かがみ「ちょっと、エアコンきつくない? 弱めるよ?」


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1 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:48:20.75 ID:1Bh7menn0

【かがみ】


こなた「うん。別にいいよ」

社会人になってから行われた高校時代の同窓会で、
私とつかさとこなたの3人は、1泊2日の旅行に行く計画を立てた。

それぞれ、仕事を持っていて多忙な毎日で、まさか実現するとは思っていなかったが、
何故かちょうどみんな予定の都合がついたので、思い切って行くことにしたのだ。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:49:19.26 ID:1Bh7menn0

ことの発端は、私だった。

「あ〜、最近仕事ばっかで全然プライベートな時間なんて持てないわ。
 どっかにのんびり旅行でも行きたいわね」

こなた「お!それ名案!実は、私も忙しない日常から離れたいと思ってたとこなんだよ、かがみい〜」

つかさ「あ〜、いいね!それ。私もどっか行きたいな〜」

普段なら、こういう計画は願望だけで終わるのが常だ。
でも、私はその時、どうしてもこの3人で旅行に行きたいと思った。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:50:07.02 ID:1Bh7menn0

行き先は、まったく決めていなかった。

こなた「どこでもいいから、落ち着ける場所がいいな。」

つかさ「私は、きれいな景色が見たいな〜」

「じゃあ、立山黒部アルペンルートなんてどう?私、一回黒部ダムって見たかったのよ」

その一言で、行き先は決まった。
レンタカーを借りて、車で行くことにした。
電車だと不便なところもあるし、何よりこなたが自分が運転したいと言ったのだ。

「いいけど、あんたのいとこのお姉さんみたいな運転はやめてよね。」

こなた「分ってるよ〜、ゆい姉さんの恐怖は私が一番分ってるからね〜」

6 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:51:05.37 ID:1Bh7menn0

車は、高速に入り、順調に速度を上げていった。


「そういえば、こなたって今どんな仕事してるの?確か、テレビ系の仕事に就いたって聞いたけど」

こなた「うん、そうだよ。朝日テレビに入ったの。まあ、今はアニメの演出とか脚本をやってるんだよ」

つかさ「へ〜、すごいね。こなちゃん。自分の好きなことを仕事にしてるんだね。うらやましい」

こなた「いやいや、そうでもないんだよ。人間関係とか作品の納期とかいろいろあって・・・。
    この業界に入ってから、2次元の世界がちょっと遠くなった感じだよ・・・」


「へ〜、あんたも大変なのね。まあ、仕事してればさすがにいいことばかりじゃないわね」

7 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:51:57.30 ID:1Bh7menn0

こなた「まあね。かがみは今なにしてるの?」

「私は、外資系の製薬メーカーのMRよ。MRっていうのは、まあ薬売りみたいなもんかな。」

こなた「そういえば、かがみは理系だったもんね。でも、薬ってお医者さん相手なんでしょ?
    大変そうだよね」

「そりゃあね。医者って一番プライド高い生き物だし、やりにくいところも多いわね。
 でも、私は内科医担当だからね。まだ楽なほうよ。内科医は、個人医院が多いから。
 外科医担当は大変らしいわ。なんたって、天下の大学病院が主なお客さんだからね。」


私は、もう入社して5年になる。中堅社員といったところだ。人数は少ないが、部下もいる。
それなりに充実してはいたが、何か物足りなさも感じていた。
この空虚感はなんだろう?
高校の時には、まったく感じなかったこの気持ちは・・・。

友人も会社内外にいるし、部下や上司の信頼もある(と、自分では思う)。
でも、何故かときどき言いようのない孤独を感じるときがある。

8 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:52:52.78 ID:1Bh7menn0

こなた「でも、イケメンのお医者様とお付き合いできるチャンスじゃん(笑)
    私にも紹介してくださらない?」

「ばかね、あんたは。総合職やってたら分かるでしょ?仕事なんて男にならないとやってけないのよ。
 そういうお医者様は、もっときれいで華やかで、花嫁修業に勤しんでる女を選ぶのよ」

