キョン「いいじゃないかっ!中学生!」


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1 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:34:10.08 ID:TvdS0YBM0

そう、それは梅雨の鬱陶しさも消え、ついでに七夕も過ぎた7月後半に起きた話・・・

「あち〜・・・」
俺は今日何回目になるのかもわからない言葉を発した
「うっさいわねっ! 少しは黙りなさいよっ」
俺の「あち〜」って言葉にはそんなにも嫌な気分にさせるものなのか、
ハルヒの奴が突っかかってききやがった
「っつても、あち〜もんは暑いからな。・・・な、古泉?」
「えっ?・・・まぁ暑いですが団扇で扇げば何とかなりますよ」
・・・めんどくさいから、古泉を巻き込んでやるつもりだったが
コイツはいつでも、ハルヒの味方だったか・・
「そうよっ 古泉君の言うとうりだわっ。キョンは少し落ち着きが足らないんじゃない?」
まさか、ハルヒにそんな事言われるとは思わなかった・・・
「有希を見てみなさいよ、涼しい顔で本読んでるじゃないっ」
・・・長門は特別だ

2 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:40:31.64 ID:TvdS0YBM0

今俺たちは、いつものどうり部室にいる。期末テストも終わり、後は
夏休みを待つだけのだらだらした放課後だ

俺と古泉はオセロ
長門は読書・・・しかも暑い窓際
ハルヒはPCで何かをえっちらやっている・・・何してんだ?
どうせロクな事じゃないと思うが・・・
朝比奈さんは珍しくまだ来ていない、掃除当番らしい

「あ〜もうっ!イライラするっ!」
ったく、ハルヒは何をそんなにイライラしてんのか知らないが、こっちに当たるのは
勘弁してほしいもんだ
「も〜!! 暑いわねココはっ!!」
・・・お前も、暑いんじゃないか・・・
「結局、お前も暑いんだろ?」
「なによっ!? あんたと一緒にしないでくれる?」
一緒だろ・・・
「イライラしてるからって そんなにつっかかるなよ。な?」
思わず、なだめる方向に言ったが
「突っ掛ってなんていないわよっ」
火に油だったらしい・・・

3 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:45:44.01 ID:TvdS0YBM0

達の様子を心配しながら笑顔の古泉が見ている
何か言いたそうだが 俺が悪いんじゃないからな

「ごめんなさ〜い 遅れちゃいました〜」
おっ、麗しの朝比奈さんが来てくれたか
「いいですよ、朝比奈さん」
俺は極上の笑顔で迎えた
「遅いわっ!みくるちゃん」
俺とは対照的にハルヒの奴は口をへの字にしてる
「ご、ごめんなさい・・」
ああ、朝比奈さんが・・
「いいんですよ、朝比奈さん。あいつの言うことなんて気にしないで下さい」
「キョン君・・・」
俺の言葉で、部室内の温度が変わった・・・古泉の目線も痛い
「ふぅ〜ん・・キョンはみくるちゃんに優しいのね」
なんだその言い方は?
「は?別に優しいとか関係ないだろ、朝比奈さんにまで当たるなよ」
「キー!!当たってなんてないって言ってるでしょ!みくるちゃんお茶っ!」
「ちょっと お前いい加減にしろよ」
お互いヒートアップしてきたが ハルヒが朝比奈さんに当たってる時点で
俺はもう止められないからな

4 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:48:29.99 ID:TvdS0YBM0

ちょ、ちょっと 二人とも止めてください〜」
いいえ、朝比奈さん
「今日こそは止めませんよ」
「ふん、上等じゃないっ!」
朝比奈さんのためにここで止めるわけにはいけませんっ!
「お前 少しは朝比奈さんを見習えよ」
「どういう事よ!?」
分かってないのかこいつ

5 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:53:10.50 ID:TvdS0YBM0

少しは女の子らしさは、ないのかって事だ」
「私に女の子らしさがないって言うの?」
その真っ赤な顔を鏡で見せてやりたい
「少なくとも朝比奈さんよりかはな」
「キー!!あんたはみくるちゃんみたいな女の子がいいって言うの!?」
「・・・そ、そうではないが・・・いやそうかも///」
朝比奈さんが顔を赤くして俯いてしまった
「あ、あたしだって、中学生の時はおしとやかだったのよっ!」
・・・それはないだろ、ハルヒ。俺は中学生の時のハルヒに会っているんだから
「・・・ああ、そうかい。それは是非会ってみたいもんだね、可愛いハルヒちゃんに」
俺はついつい皮肉を言っちまった・・・まさかこれが
引き金になるとはな・・・
「・・・・・・ふんっ!」
部室のみんなが俺たち二人の行方を追っている
ちょっと言い過ぎちまったか・・
イヤしかし たまには言ってやらんと付け上がるだけだ
これはハルヒのためでもある・・・

6 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:59:09.98 ID:TvdS0YBM0

と、思っているのは俺だけで、みんなの視線は言いすぎって言ってるな・・・
しょうがない、今日は俺が退散するか・・・

「ふっ、なんか、ここは暑すぎるから今日は帰らしてもらうわ」
そういって、俺はとっとと部室を出た
みんな思い思いの顔をしてたが、ハルヒだけはこっちを見ようとはしなかった

7 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:59:38.91 ID:TvdS0YBM0

ふ〜 なんだかな・・早く帰ってのんびりしよ」
俺は一人 校門から帰路に付こうとした
一人で帰るのも久々だ 谷口たちはもう帰ってるだろうからな

ん?校門の所に誰かいるな・・・女の子?
なんか、こっちを伺ってるようだが、今日はもう疲れた
気が付かない振りして帰らせてもらう

8 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:04:02.32 ID:wibxoj6+0

ちょっとあんたっ!」
おいおい、俺に話しかけてきたぞ、とりあえずスルーしとくか
「待ちなさいよっ 聞こえてるんでしょ?」
何なんだ、今日は厄日なのか?変な子にまで絡まれて・・
「人違いだろ、よそ当たってくれ」
俺は早く帰って のんびりしたいんだ
「あんた、ジョンでしょ!?」
ジョン???やっぱり人違いだな
「ふ〜、やれやれ 俺はジョンなんて名前じゃ・・・・!!!」
振り返って俺は驚いた。どのくらい驚いたかって言うと・・・・
スゴクだ!!

