ハルヒ「キョンくん!あのねあのね!」


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31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 08:16:11.17 ID:G/8ftJng0

消えろ、早く消え去れぇ!

俺は心の中でエクスプローラーに向かって叫んでいた。
すると……

『このプログラムは応答していません
 Windowsに戻ってプログラムの状態を確認するには、キャンセル]をクリックしてください。

 プログラムをここで終了した場合は、保存されていないデータが失われる可能性があります。
 プログラムを直ちに終了するには、[すぐに終了]をクリックしてください。』


何故どうでもいい所で凍ってるんだこいつは!?
ええいままよ、すぐに終了だ。

カチリ

直後、ハルヒがパソコン画面上を覗き込んできて、
「ねぇねぇ、なにやってたのー?」
小鳥のように首をかしげている。
「マインスイーパーの上級レベル、しかも爆弾数MAXでハッスルしててな……」
しらじらしいにも程があるぞ、俺。

ハルヒはそんな俺の心境など意に介さない様子で、
「ふーん、だったら一緒にやろうよぉー」
俺の肩へと寄りかかって来たのだった。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 08:45:38.53 ID:G/8ftJng0

「お、おいハルヒ。どうしたんだ?」

ハルヒの仕草、そして言葉遣いとその抑揚に俺は違和感を感じていた。
どこかで聞いたことがあるような……
いや、普段聴きなれている感触。

そうだ、まるで俺の妹のもののように幼く、柔らかいような。

「それじゃあ替わりばんこにやろうね! まずはあたしからだよぉー」

カチリ

「あぁー、爆弾引いちゃったぁ!」
画面上へ向かって思いっきり顔をしかめている。

ハルヒのそんな表情なんて見たことないぜ?
最近流行りのあれか? 夏の大気にでもやられたのか?

「次はキョンくんからやってよー」
「ん、ああそうだな……」
思わず返事を返して適当にクリックすると、結果はどうやらセーフだったようだ。

「じゃあ、次はあたしのばーん!」

カチリ

「あぁー! またやっちゃったー!?」
彼女は再び、感情露わに顔を歪めていた。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 08:52:35.37 ID:G/8ftJng0

その後も俺達は交替でマインスイーパーを続けていた。
正直言ってゲーム自体にはなんの面白みも無く、
仮にこれをこの暑さのなか一人でやらされていたのならば、
『現代においてこのような拷問は非人道的だ!』と誰にともなく訴えていたであろう。

しかし俺は、隣で唸ったり喜んだりところころと変わり行くハルヒの表情や、
その度に上げられる歓声や落胆を観察しているうちに、気付けば見とれてしまっていたようだ。

こいつってこういう表情も出来たんだな。
なんてことを考えちまっていたのさ。

その時の部室内には緩く、
それでいて心地の良い空気が流れていたのを俺は実感していた。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 08:59:22.05 ID:G/8ftJng0

「こんにちはー……」
控え目な表情と声を併せて、マイエンジェル朝比奈さんが部室へと御出でなすった。

「こんにちは」
俺が極めてノーマルな返答を行ったのに対し、
「みくるちゃーん! こんにちはっ!」
ハルヒは実に俺が一日を掛けて消費するであろう元気を込めて手を振っていた。


「はい、えっと……あれ? えっと、その、涼宮さん……?」
朝比奈さんは表情一杯に拡がっていた困惑を眼差しに込めてハルヒへと送っている。
「涼宮さんじゃないもん、ハルヒだもんっ!」
困惑の意など微塵も受け取らないと言った様子で、ハルヒは駄々を捏ねた。

朝比奈さんは恐る恐る、
「そ、それじゃハルヒさん」
「違うもん。あなたはみくるちゃん、あたしはハルヒちゃん」
「ハ……ハルヒちゃん、こんにちは」
「こんにちはっ!」

凄い良い笑顔で答えるハルヒと、
逆に凄い微妙な表情で顔を見合わせ会う俺と朝比奈さんであった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 09:05:06.41 ID:G/8ftJng0

そして冒頭部に戻る訳である。

「みくるちゃんがメイド服着たらすごくかわいいと思うんだ!」
ハルヒは相変わらずのハイテンションで腕をパタパタとさせている。
「そうだなー、確かに朝比奈さんなら似合いそうだ」
この空気に大分慣れた俺も、普通に会話を楽しんでいた。
朝比奈さんも同様なようで、お茶を片手に微笑みながら頷いている。

ハルヒが腕を机に叩きつけるようにして、
「でしょでしょ! それでね、あの……あたしが着たら……どうかな?」
キラキラとした効果音でも響いてきそうな笑顔で疑問を投げかけていた。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 09:17:17.71 ID:G/8ftJng0

それからも普段とは気質の異なる雰囲気を楽しんでいた俺達であったが、
ハルヒは次第に大人しくなっていき、やがては両腕を枕代わりに寝息を立てていた。

「よしよし……」
母性本能を擽られたのか、朝比奈さんが母親よろしくハルヒの頭を撫でている。

この光景、最高級のデジタルカメラで撮り収めて、
新しく作ったharuhi&mikuruフォルダのTOPに無圧縮ビットマップで収めておきたいもんだぜ。

などと考えついた俺は、
早速パソコンへ向かっていきスクリーンセーバを解除して画面を覗き込んだ。

カチカチ

このフォルダの中のこのフォルダ、さらにこの奥にあるmikuruフォルダ跡地とharuhiフォルダ――

――あれ?

