キョン「サイレント・・・ヒル?」


メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:サトシ「そろそろ本気だす」

ツイート

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:06:44.46 ID:QTRnDvUm0

※しばらく前に別の>>1から引き継いだSSです。
考えているうちに落ちてしまったのでリベンジ。それなりに書き溜めました。
サイレントヒルを知らない人は申し訳ないです。




キョン「サイレント・・・ヒル?」


あたりを見回す。
しかし、濃霧のため1メートル先も見えない。
商店街のようだが見覚えは無い。

キョン「・・・まるでサイレントヒルの世界じゃないか。」

古泉「サイレントヒルですか?それはいったい?」

霧の中から古泉が姿を現す。


みくる「なんなんですか〜 ここどこなんですか〜」

古泉に寄り添った朝比奈さんが初めて部室に連れて来られた時と同じような事を言う。
周囲の不気味な様子にすでに半泣きだ。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/08(日) 00:07:57.35 ID:QTRnDvUm0



長門「ここがどこかは不明」

すぐ背後から長門の声が聞こえた。
可愛らしい朝日奈さんに視線を奪われていた俺はびくりとし振り返った。

キョン「ひっ!?長門か・・・・・・心臓が止まるところだったぞ」

そんな俺を無視して長門は続けた。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:09:25.66 ID:QTRnDvUm0



長門「閉鎖空間に似ているがまったくの別物」

古泉「いつもの閉鎖空間特有の虚無感が感じられません。むしろ重苦しい感じがします」
いつものにやけ顔が強張っている。こいつが初っ端からこんな顔をするのは初めてだぞ。

長門「この霧は解析できない異常なほどの情報量を持っている。霧に遮られ情報統合思念体とのアクセスもできない」
おいおい長門、いつもの調子でとんでもない事をさらりと言うな。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:10:39.02 ID:QTRnDvUm0


みくる「時間の流れおかしいです・・・・・・」
怯えていても美しさが褪せない朝日奈さんだが顔色が悪く愛らしい小動物のような雰囲気は無かった。

みくる「それになんだか気持ち悪いです・・・・・・」

ぎゅっと古泉の服の裾を握り締める。
古泉、俺と代われ。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:12:00.45 ID:QTRnDvUm0

しかし理性も本能も羨んでいる場合ではないと告げる。
霧に覆われた状況から雪山での出来事が思い出される。長門は大丈夫なのだろうか。

キョン「長門は大丈夫なのか?」

長門「大丈夫ではない。今は小規模な書き換えどころか制限を受け人並みの身体能力しかない」


止めを刺された。
長門の人並みの身体能力は小学校高学年と大差ないんじゃないか?
現状の悪さ以上に雪山で長門が倒れた事が思い出された。

長門「行動不能に陥るほどではない。私の心配は不要」

それを聞き一安心する。
それでも長門はぼんやりと霧に混じってしまいそうなほどに儚げで。

俺は長門の手を取り握り締めた。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:13:13.23 ID:QTRnDvUm0


古泉「ここに留まるのは得策とは思えません。とにかくどこか落ち着けそうな場所を探しましょう。視界が悪いのではぐれないように」


キョン「わかった。長門、手を離すなよ」

返事の声はしなかったが頷く気配がし、僅かに手を握り返してきたように思えた。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:14:26.17 ID:QTRnDvUm0


人の姿のない商店街をどこか休めそうな場所を探して歩く。
ふっと、ろくでもない考えが頭をよぎる。
人類全てが霧に化けてしまうとこんな感じになるんじゃないだろうか、と。


誰もいない街の中で響く俺たちの会話とそれぞれの足音さえも霧に吸い込まれていくようだった。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:15:39.11 ID:QTRnDvUm0


古泉「移動しながらで結構ですね?現状を整理しましょう」

足早に進みながら前にいる古泉が問う。

キョン「とにかくハルヒを探すんだろ?」

古泉「そうです。涼宮さんを除くSOS団全員がここにいることから彼女もこの世界にいる可能性が高いでしょう」


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:16:51.56 ID:QTRnDvUm0


みくる「涼宮さんはこの世界に一人でいるんでしょうか・・・・・・」
人一倍怯え、ひぃ〜と小声を上げながらもハルヒの心配をしている。お優しい方だ。

だがそれには俺も同意だ。
普段ならハルヒもたまにはこっちの苦労を思い知れ、と思うとことだ。
しかしこの世界はそんな事を思わせる余裕を与えてはくれない。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:18:09.50 ID:QTRnDvUm0


今ほど他人が居てよかったと思ったことは無い。
一人でいたら身体さえ霧に溶け自分が誰だかわからなくなってしまう・・・・・・

歩みが少しずつだが段々とに早くなり一同は早足気味になっていた。

何かに追われているような錯覚に陥りそうになる。なにもありゃしないはずのにな。


古泉「ここがどこかは判りません。サイレントヒルについての説明もお願いします・・・・・・」

すぐ目の前にいる古泉の声が遠くに感じ、繋いでいる長門の腕が冷たく感じられた。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:21:04.90 ID:QTRnDvUm0




みくる「あぶないですっ!!」

突然の朝日奈さんの絶叫にはっとし足が止まる。
ほとんど無意識の状態で走り続けていたようだ。

古泉「っ!?」

キョン「どうかしましたか!?」
長門の手を引き急いで駆け寄る。

眼を剥き呆然とする古泉。
こいつのこんな表情を見るのは初めてだ。

珍しいこともあるもんだと思い古泉の肩に手を乗せる。

キョン「どうしてったいうんだ?」

「ごらんください・・・」
ぎこちなくニヤケスマイルを取り繕い足元を指差す。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:22:24.41 ID:QTRnDvUm0


きっと俺も古泉を馬鹿にできないほど眼を剥いただろう。

悪寒が一瞬のうちにつま先を上り脳髄を冷やす。

キョン「道が・・・・・・?」

言葉が皆まで出なかった。
崩れてる?いや、「崩れてる」では言い表せない。

アスファルトが抉れ、土が捲くれ、配管が捩れ地面が異様な断面を晒していた。
滞留した灰色がかった濃霧のため底が知れない。

奈落の底

そう形容させるに相応しい禍々しさと生々しさを持って地面が口を開けていた。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:24:18.38 ID:QTRnDvUm0



長門を握っていた手が解けへなへなと膝をついてしまった。

我ながら情け無いと思うが本当にどうしようもなく力が抜けてしまったんだ。

変質した道は静かに獲物を待つ捕食者のようにも思えた。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:25:38.83 ID:QTRnDvUm0


みくる「大丈夫ですか?」

そう言って朝日奈さんが手を差し伸べてくれた。
普通は立場が逆じゃないのか?