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:08:57.16 ID:wibxoj6+0

そこにいたのは 中途半端な黒髪の中学生くらいの女の子・・・
この子って・・・まさか
「やっぱり、ジョンじゃないっ!さっさと 返事位しなさいよねっ!
・・・それともあたしの事忘れたの?」
この強気な態度・・・、朝比奈さんを見習ってもらいたい・・・って
「・・・ハルヒか?」
まぁ 俺はついこの間会ったばっかりだが一応確認してみる
「そうよ、やっぱり覚えてるんじゃない!でも、名前教えたかしら?」
・・・言葉が出ない、一年前の俺なら確実にパニックを起こしていたが
ここ、数ヶ月でだいぶ鍛えられたおかげで、ギリギリ平常心を保っている
「もー、やっと見つけたわ。さっさと現れなさいよね」
自分勝手なことを・・・しかし、厄日かと思ったら、二つともハルヒが原因か・・・
しかし、何で三年前のハルヒがいるんだ???

13 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:24:55.87 ID:wibxoj6+0

「お前、こんな所で何をしてるんだ?それにどうやって来た?」
「は?何言ってんの?電車で来たに決まってるでしょ!毎日この坂登るの
疲れたわ」
電車?タイムマシンみたいなもんじゃないのか?
それとも俺が気が付かないうちにまた三年前に来ちまったのか?
・・・それに、毎日?
「毎日ってどういう事だ?」
「毎日は毎日よ!あの七夕の次の日からよっ!」
・・・まさか、毎日ココで探してたのか?
「おい、ハルヒ」
「何よ?・・・ジョン、なんであたしの名前知ってるのよ」
この際 名前なんてどうでもいい
「お前、毎日こうして俺を探してたのか?」
「えっ!? べ、別にあんたを探してたわけじゃないわよ///」
これは、探してやがったな・・・しかし、俺は一度も見なかったぞ
しかも、放課後校門に中学生がいるなんて噂も聞いた事ないし
そんな噂あれば うちの団長様が放っておく訳がないからな

16 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:28:28.53 ID:wibxoj6+0

しかし、中学生ハルヒがココにいるのはマズイ
「ハルヒ、とりあえず場所を変えるぞ」
「いいわよ。なんで、ジョンがあたしの名前知ってるのか聞きたいし」
さて、どこ行くかな・・・それとこいつが過去から来たのか
俺が過去に来たのか確かめないとな

17 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:28:52.33 ID:wibxoj6+0

俺は携帯電話をポケットからだし電話をかけた
「ちょっと、ジョン!電話なんてしてないで行くわよっ」
ちょっと、待て、これは大事なことなんだから
まだ、呼び出し音が鳴っている、電話に出てくれ
「ちょっと、待ってろ電話が終わったら連れてってやるから」
「ふんっ!子ども扱いしてっ」
カチャ『もしもし、どうしました?』
!!!出てくれたか古泉!

20 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:32:06.23 ID:wibxoj6+0

良かった、なかなか出ないから心配したぞ」
『それはすみません・・・しかし、そんなに心配することでも・・・?』
「ちょっと、事件が起きてな、ちなみにソコにうちの団長様はいるか?」
『ええ、今は私が廊下に出てますが。相変わらずご立腹です。・・・それで事件とは?』
「ああ、それについては直接会って言いたいから朝比奈さんと長門を連れて会えないか?」
『今からですか?』
「出来るだけ早い方がいい。駅前の喫茶店で待っる」
『・・・わかりました。緊急事態のようなので努力してみます。』
「悪い、じゃ、先行ってる」
『はい、では』

21 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:34:09.24 ID:wibxoj6+0

古泉との電話を終わってとりあえず、俺が過去に来たわけじゃないことがわかったが・・
じゃ、この中学生ハルヒはどうやってきたんだ?
「なっ、なによ!?///」
俺がハルヒを確認するために振り返ったらハルヒの奴もこちらを
見ていたらしく、頬を少し赤くさせ、キッ!っと こちらを睨んで来た
「何でもないさ、待たせたな さ、行くか?」
「ふんっ、待たせすぎよ///」
「悪かったな、奢ってやるから勘弁してくれ」
しかし、相変わらず、中学生のハルヒは今と変わらんな
今、この時間上に二人のハルヒがいると思うと・・・・ハァ。

24 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:37:26.45 ID:wibxoj6+0

ここはいつもSOS団が集まっている喫茶店だ
ココまで来る途中は小ハルヒの質問攻めに合っていた、
適当にあしらって来たが余りのしつこさにとりあえず
俺のあだ名を教えたが、しかし
「何そのあだ名!?あたしを馬鹿にしてるの?」
って 確かに変なあだ名だがそこまでか?
結局、小ハルヒはジョンと呼んでいる

28 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:40:32.70 ID:wibxoj6+0

「どうも、お待たせしました」
喫茶店に着いて、ハルヒの質問に答えてるうちに古泉が来た
このくそ暑い中歩いてきたって言うのに微笑をたたえながら。
「どうも。はじめまして・・・ですかね?」
小ハルヒに挨拶をしている
「えっと、コイツは古泉。俺のまぁ・・・仲間だ」
「ふ〜ん・・なかなかイイ男ね」
生意気発言を言いやがる
「お褒めに頂きありがとうございます。可愛らしいお嬢さん」
「ふんっ」
小ハルヒは当然といった顔で三杯目のミルクティーを飲んでる
「失礼します」
こんな、こ生意気な小娘にまでちゃんと断って席に着くなんて
北高じゃ古泉ぐらいなんじゃないか