こなた「分かる分かる。こないだも徹夜でメイクも落とさず会社にいたからさ〜」

「ちょっと!メイクぐらい落としなさいよ。肌に悪いわよ」



つかさ「あ!見てみて。前に見えるのが私たちの行く山だよね?なんていったっけ?」

「立山連峰よ。すごい大きいわね。まだ上のほうに雪が残ってる」


目的地の山が見えてきた。

9 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:53:55.59 ID:1Bh7menn0

豊科ICを降りて、30分ほど走るとホテルに着いた。
立山プリンスホテル。
山側ではなく大町温泉郷という町にあるホテルだ。


こなた「わ〜、おおきいホテルだね」

つかさ「すごーい!中もとっても広いね〜」

「じゃあ、チェックインしてくるからロビーのところで待ってて」


私は、チェックインの手続きをするために受付フロントへと向かった。


受付「柊様ですね。承っております。本日は、ご夕食は何時ごろがよろしいでしょうか?」


受付を済まして、こなたたちに手で合図する。

10 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:54:45.12 ID:1Bh7menn0

女将が来て荷物をキャリーに載せて運んでくれた。

女将「本日は、誠にありがとうございます。学生さんですか?」

「違いますよ。社会人なんですけど、高校時代の友人なんです。
 久しぶりに、みんなで旅行しようって言って。」

女将「へ〜、そうなんですか。明日は、どちらに行かれるんですか?」

「黒部ダムを見て、それから立山アルペンルートに行ってみようかなと思ってます。
 今は混んでますかね?」

女将「いや〜、この時期は土日は混むけど、平日は空いてていいと思いますよ。」

社会人になれば、いやでも会話を強制される。
これぐらいの世間話は、頭を使わなくてもスラスラ出てくる。


それだけじゃない。医者の趣味なんかも、把握して調べている。
ゴルフ、釣り、車、バイク、酒、タバコ一応のモノはそれなりに対応できる。

共通の話題は、ビジネスを円滑にしてくれる。

11 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:55:41.00 ID:1Bh7menn0

客室に入って女将の説明を一通り聞く。

「どうもお世話になります。あ、これ少ないですけど取っておいて下さい。」

女将「いえいえ。あ、こういうものは・・・」

「いえ、迷惑をかける奴もいると思いますから、どうぞ取って下さい。」

女将「では、ありがたく頂戴します。」

日本では、チップという制度はない。

でも、私は旅館に来たときはチップを払っている。

日本人は、サービスを当たり前だと思い込んでいる。
しかし、本来サービスは有料なのだ。
日本人のお客第一主義は、間違いなく廃れていくと思う。


こなた「じゃあ!さっそく温泉に行こうよ!」

「ちょっと待ってよ!今女将さんの煎れてくれたお茶を飲んでるんだから。
 もう少し優雅にすごしましょ。」

こなた「こういうときこそ、思いっきり楽しまないと。
    さあさあ、グイグイっと飲んじゃって!」

「こら!熱いじゃないの!」

12 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:56:27.71 ID:1Bh7menn0

【つかさ】


こなた「よし!飲んだね!じゃあ、いざ温泉へGo!」

かがみ「ちょっと!化粧品とかバスタオルとか用意しないと・・・」


なつかしい光景だ。

高校時代、飽き飽きとするほど毎日見ていた光景。

何故か今それが何十年も前の記憶に感じる。

今は、常に生徒に対して、同僚の先生に対して
威厳を持って臨まなければならないというプレッシャーがある。

だから、こうしてなんのしがらみのない友人と一緒に笑っていられることに
とてもありがたみを感じる。

13 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 22:57:17.32 ID:1Bh7menn0

こなた「どれどれ・・・かがみんのはどれぐらい成長したのかな?」

かがみ「ちょ!やめなさいよ!他にお客さんがいたらどうするのよ?」

こなた「ダイジョブ!誰もいないよ。貸切だよ!」

「ほんとだ!誰もいないや。貸切だね!」


大浴場に、露天風呂。今は誰もいない貸しきり状態だ。


こなた「ろってん風呂〜♪はやくいこうよ!」


こなちゃんは、高校時代と変わってないなあ。

いつも元気だ。やっぱり自分の好きな仕事をやってるからかな?