いつもなら最も腰を抜かしそうな朝日奈さんに支えられてなんとか立ち上がる。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:27:22.32 ID:QTRnDvUm0



長門「・・・はっ・・・はっ・・・・・・恐らく先は・・・存在しない」

息を切らした長門がつらそうに言葉を絞る。
人並み(以下)の体力に無理をさせてしまったらしい。


古泉「そのようですね。霧に遮られ先は見えませんがこの様子では・・・・・・」

自身に言い聞かせるように、やれやれといったジェスチャーを大げさにしてみせる。

あまりの事に場が沈黙してしまう。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:29:48.83 ID:QTRnDvUm0


数秒か数分かの沈黙は突然の小さな異音で破られた。


砂嵐のような微弱なノイズ。

ざーっという扁平な音に時折ざりざりと耳障りな起伏が混じる。


おいおい、マジかよ・・・・・・


古泉「・・・ラジオ・・・でしょうか?」
音源を探りあたりを見回す古泉。

長門「ここから聞こえてくる」
そう言って路肩で朽ちた車を示した。

配車に最も近かった朝日奈さんは「ひっ」小さく呻き後ずさり怯えた視線を向ける。
まるで「トランクに死体が入っているんです」と言われたかのうような怯え方だ。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:34:18.80 ID:QTRnDvUm0



古泉は意を決したように車に近づきドアに手を掛けた。

古泉「ロックはかかっていませんね。音源はこのラジオですね。それとスケッチブックの切れ端が」

残念ながらキーはありませんでした。と補足しラジオとスケッチブックを眼の高さまで掲げる。


突如、ノイズの感覚が一気に短くなり受信中のファックスの様な悲鳴を上げた。



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:38:55.89 ID:QTRnDvUm0



キョン「気をつけろ!」

ちくしょう。そう思いながらも落ちていた鉄パイプを拾い構える。


キョン「固まれ!来るぞ!!」

臨戦態勢を取るが歯の根が合わずカチカチという音が頭に響く。


古泉「何が来るんですか?サイレントヒルというものと何か関係が?」
俺の只ならぬ雰囲気に影響されてか古泉も身をかためる。

やばいやばいと思いながらも冷静に長門と朝日奈さんを後ろに隠す。


キョン「サイレントヒルでは敵が来る時にノイズがするんだよ」


そうしている間に引きずるような足音を立てる影が霧の中に浮かぶ。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:41:14.01 ID:QTRnDvUm0


ゲームと違い先手必勝とは行かない。
迫り来る異形の気配に身体が恐怖してしまい動けない。


霧をぬるりと掻き分け異形が姿を晒す。

身をよじりながら近づく上半身には腕が溶け込んでおり無数の裂け目が見えた。



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:44:35.93 ID:QTRnDvUm0



キョン「・・・ライングフィギュア・・・・・・?」

みくる「ひぃっ!?」


異形の上半身にある裂け目がぐじゅぐじゅと蠢き液体の混じる黒いガスが噴出する。

幸い狙いは逸れ枯れた街路樹に飛散した。


街路樹はぼろぼろになりながら瞬く間にぐずぐずと溶解する。


その様子に恐怖が爆発し絶叫と共に鉄パイプを無茶苦茶に振り回す。

鉄パイプがゴムのような相手に何度もめり込み、擦り合わせたような悲鳴を発する。

さらに何度も打ち込むと腕の無い身体はバランスを崩し倒れた。


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:47:06.48 ID:QTRnDvUm0



息を切らした俺の肩に古泉がぽんと手をやる。


みくる「あれ、なんなんですか〜」

長門「不明」

涙声の朝比奈さんと冷静な長門のやりとりが聞こえた。


古泉「それにしても何故このようなものが・・・・・・」

そう言って未だにぴくぴくと脈動している異形の表面を恐々と触れてみる。

とたんにライングフィギュアがビクリと痙攣し高速で這いずり霧の向こうに消えた。


俺は緊張が解け地面にへたり込んでしまった。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:51:00.64 ID:QTRnDvUm0



古泉「流石に心臓が一瞬止まりましたよ」

あれからしばらくは皆が放心状態になっていたがようやく落ち着いて会話できるようになった。


やつれた顔で無理やり笑顔を作り軽口を言う古泉。

古泉「おまけに少しちびってしまいました」

キョン「まじかよ」

古泉「冗談です。それよりもこれを見てください」
そう言ってスケッチブックの切れ端を差し出した。



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 00:57:54.95 ID:QTRnDvUm0


ナメクジが貼ったような弱々しい文字が真っ赤なクレヨンで書かれていた。

『わたしは−−−−−−』

キョン「なんだよこれは?」

長門「恐らく涼宮ハルヒが残したもの。この空間を生み出したのが涼宮ハルヒならばそれ以外にありえない」

古泉「その通りでしょう」

これをハルヒが書いたっていうのか?
あいつの筆圧はもっと強烈だぞ。こんな弱々しい文字を書くような奴じゃない。


みくる「でもどうして涼宮さんがこんな世界を?」

古泉「そのためにはまずサイレントヒルとは何かあなたから説明していただけませんか」


俺はサイレントヒルというゲームについて説明を始めた。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:00:50.73 ID:QTRnDvUm0


一言で言えばホラーゲーム。

しかしバイオハザードのようなサバイバルホラーというよりもオカルトな要素が強い。
主人公は惹かれるように霧に覆われたサイレントヒルという街に踏み込みそこで怪奇現象に遭遇するのだ。
舞台や敵のデザインはグロテスクで生理的にきつく異常な状況が続く。

実は自身のトラウマがその世界を作っているのだ。

やがて主人公たちは忘れた記憶を思い出しながら決着をつけにいく。



しばらく前に「不思議で面白いものって何かないの!?」とハルヒに聞かれ貸したのだ。


古泉に促され記憶を探りながら各シリーズの詳細について語っていく。





知らない人はすいません
更にすいませんが、ちょい休憩&続き作成
まだそれなりに書き溜めてるつもりだけど遅筆なので追いつくとあれなので
その間にサイレントヒルについて調べて頂けると幸いです。


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:31:25.84 ID:QTRnDvUm0


やがて俺を除く皆の顔が深刻な表情に変っていった。長門まで雰囲気が変っている。


古泉「その話を聞いてここがどこかは判りました。事態は深刻です」

そう言いながら爪を噛む古泉。そんな姿初めて見たぞ。



96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:33:45.22 ID:QTRnDvUm0



みくる「あの・・・キョン君に話してしまうんですか?」

長門「彼が知らなければ物語は進まない」

古泉「できれば話したくありませんが非常事態です。やむをえません」
それに向かう場所決まりました。と続ける。

長門「そうだとしたら場所は知っている。ここから遠くない」

古泉「では案内をお願いします」

長門「・・・わかった」

みくる「・・・・・・・・・」


どうやら俺一人だけが知らない事があるらしい。
まぁ今に限った事じゃないがな。



妙な疎外感を感じながら終始無言な一同に続いた。
途中でノイズがしないのを願うばかりだ。



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:35:43.26 ID:QTRnDvUm0


濃霧の中を進むと時間と距離の感覚が無くなっていく。
それでも長門の足取りはしっかりしている。


キョン「長門、力は使えないんじゃないのか?」

長門「接続が切れる前の情報は残っている。この街が涼宮ハルヒが住んでいた街だとしたらこの方向で間違いはない」

キョン「なんだって!?ここが!?」

そう言われて思い至る。俺は涼宮ハルヒの過去をろくに知らない。


古泉「そうです。サイレントヒルの話を聞いて判りました。詳細は目的地で話します。」

キョン「朝比奈さんも何か知っているんですか?」

みくる「・・・・・・禁則事項です」

朝比奈さんは辛辣な表情のままそれ以上答えてくれなかった。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:40:42.76 ID:QTRnDvUm0


一同の歩みが止まる。

長門「・・・ここ」

黙々と歩き続け疲労しているのか長門の息が僅かだが上がっている。


古ぼけた一般住宅が目の前にあった。

表札を確認していた古泉が表札に視線を集めさせる。

古泉「擦れて読み難くなっていますが間違いなく『涼宮』です。上がらせていただきましょう」

鍵の掛かっていない玄関を開き、傍若無人にも土足のまま上がりこむ。

廊下の先の闇に時折ちらちらと差し込むような光の筋が走る。
カーテンが風になびいているのだろうか?

