ハルヒしあわせ


メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:阿笠博士「素晴らしい装置をつくったぞい」

ツイート

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 05:49:05.06 ID:bukZNdhF0

 ガチャ

キョン「あ」

ハルヒ「あ」

キョン「なんだハルヒ、やっぱりおまえも来てたのか」

ハルヒ「まぁね」

キョン「俺もだよ。なんとなくこの部室に足が向かっちまった」

ハルヒ「あたしもよ。どうしてもここに来たくなっちゃった」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 05:55:09.02 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「本当に楽しかったからね。ここにいた時間は」

キョン「お、珍しく随分素直だな」

ハルヒ「ふん。いいじゃないこんな時くらい」

キョン「…俺もだよ」

キョン「正直最初はおまえに無理やり引きずられた感じでここに入ったから」

キョン「来るのも嫌々だったけどな」

ハルヒ「はっきり言うわね」

キョン「いいだろこんな時なんだから」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 05:59:35.81 ID:bukZNdhF0

キョン「でも、長門、朝比奈さん、古泉…みんなで遊んだ思い出はさ」

キョン「俺が今まで生きてきた中で、どうも一番の思い出みたいなんだ。今まで自覚はなかったけどな」

ハルヒ「そう」

キョン「……」

ハルヒ「…そう言えば、あの三人は来ないのかしらね?」

キョン「ああ…あの人方はみんなそれぞれ忙しいんだよ」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:01:57.18 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「ふーん」

キョン「…おもしろいこと教えてやろうか。ハルヒ」

ハルヒ「なに?」

キョン「今だから言うんだけどな。あの三人、実は宇宙人、未来人、超能力者なんだぜ」

ハルヒ「それ前も聞いたわよ」

キョン「本当なんだよ。それでおまえは神様なんだ」

ハルヒ「なによそれ…」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:05:49.51 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「そんなことあるわけないじゃないばーか」

キョン「やっぱり信じないか。おまえなんだかんだ言ってリアリストだからな」

キョン「おまえのいないところでな。俺はけっこう命がけの事件に巻き込まれたりしてたんだ」

キョン「朝倉に殺されそうになったり…その時は間一髪長門が助けてくれたんだがな」

キョン「あ、ついでに言うと朝倉も実は宇宙人だったんだ。それで引っ越ししたってのは嘘で、本当はあいつ消えちまったんだぜ」

ハルヒ「はいはい」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:08:48.45 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「でもね」

ハルヒ「あたしのいないところで、あんた達がコソコソ話したり、なんかしたりしてたのは知ってたわよ」

キョン「そうなのか?」

ハルヒ「うん」

ハルヒ「でもさ、コソコソ話すってことはあたしに聞かれたくなかったんでしょ? だからあえて聞こうとは思わなかったけどね」

キョン「まあな」

キョン「でもな、それも本当は全部おまえが原因なんだぜ」

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:12:10.36 ID:bukZNdhF0

キョン「さっきも言ったけどさ。おまえは神様だったんだよ」

キョン「おまえがその気になれば、この世界だって改変しちまえたんだ」

キョン「だから俺たち、おまえが不機嫌にならないようにいろいろやったんだぜ。古泉の機関がお芝居の推理ショー用意したり」

キョン「ま、なんだかんだでそれが楽しかったんだけどな」

ハルヒ「あっそ」

キョン「信じろよ」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:16:01.77 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「じゃあそれが本当だとしたら、なんでこんなことになってんのよ。あたし今はこの世界に無くなってほしいなんて考えてないわよ」

キョン「それは…」

キョン「どうもわかんないみたいなんだよな。長門も朝比奈さんも、原因不明だってよ」

キョン「まー結局、何が起こるかなんて誰にもわかんないってことだ」

ハルヒ「ふん」


 ヒュオオオオオ…

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:18:30.51 ID:bukZNdhF0

キョン「…茶でも飲むか」

ハルヒ「そうね。キョン、煎れてよ」

キョン「はいはい」


キョン「…ふう」

キョン「ああ…もう一回だけ朝比奈さんが煎れてくれ茶を味わいたかったなぁ。楽しみにしてここに来たんだけどなぁ」

キョン「それだけが心残りだ」

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:21:42.41 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「……」

