らき☆すたでかまいたちの夜なようです


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1 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 20:44:40.76 ID:e53ItHWjO

「もう走れない…お願い…もう許して……血が止まらないんだ……。」

深緑色の髪をお尻の辺りまで伸ばした、八重歯の可愛い活発そうな少女は肩口から血を滲ませながら懇願した。
随分と必死で走って逃げたのだろうか…顔には玉のような汗がにじみ、ゼエゼエと肩で息をしていた。

「…家に…家に帰りたいよ…」

泣きながらそう呟くと、その少女は森の小道に座り込み、乾きかけの血で赤黒く変色したナイフを携える人影のズボンにすがり付いた。

「すべては岸猿家の為に…」

その人影は老婆のようなしわがれ声でそう言うと、ナイフを振り上げた。

「いやだ…死にたくないよ………立木さん…。」

少女は泣きながら命乞いをした。

「我の血となり肉となり…血の礎を築くのじゃ…。」

人影はそう呟くと、泣いて懇願する少女の背中にナイフを突き立てんと、思い切り振り下ろした。

早朝の薄暗い森に絹を裂くような悲鳴が響き渡ったのはそれから暫くの事だった…

3 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 20:49:19.37 ID:e53ItHWjO

その3日後


「海だよ、かがみん海だよ!!」
この旅行の主催者、泉こなたは楽しげにそう叫びながら漁船の船首で、彼女の前に開ける大海原を仰いでいた。

「アンタそんな所に立ったら危ないわよ!海に落ちたって知らないんだからね。」


「堅いこと言いっこ無しだよ、かがみん」

こなたは振り返ると、満面の笑顔で船の面々を見つめた。

4 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 20:53:53.59 ID:e53ItHWjO

船のへりに優雅に腰掛けて、白い日よけ帽を風で飛ばされないように片手で押さえるみゆき、船酔いで気分が悪いのか、姉であるかがみに背中をさすられながら口元をハンカチで押さえているつかさ、つかさの背中をさすりながら此方に顔を向けて、こなたをいさめるかがみ。


「こなたさん、本日はこのような場所に誘って頂いて本当にありがとうございます。」


みゆきが日よけ帽を押さえながら笑顔で言った。


「んにゃぁ、お父さんの友達の立木さんのおかげだよ〜。」

5 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 20:58:42.04 ID:e53ItHWjO

そうなのだ、実を言うと今から行く島はこなたの父であるそうじろうの友人の立木という作家の所有している島で、泉一家が立木氏に招待されてこの島に遊びに来る事になった。
かがみ達はそのついでのお供である。しかし発起人であるそうじろうは急な仕事でこれなくなってしまい、結局は私たちだけで島へと赴く事になった。

監獄島…地元ではそう呼ばれている、元監獄の何とも気味が悪い島である。
まあ、いかにもこなたあたりが喜びそうな島ではあるが…。


しかし、そんな不気味な過去と名前を除けば、その島は雄大な自然に囲まれた素晴らしい所なのだそうだ。

そんな素晴らしい島を私たちだけで貸切…私たちだけの砂浜…森林浴…宿泊施設…そして島。


その島で待っているであろう楽しい出来事に、かがみは期待に胸を膨らませていた。

8 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:05:27.36 ID:e53ItHWjO

「しかしあんたらも物好きだな。」


悦に入って虚空を眺めていたかがみに、突然船を操縦していた船頭さんが口を開いた。


「よりによってかまいたちの日に、こんな島に来るなんて。」


「え…かまいたちの日…?」


かがみには皆目見当もつかなかった。


「なんじゃい、知らんのか。50年に一度ここいらに強い風が吹く日だよ。その日は不吉な事が起こるってんで、地元の奴らは監獄島の近場で漁はしないのさ。」

9 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:08:44.38 ID:e53ItHWjO

「不吉な事って…一体なんなんですか?」


「…さあな。ワシは知らん。」


船頭さんはそう言うと、それっきり口をつぐんでしまった。

「えっ…でも…」

「きゃあ!」

かがみがそう言いかけた途端に、突然突風が吹いた。それは悲鳴にも似た風音を響かせながら、みゆきの白い日避け帽をかすめ取り、海の向こうへと持ち去ってしまった。


次第に船から遠ざかり、そしてただっ広い海に置き去りにされた白い日避け帽をながめていたかがみは何か途方もない不安に襲われて身震いをした。

11 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:14:02.04 ID:e53ItHWjO

漁船が無事に船着き場に到着し、4人は各自荷物を担ぎながら島へと降り立った。


「他の人達はもう建物にいるそうだ。じゃあ…俺の仕事はここで終りだ。建物はこの道をまっすぐ行けばそのうち見えてくるだろう。」


船頭さんはそう言いながら船着き場の正面にある森の小道を指差し、そしてさっさと漁船に乗ってしまった。

12 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:17:19.58 ID:e53ItHWjO

「ねぇ!かまいたちの日ってどういう事なのよ…。」
船頭さんの謎めいた言葉がどうしても気になり、かがみは既にゆっくり移動しはじめた漁船に飛び付き、漁師にたずねた。

「…まあ気を付けろとしか…いいようがないな。…2日後に迎えに来る…それじゃあな、お嬢ちゃん…」
船頭はうつ向いたままそう言うと、さっさと船を発進させて、海の向こうへと行ってしまった。
かがみはいつまでも、小さくなっていく船を見つめていた。

13 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:19:30.75 ID:e53ItHWjO

「お姉ちゃん…どうしたの?」

幾分か気分が良くなったのか、それでも顔が青白いつかさが、心配そうな表情で、かがみにたずねた。


「ううん、何でもないわ。それより皆が待ってるみたいだし早く行こう。」


かがみは踵を返すと真っ直ぐ森の小道へと歩いて行った。

14 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:21:15.06 ID:e53ItHWjO

「お〜い、たのも〜。」

こなたの体がさらに華奢で小柄に見える程大きくて荘厳な、鉄で出来た扉をおどけた様子でこなたが叩く。

こなたの後ろに荷物を持って立っている三人は、さも珍しい物を見るような好奇の目で辺りを見回していた。

15 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:23:24.46 ID:e53ItHWjO

それもそのはずである…。
この建物はいささか変わった建物だったからだ。
まず四方を5メートルはゆうにある石の塀がぐるりと囲み、入口と言えば両端に監視塔を備えた頑強で重そうなそうな鉄のゲートだけ。
元監獄だけあって、虫一匹逃さないであろう当時の監視体制が目に見えてくる。

17 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:27:50.88 ID:e53ItHWjO

そして肝心の建物は、まるで三日月のように湾曲し、中央にある広場を、これまた囲むように佇んでいる。変わった形だ。それに古びたコンクリートと鉄の外壁は、赤錆とホコリがこびり付き、風雨に晒されて歪に色褪せ、まるで趣味の悪いお化け屋敷のようだ。

古臭い木枠の窓が建物の両端二つにしかないのは監獄時代の名残だろうか。
その中でも最もおぞましいのは、その両端の窓の下に設けられた小さな堀である。
最初はその堀に雑草か何かが生い茂り、それが飛び出しているのかと思った。
だかそれは血のように赤黒く錆びた針だった。

18 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:29:09.07 ID:e53ItHWjO

おぞましい…恐らく囚人の脱走を防ぐ為のものであろうが、つい先程、うっかり者のつかさが危うく堀の中に落ちそうになったばかりだった。


当時の囚人がどのように扱われていたのかが、その針を見れば分かりすぎる程に分かった。
恐らく有無を言わさず虐げられて来たのだろう。


こんな所に落ちたらひとたまりもないだろう。
恐らく全身を串ざしにされ、運良く助かっても針の錆で破傷風に…。

こんなおぞましい歴史と名残を持つ洋館にこれから泊まるのだ。
気分はまるで囚人か奴隷のようだ。

つかさは早くも露骨な不安の色を顔に浮かべているし、みゆきは押し黙ったまま、洋館を眺めるばかりだった。

19 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:31:24.17 ID:e53ItHWjO

「んしょ、んしょ……あっ、お姉ちゃん、それに先輩、いらっしゃい。」


重たい鉄の扉をようやく押し開けて現れたのは、こなたよりもさらに小柄なゆたかちゃんだった。

「やあ、ゆうちゃん、皆も遊びにきたよ。」


こなたが手をひらひらさせながら後ろを振り返る。


「皆は談話室でまってるよ。お姉ちゃん達も早くおいでよ。」

「さあ、みなの者、遠慮せずに中へはいりたまへ〜」


そういうとこなたはさっさと中に入ってしまった。
かがみ達は互いに顔を見合わせながらとぼとぼと中へと足を踏み入れた。

21 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:33:20.58 ID:e53ItHWjO

談話室には、いつもの顔ぶれが揃っていた。背が高くて寡黙な岩崎みなみ、腐女子の田村ひよりに留学生のパトリシアマーティン、男まさりの日下部みさおにおしとやかな峰岸あやの。