古泉を先頭に朝比奈さん、俺、長門と続く。

古泉「危ないかもしれないので少し待っていて下さい」

そう言って廊下に俺たちを残し居間らしき部屋の奥へと向かっていった。



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:43:44.87 ID:QTRnDvUm0



シャッっとカーテンを開く音が聞こえ、「・・・・・・大丈夫です。来てください」と続いた。


居間に入るとテーブルの上に置かれたスケッチブックに視線が釘付けになった。

真っ赤なクレヨンをすり潰すかのような筆圧で辛うじて読み取れる文字が書いてある。

『助けて!!』

なんでこんなものが?


古泉が「とりえず座りましょうか」と皆を促しソファーに腰を下ろした。



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:46:59.24 ID:QTRnDvUm0



古泉「核心から行きます。彼女はかつて虐待といじめを受けていました」

いきなり衝撃的な事を告げられた。
あのハルヒが?

みくる「古泉くんっ!」
立ち上がりかけた朝比奈さんが古泉に非難するような視線を向ける。


長門「朝比奈みくる、先に進むには彼が真実を知る必要がある」

わかって。と小さく続け朝比奈さんを見据える。

長門に諌められ浮きかけた腰を再びソファーに下ろし俯いてしまった。


古泉「続けますね。神にもタブーの歴史があるんです。あまり楽しい話ではないので簡潔に話しましょう」



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:48:12.09 ID:QTRnDvUm0



それでも話は凄惨を極めた。

実の両親からの虐待。
それによる学校でのいじめ。

それは容赦も救済はどこにも無く何年も続いた。


古泉「でもそれは唐突に終わりました。たまたまいつもより過剰な暴力を振るわれたのでしょう」

朝比奈さんは小さく呻き、長門でさえ顔が強張っている。

嫌な予感がする。


110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:51:30.09 ID:QTRnDvUm0


古泉「・・・一度、死んでしまったんです」

彼女の心肺は停止、焦った両親が救急車を呼び事態は発覚しました。
そそて幸いにも彼女はすぐに到着した救急車の中で息を吹き返しました。
それから紆余曲折を経て遠い親戚に。そして今に至ります。


古泉「彼女が我々のような存在を望んだのはそんな日常から遠くありたいと思ったからでしょう
そして三年前、自分を理解してくれた貴方に出会い良い方向に望みを抱けるようになったのです」


その一言を付け加え古泉の独白は終えた。


116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 01:57:41.17 ID:QTRnDvUm0


キョン「だったら何でも思い通りにできるのに、何でよりによってこの世界を造ったんだ?」


古泉「今まではなんとか記憶から切り離されていましたが、恐らくサイレントヒルのアレッサという少女と過去の自分が重なり思い出されたのでしょう」

俺がうかつに貸してしまったゲームはあいつのトラウマそのものみたいじゃないか。


古泉「ひどい虐待に晒された子供の多くは絶望し救いを諦めてしまいます」

長門「だから涼宮ハルヒは自分自身で状況を打開できない」



122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 02:04:38.50 ID:QTRnDvUm0


みくる「涼宮さんはこの禁則事項はきっとキョン君には知られたくなかったはず・・・」
黙していた朝比奈さんがぽつりとこぼす。

朝比奈さんも知っていたのだろう。そしてハルヒの気持ちを考え制止しようとしてた。

キョン「ありがとうございます朝比奈さん。それでも俺たちがこの世界にいるのはきっと助けて欲しかったからだと思います」

長門「急いだほうがいい。この世界では涼宮ハルヒは虐待され続けている可能性が強い」

キョン「なんでだよ!」
ふざけるな。一度殺されてまでしたのにまだ終わっていないのか!

古泉「たとえ神であっても自身のトラウマには無力です。ここは自身を苛み続ける閉じた世界でしかないのです」


長門「ここに居ないのであれば涼宮ハルヒがいる場所は搬送された病院か学校と予想される」


とりあえず向かう先は決まったな。待ってろよハルヒ。


130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 02:13:56.69 ID:QTRnDvUm0


腰を上げた途端に世界が暗転する。

頭が痛い。ひどい耳鳴りがする。視界がぼやけ幾重にも重なって見える。


空間が歪み窓が消える。
壁紙から血と錆びが滲み出す。

異界化している。

キョン「なんだってこんな時に・・・」

視界の端にみんなの姿を捉えたが段々と意識が遠のいていった。


133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 02:20:57.72 ID:QTRnDvUm0



・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


ざりざりというノイズが聞こえる。

やばい。そう直感し一気に身を起こす。


キョン「起きろ」

そう言って全員を乱暴に揺すり起こす。
朝比奈さんの胸の感触を味わう暇はなかった。

ラジオのノイズは今までにないほど激しかった。

古泉「・・・・・・これが裏世界ですか」
寝ぼけたように呟く古泉。

部屋そのものは倉庫のように変質し、
居間への入り口は古めかしく重厚な観音開きの扉に変っていた。

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 02:24:55.50 ID:QTRnDvUm0



キョン「そんな場合じゃない!」

その絶叫と同時に自動車事故のような轟音が響く。

無骨な金属の扉がたわんだ。


みくる「ひえっ!?」

2度、3度と何かが打ち付けられ生じた扉の隙間に分厚い金属がめり込む。

差し込まれた金属はよく見ると大振りの鉈だ。


刃先は探るように隙間を抉りぐりぐりと押し広げていく。



キョン「・・・最悪のやつが来た」




137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 02:31:30.42 ID:QTRnDvUm0


古泉「なんとか脱出しなければ」

みくる「でも出入り口には・・・」


その間にも唯一の扉は薄いアルミ板のように歪んでいく。



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 02:36:32.90 ID:QTRnDvUm0


そんな中か細い声が冷静に呼ぶ。

長門「きて、ここから出られる」

そう言って天井付近の小窓を指差す。

キョン「なんとか行けるか?」

古泉「椅子があります。台座に出来ます」


古泉「まずは長門さんからです」

長門「わかった・・・・・・くっ」

長門「わずかに手が届かない」


キョン「俺が肩車する。支えてくれ」
肩車の結果、白くしなやかな太ももに顔を挟まれたがそれを堪能する暇は無いほど必死だった。


141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 02:43:19.28 ID:QTRnDvUm0


