID:J1ZNd3cmO





キョン「で、解散した後になんで俺についてくる」

古泉「気がかりとでもいいましょうか。不自然ではありませんか」

キョン「…なにがだ」

古泉「わかっているのでしょう?涼宮さんのことですよ」

キョン「やけにあっさりしてる…ってことか?」

古泉「ご名答。わかっていらっしゃるのならば話は早い。どうお考えですか」

キョン「さてね。あいつの精神衛生はお前が専門だろ」

古泉「では僕の考えを述べさせてもらいましょう。何か裏があるとしか思えない」

キョン「まさか。あいつも人間だ、たまに友人と会うくらい許してくれたんだろ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:12:47.43 ID:J1ZNd3cmO

古泉「本当にそうならば僕も同じ考えを持つでしょう。問題は相手が佐々木さんだというのに許したことです」

キョン「佐々木に問題があるってか?勘弁してくれ」

古泉「前にも一度言いましたが、彼女は非常に魅力的な女性です。これは客観的に見ての意見ですが」

キョン「…まぁ、反論したところで生産性のある議論はできないな。で?」

古泉「なぜ魅力的な女性とあなたが会うのを涼宮さんが許したのか。気になりませんか」

キョン「俺が誰と会おうと気にしてないだけ…」

古泉「ではない事くらいは自覚しているでしょう」

キョン「佐々木を女として見ていないんじゃないか?前にも俺の親友って紹介したしな」

古泉「それならば良いんですがね。まぁ、今はわかりません。また月曜に無事に会えるようにしましょう」

キョン「お前はいちいち大げさだ。じゃ、また月曜な」

古泉「ええ、それでは失礼します」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:16:30.47 ID:J1ZNd3cmO

【日曜日・午前8時】

妹「キョンくーん!あさー…って、あれ?起きてる」

キョン「おう、おはよう。そんなに俺が起きてると珍しいか妹よ」

妹「だってぇ、今日は日曜日だよ?」

キョン「わかってるよ。今日は佐々木と会う約束しててな」

妹「えー?ハルにゃんじゃないの?」

キョン「今日はな。さて、朝飯できてるか?」

妹「できてるよぅ。ねぇ、デート?」

キョン「うん?そんな事ない。久しぶりに話するだけだ」

妹「へぇー」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:20:12.90 ID:J1ZNd3cmO

キョン「ごちそうさん。じゃあ行って来るよ」

妹「いってらっしゃ〜い」

キョン「おう、じゃあな」

バタン

キョン「9時か…ちょっと早すぎたかもな」

すっ

キコキコキコ

キコキコキコ

キョン「この調子だと30分以上待つ事になるかもな。なんでこんなに早く支度したんだ、俺?」

キコキコキコ

キコキコキコ

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:23:58.00 ID:J1ZNd3cmO

【9時20分・駅前喫茶店】

キョン「…どうすっかなぁ。先に喫茶店に入っておくか」

キィ…

店員「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」

キョン「後から一人来ます…ん?」

店員「はい?」

キョン「あれは…佐々木。もう来てたのか。すみません、連れがもう入ってるみたいです」

店員「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:28:53.50 ID:J1ZNd3cmO

佐々木「やぁ」ニコ

キョン「おう。待ったか?」

佐々木「ああ、ずいぶん待った。君がもしかしたら1時間前くらいに来てくれるんじゃないかと思ってね」

キョン「これでもかなり早く来たんだがなぁ。すまん」

佐々木「ううん、僕が勝手に君を待ってたんだ。君が謝る必要はないさ」

キョン「それもそうか。もう注文はしたのか?」

佐々木「まだだよ。もうすぐ君が来るような気がしていたからね。待っていたのさ」

キョン「…遅刻しなくて良かった。何にする?」

佐々木「おや?まるで奢ってくれるような口ぶりだね」

キョン「まぁな。待たせたんだし、これくらい構わんぜ」

佐々木「君はそんなに律儀な男だったかな?くつくつ、しかし遠慮させてもらうよ」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:37:33.32 ID:J1ZNd3cmO

キョン「そうか?遠慮するなよ」

佐々木「前に話していたSOS団の罰金制度だね?良いんだよ、今日は僕が誘ったんだし」

キョン「お前に奢るのを罰金だなんて思わないっての」

佐々木「嬉しいね。では今度会う時はご馳走になるよ」

キョン「次ね。覚えとくよ。すみませーん」

店員「はい、ご注文をお伺いします」

佐々木「ホットレモンティーとアメリカンをお願いします」

店員「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

キョン「…びっくりした。なんで俺がコーヒー頼もうとしてた事がわかったんだ?」

佐々木「なんとなくだよ。君が僕とお茶する時にコーヒー以外を頼むのを見たことがないからね」

キョン「もし俺がコーヒー以外を飲むつもりだったらどうしたんだ?」

佐々木「その時は取り消せば良いだけだよ。君の注文を当てたかっただけだ、見逃してくれ」

キョン「あまり意味があるとは思えんが」

佐々木「意味なんてないさ。ただなんとなく当てたら嬉しいと思ってね」ニコ

キョン「はは、なんだそれ」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:50:48.15 ID:J1ZNd3cmO

店員「お待たせしました。アメリカンとホットレモンティーです」

佐々木「ありがとうございます」

カチャ

キョン「…で、話したかったことってなんだ?」

佐々木「うん、実はね。お願いがあるのだが、聞いてくれるかい?」

キョン「お前には世話になったからな。よほど無理な内容じゃなければ聞くよ」

佐々木「くく、よほど無理なお願いかもしれないよ?」

キョン「努力はするさ。言ってみてくれ」

佐々木「今日一日、僕を遊びに連れて行ってくれないかな」

キョン「は?」

佐々木「場所はどこでも構わない。休日を丸々君とすごしたいんだ。どうだろう?」

キョン「そんな事か。もちろん良いぜ、はじめからそのつもりだしな」

佐々木「良かった。断られたらどうしようかと思って緊張していたんだよ」

キョン「断る理由もないしな。ウチの団長さんなら考えたかも知れんが」

佐々木「…君は女心をもう少し理解したまえ」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 15:57:05.66 ID:J1ZNd3cmO