「オッス、本当にいつもの顔ぶれね。」


ソファーに腰掛けて、談笑していた5人にかがみは軽い挨拶をした。


「あら、柊ちゃん。」


「オッス柊、所でちびっこ、今日は誘ってくれて本当にありがとな〜。」

みさおが笑顔でこなたに言った。

23 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:36:17.84 ID:e53ItHWjO

「いんやぁ、お父さんのおかげだよ。お父さんの友達がお金持ちじゃなかったらこんな所にこれなかたよ。」

「相変わらず嫌な物言いね。で、肝心の立木さんとアンタのお父さんは?」

かがみが談話室を見回しながらたずねた。

「お父さんは仕事で来れないってさ〜。だから私とゆーちゃんで皆をここまで案内したのだよ。でも立木さんは居るはずなのじゃが…急用で来れなくなったのかなぁ…。」

「私たちも館を探したんだけど…居ないみたい…」と、ゆたか。

「つー事は本当に貸し切りじゃん!!海に泳ぎに行こうぜ〜!!」

みさおはソファーから飛び上がると、さっさと二階に駆け上がってしまった。

24 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:41:49.75 ID:e53ItHWjO

「まったくアイツは…で、皆はどうするの?」

かがみがソファーに座っている皆の方を向いて言った。

「私はちょっと気分が悪いから、ここで休んでます。」

「じゃあ……私はゆたかを看ている…。」

みなみが呟くようにボソリといった。

「アタシは近くを散歩してきまス。この島は何かミステリーな香りがするのデス!」

「じゃあ私もそこらへんをパティと一緒に散歩してくるっス。」

そういうとパティとひよりは談話室から出ていった。

「お姉ちゃん、私たちはどうする?」

「そうね…せっかくだから海へ行こうかしら、つかさとみゆきも来るわよね。」

「うん、気分も良くなったから大丈夫だよ。」

「ええ…せっかくの機会ですのでご一緒させていただきます。」

「こなたは?」

25 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:43:08.62 ID:e53ItHWjO

かがみはこなたの方を振り返った。

するとこなたは既に服を脱ぎ終えて、いつものスクール水着姿になっていた。


かがみはその姿に、微笑みながらも、呆れたようにため息をついた。

26 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:45:17.06 ID:e53ItHWjO

浜辺で散々泳いだその帰り道、辺りは赤い夕焼けに包まれ、ひぐらしがカナカナと寂しげな音色をかなでていた。


風が強い。恐らく今日の夜あたりは嵐になるだろう。


急いで帰らないと…。


六人は足早に館への道を歩いて行った。

「アレ…?」


突然こなたが間の抜けた声をあげた。

29 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:48:35.07 ID:e53ItHWjO

「リボンが落ちてる…。」


それは、この島には到底につかわしくない可愛らしい黄色のリボンだった。
だが長い間風雨に晒されていたせいか、泥がこびりついて汚れていた。


「随分前の物みたい…でも…ここって…無人島のはずよね…どうしてこんな所に…。」


「お姉ちゃん…何か…変だよ、ココ…おかしいよ…。」


つかさが道の脇に生い茂る森を指差しながら震えた声で言った。


三人はつかさが指差す方を向いて、文字通り絶句した。

29 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:48:35.07 ID:e53ItHWjO

「リボンが落ちてる…。」


それは、この島には到底につかわしくない可愛らしい黄色のリボンだった。
だが長い間風雨に晒されていたせいか、泥がこびりついて汚れていた。


「随分前の物みたい…でも…ここって…無人島のはずよね…どうしてこんな所に…。」


「お姉ちゃん…何か…変だよ、ココ…おかしいよ…。」


つかさが道の脇に生い茂る森を指差しながら震えた声で言った。


三人はつかさが指差す方を向いて、文字通り絶句した。

31 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:52:55.71 ID:e53ItHWjO

そこには石を積み上げて作ったであろう、墓標のような物がまばらに点在し、あたりにゴミが散らばっていた。

肩紐が切れたキャミソールに縁無し眼鏡、ハートを象ったネックレス、果てはブラジャーやパンティー、ガーターベルトにストッキングまでもが、そこに乱雑に放置されていた。

異常だった。

かがみは何か薄ら寒いものを感じた。

「なに…これ…」

こなたが思わずそう漏らした。

無理もない…無人島のド真ん中にこんな光景が広がっているのだ。

「お姉ちゃん…怖い…」
つかさがかがみの手を不安そうに握る。

「もう…行こ…気味が悪いよ。」
こなたの提案に誰一人として異論は無かった。
夕陽が沈み、次第に雲がかかる中、四人は半ば小走りで館へと走っていった。

32 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 21:58:54.77 ID:e53ItHWjO

舘へと着く頃には目が開けられない程、風が強くなり、夕陽がとうに沈み、遠くに雷鳴が轟く暗闇と狂暴な嵐の世界へと変貌しつつあった。

「みんな、早く入って…門を閉めるよ〜。」

強風が吹き荒れるなか、こなたがそう言うと、三人が塀の中に入った事を確認し、重そうな鉄のゲートを苦労して閉めて、風と雨を防ぐ為に内側から掛け金を掛けた。


かまいたちの日か………これで私たちはこの館に缶詰って訳ね。

33 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:00:33.48 ID:e53ItHWjO

玄関へと小走りで向かいながら、かがみはそんな事を考えていた。
これから起こる惨劇などつゆ知らずに…。


辺りはいよいよ嵐の様相を呈していた。


監獄島の夜はこれから長くなりそうだった。

35 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:03:41.94 ID:e53ItHWjO

外はいよいよ雨と風が吹き荒れ、まるでかまいたちが大暴れしているような感じだった。
かまいたちの日…船頭の言ったことは本当だったようだ。

「立木さんは…まだ来てない?」

こなたが談話室のソファーにちょこんと座るゆたかにたずねた。
しかし、ゆたかは首を振った。

「扉に鍵もかかってなかったから勝手に入っちゃったけど、大丈夫かなぁ…。」

ゆたかが心配そうに、言った。

38 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:10:30.41 ID:e53ItHWjO

「ん…?なんすか…これ…。」
唐突にひよりが呟いた。どうやら何かを見付けたようだ。
それは白い紙だった。黒い字で何かが書かれてある。
「さっきまで無かったよね…?」
談話室に集まった皆が怪訝そうな顔を浮かべて互いに顔を見合わせた。
紙にはこう書いてある。
『食堂の食事はご自由にお召し上がり下さい。浴室と寝室もご自由に使って頂いて構いません。立木』

39 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:14:38.77 ID:e53ItHWjO

「なぁんだ、心配して損しちゃったよ〜。」
こなたが、肩を撫で下ろしながらドスンとソファーに腰掛けた。
「きっと急用でこれなくなったから、メモを書き残して置いてくれたのよ。」
「…急用の仕事があるのに…わざわざこんな所まで来てメモを残していくかなぁ…。」
つかさが水を差す。
一理あるその意見に、皆がおし黙った。
「それより腹減って死にそうだぜ。何か食いに行こうぜ。」
重い空気を押し破るようにみさおが言うと、さっさと談話室を出ていってしまった。

41 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:17:05.66 ID:e53ItHWjO

「…これからどうする……?」

かがみが皆の方を向いてたずねた。

「私も食堂で何か食べて来るよ…お姉ちゃんは…?」

「そうね…私も食堂に行こうかしら…。」

皆お腹が空いているらしい。

かがみ達は若干の疑問と不安を残しながら、食堂へと向かった。

42 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:21:34.83 ID:e53ItHWjO

おかしい。

絶対におかしい。

かがみ達は食堂の長テーブルに配膳された、湯気の立った出来立ての料理を前にただただ立ち尽くしていた。

この島には私達以外にお手伝いさんや使用人すら居ないはずだし、ましてやわざわざここに赴いて私達に料理を振る舞う物好きなんて居るはずがない。
てっきり材料だけを用意して、自分達で調理をさせる物だとばかり思っていた。

