こなた「人生は選択と決断だ」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:10:22.46 ID:EbJHRUod0

かがみ「……はい?」

こなた「だから、選択と決断なんだって」

かがみ「またアニメやゲームやらに影響されたのか?」

こなた「フ、フ、フ。今日の私は一味違うのだよかがみん」

かがみ「どういう風に?」

こなた「やると決めたらやるのだ」

かがみ「やるって……一体、何をしでかす気なのよ?」

こなた「それはね……」


>>5

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/22(月) 07:12:41.87 ID:r564w4k+0

おっぱい

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:18:42.79 ID:EbJHRUod0

こなた「おっぱい」

かがみ「えっ……」

こなた「なーんてね、冗談だよ冗談」

かがみ「……」

こなた「さ、パンも買えたし教室に戻って食べよ」

かがみ「……そうね」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:24:24.95 ID:EbJHRUod0

昼休み/教室


こなた「お待たー」

つかさ「あ、おかえりー」

みゆき「意外と早かったんですね」

かがみ「……」

つかさ「お姉ちゃん?」

かがみ「……あ、なに?」

つかさ「どうかしたのかなって」

かがみ「別に。あとハイ、つかさの分のパン」

つかさ「……ありがと」

こなた「さてさて昼食の時間だね」


1.かがみと会話する
2.つかさと会話する
3.みゆきと会話する
4.誰かには絞らず、全員の観察に徹する

>>12

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/22(月) 07:28:58.97 ID:0YugBLLAO



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:29:19.06 ID:34IvCjf+P

3

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:35:42.26 ID:EbJHRUod0

※既定外の選択をとった場合は安価下


こなた「ねぇねぇ、みゆきさん」
みゆき「はい、なんでしょうか?」

こなた「何か面白い話とかないかな?」
みゆき「面白い話、ですか?」

こなた「うんうん、なんでもいいからさ」
みゆき「急に仰られましても……」

こなた「例えばさ、


1.「雑学じみた話とか」
2.「恋愛なんかの浮かれた話とか」
3.「学園に纏わる怖い話とか」
4.「取り留めのない話でもいいから」

>>19

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:40:18.84 ID:dq4+qvIe0

6

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:40:46.88 ID:VSuw8h9rO



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:50:27.53 ID:EbJHRUod0

こなた「取り留めのない話でもいいから」
みゆき「取り留めのない話、ですか……」

こなた「うんうん」
みゆき「そう言われてみると、咄嗟には思い浮かばないものですね……」

こなた「期待」
みゆき「うっ……えーと、もうすぐ10月ですよね?」

こなた「そだね、そだね!」
みゆき「暦上では冬も間近ということになります」

こなた「そうなんだー」
みゆき「はい」

こなた「……で?」
みゆき「えっと、えと……コーヒーを淹れた後に絞り粕が残りますよね?」

こなた「そだね」
みゆき「あれって、消臭効果があるんですよ」

こなた「……で?」
みゆき「あぅあぅ……なんとなく悪意を感じます……」


1.もう少し話を続ける
2.切り上げる

>>26

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:51:41.06 ID:qfjdqbS30

2

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 07:57:06.72 ID:EbJHRUod0

こなた「気のせいだよ、ごめんね」

みゆき「お役に立てずに申し訳ありません……」

こなた「いーからいーからっ!」

みゆき「うぅ……」


その後、普段通りに昼食を終えた。
ただ、違うとすれば、かがみからの視線がキツく感じられたことくらいかな。
私の思い過ごしである可能性もあるけれど。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 08:11:20.51 ID:EbJHRUod0

5時間目/国語


「つまりだな、箱を開けるまでは箱の中にいる猫が生きているか――」

若い男性教師は千切れんばかりに腕と熱弁を振るっている。
ただし、その内容は思いっきり授業内容とは剥離してしまっているけどね。

シュレディンガーの猫、か。
箱を開けるまでは中に居る猫が死んでいるか生きているかは解らない。
つまり、第三者が箱を開けて観察するまでは、その両者が共存した状態にあるということらしい。

正直、意味がわからない。

さらに教師の話は、エヴェレットの多世界解釈がどうとかいう話にまで飛び火している。
開けた瞬間に生きている世界、死んでいる世界に確率分岐がナントカカントカ。

これも意味不明。

けれども、ただ一つだけはっきりと導き出された答えがある。
二つの世界が交わる事はない。
どちらかに分岐を行えば、それが真実だと確定してしまうということだ。

だからどうだと言われれば、それまでだけどね。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 08:21:57.99 ID:EbJHRUod0

放課後/教室

かがみ「よーし、それじゃあ帰りましょ」
こなた「相変わらず、うちのクラスに来るのが早いねぇ」

かがみ「行動はテキパキと、が基本よ」
こなた「ふーん」

かがみ「……な、なによ?」
こなた「てっきりハブられてんのかと」

かがみ「お生憎様。あたしには5年間を共に過ごした盟友が居るから大丈夫なの」
こなた「その割には、お昼も中休み放課後もこっちに居るじゃん?」

かがみ「それが何よ?」


1.「そんなにこのクラスが好きなのかい?」
2.「そんなに私の事が好きなのかい?」
3.「案外、心の底では疎まれてたりしてね」
4.「別に何も。ただ言ってみただけだよ」

>>35

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/22(月) 08:31:42.10 ID:T5Odk0/Q0



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 08:41:17.63 ID:EbJHRUod0

こなた「別になにも。ただ言ってみただけだよ」
かがみ「引っ張るだけ引っ張ってそれかい」

こなた「いや、ほらさ、アレだよアレ」
かがみ「アレじゃわかるわけないでしょ? 中年サラリーマンかよ、お前は」

こなた「違うよ、私は私だよ」
かがみ「はぁ?」

こなた「私だ」
かがみ「……?」

こなた「私だ」
かがみ「お前か。気付かなかったぞ」

こなた「反応が少し遅いぞ」
かがみ「気付かなかったぞ」

こなた「暇を持て余した」
かがみ「神々の」

つかさ「遊び」


みゆき「……わたくしには何の事やら……疎外感です……」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 08:51:17.93 ID:EbJHRUod0

下校/学園近郊


陸上部A「陵桜〜ファイッ!」
陸上部B「ファイッ! エイソッ! エイソッ! エイソッ! エイソッ!」
陸上部C「ファイッ! エイソッ! エイソッ! エイソッ! エイソッ!」


つかさ「そういえば、部活動って大変そうだよね」
みゆき「そうですね。陸上部の方々は、夏でも冬でも薄着で励んでおられますからね」

こなた「野球部なんかだと夏に辛いんじゃない?」
かがみ「あと剣道とかもね」

つかさ「剣堂……?」

こなた「……」
つかさ「……」
かがみ「……」
みゆき「……」

こなた「臭いよねー」
つかさ「臭いよねー」
かがみ「臭いよねー」
みゆき「確かに蒸れそうですよね」

みゆき「……」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 09:00:27.08 ID:EbJHRUod0

下校/市街地・駅という岐路

こなた「もうすぐ駅だね」
みゆき「そうですねぇ」

かがみ「ここまで来ると、もう少しで家に帰れるんだっていう実感が湧いてくるわね」
つかさ「えへへ……なんだか眠くなってきちゃったかも……」
かがみ「おいおい……」

こなた「それじゃあ、みゆきさんとはここでお別れかな?」
みゆき「ええ、それでは皆さんお気を付けて」


1.「じゃあ、また明日!」
2.「みゆきさんこそ気を付けてねー!」
3.「そういえば、どうしてみゆきさんは陵桜学園を選んだんだろう?」
4.「また……無事に会えるといいね……」


>>44

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/22(月) 09:03:00.13 ID:KcOManQs0

4

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 09:12:03.99 ID:EbJHRUod0

「また……無事に会えるといいね……」

人混みの中へと紛れ行く彼女の背中に向かって、私は呟いた。
どんな些細な言葉でもいいから今すぐに声をかけないと、消えてしまうような気がしたから。

「うふふ。会えますよ、きっと……」

長い髪を翻らせながら、振りむいての笑顔。
それは何時にも増して完璧で。
見るもの全てを惹きつけてしまうようで。
けれども何処か儚くて……。

「約束、だよ」

確かめるように、もう一度だけ言葉にする。


そして、みゆきさんは居なくなった。
駅のホームから。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 09:21:16.48 ID:EbJHRUod0

下校/電車内


こなた「席が空いてて良かったね」
かがみ「座れるのはありがたいんだけど……」

つかさ「すー……すー……」

こなた「宣言通りに寝ちゃうんだね、つかさ」
かがみ「読めてはいたけどさ、あたしに靠れて来るから重くて重くて……それに、あたしまで眠くなるし」

こなた「うーんとさ、」


1.「かがみも眠ってていいよ、着いたら起こしてあげるから」
2.「姉妹っていいよね、羨ましいかな」
3.「お昼の話なんだけどさ」
4.「特に意味の無い話なんだけど……」


>>50

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 09:24:24.99 ID:osKqa65/0

んじゃ3

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 09:29:34.57 ID:EbJHRUod0

こなた「お昼の話なんだけどさ」
かがみ「お昼?」

こなた「ほら、今日のお昼休みのことだよ」
かがみ「あー、それでどうかしたの?」


1.「おっぱい」について蒸し返す
2.「みゆきさんとの会話」について印象を尋ねる
3.「チョココロネ」について熱く意見を交わす

>>53

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 09:38:52.47 ID:osKqa65/0



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 09:49:44.17 ID:EbJHRUod0

こなた「おっぱい」
かがみ「なっ!?」

こなた「おっぱい、おっぱい」
かがみ「ちょっ、やめなさいよ! 人が見てるから!」

こなた「どうしてかなぁ? かがみんは何故こうにも動揺するのかなぁ?」
かがみ「き、急に訳のわからない事を口走ったアンタの頭が心配になっただけよ」

こなた「どうしてかな? かな?」
かがみ「その眼はやめろ」

こなた「何か私に隠しているんじゃないのかな?」
かがみ「……」


1.「誰にも喋らないから教えてよ、ねっ?」
2.「かがみん酷い……私なんかは蚊帳の外なんだねっ……ぐすっ……」
3.「話したくないのなら、無理には訊かないよ」
4.敢えてスルーしてサメの話


>>57

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 09:53:27.50 ID:re7ujoVZ0



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 10:10:10.90 ID:EbJHRUod0

こなた「誰にも喋らないから教えてよ、ねっ?」
かがみ「……」

こなた「駄目?」
かがみ「うー、わかったわよ」

こなた「それでそれで?」
かがみ「大したことじゃないけどね……ほら、つかさってあたしより胸が大きいでしょ?」

こなた「いや、知らないけど」
かがみ「大きいのよ。って、こんな場所でする話じゃないような……」

こなた「いいから続けて」
かがみ「いや、それで……なんとなくアレかなと思ってみゆきに……」

こなた「つまり、姉の威厳を保つ為、バストサイズに定評のあるみゆきさんに泣き付いたと」
かがみ「わざわざ嫌な言い回しに換えないでくれ」


1.「ふーん、本当に大したことないね。胸も話も」
2.「そっかそっか、胸の支えが取れてすっきりしたよ」
3.「……本当にそれだけ? まだ秘密があるんじゃない?」


>>66

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 10:11:43.60 ID:re7ujoVZ0



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 10:23:26.48 ID:EbJHRUod0

こなた「……本当にそれだけ? まだ秘密があるんじゃない?」
かがみ「え……?」

こなた「もう少し詳しく」
かがみ「……」

こなた「ねぇねぇ、かがみーん」


かがみ「あのさ、私は思うんだけど!」


こなた「……なにさ、急に真面目な声を出して」
かがみ「そうやって無暗やたらと秘密を探りたがるのって、正直どうかと思うんだけど?」

こなた「えっとえと……かが、みん?」
かがみ「人には、それぞれにプライバシーってものがるの」

こなた「うぅ……ごめん」
かがみ「はぁ……まあいいけどさ、悪気は無かったようだし」

こなた「わたくしの思慮が足りておりませんでした」
かがみ「はいはい、わかったから目を潤ませない」

かがみ「色々あるのよ、たぶん。知らないでいい事や、知らないほうがいい事なんかもね……」
つかさ「すぅー……すぅー……」

かがみ「なんちゃってね、あははっ。少し、からかいたくなっただけの冗談よ冗談」
こなた「冗談だったんかい」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 10:33:03.18 ID:EbJHRUod0

下校/自宅近郊


こなた「じゃあにー」
かがみ「うん、そいじゃバイバイ」

つかさ「ふぁ……また明日ー……」
かがみ「こら、シャキっとしなさいよ」

つかさ「あと5分だけぇー」
かがみ「うわ、重い、重いって!」

つかさ「よきに計らえぇー」
かがみ「ちょ……こ……寝る……」


遠くなっていく二人の声を見守り、
その姿が街角に消えた所で私は歩き出すことにした。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 10:47:33.78 ID:EbJHRUod0

途端に減った活気に圧され、何気なく携帯電話を開いてみる。
ディスプレイ上には着信もメールの知らせも無い代わりに、デジタル時計が堂々とその所在を主張していた。

現在時刻は17時30分過ぎ。
終業時刻が16時05分なので、校内に暫く居た時間を差し引くと大体1時間程度か。
なんて、計算してみたところで何の得にもならないけれど。

「……うん?」

いんや待てよ。
ということは往復にして考えてみれば、1日に約2時間の無駄を過ごしている訳だ。
ひと月を30日と置くと、60時間。
休日換算では2日と半日にもなる。

うーん、なんとなく損した気分になってくるな。
ま、考えたところで仕様がなく、変えようも無い環境だけど。

しかし仮に学校に住めば2時間がフリーになるのかー。
その時間をバイトに充てれば時給換算で……


とかなんとかやっているうちに、玄関まで辿りついていた。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 10:59:08.24 ID:EbJHRUod0

夕刻/居間

こなた「ただいマントヒヒ」
ゆたか「おかえリンドバーグ」

こなた「あれ、お父さんは居ないの?」
ゆたか「叔父さんは……今さっき、仕事関係の人がやってきて……」

こなた「あらら、連れてかれちゃったの?」
ゆたか「うん。サングラスに黒スーツ姿の数人連れに……」

こなた「……ちなみに、その人達の頬に傷とかなかった?」
ゆたか「え? んーと……良くは覚えていないなー……」

こなた「そ、そう」


1.締切間近になると何時もこうだし、気に掛ける必要はないかな。
2.なんだかアブナイことになってたりはしないだろうな……。
3.そんなことより夕食はどうしようか?


>>73

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 11:02:11.24 ID:aeJ7Jas9O

2

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 11:16:14.53 ID:EbJHRUod0

なんだかアブナイことになってたりはしないだろうな……。

お父さん、カメラ片手に高校まで乗り込んで来るくらいだし。
もしかすると見知らぬ女性にファインダーを向けて、
『資料の為だ!』
なんて、最早擦り切れて見苦しいほどの免罪符を、恥じらいもなく振り翳してそうだし。

で、その女性の知り合いがアブナイ人だったりして。
当然、浮かれ気分のお父さんが後をつけられている事などは察っせるはずもなく。
自宅まで泳がされ、その挙句……。

「という筋書きなんかどうかな?」

一通り、ゆーちゃんに掻い摘んで伝えた。

「……無いとは言い切れないのが、ちょっと怖いです」

うん。
全く以って同感だよ。


ま、そんなことより夕食の方をどうするのかが重要だけどね。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 11:46:07.38 ID:EbJHRUod0

晩/自宅(居間)


こなた「お父さんが居なかったので出前を取ってみた」
ゆたか「詳細希望です」

こなた「ヒント、インド料理」
ゆたか「カレーきたー」

こなた「カレー如きで騒ぐ奴は逝ってヨシ」
ゆたか「おまえもなー」

こなた「終了」
ゆたか「再開」

こなた「再開すな」
ゆたか「え、えと、ほらよ、タマネギ」

こなた「違うよ、そこは肉だよっ」
ゆたか「あ、ごめんなさぁーい」

こなた「それじゃあ最初からもう一度通しで」
ゆたか「うん、次は頑張るねっ!」


この流れを四度ほど繰り返した後で、出前が届いた。
ちなみに頼んだのはピザでした。
誠に美味しゅうございました。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 11:47:16.84 ID:EbJHRUod0

夜中/自宅(自室)


さてさてと。
お風呂に入ったりテレビを見たり、ゆーちゃんと遊んでいるうちに、もうこんな時間となっていた。

なんだか今日はいつもより疲れた気がする。
まるで自分の体が自分のものではないような、そんな感覚すら覚えるほどに。

……などというのは、きっと気の所為だよね。

まあいいさ。
今日は早目に寝よう。

そしてまた明日一日。
学生生活を頑張ろう。

そう決めてパソコンの電源を落とし、軽く伸びをしたあと。
私は部屋の明かりを消した。

80 名前:1日目のメモ[] 投稿日:2008/09/22(月) 11:53:12.30 ID:EbJHRUod0

【行動履歴】

昼休み/購買部 − かがみとの会話
→こなた「おっぱい」 → かがみが動揺を見せた

昼休み/教室
→みゆきと会話をする → 取り留めの無い話 → 話を切り上げ、みゆきが落ち込んだので謝った

放課後/教室 − かがみに対する言葉
→「別に何も。ただ言ってみただけだよ」 → 神々の遊び

下校/駅のホーム
→みゆきに「また……会えるといいね……」

下校/電車内
→かがみに「お昼のことなんだけどさ」 →さらに「おっぱい」について蒸し返す
→その上で「誰にも喋らないから教えてよ、ねっ?」 → 最後に、「詳しく秘密を聞き出す」で、かがみとの会話終了

夕刻/自宅(居間)
→そうじろうの不在に対し、『なんだかアブナイことになってたりはしないだろうな……。』と考えた


【世界観】 日常
【 変 革 】 特に目立った変化は見られないようだ。
【 メ モ 】 かがみの秘密に深入りし、怒られた。冗談だろうか? / つかさの影が薄い

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 13:42:13.10 ID:EbJHRUod0

不明/不明


完璧な黒だった。

どこまでも続く世界。
いや、どこまで続いているのかすらも解らない世界、と云うべきか。

ひょっとすると目と鼻の先には鋼鉄の壁があって、四方を塞がれているのかもしれない。
しかし、それすらも見ては取れない。
或いは、自分が地面に立っているのか、それとも落ちているのか。
その感覚さえもがあやふやで、全てが不確か一色に染め上げられている。

けれども私は、確かにここに在る。

「先ずは状況を検めなくちゃ」

左足を前へ……出したつもりだった。

動けない。
力が入らない、と表現するには些か語弊がある。
そもそも力の入れ方がわからないのだ。

それもそうか、足が無いんだから。
と、今更ながらにして一人納得する。

そのまま暫くの間、観察を続けてみると、
どうやら欠けているのは足だけではなく、体全部を失くしていたということがわかった。

つまるところ今、私は剥き出しの状態らしい。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 13:53:04.02 ID:EbJHRUod0

コーン……コーン……

唐突にして渇いた音が、遠くのほうで鳴り響いていた。
それは何処かへあたって幾重にも残響を孕み、私の元へと届けられているらしい。

何の音だろうか?

五感のうち、視覚・触覚・味覚・嗅覚が封じられている私にとって、
段々と迫りくるその音だけがこの場にある確かなものである。

コーン……コーン……

うまく正体を掴みとれない。
硬い地面を踏む足音のようでもあるし、何かを打ちつけているもののようにも聴こえる。
それでいて、それら以外の全く想像も付かない音のようにも思えてくる。

これは……


1.「足音に違いない」 何故だかその音が、酷く懐かしいものに思えた。
2.「足音に違いない」 私は追われている。悟ると同時に恐怖を覚えた。
3.「何かを打ち付けているようだ」 私はその音に耳を傾け続けた。
4.「……」 やがて、音は止んでしまった。


>>94

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 14:02:34.71 ID:ZogzgwM80

3

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 14:15:33.90 ID:EbJHRUod0

「何かを打ち付けているようだ」

私はその音に耳を傾け続けた。
そして判った事。
どうやら、その音は一箇所に止まった状態で聴こえてくるらしい。

同じ音量。
同じ位置。
同じ音色。

ただし、間隔だけには若干のバラつきがあるようだ。

一体なんなのだ?

気になる。
目を開けたい。
それが何なのかを確かめたい。

どうやればいいんだっけ?

目を開くにはどうすれば――

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 14:27:51.11 ID:EbJHRUod0

未明/自宅(自室)


コーン。

視界が戻って来た。
薄暗いなかに浮かび上がっているのは……

「天井?」

何の変哲も無い私の部屋だった。
パソコンがあって、雑多に積まれた雑誌の山があって、それらを豆電球が仄かに照らしている。

カーテン越しにはまだ光が差してきていない。
反射的に頭元の時計で確認してみると、時刻は3時丁度を指していた。

「……夢?」

多分、そうなのだろう。
最早どのような感触や形をしていたのかすら絡め捕れないが、
何かを見ていたのは間違いない。

それにしても、なんだか体が重い気がする。

とはいえ、このまま起きておいても仕方がない。
さっさと寝直すことにしよう。

私は長い溜息を残して、再び目を閉じた。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 14:35:02.19 ID:EbJHRUod0

朝/自宅(台所)


ゆたか「お早うございまぁーす」
こなた「おはよ、ゆーちゃん」

ゆたか「何を作ってるの?」
こなた「雑炊だよ。味付けはインスタントのヤツだけど」

ゆたか「……えと、私も何か手伝った方がいいのかな?」
こなた「そいじゃ、お茶でも淹れててくれる?」

ゆたか「うん!」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 14:47:28.95 ID:EbJHRUod0

朝/自宅(居間)


やや濃い味の卵雑炊をちびちびと頬張る。
ゆーちゃんも私と同じような息を吹きかけつつ口へと運んでいるみたいだ。

その小さな動作が可愛らしい。
やっぱり歩く萌え要素なだけはあるな。
うーん、実に癒されるねぇ。

「……はい?」

ゆーちゃんが首を傾げ、疑問顔を浮かべていた。
あ、顔を直視しちゃってたからか。

なんとなく、ぼーっとしている時を指摘されるのは恥ずかしい。
そう思った私は……


1.「そこにあるリモコンを取ってよ」 ニュースでも見ようと思った。
2.「昨日の深夜のことだけどさ」 当てもなく夢について訊ねてみた。
3.「いや、流石は歩く萌え要素だね!」 正直に勢いをつけて投げ返した。


>>102

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 15:02:56.53 ID:hIeJ28kU0



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 15:20:41.48 ID:EbJHRUod0

「昨日の深夜のことだけどさ、ゆーちゃんは変な音とか聴こえなかった?」
当てもなく夢について訊ねてみた。

「変な音って?」
「なんていうかさ、コーン、コーンって響くような、叩くような感じの……」
「うーん……私、寝てたから分からないかな」

やっぱり、人に聞いても分かる訳ないか。
そう思って話を切り上げようとした時だ。

「あの、どんな夢だったの?」

少しだけ興味を覗かせる声色で、引きとめられた。

「どんなって言われても、真っ暗で音だけしか聴こえなくてさ」
「追いかけられたり、その……撃たれたりとかは?」
「そういうのは特に」
「んー……解り易い夢診断程度なら力になれそうだけど。それについては、ちょっと無理みたいかなぁ」
「でも、気になるんだよねぇ」
「けど、夢は夢だし気にし過ぎるのもあんまり良くないと思うけど……」
「そうだよね、ありがと」

これで会話終了かと思いきや、更に一言。

「あ、雑学なんかだと案外、田村さんが頼りになるかも」

可愛らしい笑顔と同時の贈り物だった。

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 15:31:01.83 ID:EbJHRUod0

登校/電車内

こなた「おはよー」
ゆたか「お早うございます」

かがみ「ん? あー、おはよ」
つかさ「こばわー」

かがみ「珍しいわね、こなたと朝に乗り合わせるなんて」
こなた「まぁ、ちょっとだけ色々とあったからね」

かがみ「ふーん……」
つかさ「オヤスミー」

かがみ「こらつかさ、しっかりしなさい!」
つかさ「だいじょーぶだよー」

こなた「立ったままでも寝ちゃうのかな?」
ゆたか「流石にそれは無理なんじゃ……」
かがみ「まさかねぇ……」

つかさ「……」

こなた「……案外いけるような」
ゆたか「どうなんだろう」
かがみ「……」

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 15:43:44.52 ID:EbJHRUod0

登校/学内(下駄箱)


こなた「じゃあね、ゆーちゃん」
かがみ「またね」

ゆたか「はいっ!」

かがみ「……素直な子だなぁ」
こなた「と、素直になれない自分との対比で痛感した、かがみんであった」
かがみ「うるさいっ!」
こなた「わふっ、ツン期は怖い怖い!」

かがみ「……ったく。つかさ、行くわよー」
つかさ「……」

こなた「つーかーさー?」
つかさ「……」

かがみ「この子、目を閉じたまま歩いてるわよ」
こなた「……かがみを自動追尾してるようだね」

つかさ「んなこたぁない……」

こなた「明日来てくれるかな?」

つかさ「いいともー……」

かがみ「そこには食いつくのか」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 16:05:33.46 ID:EbJHRUod0

朝の課外時間/教室(3年B組)


こなた「おっはー」
つかさ「おーはー」

こなた「あれ? みゆきさんが居ない」
少年A「高良さんなら、風邪で休みらしいよ」
つかさ「あじゃぱー……」

こなた「む、そういえば”おっはー”と”おーはー”はどちらが先なんだっけ?」
つかさ「おーはーが先だよ」

こなた「そうだっけ? つかさってテレビネタに強いんだね」
つかさ「お笑い系の番組なんかだと、予習と復習もバッチリしてるから」

こなた「へぇー、ちなみにオススメのグループとかあるの?」
つかさ「ダチョウさん」

こなた「こりゃまた王道だね」

つかさ「わたしね、あれは正に完成された芸術だと思うんだ。
     だって凄いんだよ? あの人達がスタジオに居るだけでまるで空気が変わっちゃうし。
     それにネタで怒っているように見せかけて、実は相方が本気で怒ってたりっていうフェイクも完璧だし、
     そのうえ――」


どうやら、つかさにスイッチが入ったらしく、
朝のチャイムが試合終了を告げるまで細かい演技指導が続きましたとさ。

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 22:17:04.92 ID:EbJHRUod0

二時間目の中休み/教室(3年B組)


かがみ「おっすー」

こなた「めっすー」
つかさ「バルサミコ酢ー」

かがみ「……あら? みゆきは?」

つかさ「ゆきちゃん、風邪ひいちゃったんだって」
かがみ「風邪? 昨日は全然元気そうだったのに?」

こなた「昨日の花は今日の夢って言うじゃーん」
かがみ「どういうことよ?」

こなた「我々は激動の時代を生きているのだ」
かがみ「意味が分からん」


1.「ともかく、季節の変わり目には気を付けないとねぇ」
2.「ただの風邪だろうし、明日にはきっと元気になっているはずだよ」
3.「もし良かったらさ、みんなでお見舞いにでも行ってみようよ」
4.「案外、昨日私が言った言葉でフラグが立っちゃってたりして……」


