喜緑さんの監視


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446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/30(月) 22:31:57.25 ID:zSchSed8O

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《喜緑さんの監視》
 その日、文芸部の部室には、俺と長門だけだった。ハルヒは掃除当番、朝比奈さんも未だ現れず、体育の授業の疲れもあり長机に伏してぼんやりと長門の横顔を眺めるうちに眠ってしまったらしい。
 最初に見えたのは、かわいい鼻だった。小動物の様にヒクヒクと動くソレは、愛らしくて、悪戯って訳でもないが、息を吹き掛けてみたくなったのも当然だろう。
「…!?」
 かわいい鼻がパンして、顔全体が見える。あれ?、なんで横向きなんだ。あぁ、俺の頭が横向きなんだ。
 意識が覚醒するにつれ、状況を思い出す。長机に伏した俺の眼前に、長門の顔がある。相も変わらずの無表情だが、黄昏とは別に紅く染まっている。
 長門、何をしてたんだ。
「…何もしていない」
 かすかな動揺の色を瞳に映し、小さく頭を振る。
 匂いを嗅いでいただろう。問いながら、自分の顔が緩むのがわかる。
「もう…帰らないといけない」
 えっ、そんな時間なのか。
「そう…既に、皆帰ってしまった、私達だけ」
 ハルヒに起こされなかったのは、意外だな。朝比奈さんのお茶を頂けなかったのも残念。
 伸びをして、一緒に帰ろうと提案すると、僅かに頷いた。

448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/30(月) 22:36:25.19 ID:zSchSed8O

《喜緑さんの監視》
 長門の話だと俺が寝ている間に、ハルヒ、朝比奈さんと、部室にやって来たが、寝ている俺を見て帰ったらしい。 あぁ、古泉もな。
 で、尋ねるんだが、夕べシャワーで済ませたんだけど、そんなに臭うのかな。まぁ、〆の授業で汗だくだったが。
「そんなことは…」
 最後の辺りが聞き取れないですよ。うつ向いているのも、気になります。
「いい…匂い…だった」
 聞き違いだったらごめんなさい。午後の体育の授業で、汗をかいた男の体臭ですよ。汗臭いと言われて当然なのに、ちょっとわからない。
「晩御飯…一緒に」
 俺の疑問は、無視ですか。そして、静かに凝視されると断わり難いです。
 携帯を取り出して、呼び出し3回で無駄に元気な対応を受ける。
『じゃあ、キョンくんは、お泊まりぃ』
 遅くなるけど、学校もあるから帰ります。
『ふーん、じゃあさぁ』
 興味津々な質問をされる前に、携帯を畳む。
 さてと、何処で頂きますか。
「外食は、貴方に経済的負担をかける…家で」

451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/30(月) 22:41:18.42 ID:zSchSed8O

《喜緑さんの監視》
 外食=俺の奢り、それがデフォルトですか。ちょっと悲しい。とにかく、長門の家に向かう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 殺風景な長門の部屋。食後のお茶を飲みながら、静かに時間の流れに身を任す。
 間が持たない。楽しい話題を探して、心の引き出しを開けて回っても、目星しい話題がない。
 気付けば、長門が立ち上がっている。
「お風呂」
 そうか、そろそろ失礼するかな、じゃあまた明日な。立ち上がろうとする俺と玄関の間に長門が入る。
「貴方が」
 しかし、着替えもないし、家にも風呂はあります。
「貴方は、体臭に危惧を抱いていた」
 それはそうだが、
「だから、…着替えは入浴中に整える」
 いくらなんでも、それは甘え過ぎだろう。
「ホストの厚意を断るゲストは、無礼」
 ハイハイ、わかりました。長門って、こんなキャラクターだったかな。
「私が嫌いなら、仕方ない」
 視線をズラシながら、呟く様に言われると、降伏しか選べない。
 意外に広い湯船に浸り、思考の海に出ると、長門の行動が、何時になく積極的な事に気付く。
 可能な限り、静かに風呂を出ると、リビングを覗き込んだ。

453 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/30(月) 22:46:15.66 ID:zSchSed8O

