ルパン「かがみん…」かがみ「おじさま…」


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20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:03:12.54 ID:P2SxwtTr0

その日も変わらぬ日常の中に居た私達は、通例に倣い四人揃って帰途を辿っていた。
心地の良い秋風もとっくに翳りをみせ、代わって冷たい旋風に攫われ枯れ葉乱れる今日この頃。
唯一の変化は気温と季節だけといったそのなかにあって、
思いも寄らない大事件、というものが静かに私の元へと忍び寄っていたらしい。

最初のキッカケは、そう。
夕暮れの街を震わせる、けたたましいサイレンの音だった――

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:04:17.09 ID:P2SxwtTr0

こなた「なんだかパトカー多くない?」
みゆき「ええ、学校を出てから10分と経っていないのに、もう3台とすれ違いましたね」

二人の言葉を受けて、私も辺りを見回してみた。
どうやら多いのはパトカーだけではないようだ。
威圧感を存分に漂わせる警官達が、そこかしこで鋭い眼光を放っている。

かがみ「なにかあったのんじゃないの?」
こなた「なにかって何?」
かがみ「それが分からないから聞いてるのよ」
こなた「まあ、そうだろうけど」

不服といった表情のこなたを眺めていると、つかさが横やりを入れて来た。

つかさ「あのことじゃないのかなぁ?」
かがみ「あのこと?」
つかさ「うん、世界を股に掛けるオードロボー!」


――怪盗ルパン三世!


これが、全ての前フリとなっていたのかもしれない。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:10:31.92 ID:P2SxwtTr0

かがみ「なによそれ?」
つかさ「だから、ルパーンしゃーんせぇ〜」
かがみ「可愛く言っても駄目。私が聞きたいのはそのドロボーについてなの」
つかさ「ドロボーじゃなくてぇ、ルパーンしゃー」
かがみ「わかったわよ。それで、そのルパンとやらは何なの?」

こなた「ワクワク」
みゆき「テカテカ」

つかさは勿体ぶるように渋ってみせると、やや嬉しそうに切り出した。

つかさ「えっとねぇ、世界を股に――」
かがみ「それはもう聞いたからさ、そいつと警官隊との関連性の部分を語ってよ」
つかさ「お姉ちゃんが虐めるよぉ〜」

こなた「かがみん自重しなよ」
みゆき「そうですよかがみさん、自重してください」

はいはい、悪いのは私ですよーだ。
まったく、つかさったらいつにも増してのんびりなんだから。

かがみ「ごめんね、つかさ。それじゃあお願い、私にも教えてくれる?」
つかさ「うん、いいお!」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:21:40.68 ID:P2SxwtTr0

ある時は街人。
ある時は店の主人。
またある時は警察官。
老若男女、人種に素を選ばずして完璧な変装をやってみせる大怪盗ルパン三世。

彼は様々な特殊道具や仲間、そして愛銃”ワルサーP38”を携えて世界中のお宝を狙うの。

狙うったってチンケな金目の物や、人様の物じゃあないよ。
世界に伝わる様々な秘宝。
古代から受け継がれるロマンの欠片。
謎が犇めく未知への扉。

そう言った探究心を元に彼は世界を駆け回っているの。
一部の人達は彼のことを、夢を求める冒険家と称しているくらいだしね。
物は盗っても命は盗らないとも聴くし。

それが大怪盗ルパン三世。

どう、かっこいいでしょ?

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:30:10.73 ID:P2SxwtTr0

つかさ「そのルパーンしゃーんせぇ〜がね、この街へ来ているって噂があったの!」

みゆき「つかささんは物知りなんですねっ!」
こなた「いいよいいよー! MOTTO!MOTTO!」
つかさ「えへへっ」

かがみ「……そんな知識、何処で手に入れたの?」
つかさ「巷では結構、有名だよ? そういうのが好きな友達から、わたしは聞かせて貰ったんだけど」
かがみ「そんな知識を溜め込む暇があるのなら、勉強に活かしなさいよ」
つかさ「いやんっ、勉強のことを言われるとつかさ、耳にタコが出来ちゃうっ!」

こなた「かがみ、いい加減にしなよ?」
みゆき「こういうのを姉妹関係におけるパワーハラスメントっていうんですよ? そこの所、貴方はわかっておられるのですか?」

はいはい、悪いのは私です私です。

かがみ「ごめんね、つかさ」
つかさ「いいお!」

私達は気付いていなかったのだけれど、傍目から窺えば結構大きな声で会話を交わしていたらしい。
これが元で今現在の遣り取りを聞き付けた警官に呼び止められたのだ。

その警官は、茶のスーツに茶のソフト帽を被った渋いオッサンだった。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:37:28.84 ID:P2SxwtTr0

警官「お譲さん、ちょっと……いいですかな?」

熟練を感じさせる物腰、そしてダミ声。
私は咄嗟に身構えた。

警官「まぁ〜まぁ〜、取って食おうという訳じゃないんですから警戒せんでもいいでしょうに」

快活な笑い声。意外と眼差しは優しいようだ。
しかし警官に絡まれると、自然に体が強張ってしまう。
依然として拳に力を込めたまま、私は訊ねた。

かがみ「なにか御用でしょうか?」
警官「なにか、ではなく、”あなたに”用があるんですよ」
かがみ「私に……?」
警官「そう、ついでに貴方にも」
つかさ「わたしも?」

こなた「わたしは? ねぇ、わたしはっ!?」
みゆき「わくわく」

警官「あんたらに用はありません。適当に帰ってもらって結構です」

こなた「……」
みゆき「こういう状態を、蚊帳の外と呼びます! 勉強になりますねっ!」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:45:33.48 ID:P2SxwtTr0

指取りゲームを始めたこなたとみゆきを脇目に警官は続けた。

警官「実はですなぁ〜、この街にルパンの奴が潜り込んどるっていうぅ〜話を聞きつけましてぇ〜。
    本官も警備役を買ってでましてなぁ〜」
かがみ「はぁ……」
警官「おっと、申し遅れました。本官、銭型も申します」

すっと名刺を差し出された。
その文字を眼で追うと……

かがみ「インターポール?」
銭型「世界の大泥棒を相手にするには、世界の組織が必要となりますからなぁ。
    ルパンが泥棒界の世界代表とするならば、本官は警察界の世界代表ということですな、ハッハッハ!」

うざっ。

つかさ「それで、どういったゴヨーケンなんでしょうか?」
銭型「おっとと無駄話が過ぎましたな。では本題に入るとしましょうか」
つかさ「バルサッ」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:59:15.45 ID:P2SxwtTr0

銭型「ある筋からの情報を受けましてな。どうやら奴はこの付近一体の神社を狙っているらしいと。
    単刀直入に言えば、そういった神社に関連する方々を虱潰しに訊ねておるのですよ」
つかさ「わたし達も神道の家計だしね」
かがみ「そりゃそうだけどさ、ここから私の住む街までは大分離れてますよ?」
銭型「ええ、そうでしょう。だからこそ、これだけの数の警官達が捜査に充てられている訳です。
    あなたの住む街だけでなく、その隣町まで幅広くカバーせにゃならんですからね」
かがみ「なーるほど」
つかさ「トーシバっ」

銭型「先ほど、貴方がたが話されていた”ルパンの逸話”で思わず振り向いてしまいましてな。
    すると丁度、捜査対象である貴方がたが目に付いたと」

どうやら神社というワードに私は当選したらしい。
とはいっても、この付近一体でいくつの同件があることやら。
気に留める必要もないだろう。

かがみ「それで私は何をすれば?」
銭型「わからなくてもいい」
かがみ「えっ?」
銭型「ただ、知っておいて欲しかったんです」

きもいなこの人。

銭型「……ありゃ、若い方の間で流行っていると聞いたのですが、どーやら流行り廃りとは酷なものらしい」
かがみ「もう、帰ってもいいですか?」
銭型「ええ、ここらを片付けたら、後日改めて御伺いします。
    まぁ、その時の為に今日はワンクッション置いておきたかったということです。では、本官はこれで」
つかさ「あ〜れが、とっつぁ〜んってばよぉ〜」

こうして私達は、再び帰途を辿り始めた。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:06:42.45 ID:P2SxwtTr0

しかし神社を狙うと言われても、具体的に何を狙うのかは不明のまま。
その辺を訊ねておくべきだったと後悔したのは私が自宅に帰りついてからだった。

そして夕食時。

つかさ「カルボナーラっ! カルボナーラっ!」
かがみ「落ち着きなさいよつかさ」
つかさ「だってカルボナーラだよ?」
かがみ「だから何よ」
つかさ「お姉ちゃんが虐めるよぉ〜」

ただお「かがみ……」
みき「貴方はお姉ちゃんなんだから……」
いのり「少しは……」
まつり「自重しなさい……」

すんごいローテンションで批難されちゃったよ。

かがみ「って、なんで皆そんなに暗いの?」
ただお「実はねぇ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:14:14.81 ID:P2SxwtTr0

ただお「ここに、こんな物が4枚あるんだ」

スッと差し出された紙切れ。
なになに……

かがみ「”大分湯布院 湯けむり小町の旅”ご招待券?」
みき「そうなのよ、商店街で突発的なクジ引きを開催しててね」
いのり「お母さんが冗談交じりに引いちゃったところ」
まつり「当たったのよ。それも4回連続で特賞が」

一人で喋れ。
なんてツッコミを入れている場合じゃない。

つかさ「特賞って一回きりじゃないのかな?」
かがみ「いや、そこよりも4回連続の点にツッコめ」

ただお「これも母さんの力かな」
みき「わたしの左腕が久しぶりに暴れ出したようね……」

かがみ「それで、なんで暗いのよ? どっちかっていうと、喜ぶべきことなんじゃないの?」

いのり「だってさ、4枚しかないでしょう?」
まつり「つまり、2人は行けないってワケ」

あーなるほど。
トーシバ。

つかさ「ぱぁ〜くられたよぉ〜」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:24:27.03 ID:P2SxwtTr0

かがみ「じゃあ、お父さんとお姉ちゃん達で行ってきなよ。
     私とつかさは学校があるし、暇な大学生と会社員、寂れた神社の神主、主婦のお母さんなら問題ないでしょ?」
つかさ「しゃんせ〜」

ただお「傷ついたわ今の一言」
いのり「暇じゃないわよ、要良がいいのよわたしは」
まつり「そうだそうだー!」

みき「みんな落ち着いて、これは喜ぶべき事態でしょ? 円満解決じゃない」

ただお「た、確かに!」
いのり「そうね」
まつり「その通りね!」

もう、子供のように単純なんだから。
けれども少しは引き留める素振りくらいは欲しかったかな……。

かがみ「ま、お父さん達も普段は忙しいし、お姉ちゃん達もたまには遊びたいでしょ?
     私達のことは気にしないで良いから、ゆっくりしていってね!」
つかさ「うん、かがみお姉ちゃんの面倒はわたしが看るから大丈夫だよ!」
かがみ「あんたが私の?」
つかさ「だってお姉ちゃん、家事やったら火事になったことがあるでしょ」

黒歴史を掘り返される前に、つかさの口を塞いでおいた。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:32:10.04 ID:P2SxwtTr0

で、このような瑣末な遣り取りが行われ、
私とつかさを覗いた柊家四人組は明日から大分へと旅立つことが決まった。

家族と共に旅行へ行けないのは若干寂しいけれど、
浮かれ気分の四人を眺めていると、まあこれで良かったのかな、
なんて納得しちゃったのでこの件については差し引きゼロで考えないことにしよう。

「お土産よろしくね!」

という言葉も108回近く繰り返して刷り込んだし、
皆が帰った暁には美味しいおまんじゅうを期待できそうだしね。

かのようにして夜は更けていき、静まるようにつかさが眠りに就き、
やがては私も……眠りへ就いた。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:37:40.20 ID:P2SxwtTr0

翌朝。

かがみ「なによこれ……」
つかさ「……」

『旅行へ行ってくるので、自炊してね 母より』

かがみ「せめて朝食くらいは作り置いて欲しかったんだけど」
つかさ「ふぅ、しょうがないわねぇ」
かがみ「え?」
つかさ「お料理が苦手なお姉ちゃんの為に、このおわたくしがお施しをお与えしましょう」
かがみ「具体的に」
つかさ「わたしが何か作るよ」
かがみ「さっすが、つかさね!」
つかさ「もーぅ、調子いいんだからお姉ちゃんわぁ〜」

ニッコリと笑うつかさは、なんだかんだで頼りになる良い妹だ。
その点については間違いないわ。
私が、保障する。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:45:19.42 ID:P2SxwtTr0

どこをどうやったのか、
つかさは僅か10数分程でトマトとチキンのサラダスパを創り上げていた。

つかさ「カルボナーラの麺が余ってたし、これなら時間が掛からないしねっ」
かがみ「恐ろしい手際の良さね、勉強になります」
つかさ「それじゃ、いただきまーす」
かがみ「いただきまーす」

ウマー。

つかさ「ところでさ」
かがみ「……ん?」
つかさ「昨日のとっつぁ〜んの話だけど」
かがみ「とっつぁん……って、ああ、銭型って人ね」
つかさ「そーそー、何の用があるのかな?」
かがみ「それはこっちが聞きたいくらいよ」
つかさ「この家にお宝とかがあるのかな?」
かがみ「いや、そもそもウチに決まったって訳でもないでしょ?」
つかさ「そうなのかなぁー」
かがみ「そうよそうよ、そんなものがあったらウチはもっと栄えているって」
つかさ「……そうだねぇ」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:54:49.85 ID:P2SxwtTr0

澄み渡った空気の中をつかさと二人、登校していた最中のことだ。
「今日も警官が多いわね」なんて世間話を振ったと同時、

つかさ「お姉ちゃん、ちょっとコンビニに寄ってこ」

やや強引に店内へと引き込まれたのだ。

かがみ「ちょ、ちょっとどうしたのよ?」
つかさ「だって今日、ジャンプの発売日でしょ?
     わたしね、発売日には巻末のジャガーを朝イチに読むって決めてるの」

つかさはそう言うと、窓際の光の中でイソイソと立ち読みを始めた。
まったく、立ち読みを待つ私の身にもなってよね。
……私も、テレビジョンでも読もうかしら。

数分後。

かがみ「ほら、そろそろ行かないと遅刻するわよ」
つかさ「……」
かがみ「つかさ?」
つかさ「……」

あ、こいつ。
さり気無く銀魂まで読み始めてやがる。

かがみ「いい加減にしなさいよ」
つかさ「えへへっ」

店員からの睨みをお辞儀で受け流しつつ、私達は学校へと向かった。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:05:24.78 ID:P2SxwtTr0

朝の学校。
遅刻常習犯のこなたは、まだ来ていないようだ。

かがみ「おはよっ」
つかさ「おはよーぅ」
みゆき「おはようございます」

やんわりとしたお辞儀のあと、みゆきが興味深々に訊ねて来た。

みゆき「あのぅ、昨日の件で何か進展などは……?」
かがみ「ルパンの? 別になんにもないようだけど」
みゆき「では、身の回りで何か変わったことなどは?」
かがみ「変わったこと? うーん、そうねぇ……」

思い返してすぐに浮かんだのは家族旅行のことくらいだった。
で、その顛末を談笑の肴として説明。

みゆき「何やら匂いますね」
かがみ「え、私臭い?」
みゆき「違います、そちらの方ではありません」
かがみ「じゃあ、どっちの?」
みゆき「実はわたくし、つかささんのお話を伺ってから調べ物をしておりまして」
つかさ「えっへん」
かがみ「へぇー、流石は知略のみゆきね」
みゆき「それほどでもぉ……ありますが」

ちょっとイラっときたけれど、みゆきの話は続くようなので静聴の姿勢を保とう。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:11:27.83 ID:P2SxwtTr0

みゆき「わたくしの統計によると、怪盗ルパンは潜入対象を内部から撹乱させることに長けているようです」
つかさ「フッ……とんだメータンテーが居たものだ」
かがみ「あんたは黙ってなさい」
つかさ「うぅ……」

つかさの頭を撫でて黙らせ、みゆきに先を促す。

かがみ「それで?」
みゆき「確率的な観点から述べても、4回連続で特賞が当たるなどとは一概にして考え難いものですよ」
かがみ「……確かにそうだけど、それが何か? 当たった物は貰ってもいいんでしょ?」
みゆき「ええ、その点に関しては問題はないでしょう。ですが――」


――それが仕組まれていたとなると、話は変わってきますよね?

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:24:07.95 ID:P2SxwtTr0

かがみ「仕組まれている?」

柔和な彼女にしては割かし真剣な眼差し。
こういう時のみゆきは冴えていると、他の2人よりも付き合いの長い私は知っている。

みゆき「もちろん、偶然の産物だという可能性も否定はできません。
     ですが、それが単なる偶然であるという可能性のほうが、この場合においては限りなく低いとわたくしは考えております」
かがみ「ここにきて陰謀論? この平和な御時世において?」
みゆき「平和というものは今まで何も起こらなかったという結果が”平和という形”で残されているだけであり、
     これから先も平和であるという保障をするものではありません」
かがみ「……いやに凝った言い回しね」
みゆき「お恥ずかしながら、最近ミステリーに嵌っておりまして」

頬に手を当てて照れている。
本当にこの子は知識に対して貪欲なのね。
一年の時から変わってないっていうかさ。
それがみゆきの面白いところでもあるのだけれど。
あと、見た目に反して意外に頼りになるところもね。

かがみ「だけど、それがもし陰謀だったとして私は何をすればいいの?」
みゆき「えっとですねぇ……そこまではまだ……」
かがみ「傾向があれば対策よ、みゆき」
みゆき「あ、ではこういうのはどうでしょうか?」

ピンッと指を立てる仕草もいつもの通りだ。

みゆき「身の回りで起こる出来事に気を配ること。
     もし何か気に掛かる事があれば、些細なことでも構いませんのでわたくしに伝えてください」

その言葉とチャイムの音を以って、私はみゆきに別れを告げた。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:35:09.60 ID:P2SxwtTr0

粛々といった様子で、朝のホームルームが終わった。

みさお「よぅ、ひいらぎぃー」
かがみ「よっす。あやのもおはよう」
あやの「おはよう柊ちゃん」

一応こっちでも話しておくか。
何か情報が得られる可能性もあるしね。
私は昨日の件と、先ほどのみゆきの推論を混ぜて語った。

みさお「そりゃおめぇー陰謀だなぁー」
あやの「わたしはそうは思わないわ」

見事に割れた案。
いつみても正と負のような関係性ね、この二人は。
だからこそ5年という月日を通してこれたのだろうけど。

かがみ「でも私は信用してないわよ? それに大怪盗ってさ……昭和じゃないんだから」
みさお「なっ、てめー平成ライダー派だろ? わたしは昭和ライダー以外認めないからなー」
あやの「話が逸れているわよ、みさちゃん」
かがみ「とにかく、そういうことだから」
みさお「まっ、何かあったらわたし等に任せときな。ちゃちゃっと片付けてやるからよ」
あやの「注意を払っておくに越したことはないしね」

クセはあっても、なんだかんだで良い奴等なんだよね。
この二人も。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:38:13.99 ID:P2SxwtTr0

昼休み。
こなたはまだ学校へと来ていない。
というより、この時間帯まで姿を見せなかったってことは多分、休みということなのだろう。

その後も適度にクラスの話題となっていたルパンの話を聞いたり話したりしつつ、
平時通りの学校生活はまた一日終わりを迎えた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:50:24.64 ID:P2SxwtTr0

みゆき「では、くれぐれもお気を付けて。
     泉さんには学級委員長のわたくしの方から連絡を入れておきますので」

駅でみゆきと別れ、足早に進んだ電車を降りると、
私とつかさは暮れなずみのなかにある街を歩き始めた。
放課後に色々ともたついていたいた所為や、季節柄によって力を奪われた太陽は既に沈み掛けており、
全ての陰が長く引き伸ばされ、そしてありとあらゆるものが黄昏色に染め上げられている。

かがみ「この時間帯って、非常に見通しが利かないのよね。車の衝突事故も多いらしいしさ」
つかさ「……」
かがみ「……つかさ、どうしたの?」

つかさは先程から頻りに辺りを気にしている。
話しかけても反応がないのは何故なのだろう。

かがみ「ねぇ、つかさ。聞いてる?」
つかさ「……うん」
かがみ「何を気にして――」
つかさ「お姉ちゃん、ちょっとコンビニ寄ってこう」

突然なにを言い出すんだ?

かがみ「朝も寄ったじゃない。
     また立ち読みなんかすると店員に睨まれちゃうから、このまま帰るわよ」
つかさ「いいから!」

またも強引に連れられて、本日二度目の入店を果たした。
ちなみに店員は朝と同じらしく、就労時間のオーバーの為か、或いは私達への嫌気の為か不服そうな顔を見せていた。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:01:09.48 ID:P2SxwtTr0

再び窓際に陣取り、ジャンプを手に取るつかさ。
私も横に倣って週刊スイーツを開く。

つかさ「……」

何やっているんだろ、つかさは?
無言のままで同じページばっかり見つめているようだし。
……いや、見ているのはページではない。

かがみ「外?」

その視線を追ってみた。
すると――

かがみ「なに、あの見るからに怪しい黒服サングラスの奴は」
つかさ「お姉ちゃん、気付くの遅いよ。朝の時も尾けられてたよ、わたし達」
かがみ「嘘?」
つかさ「ホント。どう見ても朝と同じ奴だし、もう一人との黒服との位置関係から見て、
     どうやらわたし達の進路上を塞いでいるか、もしくは挟み撃ちにするようだね」

気が付かなかった。
つかさは普段抜けているが、こと直感に至っては私より鋭い節がある。
それが存分に発揮されたのだろう。

かがみ「……どうするの? 警察に連絡する?」
つかさ「それは無理だと思うよ。あっちはまだ何も手を出していないから、知らぬ存ぜぬでやり過ごされちゃうだろうし。
     ついでに一度対処をしくじれば、二度目からはより確実な手段を用いてくるだろうから下手には動かないほうがいいと思うかな」

つかさは落ち着き払った声でページを捲っていた。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:16:53.14 ID:P2SxwtTr0

かがみ「あの銭型って警官なら、なんとかしてくれるかもしれない」

昨日の帰りに受取り、鞄の底に仕舞っていたままの名刺を取り出す。

『ICPO総務局国際協力部第1課 ルパン専任捜査長 銭型幸一』

よし、携帯電話番号も記載されているわ。
これならいけるはず。
そう判断し、すぐさまダイヤル。

銭型『だから、ピザを頼んだのはうちでは無いと言っとるでしょうが!』
かがみ「はい?」
銭型『お、おやぁ……? 店主の野郎、今度は店番を変えて押し売りする気なのか……?』
かがみ「なに言ってるんですか? 私です、昨日お会いした柊かがみです」
銭型『お、お〜お〜! いや申し訳ない、ピザの配達が煩くてなぁ〜!』

あんたの声のほうが煩いわい。

かがみ「あの、すみません、実は怪しい人に尾行されているみたいで……なんとかならないでしょうか?」
銭型『……詳しく、伺えますか。そして貴方の置かれている現在状況も頼みます』

いきなり真面目な声に変わった。
流石は警察官というだけはあるらしいと、私は人知れず納得していた。
ってそんな場合じゃない。
手身近に必要情報を伝える。

銭型『十五分です。私がそちらへ赴くまで、安全な場所へと退避しておいてください』

そして通話は切れた。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:26:13.36 ID:P2SxwtTr0

店員「いらっしゃいませー」

カラリンと音を立てた店内入口。
通話に気を取られていた私が振り向くと――

黒服「お譲ちゃん、ちょっと来てくれるかな」

あっという間に距離を詰められていた。
ドスを利かせた黒い声。
もちろん応じるわけにはいかない。

かがみ「叫びますよ?」
黒服「そうかい、だったら片方が動かなくなっちまうぜ?」
かがみ「なに訳のわかっ――」

私の腹に当てられているこれはまさか……
拳銃!?
しかも男はカメラの視射角を体で塞いでいる。

黒服「どうする? そっちのお譲ちゃんかお前か、どっちへぶち込もうか?」
かがみ「くっ……」
黒服「お前、いま電話していただろ? それも俺達を窺ってた所から察するに警察関連だな」

視線を盗られていたのか。
不覚過ぎた。つかさのように偽装を施さなかった私の失態だ。

黒服「厄介事になる前に、御足労願おうか」

抗う訳にも行かず、私達は男に従い退店せざるを得なかった。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:38:51.03 ID:P2SxwtTr0

コンビニを出て角を折れ、道が入り組み人気の薄い住宅街へと入り込んだ。
そして、もう一人の黒服が待つ黒塗りベンツまで向かう途中。

つかさ「お姉ちゃん、逃げるよ」

耳元で静かに囁かれたかと思うと――

黒服「ごふぅっ!」

黒服がくず折れていた。
次いですかさずその手を捻り黒光りする拳銃を抜き取ったかと思うと、空いた手で私の手を握られていた。

つかさ「走って!」
かがみ「う、うん!」

背後を振り向く。
黒塗りベンツのほうの黒服が追ってきている。
あっ、内側に手を……

かがみ「撃たれる!?」
つかさ「角を曲がるよ!」

強引に手を引かれ、慣性をも無視するかのように路地裏へと滑り込む。

かがみ「どうやって黒服を黙らせたのよ?」
つかさ「男ってのにはわっかりやすい弱点があるってね。それより早くここから離れよう」

走る。曲がる。
走る。走る。
それらを幾度も繰り返し、夕闇の迷宮と化した住宅街を駆け巡って行く。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:49:18.37 ID:P2SxwtTr0

そして十数度目の角を曲った直後だった。
突如、目の前に現れた男が拳銃を構え、そして――

――ターン

響き渡った音に耳が鳴った。

つかさが吹き飛んでいた。
上体から後ろへ、そして私の背後へ。
鈍い音と共に頭から地へ落ちた。

何が起こった?