29 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:42:39.00 ID:wibxoj6+0

ところで、お前を呼び出したのはこの事なんだ」
と言いながらチラっと小ハルヒを見る
ミルクティーをストローで飲みきっている所だ・・・
「ええ、ココに来てすぐに気が付きました・・・驚きです」
あんまり驚いているようには見えないが。そこが古泉らしいが。
「どこで会われたんですか?」
「ああ、それは・・・」
ついさっき校門であった事を話してやった
小ハルヒは別に俺を探してたんじゃないって所をツッコんできたが
別にいちいち相手にしてたら話が進まないことは高校生のハルヒで学習済みだ
古泉は話を聞き終わり、腕を組んで考え込んでる
「ねえ、ジョン」
「ん?なんだ?」

30 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:45:04.43 ID:wibxoj6+0

小ハルヒの奴は俺が古泉に話してる途中に四杯目のミルクティーを注文して
早くも半分飲んでいる
「あたしがいたらまずいの?」
「え!?・・・そんな事はないが、何でだ?」
「だって、ジョンのお仲間の古泉って人 ずっと考え込んでるじゃない」
「ああ、あいつは 考え込むのが好きな奴なんだ。気にするな。それより
そんなに飲んでばっかりだとトイレが近くなるぞ」
「バっ!だから子ども扱いしないで って言ってるでしょ」
・・・そう言いながらも行動って言うか仕草がうちの妹と同じなんだが
ハルヒって言っても、このハルヒはこの前まで小学生だったんだから無理もないか

33 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:49:51.43 ID:wibxoj6+0

ところで古泉。考え込んでるところ悪いんだが」
「?何ですか?」
「後の二人はどうした?」
ハルヒを除いたメンバーで集合のはずが古泉しか来ていない
「ああ、それはですね・・・・」
どうやら、三人で帰るのはハルヒに怪しまれるって事で
順番に帰ることになったらしい、古泉はいつものバイトって事で
すぐに帰れたそうだ。そろそろ来るはずらしい

35 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:53:20.89 ID:wibxoj6+0

それからすぐに朝比奈さんと長門が来た
店の前を通っている二人を見たが、長門はいつもの無表情だったが
朝比奈さんはビクビク長門を伺っているようだった。
そういえば苦手だってこの間言ってたきがするな。

36 名前:だったもの[] 投稿日:2008/10/02(木) 00:55:07.22 ID:wibxoj6+0

遅くなりました〜」
いえいえ、朝比奈さんあなたを待つのはちっとも苦痛じゃないですよ
「・・・」
長門・・・なんか言ってくれ・・
「急に呼び出してすみません」
「いいですよ、緊急事態って聞きましたがどうしました?」
そういいいながら、テーブルに着いてるメンバー見て
小ハルヒに目を留めた。気が付いたかな?
「え〜っと、こんにちは。・・・・・キョン君こちらの可愛いらしい子は?」
さすが朝比奈さん、気が付きませんか・・・
「えっと、涼宮ハルヒちゃんです」
ハルヒちゃんって所が気に障ったのか小ハルヒが睨んで来た
「ふふ、こんにちはすずみy・・・・え〜!!!?キョ、キョン君!?」
ん〜本当に気が付いてなかったか・・まぁ普通の反応だろうな
「まぁ、そんな理由です。」
朝比奈さんは口をパクパクさせながら目を真ん丸くしている
長門は相変わらず無表情だがな

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 17:33:53.61 ID:+ifa5XdzO

いつもの喫茶店にいつものメンバーで集まってるようで約一名がちょっと違うという考えてみると奇妙な状況で、
実際半ば常連と化している俺達の面を覚えているらしいウェイターは小ハルヒを見て目を白黒させている。
遅れて来た二人の注文を取りに来た彼はどうやらあぁいつも一番騒がしいあの子の妹さんかな、と結論づけたようだ。
ところが俺達はそうはいかないわけで、何も知らないウェイターを羨ましくまた恨めしく思いつつ、何も言わずにニコニコ、あたふた、しーんとしている三者に話をふる。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 17:39:36.93 ID:+ifa5XdzO

「それで」
 まず何がどうなってこの状況なのかを把握したい。このチビハルヒは一体何者なのだろう?
俺の事をジョンと呼んだって事は、同姓同名の別人でしたーなんてバカバカしくもありがたい結末は迎えられそうにない。
 例の異時間同位体なるものである可能性が一番高い気がする。とここで俺は朝比奈さんに視線を向ける。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 17:45:45.55 ID:+ifa5XdzO

「わわ……っキョンくん?」
 俺の視線をどう受けたのか、頬をかわいらしく染めて慌てふためいておられる。眼福だ。
 呆けている場合じゃない。今のリアクションを見るに朝比奈さんは何も知らなそうだ。
古泉は時間的な問題については推測をぺらぺらと喋りそうだが聞くのが面倒くさい。現に俺の視線にキラキラとした眼を返してきやがる。お前には何もやらんぞ。
 結局数瞬の吟味の後俺が説明役に選んだのは毎度おなじみの長門だった。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 17:53:41.44 ID:+ifa5XdzO

「長門、コイツは」
「異次元同位体」
 即答してくれるのはありがたいのだが意味がわからない。異……次元?「時空平面を跳躍もしくは短縮、破壊した痕跡はない。彼女は多次元化した他の時空平面の一つから漂流してきたと推測される」
「なるほど、そういう事ですか」
 勝手に納得する古泉と長門を代わる代わる見る俺と朝比奈さん。何が何だか……。 

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 17:59:08.59 ID:+ifa5XdzO

「ちょっとジョン、何勝手にみんなでわけわかんないことしゃべってるのよ」
 混乱するあまりこの状況の原因であるチビハルヒを忘れていた。
さっきまで俺の知ってるやつの半分くらいのスピードでイチゴショートを食べていたのだが、今は元気にフォークを頭の上で振って……って!
「今の会話聞いてたのか?」
「聞こえてるに決まってるでしょ?」
 それ、ひたすらやばくないか?