無い。
haruhiフォルダが見当たらない。

何故だ?
あのスクール水着がだとかナース服がだとかそんな物を期待していた訳ではないが、
いや、そりゃまあ有ったら有ったで活用法を考えるが……とそんな事はどうでもいい。

とにかく、これは強制終了した影響で消えたというのか?
あまりパソコンには詳しくないが、そんな事は起こり得るのだろうか。

などと些かの疑問を浮かべつつも、俺はちゃっかりharuhi&mikuruフォルダを新設していたのであった。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 09:27:21.98 ID:G/8ftJng0

「可愛いです……」
うっとりとした表情でハルヒの寝顔を眺めている朝比奈さん。
その朝比奈さんの表情を見てうっとりとしている俺。

「そしてその俺の表情を見てうっとりとしている古泉が登場した」
「何の話なのか全く意味が解りませんよ」
鞄を抱えていた古泉は肩を竦め、その後に続けて、
「おやおや珍しいですね、涼宮さんが居眠りとは」
興味津々の面持ちで眺めていた。

「涼宮さんじゃ……ないもん……」
ハルヒは何やらぶつぶつと呟いている。

古泉はその様子から何かを察したのか、
「取り敢えず、説明していただけませんか?」
と割かし真剣な表情と小声で、俺に訊ねてきた。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 09:34:45.14 ID:G/8ftJng0

そんな事を俺に聞かれても、自分自身にだって訳がわからないのだ。
少なくとも今朝の教室でハルヒと顔を合わせた時には普段通りの、
強気で冷酷で自己中心的なままであったはずだ。

となると原因はそれ以降に起こり得たのだろうか?


俺は――


A.「しかし特に、これといって思い当たる節はないんだ」
  と本音のままに答えた。

B.「そういえばさっき、パソコンの中にあったharuhiフォルダが消えちまってな」
  何故かその事が思い浮かんだ。

C.「夏の大気にやられたに違いない」
  俺は訝しげに窓の外の風景を見渡した。


>>57

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 09:36:25.76 ID:yyFTp5KD0



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 09:45:38.47 ID:G/8ftJng0

「夏の大気にやられたに違いない」
俺はそう告げると、窓から外の風景を見渡した。

頬を凪いで行く風すら熱気を孕んでいるな。
もしもこの日差しの下で小一時間オーブンされていれば確実に頭はやられちまうだろう。

ああ、間違い無い。
俺はそれを見越して体育は室内競技を選択していたが、
何事にもハッスルマッスルを志しているハルヒは、今日も元気に運動場で必殺シュートを放っていたはずだ。


いや待てよ?


となるとだ。
被害者は一人だけでは無い可能性もあるよな。

カチャリ――

その時、突如として開かれた部室の扉。
「みんなっ、お待たせしちゃったね!」
そこに居たのは俺の記憶によると文学少女で限りなく大人しかったはずの人物、

長門有希が片手を前に突き出す形で笑顔を浮かべていた。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 09:52:22.29 ID:G/8ftJng0

一瞬にして一同が絶句。
ハルヒ以上に別人すぎるその仕草、その言葉遣い、そして雰囲気。
さらには文字通り雪のような白さを兼ねていた肌が、健康的な小麦色に焼けている。

つまりは、思う存分に日差しを浴びられておられるようだ。

「なーにしけってるのよ皆、梅雨はとっくにあけちゃったよん?」

軽やかな足取りで鞄を振りまわしつつ、
「朝比奈みくるちゃん、お茶をちょうだいな」
と言うなり指定席へと腰を落ち着けた。

朝比奈さんは自身の役目を思い出したのか、
「ひゃ、ひゃい!」
間の抜けた声と共にそそくさと茶を淹れる準備を始めている。


あー……そうだな、まあアレだな。

「これはどこからツッコミを入れるべきなんだ?」

俺はこの場で唯一頼れそうな人間、古泉一樹に向けて首を傾げていた。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 10:08:16.69 ID:G/8ftJng0

「んっふ、照れますよ……」
頬を染め俯く古泉に俺は、
「ふざけている場合かよ、それに気持ち悪い」
一切の情を含ませずに吐き捨てた。
「冗談ですよ、どんな時にも心にゆとりを持つべきです」
「ああそうかい、だが御蔭さまでいつもの俺を取り戻せたような気もな」