長門「これならばいける。・・・・・・よっ・・・と」

長門「外の足場は問題ない。次は誰?」

古泉「朝比奈さんです。肩車の必要はありませんね?」

みくる「はい。たぶん大丈夫でっ・・・・・・・・・んっ」

はやり胸がつっかえてしまったか。


みくる「ふぇ〜。長門さんっ・・・無理に引っ張らないで」

長門「問答無用。それどころではない」


そんなやり取りをしながらも窓の向こうに引っ張られていった。

みくる「大丈夫です。キョン君も古泉君も急いでください」



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 02:49:49.63 ID:QTRnDvUm0



ぎぎぃと金属の裂ける音が一段と大きくなり赤茶けた三角の頭が覗く。


古泉「時間がありません。次はあなたです。これを持って早く!」

ラジオを押し付け有無を言わさない剣幕で古泉が急かす。

キョン「わかった。すぐ引き上げてやるからな」


瞬く間に扉は働きを失い、三角頭の異形は枠から外れた扉を踏みしめながら近づいてくる。

歩みの旅に身の丈ほどもある鉈が引きずられ不快な音を立て接近を知らせる。



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 03:01:25.97 ID:QTRnDvUm0


ぐいっと窓をくぐり金網の狭い足場に出る。


みくる「古泉君は?」

キョン「今引き上げます。古泉来い!」

しゃがみこみ手を伸ばそうとする。
しかし、小窓は内側から閉じられてしまった。


小さな音を立てて鍵がかけられた。


中から古泉が叫ぶ。


古泉「間に合いません!涼宮さんに必要なのはあなたなんです!だからっ・・・」


直後、血入りの袋を叩き潰すような吐き気を催す音が溢れた。

キョン・みくる「古泉(くん)!」


157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 03:10:32.82 ID:QTRnDvUm0

・・・・・・
・・・


大振りの鉈は押し潰すような勢いで背中から突き刺さっていた。

気の狂いそうな傷口の痛みで意識が遠のく。

小窓の向こうからは彼と朝比奈さんの声が聞こえる。
閉じられた小窓を割ろうとしているのだろう。彼の足先が何度もガラスを叩く。


「あぁ、せっかく窓を閉じたのに。これでは割れてしまう」と、どうでも良いこと考えながら身体を貫く刃先にからまった腸を眺めた。


切れ味は最悪みたいですね。綺麗にスパッとはいかないのか。


長く苦しみたくはないですねぇ・・・


その間にも小窓に蹴りが飛ぶ。
しかし、意外にもまだ割れる気配はない。


そこで、このままでは戻って来てしまうんじゃないのかと言う事に考えが巡った。

どうせなら彼と自分に向けてせめてもの気休めでも。

そうすればきっと先に進んでくれる。

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 03:15:34.77 ID:QTRnDvUm0



古泉「僕は大丈夫です!そしてこれはゲームなんです!ボードゲームと同じです!!」

声の限り叫ぶ。胸が潰れていなくてよかった。
あぁ、でも胸が潰れていたら苦しまずに逝けたのかなぁ。


古泉「涼宮さんを救えばゲームはクリアです!そうすれば悪夢も終わりです!!だから早く!!」

吸い込んだ空気が腹から漏れて血を撒き散らす。べろりと腸も垂れてきた。
あぁ、痛い。


キョン「必ず助ける!!」

彼がそう叫び朝比奈さんが泣き叫ぶのが聞こえる。
長門さんの僕を気遣う声もした。

金網を不器用にガシャガシャ鳴る音も聞こえる。きっと先に進んでくれたのだろう。


血と共に「ふぅ」と溜息をつく。

そんな古泉の腕を三角頭の鉈を握っていない腕が掴む。

あっと思う間も無かった。
突き刺さった大鉈を支えに腕が半身と一緒に引き千切られた。

そこで古泉の意識は闇に沈んだ。

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 04:14:12.85 ID:QTRnDvUm0

微速で再開

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

キョン「長門、病院と学校のどっちにハルヒがいると思う?」

長門「不明。地理的に現在地からは病院が近い」


みくる「こ・・・古泉君はどうするんですか?」
裾を掴んだ朝比奈さんはがちがちと震えながら聞いてくる。


キョン「今は古泉よりハルヒです」

みくる「でも・・・それでも・・・・・・」

長門「朝比奈みくる。私たちがあの場に留まっていても出来る事は無かった。今は進むしかない」


しっかりと朝比奈さんの目を見て長門が説く。
なんとかインターフェイスがこんな事をはっきりと言うのは初めてに思えた。

長門「先を急ぐ。付いてきて」

そう言って朝比奈さんの手を取り小走り気味に駆け出した。
その間際にちらり俺に悲しげな顔を見せた。俺はその後を追う。


180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 04:24:21.90 ID:QTRnDvUm0


街の様子も変っていた。
夜の街に霧が満ちている。

ポケットに突っ込んだラジオが時折小さなノイズを発するが構わず走る。


長門「こっ・・・ここ・・・・・・」

息切れした長門が息も絶え絶えに言う。

二人で手を握り必死に先を促し駆ける長門に朝比奈さんも感化されたのだろうか。
涙目ではありながらも何か決意が宿っているように思えた。


185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 04:31:34.15 ID:QTRnDvUm0



胸に手をやり、すーっすーっと呼吸を整えるながら長門は続けた。

長門「涼宮ハルヒがいるとしたら小児病棟。保護されたのはそこだから」


目的地は決まった。そこにいなければ学校に行けばいい。

キョン「わかった」

扉は鍵の掛かっておらず暗いエントランスに踏み込む。


189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 04:39:49.20 ID:QTRnDvUm0


受付カウンターを乗り越え病棟の場所を確認し、鍵束の管理ボックスを探す。


みくる「これじゃないですか?」

キョン「これです朝比奈さん。危ないのでどいてください」

みくる「えっ、はい」


きょとんとした朝比奈さんが素直に下がったのを確認したら傍にあった椅子を手に取った。

長門も見守る中、椅子を思い切り振りかぶり管理ボックスに叩きつける。

ゲームでは回り道や鍵を入手したりと面倒が多いが今はそんな事には付き合っていられない。


唖然とする朝比奈さんと無表情の長門を無視し、もう一度椅子を振りかざす。

大きな音を立てながら蓋が鍵ごと外れた。



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 04:48:29.24 ID:QTRnDvUm0


病院内は暗く床に落ちた鍵が良く見えない。

キョン「くそっ。暗いな」


長門「これ。ライトを見つけた」

そう言って足元を照らしてくれる。


キョン「助かる」


闇に生じたぼやけた円形の光が足元を流れる。

ライトが反射し鍵が小さく存在を主張した。


キョン「あった!」

鍵束を拾い上げポケットにつっこむ


みくる「人数分の懐中電灯です。それに千枚通しがありました」

キョン「朝比奈さん、助かります」


それぞれライトと千枚通しを受け取り小児病棟を目指す。

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 05:09:55.48 ID:QTRnDvUm0


小児病棟は2階の東棟。たいして遠い距離でもない。

暗い廊下を3人で足早に駆ける。

足音が廊下に反響し人数分以上の存在を感じさせる。


生憎エレベーターは起動しておらず階段を使うしかない。


長門「右に非常階段がある」

長門のナビゲーションに従い廊下を進む。


208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 05:27:08.11 ID:QTRnDvUm0


長門は建物の地図は長門が全て記憶している。
思念体との接続が断たれ人並みの体力しか発揮できなくても記憶力と判断力は減衰していない。


鍵束から病院内のマスターキーを選び鍵穴に差し込み非常階段へ。


非常階段内は廊下よりも数段暗く、灯火する非常等が不気味に赤く光っている。


不吉な様子に一瞬怯む。

大丈夫。ノイズが入らないうちは・・・・・・・

キョン・みくる「っ!!」


ポケットに押し込まれたラジオがけたたましくノイズを吐き出す。


遠のきかける意識で壁に入る亀裂と血のような染みが浮き出るのを見た。

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 05:35:54.49 ID:QTRnDvUm0


頭が痛い。

ここで意識を失ったら助からない。

キョン「くそっ!!」

大声で悪態をつき壁に頭をぶつける。


痛みで涙が滲んだ。

呻く長門と朝比奈さんの腕を強引に掴み歩き出す。


一瞬捉えた階段の角には槍を持った三角頭が見えた。



223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 05:58:59.69 ID:QTRnDvUm0


指が震え、かちゃかちゃと鍵が遊ぶ。

目的の階には到達している。
あとは急いで扉を開くだけ。


鍵の狙いがそれ何度も鍵穴を逸れる。


落ち着け!落ち着け!!