キョン「で、どこに行こうか」

佐々木「どこに連れて行ってくれるんだい?」

キョン「生憎今は金持ちじゃないんだ。あまりいい所には行けないぞ」

佐々木「心外だね。僕と君の間に、そんな気遣いは不要だよ」

キョン「そうか、すまん。ついいつもの癖でな」

佐々木「……。くつくつ、苦労しているんだね」

キョン「それじゃあ…ん?」

佐々木「…」じーっ

キョン「どうした佐々木?」

佐々木「…僕がどこに行きたがってるか当ててみてくれないか」じーっ

キョン「…」

佐々木「…」じーっ

キョン(佐々木ってこんなに小さかったっけか?…いかん、佐々木相手に変な意識を持ってどうする)

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 16:01:50.24 ID:J1ZNd3cmO

キョン「よし」

佐々木「!」

キョン「佐々木、今日は自転車か?」

佐々木「いや、違うよ。君は自転車だね」

キョン「おう。久しぶりにアレ、やるか」

佐々木「本当に久しぶりだね。塾に通っていた頃は毎日乗せてもらっていたな」

キョン「だな。最近運動不足だったからちょうどいい。さ、乗ってくれ」

佐々木「…」

キョン「うん?どうした」

佐々木「君は本当にデリカシーがないな。女性を後ろに乗せるのに運動不足だからはないだろう」

キョン「はは、そういえばそうだな。すまんかった。さ、早く行こうぜ」

佐々木「もう…」すっ

ガチャ

キコキコ

キコキコ

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 16:07:23.59 ID:J1ZNd3cmO

キコキコ

佐々木「重くないかい?」

キョン「ん?ああ、ぜんぜん。問題ないぞ。変わってないな佐々木は」

佐々木「…喜んでいいのか悩むところだ」

キョン「そうか?褒めたつもりだが」

佐々木「ほう?では、中学校の頃と今君の後ろに居る僕を比べて変わったところはないかい?」

キョン「うん?いや、別に…」

佐々木「…ふむ」ぎゅ

キョン「!」

佐々木「どうだい、変わってはいないかな」

キョン「う、うーん。さぁ?あまり変わってないような気はするが」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 16:14:43.24 ID:J1ZNd3cmO

【キョンの中学校】

佐々木「驚いた、予想外だよ。ここに連れて来てくれるなんてね」

キョン「なんとなくな。正解か?」

佐々木「どうだろうね。君が正解だと思うなら正解だよ」

キョン「俺も久しぶりに来たかったしな。ちなみに正解は『どこでもいい』だろ?」

佐々木「!」

キョン「図星か」

佐々木「くつくつ。敵わないね」

キョン「日曜日だし、校門もしまってるが…ま、卒業生だし許されるだろ」

佐々木「乗り越えるのかい?」

キョン「ああ、久しぶりに中も見てみたいしな。ほら、手貸してやるよ」

佐々木「つかぬ事をお聞きするが…君は僕の今日の格好が見えているかい?」

キョン「もちろんだ」

佐々木「わかっているなら尚更問題だ。君はスカート姿の女性に柵を跨がせるのかい?」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 16:22:52.88 ID:J1ZNd3cmO

キョン「そうは言ってもなぁ。他に出入り口なんてないぞ?」

佐々木「部活動はやっているんじゃないかな?」

キョン「残念ながら、今はテスト期間中だから部活は休みだ」

佐々木「…致し方ない。手を貸してもらえるかい」

キョン「ああ。ほら…よっと」ぐいっ

佐々木「よいしょ」ぐっ

キョン「よし、先に降りろよ佐々木」

佐々木「ちょっと待ってくれ。人間に限らず、飛行が不可能な動物はみな例外なく高所を嫌がる。なぜだと思う?」

キョン「さぁ?落ちるのが怖いからだろ?」

佐々木「ご名答。君は本当に良い聞き手だね。動物は無意識の内に重力を認識しているからね」

佐々木「しかし鳥類たちはその恐怖に打ち勝つばかりか、重力に縛られず空に進出した」

佐々木「恐怖の克服と進化は因果関係にあると言われるが、こんな所にも進化のロマンはあるものだね」

佐々木「…僕は、鳥になろう」

キョン「要するに怖いんだな?」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 16:30:43.38 ID:J1ZNd3cmO

佐々木「困った事になった。キョン、先に降りて僕を支えてくれないか」

キョン「別に良いけど…よっと」すとっ

佐々木「さぁ、目を閉じて僕を支えてくれ」

キョン「目を閉じて?無理に決まってるだろう」

佐々木「待って!まだ振り返ってはだめだよ。そのままこっちに来て」

キョン「おい、目を閉じてなんて受け止められるわけないぞ。怪我したらどうする」

佐々木「くつくつ。では僕を下から見上げたいとでも言うのかい」

キョン「!」

佐々木「ああ、幻滅したよキョン。そんな邪な考えでここに連れてきたのか」

キョン「お、俺は別にそういうつもりじゃ…」

佐々木「君への認識を改めざるを得ないな」

キョン「ああもう。しょうがない、ほら」

佐々木「?」

キョン「このまま後ろ向いて下まで行ってやるから。肩車の要領で俺に乗れよ」

佐々木「……抵抗はあるが、仕方ないね。妥協策だ」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 16:35:48.81 ID:J1ZNd3cmO

佐々木「行くよ?」

キョン「ああ。いつでもいいぜ」

佐々木「…っ」

よじよじ…

ぽふっ

キョン「よし、乗ったな。下ろすぞ」

佐々木「あ、ああ。ありがとうキョン」

すとっ

キョン(女の太ももって、あんな柔らかいもんなのか…い、いかん…)

佐々木(不可抗力とは言え、キョンの頭が…)

キョン「と、とりあえず散策してみるか」

佐々木「え?う、うん、そうだね。あはは」

キョン「あはは、か…」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 16:42:08.11 ID:J1ZNd3cmO

キョン「この校舎、懐かしいな。この入り口で確か初めて話したんだ」

佐々木「そうだったね。つい最近の事のように思えるよ」

キョン「あれからもう随分たつな。こうしてお前が隣にいると、まだ中学生のような気がする」

佐々木「時間と言うのは現代の技術では決して戻せない。だからこそ価値があると思うんだ」

キョン「そうだな。失敗をやり直せたら、人生面白くないかもしれん」

佐々木「それでもやり直したいと思うような選択はきっと誰しもが経験しているものだよ」

キョン「かもな」

佐々木「くつくつ。愚かだと言われるかも知れないが」

キョン「うん?」

佐々木「もしも、一度だけやり直しが利くのなら僕は北高に行く」

キョン「…今の高校、そんなに面白くないのか?」

佐々木「……すまない、一番の愚か者は僕ではないようだ」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 16:48:10.80 ID:J1ZNd3cmO