俺達が一房の実すら成らないような会話を交わしていると、
「はい、ど、どうぞ」
朝比奈さんがどもりがちに長門へと茶を差し出していた。
「ありがとう、いつもすまないね!」
やはり違和感どころか別人な長門は、
いつもの口数少ない彼女と比べると約一日分の文章量を既に口にしている。

ハルヒとは異なった方向で壊れたか。
だが一応、これからの対策も兼ねて原因の究明を行っておくべきだろう。
「なぁ、長門」
「なに?」
長門は茶をコトリと置き、テーブル越しに顔を近づけるような仕草を見せる。
「お前、何かあったのか?」
「何かって何? あと、名前は有希って呼んでね」

何故こいつらは呼称に拘るんだ?
まあいい、
「じゃあ、有希」
なんだか照れるな畜生。
「なに?」

「お前、最近何か変わった事でもあったか?」
俺は長門の眼を直視しながら訊ねた。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 10:20:24.91 ID:G/8ftJng0

「変わった事って?」
僅かに首を傾げ、疑問の色を眼に浮かべている。

ああ、確かにこの仕草は本来の長門そのままにも見えるな。

「その、変わった事だよ……何か気になる点とかな」
いやに緊張するな。
現に、古泉や朝比奈さんは完璧に目を逸らして傍観者に成り果てているし。

俺が一人だけプレッシャーを感じていると、
「気になる事? それってもしかするとー……?」
長門が見た事も無いようなニヤニヤとした表情を浮かべ、
「大丈夫だって、私はフリーだよ!」

ガタン!

古泉と朝比奈さんが同時に湯呑みを落とした。

おい、やっぱりこの小麦色の人はドッペルゲンガーだとか生き別れの双子とかじゃないのか?

真相は未だ夏の大気の中で揺れ動いているようだ。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 10:25:47.08 ID:G/8ftJng0

そこで俺は考えたのだ。
大事なのはこの現象が何なのか、ではないのだと。
そう、大事なのはこれからどうするかという事。

つまり俺は――


A.やはり時間が解決してくれるのを待とう、なるようになるさ。
  現状を受け止めて新たな日常を楽しむことにした。

B.逃げちゃ駄目だよな、ここで投げるようじゃSOS団の名が廃るぜ。
  俺は原因究明のために奮闘すると誓いを立てた。

C.待て待て、もし原因が夏の大気だとすればだなまだ被害者が居る訳で……
   俺は全くの異次元から訪問者が来るような気配を感じた。


>>92

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 10:28:03.42 ID:yyFTp5KD0

Aだな

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 10:36:50.48 ID:G/8ftJng0

「フッ……太陽の野郎、いま最高に輝いているぜ……」
俺は再び窓辺に立つと、直射日光を手で防ぎつつ空を見上げた。

もう、何というか面倒くさい。
夏の訪れと共に皆がこうなってしまったというのならば、
夏の去り際と共に自体も自然と終息へ向かうだろう。
誰だって夏になると開放的になるものさ。
きっと、長門だってハルヒだって普段とは違う自分を演じてみたくなる時もあるだろうよ。

ならば、やはり時間が解決してくれるのを待とう、なるようになるさ。
それにこのハルヒも長門も新しい発見がありそうで、今の俺は密かな興味すら抱いている。

そして俺は、現状を受け止めて新たな日常を楽しむことにしたのだ。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 10:45:44.69 ID:G/8ftJng0

「見てよ古泉くん、冷蔵庫の奥に何故か消費期限が1年も過ぎたバターが!」
「ナイスネーチャーですよ朝比奈さん。おおっとぉ……こちらのパンはそろそろ来そうですね」

いかん、まともだったはずの二人が気まずさに耐えかねて壊れ始めている。

「朝比奈さん、すみませんが麦茶を頂けませんか?」
「あ、はーい」
「古泉、俺と将棋でもしようぜ」
「ええ、構いませんよ」

よし、平時通りの行動を取らせれば落ち着いてくれるだろう。
これ以上まともな人間が居なくなったら流石に俺も危ないからな。

しかし、
「ねぇねぇ、折角だから皆で遊びに行こうよー!」
小麦色の有希、いや真夏とでも改名するべきか?
まあともかく長門が普段からは信じられない単語を紡ぎ出したのだ。

「むにゃ……?」
あ、ハルヒの奴も目を覚ましやがった。

そして再び選択を迫られることになるのである。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 10:51:28.37 ID:G/8ftJng0

さてと、どうしようかな。


A.「そうだな、夏だしな!」
  俺は自身が持てる最高比率のギアへと切り替えた。

B.「ああ、しかし外は暑い。どこかの屋内施設に向かおう」
  提案に乗りつつも安全を確保するという華麗なる妥協案を打ち出した。

C.「その件については前向きに検討させて頂きます」
  曖昧な態度で大人っぽい対応をしてみることにした。

D.「いや、今のハルヒを連れまわすのは酷というものだろう」
  俺はハルヒを理由に、真っ向から否定することにした。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 10:52:11.11 ID:G/8ftJng0

