こなた「世界は、なんやなんやなのである」


メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:カイリュー「最強のポケモン?」

ツイート

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 00:01:15.64 ID:j5V0qBaL0

なんやかんやは、なんやかんやです!

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 00:06:10.20 ID:j5V0qBaL0

               −ゆーちゃんの熱血生活史−

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 00:07:03.58 ID:j5V0qBaL0

今日はこなたお姉ちゃんと一緒にいつもより早く登校しました。
お姉ちゃんは殆ど毎日遅刻すれすれなので、こういう日は珍しいんです。

学校へ着くと、途中で高良先輩とお姉ちゃんが話し込んだりしていました。

私も負けじと隙を窺って高良先輩に、
「もっと熱くなるといいですね」
と話し掛けてみましたが高良先輩は満面の笑みで、
「わたくしは暑いのは苦手なのですが……小早川さんはお元気なのですね」
と牽制球を放ってきました。

この人は出来る。
そう確信した瞬間でした。

それでも諦めずに頑張って熱意を伝えようとは思ったのですが、
「でも何故そんな話を?」
お姉ちゃんが何やら会話を再開してしまったので私は闘志を抑えこみました。

行く時は行く。
引く時は引く。

これは臨機応変なお姉ちゃんを見て学んだことです。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 00:17:21.38 ID:j5V0qBaL0

高良先輩との一合を終えて、お姉ちゃんと一緒に玄関に来ました。
でも時間が早かったのか、まだ他の人達の姿は無いようです。

私は可能な限り素早く上履きに履き替えると、
お姉ちゃんの元へと向かいました。


驚きました。


お姉ちゃんが自分の下駄箱に左手を当てて、俯き加減に固まっていたのです。

まるで隙がありません。
精神統一というものでしょうか。
溢れ出る熱気を完璧に抑えこんでいるのです。

「お姉ちゃん?」
その凄さに驚いたあまり思わず声が漏れてしまいました。

するとお姉ちゃんはジャガーのように俊敏な動作で振り向き、
「あ、それじゃあね」
にこやかに手を振ってくれました。

その姿がやけに神々しかったため、
「うん、熱く頑張ってくるね!」
全力で返事をしてしまいした。

でもよくよく考えるとちょっと恥ずかしかったので、私はその場から素早く離れることにしたのです。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 00:22:17.45 ID:j5V0qBaL0

いつもより早い朝の教室はとても静かでした。
静かすぎて耳鳴りがするほどです。

見渡しても席はがらんと空いたままで、
みなみちゃんも田村さんも、パトリシアさんも居ません。

手持無沙汰とはこういうことを言うのだと、私はこの時身を持って学びました。

こうも静かであれば行えることはただ一つしかありません。
そうです、精神統一です。
早速こなたお姉ちゃんに追いつこうという目論見のもとにです。

日々の努力は重要だと思います。

と思ったのですが、
やはり朝から飛ばす必要も無いのかなと考えなおしたので、
そのまま席に着いて少し早い朝読書の時間となりました。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 00:31:03.75 ID:j5V0qBaL0

それから数分後、まだ静けさの残る朝の教室でのことです。

「おはよう、ゆたか」

なんということでしょう。
みなみちゃんの挨拶はまるで、
真冬の寒空の下に1時間と20分くらい放置され続けた鉄屑のように冷たいのです。

でも大丈夫。
その為に私がいます。

「おはよう!」

静かな教室にビリリとした残響が拡がりました。
みなみちゃんの体もピクリと震えます。

「え、と……」

そんな困惑の表情を見せた所で、その手に乗せられる私ではありません。

「もっと熱く! 熱くなれよ!」


私は力技で掛かりました。

するとそれきりみなみちゃんは黙り込んでしまったので、
私も釣られて黙り込んでしまいました。

不覚というものです。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 00:42:53.33 ID:j5V0qBaL0

一時間目、国語。
おじいさんな先生が、何やら詩集の紹介をしていました。

「おう、なつだぜ。おれは、げんきだぜ」

なかなか良いリズムだと感じました。
けれども先生には申し訳ないのですが、
今の私にとって重要なのはみなみちゃんを熱く滾らせる事なのです。

冷たく凍てついた彼女の心を温水プール並にまで……

いけません、私とした事がついつい目標が小さくなってしまいました。
お姉ちゃんならきっとこういうはずです。


―― 一瞬で個体から液体をすっ飛ばして昇華させてやんよ


そうです、物質の相転移の応用です。
これは人間の心にも適用可能な理なのだと、私は研究対象に選んでいます。
むしろ既に証明を始めています。


「おう、あついぜ。おれは、がんばるぜ」


その時、おじいさんな先生の声が聴こえてきました。
それはまるで静けさの中にあって、心へと染み込んで来るような”熱さ”。

また一つ、勉強させて頂きました。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 00:52:15.02 ID:j5V0qBaL0