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 18:04:16.61 ID:+ifa5XdzO

 例え今の会話が理解出来なかったとしても、たった三年でチビハルヒは涼宮ハルヒに成長する。
記憶が残っていないはずがない。第一、俺達の顔がコイツの記憶に残ってたらSOS団の歴史にも影響が出るんじゃないのか?
「大丈夫」
 俺の内心の危惧を知ってか、長門が口を開く。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 18:16:37.45 ID:+ifa5XdzO

「彼女は現在の彼女とは記憶を共有していない」
 つまり……?
「この涼宮さんが何を見聞きしても、もう一人の彼女には影響はないという事ですね?」
「そう」
 なら一安心か……一応時空平面の専門家である朝比奈さんにも聞いておこう。
「……えっ、あ、ははい。大丈夫だと思います」
 何故か思い詰めたような表情でいた先輩は、エアコンと汗で冷えた腕をさすりながらこくこくと頷いた。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 18:25:18.27 ID:+ifa5XdzO

「あたしを無視するなんていい度胸ねあんた……」
 俺の腕をがしっと掴んでフォークを突き付けているのはチビハルヒだ。
本家ハルヒはこういう時怒り笑いを浮かべているのが常だが、このハルヒは涙目笑いである。
 あぁごめんなハルヒ、かまってやらなくて。
「っな……!」
「はわぁあ……」
「これはこれは……」
「…………」
 全員の視線を受けて我に帰った俺の手は真っ赤な顔のチビハルヒの頭を半ば抱くように撫でていた。
何てこった、自殺してぇ!

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 18:36:04.57 ID:+ifa5XdzO

 その後すっかりおとなしくなったチビハルヒはこっちを向いては視線を逸らすというルーティンを何回か繰り返した後、
「帰る」
 と言い放つと席を立った。
「待ってください」
 と古泉。何故だ。
「よく考えてくださいよ。この子はどちらに帰るのでしょう?元々いた場所に帰るとは到底思えませんが」
「あたしはあたしんちに帰るのよ」
 何がいけないんだ、という視線を俺に向けてきやがる。待てと言ったのはそこのニヤケお兄さんだぞ。
「これは結構深刻な問題ですよ」
 ……あぁ、分かっているさ。チビハルヒをハルヒの家に帰らせるわけにはいかない。
「そこで、です」
 古泉は立てた人差し指の向こうで優雅に笑みながらとんでもない事を言い出した。 

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 18:45:17.09 ID:+ifa5XdzO

「彼の家に泊まるのはどうでしょう、涼宮さん」
 ハルヒに提案するのと全く同じトーンで言った古泉に殺意をこめた視線を突き刺した俺を責めるかい?
 無理に決まってるだろう、妹もいるんだ。コイツの事を知ってるんだぞ?
「あんた妹がいるの?でもあたしはあんたの妹なんか会った覚えないけど」
 興味津々に瞳を輝かせ、一度上げた腰を再び下ろす。
 とにかく無理だ。家族にバレない自信がない。それに、コイツの家族も勝手に外泊なんかしたら心配するだろ。
 俺の言葉に古泉は偽悪的な笑みを浮かべる。確かに俺は今何の解決にもならない上卑怯な事を言った。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 18:51:01.96 ID:+ifa5XdzO

「あたしなら大丈夫よ、夏休みだし」
 あっけらかんとした声でチビハルヒが言う。そういう問題じゃないんだ。
「わたしに任せて」
 意外にもこの問題に積極的な態度をとっている長門の提案は説得力のあるものだった。

−−−−−−−−−−−−−−

「わぁ、結構広いじゃない」
 一人暮しには広すぎる程の間取りを持つマンションの部屋の真ん中でキョロキョロと周りを見渡すチビハルヒ。
「でっかいベッドまであるわよ、ほらジョンなに突っ立ってるのよ」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 19:03:06.30 ID:+ifa5XdzO

 そう、俺は……俺とチビハルヒは長門の提案で元々朝倉が住んでいたマンションの一室に来ていた。何で俺までいるのかって?
「あんたも来るでしょ」
 というコイツの一言に俺以外の誰も疑問を持たなかったからだ。いまいましい。
まったく、誰がおしとやかだって?おしとやかな女性はこんな風に部屋の中を走り回ったりしない。
「早く!こっちこっち!」
 そしてこんなデカい声も出さない。やれやれ。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 19:09:14.34 ID:+ifa5XdzO

「あの子すごいわね、こんなおっきな部屋貸してくれるなんてさ、えっと……」
「長門だ。長門有希」
「そう、有希……あっ、ずるいわよそこ!」
「ずるいも何もないだろ。ほらこれもひっくり返るな」
「真っ黒じゃない」
「諦めるなよ」
「だって」
「俺の見たところまだ逆転できる手が三種類くらいある」
「知ってるわよそんなの」
「おわ、そこか……」
「へへへ……あ、そうだあのふわふわした子いるじゃない」
「朝比奈さんの事か?朝比奈みくるさんだ」
「さんって……年下じゃないの?」
「んや、彼女が俺たちの一個上」
「嘘ね」
「嘘じゃねぇよ」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 19:15:31.80 ID:+ifa5XdzO

「ホントにホントならかなりロリーよね」
「そうだな」
「メイド服とか似合いそう」
「あぁ、似合うぞ」
「見たことあるの?」
「見慣れちまったくらいだ」
「…………」
「何だよ」
「変態」
「何でだ」
「べつに!早く置きなさいよ」
「やれやれ」
「古泉くんてモテそうよね」
「ムカつく事に異論はないな」
「みくるちゃんにはあんたより古泉くんのほうがお似合い」
「何だそりゃ」