>>117

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 10:54:34.46 ID:u84Suv+oO



120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 11:04:20.33 ID:G/8ftJng0

「……わかった」
俺は静かに口にする。
「よっし、それじゃあ――」
「まあ待て、俺は長門の意見を聞き入れ――」
「有希だよ」
「有希の意見を聞き入れたんだ――」
「ハルヒだよ!」
うるさい、割って入るな紛らわしい。
「ごめんなさぁーい」
あらあら可哀想に、と朝比奈さんが諫めてくれていた。
古泉に至っては、おやおやハルヒちゃんはお茶目でちゅねーなんて言ってやがる。
お前等三人で家族でも作ってやがれ。

それでは話を戻そう。
「俺は有希の意見を聞き入れたんだから、今度は俺の提案を聞くべきだ」
俺の言葉に目を開き、口元をきゅっと上げて、
「いいよ、何でも聞いてあげる。その代わりいきなりハードなのは駄目よ?」
どんな会話だよこれ。
いや、落ち着け俺。ペースを乱されるな。

そして俺は目的地を告げた。

>>125 (フリー選択、但し屋内施設に限る)

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 11:11:30.92 ID:UjmtDzoyO

プール

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 11:23:34.84 ID:G/8ftJng0

「やっぱり夏だし泳ぎに行こう、シュプールでどうだ?」
そこ、俺に下心がある訳じゃないぜ?
俺は唐突にして浮かび上がった啓示……もといアイデアを実行しているだけなんだからな。

いや待て、俺は何を考え誰にツッコミをいれているんだよ。
落ち着け、まだ俺はまともだ。たぶん。

などというふうに長々と黙考している間に長門は、
「置いてくよー」
既に扉を開け放ち部室外へと向かっていた。

「ほらほらハルヒちゃん、プールへ行くそうですよー」
猫なで声の朝比奈さんに続き古泉が、
「これは楽しみだなーパパ頑張っちゃうぞー」
とうとう亭主宣言までしてやがる。
これはもう手遅れなのかもしれない。
しかしまあ、毎回悩みの種でもあるハルヒはというと、
「わーい! あたし泳ぐの得意なんだよー?」
なんて喜んでいるから良しとしよう。

「やれやれ、どうなることやら」
俺はひとり呟くと、点けっ放しとなっていたパソコンの電源を落とし部室を後にした。

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 11:38:20.47 ID:G/8ftJng0

夏の日差し、草の香り。
どうしてだろうな、夏はどうもあらゆる匂いが強く香ってくる。

逆に冬には冬の匂いがあるけれども、
冬と比べて夏のそれは自ずと気持ちが高まって来るというか……
なるほど、これが夏の大気の正体なのかもしれないな。

そんなこんなで放課となっていた学校を抜け出した俺達は、
耳にこびりつくほどに喧しいアブラゼミの大合唱を受けつつ坂を下っていた。

お前等一週間しか生きられないんだからもっと自堕落に生きろよ、
なんてまたもやどうでもいい事を考えている俺とは裏腹な様子で、

「街が揺れてるー!」
元気一杯のハルヒは笑顔の朝比奈さんに手を繋がれており、
「そうだね、蜃気楼だね」
その横で古泉が解説を行っていた。

「やーっぱり、夏はいいねぇっ!」
両手を天高く伸ばし、同時に爪先立ちを兼ねて長門が空を見上げている。
「暑いのは嫌いなんだがな、雰囲気は割と好きだ」
俺は思っていたことをそのまま口にしてみた。
「なんだかんだで自然が一番だよ、不自然いくない」
長門は上げていた手を俺の顔の前へと運び、人差し指を立てていた。

正直、インチキマジンガーのお前が言うな、
という言葉を飲み込めた俺は偉いと自分でも思っている。

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 11:45:09.58 ID:G/8ftJng0

それぞれが一旦別れ、家へと戻り水着やタオルを取ってくる手筈となった。
別れる直前に長門は、
「面倒だし、空間繋いじゃおうか?」
などと極めて超常現象的な何かを引き起こそうとしていたが、
俺の断固とした意志と古泉の、
「アレは酔うからやめてください」
の一言で見事に却下されたようだった。