黒服「片方をやっちまったが、もう片方を確保。姉のほうだな」

小型スピーカーでも付いているのだろうか。
黒服がスーツの首元に向かい喋っている。

黒服「余計な手間を食わせやがって」

強い痛みを感じるほどに手首を掴まれ、黒塗りの車へと連れ込まれる。
閉まりゆく扉の隙間から覗くつかさの体を前にしても、私は恐怖で微動だにすることすら出来なかった。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 06:01:16.31 ID:P2SxwtTr0

一方その頃。
駅で柊姉妹が電車に乗り込んだ直後まで遡る。

私はかがみさんとつかささんの二人を見送ると、
駅の雑踏に些か気圧されつつダイヤルした。

みゆき「もしもし、泉さんでしょうか?」
こなた『そうだよん』
みゆき「どうかされたのですか? 学校、休まれたようですが」
こなた『いやぁー経験値2倍でさ』
みゆき「経験値?」
こなた『いあいあ、こっちの話。どうかしたの?』
みゆき「泉さんが急に学校を休まれたので、心配していたのですよ」
こなた『ごめんごめぇーん!』
みゆき「ところで……」

どうせならば伝えておくべきだと思い、ルパンとそれに関連する情報を伝えた。

こなた『……それ、間違いない?』
みゆき「何がでしょうか?」
こなた『商店街でクジ引きをやってたって話だよ』
みゆき「ええ、確かにそのように耳にしましたが」
こなた『そんな筈ないよ、だってわたし家事やってるでしょ?
     だから昨日も食材を買いに商店街に行ったんだけど、クジなんて何処でもやってなかったし』

……まさか、これは。

みゆき「すぐに二人を追いかけます」
こなた『オーケイ、こっちも登校路を遡ってみる!』

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 06:09:37.08 ID:P2SxwtTr0

一つぶん遅れた電車を降り、かがみさんの下校路を探っていく。
途中で彼女の携帯電話に掛けてはみたが話中のようで繋がらず、自宅の電話は留守だったため、
不安を感じた私は足早に風を切っていた。

やがてコンビニまで差し掛かった時。

みゆき「あ、泉さん」
こなた「あ、みゆきさん」
みゆき「途中でかがみさんとお会いしましたか?」
こなた「いや、会ってない。ってことはそっちも?」
みゆき「ええ」

どういうことなんでしょうか?
自宅にも居らず、下校路にも居ない。
これは引っ掛かりますね。

こなた「みゆきさん、あの警官が居る」

指差された方向を見ると、茶のトレンチコートにソフト帽姿の警官が歩いていた。
紛れも無く昨日お会いした銭型さんだ。

銭型「おや、君達……」

その後、彼の口によって、かがみさんから通報があったことを知らされた。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 06:22:10.77 ID:P2SxwtTr0

話に依れば、コンビニへと入店されたとのことらしい。
早速、銭型さんが店員へと聞き込みを開始されれている。

そちらは本筋の方に任せるとして、こちらは別の経路から探るべきですね。

みゆき「泉さん、何か手掛かりは思い当たりませんか?」
こなた「手掛かりといっても……ねぇ、とくには」
みゆき「ですよね……けれども私と泉さんが常時の経路を歩いたのに二人は居なかった。
     これはつまり、お二方が普段通らない道を歩いたことを意味していますよね」
こなた「うん、そうなるね。しかも今は夕刻で一般家庭は夕食前、この時間帯で寄り道するとは考え難い」
みゆき「加えてルパン関連の疑惑」
こなた「何かあたっとみて、間違いはないだろうね」

やはり泉さんは聡い。
こちらの云わんとしていることの先を読んでいらっしゃる。

銭型「店員と防犯カメラの確認を済ませた。どうやら二人は黒服の男に連れられていたようですな」

どうやら私達の推察と合わせて考えると、事態は悪い方へと進んでいるようです。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 06:25:04.77 ID:P2SxwtTr0

かがみ(逃走編)
みゆき(追跡編)

サスペンス&ミステリーな風味で導入部をお届けしてみた
でもルパンにしてはちょっと暗すぎかな
まあ眠いんで寝ます
書きたい人いたら適当に書いてちょ

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:37:44.15 ID:P2SxwtTr0

コンビニを出ると、辺りは既に夕闇に包まれていた。

銭型「みゆきさん、でしたかな?」
みゆき「はい、どうかなされましたか?」
銭型「柊かがみさんと柊つかささんの携帯電話番号と機種を教えて貰いたいのですがぁ〜」

迅速に伝えた。
すると銭型さんは何処かへと電話を掛け始め……

銭型「わたしは銭型だ。局長を出せ」

こなた「なるほどね、電波発信元からかがみの行方を探ろうということらしい」
みゆき「常套手段というものですが……果たしてそれで簡単に探れるものでしょうか?」

銭型「お姉さんの方の現在地が不明? 妹さんは……はぁ、なるほど。
    ということは、妹さんの現在地点を最後にお姉さんのほうが切れていると……わかりました、ご協力感謝致します」

通話を終えた銭型さんが力強く申されました。

銭型「位置がわかりました。危険ですのであとは本官にお任せください。では」

そのようにして背を向けた彼を、泉さんが引き止めます。
泉さんがやっていなければ私がやっていたことでしょうね。

こなた「駄目だって言っても着いて行くよ」
みゆき「そういうことです」

やれやれ、との様子の銭型さんに続き、私達は歩き出しました。

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:46:07.64 ID:P2SxwtTr0

入り組んだ住宅街を、銭型さんは風のように抜けていきます。
どうして道が分かるのでしょうか?

銭型「刑事の勘というものですよ。
    それに現場付近の地理は頭に叩き込んでおけと、若い頃にどやされましてなぁ」

豪快に笑いつつも、その眼は冷静と沈着一点。
ベテランというのはこういうお方のことを指すのでしょうか。

こなた「だけどルパン専属捜査官のオジサンが何故、かがみやつかさを?」
銭型「ルパン専属である前に本官は刑事ですからなぁ、平和を守るのは当然の義務と心得ておるのですよ。
    だがぁ、それ以上に長年の”勘”というものがこの事件を追えと煩いんですなぁ。
    犬も歩けば棒に当たる。事件あるところにルパン現る、というのが通説となっとりますから」

心強い味方に出会えて本当によかった。
そう、深く思います。

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:00:18.52 ID:P2SxwtTr0

幾度目かの角を曲がり終えた時でした。
こなた「人が集まってる……」
そう、人だかりが出来ていたのです。

銭型「ふむ、この辺りでお姉さんの反応が途絶えたとすると」
銭型さんはそれだけを残し、人波の中心に割り入って行きました。
私達も続きます。

銭型「で、その時の状況を詳しく」

既に聞き込みを開始されています。
買い物カゴを携えた相手は、どうやら主婦の方のようです。

主婦「大きな音がして! 人が撃たれて! 車に連れ込まれて! そしてもう一人が!」
銭型「落ち着いてください。そして事細かに、どんな小さな特徴でもいい。出来るだけ多く教えてください」

その後、卓越した話術によって得られた情報は以下の通りでした。

1.黄色いリボンの女生徒が撃たれて倒れた。
2.両留めの髪の女生徒が連れ去られた。
3.車種は黒塗りのベンツで、ナンバーも把握。
4.付近一体に黒スーツに黒メガネの男達が多数目撃との報告。
5.気が付けば、撃たれた方の女生徒が消えていた。

それらを掻い摘んで話聞かせて頂いたあと、銭型さんはこう締めくくりました。

銭型「先ずは車種と目撃情報から割り出してみましょう。
    地道な捜査の末に答えはあります、焦らず迅速かつ冷静に行動していきましょう」

大海の流れを見通すかのように、耽々とした言葉でした。

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:05:48.45 ID:P2SxwtTr0

◆一方その頃/柊かがみ(逃走編)


まるで車に押し込まれるのが定まっていた事実のように、黒塗りベンツは恙無く走り出し、
私は広い車内の後部座席に腕を拘束されたまま座りこまされていた。

茶眼鏡「私は手荒なことはしたくない」

向かい合わせの形で座っていた茶眼鏡が睨みを利かせると、
黒スーツによる拘束が解かれた。

かがみ「誰よあんた! 今すぐ降ろしなさい! つかさを病院に連れて行かなきゃ駄目でしょうが!」

精一杯の虚勢。
けれどもつかさを救いたい気持ちが恐怖などに押し潰されて堪るものか。
私はつかさの姉なのだから。

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:09:07.96 ID:P2SxwtTr0

茶眼鏡「言葉を慎みたまえ、高貴な流れを汲む貴方にはそのような言葉遣など似合いませんよ」

物腰が柔らかで優しささえ滲み出ていそうな茶スーツに茶サングラスの男。
だからといって油断など出来ない。
この男の雰囲気は見せ掛けだけの紛い物であり、それは目的を達成する為の武器でしかない。
なぜだかそういう確信がある。
……いや、今は状況を把握するほうが先決だ。
まずは情報を集めなければ。

かがみ「何が目的なの? どうして私を攫い、つかさを殺したの!?」
茶眼鏡「ハッハッハッハッハッハ……!」
かがみ「誤魔化すな!」

男のニヒルな顔面に拳を叩きこむ。

茶眼鏡「これはこれは、扱い辛いお方だ。しかし事を急ぐと元も子もなくしますよ?」

一片の乱れも無く受け止められた私の拳を、男は笑いながらも優しく撫でていた。
その様から滲み出る余裕はとても感触が悪い。
心の奥へ忍びこんでくるような生暖かい蛇に似ている。
私はそう感じ取り、強引に手を引っ込めざるを得なかった。

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:12:03.56 ID:P2SxwtTr0

茶眼鏡「ところで君」
黒服「はい?」
茶眼鏡「発砲したというのは本当かね?」
黒服「は、はい。妹のほうは銃器を所持しておりましたので」
茶眼鏡「ハッハッハ、制服さんの悪い癖だ」
黒服「えっ――」

チュインッ。

という金切るような音を認識した時には、黒服の男の額に風穴が開いていた。

かがみ「なっ!?」
茶眼鏡「このお方に傷でも負わせたらどう責任を取ってくれるのだね?」

狂っている。
仲間を撃ち殺すなんて……!

かがみ「あんた、人間じゃないわよ」
茶眼鏡「ハッハッハッハッハ! これはおかしい!」

今までに際立って大きな笑い声を響かせたあと、不意に男は呟いた。

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:14:29.03 ID:P2SxwtTr0

茶眼鏡「何かを得る為に犠牲はつきものでしょう? わたしは人間など疾の昔に棄ててきた。
     今さら引き返すことなど、出来る筈もないというものです」
かがみ「そうやって簡単に殺しを行う輩などと同じ人間であることに、ほとほと嫌気が差しそうだわ」
茶眼鏡「御心配無く、妹さんならば存命ですよ」

え、つかさが生きてる?
でも確かに撃たれたはずじゃ?

茶眼鏡「君が妹さんと思っていた奴は妹じゃあない。そして奴はあの程度で死ぬ輩でもない。
     それに奴には生きておいて貰わねば困りますのでね。
     まあそのことは措いておくとして、今はこちらの話を進めさせて頂くとしましょうか」

男が腕を組み、薄いサングラス越しの冷笑と共に口火を切った。

茶眼鏡「邪馬台国、というものは御存知ですかな?」

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:24:30.57 ID:P2SxwtTr0

いきなりなんなのよこいつ。
男は私の理解を待つかのように静かに微笑んでいる。

かがみ「紀元後2〜3世紀頃にあったとされる国家」
茶眼鏡「御名答。そして統治者として伝えられていたのが――」
かがみ「卑弥呼」
茶眼鏡「これはこれは……博識なお方だ」

いちいち癪に障るような笑い方ね。
その程度、高校生ならば殆どが知っているでしょうに。

茶眼鏡「貴方にも当事者として知る権利はありますのでね。
     別にわたしが講釈を垂れるのが好きだという訳ではありませんので、そこの所を勘違いはしないでください」

ちっ、ツンデレかよ。
神に見放されたかの如く、萌えないわね。
終わってるわ。

かがみ「それで、それと私がどう関連しているっていうの?」
茶眼鏡「おや、やはり興味がおありかな?」
かがみ「御託なんて聞きたくも無い。
     出来れば口も利きたくはないし顔も見たくはないけれど、残念ながらそうはいかないみたいね」

男はまたも失笑したあと。

茶眼鏡「まぁいいでしょう、そのくらいの威勢があるほうがね。
     人々の記憶から忘れ去られるほどに季節が過ぎ去って行けども、
     受け継がれゆく血は決して紛れはしないということか」

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:32:59.51 ID:P2SxwtTr0

邪馬台国。
そしてその統治者である卑弥呼。
彼女は伝えにある通り、女性でありながら国を統べていた。

これがどういうことかお解りかな?

元来、国家というものは男子を祀ることで、一つの集合体として成立してきた。
それは肉体的な力関係の差と、男尊女卑という古来からの教えがあったからですよ。
そしてこれが世界各国の慣わしとして存在しています。

今の貴方がたでは信じられないことでしょうが、
性別で職や住は勿論のこと、貧富の差や与えられる役割、
そして人生全てが決まっていたと断言しても過言ではありません。

そう、古来における国家の統治者は男子でしか有り得なかった。
だが、卑弥呼はそれを覆し、永きに渡り王の座へと君臨していた。

どうしてだと思いますか?
……なるほど、”偶然だ”というのも一つの答えでしょう。
ですがね、違うんですよ。

何故ならば、卑弥呼は”神性”を持ち得ていたのですから。

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:42:52.39 ID:P2SxwtTr0

卑弥呼は”道教”に通じていた。
しかし一部ではその有り余る力から”鬼道”と畏れられたこともあり、一概に名称は定まってはおりませんがね。
道教が現在、この日本という国に深く根付いている”神道”にも通じているというのは、
それを受け継いでいる貴方にわざわざ語るまでもないでしょう。
天皇という称も、元を辿ればそこから来ておりますからね。

そうですよ、改めて認識しなければ解らないほどに、我々の身近に深く根付いている。

この意味が理解できますかな?

……そうですよ、やはり貴方は賢い。
それほどまでに卑弥呼の影響力が絶大だったということです。
勿論、彼女一人の功績だけではなく、その後の数多くの偉人達によって広められた訳ですが。
まあいいでしょう、先へ進もうじゃありませんか。

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:55:04.70 ID:P2SxwtTr0

道教。
それは即ち、自然を識り、真理を述べ、宇宙を収め、全てに和を成し大平を得ようとする考え方です。
おや、オカルトと言われるのですか?
ですが卑弥呼が長きに渡り国を支配出来たというのは紛れもない事実です。
解り易く端的に説明しよう。

理解をするということはとても重要なことだ。
これは昨今における科学の発展においても頷ける。
一つの性質を解き明かし、それを元に展開を加え、上手く行けば新たな発見へと至る。
こうやって日々、我々の世の中は進歩しているのですよ。

おっと、貴方がわたしの目を盗んだつもりでダイヤルしている携帯電話。
それも科学が齎した文明の利器というものですね。
まあ、残念ながら車内は遮蔽されているので通じませんがね。

さて、本題に入ります。

卑弥呼は非常に博学だった。
知識に貪欲だった。
そして誰よりも先を望んだ。

国を統べる為に。
安定を得る為に。

その業とも呼べる欲の末に辿り着いたのですよ。

誰しもが解き明かせなかった、”生と死”についての謎にね。

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:06:00.81 ID:P2SxwtTr0

不老の秘術。
それを明かすには先ず、生と死についての理解から始まる。
その為に数多くの犠牲が伴われたのは言うまでもありません。

伝えによれば、邪馬台国に住まっていた民は、その全てが長寿であったと記されています。
古来ですよ?
肺炎如きで死に絶える時代にありながら、齢100を超える年長者がごろごろと存在していた。
これを唯の”偶然”だと切り捨てられますかな?

……ふん、強情なお方だ。

ともかく、卑弥呼もその長寿者の一人だった。
そう、なぜ女性でありながら国を治めることが出来たのかという根拠がここにあるのだよ。

彼女は自身が持ち得た”不老の秘術”によって長きに渡り生き永らえていた。
長く豊富な人生経験は卓越した先見性を齎す。
準じて、カリスマ性もね。
これを活かすことで先を読み、予言に近い力を発揮し、内乱や災害を未然に防いできたのだ。
前置きで述べた通り、卑弥呼が鬼道に通じていると称されているが、
それは”不死に通ずる”というあまりに並外れた神秘性に畏れをなした人々が与えた言葉でもあるということなのですな。

これらが卑弥呼に纏わる伝えの概要だ。
ここまでは御理解頂けましたかな?

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:17:04.39 ID:P2SxwtTr0

かがみ「しかし国は潰えた」
茶眼鏡「そう、正しくその通りだ」

男は語りの手応えに嬉しそうな顔を浮かべ、十二分に間をとった後で再び語り出した。

茶眼鏡「卑弥呼は詰めが甘かったということです」
かがみ「どういうことよ?」
茶眼鏡「生と死の研究の時点で、多くの人々から業を担い過ぎた。
     度重なった怨恨は人心の剥離を促し、やがては内乱へと繋がっていった」
かがみ「その所為で今では邪馬台国が存在していないということは、
     イクォール、卑弥呼が不死ではなかったってことの証明になってるでしょう?」
茶眼鏡「急いては事を仕損じるとは貴方の為にあるような言葉ですね」
かがみ「うるさいわね、勿体ぶらずにさっさと先へ進みなさいよ」
茶眼鏡「やれやれ……」

面倒くさいやつね、こいつは。

茶眼鏡「卑弥呼は完成にまでは至らなかったのですよ、不老の秘術を実践するまでにはね。
     あと一歩、いや、あと僅か半歩の時点で命を奪われてしまった」

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:26:31.18 ID:P2SxwtTr0

茶眼鏡「しかし”伝え”は遺された。
     当時では卑弥呼以外に解き明かせないほどの暗号を施された状態で、形として残された」

男がまた言を切った。
おわかりかな?
と目で語っている。

かがみ「わかったわよ、それでそれがどうしたっていうの?」
茶眼鏡「見つかったのですよ、ソレが」
かがみ「はぁ?」
茶眼鏡「邪馬台国が、見つかったのですよ。この地でね」

邪馬台国が、この埼玉に?
そんな馬鹿げた話があるわけがない。

かがみ「あれは九州地方に存在していたと言われているでしょうが」
茶眼鏡「それは一般論に過ぎないのだよ。
     大昔から邪馬台国の存在場所については幾度となく議論が交わされてきた。
     ある説によると邪馬台国は太平洋の海の底だとか、起源をお隣の国が主張したりとかね。
     つまり、何処へ存在していてもおかしくはなかった。
     それが故に、発掘なされるのが遥かに遅れてしまった。こういうことです」

どういうことですか。
けれども今聞いた限りでは分からないことが山ほどある。
特に、

かがみ「それが私とどういう関係にあるのよ?」

この点についてだ。

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:38:05.57 ID:P2SxwtTr0

茶眼鏡「星ですよ」
かがみ「はぁ?」
茶眼鏡「卑弥呼は星占にも長けていた」
かがみ「あなた死ぬわよ?」
茶眼鏡「それとの関連性はないでしょうな。
     現在に伝えられている”いわれ”には数多くの尾鰭が付きすぎているのでね」
かがみ「まぁ、それは何となくわかるけれど……」
茶眼鏡「結論から言えば暗号だよ、これも一つのね」
かがみ「暗号?」

男がニヤリと嗤った。
なるほどね、ようやく本題といったところか。

茶眼鏡「貴方の生まれは?」
かがみ「七月七日、七夕ね」
茶眼鏡「そう、星の日ですよ。そして双子として生まれ落ちた」
かがみ「だから何?」
茶眼鏡「つい先程述べたでしょう、長きの歳月を超えたものには尾鰭が付くと。
     七夕といえば織姫と夏彦。しかし重要なのはその名前ではなく、”2つ”という数だ。
     物語は、七月七日というキーワードと2というキーワードによって後付けされたものに過ぎない。
     それは時として都市伝説の中に元となるタネが存在していることに近い。
     或いは、何らかの要因によって暗号として隠す為の布石ともね」

男の話はまだ続く。
正直そろそろ聞き飽きてきたんだけども、情報を得る為には我慢よ、私。

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:54:01.41 ID:P2SxwtTr0

茶眼鏡「陰と陽、正と負、表と裏、そして生と死。
     全ては対極に在って和を成し存在している。
     長話の中で説明を行いましたよね、”不死”を語るには”生と死を理解すること”から始まると」
黙って頷く。

茶眼鏡「二つが必要なのですよ、貴方と……そして貴方の妹さんがですね」
かがみ「つかさが!?」
茶眼鏡「そう、貴方が生と死、或いは織姫星と夏彦星のどちらに値しているのかは不明ですが、
     二つで一つ。それらが揃うことでようやく力を発揮できるということです」
かがみ「だけど、つかさはさっき……」

撃たれたのだ。何故、ああいう真似を。

茶眼鏡「それも説明したでしょう? 貴方の頭は鶏ですか? 流石のわたしもトサカにきますよ?」
かがみ「コケコッコーとでも鳴いてあげましょうか?」
茶眼鏡「いや結構。
     それで妹さんについてだが、あの柊つかさは柊つかさではない。
     偶然の産物とも言えるだろうが貴方に近付く為にある人間が彼女に摩り替っていた。
     恐らく、本物の彼女は……ん?」

男は急に眉を顰め、神妙に耳を立てている。
そして額に風穴が空いている男を探ると、

茶眼鏡「なるほど、盗聴器と発信器とはやってくれるな。撃たれた時に添えられていたのか。
     まあ遮蔽しているから正確な位置までは割り出せないと思うが……」

苦々しげに呟き、小型の機械を捻り潰していた。
それを澄ますと慌てて張り付くような笑顔を作りだし、

茶眼鏡「おっと、自己紹介がまだでしたな。申し遅れました――」

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:55:44.31 ID:P2SxwtTr0

茶眼鏡「わたしはタモリだ」
かがみ「いいともーっ!」


という冗談を挟んでCM(休憩タイム)に入ります
ま、色々と粗が多いだろうけど見れない程じゃないかな
スケールでかいのはルパンならではってことで

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:26:40.05 ID:P2SxwtTr0

一方その頃。
同時刻の県内某所の廃屋にて。

「……おっと、気付かれちまったようだな」
黒スーツに黒ソフト帽の男が、咥えていた煙草を捻り潰した。
ワイルドってカッコイイ!
なんて感激している場合じゃなかったよ。

「お姉ちゃんは?」
数日前、夜のコンビニにジャンプを買いに行った私はあっという間に攫われ、
それからというもの、この人達と一緒に過ごしているんだよね。
けど、いま一緒に居るのはタバコのおじさん一人だけで、もう一人は出掛けてるようだけど。

「すまねぇな、あいつが着いていながら姉の方は誘拐されたらしい。
 まあ、わざとだとは思うが」

表情を崩さずに新たな煙草へ火を灯す。
その一挙手一投足から刺々しい魅力を感じちゃうな。

「さぁ〜て、そろそろ奴が帰ってくるだろうから仕事に備えて腹ごしらえといくか」
「だったら、私がサラダスパでも作るよ」
「あれは美味いんだが、生憎、食材を切らしちまってるから望めないだろうな。
 買い溜めも奴の度重なる調理失敗でお釈迦になっちまったし」
「あ、ホントだ」

冷蔵庫は空だった。そしてそれを確認した直後、

「たっだいまぁ〜! 次元ちゃん、つかさちゃん、おっ待たせぇ〜!」

ビブラートをふんだんに効かせた声が、廃屋の中を木霊した。

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:38:18.74 ID:P2SxwtTr0

◆柊つかさ(潜入編)

次元「ようやく帰ってきやがったな、ルパン」

次元さんが回転式拳銃の”すみすあんどうぇーすんエムなんとかマグナム”……なんだっけ?
よくは覚えていないけれど、初めてここへ連れて来られ、泣いていた私に彼は説明してくれたんだよね。
今は丁度、それのメンテナンスをしているらしい。改造してあるから大変なんだとか。

ルパン「わりぃ〜わりぃ〜、お姉ちゃん攫われちゃったぜっ!」
つかさ「あははーしょうがないよねー!」
次元「お前等はもう少し真面目にやれ」

次元さんのツッコミでルパンさんは幾分か真面目に、

ルパン「でもバッチリだったろう? 不死の秘密と太古のロマン!
     偶然とはいえ、つかさちゃんを連れて来ていたお陰で助かったってもんだしよぉ〜」

ネクタイを締め直しつつ語っている。

ルパン「あ、リボン返すね」
つかさ「はーい」

ちょっと臭うな。
まあいいや、えへへっ。

197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:48:54.77 ID:P2SxwtTr0

あ、そうだ。
ちょっと聞きたいことがあるんだった。

つかさ「あのぉ〜、私のお父さん達は無事なんでしょうか?
    お姉ちゃんが狙われてるってことは、もしかするとお母さんや上のお姉ちゃん達も……」
ルパン「でぇ〜いじょーぶだってぇ〜」

銃を組み上げた次元さんが、ルパンさんの後に続いた。

次元「予めこっちでクジを引かせて厄介払いはしてたんだ。
    それに話を聞いた限りじゃ、狙われているのは”星の落とし子”である、つかさとかがみの二人のみ。
    加えて、しがない侍気取りがクジ引きのバイトに続き、引率のバイトも兼ねて護衛してるさ」
ルパン「そぉ〜ゆ〜ことっ!」
次元「ま、人質に取られる可能性も無い事はないがあいつがいりゃあ……」
ルパン「あいつがいりゃぁ〜……」

あれ、なんで二人とも黙っちゃうの?