結局その後の休み時間もお互いに隙を窺ったまま身動きが取れず、
二校時目をまるまる作戦を立てる時間に使う羽目となりました。


でも、時間を置いた事で幾許か冷静になる事が出来たのです。


そうです、物事は光があれば陰があるのです。
つまり熱さとは、同時に冷たさでもある訳です。

これは先ほどの国語の先生から学んだ手法です。

みなみちゃんに力の熱さで敵わないのであれば、
静けさを含ませた熱さで訴えればいいのです。

偉い人は言いました。

敵を知り、己を知れば百戦危うからず。

その通りなのです。
相手の性質を読み、それに呼応した策を用いてこそなのです。

それから私はみなみちゃんの一挙手一投足でさえ見逃さないように集中し、
二時間目の授業時間をフルに”観察の時間”として有効活躍していました。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:02:45.11 ID:j5V0qBaL0

二時間目。
休み時間。

VS みなみちゃん(2試合目)


試合開始を告げるチャイムが鳴り終えるより早く、私は席を立ちました。

同時にみなみちゃんも席を立ちます。

そう、彼女は私が一定距離内に入ろうとすると、
その射程圏外まで即座に離れようとするのです。

逆に私が離れようとすると、物陰などからそっと窺ってきます。

これは正に付かず離れずといった様子で、
安全圏から相手の消耗を見定め、疲れ切ったところでトドメを刺しにくるという、
非常に狡猾で恐ろしい戦術です。

流石は冷静なみなみちゃん。
私とは対極にある期待の新星だけはあります。

ですがこちらにも策があるのです。
伊達にこなたお姉ちゃんと共に暮らしている訳ではありませんから。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:10:37.45 ID:j5V0qBaL0

「くっ……寒い……」

がっくりと肩膝をつきます。
まるでみなみちゃんの冷気にやられた手負いの獅子といった……

獅子は言い過ぎました、狼でした。
謙遜は熱さの儀のうちの一つです。

とにかく私は肩膝をつきました。
そうです、これは演技なのです。

こなたお姉ちゃんが風邪を引いたフリをして学校を休み、
その時間を修業に充てるという兵法を応用した戦術です。


その時、背後に気配を感じました。
同時に、冷えぴたに熱を奪われる様な感覚。


間違いない、みなみちゃんです。


私の演技を警戒しつつ、死角から様子を見ているのでしょう。
ここで下手に動いたりすれば――


――間違いない、やられる。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:19:25.53 ID:j5V0qBaL0

「ゆたか、大丈夫?」

肩にそっと手が掛けられました。

「大丈夫だよ、みなみちゃん」

すぐさまその手に私の手を絡めます。


――よし、これでもう相手は逃げられない。


そのままそっとみなみちゃんに凭れ掛ると……
見せかけ!

「もっと熱くなれよ……」

耳元で静かに囁きました。
同時に、みなみちゃんが肩を震わせるのも伝わってきました。


その後みなみちゃんは硬直したまま聞かざるの守りに入ってしまったので、
なんとなく隣で騒がしかった田村さんを私の味方につけました。


◆田村ひよりが仲間に加わった。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:29:16.97 ID:j5V0qBaL0

三時間目はまたもみなみちゃんが距離をとってしまい、
そのまま昼休みとなりました。

この長い時間の間に決着を……

と思った時には、既にみなみちゃんの姿が消えていました。

何処へ行ったのでしょう?

見回してみてもわかりません。
仕方がないので世界を大いに盛り上げる修造団(仮)の、
第一メンバーである田村さんに尋ねてみます。

「みなみちゃん見てませんか?」
「え、見てないッスけど……」

とここで田村さんが考えるような仕草を見せました。
もしかすると心当たりがあるのかもしれません。

期待してすぐのことです。

「そういうことッスか! 小早川さんもついに!
 ええ協力しましょう! うおぉ、燃えて来たッスーッ!!」

凄まじい熱意です。
やっぱり田村さんを味方にする事が出来て正解だと感じました。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:40:02.56 ID:j5V0qBaL0

結論から言うと、田村さんは駄目な人でした。
早くもお互いの熱血性の違いを感じ、解散の危機が見え隠れしているようです。


ところで現在の問題はみなみちゃんです。


みなみちゃんは何故かその後も帰って来ず、
ようやく姿を現したのは昼休みを終えるチャイムと同時にでした。

何故か手には”竜太サンド”と書かれたパンらしきものを携えています。
というよりこれ、竜田サンドの誤植じゃないんですか?