別れを告げて一分とも経過していないのにやけに静かに感じる。

昨日まではこのテンションが普通だったのにな。
全く、人間の慣れと適応力と言う物は案外にして凄いものらしいぜ。

さてと、早く皆に会いたいし家まで走るとするかな。

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 11:54:47.68 ID:G/8ftJng0

「あ、キョンくんおかえりー!」
我が妹は相変わらずのようなので若干安心しつつ、
「ただいま、学校はどうだったか?」
軽く世間話でも交わしてみる気になった。

「うーんとねぇ、楽しかったお!」
「そうか、それは良かったな」
なんだ、普通すぎるな。
そう考え二階へ向かおうとしていた俺の背中へ向けて、
「クラスの皆がね、どんどん消えていくの。
 朝の会の時は40人くらい居たのに、2時間目の休み時間までに2人消えちゃってね、
 5時間目の授業中なんて先生が消えちゃったんだよ?
 それからは後ろを振り向いて前を向く瞬間に、瞬きした合間に消えていってぇ……
 それで最終的に無事帰ってこれたのが15人だったよ!」

ああ、全然普通じゃないな。
そしてお前も苦労しているんだな。

「頑張れよ、我が妹よ」
「うん、任せて!」

パタパタと足音を響かせ、妹は玄関から駈け出して行った。

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 12:05:38.17 ID:G/8ftJng0

俺が駅前喫茶店へと辿り着いた時には、
メンバー一同は既に喫茶店の一角に陣取っており、さらにはパフェを平らげた後だったようだ。

「遅くなってすまん」
俺は肩で息を吐きつつ片手で謝罪の意を表す。
「遅いわよキョン!」
眉を吊り上げ腰に手を当てキツく怒鳴るその姿は、紛れも無く本来のハルヒそのもの。
事態を飲み込めない俺は、
「え、ああっと……ハルヒちゃん?」
とりあえず名前を呼んだところ、
「ハルヒ、ちゃん? なんなの気持ち悪いわね」
見事に一蹴されてしまった。

「見てください朝比奈さん、このミルク消費期限が一年も過ぎてますよ」
「ナイスネーチャーです古泉くん。あれれぇ……この砂糖も大分しめってますね」
あの二人はまたも視線を逸らして小芝居。
というかそのネタは何なんだよ。

俺が困惑し立ちつくしていると、
「大丈夫?」
長門が一言だけ呟いて、疑問色の瞳で俺を覗き込んでくる。

あれ、ちょっと待て。
これは俺があれか? 俺が悪いのか?

ともかく喫茶店の会計は俺が済ませる事となり、一同はその場を後にしたのであった。

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 12:15:14.31 ID:G/8ftJng0

カランカランと鐘の音を響かせる喫茶店のドア。
背後からは、
「ありがとうございましたー」
という声で爽やかに見送られた。

しかしその爽やかさとは裏腹に、外は変わらずムッとした熱気に包まれていた。
俺はその熱気に当てられながら考えていた。


そう、確証は無いが――


A.何らかの原因でハルヒ達が自我を取り戻したのだろう。
  俺はほっと胸を撫で下ろした。

B.いや、今の一瞬だけまともに見えた事象こそが幻だ。
  俺はいいように解釈し、気を取り直した。

C.もしかすると、俺はまともじゃないのかもしれない。
  俺は次第に自分自身が恐ろしくなってきた。

D.やれやれ、真夏の太陽は罪な奴だぜ、しかし大事には至らなくて良かったな。
  俺はしれっと長門の胸を撫で回した。

>>170

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/07/25(金) 12:17:32.48 ID:/aJ1dO3B0

D

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 12:38:57.09 ID:G/8ftJng0

「やれやれ、真夏の太陽は罪な奴だぜ、しかし大事には至らなくて良かったな」
俺は太陽へ向かって独白する。
そしてさり気なく長門の元へと歩み寄ると、
「大丈夫か長門?」
言いつつ長門の胸に手をあてがい、そっと撫で回した。

「キョン……」
直後にとても悲しそうな声でハルヒが呟くと、
「出来るだけの善処を施したはずなのにやはり……」
同様の面持ちで古泉が続け、
「うう……」
朝比奈さんは嗚咽と共にただ首を振っている。

え、なんなんだよこの空気?
誰か事情が分かる奴は今すぐ俺に説明してくれ、産業で。

そうやって辺りを見回していた俺だが、
「残念ね」
ゾッとするほどに冷たい声で長門が呟いた。

いや、違う……この声は――

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 12:39:59.00 ID:G/8ftJng0

ttp://www.uploda.org/uporg1565085.ogg.html


左首に衝撃を感じた瞬間、視界がぐるりと回転した。

直後、頭部にゴツンとした鈍痛が走る。

俺の頭と体が離れ離れになったと気付いたのは、

首から下だけとなった自身の体を見上げた時だった。


                                   終

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 12:40:19.96 ID:G/8ftJng0

真夏の大気篇

『まな板の怒り』

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:37:59.66 ID:G/8ftJng0

おっと、今回は油断して落とさたりはしないぜ

それは置いておくとして、どの辺りから再開しようか?
あまりに最初の方から再開されると篇が変わる為に設定自体が大きく変わっちゃうんで、
この雰囲気のまま進むなら直前の位置から選択を変えるのがベストだけど