私は、毎日が疲労困憊ですよ・・・。

14 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 22:58:08.97 ID:1Bh7menn0

お湯は、少し熱めだった。

私は足からゆっくりゆっくり、浸かっていった。


こなた「つかさ・・・」ピュー!

「!?熱いよ!こなちゃん!」

こなた「ほーれ!水鉄砲〜!」

「ちょっと!」

私は水鉄砲を避けるために、ドボンと湯船に浸かった。

露天風呂からは、夕日に染まる立山連峰が一望できた。


かがみ「やっぱり、自然はいいわね。
    毎日、見るのは灰色のビルばっかりだしね」


自然を有難がるのは、やはり都市が人間にとって不適切なものだからかもしれない。

高校のときは、実家も田舎だったし、それほど自然を有難いとは思わなかった。

むしろ、虫が多くて嫌だった気がする。

でも、いざ就職して都会で一人暮らししてみると、途端に自然が恋しくなる。

15 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 22:59:06.68 ID:1Bh7menn0

こなた「そう言えば、つかさは今学校の先生だっけ?」

「そうだよ〜、まだ不慣れで毎日がドキドキだよ〜」

こなた「つかさだと、生徒になめられるかもね〜。全然変わってないしね、つかさって。」


かがみ「そういえば、この前ニュースで小中学生の学力低下ってやってたわ。
    なんでも、『死んだ人は生き返るか?』という問いに、
    小学生の3割、中学生の4割が『はい』って答えたそうよ。
    そういうのって、教師の立場からするとどういう風に見てるの?」


「意外かもしれないけど、その答えの表層的な意味は、それほど重要視してないんだ。」

かがみ「でも、小学生より中学生の方が多く間違った解答をしてるんだよ?」

「それは、お姉ちゃんが良い子だったからだよ。」

かがみ「どういうこと?」

こなた「私にはわかるよ〜、つかさの言いたいことが。」

かがみ「な、なによ?二人して」

16 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:00:00.17 ID:1Bh7menn0

こなた「つまり、面白半分にワザと間違った解答をしてるってことだよ。ね、つかさ?」

「そうそう。こなちゃん正解。実際、こういうのって成績にも評価されるものじゃないし、
 生徒もそれを分かってる。だから、正直な答えじゃないっていう見解なんだよ」

かがみ「へ〜、なるほどね。じゃあ、特に問題はないのね」


「うううん。問題はあるよ。成績に評価されるという外的要因がなければ、生徒は
 課題に真面目に取り組まない。つまり、先生がいるからという要因だけでは生徒は
 動かないってことなんだ。
 だから、教師の威厳が無くなっていってるっていう風に解釈する人も多いんだよ。」


こなた「最近の中学生は大人をあまり信用していないんだよね。
    ニュースを見ても、大人は謝ってばっかりじゃん。
    偽装とか横領とかその他犯罪もろもろ」


かがみ「そうね〜。でも、つかさはちゃんと威厳を持ってるの?」

17 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:01:30.61 ID:1Bh7menn0

私は、教師になって6年だけど、未だにうまくやれているという実感がない。
まだ生徒の前に立つと、ビクビクするような気がする。

先輩の女性教師は、35歳だがすごくパワフルでおばちゃんタイプの人だ。

彼女はよくしゃべるし、冗談も連発する。それが生徒を傷つけるようなものでも
言われた生徒や周りはいつも笑っている。

その先生曰く、ちゃんと言う相手を選んでいるそうだ。

どういう風に選ぶのか、基準を聞いてみた。


先輩「簡単よ。スクールカーストの中から上位にいて、コミュニケーション能力が平均以上の子。
   かつ、親が平均的な常識人であること。これだけよ。」

18 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:02:21.94 ID:1Bh7menn0

スクールカーストという言葉は、大学の教育心理学で少しかじったことがある。

学校は、まず学年という分類にかけられ、その後クラスという単位に分けられる。

スクールカーストは、主にクラス内での生徒の優劣のことだ。
それは、成績だけではなく、運動能力、コミュニケーション能力、人望、ルックス、趣味の良し悪し、
親の仕事、家柄・・・など多様な因子がある。