まあいいです。

やがて5時間目も終わりましたが、
またもみなみちゃんの消えるフェイントに阻まれて結局その日は終局となりました。

寂しかった私は無駄に料理の勉強へと熱意を向け、
シミュレーションによって早くもロールキャベツとミネストローネの作り方を習得しました。

始まったばかりですが、まだまだ熱血への道のりは遠いようです。


おわり。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:49:45.07 ID:j5V0qBaL0

「よっし、出来た!」

私は本日分の日記をようやくして書き上げることができた。
何やら文体に面白さが無いけれど、まあまあいいと思う。
ちなみに、事実を多少拡大解釈しているのは自分だけの秘密だ。

「んんー…・…」

軽く伸びをして素早く時計を見遣ると、時刻は11時11分。

ぞろ目だ。
これは熱い。

などと感動している場合ではない。
こなたお姉ちゃんに熱い日記の書き方についてアドバイスでも貰おう。

思い立つと同時に立ち上がり、すぐさまお姉ちゃんの部屋の扉をノックする。


……返事が無い。


「お姉ちゃん、入るよー?」
言いつつ扉をゆっくり開く。

そのまま静かに中の様子を窺ってみると、
お姉ちゃんはベッドの上で掛け布団を蹴飛ばして眠っているようだった。


私はそっと布団を掛け直すと、そのまま部屋へと戻ることにした。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:55:04.15 ID:j5V0qBaL0

◆2日目のザッピング(主観視点移動)を行います。


A.『C組の日常』
  日下部みさおに移る。

B.『桜の日の出来事』
  高良みゆきに移る。

C.ザッピングをやめて3日目に移る。


>>45-50 (多数決)

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/14(木) 01:56:53.34 ID:gdQ0VK4m0



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:57:37.99 ID:17+O91HN0



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:57:53.04 ID:B1ecemaqO

A

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/14(木) 01:58:29.53 ID:bw73iO/t0

B

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:58:32.32 ID:17+O91HN0



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 01:59:14.98 ID:4E6iwRlM0



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 02:53:15.06 ID:j5V0qBaL0

風は無い。
人影も無い。
迎えられるのは、静寂に満ちた校舎のみ。

先程、門を通った時に時計台で確認したが、
時刻はまだ7時半を僅かに過ぎた程度だった。
つまり、開講までは小一時間の猶予があることを意味している。

七月と言えどこの時間帯であれば十分に涼しい。
意図的に激しい運動さえしなければ、まず汗を掻く事すらないだろう。


そして私は今、この静けさの中で一人、星桜の木を見上げている。


母から聞いた話に寄れば、
星桜は陵桜学園の校舎が建てられる以前からここにこうして在ったのだという。

しかし私にとってそれは些細な事である。

重要なのは、あの日私がここに居たという事。
忘れられないのは、あの日の出来事。
桜の花びらが舞い散っていた、入学式の日の光景。


それらに感慨を覚えつつ、一度桜の根を見下ろし、再び新緑を見上げたとき。


ざっと、突風が吹き荒れ――

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 02:53:39.98 ID:j5V0qBaL0

               −桜の日の出来事−

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 03:05:42.03 ID:j5V0qBaL0

はらりひらりと舞い踊り、
静かに落ち行く薄紅の葉。

それを見つめる私の胸中は、不安で一杯だ。

ここでは上手くやれるのだろうか。
それともまた、昔のように孤独な日々を過ごすのだろうか。


いや、悩んでいても仕方が無い。


そうならない為に努力を重ねてきたのだから。
そう、わざわざ東京都から遠く離れたこの学園へと入学を希望したのもその内の一つだ。

形から入ればいいと思い、敬語の使い方も勉強した。
柔らかな物腰を身に付ける為、日々の仕草にも気を配ってきた。

大丈夫。
きっと大丈夫だから。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 03:12:15.69 ID:j5V0qBaL0

歩き出す。

でも、最初はどうすればいいのだろう。
こちらから笑いかけるべきか、はたまた自然に話しかけるべきか。
いいや、きっと不安なのは皆一緒のはずだ。
だから、こちら側から先手を打つべきだ。

考える。

でもどうやって……。
笑いかけると言ってはみるも、実際にそれをやると不自然すぎる。
はたまた自然に話し掛けると言えど、具体的に何を話せばいいのだろうか。
昔のように相手を傷付けてしまわないだろうか。

そして、立ち止まる。

誰しもが連れ立って忙しなく校舎の中へと吸い込まれていくなかで、
私は一人、桜木の元に留まっている。


ゆらりゆらりと風に振られる花びら。
それを見つめる私の胸中は、不安で一杯だ。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 03:28:57.15 ID:j5V0qBaL0

散々悩んだけど、やっぱりこれは決めれない
なので安価で決める

>>76


A.みゆきさんのイメージを保つように努める

B.みゆきさんのイメージを壊しても構わない

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 03:33:33.64 ID:9tQWMrIL0

B

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 03:44:29.42 ID:j5V0qBaL0

「ねぇ、ちょっと」
不意に隣から声が聞こえた。
「あなたも新入生?」

凛とした声。
私はその方へと視線を向ける。
その声の主の両眼は、私を真っ直ぐに捉えていた。

「あ、俺?」
意思とは無関係に口がそう動いた。

「そうよ、あなたに聞いてるの……って俺? え、あんた男なの!?」
”俺”はないだろう、落ち着け自分。
”私”だ。そう、何度も練習したじゃないか。

「いえ、私……も新入生です。お恥ずかしながら、先ほどは少し言葉を噛んでしまいました」
「どんな噛み方だよおい」
間髪入れずに返されたその意見には、全面的に賛同せざるを得ない。