−−−−−−−−−−−−−−

 等とくだらない会話をしながら部屋に用意されていたゲームに興じていた俺達だったのだが、
どちらともなく腹が減ったと言い出した時にはすでに午後六時を回っていた。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 19:23:31.75 ID:+ifa5XdzO

 ハルヒの料理の腕は中一以降に培われたものらしく、予想外にも俺がメインとなり料理しなければならなかった。
卵を割れ、タマネギを出せ、ケチャップかけろ等の俺の指示にぶーぶー言いながら従うハルヒと共に作り上げたのは不格好なオムライス。
「あんたオムライス作った事あるの?」
「いや、初めてだ」
「初めてにしちゃ美味しいじゃない、あたしのケチャップのおかげ」
「ケチャップは市販だ」
「分量!」
「俺が指示……」
「うるさいわね、黙って食べられないの?」

 何か妙にくすぐったいような、楽しい食事の時間だった事は素直に認めてやる。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 19:33:33.52 ID:+ifa5XdzO

「さっきの続き」
 メシの後食器を片付けたチビハルヒはとてとてと盤面を保存しておいたオセロの所へ向かい白を置く。
「ズルするなよ」
「しないわよ!子供じゃあるまいし」
 キッチンから覗き込むと頬を膨らませている。何だか妙な気分にならんこともない。
こんな風に庇護欲をそそる仕草を見せるハルヒはそう見られないからな。仕方ないだろ?
 蛇口を閉め向かいに座った俺に、
「遅い、罰金」
 と言ったハルヒは微笑んでいた。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 19:39:01.15 ID:+ifa5XdzO

「あ、勝てそう」
「一個角を取っただけじゃまだわからんぞ」
「罰ゲームは何がいいかしら」
「罰ゲームなんかするのか」
「あんたはね」
「お前は?」
「あたしは負けないもん」
「いやいや、ここ」
「あっ!」
「逆転だな」
「大人げないわねぇ」
「子供扱いすると怒るじゃないかハルハルは」
「な、な!」
「待て!ひっくり返すな!」
「…………」
「怒るなよ」
「怒ってない」
「ごめんって」
「なでるな!」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 19:46:05.05 ID:+ifa5XdzO

 オセロというものは話しながらするのには最高のゲームらしく、俺達は時間を忘れてひたすらパチパチとやっていた。
 やがてハルヒの思考時間が長くなっていき、頭がフラフラカクカクと船を漕ぎはじめる。
「風呂入って寝るか」
「うん……」
 すっくと立つと何故か俺の手を引きバスルームへ向かうハルヒ。っておい、ハルヒさん?
「…………!」
 着ていたシャツを頭から抜こうとした状態のハルヒに俺は蹴り出された。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 20:03:44.85 ID:+ifa5XdzO

 ハルヒがシャワーを浴びる音を聞きながら俺は考えていた。
 コイツをどうするか。今ここにハルヒが二人いるのはおかしい。そんな事は別に何の特殊能力がなくても分かる。
 どうすればこのハルヒは元の次元に戻れるのだろうか。俺に何ができる?
 一人で考えても結論は出ない。何故かって?そんな事は分からない。分かるわけがない。
 がらっとバスルームのドアが開く音が聞こえ、俺は腰を上げた。
「出たわよ」
 用意されていたらしい浴衣(長門のチョイスなのか?)を纏ったハルヒのサッパリした顔に俺が返せたのは頷きだけだった。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 20:15:38.67 ID:+ifa5XdzO

 モヤモヤとした思考を抱えたまま湯舟に浸かっていると、解決策どころか自分がどうしてこんなに考え込んでいるのかそれすらハッキリしなくなってきた。
 こういう時は何も考えないのが一番いい、それが俺の持論だ。だから考えるのはヤメだ。考えたくないんじゃない。

−−−−−−−−−−−−−−

 バスルームから出るとベッドの右半分で寝息を立てるハルヒが視界に入ってきた。おいおい、そういやベッド一個しかないじゃないか。
 一瞬焦りかけた俺だったが、すぐに落ち着きを取り戻し隣の和室に向かう。きっと布団あるはずだ。あった。

 布団を和室から出して、ハルヒの眠るベッドの隣に敷いているとマナーモードにしておいた携帯がテーブルの上で震えた。

 古泉だ。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 20:22:30.82 ID:+ifa5XdzO

『用件はお分かりですね』
「お分かりだ」
『同棲生活はいかがです?』
 無言を返す。
『失礼。本題ですが、解決策が分かりましたので今から長門さんの部屋に来て下さい』
「分かった」
 後は寝るだけのはずだったんだがな。眠気が充満し始めた頭を振り、着替えた俺は忍者が大笑いするほど足を忍ばせて部屋を出た。
 明日から夏休みとはいえ、夜は日中程暑苦しくない。この気候が俺の心境を見透かしているようでイヤだった。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 21:27:07.20 ID:+ifa5XdzO

 長門の部屋に着くとすでに全員揃っていた。気に入らん。
「あなたには彼女についていてもらわなければいけないと思いまして」
 あぁ、俺も本気でヘソ曲げてるわけじゃない。
「涼宮さん、寝ましたか?」
 自分の方がよっぽど眠そうにしながらチビハルヒを気遣う朝比奈さん。しばらく彼女を眺めていると、長門がお茶を持ってきてくれた。
「飲んで」
 言われずともありがたくいただくさ。
「よろしいですか?」
 古泉がぽんと手を叩き、話し始める。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 21:34:36.92 ID:+ifa5XdzO