佐々木「時々ね、思うんだよ。中学校の頃は楽しかったなと」

キョン「そうだな。俺も楽しかった」

佐々木「こんな事を考えたことはないかい?もう一度中学生に戻りたいなぁなんて」

キョン「…俺は、今の生活にそれなりに満足しているしな」

佐々木「そうか。僕は時々思ってしまうんだよ。懐古趣味があるわけではないのだが」

キョン「たまにはいいんじゃないか?昔を振り返るのも大事なことだ」

佐々木「優しいな君は。そこも君の魅力のひとつだよ」

キョン「…そんなもんかね」

佐々木「ああ。そうだ、運動場に行ってみないか」

キョン「いいぜ」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 16:57:31.14 ID:J1ZNd3cmO

【運動場】

キョン「変わり映えのしない運動場だな」

佐々木「そこがここの良い所さ。変わらないというのは素晴らしい事だよ」

キョン「…永遠に変わらないものなんてないけどな」

佐々木「君の言うとおりだ。寂しいね」

キョン「…」

佐々木「…」

キョン「平和だな」

佐々木「ああ。本当に。こんなに穏やかに過ごせるのはいつぶりだろう」

キョン「大変なんだな、高校」

佐々木「それなりにね。良い息抜きになりそうだ」

キョン「そりゃ良かった」

佐々木「今日は付き合ってくれて嬉しいよ。ありがとう、キョン」

キョン「いいさ。俺も、いい息抜きになる」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 17:06:48.33 ID:J1ZNd3cmO

佐々木「覚えているかい、体育祭の事」

キョン「体育祭?」

佐々木「ほら、3年生の最後の体育祭。フォークダンスがあったじゃないか」

キョン「ああ、あったなそういえば。それが?」

佐々木「本当に覚えていないんだね。困ったものだ。僕はずっと心残りだったというのに」

キョン「うーん?ああ、最後にお前と組む直前に終わっちまったことか」

佐々木「そう、それだ。良ければここであの時の続きをしたいのだが」

キョン「続き?ここで踊るってか?」

佐々木「何もそこまで再現してくれなくていいさ。多くの生徒達は踊りよりも異性と手を繋ぐことに意味を見出していたしね」

キョン「手を繋ぐくらいなら、そんな断りを入れなくてもいいさ」

佐々木「くつくつ。ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうよ」

すっ

ぎゅ

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 17:15:02.97 ID:J1ZNd3cmO

佐々木「…嬉しいね。こうしていると、本当に中学生に戻ったみたいだ」

キョン「…」

佐々木「ねぇ、キョン。今日話したかったことなんだが」

キョン「ああ。俺と遊びに来たかっただけじゃないんだろう?」

佐々木「全くもってその通りさ。僕はね、恋愛なんて一種の精神病だと思っている」

キョン「そういやそんな事言ってたな」

佐々木「僕は…どうやら、重症のようだよ」

キョン「……」

佐々木「もちろん叶わない事はわかっているんだ。君の心が涼宮さんに向いていることも」

キョン「ハルヒはそんなんじゃないさ」

佐々木「良いんだ。嘘を吐いてくれなくて良い」

キョン「…」

佐々木「お願いがあると言っただろう。…どうしても君に聞いてほしかったんだ」

キョン「よし、聞こう。言ってくれ」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 17:26:23.20 ID:J1ZNd3cmO

佐々木「君と違う高校を選び、離れて暮らすうちに君の影は消えてくれると思っていた」

佐々木「敢えて違う高校を選んだんじゃない。君を追って志望校を変えるほどの勇気がなかったんだ」

佐々木「…勉強に明け暮れていれば、君の事は忘れられるはずだった」

佐々木「なのに君は僕の中でどんどん大きくなり…そして、この間の再会だ」

佐々木「どうやら僕は、精神病に打ち勝てるほど強くはなかったらしい」

佐々木「そこでだ。君にこの病気を治す手伝いをしてほしくてね」

キョン「ああ」

佐々木「くくっ…しゃべりすぎたな。緊張しているのかもしれない」

佐々木「キョン。僕を、振ってくれないか」

キョン「俺が…お前をフればいいのか」

佐々木「卑怯だと思うだろう?僕自身もそう思う」

佐々木「親友だなんて言っておきながらこの有様だ。情けないよ」クス

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 17:33:04.06 ID:J1ZNd3cmO

佐々木「涼宮さんの願望実現能力の事は聞いている」

キョン「ハルヒの能力、か…」

佐々木「それがある限り僕に勝ち目はない。そして前にも言ったとおり、僕は能力を引き継ぐつもりもない」

キョン「橘が前に喫茶店で話していたアレか」

佐々木「そう。何の巡り会わせか、僕には能力を持つ資格があるらしい。こんな平凡な人間にね」

キョン「それなら俺だってそうさ。こんな平凡な人間、探してもそうそう居ないぜ」

佐々木「興味深い発言だね。平凡が探しても居ない、か。それは非凡ではないかとも思うが。今はそれよりも」

キョン「…」

佐々木「……好きなんだ、キョン」

キョン「……そうか。ありがとう佐々木」

佐々木「ふふ、ごめんねキョン。ワガママだと自覚しているよ」

キョン「そのワガママは聞いてやれそうにない」

佐々木「…!」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 17:42:46.15 ID:J1ZNd3cmO

キョン「お前が俺を好いてくれるのは本当に嬉しい。でもそんな理由でハイ諦めます?そんな事が許せるか」

佐々木「僕は能力を持つつもりはないんだ。お願い、キョン。僕の望みを聞いてくれ」

キョン「…」

佐々木「こうするより他になかったんだ。卑怯だとは思う。君が一言嫌いだと言ってくれれば、僕は」

キョン「…ハルヒに能力がある限り、お前の恋愛は成就されないのか」

佐々木「そんな事はないさ。ただ、相手が悪かっただけ。君以外ならあるいは、僕の恋愛は許されたのかもしれない」

キョン「理不尽だとは思わないのか」

佐々木「この世界に理不尽なんて、ありきたりすぎて逆にそれが理となっているさ」

キョン「…」

佐々木「本当にすまない。…ただ、誰が悪いわけでもないんだ。彼女も、望んで能力を身につけたわけじゃない」

キョン「…」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 17:49:05.70 ID:J1ZNd3cmO