>>130

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/22(月) 22:18:09.85 ID:SyH8hN2c0



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 22:31:52.03 ID:EbJHRUod0

こなた「案外、昨日私が言った言葉でフラグが立っちゃってたりして……」

かがみ「まーた始まった」
つかさ「コンセントに刺すんデスカー……?」

こなた「いやさ、良くあるじゃん? 願望を実現する能力があるっていうやつ」
かがみ「ねーよ、何処かの団長さんじゃあるまいし……」

こなた「私、バイトで団長さんのコスプレとか結構やるからさ。もしかすると、知らぬ間にそういう力が備わってたりとか」
かがみ「たかがコスプレ」

こなた「されどコスプレ、だよ。形から入っているうちに、下学上達しちゃうってのが有り勝ちなパターンだね」
かがみ「どこで統計を取ったパターンだ」


1.「っていうのは冗談だけどね」
2.「という訳で、キョン役はかがみんに任せるから」
3.「願いの力ってのは絶対にあると思うよ」

>>134

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 22:50:28.50 ID:EbJHRUod0

こなた「という訳で、キョン役はかがみんに任せるから」
かがみ「キョン役って何をすんのよ」

こなた「取り敢えず、私の命には絶対服従」
かがみ「ねーよ」

こなた「次に独り言を四六時中呟く」
かがみ「怖ぇーよ」

こなた「最後に、私を抱きしめながらキッス」
かがみ「しねーよ」

こなた「……ノリが悪いなぁー、かがみんはー」
かがみ「あんたの冗談を逐一真に受けていたら、世界が何回も崩壊しちゃってるわよ」

こなた「夢がないんだからぁ」
かがみ「それにさ」

こなた「うん?」
かがみ「何でも思い通りになっちゃうのって、結構辛そうだとは思わない?」


1.思う
2.どちらとも言えない
3.思わない

>>137

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 22:58:12.43 ID:re7ujoVZ0



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/22(月) 23:18:16.56 ID:EbJHRUod0

こなた「思わないよ」
かがみ「どうして?」

こなた「だって楽しそうじゃん、毎日が」
かがみ「楽しそうって……今は楽しくないのか?」

こなた「今は普通」
かがみ「また当たり障りのない回答ね」

こなた「だからさ、この普通な日常を揺るがす出来事とか大事件とかが――」
かがみ「ハイハイ、そこまで」

こなた「む?」
かがみ「休み時間も終わっちゃうし、あたしは教室に戻るから。じゃあね、つかさも」
つかさ「うん」

こなた「……ちなみに、つかさはどう思う?」
つかさ「え、何のこと?」

こなた「思い通りになるか、ならないかの回答」
つかさ「わたしは、そうだなぁ……」

つかさ「今のままが丁度いいと思う、かなぁ?」
こなた「なんでー?」

つかさ「やっぱり自力で頑張りたいから?」
こなた「ふーん……そう思うんだ」

つかさ「あ、でも面白いネタが湧いてくる手帳なんかは欲しいかも」
こなた「つかさは、のび太くんタイプだったか……」

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 00:00:51.49 ID:QpFH6/wA0

昼休み/教室(3年B組)


こなた「今日は二人ともお弁当なんだ」

つかさ「昨日はお母さんが起きるの遅かったらしくて」
かがみ「そういうこと」

こなた「……」

つかさ「どうしたの?」

こなた「なんでもない。それじゃ、購買部にでも行ってくらぁ」

かがみ「いってらっしゃい、待ってるわね」

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 00:06:24.65 ID:QpFH6/wA0

昼休み/購買部


こなた「まーた混んでるなぁ……」

ひより「押さないでくださいッス〜!」

こなた「あれ、ひよりん?」

ひより「あ、先輩じゃないッスかー」

こなた「ひよりんも弁当忘れたんだ」

ひより「そうなんですよ、慌ててたら鞄に入れ忘れちゃって……」


1.一年生のクラスと、ゆーちゃん達の様子について世間話
2.早い所パンを購入し、教室へと戻る
3.夢のことについて訊ねる

>>149

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 00:09:04.75 ID:ZdLYurZlO



151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 00:26:41.67 ID:QpFH6/wA0

「些細な事なんだけどさ」

昨夜の夢を朧げに反芻しつつも、手短に説明を終えた。
ついでに、ひよりんに訊ねるのはゆーちゃんの案であることも付け加えておく。

こんな事をいきなり訊ねる自分もどうかと思うが、
ひよりんはというと、意外にも真面目に耳を傾けてくれていたようだった。

「音だけの夢、ですかぁ……」

自身の記憶を探るように俯き、そして回答。

「漫画のネタとして使えるのかと思って、それなりに齧ったことはあるんですけど……少々難しいッスね。
 そもそも、夢というものは深層心理と深層記憶、果てはDNAレベルでの習性まで係ってくるという話もありますし。
 例えばですけど、誰かに追われている夢なら、日常での焦りとかが抽象化されたものだと言われていたり……。
 あ、でも逆にやる気に満ち溢れている人でも、その心意気からか同じように逃げ廻る夢を見たりするとか書いてあったような」

結論から言えばアテになんないと思います、とのことらしい。

「やっぱり、夢は幻なのかな?」
「あくまでも科学的というか、一般論的には同感ッスね。
 けど、夢って見た事もないような風景をみたり、前もって予知しちゃう……デジャビュって言うんですか? そんなことがありますよね?
 ああいうのを重ねて経験すると、とても意味の無いものだとは言い切れなかったりするんですよ私は」

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 00:46:53.73 ID:QpFH6/wA0

「あくまで一同人漫画家のネタとして受け取ってください」
淡とした前置きを据えてから、ひよりんは語り出した。


私は常日頃から不思議に感じているんですけど、昔から”謂れ”というものがありますよね?
そうです、夜中に爪を切ると親の死に目に会えないだとか、蟲の知らせがどうだとかいう奴ッス。

アレって何の根拠も無い、ただの風説なんでしょうか?

そこが気になって仕方がないんです。
いや、何処が引っ掛かっているのかというとですね、
大昔からあちらこちらの全く離れた大陸で似たような話が数多く残っているという点なんです。

代表格的なものでは神様だとか精霊だとか妖怪だとか。
他にも、月は満ちては欠けまた満ちていく、を延々と繰り返す不死の象徴だとか、
鏡には魔力が宿るだとか、長生きした動物は神通力を帯びるとか、他にも数えきれないほどの謂れがあります。
ピラミッドだとかアンコールワットだとか神社だとかはこの際置いておきます。

それでですけど、科学という概念を持ち得なかった昔の人達は、
今の私達には直接視ることのできない何かを見通していたんじゃないのかと……まあ、何となくですけどね。

そう言えば、体に良い薬草だとか、逆に猛毒を持つ毒草だとか、昔の人はどうやって見分けたんでしょうね?
片っ端から食べてみたんでしょうか?

……って、これは今は関係ないッスね。

それでちょっと言い難いんですけど……
先輩の話の中に少しだけ気に掛かるワードが有ったんですよね。

後味が悪くなるかもしれませんが、言っちゃってもいいでしょうか?

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 00:52:24.47 ID:QpFH6/wA0

『ネタとして受け取ってください』

そう前置きした筈のひよりんは、
言葉とは裏腹に鋭い眼差しを携えている。
それだけに、

『後味が悪くなるかもしれない』

の一言が嫌に気に掛かってしまう。


――どうするべきだろうか?


1.話の続きを聞く。
2.話を切り上げることにする。

>>158

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/23(火) 00:56:07.89 ID:ic86onpp0



160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 01:18:27.04 ID:QpFH6/wA0

そうですか、それじゃあ続けさせて貰うッス。

長々と前置きをしましたが、実は夢にも様々な謂れ伝えがあるんですよね。
例えばエロゲ……っとと、購買部でこりゃ不味かった。
えーっと……一部の大人的ゲームの題材としても用いられている、サキュバスやインキュバス。
これらは人の夢の中へと化け出て、精気を奪っていくものとして伝えられています。
バクなんかも夢を食べるだとか云われてますし、他にも色々ありますが割愛させて頂くッス。

で、それらとは全く違う見解でオカルト地味てはいますが、
例えば他の世界を覗いている状態が夢だとか、誰かの意識と混ざり合った状態で見るのが夢だとか、
果ては、肉眼や感覚では捉え切れない何かを夢という形に変えて伝えてくれているとか……

まあ実に色々ですよ。
それで、突然話が変わるんですけど――


泉先輩、誰かからの怨みを買った憶えはありませんか?


いえ、大したことじゃないんです。
ただ、何かを打ちつけるような音と、目を覚ました時刻が午前3時丁度であるという点。
それから起きた直後に体が重かったという要素。

今どき古い話かもしれないッスけど、丑の刻参り……なんてものを直感しちゃいまして。

勿論、実際に藁人形をゴッスンゴッスンやっていると断定した訳じゃあないんです。
ただ、”怨みを買ったという本人さえ知りえない事実”が、または同等に値する誰かの”強い怨恨”が、
”夢という形”で先輩の元へと届けられている……

なんてことは考えられないのでしょうか?

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 01:32:38.84 ID:QpFH6/wA0

「なーんていうのは、私の勝手な真偽風説ごちゃ混ぜ理論によって導かれた答えッス」

早口で論説を捲し立てていたひよりんは、
極めて軽く締めくくると息を整えるように胸元を正していた。

「それ、何処から手に入れた知識なの?」
「えっと……何処でしょうかね?
 ソースは、おばあちゃんだったり書物だったり漫画だったりネットだったり人伝の噂だったり……
 明確には探れないかと思われます」

「そうなんだ」

根拠は無しとも有りとも言い切り難い。
いや、そもそも謂れなんてものが有る訳……

ないのだろうか?
バッサリと切り捨ててしまおうにも、腑に落ちない点が残ってしまい、それに躊躇してしまう。

「ま、小早川さんに泉先輩のことを聞かされた上で用意・脚色していたものですから、
 あまり気にし過ぎないで欲しいッス」

明るく笑った彼女は、丁寧なお辞儀を残すと、
人波がやや引いた購買部の中へと突っ込んでいった。

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 01:42:24.10 ID:QpFH6/wA0

昼休み/教室(3年B組)


つかさ「こなちゃん、おかえり」
かがみ「遅いわよーっ!」

こなた「ごめんごめーん、ちょっと話し込んでてさ」

つかさ「誰と……?」

こなた「ひよりんと」

かがみ「ふーん……で、何について?」

こなた「えっとね」


1.「他愛もない世間話だよ」 誤魔化した。
2.「実は、風説と謂れについて……」 正直に話した。
3.「ううん、別に大したことじゃなかったよ」 軽く受け流した。


>>166

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 01:46:39.90 ID:d+FNrl2L0

3

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 02:03:43.38 ID:QpFH6/wA0

「ううん、別に大したことじゃなかったよ」

軽く受け流すことにした。
すぐさま、かがみが口を開く。

「その割には、随分と熱心に話し込んでいたみたいだったけど?」

言い終わるなり、見せつけるように紙パックのコーヒー牛乳を啜っている。
それが意味するところは。

「あれ、かがみんも購買部に来てたの?」
「喉が渇いちゃったからよ」

それからトン、と机の上に置くなり指を突き出して、
「あんたは人の秘密を探りたがるくせに、自分の事は隠すのね」
「えっ……」
ああ、昨日の一件を根に持たれているのかな。
「いや、あのさ、本当にどうでもいい話だったから態々しなくてもいいかなと思ってそのさ……」

「くっくっく……」
「ん、かがみん?」
「あっはっは、ちょっと言ってみただけよ!」

ちくしょう。

「あんたって不意を衝かれると案外弱いのね。いい事を知れたわ」

ヒッヒッヒ、と魔女のように笑い狂うかがみんであった。

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 02:18:04.90 ID:QpFH6/wA0

放課後/教室(3年B組)

かがみ「うーい、それじゃあ帰るわよー」

こなた「あーい」
つかさ「ほーい」

かがみ「子供かお前等は……」

つかさ「うーんとね、わたしは思うんだけどさ」
こなた「どったんだい?」

つかさ「ゆきちゃんが居ないと、なんだかしっくり来ないよね」

かがみ「確かに何かが足りない心持があるわね」
こなた「そだね、なんかこうフォロー的なものがなくて棘しいというか……」
つかさ「お姉ちゃんが怖いというか……」

かがみ「うーるさい!」

こなた「……」
つかさ「……」
こなた&つかさ「……ね?」

かがみ「何が『ね?』よ」

こなた「みゆきさんなら、『まあまあ、かがみさんったらぁー』と窘めてくれるはず」
つかさ「優しく手篭めてくれるはず」

かがみ「なんか、みゆきが神格化されてないか?」

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 02:35:12.45 ID:QpFH6/wA0

下校/学園近郊


つかさ「最近、だいぶ日が短くなってきたよね」
かがみ「冬至までは、まだまだだけどね」

つかさ「でも、今だと18時過ぎくらいから暗くなっちゃうよね」
こなた「7月だと20時くらいまで明るかったような……?」

かがみ「逆に真冬だと、家に帰り付く頃には夕陽が射しているし……」

こなた「季節は順調に巡っているんだねぇ……」

つかさ「もう、3年生だしねぇ……」
かがみ「そうだねぇ……」


つかさ「第一回、こたつパーティ」

かがみ「却下」

こなた「第二回、掘りごたつパーティ」

かがみ「掘っても駄目」

つかさ「じゃあ、第十八回クリスマスパーティ」

かがみ「……悲しいけれど、却下する権限があたしにはないわ」
こなた「そう卑下しない卑下しない、需要はあるさ」
かがみ「うるさいっ……」

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 03:10:11.30 ID:QpFH6/wA0

下校/市街地・駅

かがみ「そういえば不意にどうでもいいことを思い出したんだけどさ、大禍時ってのがあってね」
つかさ「オーマガトキ?」

かがみ「こなたには悪いんだけどさ」
こなた「むお?」

かがみ「昼休みに購買部へ行った時、チラっとだけひよりちゃんの話が聞こえちゃって」
こなた「それで?」

かがみ「昔、耳にした怖い話というものを色々と思いだしたりしちゃったから」
こなた「実は、巫女衣装を着込むと霊能力に目覚――」
かがみ「ハイハイ、妄想おつ」

つかさ「それで?」

かがみ「具体的にそこにどんな話が絡んでいたのかは忘れたんだけど、
     その昔、草木も眠る夜というものは奇々や物の怪達の時間だと畏怖されていて、
     その変遷期間でもある夕暮れ時、つまり大禍時っていうのは、様々な厄災が降りかかるとかナントカカントカ……」

つかさ「うん、よく解んない」

かがみ「だから、どうでもいいことだって言ったでしょ?」
こなた「そういうのに、ムラサキカガミとかもあったよね」

かがみ「それは都市伝説だから、ちょっと違わない?」
こなた「でも、風説や謂れにも、確かなものがあるかもしれないよ? って、ひよりんの受け売りだけど」

かがみ「謂れねぇ……」

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 03:19:32.26 ID:QpFH6/wA0

かがみ「正直、信じちゃいないんだけどねそういうの」

こなた「本当に?」

かがみ「うん、本当に」

こなた「そう、だったら――」


1.「それでいいと思うよ、あくまで噂だろうからね」

2.「確かめてみない? この眼で実際に」


>>‎これ以降で多かったほうに分岐

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 03:20:26.45 ID:kjlDOS7q0



180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 03:22:41.51 ID:gXr363ALO

乙。2。

182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 03:36:55.45 ID:c81s+O/KO

1乙。安価は2

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 04:19:54.36 ID:13UoyUyA0



185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 04:51:27.21 ID:RQEN5a3bO

ほ2

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 05:52:32.23 ID:9uWVTgUc0

保守 2
俺ももう寝る 起きたら続きがうpされてることを願おう・・・

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 06:07:46.29 ID:yY8vqGX+O

ほ2

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 06:08:38.59 ID:UfWV4O5J0

1

190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 06:09:48.31 ID:Hiieo7FIO

2

191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 06:18:30.39 ID:M2QyB2c0O

1かなぁ
もっと日常の中に潜む混沌な感じがみたい

192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 06:22:44.85 ID:xOeSZMSB0

1

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 06:23:04.87 ID:d+FNrl2L0

どっちも見たいけど2

196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 09:08:39.32 ID:ZdLYurZlO



197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 09:40:51.28 ID:YEYCm/OVO

2

199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/23(火) 10:28:48.13 ID:Vs5Lm/vi0

1

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[朝起きてもスレが残ってますように] 投稿日:2008/09/23(火) 10:47:08.34 ID:ic86onpp0

今沖田保守
安価は2

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 13:05:15.00 ID:ZdLYurZlO

ぬるほっしゅ!!



206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 14:03:24.36 ID:xOeSZMSB0

1−!早く来てクレー!

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 15:20:58.57 ID:QpFH6/wA0

保守感謝
選択肢は2からということで続けていこうと思います

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 15:23:34.49 ID:QpFH6/wA0

「そう、だったら確かめてみない? この眼で実際に」

好奇心も当然ながらにあった。
けれどもそれ以上に、私自身の考えを頭ごなしに否定された事へ対する不満が、この提案を行う決定打となったのだ。

「実際に確かめるって、どういう意味?」
「だから確かめるのだよ、この眼で」

かがみが固まっていると、その隙を衝く様に、つかさが横やりを入れた。

「えっと、それって実際に怖い場所へ行くってこと……?」
「うむ!」
「えー……」

ホラー映画すらも苦手とするらしい彼女は、反対票を呻きに変えて投じたようだ。
さてさて妹が困る、ともなれば姉の出番到来のはず。

「ほら、つかさもこう言っていることだし――」
「かがみはどう思うの?」
「え、別にあたしは……」
「かがみは怖いの? 怖くないの?」

かがみの性格を曲がりなりとも把握している私にとって、彼女がこの後どういう決断に至るかは手に取るように判る。
それに前後の遣り取りから考えても、今さら『行かない』という手は打てない詰み状態。
つまりこの質問は、単にかがみへ意地悪をしてみたいような、という衝動に駆られた上でのものなのだ。
以上の思惑により私が内心での含み笑いを堪えていると、ようやくにして、かがみが結論を下した。

「あたしが怖がるわけないでしょ?」

その言葉や態度とは相容れないほどに、弱々しい声で。

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 15:44:06.74 ID:QpFH6/wA0

「決まりだね! それじゃあ心霊スポット突撃隊、略してSST団と、」
「ちょっと待ってよ、あたしはその……」
「やっぱり、かがみんはお姉ちゃんだけあって強いんだね!」
「ぐっ……」

囲め囲め。
獲物が逃げだせないように。

「かがみんの、ちょっと良いとこ見てみたい」

折った指を下唇にあて、何やら真剣な表情のかがみん。
大方、頭脳をフル回転させて”湧いて出た急用”でも探っているのだろうな。
ともならば有無を言わさず話を纏めるに限る。

「じゃ、今夜早速、記念すべき一回目の探索という方向で」
「うぅ……あ、あのさ、そんなに急に決めちゃっても目的地なんかがまだでしょ?」

そりゃー御尤もな意見だね。

「それにさ、折角行くならみゆきも一緒に……ね?」

どうやら巻き添えを増やして、自分一人に圧しかかる重みを減らそうという魂胆らしい。
そこには、さり気無く日程を後回しにして私が飽きるのを待つ、という浅ましい算段も見受けられるし。
まあいいさ、どっちみち今日は木曜日だから。
要するに、今日やるよりは休日を翌日へと控えた、金曜夜に行う方がより脳j密な時間を過ごせる筈。

「うん、それじゃあ”良さげな場所”を頑張って探してくるね!」

良さげな場所にアクセントと皮肉を込めて、それを別れの挨拶とした。

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 16:02:02.36 ID:QpFH6/wA0

夕刻/自宅(居間)


「おかえり、ゆーちゃん」

私にやや遅れて帰宅した彼女に声を掛ける。

「突然で悪いんだけどさ、怖い話だとか心霊スポットだとかは知らない?」
「しんれースポット?」

聴き慣れない為か、妙なイントネーション。
ふと、訛り過ぎて日本語なのに聞き取れない、という地方住まいの御老体方を思い起こす。

なんて私の思考が逸れている間に、ゆーちゃんが首を捻った。

「わかんない、かなぁ。叔父さんに訊ねたり、インターネットで調べたりするほうがいいのかも?」
「そっかい、ありがとね」


その後は私が夕食当番を担い、普段通りにくつろぎの一時を過ごしていった。
特に滞りもなく、変わりもなく。
ただ、お父さんは相変わらず帰ってはこなったようだけど。

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 16:20:27.53 ID:QpFH6/wA0

夜中/自宅(自室)


”心霊スポット” と ”私が住む県名” で検索を行ってみたが、
期待した結果と情報は得られなかった。
確かにそれらしいものが出てきはするが、すべてが何処となく胡散臭い。
それが結論となったのだ。

ならばいっそ逆転の発想で、胡散臭い男ナンバー1を頼ろうと思い、こうして電話を掛けた訳だ。

「あ、お父さん?」
『なんだー、どうしたー?』
「って、やけに余裕そうな声色なんだね。編集の人にしょっ引かれたんじゃなかったの?」
『しょっ引かれるっておまっ……』
「まあ、無事ならいいや」
『勝手に大事にはしないでくれよー』
「合点承知之介ってんだい」

お父さんの現状も気にはなるが、それはこの際置いておこう。
そして本題へと入ることにした。

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 16:28:45.23 ID:QpFH6/wA0

うーむ、心霊関連ねぇ……。
ちょっと待ってろよ、小説家のボキャブラリーの広さというのを見せつけてやるからな。

えっーと……あーっと……
ほむーっと……

え、早くしろ?
焦らない焦らない、一休み一休み。
おいおい切るなって、一日ぶりの娘との会話くらい楽しませてくれよ!
あ、要らない?
そうか……こうやって娘は親から遠くなっていくんだな……。

わかった、わかったから切らないでくれっ!
よし、それじゃあ始めるぞ。

語り部、泉そうじろうイキマース。

222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 16:46:31.52 ID:QpFH6/wA0

ほら、学校っていうとさ、新校舎があって旧校舎があるだろう?
あ、陵桜には無いんだっけ。
そうか……諸行無常というものを感じちゃうなぁ。
古い校舎の耐久性が疑問視されてからは、全国各地で取り壊されたもんなぁ。

まあいい。
兎も角、俺の生きていた時代には戦前戦後の産物である旧校舎と、
新しい時代へ向けて建てられた新校舎とが混在しているケースが常識だったんだ。

で、旧校舎な。
これがまた不気味なんだよなぁ……。

223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 16:48:54.16 ID:QpFH6/wA0

新校舎はコンクリート製なので、その無機質さと物質的な感覚というものがありありと伝わってくるんだが、
木造建築の産物である旧校舎は、それとは真逆の性質を持ち得ているというかなんというか。
そうだ、言うなれば不気味な意味での温かみがあるんだよ。
しかもこれがまた古いせいか、板張りの床上を歩くだけで軋む軋む。
さらには扉を開ければ悲鳴のような音が出るし、使われていない教室が多いせいか廊下の蛍光灯すら不備だったりな。

なにより無人なんだよ。
豊富な機能が揃った新製品が出来てしまえば、それに劣る旧製品には用途がなくなるからな。
そうやって大抵のモノは捨てられていく。
だが、それなのに旧校舎は何故か取り壊されない。

不思議だろ?

古いモノには魂が宿るだとか、或いは単に地元の卒業生達の願いによって残されているだけなのか。
そこらへんまでは知りえないけどな。

で、そういう旧校舎には大抵あるんだよ。
怪談ってやつがな。

そしてここで話すのも、その中でのポピュラーな話。
”大鏡”に纏わる謂れだ。

225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 17:12:34.41 ID:QpFH6/wA0

ふと思ったんだが、なんで旧校舎ってやつには”大鏡”があるんだろうな。
それも大抵が長い長い廊下の先にあるし、その隣には階段があるという造りになっている。

不確かだが、風水だとかが関係してるんだっけ?
まあ、それもこの際はいいか。

それでその大鏡なんだけどな、無駄にでかいんだよ。
学生時代の逞しかった俺でさえ、その中にすっぽりと全身を収められてしまうくらいにな。
それ故に気味が悪いんだ。

遠くから一瞥すると、遥か続く廊下が、まるでその鏡の中にまで続いているように見えるんだから。
しかも自分自身の姿まで米粒の用に小さく映り込んだりしている。

まるで、鏡の中には別の世界があるかのように、だ。

もしかすると鏡の中に居るのは”自分と良く似た他人”で、
ちょっと目を離した隙に欠伸なんかしてたり……なんてな。

恐らくそこらへんの関係なんだと思う。様々な話が生まれてくるのは。
少しだけ予備知識を述べておこうか。

ちらっと先にも言ったけど、風水なんかの占いにおいても鏡は重要な位置に備えられる。
特に、向けてはならない方向へは向けないように、という点でな。
それから、呪術や一部の祭事においても様々な用途で扱われる場合が多い。
結果的には魔性が宿るとも神性が宿るとも云われるが、要は何らかの力が感じられるとのことらしい。
現に、神社なんかじゃあ今も御神体として鏡が祭られていたりするしな。

ま、他にも鏡と鏡の間は死者の通り道だとか、魔物の正体を暴きだす力があるなんてのもあるが。
それじゃあ、長々と前置きをしたところで話を戻そうか。

227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 18:02:04.13 ID:QpFH6/wA0

昔々ある所に、実にカッコイイそうじろうという学生が居りました。
その彼の隣から片時も離れない、かなたという女生徒は、そうじろうの幼馴染で……え、早く進めろって?
くそっ、若き日の肝試しの思い出でも語ろうとしたのに。

えっとな、それじゃあ適当にいくぞ。
これはうちの学校に伝わっていた噂で、その当時の俺の先輩から聞かされた話だ。


学校にはかつて、Kという生徒が居た。
もちろん、俺は実際に会ったことも無いし実在したのか調べたこともない。
怪談とは得てしてそういうものだと思っているしな。

で、それと並行するように噂があったんだよ。
午前3時に旧校舎の鏡を覗くと、何かが映り込むっていう噂がな。
3時というのは草木も眠る丑三つ時の尻に当たる。
即ち、夕刻から騒ぎ出した目には見えない”何か”が、最も強い力を得る時間帯だ。
逆に日が昇ると、それらの”何か”は息を顰め、日常が返ってくることになるってな。
どうやら夜の怪異は、日が昇るまでがリミットって訳らしい。

それでだ。朧げな俺の記憶によれば、鏡を見る際にも色々と細かな準備が要ったはずだ。

カミソリを咥えながら……は将来の結婚相手を見通す方法だから違ったか?
呪文を3回唱えながら……は相手を呪う場合だっけ?
えーと、そうだなぁ。
あ、そうだ!

確か、午前3時までは鏡に背を向けて立ち、3時丁度になったら振り返る……だったか?

そうだそうだ、自身はないけどな。でな、そうするとだな、映り込むんだよ。
そこには居ない筈の人間がだな、何も言わずに青白い顔で隣にな。

228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 18:03:44.62 ID:QpFH6/wA0

……え? これで終わりかって?
そうだけど……な、怖くない?