次元「”たぶん”大丈夫だ」
ルパン「おぅおぅ、たぶん、大丈夫だ」

たぶんって……

つかさ「じゃあバッチリだね!」

満面の笑みで答えてみた。

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:02:06.19 ID:P2SxwtTr0

次元「ところで、随分と遅かったようだがお前は何をしていたんだ?」
ルパン「なぁ〜に、ちょっとした野暮用ってやつさ」
つかさ「ヤボヨー?」
ルパン「ああ、前以っての調べ物で依頼をしていたからな。それの回収ってワケさ」

そう言って資料と思わしき紙束を見せられた。
見てもわかんないけどね。

次元「まさか不二子のところじゃないだろうな?」
ルパン「怖い、怖いぉー次元ちゃ〜ん」
次元「お前また儲けをピンハネられる気か?」
ルパン「俺っちを虐めないでぇー」
つかさ「駄目だよ、そんなこと言っちゃ」
ルパン「おおぉ〜う、つかさちゃんは将来きっといい子に育つだろうねぇ」
次元「チッ……女を盾にしやがって」

次元さんがまたもタバコを捻り潰していた。
肺ガンになっちゃうよ、というのはここ2日で48回くらいは繰り返したけれど、
その全てを無視されてしまったので今では口を噤む事にしている。
うん、しょうがないよね。常にお菓子を齧っているお姉ちゃんみたいなもんだろうし。

ルパン「っとまぁ、冗談はこれくらいにしておくとして……」

マジメモード。

ルパン「こいつを見てくれ、どう思う?」

そこに拡げられたのは、びっしりとした文字が並んだ紙と、ある写真だった。

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:21:22.55 ID:P2SxwtTr0

つかさ「この盛り上がったような地形はなんだっけ?」
次元「埼玉古墳群か?」
つかさ「そーそー! 地元の人って案外その地の名所に疎いんだよねぇ〜」
ルパン「あるあるー」
次元「わかるわー」

みゅ〜。
らきすた。

ルパン「んで、こっち」

黒メガネにスーツ男が数人、見張るように立っている。

次元「まさか、ここが邪馬台国だっていうのか?」
ルパン「まっさかぁ〜、そんなんだったらあっという間に発掘されちまってるぜぇ」
つかさ「どういうことなの?」

ルパン「つまり、奴等は今回の件に備えて周到な準備をしてたってわけさ。
     ついでに古墳に出入りしてるってことは……これにも何かしらの関連があるってことだろうな」

次元「ハッキリとしないな、お前らしくもない」
ルパン「こっちだってよぉ、防弾チョッキの上からとはいえ、至近距離から撃ち抜かれて大変だったんだぜ」
つかさ「よく無事だったねぇ、痛そー」
ルパン「毎回一回は撃たれてるからな。ヘリコプターから叩き落とされたこともあるし」
次元「だな、こいつのしぶとさは折り紙付きってやつだ。っておい、また話が逸れてるぞ」

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:31:28.43 ID:P2SxwtTr0

マジメモード。

ルパン「恐らくだが……卑弥呼に関連してるってことは、風水的な関連性も疑った方がいい」
次元「つまり?」
ルパン「古墳のみならず、奴等が出入りしていた建物を繋ぎ合わせれば……」

なんだか知的なことをやっているみたい。
あ、でもさ。

つかさ「そもそも、そういう面倒なことはせずにお姉ちゃんを追跡しちゃえば?」

沈黙。
やがて、

ルパン「その発想はなかったわ」
次元「おいおい、頭でも撃たれたのか? 先が思いやられるぜ全く」

ルパンさんは再びネクタイを締め、スーツの襟を正してから愚痴を零した。

ルパン「冗談だよ。ちょっと妹の役柄に入りすぎちゃって毒が抜けてねぇだけさ。
     しっかしよぉ、とっつぁんに出会った時には焦ったぜ。
     ついつい熱が入りすぎて俺のことを語り過ぎたせいか、呼び止められるとは思いもしなかったしよ」
次元「また嗅ぎつけられたのか? 相変わらず良い勘してやがるぜ」
ルパン「まあいいさ、俺は姉ちゃんの方を追うから次元はつかさちゃんを頼む」
次元「あいよ」

そのまま扉先まで立ってから、
ルパン「鍵は柊の双子。要するに、最後の扉を開けるのは二人だろうから、くれぐれも追ってには注意しといてくれよ」

短く残して闇に消えていった。

209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:46:39.69 ID:P2SxwtTr0

ルパンさんが居なくなると、暗がりの廃屋は途端に不気味に思えてくる。
彼が明るさを振りまいているのもその辺りに気を配ってのものだと思う。
キンッ、という音で、再びタバコに火が灯されていた。
次元さんは資料に細かく目を通している。
難しい内容が解らない私には、彼の噛み砕かれた説明に頼るしかない。

つかさ「なにか分かったんですか?」
次元「いや、風水といえば……やはり神社だろうってな」
つかさ「私のお家のことですか?」

タバコの煙を吹かしながら考え、資料を睨んでいる。
予想にすぎないけれど、彼は解り易い言葉にする為に考えているのかな。

次元「お前のうちも数あるうちの一つってことだ。神社は一つで役目を担っている訳じゃあないしな。
    小さな目で見れば一つでも、大きな目でみれば全体を通した集合体が一つなんだよ。
    つまりはその流れが風水となる。そして、暗号ともな。
    古来から神社が祀られている地域には何故か災害が少なく、天災をも避けてきたと言われているくらいだ」

やけくそ守りってやつだね。

次元「そしてもう一つ、この姉を攫った茶眼鏡の野郎の目的は――」

そこで言葉が切れた。

つかさ「どうしたの?」
次元「いや、考えすぎかと思ってな」

なんなのだろう。そう勘繰っていると、彼はとぽつりと呟いた。

次元「不老の術とは、一度落とした命でさえも、再び拾い上げることができるのかもしれないな」

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:04:52.23 ID:ZnFUW6Lu0

◆一方その頃/高良みゆき(追跡編)

陽が完全に落ち、かなりの時間が経ちました。
あれから私達は情報を求めて右往左往しましたが、今一つ進展は見られていません。
銭型さんの車種照会の手筈や検問の手引も、まだ功を奏さないようです。

銭型「焦っても駄目です」

そう頷く彼にも流石に焦りが窺えます。
きっと私達へそれを伝えないようにされているのでしょう。

こなた「禁忌?」

泉さんはというと、お父さんに携帯電話で事情を告げていらっしゃいます。
私のほうは割とあっさり了解を得られましたが。

こなた「世の理を乱す? どういうこと?」

何やら泉さんの様子が変です。
どういう会話がなされているのでしょうか。

こなた「……ふんふん、あい了解」

通話を終えた泉さんに訊ねてみましょう。

みゆき「横からすみませんが、少々興味深いお話をされていたようですね」
こなた「今の? えっとまぁ良く解らなかったんだけど、お父さん、調べ物がどうとか言っててね」

213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:18:16.80 ID:ZnFUW6Lu0

みゆき「調べ物、ですか?」
こなた「あれでもお父さんは小説家だしね。
    ネタ探しの為に雑学を溜め込んでいるし、取材などで割と詳しいんだよ」

そういえばそうでしたね。

こなた「それで最近、この地に纏わる話を集めていたとかで……
    ま、どうせ編集部にお尻を叩かれていたんだろうけどさ」
みゆき「ですが、何故そのような話に?」
こなた「うーんとねぇ、ルパンの話をしていた最中、向こうから一方的に、かな。
     もしかすると必要ともなるかもしれないから知っておけ、だって」

もしかすると思わぬ関連があるのかもしれませんね。
考えすぎの可能性も否めませんが。

こなた「世の理を乱す法、それに近付き過ぎると痛いしっぺ返しを食うだろう。
     加えて、何かを得る為にはそれに引き換える代価が必ずしも必要となる……とかなんとか。
     人身御供とか人柱とか、なんだかそういった単語も出てたみたい」

泉さんが一通りの説明を終えると、静かに耳を傾けていた銭型さんが断言しました。

銭型「オカルトだろうがなんだろうが、法を守るのが我々の仕事です。
    平和を乱すものはとっ捕まえてやりますよ」

格好良い……
ような気もするけれど、この人は少しズレているなと私は嘆息しました。

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:32:24.51 ID:ZnFUW6Lu0

街を流れゆく車の群れを睨んでいましたが、どうやら成果をあげられず。

銭型「今日はもう遅い、君達は帰りたまえ」

至極当然のことを申されました。
ですが、

みゆき「友人が二人も行方知れずだというのに、のほほんと過ごすなど私には出来ません」
こなた「右に同じく、だね」
銭型「やれやれ、最近の若い方は血の気が多いですなぁ……」

銭型さんは溜まった疲れを逃がすように首を左右へと振り、

銭型「ですが君達が夜分に出歩いたせいで、新たな事件に巻き込まれるという危険性もあるでしょう。
    そうなれば益々、ご友人を悲しませる事に成り兼ねない。
    そこの所をどうお考えになりますでしょうか? よく考えた上で答えてくれませんかねぇ?」

確かにそうです。
私達が居たところで役に立たないどころか、足手まといにすらなっているのかもしれません。
……どうすればいいのでしょうか。

こなた「それは分かっています、ですが――」

そんな私に代わって間髪入れずに答えたのは泉さんでした。
彼女は断固とした意志を感じされる声色で、はっきりと申されました。

こなた「見捨てることなど出来ません。大事な、親友ですから」

単純にして明快な答えだと共感しました。

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:45:22.56 ID:ZnFUW6Lu0

銭型「……わかりました」

困ったような苦笑いで銭型さんが漏らします。
しかしすぐに渋い表情を浮かべられると、

銭型「ですが、夜が明けるまでは最寄りの警察署で過ごして頂きますからな。
    そこならば絶対の安全が保障されておりますし、捜査の情報もいち早く得られるでしょう。
    なぁに、むさ苦しいところではありますがカツ丼程度ならば出しますよ」

なんとか許可を頂けたようです。
とはいえ気に掛かる事が一つあります。

みゆき「銭型さんはどうなされるのでしょうか?」
銭型「そうですなぁ、本官はまだやらねばならんことがありますのでもう暫く捜査を続けることにします。
    何か掴めたら本部へ伝えますし、そちらへも届くはずです。
    だから御安心してお休みください」

心情的には休んでいる訳にはいかないけれど、休まなければ体が持たない。
事実、たった数時間、本職の刑事さんに付いて走り回っただけだというのに、既に膝が笑っていますから。
それは泉さんにしたって同じことでしょう。
私も泉さんも、足には少々の自信が合ったのですが。

銭型「では、迎えを寄越しますので」

やがて到着したパトカーを前にして、私達は深いお辞儀と共に彼と別れました。

223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:55:22.36 ID:ZnFUW6Lu0

暗闇を切り裂く赤のランプに揺られながら、私は黙考していました。

私達に出来ることとはなんなのでしょうか。
私達は世界を渡る刑事でもなければ大怪盗でもなく、また暗躍する悪の組織でもありません。

そう、単なる一介の高校生にすぎないのです。

仮にこれがファンタジーなどの物語の中であるとするならば、
私達も目覚ましい活躍を遂げることが可能なのかもしれません。
ですが、ですが私達は平凡な高校三年生でしかないのです。
今ではそのことが心苦しく思えて仕方ありません。

けれども、けれども。

きっと私達にしか出来ない”何か”が有るはずなのです。
それが例え、100の力を101にするほどに微小で儚い手段であったとしても。
それが例え、骨身を削るような苦労の割に合わなかったとしても。

実行しない訳にはいかないのです。

私達に出来ること。
今は、それを考えること。

それだけです。

227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 01:01:28.48 ID:ZnFUW6Lu0

◆ブレイクタイム

かがみ(逃走編)
みゆき(追跡編)
つかさ(潜入編)

これで大体60レス目かな、一部が約30レス程度ってことで目安となっとります
今回は前回の導入部に続いて、舞台設定部という感じです
やたら設定をウザくする俺の悪い癖で長々とした前置きとなり地味だったけれど、ようやく役者が揃ったので次は動かせると思う

ということで寝ます
残ってれば次は旅行編から再開ということで

305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 18:31:50.39 ID:ZnFUW6Lu0

◆夜中/高良みゆき(追跡編)

最寄りの警察署、といえば埼玉県警のようでして。

こなた「ゆい姉さん!?」
ゆい「よーっ、こなたー!」

泉さんのお姉さんもいらっしゃったようです。

みゆき「夜間のお勤め御苦労さまです」
ゆい「相変わらず丁寧な子だね。いいのいいの、あんた達の面倒を看るのはついでみたいなもんだから。
    本音をいうと埼玉県警叩き上げの刑事、銭形さんに会いたくってさ! わはっ、楽しみ!」

お姉さんは、どんな時でも元気の有り余るお方です。
高ぶった意気のままにカーチェイスが云々という銭形さんの逸話を一通り語り、

ゆい「あーそうそう、カツ丼届いてるよ」
こなた「もう? 今来たばかりなのに手際良すぎるんじゃない?」
ゆい「銭形さんがパトカー回すついでに頼んでたみたいからね」
みゆき「お手数をお掛けします」
ゆい「お礼なら銭形さんに言っといで」

その後私達は一般人が立ち入れないであろう待ち合い室へと通され、
そこで泉さんとお姉さんの三人で遅めの夕食を摂りました。
途中で泉さんが、

こなた「こうやって警察署で警官を前にカツ丼を頬張っていると、なんだか悪い事をした気分になってくるよね」

などと仄めかしておられました。
一理あるような、ないような。不思議な気分です。

306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 18:34:49.67 ID:ZnFUW6Lu0

一息ついた所で、引っ掛かっていたことがあったので訊ねてみることにします。

みゆき「あの、かがみさんの件で検問や車種の照会を行われておられるのですよね?」
ゆい「そだよ」
みゆき「何か進展などは?」
ゆい「残念ながら、伝達が来てないからまだ何もってことかな」

おかしい。
ただでさえ目立つ黒塗りベンツの追跡に、何故こうまで手間取ってしまうのでしょうか?
加えてルパン対策で大動員されている警官隊の数。
なのに情報が入らない。
考えられる可能性はふんだんにあります。

例えば、敢えて目立つベンツで攫ったというのはフェイクで、途中で乗り換え突破した。
或いは、検問で引っ掛からないルートである海上や上空を通過した。
若しくは、遠くへは移動せずに近場で身を隠している。
そして考えたくない可能性としては、内部からの撹乱。

こなた「みゆきさんの考えは一般論に基づいていてわたしも理解できるけど、そういうのは優秀な警察の人達が既にやってると思うよ。
     わたし等なんかが思い付くような可能性は真っ先に潰しているだろうしね。
     だとするともっと虚を衝くような……思いも寄らない場所に居たりするのかもしれない」

虚を衝くような場所、ですか。
そのような土地がこの埼玉にあるとは考え難いものです。
あ、だからこそ虚を衝くということなのでしょうが。

けれども私なりの推論を重ねてはみても、確信の持てる結論を出せないまま夜は更けることとなりました。

310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 18:47:04.00 ID:ZnFUW6Lu0

◆同時刻/柊かがみ(逃走編)

かがみ「一体、ここは何処なのよ!?」
茶眼鏡「落ち着きたまえ、私をあまり怒らせない方がいいぞ。場合によっては、当分二人きりでここに住むのだからな」

辺りを見渡す。
もう何度もやってきたことだけれど、それでもこうやって状況を掴もうと画策する。
しかし入り組みすぎ、方向を把握も出来ないままに手を引かれて導かれたものだから、
出口はおろか先程通った場所すら判別が付かない。

そう、ここは大迷宮というのが比喩に成り得ない場所なのだ。

真上を見上げれば恐ろしく高い天井が空を塞いでおり、
それを無限にも思える数の円柱が太々と支えている。
壁は茶褐色で色身がなく、私達の足音を反射しているコンクリート製の地面には温かみがない。
直線と曲線で几帳面なほどに整えられた内部。
そういう景色が遥か遠くまで続いており、且つ全体は一定量の明るさで保たれているのだ。

あの時、こいつから聞かされた珍妙な話が終わると、私は車から降ろされた。
その時は既にこの景色の中に居たのだ。
すぐさま私の手を引いた眼鏡野郎は、
「案内する」
などと宣言し、私は各所を連れ回されることとなった。

けど、観光できたのは面味もなく変わり映えのない景色だけ。

何処が案内だったというのか。

314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 19:00:08.79 ID:ZnFUW6Lu0

茶眼鏡「少し、無駄話をしようじゃないか」
かがみ「そんなことより――」
茶眼鏡「おや、折角得られるであろう情報を無碍に捨て去るというのかね?」

口を噤む。落ち着け、私。急いては事を仕損じる。
こいつの言葉を借りるのは癪だけど、それは私自身の欠点でもあることは確かなのだから。

茶眼鏡「この地は……そう、つまりは埼玉のことであるのだが、海抜が低いというのは御存知かな?」

海抜が低い。つまりは海と同等の高さにあるということ。
故に、

かがみ「水害が多い」
茶眼鏡「察しがいいじゃないですか」

既にこいつとの廻りくどい会話を通してきているので、言いたいことの先読み程度ならば出来るようになっている。
微塵も嬉しくはないけど。

茶眼鏡「そうなのだよ、やがて水害を恐れた人々は水を掃く為の施設を作る事で安定を得ようとした。
     私はそれに噛んでいる人間でもあり、故にこの施設の造りには熟知している。
     まあ、そのお陰で今の私が邪馬台国に行き着けた訳でもあるのだがね」

水を掃く為の施設?
それにこの高い天井、巨大な造り……

かがみ「まさか、ここが地下だっていうの?」
茶眼鏡「君は実に賢い。その通り、ここは埼玉地下排水施設。
     一般人などが到底立ち入れぬ、近場にあって尚且つ最も遠い、人工迷宮ということだ」

道理で、味気がないわけか。

318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 19:24:50.63 ID:ZnFUW6Lu0

茶眼鏡「偶然だったのだよ、そう、偶然! 正に天からの思し召しというものだ!
     わたしがこの施設を造るという役目を担わされたことが幸いし、
     故に、地底に沈みこんでいた邪馬台国の残滓を掘り当てることができた!」

高笑いにも似た独白が、幾重に跳ね返り降り注いでくる。
いちいち耳に悪い奴だわ。

かがみ「だったら国に、『発掘しました』ってお達しを出しなさいよ。あわよくばゴッドハンドって褒められるかもよ?」
茶眼鏡「笑えない冗談は止したまえ。国なんぞにわたしの偉大な手柄を与えてたまるか。
     ましてや国など、わたしにとっては仇敵だ。わたしがここに居るのもその為なのだからな。
     今すぐにでもぶち壊してやりたいくらいだ……!」

時折この男が見せる憎悪に歪む表情。
一体、目的はなんなんだ?
そして動機もだ。
この男は饒舌なくせに、その二点については頑なに口を割らない。
それより、もう少し情報が欲しい。

かがみ「それで邪馬台国はどこにあるのよ? 変わり映えのない景色ばかりじゃない」

320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 19:27:21.26 ID:ZnFUW6Lu0

私の言葉で男が冷静さを取り戻し、静かに告げる。

茶眼鏡「何故、遺跡が今まで発掘されなかったのかという話を車内でしただろう?
     実を言うとだな、我々もまだ完全には発掘出来ていないのだよ。
     なぜならばこの施設のさらに下には巨大な地底湖が存在しており、そこに卑弥呼の根城が眠っているはずだからな。
     皮肉にも邪馬台国が”海底に沈んでいる”とされる説は、強ち嘘ではなかった訳だ」

そこで一旦言葉が切れ、最後にこう付け加えた。

茶眼鏡「水の流れは潮の満ち引きと近い。つまりは星の動きとも関連している。
     鍵は君と君の妹。その日、その時に君達二人が揃わなければ意味がない。
     なので、そろそろドロボー君にもう一つの鍵を返して頂かなくてはな。
     奴はこちらを嵌めたようだが、奴がアジトに帰り付くことを判ったうえで逃がしてあげたのだから」

鷹の眼のように鋭く冷たい瞳。
男の高笑いが無機質な施設内を暴れ狂い、いつまでも辺りに残響を残し続けた。

321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 19:40:06.24 ID:ZnFUW6Lu0

◆深夜/柊つかさ(潜入編)

つかさ「だから、タバコは肺ガンになっちゃうよ?」
次元「煩い奴だな、妹みたいなことを言うんじゃねぇよ」
つかさ「そりゃー私は上に三人もお姉ちゃんが居るからね」
次元「そういう意味じゃない。
    俺の妹の話とお前の態度を重ね合わせた上での比喩的表現を兼ねて――」

そこで次元さんの動きが止まった。

次元「んっ……?」

どうしたんだろう?
聞き耳を立てているようだけど?

次元「静かにしろ、そこを動くな」

次元さんが猫のように素早く静かな動作で扉横の壁に背をあてた。
そのまま左手で扉を開け――

322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 19:50:26.39 ID:ZnFUW6Lu0

チャキッ。
という小気味良い撃鉄の音と共に外へ飛び出した。
どうやら辺りを窺っている。

次元「……」

何もないようだけど、それでも彼は拳銃を降ろさない。
私は、動かないほうがいいのかな?
状況をみると外は真っ暗。
次元さんの服装だと夜に溶け込んでしまうくらいに明かりがない。
まあ、ここは山奥の廃屋だからね。
街灯なんかなくて当たり前なんだけど。

一分……二分……三分……

静かだなぁ。
虫の鳴き声がリンリン聴こえちゃうし。
なのに次元さんはまだ外に立ったまま、微動だにしていない。
数分前から拳銃の向きも変わってはいない。

これがいわゆるイメージトレーニングってやつなのかな?

ちょっと脅かしてみようかな。
えへへっ。

327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 20:01:42.34 ID:ZnFUW6Lu0

彼の背後を目指して忍び寄っていく。
出来るだけ足音を響かせないように、呼吸も止めて。
一歩、あと一歩、もう一歩。

よぉし、建物入口まで着いたよ!

彼はまだ気づいていないみたい。
驚くだろうなぁ。

外へ踏み出し、

た直後に私は後ろへ吹っ飛んでいた。

つかさ「痛っ!」
次元「動くなって言っただろうが! くそっ!」

横に手を引っ張られる。
そんなに強く引かないでぇ〜!

なんて思っていたら、私がさっき居た場所の地面が踊っていた。
木片がバラバラと舞っている。
違う、これって――

つかさ「撃たれてる!?」
次元「そうだよ、撃たれてんだよ!」

入口から死角となっている場所、そこのテーブル後ろに引き摺りこまれる。
避難避難。

331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 20:13:54.97 ID:ZnFUW6Lu0

なんとかしなきゃ。
応戦しなきゃ。

つかさ「あ、でも私、銃を持ってないよ!」
次元「お前が銃を持ったら俺に風穴が空いちまう、後ろからズドンだけは勘弁してくれ」
つかさ「じゃあ、私はどうすれば!?」
次元「頼むから余計なことはせずに伏せといてくれ、俺の仕事が増えるだけだ」

彼はソフト帽を目深に被りなおし、タバコに火を付けてから端的に続けた。

次元「敵は一人、だが間違いなく手練だ。大方、刺客や殺し屋の類いってところか。
    ルパンを尾行し、この時間まで気配を殺し、眠りにつく頃合いを狙っての襲撃。
    加えて、それに気付いた俺が睨み合う形に持ち込まれた。それくらいに手強い」

銃撃が止んだ室内には再び静けさだけが残っている。
そういえば銃声が聴こえなかったような。
次元さんが言ってたっけ、サイレンサーがどうとかって。

次元「ここで伏せてろ、お前の脚を打ち抜いて運ぶくらいに容赦しない相手だからな。
    下手を打てば痛い目を見るだけでは済まないかもしれん」

私の頭を優しく撫でて、次元さんは扉横の位置に戻った。

336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 20:25:24.25 ID:ZnFUW6Lu0

静かだ。
虫の鳴く声が響き渡るくらいに。
風が木々を払っていくのがわかるくらいに。

私はテーブルの影から覗くことしかできない。

ふっと、室内が暗がりに沈んだ。
次元さんが電灯を落としたらしい。
目が慣れていなくて視えないけど、彼のタバコが赤く灯っているのは解る。

……動きがない。

銃撃戦っていうと、映画や漫画のなかだとドンパチやっているような気がするんだけど。

―― 一撃必殺。無駄弾を撃っているようじゃ三流もいいところだ。何より弾代が嵩む。

拳銃メンテナンス中での、彼の言葉が蘇ってきた。
あれはこういうことだったんだ。

怖いよぉ……。
大丈夫だろうか、やられちゃわないよね?
次元さんは強そうだし格好良いし、何よりヒゲがある人は強いって相場が決まっているから。
私も応援してるし。

大丈夫。
たぶん絶対に大丈夫。

340 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 20:41:33.13 ID:ZnFUW6Lu0

彼のタバコは早くも三本目に入った。
なのに未だ動きがない。
新たな動きと言えば、彼が落ちていた弾丸を拾い上げたことくらいだ。
たぶん、弾丸の種類とそれについた発射痕から相手の銃器を割り出しているのだと思う。

「大体の目測はついているんだが、射撃後移動しやがったな」

苦々しげに呟き、尚も物影から外を見張るまま。
どうやら限られた室内に居る私達と、森を自由に動ける相手では分が悪いらしい。
けれども手投げ弾などを放りこまれる危険性は薄いはず。
だって、私は人質だから。
皮肉にもそういう部分では役に立っているのかもしれない。

何か、私にできることはないのかな?