キョン「…ハルヒから能力を奪ってやろうとは思わないのか」

佐々木「思わない」

キョン「俺は…正直に言おう。中学の頃からお前に惹かれていた」

佐々木「だめだ、キョン。やめてくれ」

キョン「確かに高校に入ってからは望んでた非日常に囲まれて楽しかったかも知れない」

キョン「だけど、確かに中学校の頃、お前と居て楽しかった。それは嘘じゃない」

佐々木「…キョン」

キョン「俺は、どうすればいいんだ」

佐々木「すまない。迷わせるような事を言ってしまって。もう忘れてくれ」

キョン「…ハルヒを裏切ることはできない。でも佐々木。お前を忘れることもできないんだ」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 17:53:45.65 ID:J1ZNd3cmO

佐々木「僕がこんな事を言い出さなければ、君を困らせることもなかった。すまない」

キョン「お前が謝ることじゃない。そして…誰を恨んでも仕方のないことだ」

佐々木「そうさ。だから僕を切れば良い。君は明日からまた楽しい学校生活を送るんだ」

キョン「お前はどうなる」

佐々木「僕は僕で、それなりの人生を歩むさ。いつか、今日の事を振り返って懐かしむ事ができるくらいにはね」

キョン「…お前はそれを望んでるのか」

佐々木「……」

キョン「……」

佐々木「ああ。これが僕の望みだ」

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 23:39:22.04 ID:pQOHIdvTO

キョン「佐々木。お前の望みは、聞けそうにない」

佐々木「キョン…」

キョン「ワガママでもいいさ。お前が自分をワガママだというなら、これが俺のワガママだ」

佐々木「でも、涼宮さんにはどう説明するつもりだい?」

キョン「…それは…」

佐々木「それが出来ないのならば、僕のワガママを聞いてもらうよ。私情で世界を危険に晒すわけにはいかない」

キョン「なんとかしてみせる」

佐々木「それは無責任だ。…あまりに、無責任だよ」

キョン「大丈夫、俺を信じてくれ。ハルヒだって子供じゃない。きっとわかってくれる」

佐々木「それが原因で僕たちと涼宮さん達が争うような事になるかも知れないよ?」

キョン「…それだけは避けたいな」

佐々木「僕もだ。争いごとは好きではない。まして、悪が存在しない戦いならば尚更だ」

キョン「…どっちが悪いわけではないもんな。こればっかりは」

佐々木「そう。正義対正義の戦いに、君は耐えられるのか」

キョン「…」

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 23:45:03.91 ID:pQOHIdvTO

キョン「争いが避けられないのだとしても、お前が自分を殺すのは耐えられない」

キョン「俺だって誰かが傷つくのは嫌だ、仲間が傷つくのは嫌だ。だけどな…お前が我慢すれば済むってのも、なにか間違ってる」

佐々木「…そう、本気で思っているのかい?」

キョン「ああ、だから佐々木。今は俺を信じてくれ」

佐々木「後悔することになるよ、きっと」

キョン「…そうかも知れん。でも、俺も佐々木を忘れるなんて出来ない。だから…」

佐々木「…」ゴク

キョン「俺と……付き合ってくれ、佐々木」

佐々木「うん…」

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 23:49:44.56 ID:pQOHIdvTO

佐々木「…」

キョン「佐々木…」

佐々木「!」ぐいっ

佐々木「すまない。こうなるとは予想していなかったからね。見苦しい所をお見せしてしまった」

キョン「そんな事はないさ。きっとなんとかなる。だからそんな顔するな、佐々木」

佐々木「…うふふ、ありがとう。優しいね」

キョン「お前の彼氏だからな」

佐々木「うれしいよ……本当に嬉しい…」

キョン「俺もだ。ありがとう佐々木」

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 23:55:47.46 ID:pQOHIdvTO

【夕方・駅前】

佐々木「今日はありがとう。君に会えて嬉しかったよ」

キョン「俺もだ。帰り、一人で大丈夫か?」

佐々木「心配してくれるのかい?くつくつ、心遣い感謝するよ。だけど今日は一人で帰ろう」

キョン「別に送ってくぞ?自転車なんだし」

佐々木「いや、それはこの問題が解決してからにしよう」

キョン「…そうか。そうだな」

佐々木「僕達が堂々と一緒に歩けるようになったら、その時は是非送ってくれたまえ」

キョン「ああ、きっとな。それじゃあ」

佐々木「うん。またね、キョン」

キョン「ああ、またな」

ギ…

キコ…キコキコ


ハルヒ「!」

ハルヒ「……キョンと…佐々木さん」

225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/07(土) 23:59:21.29 ID:pQOHIdvTO

【翌日・学校】

古泉「おはようございます」

キョン「おう、おはようさん。どうしたこんな早くに」

古泉「涼宮さんはまだいらっしゃらないようですね。今のうちにお話しておきたいことがあります」

キョン「そうか…。場所を変えるか?」

古泉「そうした方がよいでしょうね。屋上までご同行願えますか?」

キョン「ああ。他の連中は?」

古泉「ご心配なく。すでに呼んであります。あとは貴方だけです」

キョン「…そうか。行こう」

ガタッ

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 00:03:16.41 ID:hFvQwo7pO

【屋上】

みくる「おはようございますぅ。あの話って…?」

長門「…」

古泉「単刀直入に言いましょう。異常事態です」

キョン「異常事態?」

古泉「ええ。涼宮さんの願望実現能力が極端に弱まっています」

キョン「え…ハルヒの能力が?」

みくる「弱まってる?」

長門「…」

古泉「ええ。まず昨日の事ですが…閉鎖空間が発生しました。ごく小規模のね」

キョン「?」

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 00:10:30.42 ID:hFvQwo7pO

古泉「原因を追究したところ、原因は貴方にあったようです」

キョン「俺にか…」

古泉「はい。先週から気にはなっていたのですが、涼宮さんの佐々木さんに対する態度がおかしい」

古泉「昨日は貴方と佐々木さんの別れ際に涼宮さんが遭遇していました」

古泉「にもかかわらず、発生した閉鎖空間はごくごく小規模で、神人も暴れてはいなかった」

古泉「そして先週の、貴方の佐々木さんと会うという発言。これに対して涼宮さんは強く反発しなかった」

キョン「だから先週も言ったが、ハルヒがそれを許すぐらい十分考えられるだろう」

古泉「その可能性も考えました。しかし、この仮説を裏付ける事象は他にもあります」

キョン「…なんだよ」

古泉「貴方の日曜日の行動ですよ」

236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 00:18:06.48 ID:hFvQwo7pO