もう一方の手で振るえを無理やり止める鍵を差し込む。

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 06:10:48.84 ID:QTRnDvUm0


鍵ひねり扉を開く勢いで一気に引き抜く。

長門と朝比奈さんを扉の向こうへ押し出し自分も飛び出す。

再び鍵を掛け直し階段からの進入を遅らせる。


ふら付いた足取りではあるが二人とも頭痛から立ち直っていた。


長門「すぐそこの病室」

後ろは振り返らず目的の病室をめざす。


233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 06:13:38.32 ID:QTRnDvUm0


3人でなだれ込む様に病室に踏み込む。

広い6人部屋だろうか。


そして全てのベットの暗い気配はカーテンで覆われていた。


長門「ここには居ない」

長門に言われるまでも無かった。
生きた人間の気配はしない。

あるのは微かな腐臭とラジオのノイズだけだ。


みくる「もどりましょう」

長門「そのほうがいい」


一歩、引き返そうとするのと同時に扉が外側から激しく歪む。


235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 06:18:52.30 ID:QTRnDvUm0


閉じ込められた!

ベットを仕切るカーテンがぶちぶちと引き千切られる。


それぞれのベットには看護婦がいた。

しかし皆一様に顔が血と膿で汚れた包帯で覆われ関節が捻じ曲がっている。


関節を軋ませカラカラを甲高い声で嗤う。

朝比奈さんが着れば癒し与えるナース服も異形が纏うと醜悪でしかなかった。


みくる「ひっ!?」
怯えながらも千枚通しを握り締めている。


機械仕掛けの人形のような動きで一斉に押し寄せてくる。



236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 06:20:18.40 ID:QTRnDvUm0



歪んだ唯一の出入り口からも外側から何かが押し入ろうとしている。

部屋の向こうの窓も鉄格子と金網で外には出られそうにない。


進退窮まり部屋の隅に追いやられしまう。


狂気に彩られたナースが眼前まで迫る。


240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 06:25:13.33 ID:QTRnDvUm0



突如、扉が数体のナースを巻き込みながら吹き飛ぶ。

さらに入り口付近にいたナースにその腕よりも太い槍が突き刺さるのが見え三角頭が姿を現した。


ふと眼が合う。

三角形の金属の奥から表情無くこちらを見つめるのがわかった。


串刺しにしたナースを引き千切り放る。


臓器が粘性の糸を引き血を撒き散らす。
僅かに引っかかったままの下半身は小さく痙攣しながらもがいている。


むっとする生臭さと真っ赤な光景に戦慄する。


感情の無い死刑執行人にとっては眼前の障害を除けた以上の意味は無いのだろう。

242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 06:27:50.47 ID:QTRnDvUm0


ナースたちは突然の闖入者に向かって手にしてるメスを振りかざす。

三角頭に幾本ものメスが柄を残して刺さる。


三角頭は自身をわらわらと取り囲む煩わしい障害物の排除するための動きを取った。

そのために槍を大きく真横に薙ぎ払う。


その瞬間を長門は見逃さなかった。


長門「伏せて」

そう言うなりキョンと朝比奈みくるの後頭部を掴み無理やり伏せさせる。


周囲を取り囲んでいたナースの群れは各々に背骨を奇怪な方向に歪め、潰された虫のように弾き飛ばされた。

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 06:31:21.21 ID:QTRnDvUm0


長門「走って」

二人の手を握り、ぐいと引っ張る


蹴散らされたナースと体制を整えきらない三角頭の脇を抜け出口を目指す。


しかし、三角頭の槍を持たない自由な腕がぬうっとのびる。


両の手に握っていたはずの感覚が一つ消えた。


長門「朝比奈みくるっ・・・!」

キョンは長門を挟み反対側にいる朝比奈を認識できていない。


長門は戻るか進むかの判断がつかないまま振り返ろうとする。
しかし、引っ張っていたはずのキョンに引っ張られ病室を抜けた。


長門には病室を抜ける間際に視界の端で「行ってください」という朝比奈みくるが見えた気がした。

247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 06:34:51.95 ID:QTRnDvUm0

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


私は自分のとろさに今まで以上に腹が立った事は無かった。

私の鈍間さのせいで長門さんは自分を責めてしまうかもしれないという傲慢な事さえ思った。


三角頭に掴まれている左腕は骨が砕け、搾られへたった雑巾のようになっている。


じくじくとした腕の痛みに負けないくらい胸が焼ける思いだった。


ぐいっと搾られた腕を持ち上げられ力なく宙吊りにされる。

搾られ骨が砕けた箇所は皮膚と筋肉のみでかろうじて繋がり体重で引き伸ばされる。


眼に涙を浮かべながらも目の前の異形をきっと睨みつける。

こいつに感情があるのかは判らないけど。


それでも最後まで精一杯抵抗してやろうと思う。


249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 06:36:04.86 ID:QTRnDvUm0


無事な右手で千枚通しをぎゅっと握り締める。

きっとこいつにも痛覚くらいはあるよね?


えいっと混信の力を込めて千枚通しを顎側から金属製の三角頭の内側に突き刺す。

三角頭の内側から咆哮が響き左腕を掴む引きつったような腕に力が加わった。

私の腕はその力に耐え切れず残っていた皮膚と筋肉は「ぱんっ」と音を立てて弾けた。


当然、腕でぶら下げられていた私は床に落ちた。

恥ずかしい。あまりの痛みに失禁してしまった。

それでも、右手に持っていた鋭器は三角頭の中に残してきた。


ざまぁみやがれ


異形は予想外の抵抗に苦しんで逆上している。

これなら漏らした甲斐もあったなと思う。

そこに三角頭が構えなおした槍が振り下ろされた。

そこで朝比奈みくるの意識も闇に沈んだ。

261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 07:01:41.23 ID:QTRnDvUm0

残弾もほとんど底を尽き
流石に疲れたので仮眠します

あははー
ナムボディがみえるー
まどの外にはクローさーがー
といれにはくりーぱーがいたよ

ということでヒルまでには再開を

申し訳ないが保守を
1000までに本編完結をしますので

321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 13:04:02.31 ID:7JY4j91x0


振り向かずに一気に病院のエントランスまで走った。

俺はそこで朝比奈さんがいない事にはじめて気付いた。

長門は俯き小声でぶつぶつ言っている。


キョン「どうした長門。朝比奈さんは?」


長門「・・・教えて欲しい。私はどうしたらよかった?」


長門「・・・答えて欲しい。私はどうするべきだった?」



325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 13:16:44.55 ID:7JY4j91x0


今の長門からは冷静さが感じられず錯乱した印象を受ける。


キョン「落ち着け。俺が見えるか?」

そうして視線を同じ高さに合わせ、手のひらで両頬を包む。

揺れる視線がしだいに落ち着きまっすぐに見返してきた。


キョン「何があった?」

長門「朝比奈みくるを病室に残してきた」
とんでも無いことをいつもの平坦な声で即答する。


327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 13:25:31.78 ID:7JY4j91x0

キョン「説明してくれ」

長門「朝比奈みくるが異形に捉えられた」
先ほどのように平坦な声で即答する。

しかしそこからまた瞳が震える。


長門「私は決断を下す事ができなかった。あの場で全ての状況を認識できていたのは私だけだった」


有機インターフェイスの独白は続く。


長門「しかし、私は動けなかった。思考が止まって・・・・・・」

掠れるような声でぽつりと続ける。

長門「朝比奈みくるの犠牲は私の責任」

328 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 13:34:44.58 ID:7JY4j91x0



俺の中には今だかつて無い自己嫌悪が荒れ狂っていた。

任せてしまい気付くことなく長門に大きな責任を感じさせてしまった。

自分は逃げる事に必死で。
なんて情けないんだ俺は。


・・・教えて欲しい。私はどうしたらよかった?
・・・答えて欲しい。私はどうするべきだった?