「この状況に至った原因を考察してみましょう」
 そんなに喜々として最初から話さなくても散々三人で議論しただろうに。そう思うが敢えて言わない俺である。
古泉はそういう奴なのだ。小難しい話を小難しく話すのが三度のメシより好きなんだ。
 俺の苦々しい顔に気付いてか、苦笑を浮かべ肩をすくめてから続けて、
「今日の部室での会話は覚えていますね?」
 数時間前の事を忘れ去るほどもうろくした覚えはないね。
「あなたと涼宮さんがあるテーマについて口論……というか、いつものように仲良く口喧嘩を……」
「うるさい」
「これはすみません、あなたももう涼宮さんと関わって長いですし、大体原因はご想像の通りですよ」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 21:42:49.43 ID:+ifa5XdzO

「あ、あたしだって、中学生の時はおしとやかだったのよっ!」
「・・・ああ、そうかい。それは是非会ってみたいもんだね、可愛いハルヒちゃんに」

 これだ。
「御名答。その会話がこの状況を引き起こした要因です」
 お茶を一口。
 確かにこういうのには慣れつつあるが、毎回毎回呆れるのはしょうがないだろ?
 つまりハルヒは俺の言葉にカチンと来て、『おしとやか』な自分を見せようとしたってわけだ。全くしょうもない。
 実際に俺が見たのは少しも『おしとやか』ではないチビハルヒなのだが。
「あなたを糾弾するのが目的ではありません、そう気に病まないで下さい」
 誰も病んでなどいない。
「おやそうでしたか」
 殴りてぇ。
「……解決策は一つだけ」
 拳を握った俺だったが、長門の静謐な声に止められた。

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 21:51:25.65 ID:+ifa5XdzO

「涼宮ハルヒを満足させる事」
 お前まで古泉みたいな事を言い出すのか。
「統合思念体は自律進化の糸口をひとつ見つけた。その正確性を判断するためには観察対象の安定が必要」
 なるほどな……。そういう理由かよ。
「それに」
 なんだよ。
「涼宮ハルヒが二人いるのは」
 長門が戸惑ったように視線を伏せる。そして、


「少し、大変」
「ふふっ」
「確かにそうかもしれませんね」

 無表情に苦笑を一滴落とした顔で言った長門の言葉に、俺のちょっとした失望はたち消えた。

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 21:59:58.14 ID:+ifa5XdzO

 自分自身が自律進化の途を辿っている事に気付いていない長門は不思議そうに俺の顔を眺めている。
「どうすればハルヒは満足するんだ?」
「あなた次第」
 何だそりゃ。
「あなたが一番分かっているはずですよ」
「キョン君、分かるでしょ?」
 ああ。何となく分かってた。でも、俺は誰かに『やれ』と言われたかったんだ。俺が考えている事が正しいとしたら、俺は自分からチビハルヒを……
「キョン君はやっぱり優しいです」
 朝比奈さんが唐突に俺を褒めてくれた。何で?
「でも大丈夫です、この時空平面からはいなくなっても、他の場所であの子は違う涼宮さんになってきっとまたキョン君に会うの」
 この人はたまにこうしてお姉さん風を吹かすのだ。心地よい風。
「明日、ハルヒに会います。俺達のハルヒに」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 22:11:01.86 ID:+ifa5XdzO

「では、明日よろしくお願いします。まぁ、あなたなら大丈夫でしょう」
 古泉のこの言葉は、単に俺を信じているだけでなく幾分かの心配を匂わせる。大丈夫だ。お前の言うとおり俺の精神的タフネスは成長してる。
「悪かったな長門、夜遅くに」
「へいき」
「じゃあそろそろお暇します。お茶ごちそうさまでした」

−−−−−−−−−−−−−−

 一旦一階まで降り、朝比奈さんと古泉を送った後エレベーターで俺は階数表示を眺めながらフクザツな気持ちでいた。
 頭がこんがらがりそうだが、どうやらパラレルワールドから来たらしいチビハルヒを元の世界に返すには俺が行動を起こすしかなさそうだ。
 ていうかパラレルワールドだぜ?ただタイムスリップしてきただけじゃなくコレだ。

……ただ〜だけ、という係結びでくくってしまうあたりがやばいような。

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 22:13:55.38 ID:+ifa5XdzO

 パラレルワールドから来た『別の』ハルヒを元の世界に戻すのには何の問題もないはずだ。なのに何なんだこの微妙な気持ちは。

 エレベーターのドアが開く。一歩踏み出す。チビハルヒが待つ部屋へと。

二歩目を踏み出したその時、エレベーターのドアが開いた。

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 22:18:09.67 ID:+ifa5XdzO

 開くわけないのに再び開いた……音がした。何コレ、怪奇現象?
 振り向こうにも振り向けない(悪いか、怖いんだ)俺にエレベーターの方から声がかけられた。

「キョン君」

 おや?

「久しぶり、驚かせちゃってゴメンね」

 振り向いた俺の視界に入ってきたのは―

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 22:28:09.05 ID:+ifa5XdzO

「朝……」
「今日はお話があってきたの」
 話って何だろう。このタイミングでここに現れたって事は間違いなくチビハルヒに関する事のはずだ。
「あの子はね、本来あってはならない歴史を作り出す原因なの。本当は時空平面の移動は平面同士が関連しあってないとできないはずなんだけど、
あの子は……あの涼宮さんはそうじゃない方法を思い付いちゃう」
「朝比奈さん」
「ねぇキョン君、わたし達の時空平面を守る為なの。協力して」
 一体何を協力しろと言うのだろう。明日になれば全て解決するのに。

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 22:37:04.81 ID:+ifa5XdzO

「朝比奈さん、何を……」
「明日、あの子を元の時空平面に帰す前にわたしと会わせて下さい」
「何故……」
「……禁則事項です」
「わ、わかりました」

 悲しげな、というより悲壮感漂う表情が俺が頷くと解れ、微笑んだグラマー美女は再びエレベーターに乗り込んだ。
 階数表示は動かなかった。

−−−−−−−−−−−−−−

 結局のところ俺が明日やることはチビハルヒを朝比奈さん(大)に会わせて、ハルヒの所に行く。それだけだ。
そう考えてお気楽にドアを開けたのがまずかった。

「どこ行ってたのよ」

 豆電球のオレンジの光の中から、チビハルヒの涙声が響いた。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 22:50:35.79 ID:+ifa5XdzO