俺や当時の生徒達はそれなりに震えていた記憶があるんだがな。

ああ成るほど。
何分、古い話だから今の恐怖耐性が付いた子供達には効果が無いのか。
或いは、俺に語り部としての能力が欠落しているのか。
……悲しいねぇ。

ん、Kがどうなったかって?
そこがこの話一番の不思議なんだが、結末が無いんだよ。

まるでKが最初から存在しなかったかのように、後半からは一切触れられてはいないんだ。
だが、Kが鏡の怪を確かめに行ったという件だけは誰もが一様に語っている。

何故なんだろうな?

そもそも、結末が無いような話を、俺はなんで知っているんだ?
だってそんな穴だらけの設定だと、当時に必ず疑問を持ったはずだろう?

……あ! ごめんなさい、今行きますから!

すまん、こなた。
呼ばれたんで切るぞ。

なんだか解らないが、お父さんが居ない間も体には気をつけろよ。
ゆーちゃんにも伝えておいてくれ。
じゃあ、またな!

230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 18:16:46.40 ID:QpFH6/wA0

「うん、お父さんこそ身体にゃ大事にしてよ。じゃあ、おやすみ」

ツー、ツーという単調な電信音。
今まで喚き散らしていた声が消えた途端、無音だった室内の寂しさがより際立ってくる。

結局のところだ。
お父さんの話は三流以下だったわけだ。

けれども、旧校舎と大鏡という二つのキーワード。
これには思わず指を鳴らしてしまう程に魅力を感じた。

大方、今の時勢では旧校舎は廃校舎へと変貌を遂げているだろう。
そこにある鏡を真夜中に確かめに行く。
これ以上のシチュエーションは中々お目にかかれないのではないか?

やると思った時、既に行動は終了していた。
検索ワードを校舎や旧校舎、校舎跡などに変えるだけで手頃なものが引っかかったのだ。

それらから場所や雰囲気など一通りの状況を確認しつつ、最も良さげな一件へと絞り込んでいく。
やがて、割と近場の山奥に在るという一つの建物へと絞ることが出来た。

「さーて、かがみんの驚く顔が見れるかもしれませんなぁ」

一連の作業を終えた私は、満足のうちに眠りにつくことにした。

233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 18:25:17.37 ID:QpFH6/wA0

不明/不明


コーン……

その音が鳴り響いた時、
私はまた夢の中に居るのだと悟った。

昨日と同じ位置、昨日と同じ音程、昨日と同じ音色。

だが少しだけ違うのは、そのテンポ。

コーン……コーン…………コーン……

1拍目2拍目を打ち、3拍目で休符しての4拍目。
4分の4拍子のリズム。
それは音楽というにはあまりにも粗末ではあるが、確かなリズムを刻んでいる。

不可思議にも、それが言葉のようにも聴こえてしまう。
まるで、私に何かを伝えるように打ち鳴らしているのだと、漠然に。

それにしてもこの音はなんなのだろうか?
どうやれば、それを視る事が出来るのか?


どうやれば――

234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 18:39:19.34 ID:QpFH6/wA0

未明/自宅(自室)


コーン。

目が開いた。
薄暗いなかに浮かび上がっているのは、やはり天井。

即座に身を起して見回す。何の変哲も無い私の部屋。
パソコンがあって、雑多に積まれた雑誌の山があって、それらを豆電球が仄かに照らしている。
カーテン越しの風景も例によって真っ暗なまま。
窺うまでも無く外が闇に包まれていることがわかる。
恐らく、現在時刻は午前3時の筈だと頭元の時計を見ずに理解した。

昨日と全く同じ状況。
ただし、昨日とは一つだけ異なる点がある。
私が取っている行動だ。

今私は、自室に置かれた姿見を睨んでいる。
毎朝登校する前や出掛ける際、身だしなみを正す為に用いている鏡。
それをじっと睨んでいる。

何故か?

目が覚める瞬間、音がそこから聴こえて来たような気がしたからだ。
これは夢を見るという予感があったから取れた行動だとも言える。

じっと睨む……。
しかし寝床からの角度では、そこに反射して映っているのは壁だけだ。
ならば、少し近づいて調べてみようか?

235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 18:42:05.73 ID:QpFH6/wA0

私が取った行動は――


1.鏡の前に立つ。

2.その場から窺う。

3.調べずに寝る。


>>237

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 18:43:54.72 ID:13UoyUyA0



239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 18:57:39.11 ID:QpFH6/wA0

――泉先輩、誰かからの怨みを買った憶えはありませんか?


不意に、ひよりんの言葉が蘇って来た。
怨み……どうだろうか。
けれども、私は強い怨みを買うような真似をした覚えは無い。
それに不鮮明だけど、あの音がそこまで嫌なものには聴こえなかった。

というのは、自分が良いように解釈しているだけなんだろうか。

そういえば耳にした事がある。
人間の感情における愛や憎悪は、元々同じ感情なのだと。
可愛さ余って憎さ百倍。
喜びも時としては他人への追い打ちとなるし、
逆に誰かの不幸による悲しみが、他の誰かへ密味の幸福を齎すこともある。

陰と陽、真逆にあって対を成す。

「よくは解らないけれど……」

誰かが私に何かの想いを伝えようとしている。
漠然とそんな気がする。

だから私は、誘われるまま鏡の前へと立つことに決めた。

244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 19:18:18.98 ID:QpFH6/wA0

部屋の電灯は点けなかった。
点けてはならない気がしたから。

冷たい床に足を降ろす。
自然と忍び足になり、鏡の前へと立つ。
暗がりの中にぼんやりと浮かび上がった自身の顔。
橙の豆電灯に照らされ、儚い光のあたる顔半分だけに表情が表れている。

物理的に考えれば、特に不可思議な点や不自然は点などは見受けられない。

しかし、ただ一つだけ。
鏡の中に浮かび上がった自身の顔が、今にも泣き叫びそうな程に歪んでいた。

何かを言いたげで、しかし口を開かずに微動だにすらしない。
いや、少し違う。
光を反射するという性質を忠実に守らされているが故に、
叫びたくとも動きたくとも身動きが全く取れずに縛られた状態。

何かを伝えようとしているのに、それを阻まれている。
そう感じ取れた。

「何が、言いたいの?」

鏡の中の私への問い掛け。
答えは返ってこない。
無言のまま、歪んだ顔のまま。

そして、私が瞬きをした瞬間。

目の前に浮かんでいたのは、無表情で立っている私自身だった。

246 名前:2日目のメモ[] 投稿日:2008/09/23(火) 19:27:02.87 ID:QpFH6/wA0

【行動履歴】

不明/不明
→”打ちつける音”を聞いた。

朝/居間 − ゆーちゃんとの会話
→「夢について訊ねる」 → 田村ひよりの話を聞く

二時間目の中休み/教室(3年B組) − みゆきさんについて
→「案外、昨日私が言った言葉でフラグが立っちゃってたりして……」
→「キョン役はかがみんに任せるから」
→世界が思い通りになるのって辛そうだとは思わない? 「思わない」

昼休み/購買部 − 田村ひより
→「夢について訊ねる」
→「これ以上は聞かない方が……」 に”深入り”した。

昼休み/購買部 − 柊かがみ
→ひよりとは何の話を? 「大した話じゃない」 と受け流した。

未明/自宅(自室) − 鏡
→目を覚まし、「鏡の前に立った」


【世界観】 日常……?
【 変 革 】 何やら不穏な空気が漂っている。
【 メ モ 】 夢の話、ひよりんの話、数々の怪異の話、鏡の私……関連性はあるのだろうか?

260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 20:48:25.71 ID:QpFH6/wA0

その日、私はいつもより早めに登校した。
起きぬけのゆーちゃんは驚いた表情を顔に出さないようにしていたようで、
パタパタと小さな動きのまま玄関先で見送ってくれた。

空いた電車が物珍しい。
悠々と席に着けるというのも、今までの日常の中にあった筈なのに新鮮な空気を醸していた。

なんとなくだけれど、早く皆と会いたい。

その想いに駆られ、遅刻するでもないのに早歩きで登校路を上って行く。

やがて校門を潜って屋内へ。
玄関、階段、廊下。
その何れにも人が見当たらないということが、今の時刻を指し示している。

そして3年B組の教室。

その扉をに手を添える瞬間になって、
早めに登校しても皆が居なければ意味がないのでは?
ということに気が付き、苦笑いが零れた。

けれども来てしまったからには仕様がない。

静に満たされた校内の理を乱さぬよう、私は扉を滑らせていった。

262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 21:06:00.12 ID:QpFH6/wA0

朝/教室(3年B組)


「おはようございます、泉さん」
「おっ……はよう」

驚きから挨拶への合わせ技。
なんとも間抜けな声を出しちゃったよ。

教室の中に居たのは、みゆきさんただ一人。
どうやら、瓶に活けられた花を眺めていたらしい。

「えらく早いんだね」
「いえ、わたくしは普段とそう変わりはありませんよ」

柔和な微笑み。
一日ぶりに目にしたその笑顔は、人を癒す効果があるらしいのだと再び実感できた。
やはりこの人はこうでなくちゃね。
ところで、

「みゆきさん、心霊ツアーのことは御存知?」

かがみから連絡が入ってれば重ねることになってしまう。
そう判断して私が問いかけたのだけど。

彼女は笑顔を曇らせていた。

263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 21:16:35.86 ID:QpFH6/wA0

「どうしたの?」
「実は……昨日、いえ、一昨日の深夜から始まったことなのですが」

その切り口だけで直感した。

「もしかして、変な夢を見なかった?」
「え、どうしてその事を?」

思った通りだ。

「いや、私も夢を見ちゃったから」
「そうなんですか……」

心底驚いたような溜息。
が、ここで口を塞がれては大切なピースを落としかねない。

「よかったら、なるたけ詳細に訊かせて貰えないかな?」

嫌な出来事だったのか、みゆきさんは俯いてしまった。
暫く見守ってみる。
やがて彼女は口を真一に結ぶと、

「はい、わかりました」

怪を打ち払うほどに真っ直ぐな瞳を携え、
淡々と語り始めていった。

267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 21:36:21.67 ID:QpFH6/wA0

わたくしが昨日、学校をお休みしたことは御存知だと思います。
はい、そうです。先生方と副委員長には風邪だと伝えておきましたので。

……仕方のないことだったんです。
その、得体の知れない夢を見たので休む、とはとても言えませんので。

その通りです。わたくしがお休みを戴いた本当の理由は、その夢にあります。
いえ、夢……なのでしょうか?

その日、要するには二日前のことです。
わたくしは23時を廻っていたのを確認したあと、床に就きました。
そこまでは普段と少しも違わなかったはずです。
ですが、ふと気が付けば、奇妙な音が聴こえて来たんです。
何度も何度も、何度も何度も……

真っ暗な中で、ただ音だけが聴こえて来たんです。

激しく、叩きつけるような音。
それが何なのかは知る由もありませんでした。
けれども怖くて怖くて……
そして瞬目のあと、いつもと変わらないわたくしの部屋を見回していました。
ようやくして我に返った時、それが夢であることに初めて気が付いたのです。

ですが、無性に鏡が気になったというのでしょうか。
何故かそれを確かめなければならないという気にさせられたのです。

やがて、恐怖よりも上回った好奇……
いえ、変だとは思いますが、正確には使命感に似た感覚を覚えて……

わたくしは、鏡を調べる事にしました。

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 21:56:24.33 ID:QpFH6/wA0

わたくしの部屋にある鏡は、
横60センチ、縦40センチ程度の横長い置き鏡です。
それが棚の上にあるのですが。
部屋はというと薄暗いままでした。
わたくしは蛍光灯の一番小さな明かりだけを点けて眠るのですが、
その日も習慣に倣うようにしていたのだと思います。

やがて薄暗い中を歩き、静かに鏡を覗き込んだとき。

そこに映っていたのは、酷く疲れた顔をした自分自身でした。
同時に、泣きそうなのを堪えるように口を固く結び、
ただじっとこちらを窺っていたのです。

混乱しました。何故、自分がそういう顔をしているのかと。
思った時には、声をあげていました。
しかし鏡の中のわたくしは、僅かな動作すらも表さなかったのです。

だから、わかったんです。

鏡にわたくしが映っているのではなく、
鏡の中に別のわたくしが居るのではないのでしょうか、と。

何かを伝えようとしている。

そんな気がしました。
けれどもそのまま、長らくに感じる時間の中で睨み合っていたのに……

ふっと、ある瞬間にわたくし自身の姿へと変わっていたんです。
それでもそのまま様子を窺い続けたのですが……、
それ以降には、もう何の変化は見受けられませんでした。

271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 22:13:40.19 ID:QpFH6/wA0

「お恥ずかしながら、怪談の類いは苦手としておりまして……」
「それで休んじゃった?」
「はい。早合点かもしれないのですが、
 気疲れを示すサインなのかもしれないとも思えましたので、大事を取って……」

みゆきさんは一通りの事を話し終えると、力が抜けたように重い溜息をついていた。

「細かい部分は違うけど、私と殆ど同じ現象のようだね」
「泉さん同じような夢を?」
「うん、一日目は音だけ夢で目が覚めて、二日目はみゆきさんと以下同文」
「そうなんですか……」

一体、どういうことなんだろうか。
同じ夢、或いは夢ではない何かを二人同時に体験している。
まさか偶然、などという言葉で片付けられるほどに私は楽観的な人間ではない。

「なんとも言えないけど、何か気に掛かった点があったら教えてね」
「わかりました」

朝早くの学校。
本来ならば爽やかな空気のはずである。
しかし今日に至っては、それが禍しい渦を巻いているかのように錯覚を覚えた。

272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 22:24:01.44 ID:QpFH6/wA0

朝/教室(3年B組)


私とみゆきさんは、そのまま暫く互いのことを伝え合っていた。
そうしている間に登校してきた生徒達で、教室は次第に活気を帯び始めていき、
やがて柊姉妹も顔を揃えて姿を現した。

「おはよう、こなた」
「おはよーこなちゃん」

二人相手に、こちらも二人で挨拶を返す。
それが済んだ私は、次にどうするべきかを考えた。


1.心霊ツアーを中止にしようと提案する

2.夢について訊ねる


>>273-277 (多数決)

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 22:24:46.12 ID:APP1YrJtO

2だな

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 22:24:58.84 ID:13UoyUyA0



275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 22:29:57.72 ID:PzYG9xSXO

敢えて1

276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/23(火) 22:30:22.92 ID:MdPQtmKI0

2

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 22:35:16.64 ID:ic86onpp0

もう決まったろ2

279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 22:50:13.87 ID:QpFH6/wA0

「あのさ、二人は変な夢とかを見なかった?」

夢?

と、二人は同音で呟いたものの、その反応は異なっていた。
何の事だか解らない、という風に眉を潜めたかがみ。
対して、思い当たる節があるかのように小首を傾げたつかさ。

「例えばその、変な音が聴こえた、とでもいうのでしょうか?」

みゆきさんが二の句を継ぐ。
二人は一頻り考え込み、その口火を切ったのはかがみだった。

「あたしは別に何も?」
凛とした声での素知らぬ回答。
となると、三人の視線が自然につかさへと集まる。

「え、えっとぉ……」

曖昧な躊躇。
そして、つかさは遠慮するように続けた。

「何か見たような気もするけど、わたしはぐっすり眠ってたから……」
「なんでもいいから言ってみて」

私の言葉を受けて再び考え込んだつかさは、

「そのぉ……思いだしたら言うね」

やはり戸惑いよろしく締めくくってしまった。

280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 23:04:32.29 ID:QpFH6/wA0

放課後/教室(3年B組)


「で、本当に行くの?」

かがみが確認するように強めの口調で言った。
そこからは、”出来れば行きたくない”という感情が露呈している。

「もち。やると決めたらやるべきなのだよ」

そう言いつつ私は鞄から資料を取り出す。
昨日インターネットで調べ上げた近場の廃校舎。
それに関する地図一枚と、簡素な写真や外観などが記入されている数枚の紙切れだ。

「うっわ、いかにもって感じじゃないの」
「まあ、そう思えるのをチョイスしたから当然だよ」

こじんまりとした木造校舎。
端から端まで走り抜けるのに、20秒も掛からないほどの規模。
長らく人の手を離れ朽ち続けていたであろうそれは、
正に人外のモノ共が巣食う為に造られたと断言しても、過言ではないだろう。

「で、午前3時までに鏡の前まで行くから」

私の言葉で一同、それぞれが顔を見合わせていた。
変な話ではあるが、もしかすると、その顔を見合わせている中には私自身も含まれているのかもしれない。


正直、わからないのだ。
自分が何故、こうまでして心霊ツアーに拘るのかが。

282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 23:24:39.98 ID:QpFH6/wA0

下校/学園近郊


「手筈は飲み込めたかな?」

教室で行った説明を確認する。
呼応して、皆がそれぞれの返答と頷き。
どうやら皆は了承と理解を示してくれたようだ。

手筈とは以下の通りだ。

・各々が一旦家に帰る。
・私を除く3名は、『私の家へ宿泊する』という旨を伝える。
・午前零時過ぎ、ゆい姉さんに頼んで目的地まで運んで貰う。
・帰りは自力で。

実にシンプルで不備があるようにも思えるが、特に切り崩されるほどの問題はないだろう。
幸いだったのは、意外にも門限に厳しい我が父が不在であるということ。

ゆい姉さんには『青春の1ページ』だとか、
以前に売った恩やらを適当に捏造すれば十分である。

帰りまでは迎えを頼めそうに無いので自力ではあるが、
翌日が休日であることと、朝になれば交通の便が動き出すことを考慮すればどうとでもなる。

「じゃあ、そういうことでよろしゅう」

再びの合点が返ってきた。

284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/23(火) 23:41:56.97 ID:QpFH6/wA0

下校/市街地・駅


長らく教室に残ったいたせいで、辺りに降り注いでいる光の具合にも赤みが出てきている。
その中を並ぶように歩いていた時、かがみが独白のように呟いていた。

「しっかしさ、やっぱり四人だと落ち着くわよね」

私はその様子を眺めるに留めておいた。

「昨日はゆきちゃんが休んじゃったから、寂しかったもんね」
「すみません」

笑うように謝意を表したみゆきさんに、かがみが続く。

「でも、まさかみゆきが夢に驚いて休んじゃうとはね」

からかうように笑う、かがみだけが夢の欠片も目撃してはいない。
その事が幸とでるか不幸とでるか。
いや、もし体験していたら欠席者が一人増えただけかもしれないので、きっと幸運なのだろうな。

「残り少ない高校生活だし、たまにはこういうのもいいのかもねっ!」

駅の岐路に立つと同時に、かがみが締めに入った。
何も言わない皆も、きっと同様の面持ちなんだろうな。

やがて、みゆきさんは柔和に手を振りつつ、人波の中へと流されていった。

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 00:02:17.06 ID:i6Q700or0

晩/自宅(玄関先)

「ゴミ出しゴミ出し……っと」

ドサリ、と地面に袋を置いたのと同じくして、

「こなちゃーん!」

という間延びた声で呼びかけられた。
振り向くと、それぞれのセンスで私服に身を包んだ、かがみ、つかさ、みゆきさんの三人のようだ。
駅から近い柊家の面々が、みゆきさんを迎えてからやって来たとのことらしい。

しかし、廃墟へ行くというのにスカートを着込むとは、流石だなみゆきさん。

「すっかり日が落ちてしまいましたね」

20時を廻った程度。
とはいえ、冬に近いこの季節ではもうすっかり暮れずんでいる。
辺りを照らすのは日の光では無く、闇夜を照らす月の光と街灯によってだ。

さてと、

「それではSST団発足を記念して、スキヤキを用意してみました」
「そのネタ、まだ引っ張っていたのか」

すぐさまのツッコミ。

「でも、スキヤキはナイスっ!」

後日、かがみの体重ネタが増えるのを内心喜ぶことにした。

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 00:16:01.17 ID:i6Q700or0

晩/自宅(居間)


「どんどん食べなよ」

かがみの皿へ重点的に肉を集める。
その調子その調子……ふふふ。

「ちょっと待て、自分で取るからお前は座ってろ」
「いーからいーから」
「良くない! なにかしらの企みあっての行動だとしか思えないわね」

私とかがみが必死の攻防を繰り広げている脇で、

「糸こんにゃく要らないの? わたし、全部食べちゃうよ?」

つかさが有りっ丈のこんにゃくを掻っ攫い、

「あの、高良先輩。みなみちゃんとは、どんなお話をしているんですか?」
「えっとですねー」

歩く萌え要素二人組は和やかに談笑に華を咲かせている。

バラバラであって、その実まとまってもいる。
そんな印象の晩餐は、実に一時間近くにも及んだ。

289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 00:18:07.83 ID:i6Q700or0

そしてこれが最後の晩餐となろうとは、
この時誰しもが予想だにしていなかった……


というのは冗談です
夕食を抜いてお腹空いたんで、俺も少し食べきます

302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 01:58:21.46 ID:i6Q700or0

夜中/自宅(キッチン)


片付けを買って出た私とつかさが洗い物をしていると、
「ねぇ、こなちゃん」
意外に思えるほどに手際良く皿を捌きながら、つかさが語りかけて来た。

「どうしたの?」
「夢の話、思い出したよ」

思わず皿を取り落としそうになった。
つい先程までの和んだムードとは余りにも相反する話題を振られたためだ。
しかし訊かない訳にはいかない。
すぐさま思考を切り替え、訊ねる。

「どうだった?」
「思いだしたってほどでもないんだけど。わたし、夢の中で紙人形を見た気がするんだ」
「紙人形?」
「わたしの家の神棚に飾ってあるのが見えて、その時にふと思い出したから、ついでに持って来たの。
 それは形代だとか、ヒトガタだとか呼ばれるものらしくて、祭事の時に使われるものだってお父さんに教えられたことがあったかな。
 えっと、わたしは良く知らないけど、お姉ちゃんに聞けばもう少し詳しく話して貰えるかも。
 それに、人形もお姉ちゃんに渡しちゃったしね」

ふふっ、と彼女が少しだけ自慢げに笑っているように見えた。

神道に仕える者の娘、か。
改めて考えてみると、稀有な存在なのかもしれない。

304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 02:14:07.73 ID:i6Q700or0

――こなちゃんに夢のことを言われてから、ずっと考え続けてて。
   だから気付けたんだと思うな。
   あ、残りの洗い物はわたしがやっておくからいいよ。
   お姉ちゃん、ああ見えて結構怖がりだからね。
   話を聞くついでに一緒に居てあげれば、わたしとしても助かるよ。


そんな言葉で一方的にキッチンを押し出されてしまい、
手持無沙汰となったので仕方なく居間へと向かう。

途端、

「ここでスマッシューッ!」

かがみの熱烈な叫び声と共に、
多人数乱闘ゲームから歓声があがっていた。

何処をどう曲解すれば怖がりなんだろうか?

それに、ゆーちゃんやみゆきさん。
その両名相手に本気の熱を上げるのは中々に大人げない。
野球のスコアに言い換えれば、既にコールドゲーム級の差がついている。

取り敢えず間に割って入り、手近の棚からパズルゲームの類いを引き抜くと、
それを萌え要素二人組に手渡してから、かがみだけを呼び付けた。

305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 02:31:19.06 ID:i6Q700or0

夜中/自宅(1階廊下)


「ヒトガタ? ああ、これね」

そう言ってポケットから取り出した。
かがみの拡げた掌に、十分収まるほどのサイズ。
大方、上等な和紙で出来ているのだろうか。
純白の中にも緻密な繊維網が見て取れ、硬く丈夫であることが傍目にでも伝わってくる。

これが夢とどう関連するのだろうか?

解明を求め、つかさからの流れを、ざっと説明した。
一応、怖がり云々の部分は互いの為にもぼかしておいたけどね。

「あーそう、つかさがねぇ。だったら解った、あたしが知っている範囲で教えてあげる」

親指と人差し指に挟んで、ヒラリヒラリ揺らしながら。
かがみは丁寧に説明を始めて行った。

308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 02:54:33.49 ID:i6Q700or0

ヒトガタ。
漢字に直せば、人形。
そこには”人を模した形を持つ”という意味合いも含まれているわ。

もうピンと来たんじゃない?
そう、今現在では愛玩用具とされる人形。
それの起源がヒトガタってことなの。
解り易く説明する為にも、よくある”謂れ”を出しましょうか。
例えば、こんなことを耳にした事はない?

人形には命が宿る。
髪が伸びる、模型が走る、勝手に動き出す、喋る、挙句には憑かれる。
他にも、藁人形に五寸釘を打ちつけ、相手を呪う。
逆に事故を間一髪で免れた際、身代わりとして人形の首が飛んだ……

などなどね。
人形にこれだけの風説が生まれるのには、根本的な部分に原因があるのよ。

だって元々このヒトガタは、実際の祭事に用いられているんだから。

昔では相手を呪う為の触媒として用いられた事もあったらしいし、
逆に降りかかる厄災を払う為の身代わりとしても用いられていたの。

お武家人形や雛人形にもその意味合いが含まれているのよ、知ってた?

要するに、ヒトの形を模したものには強い力が宿るからね。
つまるところ、あたしが今持っている”コレ”は、それの元祖ってところかしら。

あ、そうそう。人形を虐めたり仕舞いこんだりしては駄目よ?
いつか命を持ったその子らに、寝首を掻かれちゃったり……なんてね、ふふ。

311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 03:06:12.22 ID:i6Q700or0

「それにしてもこのかがみ、ノリノリである」
「ちっ……人が折角説明してあげたってのに、何よその態度は」
「冗談冗談、マイケル・ジョーダン」
「くっ、余計馬鹿にされているような気がするんだが」

つまり、かがみの話を一行に纏めると。
お守り。
ということらしい。

一行どころか三文字で終わっちゃったけど、
長々と語られれば、それだけ実効力というものが備わってくるようにも思えるから不思議だ。
接客業や販売員、詐欺師になれば大成しそうなくらいに。

「なーんか、いま失礼なことでも考えて居なかったか?」

うおぃ!
最近の巫女(手伝い)は、心までをも読みとっちゃうのか。

「気のせい気のせい。あ、そろそろゆい姉さんが来るかも」

慌てて矛先を逸らす。
ふと、この遣り取りのパターンは何回目なのだろうか、なんて思ってしまった。

312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 03:13:26.44 ID:i6Q700or0

居間へと戻って行ったかがみを尻目に、
私は暗い廊下の壁へと凭れて考え始めた。

思えばここ最近、色々な話を聞かされた。

ひよりんの話。
お父さんの話。
かがみの話。
みゆきさんの話。

そして、自分自身が体験した不可思議な鏡の出来事。
それに伴う夢。

どれもこれもが受取ようによっては怪談ともなりえる。
けれども。
けれどもだ。


本当に怖いものとは、何なのだろうか。

314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 03:23:54.79 ID:i6Q700or0

深夜/自宅(居間)


午前零時を半時ほど過ぎた頃合い。

「よーっす、ゆい姉さん到着だよー!」

夜もすっかり更け切ったというのに、
相も変わらず日の出のようなテンションで姉さんが諸手を振っていた。

即座に皆が皆、軽く挨拶を交わしていく。
そして、

「じゃ、早速行きましょっかい」

急かす様なゆい姉さんに先導され、私達は明るい我が家を後にした。

315 名前:3日目のメモ[] 投稿日:2008/09/24(水) 03:29:43.07 ID:i6Q700or0

【行動履歴】

朝/教室(3年B組) − 心霊ツアーの中止、若しくは夢
→「夢について訊ねる」


【世界観】 日常……?
【 変 革 】 もう、引き返す事はできない。
【 メ モ 】 本当に怖いものとは何なのだろうか?