古泉「申し訳ございませんが、最低限の貴方の行動を追跡させていただきました」

キョン「…いまさら文句は言わんさ。なんだ」

古泉「普段は遅刻するのが当たり前の貴方が、その日に限って1時間前に家を出ています」

キョン「それが、お前の仮説の裏づけだってのか?馬鹿らしいにも程がある」

古泉「もちろん、偶然の可能性もあります。しかし同時に、必然の可能性もあるのです」

キョン「佐々木が望んだから俺が早く起きて出発したってのか?そんな事…」

キョン「!」

――――「ああ、ずいぶん待った。君がもしかしたら1時間前くらいに来てくれるんじゃないかと思ってね」

――――「まだだよ。もうすぐ君が来るような気がしていたからね。待っていたのさ」

キョン「まさか」

古泉「思い当たる節があるのですね?」

242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 00:25:34.41 ID:hFvQwo7pO

キョン「だが俺はアイツの願望をすべて叶えてやれた訳じゃない」

古泉「その内容については存じませんが…僕達にはわかりません」

古泉「それが本当に佐々木さんの望みではなかったのか、あるいは無意識下での願望だったのかはね」

キョン「……」

古泉「勘違いしないでください。貴方を責めているわけではありません」

キョン「…責めているようにしか聞こえんが」

古泉「いえ、本当です。佐々木さんと恋愛関係にあろうと、それはあなたの自由です。それにとやかく言う資格はありません」

古泉「ただ一つ、認識しておいて欲しいことがある。…争いは避けられません」

キョン「…争うことになるのか」

古泉「はい。今、能力は二人に同時に存在しています。涼宮さんから能力が完全に消えたわけではない」

古泉「そして同時に佐々木さんの能力も完全ではない。つまり今、世界は非常に不安定な状態にあります」

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 00:34:49.88 ID:hFvQwo7pO

古泉「願望を実現する能力…これが二つ同時に存在することの危険性は、改めて説明する必要もないでしょう」

キョン「そうだな。それくらい俺にもわかる」

古泉「鍵である貴方の心が不安定な以上…争いは避けられないのです」

キョン「どういうことだ」

古泉「これは確信です。能力には、貴方の存在が深く関与している」

キョン「俺が能力の発言に?」

古泉「そう、貴方は鍵なのです。である以上、あなたはどちらかに加勢しなければならない」

キョン「どっちかに加勢…佐々木の敵になるか、ハルヒの敵になるしかないってのかよ」

古泉「それは貴方にはできないでしょうね。さもなくば、傍観です。事の顛末を見守ってください」

古泉「貴方がどちらかに好意を抱いていたとしても、もう一方に敵意を抱くことはないでしょう?」

キョン「当たり前だ」

古泉「今回の戦いは正義と正義です。どちらが勝つにせよ、その先にあるのは世界の安定」

古泉「こうして集まってもらったのは、この情報を知ってほしいのともうひとつ。お願いがあります」

古泉「どちらの正義が勝っても、貴方には見守っていただきたいのです」

253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 00:42:38.01 ID:hFvQwo7pO

古泉「能力の一本化。これはすなわち、世界の崩壊を防ぐという事です」

キョン「……」

古泉「…ご決断ください。貴方の意志に委ねます」

キョン「俺には……どっちの味方もできない」

古泉「わかりました。双方ともに無事という事はありえません、良いですね」

キョン「……ああ」

古泉「こんな決断を迫ってしまって申し訳なく思っています」

キョン「いや、お前が悪いんじゃない」

古泉「…それでは、また放課後に」

キョン「ああ、わかった。それじゃあな」

257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 00:48:34.27 ID:hFvQwo7pO

【教室】

キーンコーンカーンコーン

ハルヒ「ぎりぎりね」

キョン「おう、おはようハルヒ」

ハルヒ「おはよ。もうちょっと余裕もって学校来なさいよ」

キョン「すまん。明日からは気をつけるよ」

ハルヒ「うん、良い心掛けね。やっと団員としての自覚が出てきたかしら?」

キョン「かもな。ってことはそろそろ雑用から卒業させてくれても良いんじゃないか?」

ハルヒ「だーめ!アンタはSOS団に必要不可欠な雑!用!なんだから!それがアンタのアイデンティティなのよ!」

キョン「そんな満面の笑みで人の人権を踏みにじるな」

ハルヒ「ふっふーん。不満があるならちょっとは団に貢献しなさい!」ニカ

キョン「はは、そうだな。努力はするよ」

262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 00:54:44.14 ID:hFvQwo7pO

キョン「…」

ハルヒ「キョン」

キョン「…」

ハルヒ「きょーん!」ぐさ

キョン「ぐお!?お前なぁ…人の背中をシャーペンで刺すな」

ハルヒ「なにぼさっとしてんの?窓の外なんか見てポケーッとして」

キョン「ん?いや、考え事をな」

ハルヒ「ふぅん?あんたの考えてることなんてしょうもない事なんでしょうけど、聞いてあげないこともないわよ」

キョン「なんだ、悩み聞いてくれるのか?」

ハルヒ「何意外そうな顔してんのよ?アタシが悩み聞いてあげたらおかしいって言うの?」

キョン「いや…優しいじゃないか、どうした?」

ハルヒ「団員のコンディションを整えてあげるのも団長の務めだからね。なんでも言いなさい」

キョン「…ああ、ありがとなハルヒ。もう少し落ち着いたら話すよ」

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:00:11.15 ID:hFvQwo7pO

ハルヒ「…む。アタシが聞いてあげるって言ってるのに」

キョン「…今はまだ言えないんだ。すまん。感謝してるよ」

ハルヒ「ふーん。ま、いつでも話したくなったら話しなさい。抱え込むのは身体に毒よ」

キョン「そうだな。ありがとな、ハルヒ」

ハルヒ「フン」ぷい

キョン「……」

キョン(ダメだ、ハルヒを裏切ることなんてできない)

キョン(俺は……どうしたら良いんだ?やっぱり、俺の発言は無責任だったのか?)