さらに相手は続ける。
「でも、”わたくし”……ねぇ。テレビ以外では初めて聞いたけど、あなたにはとても似合う気がするわ、うん」
言いつつニヤリとした笑みを返される。
面白そうな人だなと考えていると、
「面白そうな人だよね、アンタ」
逆にそう言われた。

「私も今、そのように考えていました」
「あ、あたしは普通でしょ!」
「すみません」
「いやその……別に謝らなくてもいいけど……」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 03:54:51.29 ID:j5V0qBaL0

訪れる沈黙。
その空気に耐えられなくなったのか、彼女が答える。

「あなた何組? あたしはA組だけど」
「あ、私と一緒ですね」
「おー! 同じクラスかー」
「そうですね」
軽やかに笑う彼女。

「あ、そうだそうだ忘れてたわ」
「なんでしょうか?」
左手を口にあて、コホン、とあからさまに咳をする。

「自己紹介がまだだったわね」
「そういえば……その通りですね」
「えーっとでは、あたしから」
軽く息を吸い、一呼吸置く。

「はじめまして、こんにちは。あたしは……って何笑ってんのよアンタ!」
私は笑っていた。
理解したからだ。
彼女も相当に緊張していたのだという事を。
おそらく自己紹介の練習を何度も重ね、その常套句として『はじめまして、こんにちは』を用いていたのだろう。
と、相手を窺うと拳を握り締めていた。

流石に気の毒になったので、
「すみません」
と頭を下げることにした。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 04:02:29.98 ID:j5V0qBaL0

「べ、別に頭を下げなくたっていいわよ……」
小さく呟いたあと、溜息と共に彼女は続けた。

「あーもう、適当にいくわよ。あたしは柊かがみ、かがみでいいわ」
「わかりました。よろしくお願いしますね、かがみさん」

「かがみでいいって」
「いえ、こちらのほうが呼び易いので」

「そう、じゃあそれでいいわ」
「そうさせて頂きます」

「……いやに丁寧な口調だよね、あなた」
「癖なものでして」

頬に手を当て、微笑んでみせる。

「それじゃあ、次はあなたね」
「はい、えーっと……」

言いつつ私は視線を外し、さらりと辺りを眺めてみる。
花びらが、はらりひらりと散っていく。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 04:17:19.56 ID:j5V0qBaL0

私は咄嗟に考えついた。
相手を真似ればいいのだと。

「はじめまして、こんにちは。高良みゆきと申します。これからよろしくお願いします」
「くくっ……」

かがみさんは笑いを堪えている。

「笑うなよ」
「え、あ、ごめん……みゆきさん」

しまった、油断すると昔の口調に戻ってしまう。
慣れるまでは気を引き締めていなければならないようだ。

私は取り繕うように続けた。
「あ、いえいえ構いませんよ。それから私の事はみゆきと呼んでください」
「わかった。よろしくね、みゆき」

「はい、よろしくお願いします」

言いつつ、会釈を交わした。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 04:24:59.62 ID:j5V0qBaL0

「そういえばあなた、どうして陵桜学園を選んだの?」
「えっ……」

どう答えるべきか。
そのような質問を受けるとは予期していなかった。

焦り視線を滑らせた先に、星桜の木が目に留まる。
そういえば……。

「えっと、私の母がここの卒業生でして、それで私も」
「お母さんが卒業生だから? ……へぇ、有るようで無い、面白い理由なのね」

若干驚いているように見受けられた。
それも当然だろう、今それを考えついた自分にとっても不自然に感じられるのだから。
つまりは仮初の嘘なのだ。

しかし今重要なのはそこではない。

「あ、あの」
「なに?」

首を傾げられる。

「私の”地”が乱雑だという事は内密に……」

かがみさんがまたも笑いを堪えてから、

「はいはい。分かったからよろしくね、みゆき」

やはり堪え切れずに噴き出していた。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 04:32:59.82 ID:j5V0qBaL0

互いの紹介が終わったあと、教室へ向けて歩き出す。
勿論、同じ教室へ向けてだ。

その道中、彼女がぽろりと一言零していた。

「初日で知り合えるとはいい縁よね! みゆきとは3年間同じクラスでいられるといいなっ!」
私も嬉々として答える。
「そうですね、きっとそうなると思いますよ」

やがて辿り着いた新しい教室。
私はその扉の前で立ち止まって考える。

中に居るのは共に三年間過ごす大勢の仲間達。
既に幸先の良いスタートを切れた気がする。

「なーにやってんの、立ち止まっちゃってさ。ここでしょ? あたしが開けるよ?」

その声を聞き、私は確信した。
きっと、いい学生生活が送れるはずだと。
いや、そうしてみせるのだ。
この私自身の手で。


私は扉を、力一杯開いた。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 04:46:23.26 ID:j5V0qBaL0

ざわっ――


吹き抜けた風が、新緑の葉を数枚浚って行った。
私は靡く髪を左手で押さえ、もう一度星桜を見上げる。


かがみさんはあの時の約束を固く守り、未だ口を閉ざしてくれている。
しかし最近、どうも皆を騙しているのではないか、という思いに度々駆られてしまう。

今では最早意識せずとも語れるように、演技が地となりつつある。


けれども、それでいいのだろうか?