このカーストの上位に位置していれば、いじめられることは少ない。
でも、下位にいる生徒はいじめられる危険が高いのだ。

だから、下位の生徒に注意し、できれば中位レベルまで引き上げてやれれば望ましい。

19 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:03:19.72 ID:1Bh7menn0

でも、私は学生時代そのような目で友達を見ていなかった。
だから、いまさらそういう風に見ろと言われてもいまいちピンとこない。


平等といいながら、カースト制度は確固としてここに存在する。


建前と本音・・・それを理解し、自分の常識にするのにまだまだ時間がかかる。


でも、それにつれてどんどん私が私じゃなくなっていく気がする。

さっき、こなちゃんに変わってないって言われたとき、ちょっとうれしかったな・・・。

21 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:04:39.55 ID:1Bh7menn0

【こなた】

ちょっと飲みすぎたかもしれない。

まだ宵の口だというのに布団に入ってから、少し眠気が襲ってきた。

眠気を紛らすためにつかさに話しかける。

「ねえ、つかさ。つかさのクラスはいじめとかそういうのはないの?」

つかさ「えっとね・・・実は、1年前に中3のクラスであったんだ。」

かがみ「へえ、どういうタイプのやつ?」

つかさ「うん。実は、厳密な定義のいじめかどうかは分からないんだけど・・・
    ちょっと話し方がおかしな男の子がいたのね。
    それで、いつもみんなにからかわれてたの。
    でも、本人も笑ってたし、私もそんなに深刻に見てなかった・・・」

22 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:06:05.06 ID:1Bh7menn0

つかさ「でもある日、その男の子がクラスのリーダー核の一人と喧嘩になったの。
    何故喧嘩したのかは、分からないけど。
    その男の子が、突き飛ばされて、床に転んだの。
    そしてそれを見ていた、同級生が、皆ニヤニヤと笑ってた・・・。」


こなた「まあ、それだけじゃあ、いじめとは言えないかもね」


つかさ「でも、その後に男の子が泣きながら立ち上がって、指を差しながらこう言ったの。
    『おまえら、人のことを笑ってんな。全員敵だ!』って。そして教室を飛び出して行った。」


私は、つかさの言葉が続くのを待った。


けど、言葉の変わりに聞こえてきたのは、つかさの押し殺した泣き声だった。

23 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:07:21.21 ID:1Bh7menn0

う・・・グズ・・・グスン・・・


かがみ「ちょっと、どうしたのよ?つかさ?」

かがみが心配したようにつかさのほうを向く。
私もつかさを見た。


ぐず・・・ぐずん・・・


つかさ「・・・その時、その男の子が最後に指を差して、私の目を見て・・・
    また同じセリフを言った・・・
    多分、私は彼のことを何も分かってなかったの・・・」


ぐずん・・・ぐす・・・

24 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:08:12.80 ID:1Bh7menn0

すると、かがみがつかさの布団をめくって、隣に添い寝した。
そして、つかさの頭を撫でながら


かがみ「・・・そう。つかさも一生懸命なんだね・・・」

つかさ「う・・・おねえ・・・ちゃん・・・」

かがみ「つかさは頑張ってる。でも、物事は努力によって解決できることと
    そうじゃないことがある。
    時間が解決してくれることや、自分以外の他人が解決するしかないことが・・・」