キョン「……」


キョン「…なぁハルヒ」

ハルヒ「? なに、キョン」

キョン「ちょっとその辺、自転車で走らないか」

ハルヒ「え?」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:23:44.59 ID:bukZNdhF0

─────

 ガチャン

キョン「よ…っと。よし、ハルヒ、後ろ乗れ」

ハルヒ「いいわよ別に。自分のあるから」

キョン「いいから乗れって。そうじゃないと意味ないだろ」

ハルヒ「……」


ハルヒ「わかったわよ。乗ればいいんでしょ乗れば」

キョン「ああ」

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:29:13.62 ID:bukZNdhF0

 キコキコキコ

ハルヒ「…どこにも誰もいないわね。それにお店も全部閉まってるし。本当にゴーストタウンだわ」

キョン「そりゃそうだ。こんな時まで商売しようなんてヤツはさすがにいないだろ」

ハルヒ「なっさけないわねー。最後まで諦めないヤツは一人もいないわけ?」

キョン「おまえだって諦めてるんだろ?」

ハルヒ「…それはそうだけど」

キョン「なら文句言うな」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:35:11.68 ID:bukZNdhF0

 キコキコキコ

キョン「…なんかさ」

ハルヒ「なによ」

キョン「その辺の木とか、ベンチとかも、こうやって見たらすごい新鮮に見えてこねーか?」

キョン「今まで気にもとめなかったものも、意識して見ると違って見えるもんなんだな」

ハルヒ「何急にかっこつけて詩人ぶってんのよ」

キョン「思ったことを素直に言っただけだろ」

ハルヒ「ふん」

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:39:32.56 ID:bukZNdhF0

 キコキコキコ

ハルヒ「…だんだん暗くなってきたわね」

ハルヒ「ねえ、どこまで行く気?」

キョン「そうだな。隣町まで行ってみようと思う」

ハルヒ「はあ? なんでそんな遠くまで行く必要があるのよ」

キョン「ちょっとおまえと行ってみたい場所があるんだよ。頼むよ付き合ってくれ」

ハルヒ「……」


ハルヒ「ったく。しょーがないわねーあんたは」

キョン「悪いなハルヒ」

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 06:56:52.55 ID:bukZNdhF0

─────

 キキッ

キョン「よし着いた。ここだここ」

ハルヒ「何これ…鉄塔?」

キョン「ああ。なんかよくわからんが作りかけのまま放置してあるんだよ昔っから。ここを昇るんだ」

ハルヒ「ちょ、ちょっとキョン。危ないわよ」

キョン「なんだよ、いつものおまえなら喜んでついてくるぞ。いいから来いって」

ハルヒ「……」

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:00:07.27 ID:bukZNdhF0

 ドン

キョン「よっと。ハルヒ、もう少しだ。頑張れ」

ハルヒ「んしょ…っと」

 ドン

ハルヒ「はーようやく着いた。…へえー。一番上はちょっと広くなってるんだ」

キョン「ああ」

キョン「小さい頃友達とたまたま発見してな。ほら。星がすげー近く見えるだろ」

ハルヒ「ホントだ」

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:05:32.66 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「綺麗…」

キョン「うん」


キョン「……」

キョン「あ」

キョン「あと何時間くらい?」

ハルヒ「え? あー。あと2時間ちょっとね」

キョン「そうかぁ…」

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:09:04.85 ID:bukZNdhF0

キョン「はー。短い人生だったな」

ハルヒ「文句言わないでよ。あたしだってそうなんだから」

キョン「まあな」


キョン「…ふう」

キョン「あー空気がうまい」

ハルヒ「……」

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:10:18.04 ID:bukZNdhF0

キョン「……」

キョン「なあハルヒ」

ハルヒ「なによ」

キョン「おまえさぁ好きなヤツいないのか」

ハルヒ「!? はぁ!? な、なによ急に」

キョン「いいだろ、どうせ最後なんだし」

ハルヒ「……」


ハルヒ「…いるわよ」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:12:51.75 ID:bukZNdhF0