キョン「すまない!」
昂ぶった気持ちはどうしようも無くなり儚げな長門を抱きしめる。


キョン「どうしようもなかったんだ。長門のせいでも、ハルヒのせいでも無い。俺が・・・・・・」


338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 13:54:04.22 ID:7JY4j91x0


そんな中できゅうっと長門に抱きしめ返される。

長門「理解はできている。誰のせいでもない」


有機インターフェイス内にある情報の奔流が静かに収束していく。


長門「例え改変を行っても分岐が増えるだけで事実は覆らない。それでも・・・・・・」

処理しきれない情報が言語化できず言葉尻は消えていく。


342 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 14:13:55.28 ID:7JY4j91x0


どのくらいそうしていただろう。

数十分にも数十秒にも感じられた。

そもそもこの世界にどう時間が流れているかは判らないが。


長門「大丈夫。エラーは処理された」

もう行動に支障は与えない。そう付け加え離れる。


長門「学校に向かう。そこに間違いなく涼宮ハルヒはいる」


キョン「すまないが案内を頼む」

長門「まかせて」

とう言って互いに手を取り走り出す。

悪夢の終わりに向かって。

356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 14:28:01.33 ID:7JY4j91x0

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


死んだ人間が生きていていい道理はない。

特に私は愛のために死んだのだから。

だから私はもう一度死ぬべき。


その考えが浮かぶと同時に2体の異形がそれぞれ持つ大鉈と槍を振るう。


衝撃が走り気が狂いそうになる痛みが巡る。
それでも痛すぎて正気に引き戻される。


359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 14:37:11.46 ID:7JY4j91x0



私は悪い子だ。
だからお父さんもお母さんも私を罰した。

罰を受けて罰を受けて罰をうけ続けて。

そして死んだ。
死んだはずだった。


両親は私を好きだったに違いない。

愛も無いのに叱ったりしないもんね?

だから叱り続けてくれた。


死ぬまで。


でも私は裏切ってしまった。

のうのうと生き返ってしまった。

しかも私のせいでお父さんもお母さんも家族でもない愛してくれてもいない他人に罰を受けた。


365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 14:49:37.03 ID:7JY4j91x0


私が全て悪い。

ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。


だからもう一度死ななければ。

そうすれば両親はきっとまた自分を!!



不憫な子と私を蔑んでいたみんなに私がどれほど愛され幸せだったかみせてあげなくては。

それを示す唯一の方法。

372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 15:06:07.72 ID:7JY4j91x0


その思いに答え胴体を貫く2本の鉄塊は私を殺してくれる。


凶器は互い違いの方向に引きずられ私の身体は縦に裂ける。


それでも訪れる死の直前に無意識のうちに生を渇望してしまう。

嫌だ!やっぱり死にたくない!!


ぶつり


それでも身体は袋からぶちまけられたように中身が晒されぼたぼたと零れ片側に寄ってしまった首はだらりとぶら下る。


そこで意識がぷっつりと途絶えた。



376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 15:12:39.19 ID:7JY4j91x0

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

ふと目を覚ます。


そうだ、死んだ人間が生きていていい道理はない。

特に私は愛のために死んだのだから。

だから私は・・・・・・・・・・・・・

379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 15:20:56.69 ID:7JY4j91x0


長門「・・・・・・あそこ」


校庭にある照明が煌々と灯され校舎に深い陰影を浮かべているのがはっきりと見える。

あと少しだ。
待ってろよハルヒ。

382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 15:36:41.26 ID:7JY4j91x0


長門と共に開放されたままの校門をくぐる。

途端に、濃密な血の生臭さと脂の生臭さが鼻を刺激する。

吐き気を催し思わず小さく呻く。

濃い霧は微かに朱が混じっている。


まさか、遅かった!?


長門「・・・大丈夫。きっと大丈夫」

そんな俺を感じとり自分にも言い聞かせるように話す。


異様な臭気と禍々しい気配は体育館側から漂っていた。

ラジオは狂ったようノイズを吐き続けていた。

387 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 15:54:00.94 ID:7JY4j91x0


変質した体育館内は薄暗い照明が飾る陰影が濃くぼんやりとした輪郭しか見えない。

バスケットボールのゴールに何かかが括り付けられており、
その両側に三角頭が立ち尽くしているようだ。


長門「あなたは涼宮ハルヒを開放して。私があれを引きつける」

キョン「大丈夫なのか?」

長門「問題ない。非常に限定的な能力ならば発揮できるはず」


キョン「無理はするなよ」

長門「お互い様。ラジオは私が持つ。音で注意を引けるかもしれない」


391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 16:08:09.70 ID:7JY4j91x0


長門「先にいく」

はっきりとそう告げ体育館に踏み込む。


長門「悪夢もこれで終わり」

扉の向こうからは長門の宣戦布告が聞こえた。


409 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 16:28:55.03 ID:7JY4j91x0

・・・・・・
・・・

的確に状況を見極める。

よく見えないがバスケットゴールにぶら下っているのは涼宮ハルヒであろう。

そして敵性対象は目の前の2体。

最大の脅威ではあるがきっと大丈夫。

きっと・・・・・・

情報統合思念体との連結が解除されてから不確定で曖昧な表現が増えたことに思い至る。

限定的な能力の行使も本当に行えるのかもやってみなければわからなかった。


彼が涼宮ハルヒを救える保障さえ無いのだ。

それでも自分に出来ることを見定める。


手にしたラジオから流れる異音は意識から締め出し、能力の行使に集中する。

413 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 16:37:31.16 ID:7JY4j91x0


自分を構成する情報の流れを変える。

 2体の三角頭が迫る。
 距離を取りながら小刻みに動き翻弄する。



何故、自身の身体機能の情報改変さえできなかったのか。

原因はこの霧だ。街の中、至るところに滞留している。


恐らく霧の正体は涼宮ハルヒの狂気。


始めのうちは解析できなかったが今なら判る気がする。

知識として得た近い単語を当てはめる。


狂おしいほどの愛と悲哀。どうしようもないほどの絶望と悲嘆。


得ているボキャブラリーではこの程度しか表現できない。


それらが私を圧倒する情報量で周囲に満ちていたのだ。


419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 16:50:20.26 ID:7JY4j91x0


 振り下ろされる鉈をすれすれで避け、
 まっすぐに突き出される槍を受け流す。

エネルギーとして情報を消費する分、私を構成する情報は量を減らす。



場を満たす情報のプロコトルとも言うべきものは、この空間での経験により僅かではあるが理解できた。


ならば情報を改変できるはずだ。

424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 17:04:08.14 ID:7JY4j91x0


しかし、私が制御できる容量を遥かに超えている。

私という固体情報は確実に呑み込まれる。

それどころか私という端末を通して、断線しているはずの情報統合思念体さえ呑み込まれる危険がある。


"涼宮ハルヒの存在"と"情報統合思念体"を天秤にかける。

いや、天秤の両端は、"彼を含めた私たち"と"情報統合思念体"か。


比べるまでも無い。

ふっと面白いことが思い浮かんだ。

長時間接続切れていると有機インターフェイスとしての自覚が薄れてしまうのだろうか?