25 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:09:03.08 ID:1Bh7menn0

かがみ「だから、つかさも闇雲に努力するのをやめてみな。
    相手を理解するなんていうのは、特に相手が中学生なら・・・
    一生かかってもムリかもしれないんだよ?
    だから、もっとどっしりと構えないと・・・」

つかさ「う・・・うん・・・・でも、私不安なんだ・・・
    ちゃんと先生をできるのか・・・」

かがみ「大丈夫よ。あんたは、人の痛みが分かる子だから。」

かがみは、やっぱりお姉ちゃんの立場なんだな。

私は、かがみとつかさを見てちょっと嫉妬した。


すう・・・すう・・・すう・・・

安心したのか、つかさは寝息を立て始めた。

27 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 23:10:33.68 ID:1Bh7menn0

かがみ「この子は、昔から相手をそのまま受け入れて「守り」を作ってこなかったからね。」

こなた「守りって?」

かがみ「相手との一線を測る距離・・・かな。
    なんでも取り入れちゃって、きっと心が一時的に環境破壊された状態になったのね。」

私は、黙っていた。かがみんも、黙ってつかさを撫でていた。

なんでだろう。

今はこの沈黙が、とても心地いい。

いつも、一人暮らしの家に帰ってきたときは、悲しいような寂しいような沈黙が漂っている。

でも、今は・・・温かみのある沈黙だった。

もっと、この沈黙の中に身を置いていたい・・・

いつの間にか、私も眠りに落ちていた。

29 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 23:11:23.95 ID:1Bh7menn0

夜中に目が覚めた。今は何時ごろだろう?

旅館に来て、いつもより早く寝ると何故か夜に目が覚めることが多い。

私は、半分体を起こして携帯電話を取ろうとた。

その時、月明かりの下で、何か考え事をしながら向かい合わせの席に座っているかがみがいた。

私は、つかさを起こさないようにそっとかがみのところへ行った。


「おっす、まだ起きてたんだ?」

かがみ「うん、ちょっと眠れなくてね。」

30 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 23:12:42.06 ID:1Bh7menn0

「なんか喉渇いたな。ちょっと自販機で買ってくるよ。かがみんは?」

かがみ「じゃあ、私は烏龍茶お願い。」

「りょうかい〜。」


私は、部屋を出てエレベーターホールの近くにある自販機コーナーへと向かった。


「烏龍茶っと。」ガチャ

私はどうしようかなあ。・・・コーラにしよ。ガチャ


2つの缶ジュースを手に持って、部屋に戻る。

32 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [sage] 投稿日:2008/09/22(月) 23:13:41.23 ID:1Bh7menn0

「おまたせ〜、はい烏龍茶おまち!」

かがみ「うん。ありがと。」

「こうして見ると、月明かりって結構明るいんだね」


窓の外を見ながら、私は言った。


かがみ「そうね。普段は都会の街灯とかネオンとかで人工的な明かりばっかりだからね」

私たちは、しばらく黙って外を見たり、缶ジュースに口をつけたりしていた。

34 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:15:41.51 ID:1Bh7menn0

「この旅行・・・みゆきさんと一緒に来たかったね・・・」

私は、独り言のようにポツリと呟いた。

でも、それは夜の闇に、異様に響いたように感じた。

かがみ「そうね・・・でも、みゆきは・・・高校三年のときに・・・」


そうだ。みゆきさんは、高校3年の時に亡くなったのだ。

36 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:16:52.96 ID:1Bh7menn0

「どうして・・・あんな事件が起ったんだろうね・・・?」

かがみ「犯人は、まだ捕まってないんでしょ?
    まったく、これじゃあみゆきも浮かばれないわよ・・・」


かがみが力なく強がっているのが分かる。


でも、本当にどうしてあんな事件が起ったんだろう・・・?