319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 03:42:48.07 ID:i6Q700or0

深夜/車中(成実ゆい)


運転はゆい姉さん。助手席にみゆきさん。
後部座席に柊姉妹。私はというと……

「あのー、なんで私はトランクの中なんですかー?」
車中に乗り込むなり、狭苦しいスペースへと押し込まれた件についての抗議を行う。

「アンタは細かいんだから、そこがお似合いだわよ」
ツツン、と頭を小突かれる。
こんにゃろう。

「ごめんね、こなちゃん」
「すみません」

ああ、この二人はなんて優しんだろう。
かがみとは真逆の性質だよ全く。

「ところで、ゆい姉さん」
「あぁん?」
「明らかに人数がアレなんだけどアレにならない? 姉さんの職業アレでしょ?」
「チッ……」

怖っ。

「んなもん黙ってりゃわかんねーだろ」

ダレデスカこのヒトー?
と、静かにつかさが呟いていたのを耳聡くも聴き付けてしまった。

323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 04:11:07.44 ID:i6Q700or0

カーラジオからはヒットチャートがどうだとかいう内容の放送をやっているようだ。
時折、CMだとかなんとかで耳にした事のある曲が、代わる代わる流れては瞬く間に消えていく。

私はアニメソング以外に然したる興味を持たなかったせいか、
歌詞など一小節すらも浮かんではこない。
なので、静かに口ずさんでいる、つかさやかがみの声に耳を傾けつつ、
過ぎ去っていく車窓の風景を眺めていた。

時計を確かめるのが面倒なので感覚でだけど、現在時刻は1時少々という所かな。

家を発ったすぐには、世間様が深夜の眠りの最中にあるなど微塵すら感じられなかった。
しかし、段々と無くなりつつある建物。
着々と拡がりゆく屋外灯の間隔。
淡々と人手の入らないものへと変わりゆく景色。

どんどん外の世界の活気が失われていく。
伴って、明るさを持つのは頼りなく隠れた月のみという状況。
ヘッドライトを消せば……

言うまでも無く、完璧な闇。

大人しかった道路が、うねる様に登る道へと変貌したとき。
やはり、世の中には物の怪や怪奇などが存在しても可笑しくは無い。

という結論を導き出していた。

325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 04:30:34.82 ID:i6Q700or0

県内/山中(廃校舎・校庭)


「うわっ……」

ゆい姉さんが漏らした驚嘆に全員が同調した。

なんて素晴らしいシチュエーションなんだ!

一息で端から端まで辿り着けそうなほど、こじんまりとした木造校舎。
その塗装は暗い中でも剥げ落ちていることが十分に見て取れ、
窓ガラスは割れていない部分を探し出すほうが難しい。

校舎中央にはこれまた控え目な玄関らしきものがあるものの、
片方の扉が仕事を放棄したかの如く、倒れ込んでいる。

私達はいま、その校庭の中心に立って全体を眺めている。

校庭についても陵桜と比べるまでも無い程に歴然とした差があり、
それは教室を数個並べてしまえばあっという間に埋まってしまうほどの狭さだ。

さらには辺りの風景。
朽ちた校舎よろしく、木々の管理もなされていない。
故に校舎の足元には草木が生い茂り、校舎の裏側から表側へ、屋根上を通った木々に侵食されている。

「なんて素晴らしいシチュエーションなんだ!」

声に出してはみたものの、最早かがみはツッコミを入れる気力すらなさそうだった。
つかさ、みゆきさんについても同様。
ついでに、私もだ。

326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 04:49:23.34 ID:i6Q700or0

「これ、私、本当に帰ってもいいの?」

引き攣ったゆい姉さんの声。
元々、帰りは自力でという約束であったからだ。
私がそうしたのは、その方がより雰囲気が増すだろうと踏んでの措置だった。

が……

これは酷い。
写真だけで現物を見た気になっていた自分を恨みたくなってきたよ。
真夜中の山中に居るだけで既に怖いんだ。
ましてや廃校舎などという如何にもな場所へと踏み込むなど、正気ならば真昼であっても御免だね。

けれども、ああ言った手前、どうするべきか?


1.「帰っちゃっていいよ、こっちはこっちで頑張るから。送ってくれてありがとね」

2.「誠に申し訳ないのですが、近くで待機して頂けないでしょうか?」


>>328

328 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/24(水) 04:50:36.53 ID:P0etjCd70



331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 05:06:59.02 ID:i6Q700or0

「誠に申し訳ないのですが、近くで待機して頂けないでしょうか?」
私は恥を忍んで申し上げ仕った。

「よかろう」
「ははーっ、有り難きお言葉!」

そう思った矢先、
「と言いたいんだけどさ、流石に車内に一人で居るのも逆に怖いから。
 かといって、高校生の皆と一緒に人妻が泥棒の真似ごとなんてできないよね?」

「それじゃあ、やっぱり帰っちゃうの?」
「そんなに冷血じゃないよ、姉さんはっ」
「え、えっと、それじゃあどうするの?」
「私は近場で時間を潰す事にするさ。麓にファミレスもあったから」

ゆい姉さんはもう一度だけ校舎を眺めると、

「必要だったらば電話してちょ、いつでも迎えに来るから。
 もし携帯電話が繋がらなかった時の為に、5時を強制終電としとくね」

なーるほど、妥協案か。
ならば十分だ。

「ありがとう。それじゃあね、ゆい姉さん」
「おうっ、皆も気をつけなよ!」

闇夜へ溶け込むように小さくなっていく車。
その排気音が聞こえなくなったのを切っ掛けとして、私達は互いに顔を見合わせた。

そして、校舎へと向かい合ったのだ。

332 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 05:14:33.42 ID:i6Q700or0

ようやくここまで辿り着けた
良い所でまできて悪いのですが、また20分程度休憩します
廃校探索をどうするかをシステム的に考えてなかったので、そこらへんをちょっと練らないとなりませぬ

探索は恐らく、選択の連続となるので、お暇な方には付き合って頂きたいです

337 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 05:51:39.95 ID:i6Q700or0

午前2時00分/校庭


ゆい姉さんを見送った私達は、
私とみゆきさん、かがみとつかさ、
の2グループで、計2つの懐中電灯を手にしている。

当然、街灯すら存在しえないこの場所では、
弱々しい懐中電灯の明かりだけを頼りに校庭の中心へと佇まざるを得ない。

目の前には朽ちた校舎。

さあ、どうしようか?


1.その場から辺りの様子を見回す。(調べる)

2.誰かと会話する

3.校舎の中へと移動


>>338

338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 05:52:53.98 ID:WeXyVdyG0



340 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 05:54:47.03 ID:i6Q700or0

それぞれが不安そうな面持ちだ。
さて、誰と会話をしようか?


1.柊かがみ

2.柊つかさ

3.高良みゆき

4.それ以外


>>342

342 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/24(水) 05:57:11.62 ID:P0etjCd70



343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 06:02:57.89 ID:i6Q700or0

「ねぇ、みゆきさん」
「な、なんでしょうか……?」

あからさまに気圧されているようだ。

「大丈夫?」
「はい、ええと4人一緒ですのでなんとか……」

言葉とは裏腹に、全然大丈夫そうには見えない。
先程から忙しなく辺りを見回しているようだし。
そうだ、折角なのでもう一つ聞いておこう。

「あのさ、何か感じたりしない?」
「……と、仰られますと?」
「ほら、直感というか、夢で見た何かというかさ」
「寒気と嫌な予感ならずっと前から感じてはいますが……他には特に」
「そ、そう。とにかく頑張ろう」
「はい」

一通りの言葉を交わし終え、私は懐中電灯を持つ手に力を込め直した。

344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 06:06:43.84 ID:i6Q700or0

午前2時03分/校庭


校庭に佇んでいる私の頬を、気味の悪い夜風が撫でていった。
懐中電灯がなければ、数十メートル先の状況すら見とれそうにない。
正直、早くも来た事を後悔し始めていたりもする。

けれども、やると行ったからにはやらねば。
決意を込めてキッと前方を睨む。

目の前には朽ちた校舎。

さあ、どうしようか?


1.その場から辺りの様子を見回す。(調べる)

2.誰かと会話する

3.校舎の中へと移動


>>345

345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/24(水) 06:08:15.28 ID:P0etjCd70

もしかして俺しかいない?


348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 06:16:20.95 ID:i6Q700or0

校庭から玄関を照らすと、
2階建てのボロ校舎が浮かび上がった。

その中央部分に玄関は位置している。

玄関からみて右手側と左手側に等しい幅を持っている旧校舎であるが、
ここでは仮に右を東、左を西としておくことにしよう。

そう決めるなり、倒れて果てた玄関扉を踏み越えて行く。

「足、切らないように気を付けてね」
「わ、わかってるわよ……」

強いかがみの声色が返ってくる。
まだまだ、みんな大丈夫のようだ。

そして、私達は真っ暗な校舎の中へと進入したのだ。

349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 06:20:46.53 ID:i6Q700or0

午前2時06分/1階(玄関)


玄関は一般的な校舎でいう廊下の形状に近い。
突き当りから東と西側への廊下へ繋がっているようだ。

玄関廊下の左右には下駄箱。

恐らく、全校生徒が50人を超えた事もないのだろう。
両脇には、簡素な作りのものが用意されているだけだ。

さて、どうしようか?


1.その場から辺りの様子を見回す。(調べる)

2.誰かと会話する

3.東側へ移動

4.西側へ移動

>>350

350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 06:23:13.41 ID:WeXyVdyG0

とことん2

352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 06:27:07.85 ID:i6Q700or0

月の光が直接差し込まない校舎内は、異様なほどに暗い。
その為、電灯の当たり方次第ではその表情すらも窺えないようだ。

さて、誰と話そうか?


1.柊かがみ

2.柊つかさ

3.高良みゆき

4.それ以外


>>354

354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 06:27:58.06 ID:WeXyVdyG0

ごめん 2

358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 06:42:28.61 ID:i6Q700or0

「うわ、眩しっ!」
「あ、ごめん」

話掛けようと思い、つかさの方へ光を当てたのが不味かったらしい。
慌ててそれを脚元へと落とす。

「……ど、どうしたの、こなちゃん?」

つかさは姉の腕へ蔓植物のように絡み付き、
その姿からは片時すらも離れまい、という意志が垣間見えている。
表情はというと、曇りどころか土砂降り寸前だ。

「つかさはさ、何か感じたりしない?」
「な、何かって?」
「ほら、何か予感めいたものとか」
「うーん……特には」
「じゃあさ、つかさの後ろに居る人は誰?」
「えっ!?」
「というのは冗談だけ――」

「悪ふざけはやめなさいよ!」

怒声と共にゴツン、という衝撃。
懐中電灯をエモノにしたかがみに襲われたらしい。

「ほんっと、くだらないことばかり考えるんだからアンタは」

359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 06:59:56.92 ID:i6Q700or0

「ここ、生徒数はどのくらいなんだろうね」

玄関から突き当たりまで、ほんの数メートルの距離。
その両脇に敷き詰められた下駄箱を眺めながら呟いた。

「下駄箱も床も壁もボロッボロだね……何年くらい前の建物なのかな?」

つかさの言うとおり木造製の壁は至るところが変色しており、
一部には何かで殴られたのだろうか、というように不自然な穴があいていたりもする。

もしかすると、変な人達の集会場になってやしないだろうか?

しかしその不安はすぐに掻き消されることとなる。
校舎の全容を眺めた時、カラースプレーによる落書きの後は見受けられなかった。
つまりは、そういう輩が立ち寄っている可能性が低い事を意味している。

そもそもそういう場所だったらば、校舎へ入る前にゆい姉さんによって制止されていたはずだ。

良かった良かった。
そう安心したのもつかの間に、新たな疑念えが浮かびあがってくる。

人が居ないって事は、それだけこの校舎が放置し続けられていることに直結する。
人の目が届かない場所。
人によって追い出され、棄てられた場所。

……おかしなモノと出会わなければいいけど。

362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 07:17:44.31 ID:i6Q700or0

玄関からの突き当りで左右を見回す。
長く続く廊下。
当然、それを挟んで窓と教室らしき物が並んでいる。

それにしてもだ。

外観からは狭い校舎とわかっていた筈なのに、
中に入ってみると視界が利かないせいか厭に広く思える。

重く流れの悪い空気に辟易しながらも、ライトで左右の突き当たりを照らした。

「どうやら、東側に階段があるみたいだね」

そこに至るまでに教室が2つ。
そして、階段の下のスペースに小部屋が1つ。予想だけど、構造的に倉庫と見ていい。
さらに階段と向かい合うようにして何か小さな部屋への入口が、ポッカリと2つ並んで口を開けている。
あの感じからすると、向かいのはトイレかな?

次に、反対の西側には大きい部屋が1つと、その奥に小さな部屋があるようだ。

「お?」

ふと私が見上げると、目の前には部屋名を示すネームプレートが突き出ていた。

『職員室』

どうやら大きい部屋は職員室ということらしい。
広さを陵桜学園で換算すると、教室1個半くらいかな。
その狭さが却って真新しく思えてくるから変なものだ。

364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 07:35:43.77 ID:i6Q700or0

「ね、ねぇ、大鏡ってどこにあるのよ?」

かがみが、腕に纏わり付くつかさを宥めながら訊ねて来た。
妹を宥めてはいるが、かがみ自身も執拗に辺りを窺っているし、
眉を潜めた表情から察するに、それなり恐怖を感じているのかもしれない。
もちろん、常態を保っているのは姉の威厳というものなんだろう。

「ねぇ、聞いてんの?」
「あ、ごめん。ちょっと考えごとしてた」
「まったく……」

そんなに挙動不審な状態で偉ぶって見せたところで、
いつもの凛とした空気やカリスマ性の欠片すらも漂ってきやしない。

ところで大鏡だけど、資料には何処だと書いてあったんだっけ?
いや、写真はあったけど校内地図がなかったので、どっちみち私にゃ無用の長物な情報だという訳だ。
ま、この校舎に慣れた人物ならば写真だけで場所が一瞥できるんだろうけどさ。

そういえば。
電話越しのお父さんが言っていたっけ。

『ふと思ったんだが、なんで旧校舎ってやつには”大鏡”があるんだろうな。
 それも大抵が長い長い廊下の先にあるし、その隣には階段があるという造りになっている』

廊下の先、階段の側。
つまりは、

「2階へ上がったすぐだと思う」

これに違いないはずだ。

366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 07:52:02.79 ID:i6Q700or0

階段を目指し、東側への移動中。

「ひゃっ!?」

突然の短い悲鳴に釣られて、かがみとつかさも声を上げていた。
どうやら声の主はみゆきさんだったらしい。

「う、ゆきちゃんどうしたの? 大丈夫?」
「大丈夫ですが……うぅ、蜘蛛の巣が張ってます……」

背が低い私には気が付けなかった。
探るようにライトで上を照らすと、確かにキラリと乱反射している。

これも人が入り込んでいない証拠、か。
ところで、

「鏡の前に立つのは3時丁度にしたいんだけど、それまではどうしようか?」
「えっと、今の時間は……2時15分か。どう見ても来るのが速過ぎたような」
「2時14分44秒だよ。正確に測りたいから電波時計を持って来たのさ!」
「どうでもいいが、時間の並びが不吉すぎないか?」

確かに、言えてる。

「デジタル時計は、」
みゆきさんだ。
「不意に確かめた時、数字が並ぶのが嫌なので……わたくしはアナログ時計を――ひゃっ!?」

また蜘蛛の巣ですー、とのことらしい。
同じく、柊姉妹も釣られて身を震わせていた。

369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 08:12:10.06 ID:i6Q700or0

階段の前まで来たとき、突き当りの壁の隅に、何かが散らばっているのが見て取れた。
反射的に、それを照らしだしてみる。
黒い、何か。

「何よ、これ」

私の横から、かがみも窺っている。
これは……
艶のある羽毛、ぐったりとした潰れたように拡がる全身、削げ落ちた首。

カラスの死骸だった。

「……」
かがみが言葉を失ってしまうと途端、待ち兼ねていたかのように辺りから静寂と闇が押し寄せてくる。
空気の揺れる音、風が校舎を撫でる音すらも感じられるほどの無音。
それに耳鳴り。

何やら不味い。
このままじゃいけない気がする。

「よ、良くある事だよ、山ではっ!
 野良犬やら猫やらが安心して獲物を食べる為に運んできて、食べきれなくて捨てちゃったんだよ!」

犬も猫も飼ってはいないが、なんとなくそういう話を耳にしたことがある。
だからこれも、きっとそういうことなんだ。うん。

「ほら、さっさと2階へ行こう!」

通夜のように黙り込んでしまった3人を必死に奮い立たせるように、
私は階段への一歩目を踏み出した。

371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 08:22:19.10 ID:i6Q700or0

ギシッ……ギシッ……

文字通り、板張りが軋み合う音。
何故かこの音だけには昔から慣れることができない。

けれどもそんな私の心境など意にも介さず、
一歩一歩踏みしめる度に床が怨みがましい声で呻き返してくる。


――古いモノには魂が宿るだとか、或いは単に地元の卒業生達の願いによって残されているだけなのか。
   そこらへんまでは知りえないけどな。


お父さんの言葉が突沸のように浮かびあがってきた。
まさか、足蹴にされたことで怒ったりは怨んだりはされないだろうな……。


心の中を巡りゆく疑問。


勿論。答えは解るはずも無い。

372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 08:42:34.90 ID:i6Q700or0

階段を上り切った場所。
即ち踊り場。

そこに、それは在った。
当初の目的として、探し求めて来たモノ。

大鏡。

こじんまりとした校舎には似つかわしくない程に堂々とした出で立ちで、
2階、東側の端に張り付いていた。

この階段の位置からでは真横にあたる為、その鏡面すらも窺うことは敵わない。

が、奇妙な威圧感を禍々と放っているという感触は、
ただの錯覚として済ますにはあまりにも現実味を帯び過ぎてていた。

373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 08:45:25.77 ID:i6Q700or0

「アレが、大鏡、なの?」
擦れ掛けた小声でのつかさに続き、
「どう考えても、アレ以外にはないでしょ……」
口調だけは元のままのかがみ。
「ですね」
短く続く、みゆきさん。

最後に。

「それじゃあ――」

ようやく、最終地点へと到達した。
奇妙な話、夢、現象。

そして誘われるようにしてやって来た、私自身の心。

それら全てが帰結することとなる筈の、この場所へ。

だから、決意を言葉に換えて、皆へと伝えた。

何があっても決して心が折れないように。


――それじゃあ、行こうか。

381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 10:33:57.22 ID:i6Q700or0

午前2時20分/校舎(2階・大鏡)

あと一歩。
いや、あと半歩進み出れば、鏡に自身の姿が映り込むことになる。

けれど、やはり怖い。

あの夜のような自分ではない泉こなたが、
またも鏡の前へと現れるのかもしれない。

或いは。
或いは、それらとは全く別の”何か”を引き起こしてしまうのかもしれない。

「みゆきさん」

彼女の所在を確かめるように見遣ると、何も言わずに黙って、しかし力強く頷き返してくれた。
同一の体験を成したもの同士なだけに、その動作がより一層、私に力を分け与えてくれるのだと痛感した。

よし。

4人で頷く。
みんなで挑むのなら怖くはない。

自然と手を繋ぎ合わせる。
硬く。ずっと離れないように。

残る半歩。ギリギリの境界ライン。
その直前から。

今、超えた。

382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 10:35:01.32 ID:i6Q700or0

私が居た。
みゆきさんが居た。
かがみが居た。
つかさが居た。


手を繋ぎ、緊張や決意や恐怖を曖昧に溶け合せた表情で。


じっと睨む。
じっと睨まれる。

ふっと笑う。
ふっと笑い掛けられる。

口を開ける。
口を開ける。

首を傾げる。
疑問を訴え掛けられる。


これは……?

383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 10:35:41.69 ID:i6Q700or0

「何も……起きていないわね。だよね、起きて、ないよね?」

視線を右往左往させるかがみとは対照的に、
私とみゆきさん、つかさの3人は大鏡を注視し続けていた。

いや、大鏡の中の自分自身と思われる相手を、監視していた。

ふと気を逸らした瞬間に何かが起こり得る……
私たちがその心境に在ることは自明である。

しかし、私の顔、みゆきさんの顔、つかさの顔、かがみの顔。

全てが物理法則という理に従った表情で塗り硬められている。
異常や怪異は見当たらない。

「問題、無いようだね」

私の言を皮切りに、自分との睨めっこ大会は、各自の溜息を以って閉会となった。

良かった。

だけどまだだ。
まだ終わらない。

「午前3時まで、約40分、か」

手を繋いだまま鏡に背を向けて、その時を静かに待ち続けた。
待ち望んでいるのか、或いは忌避しているのか。
その対極にある感情を、一つに合わせた状態で。

384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 10:37:26.06 ID:i6Q700or0

「今さらだけどさ……」
小さく俯いて、かがみが呟いた。
「恥ずかしいんだけど、手を繋いでるの」

それはきっと、この状況でさえ無ければ私を含めた全員が思っていたことだろう。
というより、
「実は私も少し、気恥ずかしかったり」
それは本心だった。

「わたしも同じかも」
「わたくしも実は」

間近に迫った刻の前。
この期に及んだ真情吐露。

一旦滞った流れを、私が掬いあげる。

「で、どうするのさ?」
「どうするって?」
「手、離す?」
「……別にいいわ。もうすぐ3時なんでしょ?
 ここで離したら40分間が無駄になっちゃうかもしれないじゃない」

「ふーん」
「何よその顔は?」
「べっつにぃー」
「ぐっ……手が塞がってなきゃ叩けてるのにっ」

385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 10:39:18.07 ID:i6Q700or0

「まあいいじゃん、3時までなんだし。
 そこまで待って何事も無ければ笑って帰る。それでいいじゃん。
 それに、こういう馬鹿な事を出来るのは今のうちだけだと思うよ?」

「なに年寄り臭いことを言ってんのよ。……ま、そういうことにしといてあげるわ」

「つかさ、みゆきさん」

「ん、なに?」
「はい?」

「絶対に手を離しちゃ駄目だからね」

「……どちらかというと、怖くて離せないよ」
「それもそうですね」

ふと先日の二時間目休み、かがみとのやりとりを思い出した。

「覚えてるかな、かがみんはキョン役だって言ったこと」
「え? ハルヒの?」
「そうそう昨日……ってもう二日前か、言ってたじゃん」
「言ってたっけ?」
「もし奇々怪々が起こった際には、よろしく頼むからね」
「はぁ!?」
「頼むからね」
「なんだそりゃ。まぁ、善処はしてあげるわ」
「オッケー」

388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 11:31:59.11 ID:i6Q700or0

午前2時59分/廃校舎(2階・大鏡)


手元の電波時計で確認。
残り60秒。
即ち、丁度1分。

「みんな、準備はいい!? 60秒切ったよっ!」

それぞれからの返答。
みんなの気持ちが一つになっているという確信。


―― 50! 49! 47! 46! 45……


全員で読み上げ、刻々と減りゆく数。
それが零になった瞬間。

そこが、最も怪の力が強まるとされる瞬間。
又、鏡の怪の瞬間。
帰結する瞬間。


午前3時。


残る刻、30秒。

391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 11:56:09.32 ID:i6Q700or0

コーン……


私達の重奏よりも遥かに澄んだ音色。
はっきりと聴こえた。

背後。

間違いない、背後に居る。
鏡の中に居る。
大鏡の中に。

コーン……コーン……コーン……
コーンコーンコーンコーンコーンコーン……

何故だ?
明らかに数が多い。
叩く音が、一人だけのものでは有り得ない。

いや、それだけじゃない。

何故だか、必死さに加えて悲愴さが伝わってくる。
いつにも増して、何かを伝えようとする想いが。
振り向いてはならない、という想いが。

けれど、此処まで来て、やめる訳にも行かない。

解き明かす。
絶対に。

392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 11:57:37.78 ID:i6Q700or0

10……

――つまりだな、箱を開けるまでは箱の中にいる猫が生きているか

9……

――二つの世界が交わる事はない。
   どちらかに分岐を行えば、それが真実だと確定してしまうということだ。

8……

――昨日の花は今日の夢って言うじゃーん
   我々は激動の時代を生きているのだ。

7……

――鏡には魔力が宿るだとか、長生きした動物は神通力を帯びるとか、他にも数えきれないほどの謂れがあります。


6……

――それから、呪術や一部の祭事においても様々な用途で扱われる場合が多い。
   結果的には魔性が宿るとも神性が宿るとも云われるが、要は何らかの力が感じられるとのことらしい。
   現に、神社なんかじゃあ今も御神体として鏡が祭られていたりするしな。

393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 11:59:26.97 ID:i6Q700or0

5……

――それで、突然話が変わるんですけど、
   泉先輩、誰かからの怨みを買った憶えはありませんか?
   勿論、実際に藁人形をゴッスンゴッスンやっていると断定した訳じゃあないんです。
   ただ、”怨みを買ったという本人さえ知りえない事実”が、または同等に値する誰かの”強い怨恨”が、
   ”夢という形”で先輩の元へと届けられている……なんてことは考えられないのでしょうか?

4……

――そういえば耳にした事がある。
   人間の感情における愛や憎悪は、元々同じ感情なのだと。
   陰と陽、真逆にあって対を成す。誰かが私に何かの想いを伝えようとしている。
   漠然とそんな気がする。

3……

――遠くから一瞥すると、遥か続く廊下が、まるでその鏡の中にまで続いているように見えるんだから。
   しかも自分自身の姿まで米粒の用に小さく映り込んだりしている。
   まるで、鏡の中には別の世界があるかのように、だ。
   もしかすると鏡の中に居るのは”自分と良く似た他人”で、
   ちょっと目を離した隙に欠伸なんかしてたり……なんてな。

2……

――そう、だったら確かめてみない? この眼で実際に

1……

――しっかしさ、やっぱり四人だと落ち着くわよね

394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 12:00:29.05 ID:i6Q700or0

0……


――絶対に手を離しちゃ駄目だからね


   そして、私達は振り向いた。

395 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 12:03:51.11 ID:i6Q700or0

ああ、やっぱり来ちゃうのか。
ここへ来ちゃ駄目だって言ったのに。
ここへ来るのはいけないって、あれほど忠告したのに……

なのに、そうすればするほど、皆はこの場所への興味を強めてしまった。
余計な好奇は身を滅ぼすと、何処かでは判っていた筈なのに。

馬鹿すぎる。
あまりにも馬鹿げている。

皆が、私達とは同じ轍を踏まないようにと必死で伝えようとしたのに。
だけど伝わらなかった。

怨み?
違うよ、切情だよ。
感情は、表裏一体なんだから。
陰と陽、真逆にあって対をなす。

この意味、わかるでしょ?