勿論この中の誰も料理などしていないし、先程のやりとりからこんな短時間で料理を用意出来る筈もない。

しかし熱々の料理が現に供されている訳だ。
もし考えられるとすれば、立木氏が我々に隠れて料理を配膳し、談話室にメモを置いたという事だけだ。

43 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:23:06.01 ID:e53ItHWjO

しかし、イタズラにしても初対面の我々の前に姿も現さずに、こんな事をするのは不気味で狂っていた。

そんな事を少しも考えて無いのだろうか、テーブルに置かれたライ麦パンとクレソンが添えられた仔牛肉のステーキをみさおが黙々と食べていた。

「日下部!」

慌ててかがみがみさおを止める。

「誰も居ないはずなのに、こんな料理があるなんておかしいでしょ!」

「………あ。」

暫く立ってようやく気付いたのか、みさおは口の周りについたソースを拭うと、パンを置いて静かに立ち上がった。

44 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:25:22.99 ID:e53ItHWjO

「とにかくここに来てから色々とおかしいわよ…。まず談話室に行きましょう。話はそれから…」

「……ねぇ…。」

かがみの話を遮るようにあやのが言った。

「さっきからパティちゃんが居ないんだけどどこに行ったのかしら…。」

「あ…そういえば散歩の途中ではぐれてから見てないッス…。」

ひよりが思い出したように呟いた。

「ちょっと!何なのよそれ!」

かがみがイラついたように声を張り上げた。
「とりあえず探しましょ…ね?」

腕を組んで眉をひそめるかがみをあやのが優しく諭した。

46 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:29:28.57 ID:e53ItHWjO

手分けをして探す事になった。かがみとこなたとつかさとみゆきは一階を、ゆたかとみなみとひよりは二階を、みさおとあやのは中庭を、それぞれ調べる事になった。

「パティの事だし、どうせどこかで油売ってるか、部屋で寝てるかだよ。」

一階の廊下を歩きながら、こなたが言った。


しかし、厨房、浴室、玄関、談話室…全てを探したが、何処にもいなかった。

無論二階の寝室もくまなく探したし、雨風が吹き荒れる中庭も探した…。だが、彼女はどこにも居なかった。

忽然と姿が消えてしまったのだ…。

47 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:32:21.38 ID:e53ItHWjO

「中庭にもいね〜って事は敷地の外か神隠しにでもあったかしか考えられねぇよ。」

外は物凄い暴風雨なのだろう、濡れた髪から滴を垂らし、びしょ濡れのレインコートを脱ぎながら、みさおが呟く。

「先に帰っちゃったのかもよ?」

ゆたかが不安げな表情で言う。

「でも、この島に船は無いし、帰りの船は二日後に来る筈だから…それはないと思う…」

みなみが冷静な様子で言った。

「それに…この天候だと、外に探しに行くのは無理……。」

48 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:33:00.61 ID:e53ItHWjO

「一旦談話室に戻りましょう…話はそれからよ…。」

かがみの提案に、皆が賛同し、玄関から談話室へと移動した。


皆不安だった…

それもそうだ…こんな不気味な館に缶詰…それに食堂に配膳された不可解な食事、森に散らばっていた不気味なアクセサリーと下着、そして消えたパティ…。

談話室のソファーに座ったきり誰も口を聞かず、ただただ気まずい沈黙が辺りを支配していた。

51 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:36:25.88 ID:e53ItHWjO

「ねぇ…。」

沈黙を打ち破って口を開いたのはこなただった。

「…テレビでも見ない?」

そう言うと、こなたは談話室の隅に置かれていたテレビを指差した。
本来なら、こんな時にテレビを見てる場合じゃない!等とこなたを叱るかがみも、その意見に賛同せざるを得なかった。

とにかく何かしていないと不安だったし、重苦しい沈黙に耐えきれなかったからだ。

52 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/07(金) 22:40:18.44 ID:e53ItHWjO

こなたはリモコンを手に取ると、テレビをつけた。

パツッ、と乾いた音がして唐突にテレビがついた。

映し出されたのは、砂浜で遊ぶ三人の少女だった。

一人は肩まで切った黒髪を黄色いリボンで止めた活発そうな女の子…そしてもう一人は栗色の長い髪の毛をした胸が大きい、垂れ目のおっとりした感じの女の子、
その二人は浜辺でビーチバレーを楽しみ、灰色の髪の毛をして眼鏡をかけたおとなしめの女の子はパラソルの下で本を読んでいる。

74 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:14:05.60 ID:t4fI1xNQO

「ちょっと待って!これってここの砂浜じゃないの!」

かがみが画面を指差しながら言った。

恐らく家庭用のビデオで撮影したのだろう、独特の画面の乱れが所々にあった。

手振れがないので、恐らくは固定して撮影したのであろう。

胸や股間を中心にいやらしいアングルで撮られている…盗撮なのだろうか…
少女達の楽しげな声に混じって、ハァハァという男の息遣いが聞こえていた。
立木氏の趣味なのだろうか…。
「ねぇ…チャンネル変えてよ…何か気味が悪いわよ。」
「さっきからやってるんだけど、リモコンが効かないんだよ…。」
こなたが躍起になってリモコンをいじりながら答えた。

78 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:20:30.90 ID:t4fI1xNQO

談話室にいる全員が、その気持ちが悪い映像ただただ黙って見ていた。
と、今度は白熱灯の照明が薄暗い、二階の寝室らしき部屋へと場面が変わった。

映っているのはベッドと脇にあるテーブルに置かれたランプ、そしてベッドに腰掛ける先程の栗色の髪をした、おっとり系の女の子…。
まるで、濡れ場に入る前のAVだ。
「先輩…ちょっとこれは…」