とりあえず>>199-209までの合計で再開地点を決定することにしてみる

199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:39:56.00 ID:otp+Bo4DO

喫茶店内からを推奨する

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:41:02.26 ID:e1zTueVN0

>>2でこのスレはオチてるな

201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:43:56.00 ID:syutpDiP0

喫茶店からで

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:45:26.17 ID:U/it36SOO

喫茶店まで
ハルヒ達はもとの人格に戻さない方がいい

203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:45:40.49 ID:AXLXciXP0

喫茶店からだろうなぁ

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:45:46.14 ID:04AeU7bW0

喫茶店だな

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/07/25(金) 13:47:30.65 ID:mscUnxS30

喫茶店きぼんぬ

206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:48:24.68 ID:ZhahIP520

喫茶店だ

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:48:38.31 ID:VtpOoSqz0

上に同じ

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:50:36.13 ID:G/8ftJng0

カランカランと鐘の音を響かせる喫茶店のドア。
背後からは、
「ありがとうございましたー」
という声で爽やかに見送られた。

しかしその爽やかさとは裏腹に、外は変わらずムッとした熱気に包まれていた。
俺はその熱気に当てられながら考えていた。


そう、確証は無いが――


A.何らかの原因でハルヒ達が自我を取り戻したのだろう。
  俺はほっと胸を撫で下ろした。

B.いや、今の一瞬だけまともに見えた事象こそが幻だ。
  俺はいいように解釈し、気を取り直した。

C.もしかすると、俺はまともじゃないのかもしれない。
  俺は次第に自分自身が恐ろしくなってきた。

◆D.やれやれ、真夏の太陽は罪な奴だぜ、しかし大事には至らなくて良かったな。
    俺はしれっと長門の胸を撫で回した。


>>212

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 13:53:23.17 ID:VtpOoSqz0



220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 14:03:48.04 ID:G/8ftJng0

そう、確証はないが、
先程の一瞬だけまともに見えた事象こそが幻に違いない。
大気だって揺らぐ、事象だって揺らぐ、ならば辿り着く結果にもゆらぎ補正が出てもおかしくない。
流体力学だがなんだかのカオスの領域と同義だ。

俺は自論を展開し、いいように解釈した。

「あっついわねぇ……」
ハルヒが胸元をパタつかせながら唸っている。
「そう」
長門も同じく口数が少ないまま。

「いやぁー朝比奈さん、これはやばいんじゃないですかー?」
「ええ、これはやばいですねぇー!」
そして何故かノリノリに脱線車両のままな二人。

俺はその仲間達の様子を探るように眺めてから、
「で、どうするんだ?」
一応聞いてみる事にした。

「あたし泳ぎたーい!」
ハルヒに続き、
「私も泳ぎたい……かも」
長門が答えていた。

223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 14:16:35.78 ID:G/8ftJng0

結局は当初の目的通り屋内プール施設を目指す事となったようで、
俺達は再びジリジリと照りつけてくる太陽の元を歩きだしたのだった。

「それにしても参りますね、この気温は……」
古泉が額に汗を浮かばせている。
「あたしもどうにかなっちゃいそうですよぉ……」
朝比奈さんも耐え兼ねたのか口で息をしている。

ふと長門の様子を窺ってみると、ただじっと太陽を直視していた。
「有希、眩しくないのか」
「え……?」
俺の方を向き首を傾げる。
そうか、今は”長門”なのか。
「いや長門、そうやっていると目がぁー、目がぁー……とならないのかと思ってな」
「有希って呼んでよ!」

行き成り変わりやがった。

「やっぱり夏っていいよねっ! 日光を浴びているだけで元気になっちゃうよ!」
どうやら完全に元に戻った……いや、有希になったようだ。

「どうしちゃったのよ有希?」
ハルヒは怪訝な顔で窺っている。

そしてそのハルヒを朝比奈さんと古泉が怪訝な顔で窺っていた。

226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 14:29:28.67 ID:G/8ftJng0

「あのー、ハルヒ……ちゃん?」
朝比奈さんが恐る恐る声を掛けると、
「なによ?」
「ご、ごめんなさいっ」
思いっきり不機嫌な顔で睨まれていた。
「まだのようです……」
古泉が小声で朝比奈さんに耳打ちすると、
「そのようね」
またも距離を置いて獲物を狙う目のまま、高みの見物の態勢に入っていた。

もうアレだ、今さらなのかもしれないがこいつ等全員手遅れなのかもしれない。

俺がうんざりしながら辺りを見回していると……
「キョンくーん!」
パタパタと名を呼び駆けてくる人物が居た。
すぐさま俺は、
「こんな所で何をやってるんだ?」
「良かった! まだ大丈夫だった!」
「何がだ?」
「こっちの話だよ。ねぇ、私の名前を呼んで!」
「はぁ?」
「いいから早く!」