……でも、こういう結果になってしまった今では、私の馬鹿さ加減に怨恨の情すら湧きそうだけどね。


ごめんね。
力が及ばなくて。

本当に。
ごめん。

400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 12:14:08.12 ID:i6Q700or0

午前3時00分/廃校舎(大鏡)


「……むお?」

私達は、大鏡の前で手を繋いでいる。
何も聴こえてはこない。
その大鏡には、皆の姿がそのまま映しだされていた。

何の変哲も無い、ただ只管に普通の大鏡。
時刻は確かに午前3時を廻っていた。

よし、思った通りだ。
つまり、これで証明が成された訳だ。

「やっぱり、大鏡の噂は嘘だったんだね」

断言する。

「そのようですね、怖がった分だけ損をしてしまいました」

みゆきさんが続いた。
さてと、後はゆい姉さんに電話を掛ければいい。

401 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 12:16:01.26 ID:i6Q700or0

私は携帯電話を取り出し、電話帳からダイヤルした。
呼び出し音が漏れてくる・……

「あれ? これって?」

つかさが何かを拾い上げていた。
ああ、それか。
それって確か、

『こなたー? 終わったのかい?』

あ、ゆい姉さんだ。

「うん、なんてことなかったよ」
『そっかそっか、じゃあ迎えに行くからね』
「待ってるねー」

それだけの手短な通話を終えた。

「それじゃあ皆、外に出るよ」

404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 12:28:18.77 ID:i6Q700or0

階段を颯爽と下って行く。
来た時には面々が声を失う程に怯えていたが、
こうも長々と居座ったばかりか、あまつさえ”怪は嘘”であったことが証明された訳だ。

ともなれば、何も恐れるものはない。
ギシリと禍しく呻く階段を駆け下り、トンッと床板の上へと降り立つ。

落ち着いて観察すれば、単に人が居ないだけの古びた校舎。
所詮は、種明しさえすればそんなものなのだ。

「ほら、早く来なって!」

待ってくれ、という旨の言葉を面々から掛けられる。
けれどもこんな辛気臭い場所、一刻も早く抜け出したかった。

程無くして追いついて来たのを確認し、東へ歩いて玄関を目指す。

カラスの死骸にゃ、やっぱり目もくれなかったけどね。
ああいう生々しいのは、流石に私も苦手だし。

そのまま早歩きのように風を切って進み、
朽ち倒れた玄関扉を踏みつけて外への脱出を無事に終えた。

「うーん、気のせいだろうけど、外のほうが空気が美味しいなぁ」

電波時計で、ゆい姉さんの到着予定時間を計算してみる。
大体、麓からここまで30分程度だったかな。
ま、そのくらいならば楽勝だね。

408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 12:35:56.94 ID:i6Q700or0

――午前3時に旧校舎の鏡を覗くと、何かが映り込むっていう噂がな。
   3時というのは草木も眠る丑三つ時の尻に当たる。
   即ち、夕刻から騒ぎ出した目には見えない”何か”が、最も強い力を得る時間帯だ。
   逆に日が昇ると、それらの”何か”は息を顰め、日常が返ってくることになるってな。
   どうやら夜の怪異は、日が昇るまでがリミットって訳らしい。

410 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 12:49:56.52 ID:i6Q700or0

深夜/廃校舎(校庭)


それから半時ほどのあと。

走り込んで来た一台の車。

それが華麗なドリフトで砂煙を巻き上げつつ、目の前数メートルの位置でピタリと止まった。
そういう無駄な運転テクニックはどこで会得したものなのか。
以前、訊ねたことがあったが彼女に答えては貰えなかった。

「お待たせーっ!」

車の主、ゆい姉さんが無駄な元気を覗かせる。
たったの数時間ぶりだというのに、この静寂の中に長々と居ては最早懐かしくも感じてしまう。

「ほら、早く乗って乗って」

ゆい姉さんの手招きで急かされるように車内へ。
廃校舎内ではずっと立ちっぱなしだったので、シートへと座り込んだ瞬間にどっと疲れが出てきた。

「はぁ、なんだか私ゃ疲れちゃったよ」

隣のつかさへと凭れて、目を閉じる。
そのまま吸い込まれるように眠りの中へと落ちて行った。

411 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 12:50:54.46 ID:i6Q700or0

――本当に怖いものとは、何なのだろうか。

415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 13:03:13.60 ID:i6Q700or0

「ほら、こなた起きなって」

……?

「家に着いたよ」
「ゆい姉さん?」
「そうだよ、他の皆は先に送り届けて来たからね」
「あぁ、そうなんだ」

あいたたた、首が痛い。
車内のような狭い所で眠るとロクなことにならないな。
えっと、

「今、何時?」
「あんたの左手にあるモノは何?」
「電波時計」
「だったら、それで調べればいいじゃないの」

名案だ。
思いつつ時刻を確認してみると、なんと朝の6時直前だった。

「やばっ!」
「こなたは若いんだから徹夜でも大丈夫でしょが」
「それでも辛いのには変わりないからさ……」
「休むんじゃないぞー、姉さんに責任が来ちゃうからねー」
「自分なりに善処致します、ハイ」
「よろしい」

ゆい姉さんは大きく手を振って見せると、
マイカーで白煙をあげつつ走り去って行った。

455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 20:27:58.39 ID:i6Q700or0

朝/自宅(キッチン)


「皆大好きチキンカレー」

沸々と温まりゆく鍋。
昨晩の残り物であるこれからは、なんとも食欲をそそる香りが漂ってくる。

夜通しで動き続けた空腹と、朝の爽やかで落ち着いた空気。
完璧なほどに日常の一コマ。
たった数時間前に居た廃校舎内とは、対極に位置している。

それに先程まで残っていた眠気も、お風呂を済ませ着替えたことで一新することが出来たしね。

なんてことを回想しつつ、隠し味のチョコレートを放っていると。

「あ、おはよー」

ゆーちゃんが目を覚ましてきたようだ。
相変わらずの細やかな仕草で、小動物のように傾げる首が可愛らしい。

「おはよう、もうすぐカレーも温まるから待っててね」
「うん、お皿と御飯でも並べとくよ」
「あ、良かったらお父さんも起こしてきてくれない?」
「わかりましたー」

云うなり遠ざかって行く足音。
パタパタと、しんとした屋内に残響を残しながら。

458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 20:39:26.71 ID:i6Q700or0

「起こして来たよ」

若い生命力が溢れ出るゆーちゃん。
の後ろから、

「おはよう……」

しゃがれ声で寝ぼけ眼を擦る我が父。
まあ、枯木も山の賑わいって言うしさ。
しかし今日は、輪を掛けて辛そうな表情なのが気になる。

「やけに眠そうだけど、どうかしたの?」

ダイニングテーブルにぬべーっと顔を突っ伏した父は、
顔を有らぬ方向へ向けたままで独り言ちた。

「締切が近いってのにさ、全く筆が進まないんだ。やらなきゃいけないって判ってんのにさ。
 嗚呼、このままじゃ俺、今晩あたり……」

今晩あたり何なのだろうか?
何にせよ、どうでもいいけどさ。

横目に家族の面々を留めつつ、カレーを掬って味見。
うむ、一晩置いたこれこそ至高!

「さあ、朝ごはんにしよう!」

徹夜明けの妙なテンションを自覚しながら、私は諸手を挙げていた。

461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 20:53:43.71 ID:i6Q700or0

登校/電車内


「うーむ、やはり朝の時間帯ってのは混むよねぇ」
「そうだね」

ゆーちゃんと二人での登校。
時間的には一般的な学生と変わらず、ホームルーム数分前に到着するという算段を踏んでのものだ。
それでも私にとっては幾分か早出で、言うまでもなく寝ずの夜から得られた恩恵でもある。

……後の授業で対価を払う事となりそうだけど。

などなど今後のプランを計っていると、ゆーちゃんが遠慮がちに声を掛けて来た。

「そういえば、お姉ちゃん。高良先輩と仲が良いんだよね?」
「どうしたのさ」
「みなみちゃんが高良先輩の話をしてたから」
「ははーん、それで気になったと」
「うん」

ゆーちゃんにとってのそれは、より友情を深める為の努力をしようとの心持からなのだろう。
もともと内気で良い意味でも悪い意味でも小心の気がある彼女は、小さな努力の積み重ねを継続し続けている。
だからこそ人を惹きつけるような、妙な魅力を持ち得ているのだと思う。
実に、健気だねぇ。

「でもさ、自分で訊いてみなよ」
「うぅー……あんまり話した事ないし……」
「問題なす。近いうちに、そういう場でも作ってみるよ」

それを聞いたゆーちゃんは、やはり小さく笑ってくれた。

462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 21:02:22.95 ID:i6Q700or0

登校/学内(下駄箱)


「じゃあね、ゆーちゃん」
「うん、それじゃーね、お姉ちゃん」

控え目な手ぶりを以って、彼女との別れ。
玄関から下駄箱に掛けては、間もなくの開講へと向けての生徒達でごった煮となっている。
例えるならば、山芋と人参と蓮根の所へ、何故か餅とメロンを突っ込んだ状態。

ちなみに、今の例えに特に深い意味は無い。

忙しく流れ行く生徒の波の中を滑るように抜けて、教室を目指す。
今さら急いだところで僅か1分の短縮にもならないと頭では解っているが、
皆が逸れば自身も逸りたくなるのが集団心理というものだね。

さあ、今日も一日、学生生活を頑張ろう。

464 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 21:17:22.74 ID:i6Q700or0

朝/教室(3年B組)


「いよぅ!」

扉を開けるなりの一声。

「いよーぅ!」
「い……おはようございます」

返ってくるのは勿論、つかさとみゆきさんの両名。
もうちょっとでみゆきさんが釣れそうだったのが、内心悔しい。
まあいいさ、まだ時間はあるのだからじっくりと染めていければいいのだよ。
そんなことより、

「二人とも、ちゃんと学校に来れたんだね」
みゆきさんは兎も角、つかさは昏睡してそうだと思ったのだけれど。
その心境が彼女に伝わったのか、

「こなちゃん、ぐっすり寝てたから心配だったよ」
牽制された。
もちろん、その語調に悪意や嫌味は含まれていないんだけどね。

「昨晩は、皆さんお疲れ様でした。とても貴重な体験となりました」

みゆきさんが無理やり気味に、話を良い方向へ持って行こうとしている。
流石なものだ、歩く萌え要素は伊達じゃあないね。

その程度の談笑を交わした所で黒井先生が御登場なさり、
またまた学業の中へと身を投じる一日が、本日も始まった訳である。

468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 21:36:01.80 ID:i6Q700or0

二時間目の中休み/教室(3年B組)

数学という、まるでスワヒリ語でのように難解な授業を乗り切り、
背伸びと共に一息を淹れていた私。

「あのさ、こなちゃん」

そこへ、つかさが惑うような表情を見せていた。

「どったんだい?」
「いまさらなんだけどぉ、昨日の廃校舎……って、正確には今日なんだったけ」
「いいから続けてよ」
「うん。それでさ、もしかしたらだけど、その……祟られたりはしないよね?」

祟り?

「そんなもの、ある訳ないよ。それに噂は嘘だったことを身を以って証明したんだし」
「そうだけど。でも、そういう謂れのあるところには”霊障”というものがあるって聞いたこともあるし。
 あまりにもそういうのと係り続けているうちに、段々と引き込まれたり憑かれちゃったり……」

一番の怖がりである、つかさらしいと言えばつかさらしいかな。
でも不安がらせておくのは気の毒だ。

「あそこの噂は、”午前3時までは鏡に背を向けて立ち、3時丁度になったら振り返る”でしょ?
 すると鏡に、”そこには居ない筈の人間が、何も言わずに青白い顔で隣に居る”だったよね?
 けど、それに纏わるなにかにも見舞われてはいないし、気にするだけ損ってものだよ」

納得のいかない顔を見せる彼女だったが、
「これでこの話はおしまいっ!」
若干強引に話の腰を折った事で、なんとか呑んでくれたようだった。

473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 21:44:21.60 ID:i6Q700or0

昼休み/購買部


お弁当を持って来ていないので、購買部へとやって来た。
朝によっぽどの早起きをして、且つ余裕のある時にしか拵え無いので、
殆どがここのパン類にお世話となっているのだ。

それにしても、いつになく大盛況。
人海とは恐ろしいものだ。
下手に突っ込んじゃうと髪がバッサバサにされ兼ねないし。

しかしだ。

人生は選択と決断だ。
今日の私は一味違うのだよ。

「やると決めたらやるのだ」

意気込むように呟いて、波の中へと泳いで行った。

476 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 21:51:52.12 ID:i6Q700or0

昼休み/教室(3年B組)


「お待たー」

戦利品を引っ提げ、快活に帰還の報告。

「あ、おかえりー」

つかさに頼まれていたぶんのものを袋から選りだしていく。
えーっと、これとこれと……

「意外と早かったんですね」

みゆきさんの言葉と同時に動作完了。

「ハイ、つかさの分のパン」
「……ありがと」
「さてさて昼食の時間だね」

皆を確認するように見回していく。
これは”昼食=談笑”の時、という一種の合図みたいなものだ。

482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 22:04:51.13 ID:i6Q700or0

放課後/教室(3年B組)


本日の学業も滞りなく終了。
普通に登校し、定句の挨拶を交わし、通常通りの授業を超え、当然の放課後となった。
あとは帰ってのんびりするだけだ。
疲れもたまっている事だし、尚更ね。

「それじゃあ、帰ろうか」

促すように言った。
しかし。

「待ってよ、わたしが先に行くよ」
「いんやいんや、私が先に」

意味も無く、教室扉の奪い合い。

「駄目だよ、わたしが先だよ」
「私のほうが早かったじゃん」
「わたしが、わたしが!」
「私が、私がだよ!」

「あのー……それじゃあ、わたくしから宜しいでしょうか?」

「どうぞどうぞ!」
「どうぞどうぞ!」

みゆきさんは、何故か落ち込んでいた。

487 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 22:17:40.55 ID:i6Q700or0

下校/学園近郊


外に出た途端、斜めった日光に射される。
それは真夏の残暑を存分に振りまいてやろうという、
お天道様にとって最後の掻き込み時のようにも思える。

大分涼しくなってきたもんね、暦上では冬らしいし。

などなどと、大それてもいない漠然とした黙考を続けていると、
部活動に精を出している連中が隣を駆け抜けて行った。

「そういえば、部活動って大変そうだよね」

それを受けてなのか、つかさが話題を振りまいている。

確かに、部活動は大変そうだ。
私らはやっていないけどさ。

その後も他愛ない談笑タイムを経て、駅でみゆきさんと別れることとなった。

495 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 22:31:45.22 ID:i6Q700or0

下校/電車内


ゆらり、ゆらり……
つかさが振り子のようにリズムを刻んでいる。

「ねぇ、つかさ」
「うーん……なぁにぃ……」

席が空いていたのが災いしたのか、完全に寝入ってしまったようだ。
考えるまでもなく、昨晩のことが今になって響いて来たのだと結論を下した。

うーん、隣に靠れて寝息を立てられちゃうと、私まで眠くなってくるんだよね。

じわりと、しかし確実に襲い来る眠欲を振り払うように、流れ続ける風景を眺め始める。

遠くまで明るく完全に見通しのきく世界。
昨晩の闇色世界と対比すれば、普段見慣れている風景が段違いなほど平和に思えるてくるから、面白いものだ。

498 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 22:42:35.08 ID:i6Q700or0

話の腰を折ってすまないが、このスレに至っては先を読んでもらっても構わないよ
というのも、俺は文章の下手さを補う為に伏線とロジックで読んで戴こうと図っているので、
ある意味、先を読んでくれないと意味がないんだよね
俺が推理的な要素が好きなだけってのもあるけどさ

但し勘に頼って結果だけ見るのではなく、コレとアレとソレ等から推測し、よって今この状況に在るのだ
なんて楽しみ方をしてほしいかな
異なった答えは、次作のネタともなりえるのでね

504 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 22:54:45.34 ID:i6Q700or0

下校/自宅近郊


不覚にも半分ほどの意識を失ってしまい、
睡の悪魔の罠にまんまと嵌りそうになっていた私だったが、
狙ったかのように直ぐ隣で通話を行っていた迷惑な乗客に助けられ、
電車からの危機的脱出を図り得たのだ。

あのまま遠くまで旅立つのも、それはそれで楽しいかもしれないけどさ。

そして今、のらりくらりと歩く、つかさを引っ張りながら歩いているのである。
半ば凭れてくるので、いや、身長差からか圧し掛かってくるので非常に重い。
ただでさえ低い身長がさらに縮んでしまいそうだ。

「こら、つかさー! そろそろシャキっとしなさいな」

声を掛ける。
が、その返答は、あと5分の睡眠時間延長を強請る甘い声。
完璧にスリープモードに入っているらしい。

仕方がないなぁ、家まで連れてってあげるしかないか。

511 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 23:06:01.27 ID:i6Q700or0

夕刻/柊家(玄関)


道中、現在時刻が17時30分過ぎなのを確認し、
それをネタに色々と妄想していたのだけれど、結局は妄想だったわけで。
とにもかくにも私は柊家、玄関前の呼び鈴を鳴らしたのだ。

間もなく開く扉。

「おや、こんにちは」

つかさの父、柊ただおさんだ。
優しい目付きと声色に、何処となくつかさのそれを連想させられる。

「こんにちは、柊さん宛のお届けモノです。包装無しの娘さんですが」
「あはは、相変わらず口の上手い子だね」

紳士的な笑いのあと、隣のつかさを見遣って微笑んでいた。
続けざま、

「まあ、疲れただろう。上がっていきなさい」

なんとなく厳かに感じられる手付きで、屋内を指示したのだ。

516 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 23:26:12.88 ID:i6Q700or0

夕刻/柊家(縁側)

風吹き抜ける縁側の一間。
そこには季節遅れともなりつつある風鈴が掛けられていた。
チリリと響くその鈴音も今となっては余計に思え、
あと1月も経てば過剰冷房罪として訴えられた末に、暗い閉所に仕舞われることだろう。

「いやいや、度々すまないねぇ」

お茶を3つ乗せた盆片手に、ただおさんが姿を現した。
うち1つは壁に崩れ掛かっているつかさのものだろうが、口を付けられることは恐らくないと思う。

「おや、これは……」
彼はつかさの傍らに落ちていたモノを、のんびりと摘まみ上げていた。
ああ、確かそれは、

「ヒトガタですよね」
「ほう、よく知ってたね」

心底感嘆、という調子だ。

「ええ、以前耳にしたことがありまして」
「最近の子は物知りなのかな? 本をよく読むせいかねぇ」
「違いますよ、人伝です」

そう答えてその出所を探ろうと思ったが、今一つ不鮮明ではっきりとしない。
いや、ソースは、おばあちゃんだったか書物だったか漫画だったかネットだったか人伝の噂だったか……
考えてみれば明確には探れないものだと再認識させられる。

案外、謂れとはそういうものかもしれないな。

524 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 23:38:11.38 ID:i6Q700or0

「そういえば、廃校舎へと行ったんだって?」

えっ、どうしてそれを?
という表情がありありと出てしまったのだろう。

「つかさから訊いたんだよ」

ただおさんが朗らかに笑っていた。

なーるほど、御叮嚀にも親御さん方の許可を得る為に話を通していたんだね。
それでは私の家へ泊まるという隠蔽工作の意味が、まるで無いじゃあないか。
つかさらしいと言えば、らしいけどさ。

「で、どうだったんだい?」

興味を孕んだ好奇の目。
彼は落ち着いているように見えて、意外と子供っぽい一面も持ち合わせているらしい。

「なーんにも、でした」
「そうかいそうかい」

ヒトガタを親指と人差し指で挟み、ヒラリヒラリと揺らしている。
以上で話の流れが止まったのかと思われた時、

「実はね」

再び彼が口を開き、包容性のある声で語り出したのだ。

533 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/24(水) 23:58:04.53 ID:i6Q700or0

山奥にある廃校舎とそこにある大鏡、なんだったかな、目的は?
……おお、合っているんだね。
うーん、古い建物と大鏡ねぇ……。
正直、感心できないかな。
つかさがどうしてもって言うから許可を出したのだけど、まあ何事もなくて良かったと胸を撫で下ろしているよ。

親としては辛い所だね。
高校時代にしか出来ない経験っていうのは、それが不可能となった歳になってみて初めて判る事なのだから。
その時はなんてことない体験や日常でも、きっと将来には代えることのできないモノとなるんだよ。
それを知っている今だからこそ、あまり娘を束縛したくはないんだ。

この意味、わかるかい?
仮にわかると答えたとしても、それはきっとわかった気になっているだけだなんだよ。
……自分が、そうだったからね。

おや、申し訳ないね、要らぬ話に逸れてしまって。
では、話を戻そうか。

古い建物というのはね、いやいや、建物に限らず年季の入ったモノには魂が宿るんだよ。
ん、タマって何かって?
あっ、すまない。たましい、と書いてタマだね。
要するに、命のことさ。

物質に命は無い?

……尤もだね。
けれども我々、ヒトとされるモノ達と何処が違うって言うんだい?

では、こう考えてみればどうだろうか。
ヒトも、体という物質、つまりは容れ物に”魂”が宿っているだけなのだと。

541 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 00:15:17.35 ID:pR7k9edW0

命あるモノは、即ち心も併せ持つ。
つまり、そこには感情が生まれるということを示しているんだ。

正の感情か負の感情か……
いや、これは観察側にとっての”利益”か、或いは”不利益”かで分けた身勝手な解釈だね。
中には理解不能なほどに複雑で様々な感情が渦巻いている場合もあるだろう。

いいかい、先ずはこの点について留意しておいて欲しい。

次にだ。
人には好奇心というものがあるだろう?
他にも、恐怖心や競争心、なかには復讐心なんて物騒なモノもある。

ヒトは、言葉を持っているよね?
いや、言葉でなくとも手話でも点字でもなんでもいい、言葉とは意志を伝え合うツールの総称さ。
それによって互いに係り合い、引き合い、反発し合い、そしてそれぞれの心に影響を及ぼすんだ。

だけど、言葉を持たない相手との会話についてはどうだろうか。
相互は認識する事すらできないのだろうか。

否、それは違う。

例えばだけど、言い知れぬ不安や、突如の予感などに突き動かされたことはないかい?
どうしようもなくこの場に居てはならなく感じたり、逆にどうしても行かなければならないと感じたり。
中には根拠も無いのに、確信だけを抱く場合もある。

その通りだ。
心はね、言葉がなくても繋がるんだよ。
特に、感受性が強かったり、どちらかが何らかの要因を持っていたりする場合にはね。

545 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 00:36:38.43 ID:pR7k9edW0

ここで少し話が変わるけれど、霊感があるとされる人間と地縛霊について触れておこうか。

先ずは霊感があるとされる人間。これは先述した通り、”言葉”に対する感受性が強い者達のことだ。
逆手に言い換えれば、耐性が低い者ともいえる。もちろん、悪く言っている訳ではないよ。
長所と短所は表裏一体、陰と陽は真逆にあって対を成すのだから。
って、この言葉は久方ぶりに口にしたな。

まあいい、端的に表せば、より影響を受けやすいということだね。

次に地縛霊。
これらは何らかの強い想いに駆られてしまい、その場へ縛られてしまった霊の事だ。
霊は”心”と言い換えてもいい。想いのことだ。

人間における地縛霊とは大抵のケースが悲惨であることが多い。
更には、霊と化した後もその場に留まろうという意志の有無に係らず、永遠にその場へ縛られてしまうのだから。
常態は保てないだろうさ。
最初はどんなに”良い心”を持っていたとしても、永遠に変わる事の無い景色を”ただ眺めることしか出来ない”。
仮に目の前を多くの人が過ぎ去って行けども、”言葉を掛けることすら出来ない”。

ただ、稀に居るんだよ。視る事の出来るモノが。
それの人間における場合が、所謂、霊感があるとされる人たちなんだよ。
ちなみに、動物は人間とは異なる感性を持ち得ている為に、”別の何か”を捉えることもある。
何も無いのに犬が吠える。
それは、実は何かを見ているのかもしれない、というのは関係ないので端折らせて貰おう。

それでだね、地縛霊の前に、ふと言葉が通じる相手が現れたらどうなると思う?
言い換えてみようか。

キミが地縛霊ならば、どういう行動をとるんだい?
キミは、どうしたいと願うんだい?

552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 00:54:14.35 ID:pR7k9edW0

そうだよ。
それが答えなんだ。

中には影響されて気分が悪くなったり、不安に駆られたりすることもある。
或いはあまりにも惹かれ過ぎて、発作的に飛び降りてしまったりすることもある。


ただ話相手が欲しい、動機はそれだけなのに。


モノの言葉を受けるには、何も霊感だけが手段という訳ではない。
例えば霊側の声が大きい場合。
または、霊と強い因縁で結ばれている場合。
或いは、強い力を持つモノを所有している場合。
他にも、語り尽くせないほどに様々な要因が密に絡み合っている。

答えは、一つではないんだ。

そして大鏡。遥か昔から魔性や神性として崇め、または恐れられてきたモノ。
それにも様々な謂れがある。

真実を映し出す。魔を退ける力がある。
別の世界との境界点。現世と常世との渡し船。
映されたモノの力を奪う。

どれが正解かは誰にもわからない。
けれど、謂れには必ずといっていいほど、どこかに起点があるものなんだ。
無から有は生まれない。ただし、僅かな起点さえあれば、そこから発展できる。

謂れとは、そうやって生れ出るものだ。

560 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 01:18:46.72 ID:pR7k9edW0

「嘘を言われているうちに、それが真に変わり果ててしまう場合もある。
 ヒトだってそうだろう、何かを言われたりすれば影響を受けて、本当に成し遂げてしまったりもする。
 名選手には、必ず名監督が付く様にね」

長々とした演説が、お茶を啜る音で一旦途切れた。

「まあ、これは自分の知識と経験から推察した答えにすぎない」

答えは一つではない、か。
その一言の内には、その先は自身で探れ、という意味合いのものが含まれているのだろう。

「長々と語ってしまい、申し訳なかったね」

悪戯っぽく覗かせる笑顔が、何処か彼を幼く見せてしまう。
その笑顔が何処か、何処か……?