ひよりが顔を赤らめながら言った。
その場にいる皆が、次に起こるであろう展開を想像し、今度は顔を赤らめていた。

79 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:22:22.01 ID:t4fI1xNQO

しかし、何か様子が変だった…その女の子は何かに脅えているかのように震え、そしてしきりにカメラの下をキョロキョロと眺めている。

「名前は…?」

カメラを撮影している男が、女の子にたずねた。

「ふぇ…?…は…う…。」

突然の質問に、女の子はうっすらと涙を浮かべた瞳を慌てた様子でキョロキョロと動かして動揺していた。

「お名前は?」

撮影している男は語気をあらげて同じ質問をするとともに、何か銀色の物を握った、もう片方の手を女の子の喉元にそえた。

その手に握られていたのはナイフだった。

80 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:25:00.24 ID:t4fI1xNQO

ナイフを喉にあてられた女の子は驚き、恐怖を顔に浮かべながら答えた。

「ふえぇ!……な…名前は…あ…朝比奈みくるでしゅ……。」

涙声でそう答えると、むせび泣きながらカメラを見た。

「止めてくだしゃい……助けてくだしゃい……助けて……」

「それにしてもおっぱい大きいよね〜。」

撮影者はみくるの懇願を無視して、ナイフでチクチクと、キャミソールの上から乳房をつついた。

みくるは涙が溢れる目をギュッと瞑り、体をこわばらせた。

82 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:27:53.11 ID:t4fI1xNQO

「ただ殺すのは惜しいよね〜。ちょっと遊ぼうか。」

「ふえぇ?」

撮影者はナイフでキャミソールの肩紐を切ると、みくるの乳房を露にした。

そして乱暴にベッドに押し倒し、スカートを捲り上げて、みくるを犯し始めた。

「いやっ!いやぁ!」

みくるが必死になって抵抗する様子が映し出される。
そして、画面が上下に激しく揺れはじめ、みくるの悲鳴があえぎに似たものに変化していく。

83 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:28:39.89 ID:t4fI1xNQO

「こなた…早くテレビ消して…。」

かがみが顔を青ざめさせながら言った。

「リモコンきかないよ!」

こなたも必死になってリモコンを操作するが、画面には相変わらずハメ撮りが映し出されていた。

撮影者の男の息遣いがみくるのあえぎに混じって次第に荒くなり、最高潮に達した次の瞬間、男は振り上げたナイフをみくるの腹に突き立てた。

みくるのあえぎは文字通り絶叫へと変わった。

男はみくるを激しく犯しながら、何度も何度もナイフを突き刺した。

上下に激しく揺れる画面が次第に赤色に染まっていく。

84 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:32:16.30 ID:t4fI1xNQO

「こなた…早くテレビ消して…。」

かがみが顔を青ざめさせながら言った。

「リモコンきかないよ!」

こなたも必死になってリモコンを操作するが、画面には相変わらずハメ撮りが映し出されていた。

撮影者の男の息遣いがみくるのあえぎに混じって次第に荒くなり、最高潮に達した次の瞬間、男は振り上げたナイフをみくるの腹に突き立てた。

みくるのあえぎは文字通り絶叫へと変わった。

男はみくるを激しく犯しながら、何度も何度もナイフを突き刺した。

上下に激しく揺れる画面が次第に赤色に染まっていく。

85 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:33:34.34 ID:t4fI1xNQO

今度は画面がブレている。どうやら森の中を走りながら撮影しているようだ。

画面の前方に走る二人の人影が見える。
この逃げ惑う二人を追いながら撮影しているのだろう…。

「止めて!止めて!ついてこないで!」


女の子の脅えた声が聞こえる。
無情にも距離はどんどん縮まっていく。


そして、とうとう追いつかれ、黄色いリボンをした女の子が腕を捕まれ、地面に押し倒された。

87 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:37:16.27 ID:t4fI1xNQO

気丈な女の子の顔は涙と鼻水でグジャグジャになっていた。

「ほ…本当に止めて…殺さないで……何でもするから…。」

脅えた表情で命乞いをする女の子の喉元に、撮影者は構わずナイフを突き入れた。
女の子は目を見開き、口から血の泡を吐くと、数回体を痙攣させて動かなくなった。

撮影者は暫くその様子を撮影してから、カメラを左へ向けた。

そこには尻餅をつき、無表情ながらも体を震わせている灰色の髪をした女の子がいた。

88 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:39:07.94 ID:t4fI1xNQO

「死ぬのが怖くないのか…?」

撮影者が若干息を切らせた声でたずねた。

「…怖い…。」

無表情だが、目頭を涙で濡らしながら女の子が答えた。

「全ては岸猿家のために……」

撮影者の声が突如として老婆のようなしわがれ声になり、血に濡れた手で、女の子の喉をわしづかみにすると、そのまま絞め上げた。

「んっ……くっ……かはっ…」

女の子は表情を崩し、空気を求めるかのように苦しげに舌を出してあえいだ…。

「贄が必要なのじゃ…若いおなごの贄が……」

撮影者がしわがれ声で呟く。

ミシミシと骨が軋む音が響き、ついに枯れ木が折れるような音がして女の子のか細い首はヘシ折られてしまった

90 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:43:22.53 ID:t4fI1xNQO

あの森に打ち捨てられていた、黄色いリボン、白いキャミソール、そして眼鏡……それらは全て、ここで殺された人達の遺留品…。

「お姉ちゃぁん…もう嫌だよ…家に帰りたいよ…」

脇に座っていたつかさがとうとう泣き出して、かがみに抱きつく。

ゆたかは既にすすり泣きながらみなみの胸にうずまっていた。

そして再び画面が変わり、映し出されたのは砂浜で楽しく遊ぶかがみ達の姿だった…。
砂浜の目の前に広がっていた茂みの中から隠れて撮影されている。

91 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:47:21.60 ID:t4fI1xNQO

先程と同様に、いやらしいアングルで撮られていた。

「そんな…いつの間に…」

みゆきが思わず不安げな声を漏らした。

そして一通りかがみ達を撮り終えた撮影者は、足元へとカメラを向けた。

そこに映っていたのは両手両足を縛られ、猿轡を噛まされたパティだった。

94 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 01:52:33.38 ID:t4fI1xNQO

パティは脅えた表情でカメラを見つめている…。
そして撮影者はカメラの前にナイフをひけらかし、パティの様子を伺う…。


パティはナイフを見るやいなや、楽しげに遊ぶかがみ達の方を向いて、猿轡越しのくぐもった声で必死になって助けを求めていた。


「もう嫌!消して!!」


ついにかがみが声を張り上げた。


そして、テレビ自体を壊そうと躍起になってブラウン管を蹴り付けて、これから起こるであろう惨劇に幕を下ろそうとした。

95 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:00:25.88 ID:t4fI1xNQO

しかし、ブラウン管は割れずに、劇は続いた。

撮影者は助けを求めるパティの腹をナイフで真一文字に切り裂いた。

途端にパティのくぐもった悲鳴が止み、今度は苦痛にうめく声に変わった。

撮影者は真一文字に切り裂いた腹に手を突っ込むと、内臓をズルズルと引きずり出し始めた。

パティが苦痛と恐怖の為、半ば半狂乱になって、体をくねらせて暴れた。

そんな惨劇が自分たちのわずかに十数メートル先で繰り広げられていたのだ…。
何故気付かなかったのか…。

100 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:05:12.67 ID:t4fI1xNQO

みなみは静かに立ち上がると、ソファーに挟まれたコーヒーテーブルを持ち上げ、頑丈なテレビに叩き付けた。
惨劇を映し出す屈強なテレビはついに白旗を上げた。

ブラウン管が砕け散り、火花が上がった。

砕けたブラウン管の破片を浴びたこなたがさも暴れているかのように、破片を払い落としていた。

誰も何も言わなかった…いや、言えなかった…。

ただ呆然と、残骸になったテレビを見つめていた。

104 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:11:42.46 ID:t4fI1xNQO

「警察……そうだ!警察に通報しなきゃ!」

みさおはそういうと、談話室を飛び出して行った。

そうだ、まずは警察だ。
何故誰も気付かなかったのか…。

みさおに続き、皆が談話室から駆け出して一目散に玄関に置かれた黒電話を目指した。

玄関に着くと、かがみが電話を取り、110番にダイヤルを回して暫く耳を当てた。

しかし、受話器からは何の反応も帰っては来なかった。

「電話が使えない……」

「それもそのはずだよ……電話線が切れてるもん…。」

こなたが床に落ちていた電話線の切れはしを持ち上げて、皆の方へと向けた。

ナイフか何かでスッパリと切られている。

109 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:18:27.20 ID:t4fI1xNQO

「…じゃあ、携帯は……」

ゆたかがスカートのポケットから携帯電話を取り出すと、電波を確認した。

「無理だよ…この島に電波は来てないもん……」

こなたの言う通りゆたかを含めた皆の携帯が圏外だった…。

「待って!私の携帯、電波が一本立ってる。」

どうやらつかさの携帯は通話可能なようだ。
すかさずみさおが、つかさの携帯を奪い取ると、110番に電話をし、携帯を耳へと押し当てた。

113 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:24:09.83 ID:t4fI1xNQO

暫く呼び出し音がして、唐突に電話が繋がった。


「やった!繋がったぜ。」

みさおが笑顔でそう言うと、不安げな皆の顔が安堵で幾分かほころび、ホッと息をついた。

「もしもし、警察ですか。助けて下さい。」

みさおが笑顔を浮かべながら言った。

「………。」


しかし繋がったにもかかわらず、携帯からは不快なノイズ音しか聞こえて来なかった。

116 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:29:44.82 ID:t4fI1xNQO

「もしもし、聞こえてますか、もしも〜し。」

「………じゃ…。」

「…え?」

「…無駄じゃ…。」

電話口に出たのは警察ではなく、しわがれ声をした老婆だった。

みさおの顔がみるみるうちに青ざめていく

「全ては岸猿家のために…」

電話口の老婆は絞りだすような声を上げた。

「お前も……お前もじゃ…みんなわしの贄となり、岸猿の血を引く児を孕め…全ては岸猿家のために…ヒヒヒヒヒヒヒ。」

118 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:35:43.22 ID:t4fI1xNQO

「う…うわぁ!」

みさおが携帯を耳から引き剥がし、床へと投げ捨てた。

その衝撃でバッテリーパックが携帯から飛び出してもなお、その老婆の不気味な笑い声が携帯から響き続けた。

床に放り出され、不快な笑い声を発し続ける携帯をかがみが思い切り足で何度も踏み付けた。

プラスチックが割れる音が辺りに響き、原型も留めない程に踏み壊して、ようやくその笑い声が止んだ。

123 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:42:05.75 ID:t4fI1xNQO

「お前らの…お前らのせいだよ!」

みさおが激昂して、こなたとゆたかを指差す。

「お前らのオヤジの友達が、こんな変態だと知ってたら、こんな所に来なかった!」

みさおは皆をかき分けると一目散にゆたかに飛び付き、襟を掴み、壁に押し付けて怒鳴りつけた。

小柄なゆたかの体が宙に浮き、脅えきった目をみさおに向け、言葉も出ない様子だった。

「どうしてくれんだよ!責任とれよ!ここから逃してくれよ!!」

その横で、こなたは目に涙を浮かべたままオロオロするばかりだった。

130 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:48:30.81 ID:t4fI1xNQO

「みさきち……落ち着いて…。」

「うるさい!」

間に割って入ろうとするこなたを、みさおは思い切り張り上げた。

床へと倒れたこなたは、口の中を切ったのだろう、口から血を流しながらも起き上がり、みさおの足にしがみついた。

「ゆーちゃんは悪くない…だから責めるなら私を責めてよ…。」

みさおは足にしがみつくこなたを、無理矢理引き剥がすと、足蹴にした。

134 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 02:54:32.84 ID:t4fI1xNQO