今は良くても、またも中学を卒業した時のように、高校を卒業してしまえば独りに……


そう、ならないだろうか?


星桜の木を見上げる私の胸中は、やはり不安で一杯だ。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 05:03:35.07 ID:j5V0qBaL0

その最中のことだ。


「おはよーみゆきさんっ!」

突然背後からの聞き慣れた声。
と共に小柄な何かに抱きつかれる。

「わっ!?」

思わず飛び退く。
こんな時でさえ演技出来てしまう自分が少々憎い。
それともこれは、”地”なのだろうか?

そのような私の心中など意にも介さないといった様子で、
「にひひ」
泉さんが意地らしく笑っていた。

「……びっくりしましたぁ」

言っている間に、泉さんの後ろから出て来た小早川さんが、
「お早うございまぁす」
見ているだけで和むような可愛らしい動作で会釈していた。

「ごめんごめん、ついつい驚かせてみたくなっちゃってさ」
泉さんの言葉に、
「わたくし、心臓が止まってしまいそうでした……。
 あ! うっかりしてました、お早うございます」」

私は慌てて返しつつも、未だ晴れない気持ちで微笑んでいた。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 05:09:50.33 ID:j5V0qBaL0

◆2日目のザッピング(主観視点移動)を行います。


A.『C組の日常』
  日下部みさおに移る。

C.ザッピングをやめて3日目に移る。


>>89-91 (多数決)

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/14(木) 05:11:58.15 ID:bdAnfmv20

A

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 05:13:31.25 ID:9tQWMrIL0

C

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/14(木) 05:14:26.28 ID:sOSQ3pVP0

A

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 05:37:38.17 ID:j5V0qBaL0

               − C組の日常 −

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 05:38:45.28 ID:j5V0qBaL0

ホームルームが終わると、すぐさま柊が席を立った。
その左手にはハンドタオルが握られている。

また隣のクラスへ行くのか?

「あやの、柊が立った! 柊が立ったぞ!」
「赤ちゃんが初めて立ったような言い方はしないの」

そんなつまらないこというなよなぁ。

「ほら、尾けるぞー」
「……尾行している自覚はあるのね」

「ほらほら、行こうぜー」
その袖を引っ張る。

あやのは暫く考えていたけど、

「私はやめておくね」

断られちまった。
そんな手でゴメンネ、ってされてもなー。

まぁいいか。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 05:47:44.87 ID:j5V0qBaL0

隣の教室。
つまりはちびっ子の教室だな。

扉が開けっ放しとなっている入口から、中の様子を窺う。

……む、柊がちびっ子と何やら話しているぞ。

ちょっとここまでは聴こえないないなぁ。
でも気になる。

お、柊がちびっ子の頭をハンドタオルで叩いてる。
いいぞもっとやれ。

なんていう感じで夢中になんていたら……


またもやちびっ子と目が合ってしまった。


勘付かれたか!?

慌てて身を隠す。
なかなかに鋭い奴だな。

しょうがない、今日の所は手を引いておいてやるか。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 05:58:43.35 ID:j5V0qBaL0

私の教室へと戻ってくる。

「どうだった?」

あやのが悪戯っぽく笑いながら訊ねて来たので、
「ちびっ子に勘付かれちまったぜー」
最終的な状況だけを伝えた。

「あらあら」
言葉とは裏腹にあやのは楽しそうだな。

そうやって二人で話し込んでいると、

「うぃーっす、ただいまー」

柊が手で挨拶をしながら帰って来ていた。

「なぁなぁ、何やってたんだ?」

率直に訊ねると、

「いちいち詮索するな」

ちびっ子と同じようにハンドタオルでハタかれちまった。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 06:11:51.70 ID:j5V0qBaL0

二時間目の休み時間のことだ。
私とあやのは、柊の席を囲んで3人で談笑していた。

「っていうかさ」
柊が私の方を向いて、
「気になるなら自分から行けばいいじゃん」
キッパリと口にしている。

「どこにだよ?」
「こなたの所よ」

おいおいそりゃ勘弁してくれよ。
「何となく、それは無理っぽい気がするんだよなー」
「……面倒な奴だな、お前は」

柊が腕組みして首を振っている。
っておい、何であやのは笑ってんだよー。

その時だった。

教室の扉が開いたかと思うと、
「かーがみん!」
おなじみの声が響き渡ってきた。

おいおい、あやのがとうとう爆笑しはじめたぞ。
どうなってんだ。

私は入口に居る人物をちびっ子だと確認すると、
「おいおい、またお呼び出しのようだぜー」
皮肉を込めるように柊に伝えた。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 06:21:08.62 ID:j5V0qBaL0