「とにかく、そろそろ日が暮れ始めるだろう。夕方に出歩くのは、あまりお勧め出来ないのでね」
「そうですね、ではそろそろ失礼します」

結局、口をつけることの無かったお茶を申し訳なく盆の上へと戻した。
鞄を持ち、眠るつかさに別れを告げ、部屋を出ようとしたとき。

「本当に、なにも起こらなくて良かったよ……」

ただおさんが、心底からの安堵を溜息へと変えていた。
つかさを見遣る優しい眼差しと、父親であることを瞬解させるその声色。

けれども、その言葉とは似つかわしくない程に、その表情は物哀しいものに感じられた。

564 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 01:32:32.90 ID:pR7k9edW0

晩/自宅(玄関)


我が家の敷居を跨いだ瞬間、ゆーちゃんが居た。

「ただいマントヒヒ」
「おかえリンドバーグ」

デジャビュ、だっけ。
なんとなく以前どこかで耳にした筈の言葉が脳裏を過ぎった。

それはさて置き、お父さんの靴が並べられていない。

「あれ、お父さんは居ないの?」

ゆーちゃんがいつもの仕草。
ということは、事態を把握できていないと。

「叔父さんは……今さっき、仕事関係の人がやって来て……」
「あらら、連れてかれちゃったの?」
「うん。サングラスに黒スーツ姿の数人連れに」

うわぁ、見るからに怪しいじゃん。

「ちなみに、その人達の頬に傷とかなかった?」
「え? んーと、良くは覚えていないなー」
「そ、そう」

どうせまた、仕事を滞納させちゃったのだろう。
まあいいさ、適当に筋書きを作ってゆーちゃんを脅かし遊ぶことにでもするか。

591 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 02:59:07.95 ID:pR7k9edW0

夜中/自宅(自室)


ゆーちゃんと二人でピザを食べたり、遊んだり。
日常における様々な営みを送っている間に、今日ももまた夜が更けていた。
既にお風呂も済ませて、いま私はパソコンの前へと座っている。

なんだか今日はいつもより疲れた気がする。
廃校舎ツアーでの肉体的疲労が含まれているのは間違いないが、
何故だか、まるで自分の体が自分のものではないような、そんな感覚すら覚えるほどに。

……などというのは、きっと気の所為だよね。

まあいいさ。
今日は早目に寝よう。

そしてまた明日一日。
学生生活を頑張ろう。

そう決めてパソコンの電源を落とし、軽く伸びをしたあと。
私は部屋の明かりを消した。

592 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 03:02:12.16 ID:pR7k9edW0

【4日目】

県内/山中(廃校舎・校庭) − ゆい姉さんへの提案
→「待機して貰うように願い出る」


【世界観】 日常
【 変 革 】 特に目立った変化は見られないようだ。
【 メ モ 】 いつもと変わらぬ今日だった。

598 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 03:16:43.00 ID:pR7k9edW0

不明/不明


完璧な黒だった。

どこまでも続く世界。
いや、どこまで続いているのかすらも解らない世界、と云うべきか。

ひょっとすると目と鼻の先には鋼鉄の壁があって、四方を塞がれているのかもしれない。
しかし、それすらも見ては取れない。
或いは、自分が地面に立っているのか、それとも落ちているのか。
その感覚さえもがあやふやで、全てが不確か一色に染め上げられている。

けれども私は、確かにここに在る。

「先ずは状況を検めなくちゃ」

左足を前へ出す。

よし。
地面の確かな感触。

歩ける。
それを確認し終わると、私は周囲を見回した。

背後、遥か遠く。
そこからは、ヒト一人がようやく通り抜けられるくらいの切れ目、とでも表現するべきだろうか。

そこからは橙色の光が漏れていた。
その光はとてつもなく弱く儚く、けれども完全な闇色の世界のなかで、確かに輝いていた。

600 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 03:30:22.47 ID:pR7k9edW0

コーン……コーン……

何故か体が重い。
手足が思うように動かず、走るなんて以ての外となりそうだ。
けれども何とか歩行程度ならば可能なようで、
私はあの光を求めて牛歩のように一歩ずつ地面を踏み締めている。

コーン……コーン……

ところでだ。
踏むたびに鳴く床は、どのような素材で出来ているのだろうか?
よく通る足音は幾重にも残響を孕んで私の元へと帰ってくるので、些か気味が悪い。

床が硬いというのは解る。
しかし、わざわざ腰を落としてまで調べるほどの気力は無いし、意味も無い。
そもそも闇の中であっても触診できるほどの専門家でもない。

地面がそこにある。
それだけで十分だ。
それよりもあの光。
あそこまで行かなくては。


コーン……コーン……


もう少し……もう少しだ……

601 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 03:40:50.03 ID:pR7k9edW0

歩くたびに力が霧散していく。
奇妙なことに、それが実感できてしまうのだ。

でも、それでも。
辿り着く事が出来た。
光が零れる、この場所へ。

観察する。

私と同身長程度で、横幅は通り抜けられるほどの隙間。
その向こう側には橙色のか細い光のもと、何処か見覚えのある部屋が拡がっている。

まあいいさ、さっさと中へ入ろう。

――ゴツッ

痛ッ。
なんだこれ?
隙間の空間に手を当てる。

「壁……?」

完璧な透明度を誇るガラス板が張られているのか。
正体不明のそれが、私の行く手を完全に阻んでいる。

しかしこの儚い光を差し置くほど、今の私が頼れそうな術は他に無い。
だから私は、その隙間から中を覗くことにしたのだ。

602 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 03:53:10.05 ID:pR7k9edW0

「待てよ、何処かにガラスの隙間が存在するかもしれない」
隙間から覗く風景を観測しつつも、ガラスの壁に手を当てた。

温度は無い。
が、やはり硬い板、或いは鉄板のような感触が伝わってくる。

叩いてみよう。

コーン……

先程の私の足音と全く違わない音色が辺りに拡がり、残響を孕んで帰って来た。
ということは、恐らく床もこの”特注ガラス製”なのか。
いや、本当にガラスかどうかは分からないが。

コーン……

何処かに隙間は無いものか。

コーン……

ここにも壁が。

コーン……

ここにも。

それにしてもだ。
やけに汚い部屋だな。

そのことが無性に気に掛かり、先に観察を行うことにした。

605 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 04:05:01.08 ID:pR7k9edW0

隙間から窺った風景。

何の変哲も無い部屋だった。
パソコンがあって、雑多に積まれた雑誌の山があって、それらを橙の豆電球が仄かに照らしている。
カーテン越しからはまだ光が差してきていない。

これ、何処かで……?

思わず両手をガラスにあてて、顔も擦りつけるように密着させた。
角度的に見えにくい位置。
そこにベッドがあるのだ。

誰が居る。

しかし寝相の悪いらしいソイツは、布団を巻き込むようにしてあちらを向いている。
夢に魘されているのか忙しなく体をくねらせている。
長い髪がベッドから垂れ下がっている。

あいつは……

ふと、その体が動いた。
こちらへと向き直った。
顔を見た。


私だった。

607 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 04:13:43.13 ID:pR7k9edW0

思い出した。
あれは、私だ。
元の世界の私だ。

棄てられた可能性。
無かったことにされた世界。


――それがここだ。


決して交わる事の無い世界が、この境界を挟んで存在している。

不味い。
止めなきゃ。
私を。

同じ轍を踏ませぬように。

今の私に出来ること。
今の私に出来ることは……

612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 04:21:36.80 ID:pR7k9edW0

未明/自宅(自室)


「……」

視界が戻って来た。
薄暗いなかに浮かび上がっているのは……

「天井?」

何の変哲も無い私の部屋だった。
パソコンがあって、雑多に積まれた雑誌の山があって、それらを豆電球が仄かに照らしている。

カーテン越しにはまだ光が差してきていない。
反射的に頭元の時計で確認してみると、時刻は3時丁度を指していた。

「……夢、なのかな?」

多分、そうなのだろう。
最早どのような感触や形をしていたのかすら絡め捕れないが、
何かを見ていたのは間違いない。

それにしても、なんだか体が重い気がする。

何故体が重いのだろうか……?
さらには逸っている心拍の説明も付けられない。

様々な腑に落ちない感触を覚えながらも。
私は長い溜息を残して、再び目を閉じた。

615 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 04:33:11.15 ID:pR7k9edW0

朝/自宅(居間)


「あの、どんな夢だったの?」

私が調理した即席雑炊を頬張りながら、ゆーちゃんが訊ねて来た。
その瞳からは若干の興味に染まっている。

どんな夢、か……

正直、全く覚えていない。
とてつもなく重要なようでもあるし、
逆に、路傍に転がる石のように在る必要すら無く感じる。

「けど、夢は夢だし気にし過ぎるのもあんまり良くないと思うけど……」

黙り込んでいた私を励ますように、ゆーちゃんが諫めてくれた。

「そうだよね、ありがとう」

これで会話が終了かと思わせて、やはりと言うべきか。
ゆーちゃんが一言付け足した。

「あ、雑学なんかだと案外、田村さんが頼りになるかも」

なるほど、とこの上ない程に納得してしまった。

617 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 04:44:36.02 ID:pR7k9edW0

登校/電車内


「おはよー」

ゆーちゃんと二人での登校中、つかさと乗り合わせたので声を掛けた。
ゆーちゃんも私に続いていたようだ。

「おはよ、こなちゃん、ゆたかちゃん」

つかさが何時ものように眠そうな眼を擦っている。
って、またも体が揺れ始めているし。

「しっかりしなよー」
「う、うん、だいじょーぶだよー」
「立ったままでも寝ちゃ駄目だよ? って、流石にそれは無理かな」
「……」
「こ、こら、起きろ!」
「わっ……うん、頑張るからぁ」

その一連の遣り取りを窺っていたゆーちゃんが、
控え目な笑いと共に言っていた。

「なんだか二人って、姉妹のようですね」

微笑ましい光景と、それに続く冗句。

けれども私は、何故だか笑う事が出来なかった。
つかさも同様に、眉を潜めていた。

619 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 04:54:19.59 ID:pR7k9edW0

登校/学内(下駄箱)


「じゃあね、ゆーちゃん」
「はいっ!」

ゆーちゃんと簡単な挨拶で別れる。
すると、それを待っていたかのように、つかさがポケットから取り出してきた。

「不思議なんだよねぇ、コレ」

そう言ってヒラリヒラリと揺らしているのは、紛れもないアレだ。
廃校舎の大鏡前。
あの場所に落ちていた、ペーパードール。

正式名称、ヒトガタ。

「でも、偶々あの場所に落ちていただけなんじゃないの?」
「うーん、そうだと思ったんだけどね。あの後、色々とおかしな点があったんだよ」
「おかしな点?」
「うん。昨日こなちゃんが帰ったあとに、お父さんと話していたんだけど……」

つかさがその日の事を確かめるように、ゆっくりと語り始めた。

621 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 05:04:09.30 ID:pR7k9edW0

ふと、目を覚ましたの。
そしたら辺りは既に薄暗くなってて、目の前のテーブルには湯のみが1つだけ。
その横に、これがおいてあったの。

すぐにポケットを探ったんだけど、やっぱり無くて。
じゃあ、いつの間にテーブルの上に移動したんだろうって……
えっ!?
あれって、お父さんが拾い上げてたの!?
なんだぁ、てっきりわたしは勝手に動き出しちゃったのかと思ってたのにぃー。

むぅー、お父さんも言ってくれれば良かったのに。
それじゃあ、もしかしてこの後の事もわたしの勘違いなのかな……

え?
うん、わかったよ、全部話してみるね。

それでね、それを持ってからお父さんに色々と訊いてみたの。
だってあんな場所に落ちていたんだし、そもそもわたしはヒトガタのことを良く知らないし。

それからお父さんに色々と説明してもらったんだ。
でも結局は、あんまり頭に入らなかったんだよね。

ううん、違うの。
わたしが言いたかったのはそこじゃなくてね、その後のことなの。

623 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 05:17:09.07 ID:pR7k9edW0

お父さんは言ってた。

「始めはてっきり、うちの神棚から勝手に持っていったのかと思ってたんだけど。
 さっき神棚を調べてみたら、既にあったみたいだね」

だって。
それで、気になったからわたしも神棚のお人形さんを見せて貰ったの。
うん、そしたらね。

全く同じだったの。
色、形、大きさだけでなく、繊維の模様まで。
ね、おかしいよね?

そもそも考えても見てよ。
あの廃校舎は何年も前に朽ち捨てられていたんだよ?
人なんて滅多に入り込まないし、仮に入り込んだとしてもヒトガタを持ち運んでくる殊勝な人なんていないよ。

証拠もあるんだよ?
このお人形さんを見てよ。真っ白で綺麗だよね。
あんな汚い場所に落ちていたにしては、不自然なほどにだよ。
仮に前に入った人が置いていったにしてもだよ、数日も経たないうちに埃まみれになっちゃうから。

そうやってお父さんに言ってみたらね、

「因果は巡るじゃないけれど、モノというものは必要な人の所へ自然に転がりこんでくることがあるからね。
 もしかしたら、つかさに拾われる為に落ちていたのかもしれないよ」

なーんて、笑いながら言ってたの。
もう、お父さんって凄く楽観的なんだよね。
でもね、お父さんの言うことは結構よく当たったりするから、大事に持ってることにしたの。

626 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 05:26:50.13 ID:pR7k9edW0

「……え、終わり?」
「うん、そうだよ」

自信満々、との面持ち。
どうやら大したことない内容を、つかさトークで無理やりに引き延ばしただけのようだ。
どこぞのクイズ番組を思い出したよ。
でも、まさかそれだけじゃあないよね。

「本当に他に何かはないの?」
「えー……っと、今は無いけど……」
「今は無い?」
「うん、これからあるかもしれないから」
「どういうこと?」

ヒラリ、と見せつけるようにヒトガタを揺らし、

「わたしの所へ来たのなら、これから何かがあるかもしれないってね」
「なんだよそれー」
「えへへっ、四六時中、肌身離さず持っておくことにしたの」

何処となく楽しげにヒトガタを揺らすつかさを、
私はただ、じっと見つめていた。

628 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 05:33:37.81 ID:pR7k9edW0

朝/教室(3年B組)


「おっはー」
「おーはー」

教室に入るなり、二人して挨拶。

「あ、おはようございます」

みゆきさんに完璧な微笑みで迎えられる。
やはり、朝はこうでなくちゃね。

「それじゃあ、今日も皆元気に頑張ろう」

私の声に続き、

「おーっ!」
「お、おー」

二人が続いた。
そんないつになく順調な、朝のひと時。

631 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 05:50:26.73 ID:pR7k9edW0

昼休み/購買部

流れ作業的な学業も昼時で一旦の打ち止めとなり、
「今日は二人ともお弁当なんだ」
という自身の呟きを後に、購買部へと向かった。

すると、見知った声が聴こえてきたのだ。
姿を探すと、やはりひよりんだ。
まるで狙ったかのようなバッチリのタイミングだね。良きかな良きかな。

「あ、先輩じゃないッスかー」
無駄に高いテンションは、今日も絶賛売り出し中のようである。
そんな彼女を窺い、ゆーちゃんの言葉を思い返しつつ訊ねた。

「些細な事なんだけどさ、ひよりんって夢について詳しいんだって?」
「まあ、漫画のネタとして使えるのかと思って、それなりに齧ったことはあるんですけど」

控え目な前置き。
夢の内容は思い出せないので、代わりに夢に対する概要を訊ねた。

「そうですねぇ。では、あくまで一同人漫画家のネタとして受け取ってください」

そのような振りで始まった講義。
けれども、得られる情報全てがピンポイントで既知のものばかり。
奇妙に思いつつも、

「すみませーん、お役に立てないようでしてー」
「いやいや、ありがと、ひよりん」

そのまま進展なく、会話終了へ至ってしまった。

632 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 06:02:12.23 ID:pR7k9edW0

昼休み/教室(3年B組)


「こなちゃん、おかえりっ!」

太陽の力で眠気も吹き飛び元気になったつかさと、
その隣でやんわりと会釈するみゆきさん。

「ほい、つかさ」
「ごめんねぇ」
「いいよ、つかさは人混みが苦手なんだから」

頼まれていた紙パックのコーヒー牛乳を手渡す。
それを右手で受け取ると、その手一本だけで器用にもストローを剥ぎ、飲み口に突きさしていた。

「珍しいものですね」
「何が?」
「お昼にコーヒー牛乳を飲んでおられるのがですよ」

聴いていたつかさが目をパチリとさせたが、
特に変わりも無く私達は談笑の中へと身を投じていった。

635 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 06:16:18.08 ID:pR7k9edW0

下校/市街地・駅

時間の流れが早く感じられるのは気のせいだろうか。
いや、得てしてパターン化した日常とはそういうものかもしれないな。

あれやこれやと考えつつ、あっという間に駅が見えて来た。
その別れの岐路を前にした時、

「オーマガトキ」

まだまだ青い空を見上げながら、つかさが呟いていた。
”大禍時”と聴こえたが、それがどうかしたのだろうか?

「不意に、思い出しちゃったんだ」

えへへっ、と恥かしげな様子。
記憶によればそれって、
「夕暮れ時のことなんだっけ? 怪異が起こり始める変遷の時だとか」
「そうそう」

いやに嬉しそうだ。
しかしみゆきさんの反応だけが違った。

「よく、そんな難しい言葉を御存知ですね」
感心されても困るよ。
何処かで誰かに聞いた、出所不明の受け売りなんだからさ。

後はいつもと全く同じだ。
大雑把にみても2年近く続けて来た私とつかさによる、みゆきさんの見送り。
やがて、私とつかさも別れ、一人自宅へと帰りついたのだ。

639 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 06:35:56.35 ID:pR7k9edW0

夜中/自宅(自室)


正に平凡だった。
私より遅れて帰って来た、ゆーちゃんへの迎えの言葉。
やはり不在だった我が父。

それらが過ぎ去って、あとは普段通りの必要事項を熟し、
そして今こうやってパソコンの前へと座り回想していたのだ。

ふと、父への連絡を入れようかと考えたが、
特に取り急ぐ必要もないかと思いなおし、やめておくことにした。

暇を持て余したので、特に目的も無いまま惰性的にパソコンを操作してみる。
WEBブラウザーを開いて、お気に入りからあの廃校舎の資料を得たページへ飛ぶ。
カラーで映し出されている木造校舎の建物。

「本当に、なんの変哲もなかったなぁ」

そのブラウザーを閉じると、次にネットゲームを嗜み、
午前零時を回る頃になると襲ってきた眠気に負け、床につくことにした。

641 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/09/25(木) 06:51:04.12 ID:pR7k9edW0

パー速は正直、いつまでもスレが残るので恥ずかしいんですよね
とはいえvipに次スレ立てちゃうと、新たな3日の猶予で書きつづけなきゃならんので身が持ちそうにないし

仕方がない、続きはパー速のほうで書かせて貰います
となると猶予の時間がかなり出来ることとなるので、暫く休憩でも挟む方向でよろしゅうです

一応、物語的にもキリがいい所ですのでね
とにかく、ここまで保守やら何やらで付き合ってくれた方々に感謝

疲れた

37 名前:5日目のメモ[sage] 投稿日:2008/09/25(木) 23:26:02.91 ID:jvalDYQo

【行動履歴】

選択肢なし。


【世界観】 日常
【 変 革 】 特に目立った変化は見られないようだ。
【 メ モ 】 いつもと変わらぬ今日だった。

39 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/25(木) 23:34:35.74 ID:jvalDYQo

――シュレディンガーの猫、か。
   箱を開けるまでは中に居る猫が死んでいるか生きているかは解らない。
   つまり、第三者が箱を開けて観察するまでは、その両者が共存した状態にあるということらしい。


   二つの世界が交わる事はない。
   どちらかに分岐を行えば、それが真実だと確定してしまうということだ。

40 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/25(木) 23:51:37.02 ID:jvalDYQo

不明/不明


「あっ!」

気が付けば、黒の世界に立たされていた。
どこまでも続く世界。
終わりの見えない世界。
ただ一つの小さな隙間。そこから漏れる光を除き、何も無い世界。

それらを一通り見回し終わった時、
既に前回までの状況が事細かに想起されていた。


「私に、伝えなければならない」


遥か遠くに在る光を求めて歩き出す。
重い体。
歩に呼応して響く床。
その何度も耳にしてきた夢の音を全身に受け、推測を行っていく。

何故、体が重いのか?

仮に、”あちら側”の自分が”あの時の自分”、
或いは”あの時の自分と近い行動を取る別の自分”だと仮定する。
上二つは全くの似て非なるモノで、意味合いも異なるモノではあるが、そこから唯一つだけの変わらぬ答えが導きだされる。

今、私が居る場所は、恐らく鏡の中。

この見解の信頼性は高いはずだ。
さらに力を奪われるような感覚は、鏡が魔を退ける、つまりは封魔の力が齎したもの……
いや、ただおさんの言葉を信じ切り、安易に結びつけるのは強引というものか。

とはいえ、無理にでも説明を付けてみればそれが正しいようにも思えてくるし、
何より正体が解けるにつれて精神的にも平静を保てるようになってきた。

とにかく、あの場所まで行かなければ。

41 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 00:14:40.70 ID:37R2BmAo

歩く、歩く、歩き続ける。

数々の疑問が残るが、その中でも特に気に掛かる点。
いや、早急に解決を計らなければならない難題。

何故、こちらでの私は記憶を失っている?

数日前の授業、あの男性教師の言葉を借りて考察を行えば、
あちらとこちらは確率分岐によって分けられた異なる世界、ということになる。
第三者が観察を行うまではその両の存在が共生した状態だとも。

待てよ、ともなれば、その第三者が私に当たるというのか?
つまりは今こうやって、あちらを観察している瞬間だけは表裏の世界を見通すことが出来る。
二つの可能性を”真実”とすることが出来る。
だから、ということなのか?

いや、そうなれば当然、別の説も浮上してくることになる。

私は、あちらに居る私がこれからどのような行動を取るのか知っている。
つまりは、時間軸が異なっているのだ。
端的に言えば、私は3日ほどを遡っている。
つまり、その間に得た記憶を失っている……とも考えられる。

しかしそうなると更なる疑問も湧き出てくる。
あちらとこちらで、廃校舎探索の日程が異なっているという点だ。

異なった世界は姿形や細部までも異なるというものなのか?
だが、そうなると先にあげた説などとの矛盾点が出てくるような気もする……

まさか、これは大鏡の何らかの力が見せていた幻に依るものだった、なんて事も?
それならば全てが都合として説明が付くが、だったら何故こうも廻りくどい事を……

いやいや、そもそもそんな不可思議が起こるものなのか?
本当の所は、実は私の夢で、あと数分後にはベッドから身を起していつもと変わらない朝が……


結局、答えは堂々巡りとなり考えを一つに絞れないまま、境界面へと辿り着いてしまった。

48 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 04:28:55.28 ID:37R2BmAo

橙の光に浮かび上がる雑多な部屋。
そこにはやはり、私が居た。
ベッドの上で雑誌を枕とし、布団に身を包んでいる。

”あの私”は、音を聴いていた。
その音に気を取られ、眼を覚ました。

やがて鏡の前に立ち、”あの時の鏡の中の私”と相対した。

全てが私である為に話がややこしい。
だが、”今ここに居る私”を含めての三人は、少なくとも別のモノと考えるべきだろう。

いや、そんな事はどうだっていい。
重要なのは、今この場において何をするべきかなのかだ。

私自身をA。
あの時の鏡の私をB。
今、あっちに居る私をCと置く。

Aであった私は、Bによって大鏡に興味を抱いてしまった。
ならば、それとは別の行動を取るべきだ。
だとしたらだ。

だとしたら即ち、私が取るべき行動は――

50 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 04:45:22.72 ID:37R2BmAo

何もしない。

そう決意すると同時に息を顰める。
体を硬直させ、一切の物音すら立てぬようにその場へ佇む。

途端、完璧な黒の世界が無言の重圧を掛けてきた。

それで正しいのか?
あの時とは別の手段で伝えればいいのではないのか?
もっと他に取れる行動があるのではないのか?
何も出来ないのだから、何もしないだけではないのか?

様々な色を持つ不安と焦燥が、生まれては消えていく。

本当にこれでいいのだろうか?

無言。
無音。
重圧。

そして、文字通り体が鉛のように重いという実状。

僅かな判断ミスすら致命的とも成り兼ねないこの状況で、
敢えて一切の選択権を放棄するという答え。

無論、正否は解らない。

けれども、お願いだ。
どうかあの私だけでも無事に居て欲しい。
それがあの皆、4人の無事にも繋がるのだから。


例え……
もう私自身が、元の世界には――

52 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 05:04:25.85 ID:37R2BmAo

眩しい。

それを手で払うようにしつつ目を開けると、
風で凪がれたカーテンの隙間から、秋空早朝の日光が涼よかに木漏れていた。

「また、何か夢を見ていたような」

けれどもその言葉を自認した時には、その感覚すらも曖昧な感情の中へと埋もれてしまった。
強く残されたのは正体不明の漠然とした焦燥感。
しかしそれも朝の済んだ空気の中では、次第に安堵へと姿を変えて行った。

学校へ行けば、皆と会える。

身を起してカーテンを掴み、一気に開き切る。
心地よい音を立て左右に切り裂かれた隙間からは、
世界を煌めかせている太陽が微笑みかけてきた。

明るい街。
光に満ちた世界。

それらを見ているだけで心が躍る。

高い空。
雲一つない青。

やがて私の中にあった些細な不安や悩み。
その全てが遥か彼方へと溶け出していった。

53 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 05:24:53.27 ID:37R2BmAo

早朝/自宅(キッチン)


卵焼きに冷凍素材のチキンバー。
野菜を刻みサラダとして盛りつけ、おにぎりも3個拵えた。
ついでにウィンナーとリンゴも入れておこう。

「あ、あれ? お早う、お姉ちゃん」

寝ぼけ眼でパジャマに身を包んだままゆーちゃんは、
台所に現れるなり欠伸と驚きを噛み殺していた。

「ほい、ゆーちゃんのぶんのお弁当」
「え、ありがとう……でも、今日は私が朝食当番だったような?」
「なんだかわかんないけど、早くに目が覚めちゃってさっ」
「そうなんだ」

たったの一言で納得してしまう程に素直。
やっぱり、ゆーちゃんは可愛いや。

「それじゃあ、朝ごはんにしようか」
「うん、お皿並べるね」

こうしてニュース番組を肴に、朝の緩やかな時間が流れ始めたのだ。

54 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 05:33:23.74 ID:37R2BmAo

朝/自宅(居間)


普段ならば私がようやくして置き抜けてくる頃合いとなった時分。

「あ、電話だ」

テーブルに置いていた携帯電話が朝の穏健を掻き乱していた。
まったく、空気を読んで欲しいものだね。

辟易としながらもディスプレイを覗く。

「お父さんからっぽい」

私の言葉で、箸を止めていたゆーちゃんが苦々しく笑った。

「叔父さん、寂しかったんじゃないでしょうか?」
「そうかもね」

私も苦笑いで返し、通話に応じることにした。

55 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 05:42:36.06 ID:37R2BmAo

『元気か?』
「当然」
『怪我はしてないか?』
「してないよ」
『ご飯、食べてるか?』
「お父さんが電話を切ってくれれば食べられるよ」

まるで遠く離れた家族へ掛けるような内容だね。
たかだか数日離れただけだってのに。

『変わりはないか?』
「無いよー。お父さんこそどうしたの?」
『俺か? まあ、俺はちょっとな……』
「引っ張った所で、私は突っ込まないよ?」
『え、そ、そうか……』

このまま会話を終えてしまうのも、なんだか気の毒かな。
それに廃校舎へ行ったことをお父さんにだけ秘密にしておくのも、些か心が痛む気がするし。
深夜に出かけたという部分と山中である部分は隠して、有り来たりな鏡、という線でちょっとだけ話してあげよう。

そう思い立ち、私は追想に身を委ね語り出していった。

56 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 05:55:50.45 ID:37R2BmAo

『なるほど、今も昔も怪談とは語り継がれるものなんだな』
「ふぇ、どういうこと?」
『いや、お前は”噂”を確かめる為に大鏡を調べに行ったんだろう?
 その”噂”は時間帯が”昼の3時”でない点を除けば、一字一句違わないくらいに俺も知っている』
「へぇ、そうなんだ。ちなみにお父さんは何時、誰から聞いたの?」

言うまでもなく、”昼の3時”は偽装である。
それ以外の部分と”噂”については概ね元ネタのままだ。

『お前こそ誰から聞いたんだ?』
「私? ……誰からだっけ。書物か漫画かネットか人伝か……はっきりとは覚えてないかも」
『……そうなのか。まあ、都市伝説やら怪談なんて、そんなものかもしれないけどな』

やや腑に落ちない、といった様子でお父さんは沈黙した。
話が終わってしまったのだろう。

「じゃあ、切るね!」
『うぉいうぉい、ちょっと待て! お願い、切らないで!』

まったく、いい大人なのに情けないなぁ。
そろそろ子離れして欲しいよ。

『実は、その話には続きがあったことを今、思い出した!』
「それ、取って付けてない?」
『え、まさかな。そんなね……ハ、ハ、ハ……』
「うわぁ……」

あまりにも不甲斐ないお父さんへの同情の念から、私は耳を傾けてあげることにした。

58 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 06:05:31.93 ID:37R2BmAo

昔々ある所に、実にカッコイイそうじろうという学生が居りました。
その彼の隣から片時も離れない、かなたという女生徒は、そうじろうの幼馴染で……え、それは前に聴いたって?
いつ話したっけ俺?
まあいいか。いや、ボケてはないぞ、まだまだお父さんは現役バリバリだからな。

あ、ところで、かなたとの肝試しについては聞きたくない?
え?
『どうせ、本来ならお母さんに頼りきりだったってのに、自分に言いように事実を捻じ曲げて話すんだよね』 だと?
失敬だぞーこなたー。
おとーさんがそーいうことをする訳ないだろー?