「…いい加減に離して……ゆたかは体が弱い…」

みなみがみさおの肩口を静かに、だが強く掴み、脅えきったゆたかから引き離した。

「畜生!」

みさおは喉を押さえて苦しげに咳き込むゆたかの顔を思い切り蹴りつけた。

短い悲鳴を上げて、ゆたかが壁に叩き付けられる。

それを見たみなみが今度はみさおの襟を掴み上げた。

139 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:02:14.26 ID:t4fI1xNQO

「今のは許せない…。」

冷たい怒りを秘めたみなみの目が、みさおを睨みつける。

「もう止めて…止めてよこんな事!」

みゆきとひよりが、涙を流しながらも下をうつ向く中、かがみが声を張り上げた。

「そうだよ、みなみちゃん…私は大丈夫だよ…だから…日下部先輩から手を離して…お願い…。」

蹴りつけられて、赤く腫れ上がった頬を手で押さえながら、ゆたかが気丈にもみなみに微笑んだ。

140 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:03:05.33 ID:t4fI1xNQO

「…ゆたか……」

みなみの手が緩むやいなや、みさおは襟を掴む手を振り払った。

「もういい…仲良しごっこはもう沢山。私が一人で助けを呼んでくる…それにこんな所にいるよりは遥かにマシだぜ…。」

みさおはそう言い、踵を返すと、玄関の脇にかけてあったレインコートをはおった。

「待って、みさちゃん……外は凄い嵐よ…船も無いし、それに一人だと危険じゃ……。」
「知るもんか!」

145 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:09:35.31 ID:t4fI1xNQO

みさおはそう言うと、重たい鉄の扉を開けて、激しい風雨が吹き荒れる外へと出ていってしまった。

「後を追わないと…」

みゆきが慌てた様子でもう一着あったレインコートに手をかけた。

「いいわよ、どうせ頭を冷やして帰ってくるわ…。」

みゆきにそういうと、かがみは床に倒れているこなたの方を向いた。

「こなた…大丈夫?ほら、捕まって。」

かがみから差し出された手を振り払うと、こなたはゆっくりと立ち上がった。

146 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:15:16.91 ID:t4fI1xNQO

「大丈夫だよ…だから心配しないで…。」


こなたはうつむき加減でそう言うと皆の方を見向きもせずに談話室の方へ行ってしまった。

やはりこなたもそれなりに責任を感じているのだろう…
自分のせいでパティが死に、皆をこんな目に合わせてしまったのだから…。

148 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:16:11.44 ID:t4fI1xNQO

「ゆたかちゃん…大丈夫…?」

あやのがハンカチで、口の端からにじみ出る血を拭ってあげながらたずねた。

「みさちゃんも手加減しないんだから……でも、本当は素直でいい子なのよ。許してあげてね。」

「そうですよ…こうなったのはゆたかさんのせいではないのですから…。」

ゆたかは健気な笑顔をあやのとみゆきに返した。

153 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:23:13.74 ID:t4fI1xNQO

「でも…でも、パティちゃんが……私のせいで…私が誘ってなければ…助かって…それで…」

ゆたかは顔を歪めると、鼻をグズグスと鳴らしながら泣き出してしまった。

「ゆたか…泣かないで…ゆたか…」

みなみも目に涙を浮かべながら、ゆたかを慰めた。

かがみはその様子を遠くから暫くながめてから、談話室の方へと歩いていった。

155 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:29:11.42 ID:t4fI1xNQO

かがみが談話室の入口を覗くと、こなたがソファーの端にチョコンと座りながらすすり泣いていた。


「こなた。」


かがみが静かに、そして優しく言った。

「大丈夫なの?」

かがみの声を聞いたこなたは鼻をすすりあげると、慌てた様子で袖口で涙を拭った。

「んにゃ?どうしたのかがみん。」

こなたは赤く腫れぼったい目で無理矢理笑顔を作るとかがみの方を向いた。

157 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:35:03.19 ID:t4fI1xNQO

「まったく…アンタって子は…」

かがみは腰に手を当てると、溜め息をつき、こなたへと歩み寄った。
そしてこなたを優しく抱き寄せると、小柄な体を抱擁した。

「強がりで……全部一人で背負い込もうとして…本当に馬鹿なんだから…」

「本当に…ごめんなさい…」

二人は互いに抱き合い、そして慰めあった。

161 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:40:06.11 ID:t4fI1xNQO

ふ、と抱き合うかがみ達の頭上から何かがポタポタと垂れて、かがみの額に落ちて来た。

それは生暖かく、それでいてヌルヌルしていた。

かがみはそれを手の平で拭った。

途端に生臭い臭いが鼻を付いた。

手の平が真っ赤に染まっている。

それはまごうことなき鮮血だった…。

164 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:47:11.16 ID:t4fI1xNQO

かがみとこなたは慌てて天井を仰ぎ、短い悲鳴を上げた。


天井に赤い線が真一文字に描かれ、そこから鮮血が滴っていたのだ。


「何かあったの?」

かがみ達の悲鳴を聞いた、皆が駆け付けて、かがみ達にたずねた。


かがみとこなたは無言のまま天井を指差した。


それを見た一同は文字通り絶句した。

166 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:49:58.23 ID:t4fI1xNQO

みさおは玄関から飛び出すと、雨が降り頻る中庭を駆け出した。

そして、そびえたつ鉄のゲートに飛び付くと掛け金を外し、苦労してゲートを開けた。


敷地の外は、一寸先も見えない暗闇で、おまけに雨と風が吹き荒れていた。

これでは島を出るどころか、船着き場まで行けるかどうか…。

169 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:54:15.33 ID:t4fI1xNQO

急に冷静になったみさおは開けたばかりのゲートを閉じると、掛け金をかけて、今来た道を引き返した。

恐怖と怒りで混乱し、冷静な判断を欠いていたのかもしれない…。

いくら、こんな状況になったとしても暴力はよくなかったよなぁ〜。

冷静に考えてみると、自分がやってしまった馬鹿げた行為に後ろめたさが芽生えて来た。こんな状況だからこそ、皆で力を合わせて打開すべきではないだろうか…。

「ちびっことちびっこの従姉妹に謝んなきゃな…許してくれるかな…。」

171 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:57:55.91 ID:t4fI1xNQO

そんな事を呟きながら、みさおは中庭を歩いていった…。

そしてふと前に目をやると、広場の中央にある噴水の前に誰かが立っていた。

辺りは暗く、それに雨も降っていたので、誰かはわからなかったが、人が立ってるのは確かだった。

きっと、柊かあやのだろうな〜。でも、あんな事した後だから、なーんか気まずいよなぁ…。

172 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 03:59:19.85 ID:t4fI1xNQO

みさおは恥ずかしげに頭を掻きながら、その人影に近付いた。


「急にあんな事してごめんな〜。ちびっことちびっこの従姉妹は大丈夫……。」

173 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 04:02:29.43 ID:t4fI1xNQO

そこまで言って、みさおは次の言葉を継げなかった。

遠くから見ると分からなかったが、その人影は明らかにかがみやあやの等ではなかった。
黒いポンチョをはおったその人影は静かに、みさおを見据えていた。

「お前…誰だよ……。」

みさおが後退りながら言った。

「よくも……大事な贄を傷付けおって……贄が減ったらどうするつもりじゃ……」

その人影は老婆のような声で言った。
その声は先程の携帯電話からの声と全く同じだった。
そしてポンチョに隠れていた手を出した。

そこにはビデオに映っていたのと同じ鋭利なナイフが握られていた。

274 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 19:10:58.78 ID:t4fI1xNQO

「お前…誰だよ……。」

みさおが後退りながら言った。

「よくも……大事な贄を傷付けおって……贄が減ったらどうするつもりじゃ……」

その人影は老婆のような声で言った。
その声は先程の携帯電話からの声と全く同じだった。
そしてポンチョに隠れていた手を出した。

そこにはビデオに映っていたのと同じ鋭利なナイフが握られていた。

みさおの全身から血の気が引いた。

しかし、そこは運動部員…素早く身構えると、その人影に飛びかかった。
いくら相手が男といえども、こちとら運動と腕っ節には自信がある…。

277 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 19:16:01.27 ID:t4fI1xNQO

みさおはナイフを持つ手に飛び付くと、ナイフを払い落さんとしきりに手首を殴りつけた。

しかしびくともしない…それどころか、男に襟を掴まれて易々と持ち上げられてしまった。

息が出来なくなり、必死で足をばたつかせる。

「ここが必要なのじゃ…ここが…」

その人影は足をばたつかせてもがくみさおの子宮の辺りをナイフの柄で強打した。

278 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 19:19:11.52 ID:t4fI1xNQO

突然の衝撃に、みさおは嘔吐し、ぐったりしてしまった。

「……助けてよ…あやの……柊…」

蚊の鳴くような声でそう呟くみさおの体を持ち上げながら、その人影は歩きだした。

進む方向から察するに、男は窓の下にある、鋭い針がひしめく堀を目指していた。

自分がどうなる運命にあるのかを瞬時に悟ったみさおは、力の入らない拳で人影の肩や首を叩き、最期の抵抗をした。

279 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 19:23:25.70 ID:t4fI1xNQO

しかし、そんな事が無意味なのはみさお本人が一番分かっていた。

堀の前まで来ると、襟を掴んだみさおの体を持ち上げて、針の上へと突きだした…

「…待って……止めてくれ……」

みさおは吐冩物で汚れた口をパクパクさせながら、命乞いをした。

「贄じゃ…贄じゃ…」

人影が嬉しそうにそう言うと、襟を掴んでいた手を離した。

280 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 19:27:23.51 ID:t4fI1xNQO