思念体から完全に独立すれば人になれるのだろうか。

 避けきれなかった三角頭の拳が薄くなった私を削る。
 それに構わず2体の間に割り込む。

 2体の死角に入りこんだおり、ラジオの音源に向かいそれぞれが振り返り様に凶器を振るった。

うまくいって。

これが失敗したら手段はそれしか残らないのだから。


433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 17:23:06.17 ID:7JY4j91x0



長門が引き付けている間に体育館の縁へ向かって登る。

ハルヒを開放して上から引き上げるために。


ゴール裏にまわり飛び移る。


ハルヒは有刺鉄線で腕を縛られぶら下っていた。

意外にも有刺鉄線以外での傷は見当たらなかった。


囁くように叫ぶ。
ばれてしまってはおとりとなった長門に申し訳がない。

キョン「ハルヒ!」



435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 17:27:39.57 ID:7JY4j91x0


専用の上からぶら下った脚立を寄せハルヒに近づける。

声を掛けながらぺちぺちと頬を叩く。

真っ白になった血の気が引いた顔はうっすらと瞼を開ける。

ハルヒ「・・・・・・きょん?」

キョン「よかった。無事か?」

虚ろな顔を覗き込み簡潔に説明する。

キョン「逃げるぞ。時間が無いんだ。痛いと思うが我慢してくれ」


素手ではとても解けそうにないのだ。
そう言って、ぎっ と有刺鉄線を素手のまま引っ張りなんとかたわませる。

針が何箇所にも刺さり手を真っ赤に染める。
それでも構うものか。

わずかにゆるくなったその隙間から、そっとハルヒのうでを引き抜く。

437 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 17:32:33.08 ID:7JY4j91x0


両手のひらを引ん剥きながらもハルヒを取り戻すことができた。

この程度で済んだのは幸いだった。


あとはハルヒに悪夢の終結を望ませるだけだ。


長門を残すことに抵抗を感じながらも、当初の打ち合わせどおりにハルヒを抱え体育館を後にする。



439 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 17:35:35.77 ID:7JY4j91x0


鉈と槍がラジオを持っていた長門の手があった高さを中心に交差している。

相打ちをさせる事ができた。


ノイズを発していたラジオはと長門の手首は原型を残していなかった。

親指だけが皮一枚で肘あたりに垂れ下がっている。
他の指だったものは数本が床に散らばっていた。



情報が足りないために出血は無い。

床に転がっていた長門を構成していた情報も霧散して消えた。



それでも計画通りに事を運べたようだ。


三角頭は互いに胸を貫き動きを止めていた。


既に自我と記憶と最低限の外見の情報しか残っていない。

それらの維持も覚束ない。情報操作も既に不可能だ。

そのうちに霧に呑まれて消えるだろう。

440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 17:36:58.48 ID:7JY4j91x0

・・・・・・
・・・

文学作品では「全力を尽くしたから悔い」というような趣旨のセリフや言動がよく見られた。

目的を達成してもしなくても使われている。


私の場合はどうだろう?

涼宮ハルヒの観測という最大の目的は果たせそうにない。
それでも彼と立てた目的は果たした。

443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 17:40:58.88 ID:7JY4j91x0


悔いはない?


いいえ。

ここで終わってしまうことが非常に悔やまれる。

観測という当初からの最大目的を果たせない以上に悔しい。


もっと存在していたかった。

いや、違う。
ただ在るだけでは物足りない。

生きていきたかった。

ひたすらにしんしんと積もるばかりの雪ではなく、
人の温もりを知りながら融けていくような雪に。



意識が失われていく間際に2つの異形が再び動き出そうとびくびくと痙攣するのが見えた。


逃げて――――――――――


最後の叫びは空気を伝わることなく霧散して消えた。

523 名前: ◆pVGWJPoky6 [] 投稿日:2009/02/08(日) 21:19:22.36 ID:7JY4j91x0


俺はハルヒを抱え学校を走る。

学校というものはだいたい似たような構造をしているものだ。

視聴覚室のような特別教室がどこかにあるはずだ。


やっと見みつけた。
この教室なら。

机と椅子の配置をいじる。

皮が剥けた手のひらが激しく痛み、触れたもの全てに血のりを付着させる。


526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 21:20:37.92 ID:7JY4j91x0


教室の様子が変りSOS団の部室を思わせる。

キョン「ハルヒ、判るか?」

ハルヒ「・・・・・・きょん?」

キョン「しゃっきりしてくれ団長」

キョン「古泉も朝比奈さんも長門も今はいない」

その名前を聞きハルヒの顔が僅かながらに震える。


キョン「それでもハルヒがまとめてくれればみんなが戻ってくるんだ」


527 名前: ◆pVGWJPoky6 [] 投稿日:2009/02/08(日) 21:21:53.68 ID:7JY4j91x0


ハルヒ「・・・・・・でもお父さんとお母さんが私を愛しているの」


拙い言葉が絞られる。


重い金属を引きずる音が暗く見通せない廊下から響く。

長門・・・・・


ハルヒ「ほらぁ、迎えにきてくれた」

重く不吉な足音を聞きそわそわと落ち着きがなくなる。

強引に抱き寄せ片腕を後頭部に腕を回す。
そして、もう一方の腕は頬を撫でる。

俺の手のひらから流れる血がハルヒを伝う。


突然の抱擁にハルヒはびくりと震える。


閉鎖空間でのキスが思い起こされた。
そこからSOS団での活動とハルヒが走馬灯のように巡る。


今のあまり様子に心底から悲しくなる。

528 名前: ◆pVGWJPoky6 [] 投稿日:2009/02/08(日) 21:23:06.29 ID:7JY4j91x0


 執行人である三角の頭をした怪物が廊下の闇から姿をあらわす。


ハルヒに問う。

キョン「お前もあいつらに酷い事をされてきたんじゃないのか?」


目を合わせようとぜずにハルヒは答える。

ハルヒ「痛くされたのはみんな私のためなんだから!」


この姿を見て可哀想と思うのは俺の傲慢だろうか?


530 名前: ◆pVGWJPoky6 [] 投稿日:2009/02/08(日) 21:24:19.43 ID:7JY4j91x0


 三角の頭をした執行人は教室の敷居をまたぐ。


ハルヒにさらに問う。

キョン「本当にそう思うのか?」


必死に目を逸らしながら答える。

ハルヒ「ほ、本当だもん!!」


この姿を見て救いたいと思うのは偽善だろうか?