はぁ……こうやって娘は親から遠くなっていくんだな……。

わかった、わかったから切らないでくれっ!
よし、それじゃあ始めるぞ。

語り部、泉そうじろうイキマース。

60 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 06:20:54.05 ID:37R2BmAo

ほら、学校っていうとさ、新校舎があって旧校舎があるだろう?

……え、それも知ってるって?
こなたはお父さんに似て物知りだなぁ。
そうか、じゃあ前置きは無しだ。

大鏡、それに纏わる怪談を喚ぶ方法として次のものがあるのはお前もさっき言ってたよな。
何れも時間帯は午前3時なのは端折るぞ。

壱、カミソリを咥えながら鏡を見る。すると、結婚相手が映り込む。
弐、呪いたい相手の所持物等を持ち、呪文を3回唱えてから鏡と共に杭で突き刺す。すると相手の死に顔が映る。
参、午前3時までは鏡に背を向けて立ち、3時丁度になったら振り返る。これの結末は不明。

そして更にもう一つ。

肆、鏡の前で別の鏡を持って立ち、二つの鏡を向かい合わせる。

どうなるか解るだろう?
つまり、合わせ鏡だ。
無限に続く鏡の世界が、所持者の姿と共に幾重にも描き出されるという訳だ。

それをやるとどうなるのかだって?

いや……そこまでは知りえないが。
え、俺が役立たずだって?
こ、この野郎っ! お父さんは偉大なんだぞ! お前はそこらへんをもっと――

あ、はい、かがみちゃんの盗撮の件ではお世話様になりました。
はい、はい、存じております。ムシャクシャしてやったんです、女子高生なら誰でも良かったんです。今では反省してます。
でもさ、良かったら今度つかさちゃんとみゆき――

……あ! ごめんなさい、今行きますから!

すまん、こなた。
呼ばれたんで切るぞ。

なんだか解らないが、お父さんが居ない間も体には気をつけろよ。
ゆーちゃんにも伝えておいてくれ。
じゃあ、またな!

61 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 06:41:37.83 ID:37R2BmAo

『ああ、そうそう忘れてた』
「んぁ?」
『前も言ったような気がするんだが、怪異が起こるのは決まって夜とされているよな』
「それは既に知っているよ」
『そうじゃ無いんだよ、逆に言えば日が昇ると怪異は息を潜めてしまうということなんだ。つまりそれは、怪異の終了を告げることになる』
「どういうこと?」
『それが真実だと、確定するってことさ』
「……」
『まあ、不確定な夜の怪異は夜だけのうちで、変遷期間を過ぎれば――あ、わかりました! わかりましたから、行きます!』

電話口から数人の男の声が聞こえると同時に、お父さんが慌てふためいていた。
一体、何をやってるんだよ。
まあ、突っ込むのは野暮だ、と言われた事があるので訊かないけどさ。

「……はぁ。なんにせよ、お父さんこそ身体にゃ気をつけなよ? じゃあね、頑張って」
向かいの席に居たゆーちゃんも咄嗟に、
「叔父さん頑張ってくだい!」
事情を知ってか知らずかエールを送ったようだ。

程無くして、単調な電信音が通話の途切れを知らせていた。

それを聴きながら通話内容を反芻していく。
合わせ鏡、か。
なにやら胡散臭いような気もするが、確かに合わせ鏡には力があるようにも思えるのは確かだ。

「ま、別にだからって訳でも無いけどさ!」
「どうしたの?」
「気にするでない、気にするでないぞ。という訳で、私は先に学校へ行くね!」
「意外と早いんだね」

ゆーちゃんは新鮮なものでも見るかのような眼で、私を玄関先まで見送ってくれた。

65 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 07:23:48.28 ID:37R2BmAo

登校/---


空いた電車は、いつ見ても物珍しい。
悠々と席に着けるというのが新鮮な空気を醸し出すのだろうか。

なんとなくだけれど、早く皆と会いたい。

その想いに駆られ、遅刻するでもないのに早歩きで登校路を上って行く。

やがて校門を潜って屋内へ。
玄関、階段、廊下。
その何れにも人が見当たらないということが、今の時刻を指し示している。

そして3年B組の教室。

静に満たされた校内の理を乱さぬよう、私は扉を滑らせていった。

67 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 07:42:10.18 ID:37R2BmAo

朝/教室(3年B組)


「おはようございます、泉さん」
「おはよう、みゆきさん。今日も早いんだね」

冷たさの残る教室の中で私とみゆきさん、ただ2人だけの登校者。
特にこれといった用はないけれど、意識するまでもなく挨拶から続くように会話へと繋がっていく。

「もうすぐ、秋なんですね」
「旧暦上では冬だけどね」

いつかの言葉を冗談交じりに呟くと、みゆきさんも朗らかに笑っていた。
それから暫くするとふと思い立ったかのように、

「一日千秋とは云うものですが、わたくしもそこはかとなく待ち遠しいものですね」
「秋が来るのが?」
「ええ。何故かと仰られると答えに窮してしまいますが、
 季節が巡るというものは、自然と人の心を弾ませるのかもしれません」
「うんうん、そういうものかもしれないね」

右手を頬に当てる彼女の仕草は、言葉では表せないほどに様になる。
絵に描いたような、という形容詞は正に彼女に贈るべき言葉なんだろるな。

「ところで」

朝仕入れたお父さんの情報。
自身で気が付いた時には、それを何となく口にしてみようと決心していた。

68 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 08:03:23.14 ID:37R2BmAo

「合わせ鏡、ですか?」
「そうそう」
「なんだか不吉なものですね……」
「でしょ、それでさ」

話が進むにつれて、みゆきさんの優雅な表情が忽ち曇っていく。
けれども彼女は何事に対しても強い好奇心を持っている性からなのか、
話の腰を折らずに最後まで静聴で通してくれた。

「まあ、慌てたお父さんの造形話である可能性も否めないけどね」
「どうなんでしょうか」

うふふっ、と口元に右手を当てて笑ったみゆきさんは、
今度はわたくしがとの面持ちで言葉を返してくる。

「実はわたくしも少々ではありますが、怪談に興味を抱きまして」
「うん、それでそれで?」
「母に綾桜学園に纏わる謂れを窺ってみたんです」
「そしたら、どうだった?」
「校門を過ぎた脇の所に、大きな桜の木が一本だけありますよね」
「あるね」
「あれにも何か怪談があったそうですよ」
「……で?」
「あぅあぅ……その眼はやめてくださぃ……」

しかしみゆきさんはコホン、と咳払いで取り繕うと、
「ですが今回はしっかりと話を仕入れてありますので」
やや自慢げにも数日前からの成長ぶりを窺わせてせていた。

69 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 08:15:42.72 ID:37R2BmAo

みゆきさんの話を要約すると、
語り部はみゆきさんの母である”高翌良ゆかり”さんであるらしく、
かつて陵桜学園を学び舎としていた時に聴き受けた噂とのことらしい。

何やら、桜の下には亡骸が埋まっているらしいということや、
その亡骸はかつて陵桜学園で行われた過度な虐めの末に死亡した生徒のものだとか、
その後、隠蔽を図った虐めっ子たちが屋上から集団飛び降りを決行したとか、
さらにはその飛び散った血液で桜が紅に染め上げられたとかいうことらしい。

「今でも時々、桜が血のように紅く染ま事が有るらしいとのことです」
「えらく物騒な話だね……」
「ええ、母の代では”鮮血桜の怪”として有名だったそうです」
「へぇ……」

なんにせよ朝から振るような話題ではないよね。
しかし意に反して、それからも着々と話は弾んでいったのだった。

71 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 08:30:22.75 ID:37R2BmAo

朝/教室(3年B組)


朝のホームルーム直前になって姿を現したつかさは、
なんだか浮かない顔で俯いていた。

「どうしたのさ?」
「うん……」

折った指を下唇に当てる仕草。
つかさは余程深く考え込んでいたのだろうか、
「あのさっ!」
突如大きな声とともに顔を上げたのだ。
「落ち着きなよー」
「あ、ごめん」

一呼吸。

「それで?」
「……あのね、夢を見たんだ」
「夢?」
「そう、わたしはコレの所為だと思っているんだけど……」

そういってポケットから取り出して見せる。
つかさの小さな掌に収まるほどのサイズ。
上等な和紙、純白で人間を模った飾り物。

紛れもなく、あの日、あの場所でつかさが拾い上げていたヒトガタだった。

72 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 08:41:16.55 ID:37R2BmAo

「わたし、言ったよね? ずっと肌身離さずに持っておこうって」
「うん」
「それでね、寝る時も持っていたんだけど……」

またも俯いていく。
つかさが一番の怖がり症であることは知っている。
けれども、夢だけでそれほどの恐怖を与えられるものだろうか?

「つかささん」
みゆきさんがニッコリと撫で、優しく宥めていた。

「ありがとう。えっとね、それで多分夢の中でだけど、暗い場所に居たの」

多分?

「あ、えっとごめん。順番に話すから」
「わかったから、ゆっくりね」

みゆきさんの服の裾をぎゅっと掴み、つかさは語り始めたのだ。

73 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 08:59:40.41 ID:37R2BmAo

暗かったの。
真っ暗で、ぜんぜん何も見えなくて。

でもね、ちょっとだけ明るい部分があって。
とても狭くて……小窓っていうのかな。
ずっと遠くに。
だからわたしは、そこへ行こうと思ったんだけど……

歩くとね、床が音を立てるの。
とっても響いて怖くて怖くて……
でも暗い所より明るいところへ行きたいし、仕方ないから歩き続けたの。

ぎゅっと、このお人形さんを握ったままで。

それでようやく着いて、明るい所へなんとか出れないかなって考えてみたんだ。
でも、入れなかったの。
そこの中に。

え?
どういう感じだったかって言われても……見えないんだけど壁があるっていうか。
うーん、よくわかんないや。
いま考えてみると、狭かったからどっちみち体は通らなかった気がするけど。

それでわたし、困っちゃったんだけど、向こう側は見えたから中を見てみたんだ。
あれ、外なのかな?
ううん、どうでもいいよね。

とにかく覗いたの。

そしてね、気付いたの。
そこね、わたしの部屋だったんだ。

74 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 09:11:35.37 ID:37R2BmAo

でも電気が点いてなくてとっても暗いし、
狭い場所からじゃ中もよく見えなくって。

ベッドにはわたしが寝てるのかなって思ったんだけど、
そっち側は見えなくて……

月の明かりだけだったよ。
でも、それでもこっち側よりは全然マシだった。
だから小窓の傍でずっと立ってたの。

けどやっぱり暗いから怖くて怖くて……

お人形さんに祈ってたの。
『早くここから出してください』って。
何度も何度も何度も何度も……

そしてずっと時間が経ったような気がして、それでも暗い中に居たままで。
ああ、ずっとここに居るのかなって思うと泣きそうになっちゃって。

怖くて怖くて、もう駄目かなって何回も考えちゃって。
そして気が付いたら寝てたの。
違うよ、寝ちゃったんじゃなくて、寝ていたの。

わたしの暗い部屋で、ベッドの上にね。

75 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 09:28:10.65 ID:37R2BmAo

不思議なんだけど、気になったの。
鏡が。
今考えてみると、なんでだろう?

わたしの部屋にはこのくらいの置き鏡があるんだけど、
うん、それが机の上に置いてあるの。
それで怖かったんだけど、寝たままじゃ見えないから……
お布団を被ってちょっとだけ見てみたの。

でも、特におかしな部分はなかったんだ。
うんとね、横からだったから鏡の部分は見えなかったんだけどね。
とにかくなんにも無かったんだけど、やっぱり気になったの。

鏡を調べなきゃいけないって、そう思ったの。

なんでそんなこと考えちゃったんだろう……
だから、そのままお布団を引き摺っていってね……
うー……怖いよぉ……
うん、ゆきちゃんありがとう……。
それで、それでね。
鏡の中を覗き込んだら――


知らない女の人が映ってたんだ。


たぶん、わたしと同じくらいの歳で、髪を二つに結んでて。

すぐに幽霊だってわかった。
でね……その人が叫んでたの。
声は聞こえなかったけど……もしかしたら泣いてたのかも……

わたし、凄く怖かったからすぐにお父さんを呼びに行ったんだ。
でもお父さんと一緒に来た時には何にもなくて。

そしたらお父さんがね、色々と話を聞かせてくれたの。

76 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 09:42:28.88 ID:37R2BmAo

「余計なモノまで連れ帰って来たのかもしれないな」

だって。

モノについた霊が、えっと、この場合はヒトガタについた霊がそれなんだけど。
あの廃校舎のような場所にはやっぱりそれなりの”流れ”があるらしくて、
そこに落ちていたものを持ち帰ってきちゃったから、ついて来たんじゃないかって言われて……

そしたら、また怖くなっちゃって……

それでどうしたらいいのかお父さんに訊いたんだけど、
「災を成すかどうかはわからないし、無闇矢鱈と焼き払えば逆に祟られる恐れもあるから」
なんて言って何もしてくれなくて。

最後には、
「下手に捨てたりは、しないほうがいいかもしれない。とにかく、少しの間様子を見よう」
って脅かされちゃうし……。

どうしよう、わたしこのお人形に呪われちゃうのかな……?
嫌だよそんなの……嫌だよ……

78 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 10:01:36.48 ID:37R2BmAo

「ほ、ほら、大丈夫だって」
「つかささん、しっかり」

ついに、つかさは泣き出してしまった。

よっぽど怖かったんだろうな。
咄嗟に抱き寄せた体からは震えが伝わってくる。
みゆきさんも慌てて諫めてはいるが、
流石の彼女を以ってしても零れ落ちる涙を止めるには至難を要することが表情から窺えた。

「うーい、お前ら席着けー……えぇ?」

常套句と共に教室へ入って来た黒井先生の言葉も、
瞬時に疑問符へと変えてしまうほどの力。

見回せば、クラス中の注目を集めてしまっている。

「泉さん」
みゆきさんの耳打ちを受け、

「先生ぇー、ちょっと保険室へ行ってきます!」

瞬目で降りた許可の下、三人で教室を後にした。

80 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 10:31:09.70 ID:37R2BmAo

一時間目/保険室


保健室で紅茶を啜っていたふゆき先生に話を通したところ、
「お好きにどうぞ」
という旨の優しいのか放任なのか今一つわからない返答を頂いくこととなった。

まあ、理由をあれやこれや捏造する手間が省けから助かったんだけどさ。

ホームルームの時間は既に過ぎ去っており、
今は座り心地がまずまずの椅子に腰掛けて、やんわりと差し出された紅茶に口を付けていた。
ふゆき先生はというと、それ以降は離れた位置で読書に耽っている。
時々こちらを窺うような視線を感じるが、それも今ではどうでも良かった。

「どうしよぉ……」

相変わらずつかさはぐずっていたが、大分落ち着きを取り戻したようではある。
そのことに安堵しつつも、私は新たに一抹の不安を抱いていた。

「もし、本当に憑かれていたとするなら不味いかもね……あ、いや、”もし”の場合だよ!」

ふぅ、危ない危ない。

「だとしたら、どう致しましょうか? 何か打てる手立てはないのでしょうか?」

尤もだけれど、つかさの父である本職の方が様子を見ると言っているのだ。
私達が動く余地が残されているのか怪しいところである。

83 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 10:51:28.62 ID:37R2BmAo

「ちょっと貸してよ」

つかさに言うと、再びポケットから取り出した。
純白で綺麗なヒトの形。

「これ、そう悪いモノには見えないんだけどなぁ」

ヒラリヒラリと蛍光灯に透かして見る。
やはり、とても悪意のありそうなモノとは思えない。

「ただおさんも悪意があるモノとは言ってなかったんでしょ?」
「そうは言ってなかったけど……でも、鏡の中に別の人が映るなんて……」
「何かを、伝えたかったとかなんじゃないの?」
「……何を?」
「いや、ただおさんの受け売りだけどさ。何となく”言葉”なんかが聴こえなかった?」
「ううん、声は聴こえなかったし」

つかさはそう言っているが、何故か私はこれが無性に気に掛かってしまう。
しかし、だからといってどうすればいいのだ。
私が一人、手詰まり色濃厚かと思い始めた時。

「あの、こういうのは如何でしょうか?」
ずっと考える仕草だったみゆきさんが諸手を結び、
「もう一度、あの場へと赴くんです」
一つの妙案を提示したのだ。

84 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 11:08:27.22 ID:37R2BmAo

即座に問うた。

「何故?」

直後に返答。

「連れ帰って来たのであれば、再び置いてしまえば済む話なのでは?」

云われてみれば確かに単純明快なロジックではある。
けれども、そう端的な問題なのだろうか。
勿論、持ち帰って来た”ヒトガタ”は元の鞘へと収まるだろうが、
それに憑いていたらしい”何か”までもが大人しくなるとは言い難い。

だから、

「一理はあるけれど、安直過ぎないかな?」

反論を呈した。

「やはりそうでしょうか」

途端にみゆきさんも窮してしまう。
考え込んだ末、というよりは手詰まり故に直感に頼ったという所だろうか。

再三の沈黙。
手持ち無沙汰を解消する為に紅茶へと手を伸ばすが、いつの間にかそれも尽きていた。
それを遠くから窺っていたのだろう。

「あのぉ〜、よろしかったら先生にも教えて貰えないかなぁ?」

ゆったりと大らかな声で、急須片手のふゆき先生が割り込んできたのだ。

86 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 11:28:33.53 ID:37R2BmAo

「なるほどぉ〜、そんなことがあるんですねぇ」

感心している場合ではないでしょうに。

「あらあら御免なさい」

それが伝わったのかやんわりと訂正していた。

それにしてもこの人、みゆきさん以上にのんびりしているなぁ。
体調を崩すことが多いゆーちゃんの、良き世話役であると納得させられちゃうよ。

「それで、何か解決策に思い当たりませんか?」

ふゆき先生は少しだけ困った様子を匂わせた。
ホラーやオカルトを齧っている、と前置きをした彼女でもやはり手詰まりなのか?
けれどもその答えは、私の予想とは異なっていた。

「何も端から悪いモノと決めつけてしまうことはないでしょう?
 そのような決めつけのもとに解決を図ることには、賛同できません」

それは解る。
私もそう思うから。
けれども、論点はそこではない。

「その見解には私も同意します。
 ですが、つかさが何かしらに見舞われていることだけは確かなんです。
 このまま放っておくのも酷というものなんじゃないでしょうか?」

紅茶を啜る彼女。

「まぁまぁ、ゆっくりと説明させてください」

天地がひっくり返ろうとも、この人だけはそのままでいられるんだろうな。
などと感じていた。

87 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 11:47:37.68 ID:37R2BmAo

「必要なモノは、必要とされる人の元へと転がり来るものなのですよ」

ただおさんと同義の言葉か。
その僅か数日前の出来事でも、膨大な情報が錯綜し続けた今となっては懐かしくも思えてくる。

「結論から言っちゃうとぉ、それは貴方に拾い上げて欲しかったのではないでしょうかぁ?」
「何故ですか?」
「それは、貴方達が必要としているからですよ」
「根拠は?」
「それでは反論を出してもいいかしら?」

一瞬、ふゆき先生の目の色に威嚇の色が浮かんだ気がした。
自然と身構えてしまう。

「貴方に、そのヒトガタについているモノが負の要素を持ち得ていると証明できますか?
 または、災を成すと証明できますか?」

答えは一つだ。

「それは不可能です、なぜならば証明に用いるピースが足りていませんので」
「ですよね?」
「けれども同時に、”何か”を招かないとも証明できませんよ?」
「それでいいんですよ」

何処がいいのだろうか?
訊ねると、反射のように答えを返された。

「わからないから、確かめるのでしょう?」

90 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 12:24:50.62 ID:37R2BmAo

確かめる、か。
しかし現時点において最も気に掛かる点が、私達の目の前には立ちはだかっているのだ。

「どうして、”鏡の少女”は泣き叫ぶような顔をしていたんでしょうか?」
泣き叫ぶ、という表情からは負の要素としてしか連想できないからだ。

ふゆき先生は質問によって再び、紅茶を啜り始めた。
それらの仕草から、どうやら彼女は考える間を置く為の手段として、それを行っているのだと私は悟った。
カチャリ。
ティーカップが置かれる。

「感情は、一つだけではないでしょう?」
「はい?」
「喜怒哀楽、そしてそれらだけでは表せない程に細やかな情緒が混在しています」
「真逆にあって対を成す、というやつですか」
「あらあらぁ、どこかの誰かのような口ぶりなんですねぇ」
「え?」
「ふふふ、それで結局のところ言いたいのはですね、感情とは非常に厄介なものなのだという事なんですよ」

またも紅茶に手を伸ばした彼女だったが、
「あら、空っぽ」
などと苦笑いしていた。

「それで、どう厄介だというんですか?」
「そうねぇ、こんな経験はないかなぁ?」

新たに茶を継ぎ足し、それを片手に続けた。

「嬉しいはずなのに泣いていた。怒っていたのに笑ってしまった。
 哀しい筈なのに涙をこらえた。楽しい筈なのに拒んでしまった」

「それってつまり……」
「なにも、表情や見掛けが内情と直結しているとは限りませんよ。
 時には自分自身でさえ掴み取れないくらいに複雑だったりしますからね。
 なのでむしろ、直結している場合のほうが稀だとは思えませんか?」

もしかすると今流行りのツンデレだったりして。
などと冗談めかした口調で、ふゆき先生はクスリと笑った。

「それで、どうすればいいんでしょうか?」
「きちんと会って話してみれば、例え相手が悪意を持っていようとも善き方へと動かせるはずです」
「つまり?」

カチャリ。

「同じ場所、同じ時間、同じ条件。そこで待つべきだと思いますねぇ」

そう言い終わると、にこやかに微笑んでいた。

91 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/26(金) 12:48:17.52 ID:37R2BmAo

二時間目の中休み/廊下


たっぷりと話し込んでから廊下へと出た時、辺りは喧騒に包まれていた。
どうやら休み時間が訪れていたらしい。

『鏡ちゃんによろしくね』
などと愛称まで付けていたふゆき先生に見送られ、
私達も教室へと歩いていく。

その道中での反芻。

同じ場所。
即ち廃校舎、大鏡前。

同じ時間。
即ち午前3時。

同じ条件。
即ち私達3人。


全ての確認は済ませた。

決意を抱く。
そして訊ねる。

「ねぇみんな、もう一度、あの場所へ行ってみない?」

流れゆく人波。
その中心に堰き止めるかのように佇み、仲間への言葉。

「わたしは、行くしかないと思う」
不安げな瞳とリボンを揺らすつかさ。
「わたくしも、その腹積りです」
強く、きっぱりと答えるみゆきさん。

「そう、それじゃあ決まりだね」

思えば、全てが始まりの地点から定められていたのかもしれない。
不可思議ではあるが、最初に訪れた時にも何故かあの場所へ惹き付けられるような感覚を覚えていた。
さらに、不自然とも思えるヒトガタの拾得。
つかさの夢と、怪。
そして鏡の少女。

いや、もういい。
あの場所へ行けば全てが分かるはずだ。
そう。


――答えは、決まった。

118 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/27(土) 01:53:50.93 ID:bttgaPoo

下校/学園近郊


入念に手筈の再確認を重ねた放課後。
それを終えてから帰路を辿り始めた時、街は薄紫染んだ暮れなずみの中にあった。

山陰を目指し限りなく傾き続ける太陽。
対するように頂点を目指し昇り始めた月。

昼から夜へ。
日常から非日常へ。

そして。
それらが混在した変遷の一間。
大禍時。

「手筈は飲み込めたかな?」
私が最終確認を行う。
あの日あの時と同じ言葉で。

「ええ、あの時と同じ条件ですよね。わたくしは先ず、つかささんのお宅へ」
「そしてわたしが、ゆきちゃんと一緒にこなちゃんの家へ」

「うん、ばっちり。私はチキンカレーを作って待っているよ」

既にゆい姉さんには話を通してある。
交渉の際も、姉さんは解っていたかのように快諾してくれた。

私達3人に外せないほどの案件もない。
さらに私の父も不在である為に、引き止められる可能性を考慮する必要がない。
次いで翌日は土曜なので、今晩は十二分に時間を使える。

全ての計画は、疑わしいほど順調に進んでいる。

あとは、待つだけだ。
世界が暗がりに沈み切るのを。

122 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/27(土) 03:16:48.71 ID:bttgaPoo

晩/自宅(キッチン)


「ねぇ、お姉ちゃん」
「ん、どったのゆーちゃん?」
「えっと……高翌良先輩達と、何をするの?」
「ちょっと遊びに行ってくるだけだよ」
「あのね、わたし、高翌良先輩と少しお話したいんだけど……邪魔じゃないかな?」
「邪魔じゃないよ。むしろ歩く萌え要素による二人組ユニットの完成が、」
「え?」
「いんやいんや、こっちの話こっちの話。それより、ちょっと味を見てみてよ」
「いいよ」
「……どう?」
「熱っ」
「皿に掬いなよー、ほい」
「ありがとう。うーんとねぇ……美味しいと思う」
「ほんと?」
「うん!」
「そっかそっか。それじゃ、私はゴミを出してくるから暫く頼むね」
「わかった、任せといてよ」