「起きたら……っいなくて……」
 涙声は段々鳴咽混じりになっていく。
「やっと見つけたっとおもったのに……」
 体が勝手に動いた。コイツは紛れも無くあの日のハルヒだ。分かってくれる奴を探して寂しげな目で一人校門にいた、涼宮ハルヒだ。

「ゴメン」
「次勝手にいなくなったら……」
「『死刑』だから」か」

−−−−−−−−−−−−−−

「あたしさ」
「ん?」
「あたしのこと理解してくれる人なんかどこにもいないと思ってた」
「そうか」
「でも、いた」
「あぁ」
「あんた」
「自信ねぇな」
「当たり前よ」
「なんでだよ」
「僕はキミの事を理解してます、なんて思ってるアホをあたしが認めるわけないじゃない」
「お前は自信満々だな」
「そうよ、悪い?」
「悪くない、お前らしい」
「あんたはらしくないわね」
「そうか?」
「なんか、今のあんたはあんたらしくない」
「なんで」
「カッコつけすぎ」

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 23:01:10.38 ID:+ifa5XdzO

 床に敷いた布団は意味がなくなった。
 隣で眠るハルヒの顔を見て思う、別にいいじゃないか。他の歴史があってもいいだろ?コイツがこの記憶を持ったまま成長して、北高でSOS団を作るみたいな。
 きっとどんな事があろうと俺はあの自己紹介を聞けばハルヒに話しかけるし、ハルヒは俺のネクタイを引っ張ってくだろう。SOS団結成はどの時空平面だろうと規定事項だ。ハルヒがいる限りは。

 きっと時空を越えたパラレルワールドでも団が存在することをハルヒも望んでいるはずだ。だからこんな事やっても意味ないかもしれない。これは俺の自己満足だ。存在証明だ。
 さっき謝ったばかりで、また悲しい思いをさせる事になるコイツへの謝罪文を先に書きながら、時々頬を撫でる。
 朝比奈さん、ごめんなさい。あなたとの約束も破ります。

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 23:12:42.04 ID:+ifa5XdzO

 翌朝目が覚めた俺は枕元に紙切れを置き、音をたてずに着替え外に出た。そこにはすでに朝比奈さん(大)がいた。
「キョン君……」
「すみません」
「わかって、ました」
「俺は……」
「わたし達の時空平面には影響がないことを祈ります」
 精一杯微笑む朝比奈さん(大)。
凄く申し訳なくなってきた。結構俺、やばい事しようとしてる?

「えへへ……びっくりしました?」

 は?

「実はわたし、ここにいる朝比奈みくるとは違う次元から来ました。ついさっき、キョン君がお手紙を書いた事で歴史が分岐したの」

 わけがわからん……頭が痛くなってきた。

「キョン君がチビハルヒ、って呼んでたほうの涼宮さんが存在する時空平面から来たの。
詳しい事は禁則だけど、向こうのキョン君にも協力してもらって今はここともう一つ、二つの時空平面が正常に存在してます」
 って事は……このまま?
「そう、昨日決めた通りの事をしてくれれば大丈夫です。全部、キョン君のお手紙のおかげ」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 23:22:16.58 ID:+ifa5XdzO

 安心やら混乱やらでぐちゃぐちゃになった頭でも一つだけ分かる事がある。この人、俺が書いた駄文を知ってる!
「あのお手紙はね、未来では貴重な資料として……」
「だめー!」
 階段の方から大声が聞こえる。目の前の人と同じ声だ。
「あ、いけない。もう一人のわたしに怒られちゃう」
 と言うと俺の目を手で隠し、
「じゃあねキョン君、わたしとは多分もう会わないけど……」
 段々と手の感触が薄れていく。
「『わたし』によろしく」
 という声を残し、パラレル朝比奈さん(大)は消えた。

 振り返ると、階段の所ではぁはぁと息をつく朝比奈さん(大)がいた。

−−−−−−−−−−−−−−

「キョン君、ゴメンね。『わたし』が勝手な事して」
 いいですよ。ちょっといたずらっぽいあなたを見られたんで。
「そうなの。あっちの『わたし』はどうしてああなんだろう……」

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 23:28:21.06 ID:+ifa5XdzO

「あ、もうこんな時間。キョン君、もう行って」
 もう少し話していたかったのだが、彼女がこういうのならもう潮時なのだろう。
「頑張って、キョン君。悲しい思いさせちゃってゴメンなさい……」
 あなたが謝ることはありませんよ。俺があなたにしてほしいことといえば、『貴重な資料』を焼却することくらいです。
「そそれはダメです!」
 ですよね……やれやれ。
「じゃあ行ってきます」
「いってらっしゃいキョン君。またね」

 エレベーターに乗り込み、一階を押す前に閉を押し試しにもう一回開けてみる。

 朝比奈さん(大)は消えていた。そりゃそーか。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 23:34:17.77 ID:+ifa5XdzO

「もしもしハルヒか」
『なによこんな朝っぱらに』
 1コールで出ておいてよく言えたもんだ。
「今からお前の家に行きたいんだが」
『はぁ!?ガタタン ドサッ』
「だ、大丈夫か」
『何でよ急に!』
「いや、その……何だ」
『さっさと吐きなさい、10、9……』
「お前の子供の頃の写真とか、ビデオとか見せてくれよ」
『なっ…………』
「…………」
『ロリキョン!』
「やめろ、妙にしっくりはまってるじゃねぇか」
『どういう風の吹き回しよ』
「いや、昨日の部室での会話がな」
『印象に残ってたと』
「そういうことだ。女の子らしいお前とやらを見せてもらおうか」
『む……べ、別にいいけど』