それから十数秒後。

「気合いだ! 気合いだ! 気合いだ! 気合いだ!」

まーたちびっ子が叫び始めた。
それに応じるかのように柊も怒鳴っていきやがて、

「いい加減にしなさい!」

の一言でちびっ子どころか、うちのクラス中までもを黙らせていた。

おお、素晴らしい声だ。
応援団なんかに居てくれたら重宝されそうだぞ。

その後もやっぱり口を閉じなかったちびっ子に柊がタオルを突っ込むと、
足早にこっちへと戻って来る。

「素晴らしいシャウトだったぜー」
すぐさま柊の肩に手を回す。
「うるさい」
やっぱり払われた。


「なぁあやのー、私嫌われてんのかなー?」
「毎回タイミングが悪いだけよ」

あやのはどうしていつも余裕なんだよぅ。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 06:36:15.10 ID:j5V0qBaL0

ここで一気に時間が飛んで6時間目のドッジボール。

試合も中盤を迎えたころ、
4対3でこっちが優勢といった状態になっていた。

まあ、私と柊とあやのが居る時点で当然だけどなー。

それにしてもさっきから、
ちびっ子の奴が下らない策を次々と立てては試している。
スポーツで勝負してんだから正々堂々やれってのにさ。


その相手の様子を窺うと、柊妹と何やら言葉を交わしているようで……


あ、また目が合っちまったよ。


しかし今は別に隠れる必要もないだろー。
コートの上なんだからなー。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 07:28:14.72 ID:j5V0qBaL0

何やら相手チームが深刻そうな面持ちで作戦を立てたかと思うと、
高良って奴がボールを持って全力で突っ込んできやがった。

そんなに突っ込んじゃ、どう考えても自殺行――


その時だった。

「みさちゃーん、愛してるー!」

え……この声はちびっ子……?

思わず目を合わせる。
やはりちびっ子だ。

その瞬間、全てが繋がった。

最近、やたら目を合わせようとしてくるあいつ。
そして私のクラスにわざわざやってくるという事実。

それはこれの予兆だったのだ。

道理で、柊が頻繁に隣のクラスへ行く訳だ。
私と近い関係にある柊に、あいつは相談していた。
そうに違いない。

しかし困った、相手は女だぞ? っていうか、こんな状況でそんな事言うのか?

やばい、どうしよう……
あいつ怖ぇ……

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 07:29:02.18 ID:j5V0qBaL0

その後は取り敢えず試合を終わらせたけど、
もはやそんなものどうだって良かった。

「あやの、助けてくれ。ちびっ子が俺のこと好きだってよ!?」

頼れるのはあやのだけしかいない。
しかしあやのは半笑いしつつ、

「……え、逆じゃないの?」

なんて訳のわからないことを言ってやがる。

「何言ってんだよ、あいつの言葉聴いてなかったのか!?」

縋りつくように揺する。

「ちょ、ちょっとやめてよ。だってみさちゃん、最近やたらあの子を気にしてたから……」
「知らねーよ! そんなの知らねー!」

「だって柊ちゃんもそうじゃないかって」
「そんなんじゃねー! 頼むから助けてくれぇー!」


その後、相手コートから戻って来た柊が事実を伝えて止めに入るまで、
私はあやのに縋り続けていた。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 07:34:11.76 ID:j5V0qBaL0

               − 次の日 −

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 07:36:07.01 ID:j5V0qBaL0

――ジリリリリリリ!


ん……目覚まし……?

えっと……7時か。

今日は土曜日だから、ちょっと早かったかな……?

でも今日はかがみ達と遊びに行く予定があるし、それに備えて起きなきゃいけない。

「よい……っしょお……!」

ゆるりと伸びをしてから身を起こし、
そのまま何となく気が向いたのでカーテンを開け放ってみる。

外では既に太陽がさんさんと輝いており、
空は澄み切った青一色に染まっていた。

その街の向こう、遠くにくっきりと見えている山々を眺めながらちょっとだけ考える。


今日一日、いい日でありますように……


なんてのは、都合が良すぎるかな?


こうしていつも通り、私の一日は始まるのである。

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 07:36:55.81 ID:j5V0qBaL0

               − 世界は、なんてことないのである −

                    『”つづく”というEND』

                         完

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 07:45:13.46 ID:j5V0qBaL0

あーもう無理
3日落ちに間に合わなかったのも悔しいけど、もう色々と無理だわ

寝たら落ちるだろうから先に書いておくけど、
たぶんかなり不評だと思われる『桜の日の出来事』について

あれは元来、”存在しなかった筈の選択肢”を選んで派生した物語なので、
”無かったもの”、或いは”パラレルワールド”として各自でいいように解釈してください
パラレルってのは過去に書いたものって意味ですね