みさおの体が宙を舞い、そして体の至る所を針で貫かれた。

「あ"あっ!」

串刺しになったみさおは動物めいた叫び声を上げた。

「…柊…あやの…ちびっこ…助けて……」

消え入りそうな声を上げると、息も絶え絶えな様子で小さいうめきをあげていた。


「全ては岸猿家の為に…」

人影はそう言うと、堀からみさおの体を乱暴に引き上げて、地面へ下ろした。

282 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 19:32:35.21 ID:t4fI1xNQO

そして、みさおのスカートをたくし上げると、青と白の縞パンティをずらして性器を露にした。

「あ……クッ…止め……」

力の入らない手で何とか男を払いのけようとするが、すぐに払いのけられてしまう。

ピンクで綺麗な性器をいじくりながら、息をあらげ、そして自分の股間をもみしだく。

283 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 19:37:42.81 ID:t4fI1xNQO

「贄じゃ…贄じゃ…」

息をあらげながら繰り返しそうつぶやくと、今度は自分のそそり立つ逸物をズボンから出し、みさおの性器にこすりつけ始めた。

「あ…は……やぁ…」
虫の息ながらも、みさおは顔を赤くした。

そして、人影は暗い欲望とともに柔らかい粘膜を一気に突いた。

285 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 19:38:58.07 ID:t4fI1xNQO

「こんなのさっきまで無かったわよね…それに今さっき塗り付けたみたいにまだ湿ってる…」

その場にいた全員が談話室の天井を仰ぎ、突然出来た赤い線を見つめていた。


「電話で岸猿家が何とかって言ってたのを聞いたわよ…何か関係があるのかしら…。」

血が滴った額のあたりをタオルで念入りに拭いながら、かがみが言った。

「岸猿家のため……児を孕め……贄がどうのこうの……何かひっかかりますね…」
と、歩く辞書のみゆき。

287 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 19:43:14.98 ID:t4fI1xNQO

「みゆきさん何か分かったの…?」

こなたがみゆきの方に身を乗り出してたずねた。

「そちらの方面の話にはあまり詳しくないので、確かな事は言えませんが、明治時代に私設監獄で横暴の限りを尽くし、没落した名家の名前が確か…岸猿家…珍しい名前だったので覚えています…。」

「私設監獄…?」

かがみがタオルから顔を離すと、みゆきにたずねた。

「ええ……そこに収監されている囚人を家兎、奉公人などと呼んで劣悪な肉体労働に従事させていたみたいです…でも、明治維新後の改革によって次第に力を失い、ついに叛乱が起きて没落したらしいです…。」

291 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:05:09.23 ID:t4fI1xNQO

「それってまさか…ここで起きた事……?」
かがみがみゆきにたずねると、みゆきは首を縦に振った。

「恐らくは…。」

その場にいた者は互いに顔を見合わせた。


「しかし、何故今更になって岸猿家がどうのと言ってるのは、私にも少し分かりません…何か関係する書物でもあればよいのですが……」


「あ…そうだ…書斎あるよ…いく?」

292 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:09:14.54 ID:t4fI1xNQO

こなたがテーブルにドスンと手をついて立ち上がった。


「でも…一人だと危険じゃ……」


みなみが心配そうな目をみゆきに向けた。

「私とつかさが付いていくよ…いいでしょ?つかさ。」

こなたがつかさの方を向いた。

「ほえぇ……!でも…私なんか怖いな…。」


つかさがうつ向き、手をモジモジさせて呟いた。

298 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:13:07.18 ID:t4fI1xNQO

「分かったわ…じゃあ私が行くから…つかさはゆたかちゃんの頬を氷か水で冷やしてあげて。」


かがみが立ち上がると、つかさの頭を撫でながら言った。


「うん、分かった。ひよりちゃん、手伝って。」


「分かりましたッス。」


そういうとつかさとひよりは厨房の方へと行ってしまった。


「じゃあ、ゆーちゃんとみなみんとあやのはここで待ってて、すぐ戻ってくるから。」

300 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:15:18.64 ID:t4fI1xNQO

こなたはそう言うと、かがみとみゆきとともに書斎へと向かった。


「お姉ちゃん…気をつけてね…」


頬にハンカチを当てたゆたかが心配気に呟いた。

302 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:17:39.76 ID:t4fI1xNQO

書斎は二階の一番左端の部屋にあった。
こなたたちは薄暗い廊下を辺りに気を配らせながら進んでいった。

「ついた…ここだよ…。」


こなたが突き当たりの古びたドアの前で立ち止まった。

そして、慎重にドアを開けていく…。

304 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:21:17.46 ID:t4fI1xNQO

途端にカビ臭い空気が部屋から漏れてきて、鼻をついた。

三人はその臭いに堪らず咳き込んだ。


「酷い臭い……長い間誰も出入りしてなかったみたいね…。」


かがみが口を押さえながら、言った。


「とにかく、岸猿家関連の書物を見付けないと…。」

306 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:29:54.00 ID:t4fI1xNQO

みゆきが袖で口元を覆いながら、部屋へと足を踏み入れた。

中は書斎と言うだけあって本棚が部屋を囲むように置かれ、埃をかぶった本が所狭しと並んでいた。

そして部屋の中央に机があり、左側には鉄格子がはめられた木枠の窓があった。


外から吹き荒れる雨と風が窓に叩きつけられ、時折ガタガタと揺れている。

307 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:35:14.69 ID:t4fI1xNQO

「日下部…大丈夫かしら…」


窓を遠い目で見つめながら、かがみがぼそりと言った。


「かがみ…みゆきさん…こんなのがあったよ…」


こなたの手にしているのはdiaryと書かれた赤いハードカバーの書籍だった。どうやら日記らしい…。


すかさずこなたが開いて中を確認してみる…


「なになに2002年…7月18日……今日は久しぶりに休暇でこの島へとやって来た。今は亡き曽祖父が残してくれた島だ。曽祖父に感謝して、一念発起、この小汚い館を掃除しなければ……でも今日は移動云々で何かと疲れた。
掃除は明日にして今日は早めに寝よう。……これ立木さんの6年前の日記だ…。」

310 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:42:09.77 ID:t4fI1xNQO

三人は食いいるようにその日誌を読んだ。
何せこの狂った事件を起こした異常者の日誌だ。


「2002年…7月19日…今日は二階の部屋を掃除した。長い間ほったらかしにしていたせいか酷い有り様だった…。しかし物置を掃除していると変わった物を見付けた。
陶器か何かで出来た人形だ。変わった形をしている。ひいおじいさの遺してくれた置き土産はさぞやお値打ち物なのだろう…
飾っておいて損はない。…寝室にでも飾っておこう……。

311 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:45:29.61 ID:t4fI1xNQO

2002年…7月27日……。
今日もあまり眠れなかった…夢のせいだ…最近悪夢をみるようになった…。
そのせいで、おちおち落ち着いて寝れやしない……この人形を寝室に置いたせいなのだろうか……この人形は明日にでも物置に戻しておこう。気味が悪い…。

298 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:13:07.18 ID:t4fI1xNQO

「分かったわ…じゃあ私が行くから…つかさはゆたかちゃんの頬を氷か水で冷やしてあげて。」


かがみが立ち上がると、つかさの頭を撫でながら言った。


「うん、分かった。ひよりちゃん、手伝って。」


「分かりましたッス。」


そういうとつかさとひよりは厨房の方へと行ってしまった。


「じゃあ、ゆーちゃんとみなみんとあやのはここで待ってて、すぐ戻ってくるから。」

300 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:15:18.64 ID:t4fI1xNQO

こなたはそう言うと、かがみとみゆきとともに書斎へと向かった。


「お姉ちゃん…気をつけてね…」


頬にハンカチを当てたゆたかが心配気に呟いた。

302 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:17:39.76 ID:t4fI1xNQO

書斎は二階の一番左端の部屋にあった。
こなたたちは薄暗い廊下を辺りに気を配らせながら進んでいった。

「ついた…ここだよ…。」


こなたが突き当たりの古びたドアの前で立ち止まった。

そして、慎重にドアを開けていく…。

304 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:21:17.46 ID:t4fI1xNQO

途端にカビ臭い空気が部屋から漏れてきて、鼻をついた。

三人はその臭いに堪らず咳き込んだ。


「酷い臭い……長い間誰も出入りしてなかったみたいね…。」


かがみが口を押さえながら、言った。


「とにかく、岸猿家関連の書物を見付けないと…。」

306 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:29:54.00 ID:t4fI1xNQO

みゆきが袖で口元を覆いながら、部屋へと足を踏み入れた。

中は書斎と言うだけあって本棚が部屋を囲むように置かれ、埃をかぶった本が所狭しと並んでいた。

そして部屋の中央に机があり、左側には鉄格子がはめられた木枠の窓があった。


外から吹き荒れる雨と風が窓に叩きつけられ、時折ガタガタと揺れている。

307 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:35:14.69 ID:t4fI1xNQO

「日下部…大丈夫かしら…」


窓を遠い目で見つめながら、かがみがぼそりと言った。


「かがみ…みゆきさん…こんなのがあったよ…」


こなたの手にしているのはdiaryと書かれた赤いハードカバーの書籍だった。どうやら日記らしい…。


すかさずこなたが開いて中を確認してみる…


「なになに2002年…7月18日……今日は久しぶりに休暇でこの島へとやって来た。今は亡き曽祖父が残してくれた島だ。曽祖父に感謝して、一念発起、この小汚い館を掃除しなければ……でも今日は移動云々で何かと疲れた。
掃除は明日にして今日は早めに寝よう。……これ立木さんの6年前の日記だ…。」