キョン(佐々木……)

ハルヒ「…」

265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:03:41.54 ID:hFvQwo7pO

ハルヒ(キョンが悩んでる事…やっぱり、佐々木さんの事なのかしら)

ハルヒ(…別に、キョンが誰とどんな関係だろうが構わないけど)

ハルヒ(SOS団は恋愛禁止なんだから。そこはきちっとしとかないとね)

ハルヒ(……いつまでこんな言い訳続けるつもりかしらね、アタシ)

ハルヒ「…はぁ」

266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:09:28.98 ID:hFvQwo7pO


【放課後・部室】

コンコン

キョン「…」

コンコン

ガチャ

キョン「…誰も居ない。もう始まってるのか…」

キョン「後悔することになる、か。まったくそのとおりだな、佐々木」

キョン「だけど…こうする他にどうすればよかったんだ?」

キョン「俺には分かりそうもない…相変わらず馬鹿だな俺は」

ガチャ

ハルヒ「やっほ!皆いる?…って、あれ…?キョンだけ?」

キョン「よう、ハルヒ。そうみたいだ。掃除終わったのか?」
ハルヒ「当然よ。あんなの5分もあれば終わるわ」

270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:20:54.35 ID:hFvQwo7pO

ハルヒ「…皆、どうしたのかしらね」

キョン「きっと急用だろう。こんな日もあるさ」

ハルヒ「そっかぁ…」

キョン「……」

ハルヒ「……」

キョン(どうすれば良い?どうすれば争いを止められる…)

ハルヒ(昨日の事…きっとキョンが悩んでるのはその事よね。聞かない方が良いのかしら…)

キョン(佐々木との事をハルヒが知ったらどうなる…)

ハルヒ(佐々木さんとの事を聞いたらどうなるの…?)

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:28:46.14 ID:hFvQwo7pO

キョン「なぁ、ハルヒ」ハルヒ「ねぇ、キョン」

ハルヒ「!」

ハルヒ「…なによ」

キョン「いや、先に言ってくれ」

ハルヒ「……アンタが悩んでるのってさ」

キョン「……ああ」

ハルヒ「佐々木さんの事?」

キョン「……」

ハルヒ「もし、アンタがその事で悩んでるなら…あ、アタシ、聞いてあげるから」

キョン「…ハルヒ」

ハルヒ「すっきりしないでしょう、アンタも?アンタがうじうじしてたら、アタシも気持ち悪いし」

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:35:23.01 ID:hFvQwo7pO

ハルヒ「あのね?アンタが元気ないと、アタシも調子狂うのよ。SOS団員は常に体調万全でいないとだめなの。わかる?」

キョン「そうか。そうだな、すまん」

ハルヒ「アンタが元気ないと、心配なのよ」

ハルヒ「もう言う、言うわよ。こんなウジウジしたの好きじゃないし、せっかく二人なんだしね」

キョン「言う?」

ハルヒ「キョン、あんたに一度言ったことがあるわよね。恋愛なんて精神病だって」

キョン「ああ。会ったばっかりの頃だな」

ハルヒ「あたし、どうやら重症みたいよ」うる…

キョン「ハルヒ…」

ハルヒ「だから…」ぽろ

ハルヒ「!」ぐいっ

ハルヒ「だから、アタシ…すぅ…アンタの事、好きみたい」ぽろぽろ

280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:41:51.18 ID:hFvQwo7pO

キョン「……」

ハルヒ「……」ぽろぽろ

キョン(佐々木と付き合った事をハルヒに言ったら、それはもう傍観の立場ではないよな)

キョン(傍観…してくれってか、古泉)

キョン(佐々木と付き合ったことを隠すのか?)

キョン(…すまん。それは出来ない。佐々木に対しても、そしてハルヒに対しても不義理だ)

キョン(古泉、約束を破るぞ)

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「…うん」

キョン「すまん」

ハルヒ「…………うん」ぽろぽろ

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:49:29.39 ID:hFvQwo7pO

キョン「昨日から、佐々木と付き合うことになった」

ハルヒ「そっか…そっかぁ…よかったじゃない」ぽろぽろ

キョン「だから、その告白は受け取れない。すまん、ハルヒ」

ハルヒ「……ううん。おめ…とう……よかったね、キョン…!」ぐしぐし

キョン「…ハルヒ」

ハルヒ「ちゃんと幸せにしてあげんのよ。アンタにはもったいないくらいの美人なんだから」

キョン「ありがとう…すまん、ハルヒ」

ハルヒ「もう謝らなくていい」

キョン「…ああ」

ハルヒ「……う…」ぽろ

ハルヒ「うぇぇん……」ぽろぽろ

287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:54:55.13 ID:hFvQwo7pO

キョン「ハルヒ、もう泣かないでくれ」

ハルヒ「うっさい!…アタシ…ひぐ、そんなに大人じゃないの!」ぽろぽろ

ハルヒ「…悔しい……悔しいぃ…うぇぇん…」ぽろぽろ

キョン「……」

キョン(これで良かった…これで良かったはずだ)

キョン(願わくば…これで佐々木に能力が移ってくれ。頼む…)

キョン(そして…誰も傷つくことなく、戦いが終わってくれ…)

キョン「…ハルヒ」

ハルヒ「ごめん、ごめんキョン…!も、ちょっと…だけ…泣かせて…うぐ…」ぽろぽろ

キョン「ああ…」

290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 01:59:25.99 ID:hFvQwo7pO