という訳で長々とお疲れ様でした
マジでずっと付き合ってくれた人には敬意を表します
それから絵師の人も感想考える余裕がなくてすまんかった、感謝してる

じゃあもう寝ます、乙

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 07:50:35.26 ID:j5V0qBaL0

ああそうだ、これも一応書いとく
>>110
念の為だけど、これは投げっ放しでなくて正規END (”完”がついているのがその証拠)
もともと長い物語の一部分だけを切り取って綿密に書くってのが試みだったしね
日常から始まり日常へ終わるというイメージで一つ頼む

勿論、選択肢によって変わる場合もある筈だけどね


それじゃあ皆さんありがとうございました

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 21:12:55.84 ID:j5V0qBaL0

3日目はアレで当初の予定通りと言えば通りなんだけどね

別解みたいな感じで続けられない事もないけど、流石にぶっ通しで疲れちゃったってのと、
明日が15日だから別のネタを書きたいなってのもあるからね

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 21:41:50.78 ID:j5V0qBaL0

今の状態は400mを全力疾走した後な感じで、凝った物を書く集中力が持ちそうにないんだ

別の話というのは、元々この物語には昔書いた物語のボツネタが各所に散らばってて、
その中でもみゆきさんの盆に関する話に由来したものを時期的に書きたいなってね

しかし世界観自体が対極的に違う上に、
学校であった怖い話のパロディだから首が跳んだりする可能性が高い
だからこの物語では絶対に使わない

ついでに、そのネタは乗っ取りで書いててすぐにスレが落ちたんで、
改めて書くのか、或いは俺に書けるのか自体も不明だけどと保険を掛けとく

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 21:44:29.12 ID:j5V0qBaL0

どこか見たい部分やシチュエーションなんかがあったら列記しててみて

今からアイスでも買いに行ってくるから、書けそうであれば善処はしてみる

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 22:28:47.08 ID:OkyMgLDw0

つかさののんびりな一日とか見たい気がする

186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/14(木) 23:53:22.52 ID:j5V0qBaL0

朝。
カーテン越しの明るい光。
それが薄暗い部屋の中を温かに染め上げている。

眠い。
今しがた目が醒めたばかり。
だから虚ろに布団の中からドアノブを眺めている。

外からは野鳥の声。
しかし小鳥のような可愛らしいものではない。
カラスだ。


今日は土曜日。
脇にある目覚まし時計は、7時15分を指している。

そう、土曜日だ。
当然、学校も休みなのだ。


だからこのまま……
このままもう一度目を閉じても……

192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 00:11:23.61 ID:RtcEt1PG0

「危ないっ!」

がばと布団を蹴飛ばし、
同時に両手を突き出しつつ身を捻ってベッドから起き上がった。

「はぁはぁ……」

荒れた息を整える。

もう少しで屈してしまうところだった。
土曜日という甘い響きと、朝という眠気にだ。
ついでに起き抜けの頭痛もある気がするけれど、それは些細な要因にすぎない。

何れにせよそんなんじゃ駄目だ。

今日は土曜日。
されど、7月のうちの……いや、1年のうちの1日でしかない。

惑わされるな。
長い目で見ろ。

そうだ、熱くなれ。
真夏の太陽のように、もっともっと熱くなるんだ、私。

196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 00:23:58.67 ID:RtcEt1PG0

なんとなく、お姉ちゃんの様子でも見に行ってみよう。

そう思い立った。

なのでイソイソといったように扉を両手で開き、
まだ静けさの中にある廊下を忍び足で歩いていく。

この静けさ……
家族はまだ起きてはいないのかな?

なんだか新鮮だ。

そんなことを考えながら、お姉ちゃんの部屋をノック。

コンコン、と小気味の良い音が響いた。

……返事はない。

そっと扉を開く。

中の様子を窺ってみると、
お姉ちゃんはベッドの上に丸くなって寝ているようだった。

私は暫くその寝顔を眺てから、
再び、そっと扉を閉めた。

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 00:44:55.84 ID:RtcEt1PG0

階下への道を辿りつつ、これからやるべき事を思い浮かべてみる。

早く起きてはみたけれど、特に思い付かない。
うーん、どうしよう。

人の気配の無い居間まで来て頭を捻ってみても、
やはり今一つ思い付かない。

なので、なんとなくテレビを点けてみた。


『今日の夜から明日6時に掛けて、
 ベルセウス座流星群の活発な活動が期待されているようです。
 杜王プラネタリウム館、館長の空丈さんによると、
 この流星群の活動時期が普段より1月ほど早く、何かの前触れでは?
 などと冗談を仄めかしておられましたー』


女性リポーターの明るい声が漏れてくる。
昨晩、チャンネルがニュース番組のままになっていたんだろう。

リポーターの声は明るい調子のはずなのに、
それが却ってしんとした室内の様子をより一層引き立たせてくるように感じられる。


ちょっと寂しい、かな。


私は首を傾けながらも、その内容に目を通していた。

203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 00:47:04.57 ID:RtcEt1PG0

ふと見上げて気付いたんだけど、今夜は満月なのか

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 00:56:51.54 ID:RtcEt1PG0

いや、ここで負けちゃいけない!
気力と熱意があればどうとでもなる!