310 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:42:09.77 ID:t4fI1xNQO

三人は食いいるようにその日誌を読んだ。
何せこの狂った事件を起こした異常者の日誌だ。


「2002年…7月19日…今日は二階の部屋を掃除した。長い間ほったらかしにしていたせいか酷い有り様だった…。しかし物置を掃除していると変わった物を見付けた。
陶器か何かで出来た人形だ。変わった形をしている。ひいおじいさの遺してくれた置き土産はさぞやお値打ち物なのだろう…
飾っておいて損はない。…寝室にでも飾っておこう……。

311 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:45:29.61 ID:t4fI1xNQO

2002年…7月27日……。
今日もあまり眠れなかった…夢のせいだ…最近悪夢をみるようになった…。
そのせいで、おちおち落ち着いて寝れやしない……この人形を寝室に置いたせいなのだろうか……この人形は明日にでも物置に戻しておこう。気味が悪い…。

314 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 20:55:05.91 ID:t4fI1xNQO

2002年…8月5日…。幻聴と耳鳴りが酷い…。今日は早めに休もう」


こなたは次のページを捲った。今まで綺麗で丁寧な文字で綴られていた日記が急に乱雑で汚い文字に変化していた。


「ちょっと…何なのよこれ…」


かがみが思わずそう漏らした。

316 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 21:01:17.90 ID:t4fI1xNQO

「2002年8月7日……朝起きたら手が血まみれだった。厨房へ行くと、使用人の娘が死んでいた。酷い。ナイフでメッタ斬りされてる……おまけにズボンが下ろされて乱暴されてる
…警察を呼ぼうにも、電話線が切断されていて、携帯電話も繋がらない…私の船もガソリンが抜かれていてつかえない…地元の高校を卒業して、真面目に働いていた健気で良い子だったのに…。誰がこんな事をしたんだ。私か?わたしなのか?今日は早めに休もう。

317 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 21:02:57.54 ID:t4fI1xNQO

2002年…8月10日
突如として凄まじい渇望に襲われた……無理もない…高校の合宿でSOS団とか言う女子高校生達がここに来ている。勿論使用人の死体は埋めて隠したが、何故埋める必要があった…?何故隠す?私には分からない…。分からない…。

320 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 21:07:59.23 ID:t4fI1xNQO

2002年……8月12日
もう我慢できない。カメラを用意する事にしよう。


2002年…8月13日
またやってしまったのだろうか……。三人の死体を前に、私は……訳が分からなくなった…。私の中に私とは別の何かが潜んでいる……今日も明日も…私が私でいられる保証などどこにもない……我思う、故に我有り……これが如何に浅はかな言葉かをつくづく思い知る。
全ては岸猿家の為に…。もっとおなごが必要じゃ…贄が必要じゃ…。

321 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 21:13:36.44 ID:t4fI1xNQO

2002年…8月15日
もう耐えられない…私自身にもう耐えられない。
私は自らの手で私の体と精神に終止符を打つ。
また女子高校生達が合宿で遊びに来る。私が知らず知らずの内に呼び寄せてしまった…畜生…。

コイツの思い通りにはならない…。私は睡眠薬を飲んでそして」


ここから日誌が途切れていた…。三人は背筋が寒くなるのを感じた。

323 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 21:17:59.88 ID:t4fI1xNQO

「精神…分裂病ですかね……それにしては急激に症状が出ていて、劇症化が早すぎます…。」


「違うわよ…みゆき……問題は恐らく、この陶器の人形よ……。」

かがみが部屋の隅にあった陶器の欠片の集まりを指差した。


「ここから何かが起きて、恐らく今も…立木さんは何かに取り付かれてる…。」

324 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 21:21:12.47 ID:t4fI1xNQO

「ありました!恐らくこの本です。」


みゆきが本棚から青いハードカバーがかけられた本を取り出した。

「…三日月島・岸猿家歴史資料書……恐らくこれね……」


「そうですね…岸猿家の最後の当主、岸猿伊右衛門は晩年、跡継ぎを必死で探していたそうです。」

みゆきがペラペラとページを捲りながらいった。

325 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 21:22:37.02 ID:t4fI1xNQO

かがみがすかさず聞き返す。


「跡継ぎ…?」


「ええ…岸猿家を継ぐ跡継ぎです…その為に……奉公人の女性を使って非人道的な蛮行を繰り返していたそうです……。それに伴って、どうやら岸猿伊右衛門は風水に凝っていたようで、何度も妖しい儀式をしていたようです……。」


「狂ってるわ。みゆき、本を持って談話室へ戻りましょ…こなた、行くわよ。」

347 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:02:04.28 ID:t4fI1xNQO

完全に話の茅の外だったこなたは窓の外を眺めていた。


「かがみん……来て…マズイよこれ…。」


こなたが呟いた。


「どうしたのよ!」


「あれ…見て……。」


コナタが窓の外を指差した。

雨が降り頻る堀の側で、何か黒い物が絡み合い、激しく動いていた。

351 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:05:50.83 ID:t4fI1xNQO

「何なのよ…アレ…。」


かがみが目を凝らす。

そして、それが瀕死のみさおとみさおを犯している人影だと気付くのに時間は掛らなかった。

353 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:10:12.27 ID:t4fI1xNQO

「日下部!!」


鉄格子に飛び付いたかがみが叫んだ。

その叫び声に気付いたのだろうか、血まみれのみさおを犯していた人影がこちらの方を向いた。

ポンチョのフードに隠れていて、表情や人相はわからなかったが、不気味な黒い陰が帯びているのだけは分かった。

361 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:40:20.83 ID:t4fI1xNQO

人影はこちらにみせびらかすかのように手に握られたナイフをみさおの頭上に振り上げた。


「止めて!!」


かがみが涙を流しながら懇願する。


「早く助けないと…」

こなたがあたふたと辺りを見回し、そして机上にあった重しを掴むと、窓へと投げつけた。

363 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:42:46.92 ID:t4fI1xNQO

ガラスが盛大な音を立てて割れ、風と雨が室内へと吹き込む。


「みさお!!」


かがみがそう叫ぶと、ナイフを振り上げられた瀕死のみさおがゆっくりと頭を上げてこちらを向いた。
そして、ろれつの回らない舌で助けを求めた。


「柊……助けて……」

365 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:45:51.67 ID:t4fI1xNQO

言い終るか終わらないうちに、人影がみさおの喉元にナイフを突き刺し、とどめを刺した。


「あっ!……がはっ……。」


みさおは口から血を吐き出し、目を見開いたまま体を何度か震わせると、ガックリと首を落とした。


「いや…みさお…いやああああ!」

367 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:50:10.90 ID:t4fI1xNQO

かがみは鉄格子にもたれながら、慟哭した。

「そんな……こんなの…聞いてません。あの時に私が後を追っていれば…。」

みゆきは耐えきれずに、その場に座り込んでしまった。


「アンタ!絶対に許さないんだから!絶対に!絶対に!」


かがみが鉄格子を握り折らん程に掴みながら、その人影に叫んだ。

372 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:54:11.48 ID:t4fI1xNQO

人影は暫くかがみを見つめると、そのままどこかへ立ち去ってしまった。


「とにかく…いこ……皆が心配だよ…。」


こなたが座り込むみゆきを抱き起こすと、スカートに付いた埃を払ってやった。


「かがみも……行かないと…。」


みゆきに肩を貸してやりながらこなたが言った。

374 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:55:39.53 ID:t4fI1xNQO

「みさお…ごめんね…。」


かがみはそう言うと名残惜しそうに、鉄格子を離し、涙を拭った。

380 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/08(土) 23:59:35.69 ID:t4fI1xNQO