頼まれるままに、俺は妹の名を呼んだ。
「ありがとー!」
そう言葉を残し、妹は手を振りながら揺れる街の中へと消えて行った。
「何をやってるんですか?」
目を白黒させている朝比奈さんの問いに、
「それはあいつに聞いてくださいよ」
と答えると、再び熱気にうんざりしつつ歩きだしたのだった。

228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 14:41:31.85 ID:G/8ftJng0

ようやくして……

『流れるプールあります −シュプール−』

という簡素な看板が立てられている駐車場まで辿り着いた。

「早く早くぅー!」
「こらこら、ハルヒちゃん待ちなさい」
朝比奈さんが楽しそうに追いかけている一方で古泉は、
「み、水……」
瀕死だった。

「うっわぁー地味だなぁ、やっぱり私は海で遠泳でもしたいよ」
俺の隣では長門が愚痴っている。
「おいおい酷いこと言うなよ、これでもこの街では数少ないレジャー施設なんだぜ?
 ウォータースライダーがあるから我慢しろ。嫌ならドーバー海峡にでも行って来い」
俺は何となくシュプールの肩を持つことにした。
思わず地元を応援したくなる心理が働いた訳だ。

しかし長門は真顔のまま、
「それじゃ空間繋いじゃうねー」
と言いだしたので、気付けば俺が平謝りする羽目になっていた。

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 14:52:49.30 ID:G/8ftJng0

「ようこそ、水の館シュプールへ」
受付に居たおばさんに声を掛けられた。
すぐさま俺は、
「高校生5人です」
というふうに各々から入場料を徴収して話を付けていると。
突如として朝比奈さんが、
「この子、子供料金ですよ!」
ハルヒを指差して訴えていた。

「確かにそうですよね」
そして受付の人は即座に納得していた。

おいおい、それでいいのか。

「やった、半額だって! これで浮き輪を借りられるね!」
朝比奈さんはいつになく全開のようだ。

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 15:09:27.19 ID:G/8ftJng0

ハルヒ、古泉、朝比奈さんによる臨時家族は、
総じて浮き輪貸出し場に出掛けてしまったので俺と長門は受付前のベンチに腰掛けていた。

そういえば、俺はシュプールに来るのはこれが初めてなんだな。
確か中学の頃にオープンするということで大々的に広告を行っていて、
割と小さなこの街ではそれなりに話題となっていたんだっけ。

こういう地方でのレジャー施設は大概衰退の一途を辿り経営不振に陥るものだと俺は思うが、
意外にも閑古鳥が鳴くどころか、雑誌などでも紹介されて人気も出て来ているらしい。
ただし、プールの話題ではなくそこに付随しているレストランの味が評判となっている訳だが。

そうそう、この施設の構造はというと、
一階部分がプールや更衣室、一部が屋外プールというふうにメイン機能を占めており、
二階部分がレストランや割かし広いゲームセンター、土産物売り場となっているらしい。
ちなみにこれは今俺の前にある看板から得られた知識だ。

何となく受付の方に目をやると新しく来ていた二人組の男女客が、
「ここがシュプールか……ようやく辿り着けた」
「ええ、もう二度と戻ってこれないかと思ったわ」
などと意味不明の会話をしていたので俺は目を逸らすことにした。


そんなこんなで疑似家族三人組が何故かバナナボート片手に帰ってきたため、
俺達は一階へと続く階段を降りていくことにした。

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 15:18:25.99 ID:G/8ftJng0

これまた割かし広い更衣室。
といっても当然男女で別々となっている為に、
「古泉、お前はここへ来た事はあるのか?」
などと当たり障りの無い会話を交わしていた。
「いいえ、僕は今回が初めてですね」

パシーン!

「真っ裸で自分のケツを叩くなケツを」
「すみません、癖なものでして」

古泉に粗末な物を見せつけられ早くも気が滅入った俺は、
ただ淡々と着替えを済ませて着衣をコイロッカーの中へと仕舞い、プールへと急いだ。

「待ってろよー我が娘よー」

古泉の笑顔がいつもより怖いぜ、畜生。
頼むから俺とこいつだけの二人っきりにしないでくれ。

247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 15:25:43.42 ID:G/8ftJng0

これまた割かし広いプール。
と描写を怠け過ぎるのもあれだなと思ったので、辺りを万遍なく見渡した。

ふむふむ……

意外と色々と遊具があるもんだな。

それにこの気温の為か、年の頃が同程度の人物達も結構いるようだ。

そういえば、ハルヒ達はまだ着替え終わっていないのだろうか。


さてと、それでは――


A.俺は施設に着目し、それらを注意深く観察していった。

B.俺は訪れている人達に着目し、それらを眺めていった。

C.俺は訪れている人達の中でも女性に限定し、綿密に描写を始めた。

D.暇だったので古泉と全力全開のラジオ体操を始めた。


>>252

252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 15:30:51.63 ID:FAKWj2jd0

C

256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 15:49:56.88 ID:G/8ftJng0

「さぁ、一緒にラジオ体操でも如何でしょうか?」
古泉が肩に手を回してきたので、無言で振りはらった。
「暴力かいな……」
そう呟くとがっくりと肩を落とし、壁際で腕を交差させつつ屈伸を始めていた。


さてと、それでは……

俺は辺りを見渡していく。

C……D……C……Bか……

ふん、どいつも小物だな。
もう少し気合いを入れてだな……おっと?