123 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/27(土) 03:36:25.42 ID:bttgaPoo

深夜/自宅(居間)


「お待たせーっ、ゆい姉さん到着だよー!」

千切れんばかりの甲声。
扉を開け放ったゆい姉さんは、やはり左手を大いに振っていた。

「じゃあね、お姉ちゃん。高良先輩、柊先輩」

既に準備を済ませていた私達3人と、
その歓談の輪に混じっていたゆーちゃんとの間で短い別れを交わした。

それぞれが立ちあがる。

「場所は、またあそこでいいの?」
「うん、頼んだよ」

私に続いて2人も同義の言葉を掛けていた。

「じゃ、早速行きましょっかい」

いつかのように急かすゆい姉さんに先導され、私達は賑やかだった一間を後にした。

124 名前:6日目のメモ[sage] 投稿日:2008/09/27(土) 03:39:47.53 ID:bttgaPoo

【6日目】


【行動履歴】

選択肢なし。


【世界観】 日常?
【 変 革 】 特に目立った変化は見られないようだが……。
【 メ モ 】 あの場所へ行かなければ。

125 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/27(土) 03:40:32.92 ID:bttgaPoo

               − 七日目 −

126 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/27(土) 03:55:37.93 ID:bttgaPoo

深夜/車中(成実ゆい)


運転はゆい姉さん。助手席にみゆきさん。
後部座席につかさ。その隣に私。

4人で丁度のスペース。

カーラジオからは軽快なJ−POPをバックに、時刻が深夜1時を廻ったとの旨が伝えられていた。

坦々と続くメロディ。
沈々とした車内。

それぞれに何か思う所があるのか、誰しもが口を開かない。
私もその中の一人である。
ただ流れゆく景色を睨むように探り、あの時と同じように心を固めているだけだ。

やがて街灯が減り、家屋が疎らになり、木々が盛りだし、道幅が狭まり……

蛇のように捻じれ出した山道を以って、目的地が間近に迫った事を実感していた。

130 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/27(土) 04:11:55.02 ID:bttgaPoo

県内/山中(廃校舎・校庭)


「うわっ、いつ見ても酷いねこりゃあ。
 こんな所に皆が来たがるなんて、お姉さんびっくりだよ」

驚嘆するゆい姉さんだがその内容とは裏腹で、その声に物怖じの様子が一切混じっていない。
伊達にノリだけで生きている人ではないようだ。

「やっぱり怖いかも……」
つかさが恐怖露わに廃校舎を見遣っていたが、
「でも、行かなきゃ」
眼前まで迫った目的を前に心を決めたようだった。
その手に、純白のヒトガタが握りしめて。

みゆきさんも続ける。

「おかしな話ではありますが、わたくしは再度ここを訪れる事が分かっていたような気がするんです。
 理由を述べることは難しいのですが、直感というものなのでしょうか」

うん、私も同感だよ。
そして恐らくつかさもね。

「じゃあ、こなた。お姉さんはどうしようか?」

ゆい姉さんの問い。
だから私は答えた。


1.「送ってくれてありがとう、後はこっちで何とかするから帰っていいよ」

2.「悪いんだけど、近くで待機して貰えないかな?」


>>132

132 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2008/09/27(土) 04:15:29.71 ID:Anrtp7Uo



136 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 04:29:05.92 ID:bttgaPoo

「悪いんだけど、近くで待機して貰えないかな?」

私は答えた。
あの時のように。

「ほいほい、そんじゃ朝までコーヒー一杯で粘ってやんよ」

件のファミレスか。
ゆい姉さんには迷惑を掛けてばかりな気がする。

「うん、ごめんね。二度も時間を使わせちゃって」
「あははっ、いいのいいのダンナが居ない間の暇潰しみたいなもんだからさ!」

そう言って闇色の中へ快活な残響を残すと、ふいに真面目な顔になって告げられた。

「みんな、怪我なんかはしないでね。気を付けて遊ぶんだよ、じゃあね」

浅い微笑みを残して彼女は車に乗り込んだ。
やがて私達3人に見送られながら、排気音と共に遠ざかって行った。

137 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 04:41:01.73 ID:bttgaPoo

午前2時00分/校庭


狭苦しさによる圧迫感すら感じる校庭に佇み、
私、つかさ、みゆきさんの三人は廃校舎の全貌を睨み見ている。

割れたガラス。
くたびれ倒れた玄関扉。
生い茂った草木と樹木。
そしてそられに侵食されつつある2階建ての木造校舎。

……戻って来たんだ、この場所へ。

自然と互いに見合わせ、無言で頷いた。
先へ進もうとの言葉。
それが声無くして伝わって来た。

「じゃあ、懐中電灯を持っている私が先頭、みゆきさんが後尾で」

風の戦ぎと草木の揺れる音だけか満ちている山中。
私達は足音を立てないように歩きだした。

139 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 04:58:41.03 ID:bttgaPoo

午前2時05分/廃校舎内(1階)


ミシリと鳴いた玄関扉を足蹴に、正面玄関へと滑り込む。
その脇にはやはり劣化の一途を辿り続ける下駄箱。
正面突き当りには左右への岐路。

月明かりすら阻まれた校舎内は、ただ只管に闇の中にあった。

けれども一度来た事があるという地の利を活かせば、
暗がりに阻まれた視界など何の制約とも成り得ない。

「東側が職員室。大鏡は、西側だね」

自己暗示のように呟き、突き当りを左手に折れる。
その際、念を入れて東側を照らしだし、”何か”が潜んでいないかの確認も済ませた。

歩く。
床が呻く。
歩く。
風が囁く。

言い知れぬ重圧は、やはり夜に潜む魔力によるものなのだろうか。
それとも視認し得ない”何か”が私に語りかけているのだろうか。

いや、どちらでもいいか。
逃げ出す訳にはいかないのだから。

「そこ、蜘蛛の巣に気を付けてください」

背後から、みゆきさんが注意を促していた。
その声を聴き取り慌てて避ける。

もうすぐだ。
もうすぐなんだ。

順調に近づきつつある目的の地。
私達は、歩き続けていた。

140 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 05:15:20.86 ID:bttgaPoo

見てはいけないと解りつつも、人は見てしまうものだ。
階段を左手に添えた廊下突き当たりの一角。
傍には窓が無く、光さえも差し込まない完全な黒の部分。

そこを、誘われるように照らし出した。

赤だった。
くすんだ床にベッタリと張付いた赤銅の跡。

紛れも無く血液。

「カラス……消えてますね……」

目を伏せたつかさを胸に抱いて、みゆきさんが窺っている。

「多分、動物が持って行ったんだと思う」

簡素な見解。
モノが残っていなくて良かったと、無情にも些かの安堵感を覚えてしまった。

「早く、早く先へ行こうよ……」
「そうだね」

懐中電灯を握り直す。
私は心の中で密かな追悼を述べつつ、階段へと足を掛けた。

142 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 05:31:08.84 ID:bttgaPoo

ギシッ……ギシッ……

一歩一歩の度に怨みがましい声を上げる階段。
その相変わらずの禍しい音色に、思わず耳を塞ぎたくなってしまう。

「古いモノには魂が宿る、か」

仮に廃校舎に心が宿っているとするならば、この現状に一体何を思い考えているのだろうか。
かつては栄え必要とされ、小規模ながらも数多くの教育者や生徒達を見送って来た学校。
しかしやがて衰退の一途を辿り、都市部へと人が流れ、
取り壊される事もないまま忘れ去られるように置き去りとされたモノ。

月日によって着実に朽ちて行く体。
それでも立たされ続けるという使命。

私にはきっと、理解できないのだろうな。

一段一段刻み続ける中で、漠然とした憐情に身を置いていた。

143 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 05:48:03.62 ID:bttgaPoo

階段を上り切ってすぐの踊り場。
そこにそれは在った。

3日前に”噂の検証”と称し、訪れた場所。
加えて今回の目的として辿り着いた場所。

大鏡。

草臥れた校舎とは釣り合いのとれない立派な出で立ち。
大鏡は堂々と壁を、いや、校舎全体を見守るように鎮座していた。

真横にあたるこの位置からでも伝わり来る厳かな空気。
冷静に観察を行うと、明らかに異を放っている空間。

そして、あの時同様の威圧感。

ついに私達は戻って来たのだ。
全ての端を発しているであろう、この場所へ。

145 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 06:12:31.18 ID:bttgaPoo

午前2時10分/廃校舎内(2階)


再来であったとしても、やはり大鏡の前に立つのには勇気がいる。
まだ時刻は廻っていないというのにだ。

「それじゃあ、行くよ」
「はい」
「……うん」

それぞれの返答。
同時に、手を繋ぐ。

私、つかさ、みゆきさん。
3人で1人として境界から……


いま、踏み出した。

147 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 06:23:16.70 ID:bttgaPoo

私が居た。
つかさが居た。
みゆきさんが居た。

手を繋ぎ、緊張や決意や恐怖を曖昧に溶け合せた表情で。

すぐさま、僅かな変も見逃さないように凝視する。
照応し、相手もこちらを品定めするかのように睨みつけてくる。

酷く、居心地が悪い。

けれども、

「やっぱり、普通の鏡だよね」

それが結論。
ただし、今現時点に置いてのだ。

私の言を、つかさが継ぐ。

「あとは……待つだけだよ」

静かな声で中心に立ち両手を繋いでいるが、その緊張が汗と握力からは伝わってくる。
だから私も強く握り返した。

「それでは、背を向けましょう」

みゆきさんの提案に従い、私達は大鏡に背を向けた。
あとは、待つだけだ。

148 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 06:43:17.64 ID:bttgaPoo

午前2時20分/校舎(2階・大鏡)


「あの女の人……何が言いたかったんだろう……」

背を向けてから数分が過ぎた頃、つかさがぽつりと呟いた。
”あの女の人”が恐らく”鏡の少女”を指しているであろう事は、最早明示するまでもなかった。

私の推測に過ぎない。
が、この場においての鍵は、間違い無くつかさだ。

ヒトガタを拾い上げたのはつかさ。
夢を見たのもつかさ。
鏡の少女に出会ったのもつかさ。
そして、この場へ戻る決め手ともなったのも、つかさに因ってだ。

故に選択は、つかさに委ねる外無い。

「何か、伝わってはこなかった?」

促す。
すると首を捻って暫し黙考。
やがて、

「必死だった。泣きそうなくらいに」

切れ切れに返答。

必死……?
何故だ、何に対して必死だったんだ?
つかさに何を伝えようとしていたんだ?

疑問符ばかりの思考の中で、あらゆる可能性を探ってはみるが当然、推測の域を出ない。
何がなんなのか、不鮮明すぎてわからない。
いや、それでいいのかもしれない。


――わからないから、確かめるのでしょう?


それがここへと来た理由なのだから。

149 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 06:56:55.57 ID:bttgaPoo

午前2時59分/廃校舎(2階・大鏡)


あの時のように、手元の電波時計を確かめる。
残り60秒。
前回で決められた行動に従い、倣う。


「みんな、準備はいい? 60秒切ったよっ!」


報せる。

「絶対に、手を離さないでね」
「ええ、確約致します」

それぞれからの返答。
団結が、形として視えるかのように思えた。


―― 50! 49! 47! 46! 45……


3人で声を合わせて読み上げていく。

刻々と減り続ける数。
着々と迫り続ける約束の時。

午前3時。
最も怪の力が強まるとされる瞬間。
帰結する瞬間。

答えが、定まる瞬間。

残る刻、30秒。

150 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 07:36:57.46 ID:bttgaPoo

29、28、27、

――ねぇ、みんな何処?

26、25、24、

――なにかの冗談よね? ねぇ!?

23、22、21、

――ヒトガタが……なんでなの……?

20、19、18、

――ねぇ、ふざけてないで早く出てきてよ!?

17、16、15、

――お父さん? 助けて、皆が……!

14、13、12、

――流れを開く……日が昇り、全てが手遅れになるその前に……

11、10、9、

――はぁ……はぁ……ここにも無い……倉庫か……

8、7、6、

――暗い……怖い……でも鍵を探さないと……

5、4、3、

――見つけた……これで合わせられる……

2、1、

――あとは、あとは……

151 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 07:37:53.39 ID:bttgaPoo

――あとは、待つだけだ


   そして、私達は振り向いた――

152 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 07:39:17.83 ID:bttgaPoo

少女が、立っていた。

鏡の中に、青白い顔で。

私達3人が一様に手を繋ぎ、並んでいるその直ぐ隣に。

ただ、何も言わずに立っていた。

自然と、視線が惹き付けられていく。

やがて、鏡の少女と目が合った。

途端に、その顔が歪んだ。

今にも泣き叫びそうな程にくしゃくしゃに窄み、

そして――

159 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 09:39:23.46 ID:bttgaPoo

また、会えるとは思わなかったよ。
同じ末路を辿るのかと諦めていたから。

必死で止めようとして。
だけど、それが悉く裏目に出て。
気が付けば皆がここへと来ていた。

怨んだよ……
自分自身を。

でも、もしかすると……

それも違ったのかもしれない。
どう違うのかって?

それはね。
私は、皆を助けようとしていたんじゃなくて、
助けを求めていたんじゃないかってこと。

私だけじゃない。
恐らく、こっちの皆がそうだったんじゃないかって。

その想いが届いてしまったんだと思う。
キミに。
ううん、私に、かな。

だから皆はここへとやって来た。
けれども皆は、私達とは一つだけ異なる点を持っていたんだ。

皆を呼び続ける人が居たから……
だから再び、ここへとやって来れたんだ。

ごめんね。
迷惑を掛けてしまって。

本当に。
ごめん。

でも。
ありがとう。

160 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 09:43:38.49 ID:bttgaPoo

「みんな……良かった……!」

唐突に声が聞こえた。
しかし大鏡の中からではない。

何処だ?
そうか、すぐ隣からだ。

振り返る。

二つ結びの長い髪。
赤く腫れた切れのいい眼付。
崩れ落ちた華奢な身体。

目の前で、鏡の少女が嗚咽を漏らしていた。

いや、違う。
鏡の少女ではない。

この子は……

「かがみん?」

柊、かがみだ。

161 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 09:51:56.14 ID:bttgaPoo

「お姉ぇ、ちゃん……?」

つかさが戸惑い露わに呼びかけていた。
項垂れ、地面に座り込んでいるかがみへ向けて。

「良かった、間にあって……」

かがみが息も絶え絶えに繰り返している。
彼女の衣服は至るところが綻んでおり、埃塗れなのか全体が黒ずんでいた。
さらに髪には蜘蛛の巣が万遍無く絡み付き、まるでその様は……

「幽霊みたいだよ?」
「うるさいっ! 馬鹿!」

一瞬だけ怒気を見せたかと思うと、
「ちょっと、何すんのさっ!」
「皆が消えちゃったのかと思って怖かったんだから!」
力一杯に抱きしめられた。
それも3人纏めての荒技で、何気に痛い。

その混乱の中に置かれつつも、私は何処か冷静に沈思していた。

何が起こったんだ?
今一つ現状が掴めない。
気のせいか外が薄明るいようにも思えるし。

ふと、電波時計で時刻を窺ってみた。

5時30分。
確か、あの時は3時丁度で……

「あれ?」

僅かな薄明かりのもとではあるが視界が利いたことによって、
遥か前方、廊下の突き当りに何かがあるのを見取ることが出来た。
その観音開きのようになされた両扉の中にあったもの。

「あんな所にも大鏡が……あったんですね」
「まるで、こっちのと向かい合わせているかのようだね……」

私は、ただ呆然とそれを眺めていた。

164 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 10:25:42.74 ID:bttgaPoo

「お姉ちゃん、ごめん、わたし、お姉ちゃんのこと……」

あらら。
つかさがしゃくり泣きだしちゃった。
かがみも姉の習癖からなのか、あやしに入っているけど、
2人ともが泣いてちゃどっちがどっちの役目なのか分かったもんじゃない。

「あの、泉、さんっ……」

呼び掛けに応じると、みゆきさんが涙声で目頭を押さえていた。

ああ、そっか。
ようやく帰って来たことに気が付いたんだね。

「良かった、です……」

そうかいそうかい。
頷いておく事にした。

さて、そろそろ時刻は5時45分。
5時までに連絡が入らなかったことで、ゆい姉さんが校庭まで迎えに来ている頃だろう。

一足先に歩き、そして皆へと告げた。

「みっ……」

あれ?
上手く声が出せなかった。

続けて、視界が潤んだ。
涙が零れ落ちていった。

ようやく気付いた。

私は、泣いていたのか。

166 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 10:52:45.50 ID:bttgaPoo

午前5時55分/廃校舎(2階・大鏡)


「そろそろ外に出ようよ。ゆい姉さんが待ってると思うから」

とっくに到着している頃合いなのに、どうして中に来ないのかが若干気に掛かる。
まあ何はともあれ、外へ出ればわかることだけど。

「そうね……ほら、つかさ。しっかりしなさい」

かがみはすっかり姉の威厳を取り戻し、
座り込んで泣きじゃくっているつかさを抱き起こしていた。

「それにしても、こなたの泣いている顔なんて初めて見たぞ」
「泣いてないよ」
「意地っ張り」
「そんなんじゃないから」
「はぁ……」

うっ、なんの溜めだよ。
注意を惹きつけるようにわざとらしく間を置いてから、悪い目付きでかがみが宣った。

「あんたってホント、ツンデレだよね」

それをツンデレに言われちゃ世話が無いよ。

「皆さん、そろそろ外へ出た方が」
「そうしましょ」

先導するかがみに連れられ、階段を降り、西へ向かい、玄関廊下を通り……

167 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 10:59:18.44 ID:bttgaPoo

午前6時00分/廃校舎(校庭)


外へ出た時、夜が明けていた。
太陽が遠くの山裾から顔を覗かせ、辺りの闇を綺麗さっぱりに打ち払っていたのだ。

「よっ、どうだった?」

車に背を預けたゆい姉さんが、飄々と片手をあげてみせた。
その隣で言葉を交わしていたのは……

「やぁ、大変だったみたいだね」

もう一台の車と共に、柊ただおさんが立っていた。
どうしてだろう?

「かがみから連絡を受けてね。口で言うだけでは心配だったし、一応来てみたんだ。
 そうだ、ちょっと中の様子を窺ってくるから、皆は休んでいるといいよ」

落ち着いた口調で言い残して、颯爽と廃校舎内へ消えて行った。
彼の”一応”という言葉が仮初の嘘である事くらい私にだって解る。
本当は、心底から焦り駆け込んできたのだろう。
ツンデレの遺伝元だね。

「ほいっ、コーヒーでも飲むかい?」

ゆい姉さんが車内から右手で袋を取り出すと、空いた手で缶を配ってくれた。

「さんきゅー」

口々に謝意を述べて、ぬる〜い液体を飲みほしていく。
それによって、ようやく人心地がついた気がした。

168 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 11:13:21.81 ID:bttgaPoo

「ねぇ、みゆきさん」

囁く様に呼びかけると、
意を察してくれたのか柊姉妹から離れた位置まで静かに着いて来てくれた。

「用件は鏡の声の主、でしょうか?」

流石に鋭いな。
思えば、彼女の言動は全てが的確だったような気がする。
口に出さないだけで、実は全てを見通していたのかもしれない。

「それは買いかぶり過ぎですよ」

左手を頬に当てて微笑む、御馴染の仕草。
癒されるなぁ……
なんて堪能している場合じゃなかったんだ。

「念の為に訊いておくけどさ、鏡の声って誰の声だった?」
「わたくしの声でしたね」
「やっぱりか」
「わたくしも確認の為にですが、泉さんは泉さんの?」
「うん、そうだね。謝られて、でも最後に”ありがとう”って言われた」
「やはり、そうですか……」

みゆきさんは、とても悲しそうに溜息を吐いていた。
私も、一片の違いもなく同感だな。

何故なら、まさか……
まさか自分自身が――

「こなたーっ! みゆきーっ! 何やってんのよ!」

はいはい、解りましたよかがみさん。

「寂しいんですね、わかります」

みゆきさんが悪戯っぽく笑っていた。

169 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 11:30:49.01 ID:bttgaPoo

かがみはやたら饒舌に捲し立てていた。

私達が居なくなった後、校舎内を駆け回ったこと。
その際、ボロボロの校舎内で体のあちこちを引っ掻いたこと。
蜘蛛が余計に嫌いになったこと。

等々を諸々にだ。
どうやら話によれば、鍵を探していたらしい。

「何処の?」
「大鏡よ、向かい側のね」
「どうして?」
「箱板で閉じられていたから、アレを開く必要があったの。
 お父さんの指示だから詳しいことまではわからないけどさ」

未だベッタリと離れないつかさを宥めつつの講釈。
それを眺めるみゆきさんは、些か寂しそうにもしていた。
役目を取られちゃったね。

「うぅ……」
「呻かない呻かない」

さてと、それでは。

「大鏡に、別れを告げにいこうか」

最早、全貌を現しつつある太陽を背に、私達は再び廃校舎へと向かって行った。

170 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 11:49:24.43 ID:bttgaPoo

午前6時30分/廃校舎(1階)


不思議なものだね。
夜にはあんなに恐ろしかった校舎が、今ではこうも穏やかに見えるとは。

「まあね、あたしなんて一人で2時間近く走り回ったんだから既に我が家みたいなもんよ」
「あ、そこ蜘蛛の巣」
「ぬわーっ!」

我が家で寝首を掻かれそうなかがみんであった。

「ところでさ、こなちゃん」
「ん?」
「わたしのヒトガタ見てない?」
「え、見てないけど?」
「そう……何処行っちゃったんだろ……」

落としちゃったのかな、とキョロキョロ辺りを見回していた。

「なんだか、不思議なものですね」
「不思議が多すぎてどれのことやら」
「えっと、わたくし達はあちら側で3日ほど過ごした筈なんですよね」
「あーなるほど、それなのにこっちでは2時間ちょっとだけだったって?」
「はい、もしかすると夢……だったりするのでしょうか」
「息巻いていたかがみんが恐怖で幻覚を見ていた、なんていう事象次第ではそうなるだろうね」
「また、小突かれますよ」

みゆきさんの忠言虚しく、脇腹をつねられてしまった。

172 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 12:07:02.30 ID:bttgaPoo

午前6時35分/廃校舎(2階・大鏡)


大鏡の前には、ただおさんが佇んでいた。
すかさず訊ねてみる。

「何故、向こうの鏡を開いたんですか?」

ん?
という顔を見せてから、

「詳しく調べてみなければ解らないけれど、
 こちらの東側の鏡が陰とするらば、西側の閉じられていた鏡が陽という所かな」

あーつまり、

「陰と陽、真逆にあって対を成す、と」
「おや、言おうとした事を一字一句違わずに答えられるとは」

お役御免だね、と淑やかに笑っていた。

「大鏡はどうするんですか?」
「うーん、このままにしておくのは憚られるからね、うちで運んでおくよ。
 それにこの校舎自体も、そろそろ役を降ろすべきだと思うな。
 その辺りは、自治体にでも頼んで何とかしてくれるといいんだけどね……」

「そうですか……」
「それじゃあ、もう少し校舎内を調べてみたいんでね」

それで話は打ち切られ、彼は階下へと向かって行った。

175 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 12:20:48.20 ID:bttgaPoo

午前6時40分/廃校舎(2階・大鏡)


「ほら、並んで並んで」
「また何かが起きるんじゃないのか?」
「大丈夫だよ、きっと。ね、みゆきさん?」
「ええ、その通りだと思います」
「はぁー……どんだけあたしが苦労した事か……」

「ほら、かがみん数日前に言ってたじゃん。
 ”残り少ない高校生活だし、たまにはこういうのもいいのかもねっ!”ってさ」
「それ、昨日の下校時だぞ」
「あれれ、そうだっけ?」
「まったく……」

「うーん、やっぱりヒトガタが無いなぁ」
「風で飛ばされちゃったんじゃないの?」
「そうなのかなぁ……」
「いいじゃん、無事に事無きを得たんだから」
「そうかなぁ……結構気に入ってたのに……」

「それじゃあ皆、手を繋ごうか」

177 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 12:42:08.89 ID:bttgaPoo

あの日、あの時。
いや、全てはたった数時間前が発端となった今回の出来事。

なのに、こうやって手を繋いで大鏡の前に立つのは、もう三度目ともなる。

一度目は”心霊ツアー”と”鏡の噂”という好奇心に突き動かされ、
それぞれが恐怖と困惑に塗れた表情で映し出された。

二度目は”鏡の少女”と”対話”という使命感に突き動かされ、
それぞれが究明と決意を胸に抱き映し出された。

そして今。
三度目。

怪を払う朝日の中で、笑顔の私達が映し出されている。
それぞれが感じている、それぞれの言葉を持って。

近い将来、この校舎と大鏡は撤去されてしまうのだろう。
それが不思議にも寂しく感じられる。
けれども、今夜の出来事は絶対に忘れずに、4人全員の思い出として残していきたいと思う。

時には、これが新たな”怪談”や”噂”として語り継がれるのかもしれない。

さあ、そろそろ御暇するべきかな。
最後に一度だけ、鏡を見てみよう。

皆に声を掛け、私が再び見遣った時。

鏡の中の私達は、にこやかに笑っていた。

178 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 12:44:53.07 ID:bttgaPoo

               − 鏡に立つ少女 −


                『鏡中世界の迷い人』


                     完

183 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 13:00:13.21 ID:bttgaPoo

◆本シナリオにおけるエンディング分岐について一部紹介

【鏡中世界の住人】
→3日目で”心霊ツアーの中止”を選択すると、今度はかがみが茶化してくる。
  その状態で再度選択肢が出て、”かがみの挑発に乗る”と、つかさは夢を思い出せずにヒトガタを所持していない状態で噂検証に入る。
  結果、日常と非日常が変わった事が(完ENDを見ていないと)読み手にすら伝わらないが、ある法則によって見破る事は可能である。

【合わせ鏡】
→労力の関係でカットされたものの、2回目の噂検証時に”柊かがみが合わせ鏡を開けなかった”場合に分岐。
  こなた達が大鏡前で振り向き終わると柊つかさが消失し、こなたとみゆきの2名がさらに奥の鏡中世界へと仕舞われる。
  当然、その後のことは語るまでもない。


これ以外にも色々ありますが、疲れたので省略。
合わせ鏡ENDは結構お気に入りだけど、それを書くと読後感がアレすぎるかなと。

184 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2008/09/27(土) 13:16:30.66 ID:bttgaPoo

それでは長々とお疲れ様でした
時間が無限にあるから設定に凝り過ぎちゃって、結果的に異様に時間が掛かってしまい申し訳ない

実を言うと、vipでやってた時にまさか一瞬で法則性を見抜かれるとは思っていなかったので悔しゅうございました
目聡い人が居るものですね、それだけ他の部分で隠し甲斐があり楽しかったので構わないんですが

それら以外にも、結局は”最初の鏡の少女”はなんだったの? 動機は?
などという明かしていない謎も手掛かりから推理して貰えれば嬉しいですね
エンディングの解釈も変わってきますし

さて、気付けばホラーというよりミステリーっぽく化してしまいましたが、楽しかったです
ここまで付き合い読んで頂いた方々に感謝します
またの機会にお会いしましょう



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