キョン「ホントか。誰だ?」

ハルヒ「誰だっていいじゃないそんなの!」

キョン「いいだろ最後なんだから」

ハルヒ「よくないわよ!」

キョン「なんだよ…」

ハルヒ「あんたねー。そういうあんたこそどうなのよ! 好きな女の一人くらいいないの!?」

キョン「いるぞ俺も」

ハルヒ「!!」

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:16:56.42 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「な…」

ハルヒ「……」

ハルヒ「だ、だれよ」

キョン「おまえ先に言えよ」

ハルヒ「嫌よ! あんた先に言いなさいよ」

キョン「じゃ、俺が言ったらおまえも言うか?」

ハルヒ「…い、言うわよ」

キョン「絶対か?」

ハルヒ「うるさいわね! いいからさっさと言いなさい! 命令よ!」

キョン「そうか。命令ならしかたないな」

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:20:18.88 ID:bukZNdhF0

キョン「……」

キョン「…はあ…」

キョン「あー、なんだ。いざとなったらやっぱりちょっと緊張するな」

ハルヒ「え?」

キョン「でもまぁ、これ言うためにこんなとこまでおまえに付き合ってもらったわけだしな」

ハルヒ「……」

133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:21:29.45 ID:bukZNdhF0

キョン「…ま、なんだ。これだけ言えばもうわかってるだろうけど」

キョン「おまえだよ。ハルヒ」

ハルヒ「……」

キョン「…ふう」

キョン「よかったよ言えて。さっき俺さ、朝比奈さんの茶飲めないのだけが心残りだって言ったけどさ」

キョン「これを言えなかったら、死んでも死にきれないところだった」

ハルヒ「……」

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:23:27.17 ID:bukZNdhF0

キョン「でもあれだ、ハッキリ言えたのは、正直こんなことになったおかげだと思う」

キョン「そこだけは感謝しなきゃいけないな」

ハルヒ「……」


キョン「…ほら。次おまえの番だぞ。さっさと言えよ」

キョン「おいハルヒ…ハルヒ?」

ハルヒ「……」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:23:53.75 ID:bukZNdhF0

キョン「どうしたおまえ…泣いてるのか?」

ハルヒ「……」

キョン「なんだよ、なんでいきなり泣くんだよ。なんか俺悪いこと言ったか」

ハルヒ「……」


ハルヒ「…馬鹿…」

キョン「え?」

ハルヒ「言うのが遅いのよこの馬鹿!!」

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:26:15.32 ID:bukZNdhF0

キョン「な、なんだよ遅いって」

ハルヒ「あたしも! あんただったの!」

キョン「何が?」

ハルヒ「好きな人に決まってんでしょこの馬鹿!」

キョン「…あ…」


キョン「……」

ハルヒ「……」

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:28:55.40 ID:bukZNdhF0

キョン「…マジか」

ハルヒ「……」

キョン「…そうか…」


キョン「…そうか。よかった」

ハルヒ「…なんでもっと早くに言ってくれないのよ…」

キョン「すまんな根性無しで」

キョン「それに俺は…俺はおまえにとっちゃただの一平団員でしかないと思っていたからな」

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:29:51.70 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「……」

ハルヒ「…ずっと見てたじゃない。あんたのこと」

キョン「誰が?」

ハルヒ「…あたしよ…」

キョン「え、見てたって…嘘だろ?」

ハルヒ「鈍感。グズ。アホ」

キョン「……」


キョン「すまん」

ハルヒ「…まったく…」

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:32:34.84 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「……」