無差別殺人・・・それが警察の見方だった。

38 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:23:03.31 ID:1Bh7menn0

高校三年の最後の文化祭。

もってけ!セーラー服を、舞台で夢中で踊った私たちは

おなかが空いたので、焼きそばやトウモロコシなどの定番の出し物を廻っていた。

その時、気になる出し物があった。

『本場のスパイスを使った激カラカレー!』


「ねえねえ、みんな!あそこに行ってみようよ!カレー屋さん!」

かがみ「え〜、カレー?なんか、すごいカラそう・・・」

41 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:29:04.76 ID:1Bh7menn0

「いいじゃん!いこうよ〜かがみい〜。ねえ、みんなも行こうよ!」

つかさ「バルサミコ酢とか使ってるのかな〜?」

「もちろん、トッピングでどうぞ!」

みゆき「私は辛いものが苦手なんです。でも、普通のカレーなら大丈夫ですよ」

「決まりだね!じゃあ、入ろうよ。」

かがみ「はいはい」


半ば強引にみんなを誘い、カレー店に入っていった。

42 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:33:27.71 ID:1Bh7menn0

「私は、『インドからの刺客!激辛カレー』で!」

かがみ「なんだそりゃ・・・? まあ、私はココナッツミルクのまろやかカレーでいいわ」

みゆき「では、私もかがみさんと同じものにします。」

つかさ「私は、イタリアンカレーにしよ。トッピングでバルサミコ酢をかけてください」


店員「かしこまりました。では、メニューをお下げいたします。」

44 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:39:20.59 ID:1Bh7menn0

「ダンス成功してよかったね!かがみも、はりきっちゃって・・・www」

かがみ「う、うるさいわね! 最後の思い出なんだしいいじゃない・・・」

みゆき「まあまあ、成功してよかったですね」


店員「カレーお待たせいたしました。」

皆の手元にカレーが行き渡った。


みゆき「ちょっと、お手洗いに行ってきます。先に召し上がっていて下さい。」

「ゆっくり、ブリブリしておいで〜!」

かがみ「ぶ・・・なんてこと言うのよ!食事中に」

周りの客もこちらを眺めていた。

かがみ「まったく、恥ずかしいわね・・・」

私は、ちょっと悪戯心がうずいた。


かがみ「ちょ、ちょっと。こなた。なんでみゆきのカレーと自分のを入れ替えてるの?」

「いいから、いいから。みゆきさんはもっと冒険したほうがいいんだって」

46 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:45:15.84 ID:1Bh7menn0

みゆき「おまたせしました。」

「さあさあ、みゆきさんもカレー食べてみなよ!とっても美味しいから・・・w」


みゆきさんは、私が入れ替えたカレーを食べた。


みゆき「ずいぶん・・・辛いですね・・・」

かがみ「すごい汗よ・・・大丈夫?」

みゆき「とっても、美味しいです。」

つかさ「すいません、バルサミコ酢おかわりします。」


そして、みんなカレーを食べ終えた。

47 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:48:07.07 ID:1Bh7menn0

カレーを食べた後は、お化け屋敷や軽音サークルのライブなんかを適当に廻っていた。

そして、文化祭の時間も終りに近づいてきた。


その時・・・


みゆき「ううう・・・苦しい・・・」

突然、みゆきさんが苦しみ始めた。

かがみ「ちょっと、どうしたの?みゆき」

私は、みゆきさんの苦痛に歪む顔を、今でも覚えている・・・。

49 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/22(月) 23:54:52.24 ID:1Bh7menn0

私たちは、みゆきさんを保健室まで連れて行った。

だが、そこは体の不調を訴える生徒や一般の人たちで溢れていた。


みゆき「う・・・ぐぐ・・・」

かがみ「すいません!こちらにも見て欲しい人がいるんです!先生はいませんか!?」


だが、かがみの声は、人々の喧騒の中に虚しく消えていくだけだった。

それほど多くの人が、保健室に殺到していたのだ。

53 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/23(火) 00:04:29.19 ID:AsfyCYHS0

そばを通りかかる、見覚えのある顔があった。


「あっ、黒井先生!みゆきさんが、大変なんです!」

黒井「なんやて!?高良もか・・・。実は、食中毒かなんかわからんけど、みんな体に異常があるみたいや。
   病院に行った方がええわ。でも、今救急車が出払ってていつ着くか分からん。
   直に行った方がはやいわ。教頭先生に車借りてくるから、ちょっとまっとれ!」


黒井先生が、職員室に走っていった。

今は、黒井先生を頼るしかない。


「みゆきさん・・・」

かがみ「呼吸が浅くなってる・・・」

54 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/23(火) 00:07:14.71 ID:AsfyCYHS0

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・。

・・・。

た・・・なた・・・こなた!