なにか、なんでもいい。
些細なキッカケにでもなれれば。

341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 20:51:14.47 ID:ZnFUW6Lu0

次元「つかさ」
つかさ「ひゃいっ」

いきなり呼ばれた。
はい、と言おうとしただけだから、くれぐれも勘違いはしないでほしい。

次元「なんでもいいから、俺に話しかけているフリをしてろ」
つかさ「なんでもって……?」
次元「なんでもいい、歯医者の話でもな」

歯医者嫌いなんだっけ。
ゆきちゃんと一緒だね。

次元「ちょっと行ってくる」
つかさ「どゆこと?」

私の質問には答えず、タバコを扉横の板に挟むと裏手の窓から飛び出していてしまった。
あれ、私一人で残されちゃった?
ちょっと待って、怖いんですけど。

つかさ「あ、あのぉー……次元さーん……?」

返事がない。
当たり前だけど。

つかさ「次元ちゃ〜ん?」

うぅ。
やっぱり居ないよぉ。

343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 21:02:51.04 ID:ZnFUW6Lu0

話せっていったって何を話せばいいんだろう。

「残暑厳しき折、如何お過ごし……」

って、もう寒い季節だったよ。
えっとぉ、今の季節ネタだと。

「そろそろコタツの季節だけど、コタツといえばミカンだよね?」

いや、駄目だ。
今一つ捻りがない。
もうちょっとアレンジを加えて、

「コタツといえばバルサミコ酢……」

これも駄目だ。
持ちネタの乱用は飽きを招いてしまうから。
一旦コタツから離れて、発想を変えるべき。
そう、私の十八番、コンビニネタ!

「ジャンプ買いにいったら誘拐されちゃったよぉ〜」

あるあるー。
あ、これ結構使えるかも。
今度お姉ちゃんに言ってみよう。

なんてことをやっていると、突如、遠くからの銃声が冷たい大気を震わせた。

346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 21:11:39.51 ID:ZnFUW6Lu0

今の……!
どっちかが撃たれた。
どっち?

怖い。
暗くて見通しが利かないし、もし次元さんが倒れちゃってたら……

廃屋の扉を覗いてみる。
開きっ放しでタバコが灯っているだけの場所。
月明かりでほんのり光っている場所。

そこに来るのはどっちだろう。
次元さん?
それとも、ゴルゴ?
いやゴルゴかどうかはわかんないけど、ゴルゴである確率もいくらかはあるし。
ちがうちがう、そんなことじゃない。

どうしよう。

駄目、諦めたらそこで試合終了。
もしゴルゴだったとしてもこの箒で返り討ちにしてやる。

よし、私は出来る子。
頑張ればやれる!

……足音だ、近づいてくる。

ならば、次元さんのように扉の陰に隠れて――

350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 21:25:37.42 ID:ZnFUW6Lu0

つかさ「覚悟ーっ!」
次元「うおぉ!?」

ひらりと躱され箒が空を切った。
って、

つかさ「あ、次元ちゃん」
次元「誰が次元ちゃんだ。ルパンの真似ごとはやめてくれ」

壁からタバコを抜き取って再び口に咥え、

次元「そろそろ此処から動くとするか。場所もバレちまったし腹も減った」

深々と煙を吹かしていた。

つかさ「あの、ゴルゴは?」
次元「ゴルゴ? ……あー、所詮、無駄弾を使う相手なんざその程度ってことだな」
つかさ「良かったぁー、やられちゃったのかと思ったよ」
次元「もしお前が銃を持っていたら、今の不意打ちで俺は御陀仏だったかもな。恐ろしい殺し屋だ」
つかさ「えへへっ」
次元「ちなみに褒めてはいないからな」

怒られちゃったよ。
もう一度タバコを吹かし、彼はぶっきらぼうに吐き捨ててから締めくくった。

次元「用意周到な相手だからルパンの野郎のことも心配だ。とにかく移動するぞ、腹も減って堪らんからな」
つかさ「じゃあさ、またサラダスパ作るよ」
次元「そんな悠長な暇はないだろうが。ま、一応期待しといてやるよ」

足早に身支度を済ませてから、私達は廃屋を後にした。

377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 00:12:56.34 ID:giVftX0v0

「御覧下さい、正面遠くに望んでおりますは由布岳にございます。
 地元では古くから信仰の対象とされ、今では沈静化しているものの時には怒りを露わに噴火したこともありました。
 その山岳から齎される温泉湧出量は日本で三本の指に入るとされ、御蔭さまで原泉数ではお隣の別府に次ぐ第二位となっております。
 また、温泉街として有名な湯布院町ではありますが、
 実は2005年度に合併したため現在では由布市という名称に変わっておりますがゆえでござるー」

何故だ。
何故、拙者がこのような観光案内をせねばならんのだ。
しかしこれも与えられた責務。
投げ出す事などどうして出来ようか。

「私、温泉には口煩いタチでして、各地を巡り巡ってはみたもののこの地に勝るほどの名湯は存じておりませぬ。
 また、世俗に塗れた繁華街がないのも一つの特徴であり、その清楚な空気から家族連れの皆様に人気が高いと評されております。
 中でも有名なのが――」

眠い。
昨晩、必死に詰め込んだ知識を語ってはみるものの、正に付け焼刃。
名湯について語るくらいならば拙者の名刀、斬鉄剣について語らせて頂きたいものでござる。
いや、我慢なり。
このような瑣末な試練に男子が音を上げてはならぬ。

しかし嗚呼、悲しきかな。
私も落ちぶれたものよ。
全ては思い返すこと数日前に遡る――

385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 00:28:59.44 ID:giVftX0v0

◆数日前/五右ェ門(旅行編)

「よぉ〜! 五右ェ門ちゃぁ〜ん!」

夕暮れの街中を往く当てもなく彷徨っていた時、
懐かしき仕事仲間との再会を果たしたのだ。
そやつの出で立ちは緑のジャケットに黄色のネクタイ。
その異様とも思える服装感覚には流石の拙者も嘆息せざるを得ないというもの。

「あぁ〜いかわらず袴に雪駄なのねぇ〜」

俗物には解らぬものよ。
和服という由緒と伝統に象られた良さが。
しかしこやつが絡んできたということは、何かしらの”仕事”があるということ。
今の私にとって”仕事”とは命を繋ぐ一縷の望み。
素通りを決め込む訳にもいくまいて。

「どうしたのだ?」
「ちょぉ〜っと、そこの店まで来てくれるかなぁ〜?」
「いいとも」

拙者は凄いいい顔で即答した。

389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 00:39:38.51 ID:giVftX0v0

ルパン「……で、やって貰いたいのが観光案内役ってわけさ」
五右ェ門「成る程、理解はした。が、承諾は出来ぬ」
ルパン「なんでー?」

そう、私は決心していたのだ。
いつまでもこのような悪行に手を染め続けている訳にいかないと。
その思いが根底にあったからこそ、今までもルパン達とは微妙に距離をおいてきていた。
だが、そうなればそうなるで一つの問題に直面することとなったのも事実。

ルパン「金、ないんでしょぅ? 食事もロクに摂れないくらいにぃ?」
五右ェ門「……」
ルパン「ここは俺の奢りでいいからさぁ、話だけでも聞いてくんなぁ〜いかなぁ〜?」
五右ェ門「……」
ルパン「何年も定職につかずフラフラとしている人間に対して、世間様の風は冷てぇぜぇ〜?」

くっ……。
痛いところを的確に突いてくるこの言葉。
まるで悪魔。
いや、悪そのものだ。

恐ろしい。
敵に回せばなんとも恐ろしい男よ。

393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 00:59:44.14 ID:giVftX0v0

私は席を立つ事が出来なかった。
それくらい空腹に餓えていたのだ。

ルパン「なぁ〜に、五右ェ門の言いたいこともわかるさ。それをわかった上で頼んでいるんだからよ」

不敵な笑みだ。
この計算し尽くしたかのような自信は、何処から湧いてくるのか。

五右ェ門「だが、結局は盗みに手を貸せと云うのだろう?」
ルパン「ちげぇ〜よぉ、やるのは俺と次元だ。で、そのプランを円滑に進める為には他の皆さんが邪魔なのさ」
五右ェ門「御主であれば一般家庭の面々程度、どうとでもなるはずだ」
ルパン「俺もそう思っていたさ」

ルパンの顔付が変わった。

ルパン「ところが今回、思っていた以上に面倒そうでな。
     とっつぁん達に嗅ぎ付けられたってのもあるが、あんなに柊の家族が多くちゃ敵さんが何を仕出かすかわからねぇ。
     流石の俺様も一家6人の護衛と盗みの両立は果たせねぇからな」
五右ェ門「とは申されても……」

394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 01:00:27.66 ID:giVftX0v0

ルパン「俺は別に構わないぜ? お前が引き受けてくれなくとも、赤の他人が血祭りにあがるだけだしな。
     それにこの仕事は”偶然”お前を見掛けた俺が、古い誼みだってことで持ち掛けてやっているだけだ」

善良な市民が何も知らされぬまま命を奪われる。
拙者にはそれを阻止するだけの力はある。

ルパン「どうする? 手を汚すのは俺達で、お前にはただ”護衛”を兼ねた”観光案内”をして貰うだけだ。
     胸を張って歩けるような立派な仕事じゃねぇのかぁ〜?」

魅力的な提案!
しかし拙者にもプライドというものはある。

ルパン「温泉街まで行って欲しい」
五右ェ門「了承!」

心は決まった。

397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 01:11:57.06 ID:giVftX0v0

かのような経緯で今に至っている。
おっと、バスから降りねば。

五右ェ門「足もとにお気を付けくださいませー!」

うむ、この後は自由行動。
それ即ち私自身の自由時間でもある。
この堅苦しい俗世間から離れられる一時でもあり、
密かに楽しみにしていた由布岳の秘湯に単身乗り込める好機でもある。

まつり「くっさー!」
いのり「ねっ、くさいよねー!」

硫黄の匂いの良さがわからぬとは……所詮、子供だということか。

ただお「よーっし、お父さん頑張っちゃうぞー!」
みき「こらこら、はしゃがないのよ」

賑やかな一家だ。
和み、とはこういう状況を現した素晴らしい日本語だとまた一つ感心。

五右ェ門「では、ごゆるりとお楽しみください」

今のところ目立つような問題も起こってはいない。
ルパンも”念のため”と釘を刺していただけあって、本当に観光案内だけで終わるのやもしれん。
これが一般世間の仕事か。
こういった案内役として頭を使うのは慣れないものではあるが、悪くはないものだな。

実に快い。

403 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 01:24:50.76 ID:giVftX0v0

私が感傷に浸っていた時のことだ。

ただお「ところでお侍さん」

一家の大黒柱が、にこやかな微笑みで話し掛けて来たのだ。
まだ案内を担えと申すのか。
拙者は秘湯への思いではち切れそうだというのに。

みき「立派な白鞘ですね、中身は本物なのでしょうか?」
ただお「仕込み刀かな? 一見すると杖のようにも見えるけれど」
五右ェ門「……いえいえ、まさか。単なる警棒ですよ。隕石製の刃など収まってはおりませぬ」

鋭い。
こやつ、出来る。

みき「ですが眠る時も大事そうに抱えていらっしゃったので」
ただお「ええ、随分と値の張るものかと伺いまして」
五右ェ門「単なる棒切れですよ、防犯の為です」

このような遣り取りをしていると、

まつり「お父さん達、なにやってんのー?」
いのり「置いて行っちゃうわよ?」
ただお「すまんすまん、先に行っててくれ」
みき「こっちはお父さんと二人で観光するから、そっちは二人でね」

そのような手筈となった次第のようだ。

405 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 01:38:32.20 ID:giVftX0v0

ただお「お手を煩わせて申し訳ないのですが、訊きたい事が二つあるので少々あちらの方へ宜しいでしょうか?」
みき「折角観光に来たんですもの、詳しく知っておきたいものですからね!」

ふむ。
与えられた役目とあらば致し方ない。
断れる筈もなかろうて。

五右ェ門「承知しました、伺わせて頂きましょう」

やがて木々に囲まれてはいるが、前方の視界だけが開けた場所へと連れ出された。

ただお「いやー、ここからだと由布岳が一望できるっ!」
みき「心なしか空気も澄んでいるようね」

実に良い心を持ち合せていらっしゃるものだ。
今どき珍しく余裕をもったその振る舞い。
それは私と同じく神道に従事しておられる神職ゆえなのか。

みき「あ、しまった。荷物を抱えてきちゃったぁ〜」

確かに御婦人が大きなバッグを抱えられている。
これが噂に聞くドジっ子というものなのだろうな。素晴らしい。

五右ェ門「私がお持ちしましょう」
みき「あ、すみません。では代わりに杖はわたしが」
五右ェ門「かたじけない。ところで、私は何を?」
ただお「あ、申し訳ない。景色に見惚れておりましたので。先ずはあの由布岳について詳しく願いたいなと」

またなのか?
先程申し上げたはずではあるが、まあよかろう。

408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 01:50:53.35 ID:giVftX0v0

輪を掛けて詳しい説明を行う。
二度目ともなれば自然と饒舌になり、熱も入るものだ。

五右ェ門「という伝えがあります」
ただお「いやーっ、勉強になりますなーっ!」
みき「ええ、素晴らしい!」

よしてくだされ。
褒め慣れてはおらぬものでして、恥ずかしいではござらぬか。

五右ェ門「では、私はこれで」

さぁて、秘湯への一人旅を。
そう思い立ち、私の両手を塞ぐ荷物と刀を交換しようとした時のことだった。

みき「あ、ちょっと待ってくださいな」

御婦人に制動されたのだ。
それに気が付いてみれば、私が語っていた間に斬鉄剣が夫君の手へと渡っている。

ただお「まだ、用は済んでおりませんよ? もう一つ訊きたいことが残っています」
五右ェ門「はて? 由布の銘菓についてでしょうか? ならば帰りにでも」
みき「あらぁ、それは楽しみですね。ですがその前に――」


――わたしの本当の娘が何処に居るのか、お訊かせ願いたいわね。


拙者の首に、濡れたように光る白刃が添えられていた。

414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 02:09:26.75 ID:giVftX0v0

御婦人が私の背後へとまわった。

五右ェ門「なっ……!」
ただお「良い刀ですね。実はわたくしも剣道と居合いを嗜んでおりまして。
     まあ、神職に仕える者には多いことでもありますが」
五右ェ門「御冗談はおやめくだされ」
みき「冗談などではありませんよ。貴方、あのクジ引きの役員さんでしょう?
    四回連続で特賞なんて怪しいったらありゃしないわよ」
ただお「大体だな、眠る時も刀を添えているような人間を信用できる訳がない。
     この刀が本物であることは先ほど、貴方が居眠りされているときに確認しましたからね」

しまった。
夜更かしが祟ったか。

五右ェ門「しかし私は唯の案内人。刀を持ち歩くのは防犯の為でして」
みき「あら、じゃあどうして娘が入れ替わっていたのかしらね?」
五右ェ門「そのような確証が何処にあるのでしょうか? 入れ替わるなんて不可能でしょうに」
ただお「うちの娘はピーマンが大の苦手でしてね、
     カルボナーラにふんだんに盛られたそれを除けもせずに食べきるなんて普通ならば有り得ません」
五右ェ門「し、しかし好き嫌いとは時の流れと成長によって変動するもの――」

ぐいっと顎に刃が食い込む。
不味い、この両手が塞がった状態からだと反撃に至るよりも先に手を取られる。
それに背後からも押さえられている為に身を引けない。
拙者、ピーンチ!

みき「大体さ、なんでうちの娘の身長が急に伸びてるのよ?
    お父さんよりつかさの方が長身なんて、どう考えても尋常じゃないじゃないの」

ルパンの奴め、抜かりおったな!

421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 02:29:27.31 ID:giVftX0v0

みき「下手に抗って本物のつかさに危害が及ぶのを恐れてはいたんだけれど、
    いくら待てども身代金の要求すら来ない」
ただお「加えて、偽の娘も変装して普段通りに過ごすだけで何の動きも見せない。
     いや、唯一の変化はかがみに余計に付き纏うようになったということくらいかな。
     あれはかがみを人質にとっていたのかな? お陰で手も足もでなかったよ。
     それにうちには上二人の娘も居ることだしね。なんの対策を打てずにもどかしくて堪らなかった」

夫君の眼光が危ない。これは修羅場を潜り抜けて来た私だからこそ解る。
娘の為なら手をも汚す乱れなき決意の表れだ。
などと観察している場合ではござらぬ!
誤解を解かなければ。

五右ェ門「勘違いなされるな、娘さんは無事だ」
ただお「それは本当かい?
     まあ、仮に無事じゃなかったとしたら、君の供養をうちで行うだけだけどね」

言葉や物腰とは裏腹にとても物騒でござる。

五右ェ門「拙者は御主等の護衛を頼まれただけにありまする」
みき「護衛?」
五右ェ門「そうです、護衛です。主君らに危害が及ぶのを避ける為にこのような離れた土地へと誘導したまででして」
ただお「娘はどこに?」
五右ェ門「仲間が匿っておられる。私の仲間は無碍に命を奪うような輩ではござらぬ。
       用が済めば必ず元のように帰ってくることでしょう」

刀が少し緩んだ。

五右ェ門「あ、でも姉のほうが攫われちゃいました」
ただお「さて、今月は供養の余裕あったかな……」
みき「あらあら忙しくなりそうですね、あなた」

429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 02:49:12.42 ID:giVftX0v0

◆同時刻(朝)/柊つかさ(潜入編)
次元「まったく……あの野郎……」
次元さんが携帯電話片手に渋っていた。

つかさ「どうしたんですか?」
次元「流石に179が158を演じるには限度があったらしい。
    まあ、170程度にまで落としてそれ以外を完璧に演じれば、あとは立ち方次第で案外誤魔化せるものだが……
    それでも親の眼は盗めなかったか」
つかさ「なんのこと?」
次元「ああっと、お前に電話だ。親御さんからだとよ」

手渡されたので電話口に立つ。
つかさ「もしもし」
みき『あ〜らぁ、元気、つかさ?』
つかさ「うん、ばっちり! ところで、そっちで何かあったの? ってあれ、なんで次元さんの番号が分かったの?」
みき『お母さんにはなんでもわかるのよ』
つかさ「へぇー、不思議だねぇ」
みき『あ、いまお父さんに代わるわね』

何やら電話の向こう側が騒がしい気がするのは私の思い過ごしだよね。
折るとか折らないとか聴こえるけども。

ただお『お、つかさ、久しぶりだね』
つかさ「久しぶりー! ごめんね、連絡いれられなくって」
ただお『いいんだよ、つかさが無事だと分かればさ。んーと、そっちで何か変なことをされてはいないかい?』
つかさ「大丈夫、つかさはちゃんとやってます! 次元さんもいい人みたいだから」
ただお『誘拐犯を信用しちゃいかんぞ。まあ、こっちにも人質が出来たから、もしつかさに何かあれば……』
つかさ「何かあれば?」
ただお『こっちの話さ。じゃあ、気を付けてな!』
つかさ「うん、またね! お土産よろしく!」

435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 03:10:26.90 ID:giVftX0v0

電話越しであれ久し振りの家族との会話が出来たので純粋に嬉しかった。
連絡が出来なかったのは勿論、次元さん達に阻止されていた所為もあるけれど、
意味も無く心配させてしまうのもどうかという私なりの配慮でもあったわけだしね。
うん、でも良かったよ。
お父さん達はお父さん達で普通に温泉旅行を楽しんでいるみたいで。

次元「もういいのか? 久し振りだってのに」
つかさ「うん、どうせまた会えるんだしね。
     それに電話って相手の顔が見えないから、あんまり好きじゃないし……それから」
次元「ん?」
つかさ「そろそろ私達も動き出すんでしょ?」
次元「余計な気はまわさなくていい。お前の気配りは悪い方に働くからな」

お姉ちゃん以上に口が悪い人だなぁ。
これが、こなちゃんが言ってたツンデレってやつなのかも。
あ、それより、

つかさ「次元さんに代わってって」
次元「くそっ……怪盗相手に交渉とはとんだ見世物じゃねぇか……」

話口を押えつつ次元さんが付け加えた。

次元「取り敢えず着替えておきな。そろそろルパンの奴から連絡があるかもしれないしな。
    尤も、俺達が逃げ回るかルパンと共に潜入するかはわからないが。
    潜入するとなれば夜になるだろうが、また追手が来る可能性もあるし用心するに越したことはない」

またもタバコに火を灯し、次元さんは小声で通話に応じていた。

439 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 03:38:02.59 ID:giVftX0v0

着替え終わって戻って来ても、次元さんはまだ通話中のようだ。
暇なのでテレビでもつけてみようかな。

つかさ「ポチっとな」

この時間帯だとニュースが主になっちゃうだろうけど。
静かなのよりはマシだと思うし。
それに廃屋じゃあテレビなんて視れなかったしね。
なになに、見出しは”ふたご座大流星群”?

『本日も活発な動きを見せている”ふたご座流星群”。
 毎年、激しい活動を行う為に三大流星群とも称され、観賞にも適しているこの”ふたご座流星群”ですが、
 今年は例年と比べ物にならないほどの放射量が既に観測されており、
 専門家達も驚きを隠せない様子で口々に”今年は何かがある”と語っておられるようです。
 さて、このふたご座流星群ですが、ピークは今晩から明日朝に掛けてであり――』

ふたご座流星群かぁ。
なんだか私とお姉ちゃんみたいだなぁ。
もし叶うのなら、皆と一緒に眺めに行ってみたいな。

あと、次元さんやルパンさん、それに家族のみんなも……
なんてねっ。

442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 04:03:51.49 ID:giVftX0v0

◆同時刻/柊かがみ(逃走編)

私は閉じ込められていた。
あの無機質な迷宮を切り抜くように造られていた部屋の一つにだ。
意外にも外装とは対照的に、内装は温かみのある普通の一室だった。
床はコンクリート製であっても、テーブルや椅子は勿論、ベッドやお風呂やトイレまで完備。
割と値の張るワンルームマンションに近い。
それも広さから考えると接頭語に高級が付きそうなくらいに。

ただ、普通の建物と違う点を挙げるとするならば、
出入り口が硬い鉄で枠組みされた木製の扉であり、加えて鍵が外から掛けられているということ。
そして窓が一切存在しないということ。

などなど脱出の手口を探る為に観察を続けていると、
コンコン。
扉が律義にも鳴いていた。

「どうぞー?」

疑問形なのは外に鍵が付いている為に、室内に居る私がどう答えるべきか迷った為だ。
ともかく、それによって扉は開かれたようで、一人の男がお盆片手に進入してきた。

「朝食のお時間です」

もうそんな時間なのか。
時計がないし光も一定量に固定されている為に気付けなかった。

444 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 04:14:20.30 ID:giVftX0v0

ふと勘付く。
こいつをどうにかしてしまえば、ここから脱出できるのではないかと。
先ずはお盆で塞がれた右手とは反対に潜り込んで、つかさがあの時にやった様に――

「やめておいたほうがいいですよ、外には大勢の見張りがいますから」

視線から考えを読まれたのか。
ということは油断なんて期待できない相手なのね。
そもそも、出口がわからなきゃ完全に手詰まりじゃないの……。
にしても豪勢な朝食ね、

「毒なんかが入っていたりして?」

男は破顔してから言った。

「そういうことをせずとも、女性一人相手ならば簡単に命を奪えますよ。
 それにあの方も、貴女には何の危害を加えてもいらっしゃらないでしょう?
 丁重に扱えとのお達しが届いているのですよ、我々にはね。
 大体、昨夜から何も食べてはいないのでしょう?
 意地を張った所で無駄に消耗するだけですよ」

丁寧な物腰が何処か嘘臭い。
あの眼鏡と同じような匂いがする。

「では、また後で。ごゆっくり」

男は朝食を並べ終えると、丁寧なお辞儀を残して歩き去って行った。

446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 04:17:29.89 ID:giVftX0v0

◆ブレイクタイム

流石に疲れました、これで約30レスです
そして3日落ちまでに時間が足りないかもしれない
残りはなんとか暇を見付けて書き溜めておくので保守をお願いします
相変わらず3日掛けないと終わらないのは申し訳ないとしかいえません、自分としても困ったものです
ではまた後でお会いしましょう

にしても冒頭部で秋とせずに7月7日にしときゃあ楽だったのにねぇ

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 20:07:59.60 ID:giVftX0v0

◆午前/柊かがみ(逃走編)

私が朝食を摂り終わり一息をついた頃、またも密室の扉がノックされた。
前回のように返事をするべきか迷っているうちに滞りなく開かれる。

茶眼鏡「来たまえ、ぜひ見てもらいたいものがある」

微笑みを張り付けた茶眼鏡。
無駄に姿勢がいいなと今更ながらに思う。

茶眼鏡「さあ、早く」

従いたくはない。
けれどもここから出られるチャンスでもある。
拒否するわけにはいかない。

かがみ「わかった」
茶眼鏡「よろしい」

満足そうな笑いに辟易しつつも、私は男の後に続いた。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 20:09:39.87 ID:giVftX0v0

扉を出た途端、死角部分に大勢の黒服達が待機していたことが目に留まる。
朝食番の言葉通り、見張りが多いとは本当だったのね。
と、その中の一人が声を掛けて来た。

黒服「大佐、どちらへ?」
茶眼鏡「地底湖へと向かう」
黒服「それはどうして? まだ水が引き切ってはおりませんし今向かわれても……」
茶眼鏡「彼女は当事者だ。知る権利くらいあるだろう」
黒服「はぁ……」

不服そうな黒服。
地底湖の水が引く?
しかも黒服の言い草から察するに間もなく水が引き切るようにも受け取れる。
いや、それよりも気になるのはだ。
なぜ茶眼鏡はこうにも私に情報を与えるのだろうか?

黒服「では我々もお供いたします」
茶眼鏡「そうしてくれ」

数人の黒服が後に付き従う。
あ! あいつは……朝食番の男じゃない。
馴れ馴れしい笑顔なんかくれちゃって、私の心情も知らずに。

やがて私達は入り組んだ迷宮を奥へ奥へと進んでいった。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 20:11:18.84 ID:giVftX0v0

それにしても広い。
これが地下という人工建造物のなかだとは到底思えないわね。

茶眼鏡「不思議だろう?」
かがみ「なにが?」
茶眼鏡「この施設がだよ。そして人間がこんなものを造りだせるということがだよ」
かがみ「そりゃまぁ科学の進歩ってやつだろうし」
茶眼鏡「そう、科学の進歩」

また溜めが入る。そして続く。

茶眼鏡「しかし、どれだけ科学が進歩しようとも創りだせないものもある」

創りだせないもの。
この男が散々にして語ってきた邪馬台国と卑弥呼、そして――

かがみ「不老不死?」
茶眼鏡「違うな、もっと端的で唯一なものだ」
かがみ「……?」
茶眼鏡「命だよ。不死の理を解くには、生と死の理解から始まるとも重ね重ね語ってきただろう。
     わたしが求めているのは不老などといった下らない野心の為ではない。
     ”生”についてのプロセス。転じて、そこから命を創りだす術」

命を創りだすすべ?