《喜緑さんの監視》
 脱ぎ捨てた俺の服と、クリーニングから帰った様な俺の服。情報の再構築とか言ったヤツなんだろうな。
 それにしても、脱ぎ捨てた俺の服を抱きしめて、クンクンスーハースーハークンクンって、おかしな長門がいる。無表情でありながら、閉じた瞼に、頬から耳の先まで紅潮した顔は、なんとも艶っぽい。
 薄く開いた長門の眼に気付かなかったのは、その艶っぽさのせいだろう。
「………」
 ………
 実際は僅かな時間だったのだが、単細胞から人類までの歴史を詰め込めそうな長さに感じる時の流れがあった。
 …人の服で、何してるんだ長門。間の抜けた質問。
「…情報…汚染…の…有無…を…確認…して…いた」
 子供が言葉を探しながら言い訳をする様に、途切れ途切れに話す。必要最小限な何時もと違う話し方。記録媒体が、俺の頼りない脳髄だけっていうのが残念でならない。
 すまんが、そこの着替えが欲しいんだけど。戸口から頭を出した、後ろ姿の間抜けな俺。
「そう…使って」
 そう言って、長門は動かない。そこまで取りに来いと言われますか。ならば、向きを変えるかして頂けると、有り難いのですけど。

455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/30(月) 22:51:23.53 ID:zSchSed8O

《喜緑さんの監視》
 仕方ないので、バスタオルを巻き付け部屋に入る。何故、脱いだ服を持っていって、着替えを置いていかなかったのか考える。
 まさかな、さっきから俺に注がれる視線が答えじゃないよな。完璧に畳まれた着替えを拾う。
「どこへ」
 脱衣所で着替えるんだけど。
「ここでも構わない」
 おいおい、いくら何でも恥ずかしいだろう。逆の立場だったりしてみろよ。
「平気…、貴方になら、見て欲しい」
 幻聴かな?さらりと、とんでもない事を言われた気がする。
「幻聴ではない」
 言いながら立ち上がると、スカートの留め具を外し上着をたくし上げる。
 落ち着け、長門。何故に、お前が脱ぐんだ。
「同じ姿になれば、恥ずかしくない」
 待て、それはそれで色々と困った事になる。
「体温と心拍数の上昇を確認、私も同じ」
 音もなく近づくと、抱きついてくる長門。血液の集中を紛らわすのに、谷口の存在が貢献しようとは思わなかった。今度ジュースくらいは、奢ってやろう。
「私、貴方と」
 間近に見る長門の瞳は、それだけで全てを語っている様だった。

456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/30(月) 22:56:22.73 ID:zSchSed8O

《喜緑さんの監視》
「は〜い、そこまでぇ」
 その声は、喜緑さん!?何故に、いつの間に、やっぱり?とにかく、様々な疑問と共に、部屋の入口で喜緑さんが微笑んでいた。
「長門さん、それ以上は、エラーを蓄積してしまいますよ」
 そう言うと、喜緑さんは長門に手を添えて俺との距離を開ける。
「…」
 明らかな不満の色が、長門の瞳を横切る。喜緑さんと言えば、にこにこ笑顔で俺に語りかける。
「あなたは、服を着たら真っ直ぐ帰宅しなさい」
 ハイ、わかりました。
「長門さんも、早く服を着てくださいね」
「…そう」
 物凄く不満そうに聞こえるが、たぶん聞こえるだけだろう。
「さあ、帰りましょう、途中まで送りますよ」


 翌日、文芸部部室は、何時も通りの様子だった。いや違う、長門に目をやると、表情は変わらないが耳の辺りが赤くなる。ページを捲る音も、不規則だ。
 最早、敗軍の将となった古泉が、訳知りな笑みを浮かべる。喜緑さん経由か。
 心の中で、決まり文句を呟いた。
             END

458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/30(月) 23:02:16.40 ID:zSchSed8O

《夢想長門》
「キョンて呼んでいい」
 あぁ、いいとも。それより動けないんだけど、何故かな。
「貴方が逃げないように」 とか言いながら、ズボンを脱がしますか長門さん。
 長門の細い指が、俺のものを愛おしそうに包む。身体中の血液が集まっていく。
「貴方、キョン自身」
 そんなに、動かすと…。
 待て待て待て、待てよ。長門がこんな事をする筈がない。きっと夢だ、間違いない。夢ならば問題ないな。いやいや、目を覚ましたら恥ずかしい状態でした、なんていうのは避けたい。
 起きろ!起きるんだ俺!!
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 見慣れた天井に、安堵する。
モゾモゾ
 掛布団を退けると、自称シャミセンの保護者の頭。
「ヒョンふん、あははよ(キョンくん、朝だよ)」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 くわえたまま喋るんだ、仕方ないだろう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
《妹無双》の方が良かったか



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