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 23:41:18.23 ID:+ifa5XdzO

『じゃ駅まで迎えに行くから』
「いやいいよ道教えてくれれば」
『複雑なのよ!』

−−−−−−−−−−−−−−

 ハルヒの家は駅から大通りを真っすぐ行った突き当たりにあった。
「どうぞ」
 ピンクのTシャツに白いスカートのハルヒが仏頂面で玄関を開けている。
 ウチより少し長い廊下を歩きながら、
「親は?」
「旅行」
「そうかい」
「朝ごはん食べた?」
「いや」
「ちょうどオムレツ作ってるとこだったのよね」
「そうか」
「恵んでほしい?」
「頂くよ」
「うっ……!有り難く食べなさいよね!」
 ってな会話をする。何だかチビハルヒに対する対応に慣れちまったせいか、変な気分だ。

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 23:51:17.63 ID:+ifa5XdzO

 何だかノスタルジックな味のするオムレツを食いながら、ハルヒがDVDプレイヤーをセッティングする様子を眺める。
「これは……わたしが料理してるとこね」
 リモコンをテレビに向け、自然に俺の隣に座るとハルヒは言った。
「ちょうど中一の今頃かなぁ。なんか料理に目覚めたのよね。初めて作った時のねこれ。何作ったんだっけ」
 テレビはチビハルヒと寸分違わぬ背中がキッチンに向かっているのを映している。
『お父さん、タマゴわって!あとタマネギちょうだい』

「オムライス、じゃないか」
「あ、そうそう!オムライスよ」

『おい、タマゴ割れ』
『命令するな!』
『タマネギとってください』
『お願いします、は?』
『ケチャップ……ストップ!そんくらいでいい』
『えぇ?薄いと思うけど』

「……キョン、ねぇってば」
 ハルヒ……。
「なに泣いてるの?」

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/02(木) 23:59:33.60 ID:+ifa5XdzO

「タマネギ、切ってるとこ想像した」
「……バッカみたい」
 ふふ、と笑うハルヒは、オセロで優勢になったときのアイツのようでまた俺の涙腺を刺激する。

 ―今、俺はチビハルヒをこの時空平面から消している。厳密には元の場所に帰しているのだが、それを確認できない俺からしたらアイツを消しているのと同じだ。
 DVDプレーヤーの再生時間表示が進むたび、アイツが遠くなっていく。同時に、俺はハルヒを助けたくて、理解したかったんだと思った。
 今まで俺はハルヒに振り回される役回りだと思っていた。でも、チビハルヒは言った。理解者なんかいないと思っていたと。
 それがアイツにとってはジョン・スミスだったんだ。だから俺は嬉しかった。アイツといる時の複雑な気持ちは―

 こうして離れなきゃいけないって分かっていたのに、離れたくなかった―

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 00:07:30.63 ID:eqAdfT6/O

『ハルヒへ』
―バカ。
『さっき謝ったばっかなのに、同じ事してスマン』
―何それ……。

−−−−−−−−−−−−−−

「確かに、女の子らしいじゃん」
「だから言ったでしょ」
「あのさハルヒ」
「何よ」
「お前、今楽しいか?」
「あんたとDVD見てても特別楽しくはないわね。人に自分の子供の頃見られるのって恥ずかしいだけよ」
「そうじゃなくてさ」

−−−−−−−−−−−−−−

『お前にとっては二週間ちょっと前、俺とお前は東中の校庭で……』
『でも今はその三年後なんだ。それもただの三年後じゃない……』
『わけわからんかもしれないけど、本当だ。ここにはお前じゃないお前がいる』
―やだ……。

−−−−−−−−−−−−−−

「何つーのかな、人生」
「が楽しいかって?」
「そう」
「まぁ、死んでみなきゃわからないけど概ね楽しいわね」
「俺はさ」
「…………」

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 00:15:17.64 ID:eqAdfT6/O

『お前と離れるのは俺もつらい』
『だけど元の場所にも俺はいる。ちょっと違うかもしれないけど……』
―ジョン……。
『そこにいる俺のことはキョンって呼んでやってくれ。嫌がるかもしれんが、内心そーでもない』
『いいか、三年後北高に行けば俺がいる』
『そこにいる俺もお前を理解してやれると思う』
『もしかしたら何もしなくても大丈夫かもしれないけど、絶対に効く魔法の言葉を教えてやるよ』
『いいか……』
―……!

−−−−−−−−−−−−−−

「お前がいるから、楽しい」
「えっ……」
「お前があのキテレツな自己紹介して、俺の後ろに居座ってるから、楽しい」
「…………あ、あっそう」
「お前の前は俺の指定席だからな、どの世界でも」

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 00:23:33.64 ID:eqAdfT6/O

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 頭でひねっていた最低限のセリフを何とか噛まずに言い終え、やるべきことをやったという解放感に包まれながら俺は着席した。
替わりに後ろの奴が立ち上がり―ああ、俺は生涯このことを忘れないだろうな―後々語り草となる言葉をのたまった。
 紙を見ながらの自己紹介ってのも、ヘンテコポイントの一つだな。


「東中学出身、涼宮ハルヒ」


「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」

 さすがに振り向いたね。えらい美人がそこにいた。
 ハルヒは喧嘩でも売るような目つきでゆっくりと教室中を見渡し、最後に大口開けて見上げている俺に視線を固定すると……

 長年離れ離れでいた恋人に向けるような笑みを見せ、着席した。


おしまい

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 00:25:36.28 ID:eqAdfT6/O

\(^o^)/オワタヨー
いやぁ疲れた。途中パワプロで幕張ファイヤー俺TUEEEEEEしてなかったら寝てたわ
やっぱオチ微妙だよね。
支援アリガトゴザイマシタ!

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 00:39:20.08 ID:eqAdfT6/O

あら……この流れじゃ最初は朝比奈さんが殺人鬼になる予定だったなんて言えないじゃない

読んでくれた人アリガトゴザイマシタ!ほいじゃノシ



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