かがみ「そんなこと不可能よ。大体さ、それを見つけて何をしたいわけ?
     医療技術の発展にでも貢献しようっていうマッドサイエンティスト気取りなの?」
茶眼鏡「医療技術の発展か……それもいいだろうな。が、そんなことは二の次だ」

うやむやなままにその件については打ち止めとなった。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 20:13:20.68 ID:giVftX0v0

道はまだ続く。
一向に変わらない、無機質な空間の遊歩。

かがみ「疑問点がまだあるわ」
茶眼鏡「答えられることならばお答えしよう」
かがみ「この組織。いや、機関っていうの? これはなんなの?
     どうしてこんなに大勢の人達が貴方に協力しているの?」
茶眼鏡「それはだな、彼等は社会的に棄てられたような人間達の集まりだからだ」
かがみ「高校生である私にも、わかり易く頼みたいものね」
茶眼鏡「気の強いお方だな、全く……」

男は考えを整理するように沈黙し、再び口を開いた。

茶眼鏡「彼等も元はといえば、君達の両親と同じように仕事に精を出してきた者達だった。
      冷静に観察すれば解るだろう? 例外もあるが、彼等の年齢層が総じて高いということに。
      彼等は割と古いタイプの人間でね、滅私奉公の名の元にお国の為と汗水垂らしてきた人種なのだ」
かがみ「それで?」
茶眼鏡「裏切りだよ。度重なる政治改革の名の元に焙り出され、厄介払いをされるかのように次々と職を失っていった。
     古いタイプの人間は熟達した腕と知識を持っていながらも、暴風に揺れる木の葉の如く変化というものには弱い。
     激動する時代の流れにはついていけなかった。
     能力はある。しかし変化に弱い。だが、私のようなブレインさえいれば十二分に活躍できる。
     私はそういう埋もれた老兵を掻き集め、一つのグループとして創り上げた。それがこの集団の概要だ。
     この地下排水施設の着工を請け負えたのも、煽りをマトモに受けていた建設業界の食み出し者達が居たからだ。
     いま君の後ろで護衛をしている数人、その中の半数はこの建設に実際に携わっている者たちでもある。
     人間食わねば生きてはいけない。家庭を背負わされていれば尚更だ」

あの時見せた憎悪の表情。これはこの人達全てにおける意志の総意だったのかもしれない。

かがみ「じゃあ、貴方はなぜ仲間を殺したの?」
茶眼鏡「……古い話となるが、三国志は御存知かな? その中に諸葛亮孔明という丞相が登場する」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 20:15:49.90 ID:giVftX0v0

茶眼鏡「戦では策を練る軍師として活躍し、表では君主を支え、
      裏では発明を行ったりと正に天賦の才を与えられた人物だったと記されている」

またえらく話が飛ぶわね。
でも、黙って耳を傾けることにするか。

茶眼鏡「諸葛亮は、戦においては妙策を用いて大局を返し、国には善政を敷くことで民からの信頼も厚かった。
      まあ政治については君主である劉備玄徳の功績も大きいものだが。
      しかしそんな彼でさえも足元を掬われることがあったのだよ、わかるかね?」

加えて、ここまで理解できたかね、か。
頷いて答える。

茶眼鏡「内部からの綻び。彼は甘かったのだ。いや、甘いというより非情になりきれなかったという方が正しい。
      そうだ、その甘さが祟り、軍律違反の兵を罰してこなかったが為に、功を焦った者共が身勝手な行動を採るようになったのだ。
      いくら完璧な策を練った所で、それに兵が従わなければ意味も無く、そこから次第に綻び、軍規を乱されれば国全体の悪評とも繋がる。
      このことに深く反省した諸葛亮は以後、罪を犯した者を厳しく処罰するようになったということだ」

つまり。

茶眼鏡「それ相応の規模となった集団を纏め上げるには一片の非情さも必要だということだ。
     なにより我々が行っていることが法を犯していることくらいは百も承知。即ち、一つの綻びが全体の破滅を招く。
     故に、高い志を持った人間だけを集め、仕事と報酬を与え、規律を守ることで我々は存在してこれたのだ。
     それは我々の一部として加わる時点で既に双方の了解は得ている」

最後にこう付け加えた。

茶眼鏡「何かを得る為には犠牲が付きものなのだよ。それが一度落としたものともなればな尚更だ。
      汚い事に手を染める覚悟も、そして人間を捨てる覚悟も。
      世の中綺麗事だけではやっていけない。ここに居る人間達は身を以ってそれを学ばされたのだからな」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 20:30:33.28 ID:giVftX0v0

かがみ「何故、そういった情報を私に与えるの?」
茶眼鏡「君が当事者だからだ。
     わたしの下で働いている人間は何も知らされぬまま叩き落とされてきた者達ばかりだから、
     その点についての温情と暗黙の了解もある。それはわたしも嫌というほどに知らされたことなのだ。
     そう、わたしの……」
かがみ「……なによ?」

男が口ごもった。
やがて、

茶眼鏡「いや、その話はもういい」

話の腰を投げ捨てるかのように端的に切り捨てた。
いつもそうだ、肝心そうな部分、こいつ自身の部分ともなると頑なに口を噤む。

かがみ「気になるじゃないの?」
茶眼鏡「君にすべてを話さなければならない義務はない。今までのはわたしの独り言のようなものだ」
かがみ「人様を誘拐しておいて、随分と自分勝手なのね」
茶眼鏡「口を慎みたまえ。そろそろ地底湖へと入るぞ。
      ここから先は人工物ではなく天然行路となる為に足元に気を付けたまえ」

見上げるほどに大きな扉が従事者達によって開かれた。

暗い。
地下排水施設から更に地下へと降りる道。
まるで地底の底へと繋がっているかのような異様な冷たさ。

それはただ只管に暗闇だった。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 20:51:48.47 ID:giVftX0v0

カチリとした音が聴こえた。
同時にむき出しのケーブルによって繋がれた裸電球が光り、ゴツゴツとした岩肌が照らし出された。
それでも薄暗いため、それぞれが手にしたマグライトの光を頼りに慎重に歩を進めていく。

かがみ「私の家族をどうする気?」
茶眼鏡「彼等なら旅行中なのだろう? ルパンの手下と仲良くな」
かがみ「ルパン? あの大怪盗と噂の?」
茶眼鏡「君は鈍いな。妹さんが入れ替わっていたとは昨日、お話しただろう。あれがルパンだよ」
かがみ「そんなの信じられる訳が……」
茶眼鏡「だからこそ大怪盗という称を彼は与えられているのだ。旅行の件も奴等の企みだな」
かがみ「なぜルパンはそんな事を?」
茶眼鏡「泥棒風情のやることなど理解できんが、大方、我々が君の誘拐に先駆けて危害を加えるとでも読んだのだろうな。
     そしてもう一つは、君の側につくことで邪馬台国の謎を探ろうともしていたのだろう。
     端的に言うなれば、君は妹の皮を被ったルパンに護衛されていたわけだ」

コンビニの一件は普段のつかさとは掛け離れていたことは確かだ。
今さら過ぎる違和感だわ、全く。

茶眼鏡「尤も、柊家の方々が御旅行に向かわれてこちらも手間が省けたというものだがね。
     わたしは意味のない血を流すのは嫌いなタチだが、その為に画策するのが面倒であることは自明。
     災いが転じて福とはなった形だが、同時に君の妹さんが未だこちらへ戻ってこないというズレも生じている。
     大流星群の時までに間に合えばいいのだが、そうでなければ強攻策も検討しなければな」
かがみ「流星群って……この季節だと……ふたご座流星群?」
茶眼鏡「そうだ。水の流れは潮の満ち引き、つまりは星の動きとも関連しているとな」

それも前に聞かされた。
なるほど、断片的にではあるにせよ繋がって来たということらしい。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 21:02:48.93 ID:giVftX0v0

それにしてもいつになったら視界が開けるのだろう。
私がここへと連れてられてからまだ半日とちょっとだというのに、
空が見えないだけでこうも圧迫した感覚に陥るとは思わなかった。
こんな所に長くいると、心を病んでしまいそうだ。

限られた視界、うねり入り組んだ道中を黙々と歩き続ける。

連れ立って歩く人間達の足音が響き渡る。
それが反射し、まるで軍隊の行進のようにも聴こえてくる。
時折、思い出したように男が語りかけてくる。
それが曖昧に拡がって耳に響く。

圧倒的な閉塞感。

早く、ここから出たい。
早く、みんなに会いたい。
そういえば皆は今、なにをしているんだろう?
本物のつかさは、そしてみゆきやこなた、日下部に峰岸は……

何をしているんだろうか?

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 21:19:35.13 ID:giVftX0v0

「マジかよ!?」

休み時間でざわめく教室の中に居たというのに、私はそう声をあげざるをえなかった。
どうしてかって?
決まってんだろ、柊が誘拐されちまったんだからなー。

「で、今の状況はどうなってんだ?」

電話の相手であるちびっ子へ先を促す。

『それが分かんないんだよ、かがみは黒塗りのベンツに誘拐されたっていうし、
 つかさは銃で撃たれたうえに消息不明だっていうし』

なん……だと……?
やっぱり私の勘は正しかったのか!

――そりゃおめぇー陰謀だなぁー

自身が放ったあの言葉が蘇ってきた。
くそっ、私がちゃんと着いていれば……!
あーこれが後悔先に立たずってやつか。
けど、失敗はそれを上回る成功で取り返せばいいだけだ!

「ベンツだな、よしわかった! 私がなんとしてでも柊を取り戻す!」
『あっ、ちょっと待っ――』

うるさい、通話終了だ。

「どうしたの、みさちゃん?」
「聞いてくれ、実はな……」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 21:32:00.41 ID:giVftX0v0

◆同時刻/日下部みさお(激走編)

ちびっ子からの情報を、あやのに伝えた。

あやの「なん……だと……?」
みさお「信じられねぇような話だけど、あいつがこんな性質の悪い嘘をつくとは思えない。
     それに先日の話も引っ掛かるし」
あやの「先日のって、あの柊ちゃんが言ってたクジ引きと陰謀とルパンの?」
みさお「そうだ、それだよ。やっぱりアレは柊のダイイングメッセージだったんだ」
あやの「それは誤用よみさちゃん」

あやのが何か言ったようだが関係ねぇ。
それよりも重要なことは私が柊に宣言したあの言葉だからな。

――まっ、何かあったらわたし等に任せときな。ちゃちゃっと片付けてやるからよ。

約束だ。
大事な大事な五年という月日によって結ばれた絆。
その力を試されるこの機会!
私がやらねば誰がやる!!

みさお「決めた! 私はもう帰る!」
あやの「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
みさお「いいや限界だ、帰るね」
あやの「ただ闇雲に動いたところで何の成果もあがらないわ」
みさお「バカヤローゥ! そうやって考えるだけで動かねぇ奴にこそ結果が残らないんだ!
     考えてる暇があったら走ればいい、元気があればなんでもできる!」

そのまま教室を飛び出してやったぜー!

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 21:42:12.68 ID:giVftX0v0

よし、陸上競技用のユニフォームもバッチリ。
競技靴も常備。
これで存分に走り回れる!

流水の動きで部室から運動場を抜け、校門を飛び出していざ柊の元へ――

って、やべぇ。
柊は何処で攫われたんだ?
確かコンビニがどうとか言っていたようだけど、それって何処のコンビニだ?

「もう一度ちびっ子に電話を……」

あ、着替えた所為で携帯電話も置いてきちまった。
それに財布も定期券もないから電車が使えねぇ。

不味ったなぁ。
これは不覚を取られたと言わざるを得ない。
けどさ、あんなことを言っちゃった手前、引っ込みなんてつかないだろ?

オッケー、心は既に決まっている。
だから走る!
この長く続く路のどこかにきっと柊が居る!
それだけは確実なんだからな!

待ってろよ柊、この私がきっと救いだしてやるからよ!

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 21:54:51.64 ID:giVftX0v0

◆同時刻/高良みゆき(追跡編)

爽やかな朝、というには少々遅い時間帯となって参りました。

こなた「あーれぇー? 繋がらないや……」

日下部さんへ電話を掛けていた泉さんが、何やら訝しげに唸っていらっしゃいます。

みゆき「どうされたのでしょうか?」
こなた「いやさ、情報を欲しいなって思ってみさきちに掛けたんだけど、
     一方的に切られたかと思ったらそのあと繋がんなくてさ」
みゆき「はぁ、それはそれは」
こなた「まぁいいや」

その一言で日下部さんの件は終了となりました。
いえ、そんな事よりも私達には考えなければ問題があります。

みゆき「これから、どのように動きましょうか?」

あれからも進展状況は芳しくなく、有力な情報も入ってはおりません。
朝方になって帰ってこられた銭形さんも、
一時の休憩の為に渋面を浮かべながら離れた喫煙所で煙草を吹かしておられます。

こなた「流石の腕利き刑事さんですらあの状況だしねぇ」
みゆき「それは重々承知しておりますが……」

なんでもいい、次へと繋がる一筋の布石が欲しい。
なんでもいいのですから……なんでも……。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 22:07:48.51 ID:giVftX0v0

――そうだ!

そういえばかがみさんの御家族の件。
あれについてはどうなったのでしょうか?
かがみさんとつかささんの誘拐という点に気を取られてはいましたが、
元を正せばクジ引きと泉さんの一言が発端となって、私はお二人を追跡していたのでした。

ならば次に打てる手立てを導き出せることになる。

みゆき「泉さん、かがみさんのお父さんやお母さんの携帯電話番号は御存知でしょうか?」
こなた「えっ? 知らないけど……あ、わたしのお父さんなら知ってるかも。
     取材とか巫女服撮影の一件で、色んな意味でお世話になっちゃったしさ」
みゆき「ではお願いします、連絡を取れるように繋いでください」
こなた「オケー、やってみるね」

器用な手付きで泉さんがダイヤルし、

こなた「お父さん? あのさ……あぁ、元気だよ、うん、うん……あのさ、うん……うるさいなぁもう……」
みゆき「泉さんっ」

小声で進言させて頂きます。

こなた「ごめんごめん。それでお父さんさ、かがみん家のお父さんかお母さんの電話番号知らない?
     上のお姉さん二人でもいいけどさ」

程無くして。

こなた「ありがとー! お父さん大好きっ!」

必要な情報が揃いました。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 22:19:59.41 ID:giVftX0v0

私と泉さんとゆいお姉さん。
三人で同時に聴く為、署に備え付けの固定電話をお借りしました。
スピーカーモードでの会話です。

こなた「じゃあ、掛けるよ」

慣れない番号ですら器用に叩き、ダイヤル音が静かな室内に響きます。
ようやく辿り着けた解決への一歩を踏み出しているようで、その気配に心成しか緊張してきました。
落ち着きましょう、私。冷静に。

ただお『はい、柊ですが?』

繋がった!

みゆき「もしもし、えっと、柊ただおさんですか?」
ただお『そうですが、そちら様はどちら様で? まさかまた交渉する気かい?』

はて、交渉とはなんのことなのでしょうか?
まあいいでしょう、今は些細な点に構っている暇はありません。

こなた「わたしです、かがみの友人のこなたです」
ただお『おやぁ、なんだ君か。いつもうちの娘が世話になっているようだね』

なんとも落ち着き払った温かみのある声。
この様子から察するに、御家族の方にはまだ情報が届いていないのでしょうか?

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 22:30:48.14 ID:giVftX0v0

タバコを吸い終わった銭形さんが戻ってこられました。
渋面を維持したままで、近くのソファーに腰掛けておられます。
さて、そんなことより先ずは情報を得ることが先決です。

みゆき「つかぬ事を御伺いしますが、そちらで何か変わったことなどは御座いませんか?」
ただお『変わったこと、ねぇ……』

意味深な間。
察するに、何もなかったが故に思い返しておられるのでしょうか。

ただお『特に何も』

やはり。
がっくりと肩を落とす一同のなか、泉さんが続けました。

こなた「実はね、オジサン。かがみとつかさが誘拐されちゃったんだ」
ただお『えっ……!?』

やはり初耳でしたか。
面々が敗色濃厚かと思えたその時でした。

ただお『なんだ知ってたのかい、だったら大丈夫。安心していいよ、つかさは無事だから』

思わぬ答えが返ってきたのです。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/14(火) 22:53:31.45 ID:giVftX0v0

銭形さんが静かに寄ってこられました。
口を真一文字に結んだままで、真剣に聞き耳を立てておられます。

ただお『いやぁ、君達を心配させまいと思っていたんだけれど、
     事情を知っているのならば安否を告げたほうがいいだろうしね。
     君達はうちの子とも仲が良いことだし……ん? なんだ、みき? ……あぁ、適当に”処理”しておけばいいさ』

思い過ごしでしょうか。電話の向こう側から何やら呻き声が聴こえるような。

こなた「それで、かがみとつかさは今どうなっているんですか?」
ただお『つかさはルパン一味の仲間と共に行動しているらしい。元気だという本人の声も確認した。
     それとは別に、かがみを攫ったグループ等が存在していて、どうやら組織的活動を行っているらしい。そちら側の詳細は不明。
     これらの情報はルパン一味側から得られたものだから確証はとれていないけど、
     個人的なルートで拷問……じゃなくて聞き込みした限りじゃ、
     ルパン一味と謎のグループ等は互いに牽制しあっている状況で、つかさはルパン側に護衛されているということらしい。
     ちなみに、数日前から居たつかさはルパンが変装していた偽物で、その時からかがみに付き纏って護衛もしていたとか。
     本当か嘘かはわからないが、交渉の末の情報だからそれなりに信用は出来るはずだよ』

なぜそのような情報を御存知なのでしょうか?
不思議を通り過ぎて奇妙すぎます。

ただお『あ、ちなみにこの事は他言しないでくれよ、ルパンとの取り決めだしね。特に警察なんかにはさ。
     娘達の心配をしてくれていた君達にだからこそ伝えたんだからね』

なるほど、警察の方に……

みゆき「あ」
こなた「あ」
ゆい「あ」
銭形「あ」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 01:09:31.13 ID:DbNruSen0

海底まで沈んでいた銭形さんの表情が、
富士の山よりも高きを舞う鳶のように血気溢れました。

銭形「詳しく、願えますかな」

胆の座った野太い声。
恐ろしさすら感じられます。

ただお『……誰だ、君は?』
銭形「銭型と申します、警察の者です」
ただお『えっ?』
こなた「ごめんねオジサン、色々あって私達警察署から電話を掛けてたから」
銭形「そういうことです」
ただお『あー……これは参りましたなぁ……』

暫し沈黙。

ただお『しかしこちら側もルパンとの取り決めがありまして』
銭形「刑法第103条、犯人蔵匿罪。罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、
    又は隠避させた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処せられる」
ただお『これはこれは弱りましたね』
銭形「協力して頂けるのであればこの件は水に流しましょう。なあに、心配は要りませんよ。
    我々警察は優秀です、泥棒如きに任せておくよりは、我々に任せられるほうが確実な安全を保障できます。
    それに泥棒と警察、どちらを信用できるというものでしょうか?」

どうやら今度は警察との交渉が始まった模様です。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 01:27:49.42 ID:DbNruSen0

ただお『そう仰られましても、こちらは娘の身の安全という重要項目がありましてね』

銭形さんの深い溜息。
次いで、日本刀のように鋭い眦。
これは……どうやら本気を出されるようです。

銭形「よぉ〜くお考えになられてみては如何でしょうか?
    奴は泥棒です。様々な罪を重ねてきた犯罪者なのです。
    そもそも貴方がたの家へ潜入したのだって何らかの宝を狙ってのものですし、
    護衛にしたって”偶々”敵対組織が現れたからそういう形になっているだけであって、
    本来ならば貴方の娘さんは普通に誘拐されていたのですぞ?
    それに今回の状況を見るにしても、奴等が宝を諦めているとは思えません。
    敵対組織を出し抜き、娘さん達を何らかの形で利用することで利益を生み出そうとしているのです。
    さぁ、如何でしょうか?
    そのような輩に任せておくより、我々にお任せして泥棒と敵対組織諸とも一網打尽にしようじゃありませんか」

銭形さんの仰ることには筋が通っている。
けれども、一つの穴が残されています。

ただお『つかさはそれで助かる筈です。ですが、かがみの行方はルパンですら掴めていないのでしょう?
     貴方がたは、かがみの行方と敵対組織の尻尾を掴めているのでしょうか?』

その通りです、そこを抑えておかなければ彼は納得しない筈です。

銭形「その点については我々が全力を挙げての捜査中でして」
ただお『でしたら呑めませんね。犯人隠匿罪、大いに結構。
     娘さえ無事に帰ってくるのであれば、その程度の罪、甘んじて受けましょう』

ただおさんの言葉からも銭形さんと同種の硬い意志が伝わってきます。
これは互いに一筋縄とはいきそうにありませんね。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 02:02:10.40 ID:DbNruSen0

銭形「ですがルパンは泥棒なのですよ? 安全の保障など何処にありましょうか?」
ただお『保証が無いからこそ、こちらにも切り札として”ある手段”を用意しているわけです。
     それに、つかさの話を聞く限りではルパンがそこまで非道な相手だとは思えませんので。
     つかさは抜けているように見えますが、それ故に本質を見抜ける才を持ち得ている事を父として知っています。
     あの子は昔から直感と情感だけには優れておりましたので、本当に危険な状態ならばああも笑ったりはしない筈です。
     今になって考えれば不思議なものですね、まるで何かの力を持っているような節すら見受けられますし。
     ともかく、不十分な段階にある貴方がたを信用するくらいならば、わたしはルパンを信用します』

流石の銭形さんも言を失ってしまわれました。
取り付く島すら無いとはこういう状況を指すのでしょうか。

銭形「では、そちらとこちらの情報と併せて、先ずはつかささんを救出してから――」
ただお『そうなるとかがみはどうなりますか? 現時点でかがみの一番近い位置に立てているのはルパン一味なのでしょう?
     もし、わたしと貴方が秘密裏に協力関係を築いたとしても、
     それが原因でルパン側に綻びが生じ、転じてかがみの身の安全が揺るがされるような事態に陥れば、
     わたしは貴方を怨みます』

完全に双方の言葉が途切れました。
断固一徹、それを破ったのはまたも銭形さんでした。

銭形「ならば、我々警察が敵対グループの所在地を暴き、ルパン以上の安全を保障できるようになれば、
    そちらがお持ちである情報をこちらへと流して頂けますかな?」
ただお『ええ、それが出来るのならば是非願いたいものです。娘が無事ならそれ以上は望みません』

それを最後に通話と緊張の糸が切れました。
その後、初めて私達の傍でハイライトに火を灯した銭形さんは、

銭形「子を持つ親ほど敵に回したくない相手は、いないものだな」

苦笑い交じりに呟いておられました。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 02:25:05.73 ID:DbNruSen0

みゆき「完全に手詰まりですね……」
こなた「うん……」

意気消沈。
かと思えましたが。

銭形「いや、柊つかさの安否は確認できた。
    彼女はルパンの一味、つまりは十中八九、次元大介と共に行動しているはずだ。
    その時点で彼女の身の安全は保障されたも同然。これが第一歩の前進。そしてもう一つ。
    くっくっくっく……」

やがて、湧き上がる喜びを抑えきれないといった様子で、銭形さんが大笑いなされました。

みゆき「あの、一体?」
銭形「ふん、柊ただおは『柊つかさの声を聴いた』と言っていたな」
みゆき「それがどうして?」
銭形「大分にいるはずの彼等が、どのような手段でこちらにいるルパン一味とコンタクトを取ったと思いますかな?」

それは勿論……あっ!
泉さんもその意図に気付かれたようです。

銭形「抜かったなルパン、天機は我に有りというものだ!」

すぐさま銭形さんが受話器を取り、馴染みの番号に素早く掛けると、

銭形「いやぁ、度々すみませんなぁ局長。
    今すぐ柊ただおの通話記録を調べ上げて欲しいんだ。昨日から今日に掛けての普段通話を交わしてはいない相手。
    それが恐らくルパンに通じている。その相手の発信源と時間帯ごとの行動を入念に頼みますぞ」

不敵に微笑んだ銭形さんは、華麗な手捌きでメモ帳に書き込んでおられました。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 02:39:01.11 ID:DbNruSen0

一方その頃、十数分前の泉家の居間にて。
静かな家屋内を震わすように突如鳴り響いた携帯電話。
ぼーっと写真を眺めていた俺は間抜けにも声を上げて驚いてしまい、意味も無く取り繕ったあとで電話を手に取った。
相手は……こなたか。
応じる。

『お父さん?』
「こなたか、どうした?」

半日振りに耳にする娘の声だ。
いつも一緒に居るだけあって偶に居ないと寂しいもんだな。

『あのさ、』
「元気にしていたか?」

遮って続ける。

『あぁ、元気だよ』
「怪我とかしていないか?」
『うん』
「変わりはないか?」
『うん、あのさ、』
「食事は摂れたか、眠れたか?」
『うん』
「寝る前にお父さん大好きって言っ――」
『うるさいなぁもう』
『泉さんっ』

ん、誰だろうこの声は?
まあいいか。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 02:55:18.91 ID:DbNruSen0

『ごめんごめん』

電話の向こう側で隣に居る誰かに謝っているようだ。
やがてこちらへと向き直ったようで、

『それでお父さんさ、かがみん家のお父さんかお母さんの電話番号知らない?
 上のお姉さん二人でもいいけどさ』

唐突な情報提供を呼びかけられた。
ああ、昨日こなたが話していた柊姉妹騒動とルパンのことで話があるのだろうか。
果たして警察の捜査の役に立てるかは怪しいもんだが、こなたはこなたで何か思う所があるからやっているんだろうな。
あいつはそそっかしいからな。
一応、ゆいちゃんにも面倒を看てもらうよう頼んではおいたから問題はないと思うが。