そうだ、何しよう。
何か、何か……


あ、朝食を作ればいいんだ。


こんな初歩的なことを見落としているなんて。
私とした事がうっかりしていた。

普段は結構しっかりしているだけに、
これはやっぱり起き抜けのせいなのかな?


……さて、それじゃあ何を作ろうか。

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 01:12:41.10 ID:RtcEt1PG0

冷蔵庫の中を確認してみる。
ひんやりとした冷気に当てられながらも覗くと、
材料はふんだんに用意されているようだった。

肉、卵、ベーコンにハムその他もろもろ。
野菜室にもキャベツ、もやし、小松菜、それにフルーツ類。
冷蔵庫隣のダンボール箱の中には大根やじゃがいも等もある。

これは燃えて来た!
この情熱を全て注ぎ込んで、豪勢な朝食で優雅な朝を演出する!
それで家族もハッピー私もハッピー!

「私は出来る! もっともっと出来る!」

そう口にして掌を握ってみる。
けれどもやっぱりちょっと恥ずかしくなって辺りを見回した。

大丈夫、誰も見ていないね。

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 01:30:01.23 ID:RtcEt1PG0

沸騰させたお湯にコンソメを溶かし、塩と砂糖と薄口醤油を少々。
そこにキャベツとタマネギ、短冊切りのニンジンを入れてコトコトと煮込んでいく。

これに後からベーコンともやしを加えれば、私の得意料理の一つ、野菜スープの出来上がりだ。
手間も掛からずに栄養もあるから自分でもお気に入りのレシピだったりする。

鍋からは良い音と匂いが漂ってきている。

その香りの中で、ポン酢とみりんとサラダ油、砂糖と後は適せんの調整を始めていく。
これはドレッシング。
トマトサラダの為。

あ、御飯は炊いてあったんだっけ?

思いつつ電子ジャーの蓋を開くと、若干水分を失った白飯が2合分ほど残っていた。

……まぁ、何とかなるよね。

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 01:36:31.20 ID:RtcEt1PG0

料理行程も進み、
次はベーコンエッグにでも取り掛かろうかと思っていた時のこと。

ガラリ。

扉を開けて入って来たのはお姉ちゃんだった。

エプロン姿の私を見るなり、驚きをありのままに表現してみせている。
私が早く起きていたことがそんなに意外なのだろうか?

取り敢えず、

「気合いだー!」

と返答しておいたら、それきり大人しくなったようだ。

あ、いけない!
余所見していた間に温めていたフライパンから煙が……

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 01:48:16.82 ID:RtcEt1PG0

お姉ちゃんによると、
今日は偶然にも私とお姉ちゃんの二人だけしか居ないらしい。
出払っているのは諸般の用事によってなのだそうだ。

困っちゃったね。

予定が狂って二人分には多い朝食を、互いに囲む。
いつもより活気が少ないので、
些か味気ない気がするのはやっぱり否めない。

けれどもお姉ちゃんは人一倍口数が多いので、
テレビにツッコミを入れながら実質二人分くらいの役割を担ってくれている。

私は朝食を味わいながら、それに耳を傾けていた。

215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 01:57:21.63 ID:RtcEt1PG0

食事が終わりを迎えた頃に、
お姉ちゃんが疑問を投げかけて来た。

どうやら、先ほどの『気合いだー!』が引っ掛かったらしい。

「昨日テレビでやってたよ、ポジティブに行こうって番組で」

その物真似を加えつつ全力で伝えていると、
お姉ちゃんはが溜息ついでに首を振っていた。

私がテレビに影響されやすい、とのことだ。
でも私は、その一言で切り捨てられるのに納得がいかない。

「病は気からって友達に言われたよ?
 それにプラシーボがどうとかってテレビでも言ってたみたいだし」

そうだ、科学的にも証明されているのだ。
現に頭痛をあまり感じないような気がするし。

けれどもお姉ちゃんは私の心意気とは裏腹に、
苦笑いついでにまたも溜息をついていた。

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 02:05:45.62 ID:RtcEt1PG0

お姉ちゃんの携帯が鳴った。
ちょっとごめんね、と言ってから通話に応じている。

電話の相手は誰なのだろう?

何となく予想はつくけれど。

そのまま様子を眺めていると、
お姉ちゃんは笑い声を振り撒いたりうんざりしたり、はたまたツッコミを入れたり……
コロコロと豊かに変わりゆく表情がとても面白い。

いつも通り、学校でのお姉ちゃんだ。

となると電話の相手はあの人しかいないよね。


「こなちゃんから?」


私が言うと、お姉ちゃんは笑顔で頷いていた。

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/15(金) 02:07:19.08 ID:RtcEt1PG0

               − テレビっ子なわたし −

                     終



ツイート

メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:フラム「この戦いを乗り切れば……」