ハルヒ「ぐす…」ごしごし

キョン「落ち着いたか?」

ハルヒ「…ん。ごめんねキョン、みっともない所見せちゃったわ」

キョン「いいさ。嬉しかったぞ、ハルヒ」

ハルヒ「ごめんキョン。さっきは偉そうな事言っちゃったけど」

ハルヒ「アタシはまだ子供だから、素直におめでとうって言えない…」

ハルヒ「もし願いが叶うなら…佐々木さんからアンタを取っちゃいたいくらいに」

300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:05:59.93 ID:hFvQwo7pO

キョン「!」

ハルヒ「だから、ごめん。今日は先に帰るわ」

キョン「…そうか。一人で大丈夫か」

ハルヒ「当たり前よ、ただ下校するだけだもん」

キョン「それもそうだな」

ハルヒ「ふふ、へんなの。言っとくけどね、これを引きずって変に気を使ったりしたら許さないわよ」

キョン「ああ、わかってる。お前は団長で、俺は団員だもんな」ニコ

ハルヒ「わかってないわね。あんたは団員であって雑用係でもあるのよ!」

キョン「はは、なんだそりゃ」

ハルヒ「じゃあ、また明日。素直におめでとうが言えるように、頭冷やして来るわ」

キョン「ああ…ありがとうな、ハルヒ」

ハルヒ「うん。…あたしこそ、ありがと、キョン」

ガチャ…

…バタン

304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:10:42.69 ID:hFvQwo7pO

キョン「……」

キョン「これで……どうなる」

キョン「争いは…戦いはどうなった…?」

キョン「佐々木。これで良かったんだよな」

キョン「古泉…すまん、約束は守れなかった」

キョン「……」

キョン「…佐々木に電話するか」

ピッ

ピピピピ…

ツー  ツー  ツー

309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:14:16.10 ID:hFvQwo7pO

キョン「携帯が…通じない?」

キョン「なんだ?」

キョン「!!」

キョン「嘘だろ?」

タッタッタ

ガバッ

キョン「窓の外が暗い!まさか…嘘だろおい……」

キョン「……閉鎖空間……!!」

316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:22:18.99 ID:hFvQwo7pO

ふわっ

古泉「…お待たせしました」

キョン「古泉!これはどういうことだ?」

古泉「時間がありませんので、用件まで」

古泉「先ほどまでの争いで我々は勝利しました」

古泉「つまり、一時は能力は涼宮さんに戻ったわけです」

キョン「一時は…?いや、そんなことより誰も傷ついてないのか?お前は?怪我は?」

古泉「言ったはずです。双方が無事に済むことはないと」

キョン「…すまん」

古泉「貴方の選択は間違ってはいませんよ」

キョン「俺は…佐々木と付き合った事をハルヒに言ったんだ」

古泉「ふむ。なるほど…これで辻褄が合いますね」

322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:28:15.42 ID:hFvQwo7pO

古泉「今、そちらに居るのは貴方ともう一人」

キョン「佐々木か!?」

古泉「ええ、そうです。涼宮さんの葛藤の末の決断なのでしょう」

古泉「貴方をあきらめ切れなかった彼女は…貴方に最後の望みを託した」

キョン「最後?」

古泉「そう。彼女は、貴方が佐々木さんと付き合うという事を受け入れる事が出来なかった」

古泉「いえ、受け入れることはできたのでしょう。しかし、それを祝福できない自分が許せなかった」

古泉「ここからはあくまで仮説です。お話しても?」

キョン「ああ。聞かせてくれ」

古泉「結論から言いましょう」

古泉「貴方には選択する権利がある。世界を取るか、佐々木さんを取るか」

325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:35:32.32 ID:hFvQwo7pO

キョン「そんな選択…俺に出来る訳ないだろ」

古泉「迷っている時間はありませんよ」

古泉「恐らく佐々木さんを取ったのなら、そちらで新しく世界が構築されると思います」

古泉「こちらの世界、涼宮さんの居る現実世界は確実に崩壊します」

古泉「そこに僕達が居るのかはわかりませんが、涼宮さんは存在しないでしょう。まず間違いなく」

キョン「…そんな」

古泉「貴方と佐々木さんを祝福できないのならば、自分が消えてしまおう…彼女らしいといえば彼女らしい考えです」

キョン「ハルヒが居ない世界を作れって言うのか?」

古泉「そして貴方が世界を取ったのなら」

キョン「世界を取ったら…」

古泉「その世界に、佐々木さんが居る保障はありません。存在していても、少なくとも二人のお互いに関する記憶は消えるでしょう」

328 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:42:15.45 ID:hFvQwo7pO

古泉「あくまでこれは推測です。決断するのは貴方」

キョン「……佐々木を取ったら、お前達は崩壊に巻き込まれるんだろ」

古泉「そうかも知れませんね。ですが、僕達は貴方を恨みはしませんよ」

キョン「嘘をつけ。死にたいやつなんて居るか」

古泉「死ぬのは勿論怖いですが…。これは貴方の決断しだいです。貴方が決めてください」

キョン「俺は…」

古泉「おっと、もう時間がないようです。方法は以前の閉鎖空間の逆です」

古泉「佐々木さんを取るのならば、彼女に口づけを」

古泉「涼宮さんを恨まないであげてください。彼女も望んで能力を身につけた訳ではありません」

キョン「当然だ。アイツを恨むなんて事は絶対にしない」

古泉「ふふ、さすがです。それでは、お元気で…」

ふっ…

ガチャ



佐々木「キョン…」

333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:47:51.41 ID:hFvQwo7pO

佐々木「すまない。盗み聞くつもりはなかったのだが」

キョン「ああ、いいんだ。お前にも聞いていて欲しかった」

佐々木「くつくつ。あれだけ主役を忌避していたのに、こんな重責を背負うことになるとはね」

キョン「まったくだ。俺はいつから主役級の扱いになっちまったんだか」

佐々木「時間はないのだろう?」

キョン「みたいだな」

佐々木「キョン……」

キョン「佐々木……」

佐々木「いけないな、柄にもなくしんみりしてしまうね。くくっ」

キョン「佐々木、こんな時にまで無理するな。震えてるじゃないか」

佐々木「…とことん意地悪だな君は。自分が消えるかも知れないのに、怖くないはずがないだろう」

335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:48:27.74 ID:hFvQwo7pO

>>332
30分くらいの予定です。

337 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:51:48.35 ID:hFvQwo7pO

キョン「あと、どれくらい時間は残されているんだろうな」

佐々木「きっと…なんとなくだが、あと10分も持たないね」

キョン「短いな」

佐々木「うん、短いね」

キョン「……」

佐々木「……うん……短い」

キョン「佐々木、約束を守れなくて済まなかった」

佐々木「え?」

344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 02:56:46.35 ID:hFvQwo7pO

キョン「俺がなんとかするなんて無責任な事言っちまって、済まなかった」

佐々木「くつくつ、そんな事……気にする必要はないさ」

キョン「そういえば、ちゃんとまだ言ってなかったよな」

佐々木「よしてくれキョン。これで最後みたいだ」

キョン「佐々木」

佐々木「…うん」

キョン「愛してる」

佐々木「……うん」ぽろ

佐々木「ありがとう。私もだよ、キョン。愛してる」ぽろぽろ

352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 03:03:18.00 ID:hFvQwo7pO