ハルヒ「…グスッ…グスッ…」

ハルヒ「…キョン…」

キョン「? どうした?」

ハルヒ「本当に…あたしのことを好きでいてくれたの…?」

キョン「な、なんだよそれ」

ハルヒ「有希や…みくるちゃんじゃなくて…?」

キョン「何度も言わせないでくれ。おまえのことが好きだって言っただろ」


ハルヒ「…グスッ…グスッ…」

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:36:42.87 ID:bukZNdhF0

ハルヒ「…ありがとう、キョン…」

キョン「礼なんて言うなよ」

ハルヒ「だって…グスッ…」

キョン「……」


ハルヒ「…グシグシ」

ハルヒ「…はあー…」


ハルヒ「はあ。なんかさ。今までもうきっぱり諦めついてたつもりだったけど」

ハルヒ「やっぱり死にたくなくなっちゃった」

ハルヒ「あたし、あんたともっと生きてたかった」

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:37:29.11 ID:bukZNdhF0

キョン「俺だってそうだ」

ハルヒ「うん」

ハルヒ「…でももう無理ね」

キョン「…ああ…」

ハルヒ「せめて最後は、いっしょにいましょ」

キョン「そうだな」

ハルヒ「ふふ」

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/18(日) 07:37:57.61 ID:bukZNdhF0

キョン「……」

キョン「なあハルヒ」

ハルヒ「なに?」

キョン「俺さ、SOS団と…おまえと会えて、本当に幸せだったよ」

キョン「おまえはどうだった?」

ハルヒ「……」


ハルヒ「そんなの決まってんじゃない。あたし、幸せよ」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 01:56:20.78 ID:KR/1Amli0

─────

 ガチャ

古泉「おや」

長門「……」

みくる「あ、こんばんわ」

古泉「二人とも、来てたんですか」

みくる「ええ…やっぱり最後はどうしてもここに来たくなっちゃって」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 01:57:51.94 ID:KR/1Amli0

みくる「古泉君、お仕事はもういいんですか?」

古泉「ふふ。いいも悪いもありませんね。やはりもう、どうしようもないみたいです」

みくる「そうですか。残念ですね」

古泉「ま、仕方ありませんね。これが運命というやつなのでしょう」

古泉「それより」

古泉「朝比奈さんも長門さんも、こんなところにいる必要はないはずではありませんか。なぜここに残るんです?」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 01:59:33.37 ID:KR/1Amli0

古泉「朝比奈さん。あなたは未来からやってきた。と、いうことは、この世界はあなたの世界とは別の次元」

古泉「予想外のハプニングが起きたパラレルワールドという位置付けになるのでしょう。ならば、今あなた自身の世界の未来に帰還すれば助かるのでは?」

みくる「ええ…おそらくは」

古泉「なら」

みくる「だけど…みんなを残してあたしだけ帰るなんて、そんなことはできません」

みくる「あたし、この時代が、SOS団のみんなが好きですから」

古泉「…そうですか」


古泉「長門さんは?」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:03:37.57 ID:KR/1Amli0

長門「……」

長門「最後なので、正直に言う」

長門「生まれた時、私には感情や自分の意志というものが存在していなかった。しかし」

長門「あなた達と出会って、それらを、少しとはいえ、見つけることができた気がする」

長門「ここで過ごした時間は、実に有意義だった」

長門「楽しかった」

長門「だから、私もここに残る」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:05:54.53 ID:KR/1Amli0