「ちょっと待ってろ」

あ、通話中だからメモリが開けないじゃないか。
ちくしょー。メモ帳メモ帳、どこにあったかな。
デジタルデータは小説を書く際のクラッシュが怖くて信用していないからな、俺。
箪笥のなかだっけ?
あれ、記録を仕舞った場所を忘れちゃ意味がないじゃないかよ。
はぁ、駄目だなぁこういう所。

パタン。

突然、頭上から音が聴こえた。
今の振動で箪笥に乗せてあった写真立てが倒れたのか。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 03:09:30.17 ID:DbNruSen0

『まだー?』
「悪い悪い……お、見つけた」

箪笥の上にあるとは灯台上暗しってやつだな。
ははっ、つまんね。
独り語ちを誰に向けてでもなく放ち、メモ帳を捲っていく。

「あったあった、今から言うぞー」
『うい』

求められた必要情報を伝えていく。
これが済めば娘は通話を終えてしまうのだろう。
それを引き留めるのも悪いから、これ以上は何も言わないけどな。
俺は紙上に記載されているものを五割増しして詳しく述べていき、

「……というこった」

自身の言葉で終止符を打った。

『えーと、オケーオケー、わかった』
「おう、それから躍起になるのはいいけど身の安全には気を配れよ」

あいつもそこまで馬鹿じゃないが、やたら首を突っ込みたがる性格は見ていて怖いものがあるからな。
誰に似たんだろうか。
そのような俺の思案のなか、もう終わりかと思われた通話の最後、再び娘の声が聴こえてきた。

「ありがとー! お父さん大好きっ!」

よく言った。それでこそ我が娘だ。
我に返った時、俺は一人でガッツポーズを決めていた。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 03:54:08.85 ID:DbNruSen0

うつ伏せた写真立てを起こす。

そういえば数日前、ある男から資料の提供を頼まれて渡したが、結局アレはどうなったんだろうな。
見るからに普通そうな男ではあったが、あのような資料を欲しがる輩なんて普通にはいない。
むしろ普通過ぎるのが却って怪しいというものだ。
そもそもあの資料は、俺自身がかつて調べていたものに最近の情報を付けたしただけに過ぎない。
それを知っていたからこそ、あの男は俺の元へと現れたのだろうか。
いや考え過ぎだろうな、まあそれなりの謝礼は貰ったから良しとするが。
そうそう、丁度、巷の噂やこなたの口からルパンの名前を聞いたので、こなたにもなんとなく伝えてはおいたが、
関連性があるかどうかは分からないしな。

それにしても……不死か。
一時はそのような話を職業柄の為か若い時からの性分ゆえか、割かし本気で追っていた時期もあった。
だからこそあのような資料を持っていた訳でもあるが、
調べれば調べるほど、それがまやかしであることの確証付けを行うに他ならなかった。

そんな都合の良いものが存在するわけがない。
仮にあったとしても、何も無いところから何かを創り出すなんてことは物理的に考えて不可能だ。
例えるならば臓器提供。
自身が生き延びる為には他者から臓物を得なければならない。
が、渡した側が死に至る事は必然。犠牲を伴っての回生だ。
しかしもしそのような都合の良い方法があって、それが俺に可能であるならば……

「なぁ、かなた。お前は、どうしたい?」

返答なんかないさ。
もう居ないことは、重々、承知している。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 03:59:35.95 ID:DbNruSen0

◆一方その頃/柊つかさ(潜入編)

もうお昼だよ。
なのになんの動きもないんだよ。

つかさ「私達、動かなくていいの?」

窓際に立ち、またも煙草を吹かしていた次元さんに訊ねてみる。
彼は朝方からじぃ〜っと資料を睨み続けていたりする。

次元「ルパンから連絡が無いからな。一体、どこをほっつき歩いてやがるんだか。
    そんなに遠くの場所だったのか、通信が行えないような場所なのか、或いはルパンに何かあったか……
    まあ、あいつがしくじるなんて有り得ないだろうし、恐らく前者だな」

呑気さんなんだからなぁ。
泥棒さんってもうちょっと各地を走り回るようなものかと思っていたけれど、
銃撃戦の時のように、彼は一箇所に留まっておくのが基本動作らしい。
『ルパンが潜入担当とすれば、俺は指揮担当だな』
なんて漏らしてたみたいだしね。

次元「うーむ、しかし見事なもんだな」

次元さんが感心してる。なんだろう。

次元「ここら一体の神社の配置。これらを結ぶと全てがお前の所の鷹宮神社へと繋がっている。
    そこへと運気が流れ込むっていうのか? 風水的にいえばの話だがな」

うーん。
難しい話をされても手伝い巫女にはわかりませんので。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 04:13:31.61 ID:DbNruSen0

次元「わからないって顔をしてやがるな」
つかさ「正解っ!」
次元「褒めてはいないぞ。それにもう少し緊張感を持て。一応誘拐されてんだぞお前は」
つかさ「緊張してるから十二時間睡眠を半分に減らしてます」
次元「俺はお前の六分の一しか寝てねぇよ、誇ったような顔をするな」

口が悪いねホント。
本気モードのお姉ちゃんと対決させてみたいかも。
まつりお姉ちゃんもいい線いくかな。

次元「まあいい、それでその神社と配置の件だ。
    神社がある地域には何故か災害が少ないということも教えただろう?
    単刀直入な話が、お前の所は守られてんだよ、不必要なくらいに」

守られている……

つかさ「ありがたやー」
次元「拝むな。俺が言いたいことはそういう事ではなく、何故そういう配置なのかって事だ。
    って、お前に廻りくどく言っても仕方がないか」

お決まりの溜息の後に一言。

次元「つまりそこに何かがあるってことだな」

まーたタバコですか。
肺ガンになっちゃいますよ。

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 04:33:06.20 ID:DbNruSen0

次元「それにしても分からないのが、何故お前と姉の二人なのかってことだ。
    お前、代々伝わる秘宝みたいなものを所持しているのか?」
つかさ「なんにも」
次元「だろうな、それを探る為にルパンの奴が柊家に潜入したってのに成果ゼロだ。
    ルパンの調査結果じゃ家に伝わっているような宝や御神体も無いし、
    金目の者といえば湿気た賽銭箱くらいってもんだしな」
つかさ「これは酷い言いようだ」

私の抗議はそよぐ空気のように無視され、
次元さんは再び煙を吐き出していた。

次元「今までの経験上、鍵となるのはキーパーソンが所持していた”何か”だったんだが……
    それは例えば対となった指輪だとか、石ころだったりもした。
    中には動いている人間そっくりの奴が黄金だったってパターンもあるにはあったが」
つかさ「……?」
次元「お前、ひょっとして特殊金属製だったりするのか?」

私が特殊金属製?
そりゃないよー。
……いや、待って。よく考えてみよう。
もしかするともしかする万に一つの可能性が、

次元「いや、そこは否定しろよ」
つかさ「あ、そういう手筈でしたか」
次元「やれやれ、ジョークも通じないとは困ったもんだぜ」

どうやら、この人は扱い辛い人のようです。

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 04:47:24.33 ID:DbNruSen0

コンコン。
部屋の扉が叩かれた。

次元「ん、なんだ?」

次元さんが入口へと向かう。
それから、

次元「朝食? 頼んでない、間違いだな」

それだけを告げて戻ってきた。
どうやらルームサービスやら何やらの誤配達のようらしい。

次元「一応訊ねておくが、お前、何か頼んだか?」
つかさ「記憶にございません」
次元「そうか」

短い返答を残し、またも彼は資料に目を通していた。

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 05:06:26.87 ID:DbNruSen0

◆同時刻/高良みゆき(追跡編)

銭形「ついに、ついにやってやったぞルパーン!
    この時をワシがどれだけ待ちわびたことか! お前との再会をどれだけ望んだことか!
    ワシがどれだけ寂しい思いをしてきたか! ようやく、ようやく再戦の舞台が整ったのだッ!」

まるで今までの冷静な人柄が別人格であったかのように、
銭形さんは椅子に片足を乗り上げて啖呵を切っておられました。

こなた「なんか人が変わってない? 一人称も変わっちゃってるよ?」

そっと頷いて私も同意しておきます。
さて、ここで気になるのは彼の作戦内容です。

みゆき「あの、これからどういった手筈で行動されるのですか?」
銭形「ん? おっと、こりゃ失礼」

コホンと咳ひとつ。

銭形「次元が潜伏していたホテルが割り出せた。
    無論、ボーイに変装させた警官によって確認も済ませてある。柊つかさも発見できた」
こなた「え、いつの間に?」
銭形「兵は神速を貴ぶとは云ったものですな、要は如何に早く手を打つかですよ」
みゆき「しかし今つかささんを助け出すとなると、かがみさんが……」
銭形「ええ、ですからこうやって指を咥えて待っとる訳です。
    恐らく奴等は行動する際に合流するはずです。その時を狙い、敵対組織諸ともをお縄に頂戴する。
    天網恢恢疎にして漏らさず。諸悪はすべて根絶やしにする。それが我々の仕事です」

その後、銭形さんは猛々しく唸りつつ、部下に細やかな伝令を飛ばしておられました。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/15(水) 05:13:46.28 ID:DbNruSen0

◆ブレイクタイム

かがみ(逃走編) みゆき(追跡編) つかさ(潜入編)
五右ェ門(旅行編) みさお(激走編) そうじろう

以上、六編でお送りしました
書きたい事が多すぎて紆余曲折しちゃったけども寝ます、お疲れ様でした

223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 06:09:33.39 ID:wrAWkYAt0

ルパン179cm ただお168cm つかさ158cm

ルパンは身長をある程度誤魔化せる → 10cm程度ならば・・・? → 偽つかさ169cm
残り10cmは猫背でカヴァー → perfect mission!

225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 06:15:40.28 ID:wrAWkYAt0

◆地底上層/柊かがみ(逃走編)

歩き続けていくうちに洞窟内が段々と空間が広がりを見せ始めてきた。
岩肌もますます人の手入れがなされていないという未開の味を色濃く示しだし、
それに伴い頼りない光だけでは照らしだせない部分も増え、気味の悪さにも拍車が掛かってくる。
さらにはこの独特の臭気と熱気。
地底へと向かっている筈なのに、どういう訳かあの匂いが鼻をつくのだ。

かがみ「海の匂いがする」

私の言葉を受け、仏頂面で押し黙っていた茶眼鏡が口を開いた。

茶眼鏡「邪馬台国が地底に存在している理由。そして永らく遺跡が発見がなされなかったという原因。
     我々も明確には導きだせてはいないが、恐らくは突発的な地殻変動で一挙に地下へ沈みこんだものだと思われる。
     まるで国家そのものが、一夜にしてあっという間に幻と消えたようにな。
     それを示しているのがこの香り。ここにある地底湖は海水の成分に近く、元はといえば海から入り込んだ海水によって構成されていた。
     つまり、急激な地殻変動の際に海水がこの内陸部まで閉じ込められたわけだ。
     こういうものを一般的には化石海水と呼んでおり、お隣の茨城などでは温泉としてでもそれなりに名前が知れているだろう?
     尤も、たかだか2000年そこらで構成されたものを化石海水と呼称していいのかは怪しいが」

みゆきといい勝負をするのかもしれないな、こいつ。
私は話半分に聞き流しているが男の話は続くようだ。

茶眼鏡「今でこそこうやって歩けてはいるが、暫く前までは猛毒性の臭素が充満しておりとても立ち入れたものではなかった。
     水かさも高く、伴って水温も高い為にダイビングは愚か近付くだけで喉を焼かれる地獄のような場所だったのだよ。
     だから奥へ進むほど手入れや整備が行き届いていない。電灯の敷設すらな」

云われてみれば洞窟内には通風口らしき穴が見受けられる。
本当のところは解らないが、様々な手段を用いて毒素を抜いてきたのだろうか。

230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 06:27:08.09 ID:wrAWkYAt0

茶眼鏡「地底湖というよりは地底温泉と呼ぶほうが近いな。
     まあそんなことはいい、見たまえ」

私達が角を曲ったと同時、男の話が区切りをみせた。
瞬間、視界が大幅に拡がった。

かがみ「なっ……!」

意気を詰まらせるほか無かった。
広い。
違う、高い。
あの地下排水施設とは比べ物にならないほどにだ。
光が無く、視界が利かないことがそれに相乗効果を生みだしていることは解っている。
けれども、それを差し引いても広く高く深い。果てしなく。

茶眼鏡「足元に気を付けたまえ。万一滑らせれば、確実に命を落とす」
かがみ「い、言われなくても転倒には十二分に気を付けるわよ」

私の数歩先にはぽっかりとした縦穴が口を開けていた。
なにもかもを飲み込んでしまいそうなほどに暗色のみの空間。
底が見えない。
その遥か地底へと、まるで地獄の底へと続くかのように螺旋状の足場が続いている。
簡素な電灯も幅が広すぎる為にもはや頼りにできる状態ではない。
この先に何が待ち受けているというのだろうか。

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 06:40:51.45 ID:wrAWkYAt0

茶眼鏡「遺跡はこの底に存在しているのだが……さて」

大穴を前にして男が振り向いた。
私を含めた従事者達を舐めるように眺めている。

かがみ「なんなのよ? また有り難い講義のお時間なのでしょうか?」
茶眼鏡「君は本当に口が悪いな。言葉を慎みたまえと重ね重ね忠告してきただろうに」

溜息。
そして再開。

茶眼鏡「そこの君、ちょっといいかね?」

男が指示した。
その相手は……

朝食番「わたくしでしょうか?」
茶眼鏡「そうだ君だ」
朝食番「なにか御用でしょうか」
茶眼鏡「少々手を貸して頂きたいのだ」
朝食番「承りました」

あいつか、相変わらず胡散臭いほどに丁寧なやつね。
かのように心内で毒づく私になど構わず、茶眼鏡が朝食番の元へと歩み寄った。

233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 07:07:31.62 ID:wrAWkYAt0

茶眼鏡が朝食番に触れた直後。
 朝食番「ぐっ……!」

朝食番が呻きと共に倒れ込んだ。
 かがみ「なに、今の音?」
カチカチとした男が聴こえたようだけど?
 茶眼鏡「なぁに、単なるスタンロッドさ。熊をも相手にできるほどに出力を上げただけのな。
      そうそう、言い忘れていたな。君に手伝って頂きたいのはもう一人の鍵を手に入れる為の人質役さ。なぁ、怪盗ルパン」

顔の皮が剥げた!?

茶眼鏡「天下の大怪盗とは聞いて呆れるものだな。この程度とはね。
     君が今まで相手にしてきた、部下を駒としか見ないような愚図ならばお粗末な変装でも欺けただろうが、
     わたしは違う。全てが同士、共同体。いわば家族のようなものなのだよ。
     部下の顔も履歴も一日の行動順序も、全てを詳細に把握している。
     従ってここへ立ち入れるメンバーも限られており、役割分担も事細かに決められている為に朝食番ごときが従属するなど以ての外。
     君が情報欲しさに紛れこんで付き従うことなど計算済みの上で、焙りだすために招いたのだよ。
     まさか……このわたしが何の意味も無しに柊かがみをここまで案内するとでも思ったのか?」

怪盗、ルパンだって? この男がつかさに変装していたって?

かがみ「ま、まるで猿みたいじゃない! つかさの可愛げの欠片もないじゃないの!?」
茶眼鏡「君は黙っていたまえ」

ぐったりと動きを止めたルパンを黒服が抱えあげている。

茶眼鏡「さて、いよいよ大詰めだな。
     若干廻り道をしてしまったようだが、これでようやく当初の予定へと立ち戻れた訳だ。
     よし君達、ルパンから通信機器を取り上げろ。武装の解除も入念にな。それが済んだら血を抜いてから牢へと放り込んでおけ。
     勿論、鍵が届くまでは殺さないように注意してくれ。ルパンは脱獄にも長けているという話があるので、くれぐれも逃がさすなよ」

236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 07:24:24.78 ID:wrAWkYAt0

◆一方その頃/高良みゆき(追跡編)

昼下がり。
私達は銭形さんと共にホテルの近くで待機しています。
ホテルとは、つかささんが捕われているというあの場所です。

こなた「みゆきさんも、あんぱん食べる?」
みゆき「結構です」

張り込みにはあんぱんだ、などというジョークを飛ばせる泉さんの余裕ぶりには驚かされます。
私も見習わないとなりませんね。

ゆい「それにしても動きがないもんですねぇ」
銭形「当然ですよ、奴等は犯罪者ですからな。
    人様の目が多い日照時間帯に動きだすなど普通では考えられません。
    わたしの経験上、陽が落ちてからの20時00〜深夜に掛けてというのが最も多いパターンですな」

流石はルパン専属捜査官です。
そういえば、私達が銭形さんと共に行動している理由ですが、
私達の希望はもとより、柊ただおさんとの交渉の際の駒としての意味合いが含まれているのだと思います。
銭形さんが口に出された訳ではないのですが。

銭形「気長にいきましょう」

成果を目前にしても焦らずに待つ。
彼の地道な捜査という概念は、こういう所にも活かされているのでしょうか。

240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 07:34:16.45 ID:wrAWkYAt0

すまぬ、あんま進んでおりませんが朝は時間がないので続きは帰ってから書きます
ついでに夜は最近寝不足だった為、つかさ並に寝てました
不覚

287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 19:59:43.28 ID:wrAWkYAt0

◆都内某所/日下部みさお(激走編)

ゆかり「ほんっと、ちょうど良いところに来たくれたのね」
みさお「すんません、お菓子までもらっちゃって」

私の目の前には紅茶と共に、くすぐるように甘い香りを漂わせるシフォンケーキが並べられている。
数分前、色々あって道に迷ってしまい仕方なく近場の人に尋ねたところ、
「三時だしお菓子も作ってみたので、お茶でも飲みながら如何かしら?」
なんて具合に誘われちまったんだな。
やっぱり何事にもインターバルっていうのは大事だし?
三時に糖分を採るのはプラスだと科学的にも証明されているし?
そもそも道が分からないと帰れないしで、仕方なく付き合ってみたってこった。
それにしてもこのケーキ、

みさお「うっまぁーい!」
ゆかり「うふふ、美味しそうに食べてくれるわね。つくった甲斐がありましたっ」

ふんわりとした食感!
とろけるような甘さ!
紅茶と奏でるハーモニー!

みさお「これぞ絶品!」
ゆかり「はりきり過ぎて余分に作っちゃったから、どんどん食べてね」

その後、二人で楽しくおしゃべりをしました。

291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 20:18:40.66 ID:wrAWkYAt0

◆一方その頃/柊つかさ(潜入編)

つかさ「えっと、じゃあこれは?」

小さくて重い金属性の筒。手投げ弾っていうのかな。

次元「フラッシュバンだ。直接的な殺傷能力はない代わりに、閃光と爆音で周囲の人間にショックを与えることができる。
    まともに受ければ視力と聴力を奪われ、数秒間は普段通りに動けないだろうな。
    当然だが、いくら殺傷能力がないといっても手に持ったままで爆発させるなよ? 火傷じゃすまねぇぞ。
    それにこんな狭い場所で使えば鼓膜がイカれちまうしな。
    ……お、おい待て! 下手に触るんじゃない! 間違ってもピンを抜いたりするんじゃないぞ、絶対だぞ!」

絶対?
そんなこと言われちゃうと私……
えへへっ。

つかさ「それじゃ、これは?」

私の掌よりちょっと大きい拳銃みたいだけど、プラスチックに質感が似ていて割かし軽い。

次元「ワイアレス・スタンガン。使い分けの為にショックガンと俺は呼んでいるが、それにも直接的な殺傷能力はない。
    拳銃のように反動もないし簡単に扱える代わりに息の根は止めれない。それが利点でもあり欠点でもある。
    命中させれば30秒程度の間は身体機能を完全に奪い、麻痺に陥らせることができる。
    射程はせいぜい20〜30mってところだ。
    電極と接地プラグを同時に撃ち出すという構造上、弾丸の小型化が難しく、マガジンも3発携行となり無駄打ちは出来ない。
    ……おい、銃口が俺に向いているぞ」

あ、ごめんちゃい。

次元「まったく……ルパンのやつが有用な特殊道具を持って行きやがったから、ロクなもんがないな……」

293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 20:45:36.56 ID:wrAWkYAt0

つかさ「それで私達は結局、夜まで待機ってこと?」
次元「そうなる。とっつぁんが近くに居るかもしれないってのに、白昼堂々と行動する訳にもいかないからな、
    相手もそこの所を解って夜という時間を指定してきたんだろう。
    にしても、五右ェ門が人質に取られるのは解るがルパンまで捕まっちまうとは……
    ま、ルパンのことだし何らかの事情があったんだとは思うが。
    くそっ、今回はやけに人質関係が絡み合ってやがるぜ。こういうややこしいのは嫌いだってのに」

次元さんのタバコを消費するペースが早いことからも苛立ちが伝わってくる。
たった数日間とはいえ、こんな彼は見たことないから私まで緊張しちゃうよ。

つかさ「でも、人質の交換をわざわざ相手の本拠地でやらなくたっていいんじゃ?」
次元「そういう訳にはいかないさ。相手の立場に立てばわかる事だ。
    俺達が行かなきゃ奴等は確実にルパンを殺す。加えて柊かがみも無事では済まないだろう。
    逆に考えた場合、俺がお前を人質にとり、延いては手に掛けるメリットがあると思うか?
    俺達は元々”財宝”を狙って今回の騒動に巻き込まれているんだぞ?
    その鍵とも言えるお前をやったところで双方に取ってのマイナス。加えてルパンがやられて俺は更にマイナス。
    一利すらないどころかこちら側が一方的に大損だ」

言われてみればその通りかもしれない。

次元「だがな、易々と引渡したりはしない。
    どうせ奴等のことだ、お前とルパンを交換した瞬間、俺とルパンをトるつもりなのだろう。
    だから対策は必要十分以上に練っておくべきだってことだ。
    面倒な状況にも思えるが、俺としてはむしろ奴等の本拠地を探る手間が省けてありがたいんだけどな」

私には彼の言葉が強がりから来るものなのか、絶対的な自信から来るものなのかの判断が付かない。
それでもなんとかなりそうな気がする。
うん、大丈夫!