佐々木「キョン、少しだけ弱音を吐いても良い?」

キョン「もちろんだ。お前の彼氏だぞ?いくらでも吐いたらいいさ」

佐々木「キョン…」ぎゅ

キョン「…」ぎゅ

佐々木「怖い…消えたくない…!」うる

佐々木「私を捕まえていて…キョン、離さないで…!」ぽろぽろ

佐々木「私を…ぇぐ…す、好きでいてください、キョン…!うぅぅ…!!」ぎゅう

キョン「…佐々木」

佐々木「…ふふ、ごめんね。さぁ時間だよ。決断の時だ」

キョン「ああ。佐々木、俺の決断を恨まないでくれ」

佐々木「もちろん。恨むはずがないさ、君の彼女だよ?」

355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 03:06:38.51 ID:hFvQwo7pO

キョン「佐々木」

佐々木「はい」

キョン「お前を愛してる。世界よりもだ」

佐々木「…ありがとう」

キョン「目を閉じてくれるか」

佐々木「はい…」

キョン「…」すっ











ぐいっ

キョン「!」

佐々木「すまない、キョン」

362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 03:11:34.71 ID:hFvQwo7pO


キョン「おい、もう時間がないんだ!」

佐々木「ああ、わかっているさ」

キョン「佐々木!!!」

佐々木「済まないと思っている。本当に。でも」

キョン「ダメだ!佐々木!!」

佐々木「僕を選んでくれて本当に嬉しかった」

キョン「俺はお前を選ぶ!世界よりも、お前が大事なんだ!」

佐々木「くつくつ、キョン」

キョン「佐々木!」

佐々木「君は世界を救うスーパーヒーローに憧れていたんだろう?」

374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 03:21:25.48 ID:hFvQwo7pO

佐々木「元はと言えば、僕がワガママを言わなければ誰も悲しませずに済んだんだ。責任は、僕が取る」

キョン「待ってくれ!」

佐々木「ありがとう。僕のワガママを聞いてくれて、嬉しかったよ」

キョン「もう…時間が…」

佐々木「ありがとう。さようなら、キョン」

キョン「…佐々木、身体が…」

佐々木「くく、奇妙な感覚だね。これが死か」

キョン「死ぬな!死なせるか!俺が助ける!助けるから!」ぽろぽろ

佐々木「もうお別れだ……キョン、最後は笑って別れないか?たった一日の恋人だったけど、これくらいのお願いは聞いてくれ」

キョン「く…うぐ…」ぽろぽろ

佐々木「ふふ…ありがとう」

キョン「佐々木…」ぽろぽろ

佐々木「キョン、愛していると言ってくれ、もう一度…」ぽろぽろ

キョン「ああ、何回でも言ってやる。愛してるぞ、佐々木」

佐々木「あぁ…幸せだよ、キョン、わたしも…あい…

388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 03:31:01.14 ID:hFvQwo7pO

【朝】

キョン「…」ぱち

キョン「……」

キョン「……朝……。帰ってきたのか……」

トテトテトテ

ガチャ

妹「キョンくん!朝ー!ってあれ、起きてる」

キョン「おはよう…。なぁ、日曜日、俺が誰と出かけたか覚えてるか?」

妹「え?うーん?日曜日はキョン君家に居たよ?」

キョン「そうか。そうだったな。ありがとう」

妹「?変なキョン君…」

404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 03:36:08.16 ID:hFvQwo7pO

【学校】

古泉「おはようございます」

キョン「あぁ、おはようさん」

古泉「……気分はいかがですか?」

キョン「…気を使ってくれるな。大丈夫さ」

古泉「!」

キョン「どうやら、帰ってきたみたいだな」

古泉「…覚えてらっしゃるのですか」

キョン「ああ。良かった、忘れてなくて…。佐々木の、最後の愛情かもな」

古泉「……辛い決断をさせてしまいましたね」

キョン「いいさ。誰が悪いわけでもない」

422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 03:44:30.10 ID:hFvQwo7pO

キョン「アイツの事を忘れて生きるくらいなら、辛かろうが死ぬまでずっと覚えていたいからな」

古泉「……言葉が見つかりません……申し訳ありません」

キョン「どういう訳か俺はこうしてアイツの事を覚えていられるんだ。ありがたい」

古泉「…きっと、最後に願望実現能力を持っていたのは佐々木さんだと思います」

キョン「佐々木が?」

古泉「ええ。貴方が能力の鍵なのですから。きっと、最後に愛の言葉を囁いたのでしょう?」

キョン「ああ…そうだった。そうだ。だから」

古泉「彼女が、せめてあなたに覚えていて欲しいと願ったんでしょう」

古泉「涼宮さんの願望を上書きする事ができないなら、せめて、と」

キョン「……そうかもな。そうだと思うよ、俺も」

キョン「ありがとな、佐々木」

433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 03:48:55.71 ID:hFvQwo7pO

キョン「お前にもずいぶん助けられた。感謝してるぜ、古泉」

古泉「…ありがとうございます。…強くなられましたね」

キョン「はは、きっと佐々木のおかげだ。一番強かったのはあいつだからな」

古泉「ふふ、そうかもしれませんね」

キョン「それじゃあな、また放課後に」

古泉「ええ。それでは」

スタ スタ

スタ スタ

444 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/08(日) 03:53:51.00 ID:hFvQwo7pO

【教室】

ガラガラ

キョン「よう、ハルヒ」

ハルヒ「あら、早いわね。おはよ」

キョン「ああ、おはよう」

ハルヒ「なんか目覚め良さそうね?なんかあった?」

キョン「うん?あぁ、まぁな」

ハルヒ「なによ、言いなさいよ」

キョン「はは、また今度な」

ハルヒ「え…」

キョン「さて…授業始まるぞ、ハルヒ」

ハルヒ「う、うん…」

ハルヒ(泣いてる…?)


キョン「…」ぐいっ

キョン「……ありがとうな、佐々木」

445 名前: ◆r3yksmPHg2 [] 投稿日:2009/03/08(日) 03:54:23.29 ID:hFvQwo7pO

終わりです。
遅くまでお付き合いありがとうございました!

469 名前: ◆r3yksmPHg2 [] 投稿日:2009/03/08(日) 03:57:15.59 ID:hFvQwo7pO

救いエンドも考えてはいましたが、初志貫徹しました。
ハッピーエンド期待していた方申し訳ございません



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