みくる「長門さん…」

古泉「…驚きましたね。あなたがそんなことを言うなんて」

長門「最後だから」

長門「……」

長門「…朝比奈みくる」

みくる「は、はい」

長門「今までありがとう」

みくる「!!」

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:07:47.50 ID:KR/1Amli0

みくる「…な…」

みくる「長門さん…」

みくる「…う…うう…グスッ」

 ぎゅっ

みくる「ううう…グスグス」

長門「泣かないで」

みくる「えうう…あたし、もっと早くに長門さんと仲良くなって…もっとたくさんおしゃべりしたかったですぅ」

長門「そう」

みくる「えうう」

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:09:32.69 ID:KR/1Amli0

長門「古泉一樹も」

長門「ありがとう」

古泉「おや…これは。あなたにそんな風に言われるとなんだか照れてしまいますね」

古泉「こちらこそ、本当にありがとうございました。僕も実に楽しかったですよ」

長門「そう」

みくる「えうう」


 ヒョオオオオオオ…

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:11:38.76 ID:KR/1Amli0

─────

古泉「…あと時間はどれくらいでしょう?」

みくる「あ…えーっと。あと2時間と少しになりますね」

古泉「そうですか…」

長門「……」


みくる「…キョン君と涼宮さんは来ないのかなぁ」

古泉「いや、ほら。ここに二人分の湯飲みを使った形跡があります」

みくる「え? あ、本当だ」

古泉「おそらく僕たちより早くここに来て、二人でどこかに出かけたのでしょう」

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:14:45.86 ID:KR/1Amli0

みくる「どこに行っちゃったんですかねぇ?」

古泉「さぁ…僕にはわかりません。長門さん。わかりませんか」

長門「あの二人がいるおおよその場所なら特定できる」

みくる「本当ですか? どうします、会いにいってみます?」

古泉「ふむ。そうですね…」


古泉「…いえ、やめておきましょう。ここは気を利かせて、二人だけにしておいてあげましょう」

古泉「何せあの二人はお互い、最後まで正直に自分の気持ちを告白しようとしませんでしたからね」

古泉「こんなことになって、ようやく伝えられることもあるでしょう」

みくる「……」


みくる「…そう…ですね」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:16:22.62 ID:KR/1Amli0

みくる「…ふう」

古泉「どうしました?」

みくる「いや…結局あたしも伝えることができなかったなぁって」

古泉「彼にですか?」

みくる「ええ。あたし、勇気ないからなぁ。ダメだなぁ」

みくる「でも、それは長門さんも同じですよね?」

長門「……」


長門「まあ」

みくる「ふふふ」

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:25:15.87 ID:KR/1Amli0

みくる「古泉君は? 好きな人いなかったんですか?」

古泉「僕ですか?」

みくる「うん」

古泉「……」


古泉「…秘密にしてくれますか」

みくる「ふふふ。今さら秘密もないでしょう。言っちゃいましょうよ」

古泉「…それもそうですね。その通りです」

古泉「実はですね。僕も涼宮さんのことが好きだったんですよ」

みくる「えっ! 本当ですか!?」

古泉「ええ」

みくる「ええ〜。全然気付かなかったなぁ」

古泉「僕はポーカーフェイスですからね」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:27:20.79 ID:KR/1Amli0