私は、自分の名前が呼ばれているのに気がついた。


かがみ「どうしたのよ?ぼーっとして」

「あ、ごめん。ちょっと事件のこと考えてたの・・・」

かがみ「いまさら考えても、みゆきは戻ってこないわよ。」

「そうだね・・・」

62 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/23(火) 00:46:20.67 ID:AsfyCYHS0

かがみ「事件のこと・・・何か思い出したの?」

「うーうん、新しいことは何もないよ・・・」

かがみ「そう・・・それじゃあ、そろそろ寝ましょうか。明日も早いしね。」

「うん・・・」


私は、かがみに促されて寝床についた。

63 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/23(火) 00:47:06.93 ID:AsfyCYHS0

【かがみ】


つかさ「お姉ちゃん!朝だよ!すごい晴れてる!」


つかさに起こされて、私は目を覚ました。

つかさは、高校のときまでずっと寝ぼすけだったのに、今は早寝早起きの習慣がついている。

私は、MRという仕事上、時間が不規則になりがちだ。

目覚めに、ミネラルウォーターを一口飲む。


「ほんとに、晴れてよかったね。」


朝日に目を細めながら、私は言った。

64 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/23(火) 00:47:59.71 ID:AsfyCYHS0

「つかさ、こなたも起こしちゃって」

こなたはまだ眠っている。

でも朝食の時間もあるし、早く支度をしなければいけない。


朝食を済まして、ロビーでコーヒーを飲んでいるうちにもうチェックアウトの時間がきた。

私は、受付に行き、手続きをした。


女将「昨晩はよくお眠りになられましたか。またご来店下さい。」

昨日の女将だった。

「はい。ありがとうございます。」


「ほら、もう行くよ。」

私たちは、黒部ダムへ向けて出発した。

65 名前:また規制か ◆2yFiRdYI0s [] 投稿日:2008/09/23(火) 00:58:59.66 ID:AsfyCYHS0

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     ハヽ/ / / //  /   / /  / | |ハ. | |   ∧ ヽ 〉 〉
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.  /! /| イ ! //>'フ´ ̄>、 ,.' / | | | |ト| |  li |V
  | | {|,| | {/ ///// ,.' ´「 ̄`'くリ| |  ll | |\
  | | l| {|l{ | /,ィf爪气Y´ /  / / / |/ヽ| | ハ|lト、 ヽ
  | ハ lレヽ Vレ'ハヾ {爪リrj            /  ,'// / |,ハ||  !
    ハ|   ヽi }  込_/ノ        _ _   /イ ,.' /| l||  |
.   / ヽ.   |l ハ X`¨´        ´ ̄`ヾ / !レく   / '7 /
           ト、 \       '      xx/! / | | /  |/
          {. \ヽ > 、  ` '     ,. イ/|/ /| |  /     <また(あれば・・・)次スレでねっ!
          _,>'"\ { >r 、 .r≦「 `ー/ / /
       ,ィ´{     ヽ  | }    ,'  //>-、
      / ハ ヘ      ∧ | |,r―/   {' // レ' ハ       【第一部 完】
     ,'    ヽ.ヽ     ∧r| ├ 、/    // /   !
     i     \\    ,ムrく⌒ヾ'、   〃,イ     |
     |r==、    ト、\__,{ 二¨¨ヽ〉}///    |
     |〉-、》     { \__|  、__`}|/イ _/       |
      ト、/フ   ,斗''"  ̄|  へ‐く / ̄`ヽ     |
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