531 名前: ◆pVGWJPoky6 [] 投稿日:2009/02/08(日) 21:25:32.97 ID:7JY4j91x0


 三角の頭をした執行人は二人を見下ろし凶器を構える。


キョン「なぁハルヒ。だったらなんで泣いているんだ?」

ハルヒ「ひっ!?」

小さく呻き、何も無いところを彷徨っていた視線が俺を見返す。

ハルヒ「・・・・・・キョン?」

死んだ目には精気が宿り、あの太陽みたいなハルヒが戻ってくる。


この姿をみて愛おしくてたまらなくなるのは独占欲だろうか?

534 名前: ◆pVGWJPoky6 [] 投稿日:2009/02/08(日) 21:28:46.90 ID:7JY4j91x0


 三角の頭をした執行人は鉈と槍を振り下ろす。


今度はハルヒが俺に確認するように問うてくる。

ハルヒ「もう痛い思いはしなくてもいいの?」

キョン「あぁ。もうそんな事はさせない」

そう答えて頬を撫でる。

手のひらからの出血は止まっていた。

537 名前: ◆pVGWJPoky6 [] 投稿日:2009/02/08(日) 21:30:45.65 ID:7JY4j91x0


 それぞれの凶器が二人に迫る

ハルヒ「私の悪夢も終わるの?」

キョン「あぁ。一緒に終わらせよう」

何かが俺の視界を霞ませる。

ハルヒ「だったらどうしてキョンも泣いているの?」


キョン「嬉しいからだよ」


そう言って強く愛でる様に抱きしめる。

 振り下ろされた凶器は二人に届く前に執行人と共に消えた。




太陽が霧を晴らし

朝が夜に幕を引き

夜は悪夢を連れていった




543 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 21:37:36.48 ID:7JY4j91x0



依然と変らぬ部室。

古泉とボードゲームに興じる。
相変わらず弱いな。

朝比奈さんがお茶を持ってきてくださった
相変わらず可愛らしい。

長門は定位置で本をめくっている。
相変わらずSFを読んでいるようだ。


部室のドアを乱暴に開きハルヒがあわられる。
相変わらず太陽みたいなだな。
いやけっして丸いとかそういう意味じゃない。




あの体験はその後に仲間内でされることは無かった。
太陽が昇り夜明けと共に消えた悪夢だったのだから。

END



566 名前: ◆pVGWJPoky6 [] 投稿日:2009/02/08(日) 21:48:48.23 ID:7JY4j91x0

お疲れ様です。
読んでいただきありがとうございました。

最後の最後でトリップが抜けたりして間抜けでした。

一応シリーズとの関連についての蛇足です。

1:娘の捜索と虐待からの覚醒をハルヒに置き換えて
2:三角頭の主人公を罰するという存在意義が自分を罰する両親として
3:1の娘が思い出していくのだがハルヒは既に思い出して壊れた状態として

映画版:娘を守れず教団に売った母は殺されると思っていたが殺されなかった理由を流用
劇中で「両親は神みたいなものだから」というのがあります


せっかくスレが残っているので番外とかネタに走ります。

581 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 22:23:38.92 ID:7JY4j91x0

>>523と入れ替えて別エンドに


俺はハルヒを抱え学校を走る。

学校という場所には七不思議がつきものだ。

1〜6番目までありきたりな階段が続く。
しかしこの学校の7つ目は外に類を見ない怪異がある。
『ある鍵で明けられた用務室には全ての仕掛け人がいる』
俺達をこんな目にあわせた元凶と決着をつけねばならない。

古泉は俺が鍵であると言っていた。

ドアノブに手を掛けると鍵は外れた。
殴りこむ勢いで部屋に踏み込む。

そこには多数のコンソールパネルとそれを操作するシャミセンの姿があった。


ジョン「オマエノ、シワザ、ダタノカー」


NEKO END

602 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 22:56:04.28 ID:7JY4j91x0

UFOENDも作ってみてます

612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 23:36:15.83 ID:7JY4j91x0


遅くなってすいません。


>>523と入れ替えてA



ハルヒ「不思議をきっと見つけてみせるわ!!」
ついてきなさい!!と強引に俺を引っ張っていく。

キョン「痛い!痛い!!そんなに引っ張るな」

そんなこんなで校庭まで連れてこられた。
ハルヒ「あんたも手伝いなさい!チャネリングよ!!」
そう言って足元にある校庭のライン引きをぴしっと指差す。

やれやれまったく。


614 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 23:38:12.66 ID:7JY4j91x0


ハルヒは口やかましく指示ばかりだ。
今に始まった事じゃないがな。
そうしてライン引きによるミステリーサークルは完成された。

ハルヒ「まぁまぁね。これで完成にしてあげる」
そうして何かメモ帳を渡された。

ハルヒ「まだ見ちゃだめよ!」

ハルヒ「サークルの中心に立ったらそのメモを読みなさい。それまで絶対に見ちゃだめ!」

615 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 23:39:25.71 ID:7JY4j91x0

渋々承知してサークルの中央に立つ。
さて、メモには何が書かれているやら?

メモを流し読む。
キョン「こんなもの読めってのか?」

サークルの外にいるハルヒに叫ぶ。

ハルヒ「そうよ!それで宇宙人がくるんだから」

キョン「文章が恥ずかしすぎるんだよ!お前がやれ!!」
メモの中身はまるで中二病のポエムだった。

ハルヒ「根性なし!!」

キョン「そもそも何だよ『ダークインフェルノ』って!!」


ポエムの一節を読んだ途端。
俺は上空からの光に吸い込まれた。

616 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 23:40:56.45 ID:7JY4j91x0


気が付くと1人で真っ白な空間に佇んでいた。

キョン「なんだよここは!?本当にUFOが!?」

???「それをどこで手に入れた?」


はっとして振り返る。
そこには魔法使いの格好をした長門がいた。

キョン「長門!?なんでお前がここに?」

長門(?)「私は貴方のしっている長門有希ではない」

長門(?)「もう一度言う。それをどこで手に入れた?」

冷静を装っているが必死さが伝わってくる。

キョン「いや、これはハルヒからもらったんだが『ダークインフェルノ』やら何がなんだか・・・」

長門(?)「やめて。それ以上続けると私も容赦しない」

618 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 23:42:09.45 ID:7JY4j91x0


この長門そっくりさんは耳まで真っ赤にしながら星のついたステッキをこちらに向ける。

キョン「はやまるな!」

長門(?)「それを渡せば何もしない。」

キョン「わかった渡す!ほら」

そういって手帳を渡す。

長門(?)「ようやく回収できた」

キョン「それは何なんだ『ダークインフェ―――』って杖を向けないでくれ!!」

長門(?)「余計なことを言うから。これをあげるから早く帰って」
そう言って持っていた星つきステッキを渡す。

 ――――マジカルステッキを手に入れた!!――――



620 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 23:43:26.38 ID:7JY4j91x0

・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

ハルヒ「なにがあったの!?」
目をらんらんと輝かせ迫ってくる。

俺はは気が付くとサークルの上に寝ていたようだ。

ハルヒ「UFOが降りてきて光ったと思ったらキョンが倒れていたのよきっと―――――――――」


ハルヒはなにやらまくし立てている。
ダークインフェルノとはなんだったのだろう?


UFO END



※ダークインフェルノについてはこちら

http://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-488.html

http://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-486.html


人様のネタですが秀逸だったので流用させて頂きました。

621 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/08(日) 23:46:18.43 ID:7JY4j91x0

長い間お付き合いいただきありがとうございます

今度こそ本当におわりです
おやすみ



ツイート

メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:レッド(……安価でポケモンマスターを目指そう)