古泉「最初はね。自分がこの妙な力を持った原因が涼宮さんだとわかった時は、なんて迷惑な人だと思ったんですよ」

古泉「でも…機関にいて、彼女の話を何度も聞かされているうちに、どんな人なのかどうしても知りたくなってしまった」

古泉「そして調査と監視という名目で彼女に初めて会うことになって。ようやく本当の涼宮さんを知ることができた」

古泉「その正体はなんてことのない、普通の女の子でした。しかも、その内面はガラス細工のように繊細で」

古泉「そのことがわかってから、僕は次第に彼女に惹かれていったんです」

古泉「ですが、彼女が彼のことを思っていることは知っていたから、結局僕も何もすることはできませんでしたけどね」

みくる「…そうだったんですか」

長門「……」

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:29:46.15 ID:KR/1Amli0

古泉「ふふ。どうやらここにいる三人は似た者同士のようですね」

古泉「そうだ。機関の人からいい物をもらってきたんですよ。コレ」

みくる「? ふえっ、お、お酒ですかぁ?」

古泉「極上のブランデーです。どうです、みんなで乾杯しませんか。最後の晩酌といきましょう」

みくる「ふえ〜お酒なんてちょっとしか飲んだことないなぁ」

長門「…する」

古泉「では、開けましょうか」

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:30:59.50 ID:KR/1Amli0

古泉「…それでは。SOS団の絆に。乾杯」

みくる「いいこと言いますね、古泉君」

 ゴクゴクゴク

長門「…おいしい」

古泉「な、長門さん…そんなに勢いよく飲んで大丈夫ですか?」

みくる「!! ぷあっ! あ、熱い…!」

古泉「舐める程度で大丈夫ですよ。雰囲気を味わいましょう」

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:33:41.22 ID:KR/1Amli0

─────

古泉「…さて。あと一時間切ってしまいましたね」

みくる「いよいよですね…」

長門「……」

みくる「ああ…なんだか緊張してきちゃったなぁ」

古泉「それ、とても緊張しているようには聞こえませんよ」

みくる「そうですかぁ?」


 ガチャ

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:37:15.03 ID:KR/1Amli0

みくる「あ!」

古泉「おや」

長門「……」


キョン「お、やっぱりみんな来てたのか。よかったぜ帰ってきて」

みくる「だからそう言ったじゃない! 必ずみんなここに来るって! 三人とも、待たせたわね!」

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:39:13.12 ID:KR/1Amli0

みくる「あ!」

古泉「おや」

長門「……」


キョン「お、やっぱりみんな来てたのか。よかったぜ帰ってきて」

ハルヒ「だからそう言ったじゃない! 必ずみんなここに来るって! 三人とも、待たせたわね!」

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:41:38.20 ID:KR/1Amli0

みくる「キョン君、涼宮さん! 来てくれたんですか!」

キョン「お久し振りです。朝比奈さん」

みくる「よかったぁ。あたし、もう会えないのかと…」

ハルヒ「最後だってのに団長のあたしがいないなんて、みんな寂しいと思ったでしょ!? だからね、帰ってきてあげたわ!」

古泉「お待ちしていましたよ。お二人とも」

キョン「おう」

長門「…おかえりなさい」

キョン「おう。ただいま長門…っておまえ、顔真っ赤だぞ」

長門「……」

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:43:07.74 ID:KR/1Amli0

ハルヒ「あー! ちょっと、なにあたしに内緒でお酒なんか飲んでんのよ! あたしにも飲ませなさい!」

古泉「あ…」

 グビグビグビ

キョン「おい」

古泉「…涼宮さん。それ、ブランデーだからきついですよ」

ハルヒ「ぷはー! おいしかった! まさに最後の晩酌ってヤツね!」

キョン「おい…大丈夫か?」

ハルヒ「大丈夫に決まってんじゃな…おえええ」

キョン「おいおい」

ハルヒ「…なんてね。この程度の酒でやられる程ヤワじゃないわ」

キョン「…ったく」

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:45:11.69 ID:KR/1Amli0

キョン「長門。残りの時間は?」

長門「…残り31分42秒。おそらく誤差はない」

キョン「あと30分か…」


ハルヒ「ま、最後にみんなの顔も見れたし、おいしいお酒も飲めたことだし。あたしこれでもう思い残すことはホントになにもないわ! もう充分満足よ!」

みくる「あたしも。みんなと会えて、本当によかったです」

古泉「僕もですよ。もう心残りはありません」

長門「…私も」

キョン「俺もだ。あ、でも、朝比奈さん」

みくる「はい?」

キョン「最後に、お茶を一杯煎れていただけませんか?」

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:48:32.25 ID:KR/1Amli0

─────

ハルヒ「…さて、と」

みくる「……」

ハルヒ「有希。残りの時間は?」

長門「…残り10分12秒」

ハルヒ「いよいよね」


みくる「…うう…うっうっ…」

ハルヒ「みくるちゃん。泣かないの。最後くらい笑っていってやりましょ。そうじゃないと、なんか負けたみたいじゃない」

キョン「誰にだよ」

ハルヒ「うるさいわねーあんたは」

みくる「グスッグスッ…はい…グスッ」

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:49:29.26 ID:KR/1Amli0

 コオオオオオオオオオ…


ハルヒ「……」

ハルヒ「最後に」

ハルヒ「みんなに言っておくことがあるわ。たとえ宇宙の塵となっても、これだけは絶対に覚えておきなさい」

古泉「はい」

長門「……」

みくる「なんですか…?」

キョン「言え、ハルヒ」


ハルヒ「我がSOS団は、永久に不滅だからね!!」

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/19(月) 02:50:02.34 ID:KR/1Amli0





ツイート

メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:ハルヒ「緑色の火星人が追いかけてくるー」