294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 21:05:48.47 ID:wrAWkYAt0

◆一方その頃/五右ェ門(旅行編)

自分自身の斬鉄剣で散々に脅されたあと、色々あって私は旅館の一室へと連れ込まれていた。
両手両足、本縄を用いての本格的緊縛。この縄抜けなど到底不可能という加減。
御仁達は何時、如何なる場所でこのような捕縄術を身に付けられたのであろうか。

みき「ルパン側からの連絡は?」
ただお「まだ来ていないよ」
みき「警察は?」
ただお「それもまだ」
みき「どちらとも進展が無いのかしら。娘達が心配ね……」

ただお殿もみき殿も、随分と前から沈痛な面持ちを維持されたまま。
それほどまでに愛娘達の身の安全に気を揉んでおられるのだろう。

五右ェ門「御安心なされい、ルパンなら悪いようにはせぬ」
ただお「その言葉、信用は出来ないけれど信用するしか他に道はないからね」
みき「はぁ……」

私が護衛業どころか、なんの役にも立てないのが正直腹立たしい。
しかしこの状況では致し方ないというもの。お二方に信用されてはおらぬのだからな。
ところで話は変わるが、私はある問題に直面している。

五右ェ門「拙者、小腹が空きもうした」
みき「そこのパンを食べればいいじゃない?」
五右ェ門「いえ、出来ることならば白ご飯と味噌汁と沢庵を所望したいのであるが」
ただお「面倒な人だな……同じ人質であるつかさを見習ってほしいよ。きっとあの子も今頃我慢しているのだろう」

ううむ、世知辛い世の中になったものだ。

297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 21:30:38.88 ID:wrAWkYAt0

◆密室/柊かがみ(逃走編)

外は今頃、夕暮れ時だろうか。
洞窟内でルパンが倒れたあと私はまたもこの閉ざされた部屋へと押し込まれ、
そのまますることも無しに今までの出来事を思い返していた。

あの暗闇一色の地底洞窟。
そこで茶眼鏡が言っていた言葉。

「現在は縦穴を降りた先の遺跡上層部までしか姿を現していないが、ほどなく下層部への道も開けることだろう。
 その時が来るまで君は大人しくしていたまえ」

その時、か。
大方、時刻は深夜になるはず。
ふたご座流星群のピーク。それと水の満ち引きが呼応しているはずだから。

それにしても解らないのは、未だにあいつが明言しない目的。茶眼鏡自身の動機。
『命を創りだす』
そう度々口にしてはいたが、それを用いて何を仕出かすつもりなのだろうか。
そもそも、卑弥呼と邪馬台国は確かに滅んだ筈だというのに、そんな型破りな法などが存在しているのだろうか。
邪馬台国に住んでいた民の長寿の秘訣。それは偶々、別の要因があっただけではないのだろうか。

考えても埒が明かない。
私は所詮、囚われの身なのだから。

300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 21:43:23.07 ID:wrAWkYAt0

そういえば全ての発端は数日前、ルパン扮するつかさが語っていた噂だったっけ。
そうだ、下校路を辿る途中、けたたましいサイレンの中でのあの件。

『ある時は街人。
 ある時は店の主人。
 またある時は警察官。
 老若男女、人種に素を選ばずして完璧な変装をやってみせる大怪盗ルパン三世。

 彼は様々な特殊道具や仲間、そして愛銃”ワルサーP38”を携えて世界中のお宝を狙うの。

 狙うったってチンケな金目の物や、人様の物じゃあないよ。
 世界に伝わる様々な秘宝。
 古代から受け継がれるロマンの欠片。
 謎が犇めく未知への扉。

 そう言った探究心を元に彼は世界を駆け回っているの。
 一部の人達は彼のことを、夢を求める冒険家と称しているくらいだしね。
 物は盗っても命は盗らないとも聴くし。

 それが大怪盗ルパン三世』

チンケな宝は狙わない。
そう言っていた割には、こんな普通な私を付け狙っていた。
自虐するつもりはないけれど、一介の女子高生である私に特別な価値があるなどとは到底思えない。
そもそも、彼自身も宝目当てに首を突っ込みすぎた末、ああやって捕われの身となったのだ。
結局は私を利用しようとしただけ。茶眼鏡達となんら変わらない。
悪者なんて、所詮その程度。

303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 21:55:02.67 ID:wrAWkYAt0

独りになると余計なことばかり考えてしまう。

私が心配なのはつかさのこと。
ルパンの仲間と行動を共にしているらしいけど、無事にやっていけてるのかな。
変なことをされたりはしていないのかな。
あの子は色々と抜けているから、お姉ちゃんとしては心配で堪らないよ。

……でも、もうすぐそのつかさとも再会できるはず。
但し、ルパンと人質交換するという駒役としてだけど。
彼等はそれでいいのかもしれないけれど、私達としてはロクなもんじゃない。
巻き込まれた側の身にもなって欲しい。

そして。
その取引が終われば私とつかさはどうなるんだろう。
絶対的な窮地のなかで、あの茶眼鏡の狂気に付き合わされるのかな。

嫌だ。
こんな訳のわからない所。
あんな訳のわからない奴等。
関りたくない。

誰か、助けて欲しい。
誰でもいいから、誰か……

315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 22:44:20.03 ID:wrAWkYAt0

◆夕刻/泉そうじろう

太陽は役目を終えるかのように遠くの山影へ過半を埋め、伴って街は薄暮に包まれている。
あらゆるものが明瞭一色である日中とは打って変わり、何もかもが夕映えに落ちたその曖昧な様は、
一見には美しいものに感じられる。
けれども何故だろうか。
その裏側には儚さ、悲しさ、奇妙さ、禍しさ、懐かしさ。様々な要素が相俟って存在しているように思えてしまうのは。

情景とは見る者の心を映し出すものだとも言われている。
ならば俺がそのように受け取ってしまうのは、俺自身がそのように感じているからなのか。

ふと、縁側から写真を窺ってみた。

変わりはなどない。
変わるわけない。
ただ、笑顔のままに収められた過去が、暁色に染め上げられているだけ。
ある時ある瞬間、まるで忘れものでも取りにくるかのように、玄関が控え目な音を立てることなどある筈がない。
わかっているさ、そんなこと。

娘は今日も帰ってこない。
柊姉妹の件で友人を救う為、自身なりに奮闘しているのだろうな。
彼女らの両親である、ただおさんやみきさんは今頃どうされているのだろうか。
きっと、気が気じゃないんだろうな。
立場は違えど同じ親にある俺としては、他人ながらも無事を祈ることしかできないが。

何事もなければそれでいい。
例え良い方に動かなくとも。
変わりがなければ、それでいいじゃないか。

316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/16(木) 22:57:13.13 ID:wrAWkYAt0

◆夜/高良みゆき(追跡編)

とうとう陽が落ちました。
私達は未だに動くことなく、覆面パトカーの中で待機しています。
銭形さんは長い間タバコを控えておられた為か、或いは近づきつつある勝負の刻に昂揚されている為か、
終始落ち着かないようにハンドル周りを指で叩かれています。

こなた「そろそろ、動きを見せるのかな」

泉さんもじっと辺りを睨んでおられるようです。
私もそれに倣っています。
何かしらを掴める切っ掛けになれるかもしれないからという一心からの行動です。

銭形「そろそろの筈です。そろそろの」
みゆき「はい」

ゆいお姉さんも普段の陽気な様子とは一線を画しておられ、
本物の警察官らしい、というのは些か可笑しなものがありますが、それ程に変容されています。

こなた「かがみにもつかさにも、何事もなければいいんだけど……」
みゆき「絶対に大丈夫ですから、きっと」

そうでなくては困ります。
まだまだ話足りないことが山ほどあるのですから。

こなた「うん、わたしもそう思う」

あとはじっと待つだけです。

330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 00:28:09.30 ID:dEiNWxi+0

22時丁度となったとき、
辺りを見回していた泉さんが呟かれました。

こなた「気のせいかな……?」

なんのことなのでしょうか。
思わず私は訊ねます。

みゆき「どうかされたのでしょうか?」
こなた「いやさ、さっきから辺りに車が多くない?」
みゆき「車、ですか?」

言われてみれば多少増えているような。

みゆき「ですがこの時間帯ですし……」
こなた「違う違う、そういう意味ではなくてさ。
     あそこに銀色の車があるでしょ? あそこにも銀色の車。 そしてほら、あそこにも」

言われて初めて気が付いた。
多種多様な車の流れのなかで、見掛けがそっくりなものがある程度の距離を空け、散開し停車している。
注意を以って観察してみれば、それらはうっすらとした遮光板らしきものを貼ってあって中が窺いにくい。
一台、二台、三台、四台……
視界が利く範囲だけでも数台?

そのとき、銭形さんが無線機片手に怒鳴っておられました。

銭形「くそっ、奴ら替え玉を用意してやがった。追跡となった場合、撒かれないよう気を引き締めて掛かれ。
    念を押しておくがルパンが姿を現すまでは逸るなよ。奴等は必ず合流するはずだからな」

333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 00:45:09.25 ID:dEiNWxi+0

一台の車が動きました。紛れもなく銀色です。
急かされるようにホテル入口直前に停車した、直後――

来た! つかささんだ!
その脇にぴったりと付いているのは黒スーツに黒ソフト帽の男。
如何にも悪徳そうな人相。
誘拐犯とは名ばかりではないと雰囲気だけでわかります。

銭形「ルパンか!?」

その荒々しい問いで無線から帰って来た答え。

   『いえ、運転手は……ルパンじゃありません。見知らぬ男一人です!』
銭形「ルパンじゃないだと? 見間違いではないのか!?」
   『いえ、確かにルパンではありません!
    次元大介が変装していないことからルパンだけが変装を行う意味もありませんし!』
銭形「……ートベルトだ」

銭形さんが低く呟かれました。
よく聞き取なかったのですが……?

銭形「車に乗る時はシートベルトだ、よく覚えておけ」

唸りだすような声。
後部座席の私と泉さんは慌ててベルトを通します。

銭形「いいかてめぇら、ワシは次元を追う。お前等も続け! しくじるなッ!」

銀の車が白煙をあげたと同時、私達がシートに叩きつけられるほどの急加速に見舞われました。
追跡です。

336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 01:06:26.01 ID:dEiNWxi+0

追跡対象の動きが速い。
車の流れがあるというのに隙間があれば強引に滑り込み、見る間に引き離されていきます。
方向的に大通りに向かっているようです。

こなた「やっぱりだ、他の車も動き出した!」

シートサイドを必死に掴みながらの泉さん。
私も同様にして窺うと、死角となっていた脇道からも新たな替え玉が流れ込んできています。

銭形「喋るな、舌を噛むぞ!」

進路を塞ぎに掛かる車の合間を寸での所で割き入り、
その度に私の体が座席に押し付けられ、街の灯りと夜景が車窓の外をぐるぐると流れて。
助手席のゆいお姉さんも必死に体を固定しています。

そうだ、妨害車両!

337 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 01:08:17.27 ID:dEiNWxi+0

みゆき「あの、進路っ……わっ」
銭形「口を塞いどいてください!」
みゆき「いえっ、言わせてください! あの、妨害車両を検挙できないんでしょうか!?」

そうです、あれ等を捕まえれば……

銭形「駄目だ。我々警察は犯罪者には強くとも一般人には弱い。実に無力!
    限りなくグレーであっても確証がなければそれは白と同じなのだ。
    だからこんな状況でしょっ引いた所で、結局は知らぬ存ぜぬで通され、精々交通法規違反しか切れんことになる。
    そもそもそんな悠長な時間がない! 奴等は必ずしっぽ切りで逃げる!」

ぐいっとハンドルを反回転させてから一言。

銭形「現行犯しかないんです! だからここで逃がす訳にはいかんのです!」

気合いに呼応しエンジンが吠えるように吹きあがります。

341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 01:22:37.68 ID:dEiNWxi+0

銭形「奴等、大通りだ! 各個、廻って進路を塞ぎに掛かれ!
    一般車両も弾いとけ、ワシらも大通りに出る!」

予め伏せておいた部隊への伝令。
銭形さんがホテルを監視しつつ、細やかに下されていた指示。
その読みが完璧な的中、いわば予言となって相手を詰みへと導きます。

銭形「左に曲がる、通りに出るから掴まれ!」

怒声と共に襲いかかって来た横ブレ。

こなた「うわっと!?」

泉さんが私の方へと吹っ飛んできました。
慌ててその体を抑え込みます。

こなた「ありがっ――わっ!?」

曲った直後のトラックを衝突寸前で右にかわし、泉さんが逆に吹っ飛んで行きました。

銭形「逃がさんぞルパン……!」

鬼気迫る。
今の彼にはぞくりとさせられます。

344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 01:41:57.89 ID:dEiNWxi+0

車線が増え、視界が開けた瞬目の後に待っていたのは、
遥か前方の車道を一列に塞ぐパトカーの群れ。
そこへ追い込まれるかのように銀の車が数台突っ込んでいきます。

こなた「あのままじゃ追突するんじゃ?」

私達の後ろからも数台のパトカーが追走している状態。
妨害車両によって阻まれたもののまだまだ援護車両は残っています。

銭形「そんなヤワな相手なら、ワシはとっくに警察を止めとるわい」

皮肉りが相手に伝わったのか、
追跡車両が一斉に方向転換。いや、反転。
真正面からこちらへ逆走。

銭形「奴等、この為にワシら側の車両を削っておったな。
    ええい後ろのやつら、進路を塞げ! 退路を絶て! 逃がすな!」

咄嗟に警察車両が拡がりを見せ、塞ぎに掛かります。
その時、銭形さんが苦々しげに漏らしました。

銭形「くそっ……ワシ一人ならぶつけても構わんのだが……」

348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 02:10:15.48 ID:dEiNWxi+0

一瞬だった。

落雷。
そう表現するしかない轟音。
猛スピードで先導し突っ込んできた銀車両の一つが、
並走していたパトカーと正面衝突し赤々と炎上した。

銭形「奴等、死ぬ気なのか?」

流石の銭形さんも動揺している。
私達は最早絶句。
まさか目の前で確信犯による大事故を目撃するとは思わなかったから。

銭形「畜生、狂気にもほどがあるというものだろうが!
    ……各員気をつけろ、やつら死ぬ気だ。ここは一旦逃がしてネットと空車両で対処しろ!」

苛立ち露わな様子で車道脇に急停車。
きっと私達に配慮してのことなのだと思う。
今更になるけれど、やはり私達は足を引っ張っていたのかもしれない。

銭形「だがただでは逃がさんぞ……」

ギラリとした眼光と共に取りだされたもの。
拳銃、コルトガヴァメント。
警察署へ居た時に「愛用のものだ」として語られていたものだ。

蹴るように扉を開け放って降り立ち、即座に射撃体勢に入る。
次いで並走してくる銀の車両へ向け――

350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 02:31:40.39 ID:dEiNWxi+0

タンタンタンタン!

連符のような射撃音。

こなた「外した」

私も泉さんの言葉に同感。
その言葉通り、私達の横を銀車両が抜けて行ったからです。
けれども、変化は五台の銀車両がパトカー群を抜いた直後に現れました。
先導していた車両四台が突然の急激な転回に見舞われ、
うち片方が中央分離帯へ衝突し、もう片方が横転して停車しました。

銭形「二発外しちまったか」

彼は顛末を見送りもせず忌々しげに車両へと戻り、

銭形「奴等は逆走している、B班頼むぞ。全て塞げ。衝突に注意しろ」

端的な部下への指示。

こなた「まさかタイヤを狙ったの……?」

俄かには信じられない。
けれどもガラスなどが割れなかった以上、そうとしか考えられない。
その後、タバコに火を付けた銭形さんが宣言なされました。

銭形「まぁ、これも計算のうちです。逆側も塞いでおるので二台程度ならば時間の問題でしょう。
    優秀なのはわたしではありません。わたしを含めた警察なのですからな」

煙を吐き出し拳銃への次弾装填を行いつつ、彼は各所の部下達と密な連携を取り始められました。

353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 02:49:36.44 ID:dEiNWxi+0

◆数十秒前/柊つかさ(潜入編)

あっ……。
いま、何か凄い爆発音がしたような。

次元「こりゃまた随分と派手にやりやがったな」

暗闇の中、次元さんのタバコだけが赤く光っている。
あの廃屋での夜を思い出すような。

次元「さて、そろそろ頃合いか」
つかさ「あれで上手くいってるのかな?」
次元「行ってるさ。でなけりゃ困る」
つかさ「でも、運転手はルパンさんじゃなかったんでしょ?」
次元「だからこそだ。とっつぁんは勘が良いからな。
    あんな目立つ場所で俺達三人が揃っていたりすれば、それこそ変装を疑われる」
つかさ「そんなものかなぁ……」
次元「そんなものだ。ま、あっちにはルパン。
    こっちには俺が居たからこそ出来た、偽の替え玉作戦ってやつさ」

私達はホテルの地下倉庫へと潜んでいた。
予め用意された”あちら側の私と次元さん”を利用しての撹乱作戦。
そのメイク担当は変装の達人であるルパンさんだったとのことらしい。

次元「大体だな、俺一人ならまだしも、お前を連れてカーチェイスなんかやってみろ。
    途中で不慮の事故に見舞われることは確実だろうが」
つかさ「これは酷い言われようだ」
次元「警察は上手い。だが、泥棒はそれ以上に上手いんだよ。でなければやってはいけないさ」

彼が締めくくるようにタバコを踏みつけた事で、私達の出立の時間が来たのだということを悟った。

355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 03:10:50.46 ID:dEiNWxi+0

次元「帽子、忘れんなよ。俺のメイクはルパンほどに上等じゃあない」

そういってぶかぶかの帽子を被せられた。
お気に入りのリボンが無くなっちゃったのでちょっと寂しいけれど、我慢するしかないよね。
それにしてもこの服、少し動きづらいなぁ。
ストリート系っぽいのはわかるけど、女の私にはちょっと緩すぎるような気がしないでもないかな。

つかさ「もう少し軽装じゃ駄目なの?」
次元「変装する際にはそれくらいのギャップがあったほうがいいだろ。
    それに厚着でなければ後の手筈にもボロが出る。少しは我慢しておけ」
つかさ「了解しました」

敬礼。

次元「やめてくれ、締まりがなくなる。それじゃ、ここから出るぞ」
つかさ「はい」

次元さんが重い扉を開けると、階上からの明かりで彼の姿が露わになった。

つかさ「ぷくくっ……」
次元「笑うな」

ヒゲがなく、スーツではない綺麗な次元さん。お父さんルック。
それは人工皮膚でフェイクしてあるからだけども、やっぱり慣れた顔と違うと変だよね。
でも冗談はここまででおしまい。

つかさ「お姉ちゃんの為にも、絶対にしくじれない」
次元「頼むぞ。俺の相棒の命も懸かっているんだからな」

私達は短く交わし、外へと向かった。

357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 03:25:20.55 ID:dEiNWxi+0

ホテルを出てから指定された道を数分程度歩いた先に、一般的な乗用車が止まっていた。
その中では如何にも普通そうな男が一人、タバコを吸いながら頬杖をついている。

次元「あいつか」

先だって歩く次元さんが周囲を警戒したあと、その車の窓を二度叩いた。
同じく、中からも二度返される。

次元「乗るぞ」
つかさ「はい」

次元さんはずっと右手をポケットの中へと突っ込んでいる。
無論、自身の拳銃に触れておく為で、不意の攻撃に対して素早く反撃態勢を取る為だ。
その程度ならばここ数日一緒に過ごしてきたので、わざわざ説明されなくとも解る。

次元「まだ車は出すな」

車に乗り込んでからも次元さんは油断しない。
車両内のチェック、運転手の男の動作確認、周囲の警戒。
それら全てを並行して行っている。
下手に話しかければ怒鳴られちゃいそうだ。

やがて、

銭形「よし、行け」

彼の入念なチェックも終わり、極めて普通なドライブの呈を以って車は走りだした。

359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 03:36:13.60 ID:dEiNWxi+0

後部座席に乗り込んだ私達。
それを車が運んで行く。

大通りなどは走らない。
追い越しもしない。
ましてやカーチェイスなど有り得ない。

非常に静かな夜のドライブ。

電飾や電灯が窓外を流れていき、
道端を歩く酔っぱらい相手に遠慮し、
騒音の少ない通路を率先しての低温走行。

まるで私自身が人質であることを忘れてしまいそうなくらいに平凡。
そんな奇妙に落ち着いた空気。
不安感はあるけれど、震えが来るほどには程遠い。
不思議なものだね。

……あれ、ちょっと違うのかも。

私の隣で疑いの眼を張り巡らせている次元さん。
メイクで隠れてはいるけど、きっと彼は渋い顔を見せているんだろうな。
だからこそ安心できるのか。

この人が居るから怖くない。
たぶん、そんな感じなんだと思う。

360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 03:37:23.11 ID:dEiNWxi+0

>>357
これは酷いミスだ
言うまでもなく次元、これは酷いミスだ・・・

363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 03:53:39.63 ID:dEiNWxi+0

走り続けること数十分。
見慣れた風景が目に付くようになってきた。

つかさ「ここ、私の街の近くだ」

私の家から十数分と離れていないと思う。
けれども次元さんは何も言わない。
運転手も同様。
無駄話は限りなく排他する方向ということらしい。

『工事中により通行止め』

そんな看板とバリケード、電飾の前で一旦停車。
それから運転手が降車して素知らぬ顔で避けると、再び乗り込んでそこを通過した。
いいのかな? この人、工事関係者の人なのかな?
でもやっぱり二人は何も言わないので、私も口を噤む事にしておいた。

368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 04:47:59.84 ID:dEiNWxi+0

そんなことを繰り返し、やたら曲折したように思えたんだけれど、
着いた先はこじんまりとした三階建てオフィスビル。
上の方には猿拳って書いてあるけど、社名なんだろうか。

ここにお姉ちゃんが?
それにしてはなんとも有触れすぎなような。

私が一通りの疑問を浮かべている間に、
オフィスビルの一回部分の車庫なのか倉庫なのか、とにかくシャッターが下りきった部分の前へと車が移動した。
シャッターはセンサー式らしく滞りなく開いたので進入。
といっても、その屋内は教室を二個繋げた程度のスペースしかない。
さらに壁に寄せる様に用途不明の工具類が並べてあるだけ。
人気もないし何もないような。

次元「降車しないでいいのか?」
運転手「そのままで」

短く、ようやくにして唯一の会話。
やがて運転手が再びシャッターを締めきり、外からの視界をふさいだ。

それからだった。
中央部分、つまりはいま車が乗っかっている部分の地面がエレベーターのように沈んだ。
高さにして約一階層ぶん。

そのずれた空間の前には新たな道、というより狭いトンネルが出来上がっていた。
薄オレンジ色の光で定期的に照らされた通路。緩やかに下っているカーブ。

どうやら、地下へと入るようだ。

369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 04:49:54.26 ID:dEiNWxi+0

トンネルへ入った途端に背後の段差が戻り、道が塞がれた。
それを確認してから前進する。

ある程度進んでは折り返し、ある程度進んでは折り返し。
いわゆる立体駐車場の要領で下へ下へと向かっていく。
その途中で次元さんが呟いていた。

次元「この深さじゃあルパンとの通信が行えなかった訳だ」

ここまで来れば人の眼がないだろうと踏んでなのか、
変装を剥ぎ、ソフト帽をかぶり、重ね着していた服も器用に脱いでいつもの様相へ戻っていた。

次元「それで、いつまで下るんだ?」
運転手「もうすぐです」

男の言葉通り、角を折り返した下り坂の先が平坦になっているのが窺えた。
どうやら終着点のようだ。

そして、ようやくトンネルを抜けた。
そこに待ち受けていたのは、果てしなく拡がる空間と、見た事もないほどに高い天井だった。

370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 04:57:31.85 ID:dEiNWxi+0

次元「止めろ」
運転手「言われなくとも」

停車し降車。
私も次元さんのすぐ傍に従う。
そして相手を見据えた。

私達から50メートルほど離れた地点。
そこには黒服に身を包んだ男達と……

つかさ「ルパンさん!」

ルパンさんが居た。
けれども何か様子がおかしい。顔色が真っ青だ。
それに黒服に付き添われてようやく立てているといった様子だし。

次元「ルパンに何をした?」
運転手「幾分か血を抜いただけですよ。ああでもしないと彼はあの手この手で逃げだしますからね」
次元「チッ……汚ねぇ小細工をしやがって……」

男は睨みを利かされても完璧に受け流し、続けた。

運転手「それでは、人質交換の取引といきましょう」

胸焼けがするほどに爽やかな笑顔だった。

372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 05:13:14.40 ID:dEiNWxi+0

次元「まあ待てよ、いまひとつ信用ならないな。
    穏便に取引をしようって割にはお前等の数が多すぎるだろう?
    全部で20〜30居るじゃねぇか、こっちは俺一人だってのに」
運転手「用心の為ですよ」
次元「ごちゃごちゃ煩い。お前も含めて6人にしろ。後は遠くへ掃け」
運転手「ですが――」

カチリ。
撃鉄と共に銃口が向けられた。

次元「聞けないんなら頭を吹っ飛ばしちまうぜ?」

捉えられているのは運転手の頭では無い。
私の頭だ。
どうなんだろう。
この相手が条件を呑まなかった場合、次元さんは引き金を引くのかな。

運転手「……強情な方だ」

運転手は黒服の元へと歩いて行き、今の首尾を伝えているようだ。

373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 05:32:12.96 ID:dEiNWxi+0

遠くのほうでは運転手と黒服が言葉を交わす度、一瞥の威嚇をこちらへと送り消えていく。
その様にふんだんに時間を割いてから、条件通り私と次元さん、6人とルパンさんでの対峙となった。
残りの黒服達は私による目測で300メートル程度離れた位置に留まっている。

次元「よし、じゃあお前等ルパンを連れてこっちへ来い。20メートルまでだ。
    わかっているとは思うが銃は持つなよ? 両手は開示しておけ」

黒服達が一線を保ってにじり寄ってくる。
私は依然として銃口を頭に据え付けられたまま、その一連の流れを見守るほかない。

いつ、相手が銃を抜き出してくるのか。
いつ、次元さんが銃弾の雨を受けるのか。
どのタイミングであってもおかしくはない。
もしかすると、瞬きをした次の瞬間には血が舞っている可能性だってある。

でも、怖くない。
大丈夫、なんとかなる。
怖がったってどうしようもないんだし。

次元「そこで止まれ。いいか、互いに一歩ずつだ。
    ルパンが一歩。同時にこいつが一歩。それを繰り返して交換を行う。
    何か不備の事態を起こしたり、交換が終了する前に他の誰かが動いた場合即座に撃ち殺す。
    いいな?」

ドスの利いた声。
今の彼の声色からは、それがフェイクなのかどうかすら私にはわからない。

377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/17(金) 05:59:50.42 ID:dEiNWxi+0

私が歩み出る。
次元さんの銃口からは解放されても、今度はこの場全体からの鋭利な視線に突き刺される。
当然、背後のS&Wは私の後頭部を捉えているんだろうな。

同じく、黒服達の半歩先へと進み出ているルパンさんと対峙した。
言葉を交わしたいけれど、いまそれをやれば確実に殺されてしまう。
だからぐっと我慢。

やがてそれぞれ互いに一睨みしたあと、私が一歩前へ。
コツリ、と軽すぎるような音で地面が鳴った。
呼応し、ルパンさんも一歩。
同じく軽い音しかしない。

あと、この簡素な音を何回聴けるんだろう。

そのような場違いな思案のなかで、私が一歩。
ルパンさんも一歩。彼が何を考えているのかまではわからない。

一歩。
一歩。

そして十歩目。
ついにルパンさんとすれ違う。

彼と視線は合わせなかった。
そんな暇はないから。
私は、黒服の一挙手一投足に注目しなくちゃ。

53 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/19(日) 21:49:25.62 ID:p7YlwJoo

よし。
下手な動きをしてはいけない。
私はこのまま歩けばいい。

真っ直ぐだ。
ただ、真っ直ぐ歩けばいいんだから。

一歩。

うん。

二歩。

できる。

三歩。

大丈夫。

四歩――


「あっ!」

私の袖元からソレが滑り落ちた。
カラン、と軽やかで簡素な音を立てて跳ねあがったソレは、
黒服達の視線を釘付けとするには十分だった。

55 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/19(日) 21:53:36.23 ID:p7YlwJoo

ワンテンポ遅れて。

ゴォォォォォオオオオオオオオオオン!!!

私が耳を塞いで伏せた直後、閃光と共に凄まじい炸裂音が轟き、
予め防御態勢に加え耳栓をしていた私ですらも甲高い耳鳴りに襲われた。

フラッシュバン。
強烈な音と光で相手を無力化させる、5秒ヒューズの特殊手投げ弾。
私が緩い服に着替えておいたのは、これを袖口に仕込んでおくためだ。

「な……つけろ……!」

耳が痛い。
誰かの声が聴こえる。
けれども正常でない聴力では誰が何を言っているのかまでは区別が付かない。
いま私が頼りに出来るのは自身の判断力と視力だけだ。

そう思い状況を把握しようと顔を上げた時には、既に6人の黒服達が倒れていた。
一様に肩口を抑え苦悶の表情を浮かべている。
その後方遥か彼方からは、走り寄ってくる大勢の黒服達が見えた。
えっと、私はどうすればいいんだっけ?