プールドーム内を鷹の眼で睨みを利かせていた俺は、
こちらとは正反対の位置に見知った顔を見つけたのでった。距離にして約100メートル強か。

257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 15:51:27.32 ID:G/8ftJng0

俺は観察を始める。

ふむふむ、普段の控え目な容貌とは裏腹になかなかの大きさ。
意外とスタイルも良いんだな。
今は無きかつての長門のような白い肌も備えており、肌にもツヤがある。
水を弾きそうだな……ちょっと水の掛けっこでもしてみたいなぁ。
そして思わぬハプニングで水着がヒラリ……彼女は戸惑いつつも……

あれ、そういえばあの人の名前は何だっけ?

「みどり……みどり……くぼたみどり……」
いや、それは別人だな。
えっと確か、そうだ!

「真緑さん」


――喜緑です


その声を認識した時、既に彼女は俺の耳元で囁いていた。

262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 16:01:41.64 ID:G/8ftJng0

「いつの間に!?」
「厭らしい視線を感じたもので」
彼女の眼には溢れんばかりの冷酷さが灯っていた。
不味い、話を変えなければ。

「奇遇ですね、お譲さん。わたくし達もSOS団の面々と行楽しておりましてな」
俺が極めて紳士的な対応を心掛けていると、
「夏の日差しは危険ですからね、気を付けてください」
皮肉を残し、そのまま素通りされてしまった。

このままじゃいけない、このままじゃ。

そう考えた俺は――


A.「すみませんっしたー!」
   体育会系ばりの勢いで謝った。

B.「誤解だよ!」
   言い訳を考え付き、誤魔化すことにした。

C.「好きだ!」
   俺は自分がわからなくなった。

D.「お譲さん、水の掛け合いでも如何かな?」
   俺は紳士的変態行動に望みを託した。

>>267

267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 16:03:53.11 ID:VtpOoSqz0



273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 16:25:47.14 ID:G/8ftJng0

「好きだ!」
考えるよりも早く、その言葉を口にしていた。

「はぁ、夏の暑さにでもやられたんですか?」
うんざりといった様子で彼女が振り向くが、そんなもの関係無い、
「俺は真緑さんが大好きなんだ!」
「喜緑です」
「喜緑さんが大好きなんだ!」
「嘘よっ!」

喜緑さんが見た目にはとても似つかわしくない悲痛な叫びを上げた。

「男なんてみんなそうよ! 私、私……部長さんのこと信じてたのに!」

部長か。
そう、コンピ研のえーっとえーっと……

「コンピ研の部長がどうした!?」
俺も全力で言葉を返す。
「僕は一人しか愛せない、ならば僕は二次元世界の住人を愛するって言ったきり……!」

ほろり、と真緑さんの頬から涙が零れ落ちる。
なんて奴だ! こんな可憐で純粋な少女を泣かせてしまうなんて!

「俺は、俺はそんなことしない!」
「……」
「本当だ!!」
「……」

その後、名前なんでしたっけと聞かれた。

276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 16:27:22.05 ID:G/8ftJng0

「ふーん……で、これはどういう事よ?」
ハルヒが目を線にして呟いている。
「世の中不思議なことは沢山ありますからね」
古泉も俺の方へ微笑みを送ってくる。
「でも賑やかなのはいい事だと思いまぁす」
朝比奈さんはお茶を配りつつ笑っていた。
「……」
相変わらず無言で見つめてくる長門。

そして――

「えっと、今日からSOS団へ入団する事になった喜緑 江美里です。よろしくお願いします」
深々と頭を下げている。

俺はその横に立って、
「と言う訳だ、みんなよろしくしてやってくれ」
まるで転校生の紹介を行う先生の如く、言葉を締めくくった。

「うふふ、キョンくん」
「なんだい江美里」
「これからよろしくね」
「ああ、俺は君を愛し続けると誓ったんだからな」

そして俺達SOS団は新たなスタートを切ったのだった。


                                             終

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 16:28:03.91 ID:G/8ftJng0

         真夏の大気篇


         『喜緑江美里』

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/25(金) 16:39:38.13 ID:G/8ftJng0

あまりにも脱線しすぎて何を書きたかったのか忘れてしまった
一番最初のレス書いた瞬間は暗い話を想定して書いていたのに、最早そんな空気は微塵も無い
これだからVIPは面白いんだよな

と言う訳でまた暫く空けます、流石に疲れた
続きはまた後で俺が書くか、他の人が書きたいってのならその人に委ねる



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