「早く来い、つかさ!」

背後に居た次元さんが拳銃に再装填している。どうやら6発全て撃ち切ったということらしい。
ルパンさんもちゃんと居る。次元さんのアイコンタクトが伝わっていた為に被害を免れたようだ。
えっとえと、私は……

――そうだ、走らなきゃ!

端的な答えへと辿り着き、彼等の元へと走り寄って行く。

59 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/19(日) 21:58:30.74 ID:p7YlwJoo

私達をこの施設まで運んできた車へと駆け込み、
次元さんが手早くハンドルを握ると、車は暴れ狂う馬のように走りだした。
目指しているのは外ではない、施設の奥だ。

次元「既に入口はロックされているだろうからな」

補足されなくともわかっているよ。
伊達に数日、次元さんと過ごしてきたわけではないんだから。
そんなことより今現在、懸念すべきなのはルパンさんの容体。
脈が弱く息も荒い。どう考えても瀕死。

つかさ「ねぇ、どのくらい血を抜かれたの?」
ルパン「……2リットルと、少し……だな……」

喘ぐような返答。彼の体重から計算すれば、抜かれた血液量は約50%弱。
常人ならば既に失血性ショックで息絶えている。
……彼をどうにか助けなければ。
だって、現時点でこの施設にもお姉ちゃんの行方にも詳しいのはルパンさんな訳だし、
そもそも彼が命を落とすのは忍びない。
次元さんだって黒服の眉間を撃ち抜いてはいないし、
それは相手が応急処置を施せばぎりぎり助かる程度に匙加減をしていたからだ。
尤も、それは他の黒服に手当をさせることで、私達の逃走に用いれる時間を稼ぐ為でもある。
しかしもしも黒服が手当より追撃を優先するならば、他の仲間は確実に手遅れとなるだろうけれど。

なんにせよ敵であれ味方であれ、極力みんな生きていて欲しい。
甘いのはわかっている。
でも、本心には嘘はつけない。

60 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/19(日) 22:02:22.70 ID:p7YlwJoo

次元「くそ、捕まってろ!」

次元さんが腹立たしくハンドルを切り、私にかかる重力の方向が目まぐるしく変化したとき、
突如フロントガラスにヒビが入った。

次元「防弾仕様でこの場は助かったが、足を狙われちゃ堪らんぞ」

左右に大揺れする車内。
次元さんはタイヤを守り、私はルパンさんの体を必死に抑える。

次元「ルパン、出口は何処だ!
    ここが地下排水施設ならば、俺達が来た抜け穴以外にも道があるはずだろう!?」

ルパンさんの口が動いた。
言があまりに弱々しい為に、私が耳を寄せて聞き取らなければならない。

ルパン「発信器、だ。俺の、発信機の出所を……探ってくれ。まずは、そこ、だ」

発信機。
記憶によれば潜入時に互いの位置を把握する為の短距離用レーダーとの説明を受けたはず。
恐らく、武装を解かれた際に置いてきたんだろう。

つかさ「次元さん、ルパンさんの発信機!」

騒音に負けないように伝える。

次元「発信器? そこへ行けばいいんだな?」

次元さんは受信機を取り出すと、今しがた定まった目的地へと向けて舵を取り始めた。

61 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/19(日) 22:04:22.54 ID:p7YlwJoo

幸いにも相手側に車がなかったことに助けられたという形で、ようやくにして振り切れた黒服達の集団。
勿論、まだ油断はできない。あいつ等を振り切れたところで第二、第三の追手が来るはずだから。
なんたってここは敵の本拠地。
すぐに仲間が駆け付けてくるのは必然だ。

かのような戦局を、私は窓の外を窺うことで読み取った。
ついでに施設内をも観察していく。

今更となるけれど、この施設は広い。
あまりに広すぎる。
車で悠々と走れるほどに空間が有り余っている。
ましてや、ここが本当に地下なのかと疑ってしまうほどに。
地上でいう大型デパートの駐車場なんて目じゃない。
無機質な地面が際限なく彼方まで拡がり、それを途切れさせる角を曲れば、またも新たな空間が現れてくる。
この何処かにお姉ちゃんが居るというのは解っていても、アテがなくては数日を要したって出会えないと確信できてしまう。

次元「もうすぐ着くぞ」

前方を見遣る。
無機質な壁にいくつかの扉が張り付いている。

つかさ「どうするの? あのどれかには黒服達が待ち構えていたりしないかな?」
次元「だったとしてもやるしかないだろ。後ろとの距離は稼いだ。ならば情報が伝わる前に迅速にだ」

他に良策はない。

つかさ「了解」

だからそれに乗るしかない。

62 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/19(日) 22:07:06.69 ID:p7YlwJoo

次元「先に様子を見てくる。すぐに戻るから待ってろ」

彼がそう残して一つの扉へ割り行って行くと、
直後には3発の銃声が聴こえ、次いで何事もなかったかのように戻ってきた。

次元「おい、中は普通の牢みたいだが隠し扉でもあるのか?」

急かすように問い掛けられるとルパンさんが身を起こした。
彼の焦点が定まっていない。明らかに無理をしている。

つかさ「動いちゃ駄目だよ」
ルパン「いや、ここまでくりゃあ大丈夫だ。中まで行けばな。悪い、少し肩を貸してくれ」
次元「おう、わかった」

いや、それでは駄目だ。

つかさ「次元さんは他の部屋を警戒してて。ルパンさんは私が連れていくから」
次元「……中は酷いぞ?」
つかさ「仕方ないよ。私じゃ銃を扱えないから、そうするしかないし」

ルパンさんを抱き起こす。
重い。でも、お姉ちゃんの為だ。頑張らなくちゃ。

ルパン「女の子に貸しを作っちまうとは、俺も情けねぇもんだなぁ」
つかさ「代わりにお姉ちゃんを助けてくれるのならチャラにしてあげる」
ルパン「言われなくともこのルパン様がお宝を目前にして逃げ帰る訳がねぇってもんよ」

頼りなく笑うルパンさんを余所に、

次元「俺は入口を制圧しておく。用が済んだらさっさと戻ってこい」

トレードマークのタバコに火を点け、次元さんが睨みを利かせていた。

66 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/19(日) 22:23:24.25 ID:p7YlwJoo

中にも黒服達が居た。
ただし、一様に眉間から血を流して地面に倒れた状態で。
確認するなり、私はそれらを極力視界に捉えないよう眼を逸らした。

ルパン「つかさちゃんには少々キツい光景だな。すまねぇな」
つかさ「大丈夫」

全然大丈夫じゃない。
けど構っている暇はない。
下手を打てば今度は自分達が地面に転がる番になるのだから。

ルパン「そこだ、その机のところまで頼む」

誘導され、ルパンさんを机前の椅子に座らせる。

つかさ「何をするの?」
ルパン「ちょっと輸血するだけさ。元々俺の血だけどな」

机の引き出し、上から三番目の位置に入っていた大きな注射器四本。
中には赤色の液体が詰まっている。
間違いなく血液だ。

ルパン「少々時間が掛かっちまうから、あっちを向いておいてくれ。輸血なんて見ていて気持ちのいいもんじゃない。
     それから余力があるのなら、あっちの棚と机から俺の道具も取ってきておいて欲しい。時間もないしな」

凄惨で日常からは並外れた様子の室内において、私はせっせと身支度に勤しむ。
今の私に出来ることなら何でもやらなくちゃ。

67 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/19(日) 22:40:45.66 ID:p7YlwJoo

これはワルサーP38。ルパンさんの愛銃。
こっちはワイアーガン。壁などに撃ち込んで、飛び移る為に用いる特殊道具だっけ。
そしてこれは……時限式爆弾かな。
他にも色々あるけれど、なんだかよくわからない。

よし、これで一通りかな。

つかさ「はい、どうぞ」
ルパン「ありがとよ。もう少し掛かるから机の上に並べておいてくれ」

地面には空の注射器が転がっている。
既に1本目の輸血は済んだということらしい。
その痛々しさは、私ではとても言葉にできそうにもない。

そのような状況のなかで、1発の銃声が轟いた。
ついで怒号。

次元「なにしてやがる! 急げ、追手が来た!」

不味い、なんとかしないと。

ルパン「仕方がねぇな。つかさちゃん、悪いんだけど注射器を持って先に車へ戻っててくれ」
つかさ「ルパンさんは? 一人で歩けるの?」
ルパン「俺は道具を纏めてすぐに戻る。一本分の血液があれば俺一人でも走れるさ」

言い終わるよりも早く、彼は様々な道具を服の中へと収納している。
どうやったらそれだけの量をその服に仕込めるのか。些か奇怪にも思えてしまうほどに鮮やかな手際。
なんて感心してちゃいけない。

私は出来うる限りに手早く注射器を抱えると、転げないように気を付けながら出口へと向かった。

71 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/19(日) 22:57:05.78 ID:p7YlwJoo

出口にいた次元の横から窺うと、遠くの方では白煙が漂っていた。

次元「催涙弾だ。広いから効果は薄いだろうが、視界を塞げるので銃撃をかわせる。弾の残数が心許無いがな。
    それよりルパンはどうした?」

私は端的に状況を伝えた。

次元「あいつ……輸血の為にここまで来たのかよ。こりゃあその分も働いてもらわなくちゃな」
ルパン「おう、期待しててくれや」
次元「ぬわっ、いつの間に戻ってきやがった!?」
ルパン「俺は不死身なのよぉ〜ん」
次元「ほーう、血色も幾分か戻ったようだが……無理すんなよ。
    人間ポンプじゃあるまいし、失った体力は簡単には戻らんからな」
ルパン「ああ、輸血の続きは逃げながらさせて貰うとするか」

ルパンさんが拳銃を構える。

ルパン「じゃあ行くぜ? 3、2、1……」
次元「走れ!」

二人の掛け声に気圧されるように私も走りだした。
すぐ傍で鳴り響く二つ分の乱射音には、本能的に身が竦みそうになる。

だけど止まれない。
止まるわけにはいかない。
走り続けるしかないんだ。

166 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/26(日) 23:44:50.55 ID:szTMZ2Eo

再びの車内。次元さんの運転で、黒服達の追走を振り切って走り続けていく。
ルパンさんも調子を取り戻し始め、器用にも輸血しながら案内役を担っている。
一体、どこへと向かっているんだろう。
そのことが気になるというのに、私はというとただ口を閉ざし、黙って俯くことしかできなかった。

ルパン「仕方ないさ、あの状況じゃ。次元がやってなきゃ、その後に入った俺達がやられていた。
     地面に奴等の拳銃が落ちていたということは、相手もこちらをやる気だったってことだ」
つかさ「わかってるよ」
ルパン「俺達やあいつ等のような悪党は無益なことをやらない。だけど敵対する相手には容赦しちゃならない。
     それは銃を持つと覚悟した瞬間から誰しもが心得なきゃならねぇ、暗黙のルールってもんさ。
     俺自身が潜り込み、内部事情をそれなりに探って得られた結果だから間違いねぇ、
     奴等にしたって一般人には極力手を出していないところから、割と理解のあるほうだと俺は思うぜ」

わかってるから、そんなこと。
なんとなくだけど、どうしようもないことくらいは。

ルパン「それが嫌ならば銃を持たないことさ。
     相手にエモノを向けるってこたぁ、自分も撃たれるのが筋ってこった。例外なんか無い」
つかさ「相手が誰であっても?」
ルパン「ああ。躊躇せずに撃つ。過去、俺達が実際にやってきたことだ。
     そこんところが出来てなきゃ、とっくに何処かでくたばっちまってる」
次元「おい、そういう話はやめてくれ。昔の女を思い出す」

次元さんが暗く威嚇するような語調で割入ると、間を埋めるようにジッポを鳴らしていた。
裏切りと孤独。数日間を共に過ごしてきたこの人達の背景が、ようやくにして見えて始めてきたような気がする。
始めから心得ていたことではあるけれど、私とは住む世界が違うんだ。天と地ほどに。

167 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/26(日) 23:46:52.67 ID:szTMZ2Eo

ルパン「ま、安心しろやい。今の俺達はつかさちゃんの味方だ。お宝の安全までは保障できないけどな」
次元「ルパンはどうだか知らんが、俺は割と約束を守るタチだ。それなりに信用しておいていいぞ」
ルパン「い〜い所を持っていくんだもんなぁ、次元ちゃんわぁ〜」
次元「お前はいい加減に不二子の奴と縁を切りやがれ、あいつに熱を上げているうちは信用ならん」
ルパン「不二子ちゃんは本当はいい奴なんだってよぉ」
次元「ちっ……お前は頭が切れるくせに、くだらない女に現を抜かしやがるから手が掛かるんだよ……」

こんな時にでさえ冗談を飛ばし合える仲だなんて、一体この二人はどれだけの修羅場を潜ってきたんだろ。
私やお姉ちゃん、こなちゃんやゆきちゃん達では寸劇の上だとしても到底演じきれそうにはない。

次元「ところでルパン、これからの手筈だが」

その一言で、二人は算段を立てる時の鋭い調子へと戻った。

171 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/26(日) 23:51:16.35 ID:szTMZ2Eo

次元「どうするよ? 一旦俺とお前の二手に分かれて、つかさを地上へ逃がすか?」
ルパン「いや、そんな余裕はないだろうな。この車一台で上への脱出口を探るまでは可能だが、
     きっと出口付近は黒服達で固められている。となれば一人で護衛と突破を担うのは些か辛い。
     例えそれが上手くいったとしても銭形のとっつぁんのことだ、もうこの施設付近まで嗅ぎ付けていることだろう。
     そうともなりゃ上へ出た途端に御用だ。で、そこを強行手段に出た黒服にかっさらわれるという寸法よ」
つかさ「でも、警察の人達なら変装で誤魔化せたんじゃ?」
ルパン「相手は天下御免のとっつぁんだぜ? そんなヤワな相手なら、俺達はとっくに泥棒稼業から身を引いているさ」
次元「おいおい、俺は別に鬼ごっこを楽しむために働いているわけではないぞ?
    野郎のしつこさに敵わねぇのは確かだがな」
つかさ「そんなに怖い人なんだね……」
ルパン「懸念すべきなのは銭形のとっつぁんだけじゃあない。
     警察内部に黒服の仲間が居てもおかしくはないってこともだ。
     というより、これだけの組織相手にスパイが居ないと考えるほうが不自然だ。
     それに奴等、今夜に掛けて何かを仕出かすつもりらしい。
     とくれば時間的猶予が無くなるに従って、大惨事を引き起こす強行手段を実行に移し兼ねない。
     加えて、”その時”に間に合わなければ用済みとなったモノがどう扱われるかくらい、周知だろう?」
次元「何をするにも時間が足りねぇってか」
ルパン「ま、そういうこった。俺もお前もつかさちゃんも、そしてお姉ちゃんも。
     一挙になんとかするしかないだろう。少しばかりハードそうだけどな」
次元「……ええい、どうしてこうも毎回毎回窮地に立たされるんだろうな俺達は。
    最初の算段では柊の双子をちょっとだけ拝借してお宝を楽々と頂くつもりが、
    どういうワケかお前が人質に取られ、延いては救出の為につかさ連れで特攻する羽目になってやがる。
    神だか悪魔だかは判らないが、つくづく俺達に危ない橋を渡らせたがるやつがいるようだな」
ルパン「しょうがねぇよ、今回の相手は今までとは若干気色が違う。それに案外頭も回る奴のようだ。
     泥棒である俺様を尾行し、変装を見破ぶり、狭い場所へと誘い込んでお姉ちゃんを流れ弾からの盾にしやがったりな。
     オマケに献血にまで参加させやがって……泥棒から血を盗むとは良い度胸をしてるぜ」

172 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/26(日) 23:57:33.99 ID:szTMZ2Eo

口を挟みにくい雰囲気だけど、訊かなければならない。

つかさ「それでお姉ちゃんは何処にいるの?」
次元「ルパン、わかるか?」

一瞬だけ考える素振りを見せたルパンさんは、低い声で切りだした。

ルパン「地下だろうな」
次元「ここが地下だから当たり前だろうが」
ルパン「そうじゃない、ここよりさらに地下だ。
     俺はその途中までしか踏み入れてはいないが、かなり深部まで道が続いていた。
     どうやら邪馬台国の遺跡が地底の泉へと沈んでいるんだとよ。
     奴等が今夜という時間に急かされているのも、その地底湖の水かさが今夜だけ引く為とのことらしい。
     ふたご座流星群との関連がどうとか……まったくもって、手の込んだ仕掛けを施してくれちゃったもんだねぇ」
次元「地の底の泉、か……まるで黄泉だな」

黄泉。
昔、お父さんに聞かされたことがある。死者の世界のことなのだと。
二度と醒めることのない眠りについた者達が、地底の奥深くで住まう国。
こちら側ではない、あちら側の世界。黄泉國。

ルパン「強ちそれも間違いではないのかもな。不死の秘術と黄泉がえり、近似しているといえばその通りだ」
次元「ってことは、やっぱりそこへ行くしかないというわけか?」
ルパン「そーなるワケっ!」

もし、本当に黄泉國だとするのならば。
一度坂を下ったが最期、二度と帰ってはこれないのかもしれない。

ルパン「それにつかさちゃんとも約束しちまったしな」
つかさ「え、なにを?」
ルパン「お姉ちゃんを助ければいいんだろぅ?
     レディからの借りは高い利子が付く前に返しておかなきゃバチがあたるのよん」
次元「まったく、こいつは女にだけは実直なんだからな……」

不敵にも満面の笑みを浮かべるルパンさんを、次元さんは苦々しく皮肉っていた。

177 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/27(月) 00:33:36.51 ID:O0q5rjUo

◆一方その頃/高翌良みゆき(追跡編)

ゆい「掴まってなさいよぉ!」

ドライバーを請け負われたゆいお姉さんが、
悲鳴をあげるタイヤを背景音楽にして疾風怒濤の追跡劇を繰り広げられているなか、
その隣の助手席に腰を据えた銭型さんが、

銭形「いいか、もうすぐそっちへ追い込むから構えておけ!」

無線機片手に部下への指示に専念し、追い込みを掛けていきます。

こなた「はぁはぁ……姉さんが本気で運転しているところなんて、はぁ……初めて見たよ……」
みゆき「凄まじっ――い、ものですね」
こなた「前々から、そういう、ふぅ……片鱗は見え隠れしていたけれっ――のわっ!?」

またまた泉さんが車内を転げ回られました。
気の毒ですが、私も自身を支えるだけで精一杯なのでどうする事もできません。

ゆい「次のコーナーで、決めるっ!」

その言を受けた銭形さんが再び拳銃を抜きだし、窓から外を窺いに掛かりました。

銭形「一瞬だけで構わん、角を曲った後に制動を安定させてくれんか?」
ゆい「了解!」

直角に近いカーブが目前だというのに、私達の車の速度が一向に落ちません。
って、え、あれれ?
まさかこのまま曲がる気なんですか?

みゆき「これ、あの! 流石に無理なんじゃ――」
こなた「はぁはぁ……」
ゆい大丈夫っ! やれる! 気持ちの問題だ!」

178 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/27(月) 02:15:15.60 ID:O0q5rjUo

逃走車両は残り一台。
恐らく、あれにつかささん達が……。

ゆい「互角のマシン性能で一向に車間が縮まらない以上、勝負に持ち込めるポイントはこの先の切り込みカーブのみ。
    奴はそこで絶対に速度を落とす。しかしわたしは全力で突っ込む。
    外からじゃ抜けねぇ……インに行くしかない……他に仕掛けるポイントはねぇ……!」

なにやら虚ろな眼でぶつぶつと呟かれているようですが、その間にも着々と勝負の瞬間が迫ってきている。
急激な左カーブ。一般車両が予め掃かれているとはいえ、それはあまりに無謀。
……せめてお母さんに挨拶くらいはさせて欲しかったなぁ。

こなた「ブレーキいかれちゃったの!?」
銭形「なかなかいい筋をしている」

騒ぎ立てる泉さんと落ち着き払った銭形さん。
なんだかその様子をみていると可笑しくて可笑しくて……

みゆき「うふふ、うふふふ……」
こなた「みゆきさん、しっかり!」

私は大丈夫ですよ、ほらこの通り。
笑みを絶やさぬ心がけというものです。うふふ。

ゆい「行くわっ!」

179 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/27(月) 02:18:11.00 ID:O0q5rjUo

やや膨れた位置から食い込むよううに左への転回。
間際へ迫ったガードレールにいつ接触するかと嫌な汗が吹き出しそうになったと同時、

ガゴァアア!

なんとも嫌な鳴動と震動が車内を襲ってきました。
さらに今まで以上の加重。う、腕が痛い。
というより車、傾いてません?

こなた「溝落とし!?」

な、なんですかそれは!?
後学の為にも詳しく願いたいものです!

こなた「前輪を溝に引っ掛けて、トップスピードのまま強引に――」

それを遮り、

ゆい「銭型さん、行きますよ!」

曲り終えた直後、今度は反対方向へ急激なハンドリング。
それによって車がほぼ180°ターンし助手席が進行方向へ。
つまりそこいるのは、

銭形「上出来だ、部下に欲しいくらいですな」

僅かな安定走行の合間を縫い、コルトガヴァメントでタイヤへと狙いを定め――引き金を絞った。

180 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/27(月) 02:22:19.39 ID:O0q5rjUo

見事的中。
逃走車両は前例に倣って自制の効かない駒のように暴れ狂い、
次なる脇道へと入れぬまま警官隊のネットへと包み込まれていった。

けれど滑りゆくのは私達の車にも当てはまっているのです。
キーッ、とサイドブレーキの甲高い呻きに見舞われながら回転の渦へ。
気持ちが悪いですっ。
電飾が、景色が、全てが混ざり合って視えます!

こなた「にゃーーーっ!」

泉さんも何か叫ばれているようですがその意味までは汲み取れません。
そんな洗濯機で洗われる物の気持ちを堪能すること数秒。

ゆい「ふぃー、上手くいったようですね」
銭形「お見事ですな」

二人の感慨深いやりとりで、事が落着したことを知らされました。

みゆき「生きてた。よかった……」

安堵の溜息、九死に一生、とはこのような状況でこそ実感できるものなのですね。
はぁー……。
泉さんはどうなのでしょうか?

こなた「……」

反応がありません。
時既に遅かったようです。

181 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/27(月) 02:25:08.71 ID:O0q5rjUo

こなた「あいたたたた……」
みゆき「無事でしたか」

体中を打ちつけたのか、ゼンマイ仕掛けの人形と化してしまった泉さん。
私が抱え上げる形となって共に銭形さん達のもとへと向かいます。
既に彼はゆいお姉さんや警官隊とで、停車した逃走車両を囲んでおられたようで、
私もその隙間から中を窺ってみたところ、

こなた「スーツのオジサンとつかさ? ぐったりとしてるみたいだけど……」
銭形「シートベルトを締めないからこうなるんだ」

厳しい顔で銭型さんが零されました。

みゆき「まさか二人とももう……」
銭形「いえいえ、単に頭を打って気を失っているだけです。軽い脳震盪でしょう」
こなた「よかったぁ」

またも一安心。

みゆき「ほっとしました、つかささんに何事もなくて」
こなた「そうだねぇ、早く起こしてあげないと」

そう交わしながらつかささんの傍へと歩み寄ったことで、
ようやくにして私達が犯していた過ちが判明しました。

こなた「この人、つかさじゃない」

それは親しき人物ですら欺きかねない、秀逸な変装を施されたニセモノのつかささんでした。

183 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/27(月) 02:44:50.09 ID:O0q5rjUo

銭形さんの対応はまたも神速でした。
その場にいた警官隊へ、引き続き厳戒体制を敷くよう命を下すと今度は無線機に向かい、

銭形「捜査班、次元達が宿泊していたホテルの客とそれらの出入りを洗い直せ。
    無論、最初の時点で宿泊していたのが本物の次元達だったのかの確認も怠るな。
    こいつらが変装していたとなると、本物の次元達も確実に変装を施して動いているはずだ。
    いいか、全ての客の行動を洩れなく追跡し、手当たりしだいに聞き込みしていけ」

そこで一旦間をおき、無線機からの応答を確認するとまた指示を始められました。

銭形「追跡班、始めに捕らえた二台の奴等から根城は吐かせたか?
    どんな手を使ってでも喋らせろ、変装していた柊つかさと次元が見つかった以上、証拠は十分だ。
    悪党に人権などない。文句を言われれば全責任はワシが取る。
    人命が懸っておるのだ、時間が無い。5分でやれ!」

荒々しい苛立ちが最高潮を迎えたのか、無線機を投げつけるように放ると、
懐から取り出した煙草を燻らせ、じっと遠くを睨み出されました。

こなた「今は近づかないほうがいいのかもね」

泉さんの耳打ち。

銭形「いや、そんなこともありませんな」

どうやら丸聞こえのようでした。

銭形「貴方がた三人を連れて来ていて正解だった。
    もしやとは思ったものの、やはり奴等は変装していたわけですからな。見抜く手間が省けたというものです。
    それに替え玉を見抜いたのも、ゆい殿の代行運転も、どちらともがプラスに働いたことは確か。
    オカルト等は信じておりませんが、何か不思議な巡り合わせというものを感じるくらいです」

そこでまたも通信によって一瞬の沈黙が訪れたあとに、銭形さんが独白の推察をなされていました。

銭形「しかし今回はどうなっとるんだ? 何故、ルパンの奴が一向に姿を現さない?
    さらには替え玉の手口も手口だ。ルパンは見ず知らずの大勢と行動を共にするような奴じゃあない。
    仮に手を組んだとしても、あのような特攻をさせるとは到底考えられん。
    となると噂の敵対組織と密な協力関係にあるか……或いは……
    ルパン達が従わざるを得ない状況に追い込まれている、というのか?」

185 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2008/10/27(月) 02:53:25.43 ID:O0q5rjUo

なんだか作画監督が変わったアニメを見ているような感覚
今一つ進まないけども今日はもう寝ます、また夜ということでおやすみなさい



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