「あっ…また増えたよ…」

ゆたかが頬を押さえながら天井を指差して言った。

みなみとあやのが天井を仰ぐと、先程出来た赤い線の隣に新たな線が出来ており、そこから鮮血がにじみ出ていた。

あやのが慌ててテーブルに滴り落ちた血をハンカチで拭う。


「…何が…起きてるのか…分からない…」

383 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:05:37.01 ID:jzRURZc7O

ゆたかの隣に座っていたみなみがボソリと呟く…。


その時、厨房の方から凄まじい悲鳴が聞こえ、廊下を何者かが走って来る足音が聞こえた。


脅えるゆたかを守るように、みなみが立ち上がり、身構える。

談話室に飛び込んできたのは涙と鼻水で顔をグチャグチャにしたつかさだった。

386 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:10:36.81 ID:jzRURZc7O

「ひよりちゃんが…ひよりちゃんが……」


つかさはうわ言のようにそう呟くと、ドアにもたれかかるように倒れ込んでしまった。


「ひよりちゃんがどうしたの?」


あやのが慌ててつかさにかけよると、肩を抱いてソファーに座らせて上げた。


「助けて…あげて……。」


つかさが涙と鼻水で濡れた顔をあやのに向けて言った。

389 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:18:32.60 ID:jzRURZc7O

「みなみちゃん…柊ちゃんの妹とゆたかちゃんを頼むわね。」


あやのはそう言い残すと、厨房へと飛び出していった。


あやのが厨房に入ると、すでにこなた達が何かを囲むようにして立っていた。

どうやらあやのと同様に悲鳴を聞き付けて二階の書斎からやってきたのだろう…。

391 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:25:18.56 ID:jzRURZc7O

「何があったの…?」


開口一番にあやのがたずねた。


「みさおに続いてまたよ…」


かがみが呟いた。
その足元にはひよりが横臥していた。


紫色にチアノーゼを起こした口から血を吐き出し、喉元を掻きむしるようにして手は喉元に置かれ、そしてスカートがたくしあげられていた。


大きく開いた足に脱がしかけの丸まった白いパンティが引っかかっている。
そして陰部は刃物か何かで大きくえぐられ、おびただしい血が床に流れ出していた。

392 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:31:45.35 ID:jzRURZc7O

苦悶の表情を浮かべながら天井を仰いで事切れる、ひよりの死体は、何かを訴えているかのようだった。


こなたがひよりの脇に落ちていたオレンジジュースの缶を拾うと、まだ中身が残っているそれの臭いを嗅いだ。

オレンジジュースの臭いに混じって、微かに新しい干し草の様な臭いがした。


みゆきも同様に、臭いを嗅ぐ…。


「青酸化合物か……ホスゲンの臭いがします……。」


「もう嫌よ……こんな事…もうたくさん…。」


かがみが涙声でそう呟くと、厨房を出ていった。

398 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:38:20.91 ID:jzRURZc7O

ひよりの死体にあやのが側にあったビニールシートを被せた。


「とりあえず…つかささんから事情を聞きましょう…」


いつになく真剣な表情でみゆきが言った。

399 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:44:26.96 ID:jzRURZc7O

「つかささん…一体何が起こったですか…?」

みゆきが不安げに震えるつかさの手を握ってあげながらたずねた。


「私たち…厨房にいったの……それで…蛇口回したけど水が出なくて…それで…氷あるかなと思って冷蔵庫をみたの…フリーザーはカラだったけど…ジュースの缶があって…私達喉がカラカラでそれで…回し飲みしようって言ってひよりちゃんが…」

400 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:47:24.21 ID:jzRURZc7O

「飲んだんですか……?」


つかさがコクリとうなづく。


「そしたら先に飲んだひよりちゃん……急に苦しみだして……喉を引っかいて、暴れてて…私どうしたらいいのか分からなくて…それで…」


つかさが、言葉を詰まらせ、しゃくりあげる……。


「つかささん…落ち着いて…。」

401 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:50:44.95 ID:jzRURZc7O

みゆきがつかさの背中をさすってやった。


「そしたら私の後ろに男の人がいたの…。紺のポンチョを着た…怖い人……」


その一言にこなた達三人は息を飲んだ。


「それで…どうなったの…?」


かがみがつかさに詰め寄り、たずねる。


「分からない…その人がナイフを取り出してきたから…私…ひよりちゃんが苦しんで助けを求めてたけど…怖くて…逃げて…」

403 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 00:57:42.19 ID:jzRURZc7O

「分かりました…もういいです…」


みゆきが優しくつかさを抱き寄せて、慰める。

外はゴウゴウと風がなり、建物全体がガタガタと揺れた。
嵐はますます激しくなり、もう外に出る事さえ危険な程になっていた。


思い沈黙が流れる中、みゆきが黙々と書斎から持って来た書物を読んでいた。

404 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 01:00:09.50 ID:jzRURZc7O

「みゆき……今回の件…何か分かった…?」


「ええ…分かりすぎる程に…」


みゆきが中指で眼鏡を上げながらいった。


「断定は出来ませんが…恐らく天井に書かれた赤い線は呪術の一種でしょう…。」


「ジュジュツ…?」


こなたが首をかしげながらたずねた。

406 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 01:04:27.15 ID:jzRURZc7O

「ええ…この赤い線が9本…それぞれ、臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前と書き順がありまして、それが碁盤目上になるのがドーマン…
このドーマンが完成すると逆しまな力が溢れ…この世の法が破れて比斗神がうまれるそうですが…」


みゆきはおもむろに本から顔をあげると皆の方を向いて言った。


「ドーマンを完成させるには九つの血……つまり、九人のいけにえが必要なのです。そこで白羽の矢が立ったのが…私達九人…。」

407 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 01:06:57.02 ID:jzRURZc7O

「じゃあ…私達の前に殺された人達は…?」


頬の腫れが大分引いてきたゆたかかが、目に不安と恐怖をやどらせながらたずねた。


「儀式を行う前の血の礎でしょう……この建物は風水上、気が溜まりやすい構造をしています…
この書によると岸猿家の当主、岸猿伊右衛門は風水に熱心だったそうで、この監獄を建設する時も、自ら率先して設計に携わっていたそうです。…恐らく殺された人の恐怖、混乱、苦痛…それらの気を集める為にこのような構造にしたのでしょう…。」

424 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 03:12:05.59 ID:jzRURZc7O

「そして…期は熟した……そういう訳ね……それで、私達はその儀式を行う為の、いわばいけにえ……狂ってるわ…」


かがみがうつ向いたまま言った。


「私達…皆殺されちゃうの…?」


つかさが相変わらず手をモジモジさせながらたずねた。


「…ええ……そして…殺されるごとにこの赤い線が一本づつ増えていく…そういう事です…」

440 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 05:36:38.67 ID:jzRURZc7O

「…じゃあ児を孕めっていうのはどういう事なの…?」と、つかさ。


「それが…分かりません……文献の何処を探しても無いんですよ…。」


みゆきが書物をパラパラと捲りながら言った。


「分からないじゃ済まされないの…人が死んでんのよ?何とかしなさいよ!」


かがみが立ち上がると、みゆきを怒鳴りつけた。


「…自分の推測ですが……恐らく……私達と交わり…そして児を宿すのではないでしょうか……それが比斗神……私達を殺し、孕ませ、儀式を成就したその時、児、つまり比斗神が産まれる…私達の死体から…。」

444 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 05:54:31.88 ID:jzRURZc7O

みゆきの言葉に、フラッシュバックのようにみさおとひよりの最期が頭に浮かぶ……刺され、犯され、いたぶられ殺されたみさお…そして性器を大きくえぐられて死んでいたひより……。


かがみは自分の腟がうごめき、子宮が熱くなるのを感じた。


「んっ……くっ……」

途端にその場にいた全員が、下腹部を押さえて、顔を赤くした。

得も言えぬ何かに、陰核が刺激され、ぬたぬたと唾液を滴らせたベロで腟の入口を舐め回されるかのような快感とうづきが走る。

521 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 19:14:51.03 ID:jzRURZc7O

これも呪術の影響なのだろうか……性欲が泉の様に湧き出てくる。


「いや……やだ……気持ち悪い……」

ゆたかがスカートの上から性器を押さえ、何とかうづきを止めようとしている…みなみは立っているのもやっとなのか…ソファーにもたれかかりながら、汗ばんだ顔で虚空を見つめている。

522 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 19:17:03.01 ID:jzRURZc7O

かがみはパンティがじんわりと湿ってくるのを感じた。


つかさも自分の性器を愛撫するのを我慢しているのか…顔を赤くして、手をギュッと握り締めている。

「もう……だめ…我慢できない…」

525 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 19:22:01.55 ID:jzRURZc7O

顔を赤らめたこなたがそう言うと、かがみの肩を掴み、強引に接吻した。


柔らかで、それでいて微かに甘いこなたの舌が、かがみの唇と歯を押し拡げて侵入してきた。


そして、こなたの舌が口の中をなめくじのように這い回り、かがみの舌を絡ませるように、舌の裏を愛撫する。

「ちょ……こなた……止め……」

529 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 19:27:17.77 ID:jzRURZc7O

口内から全身へと広がりつつある快感の渦に、飲まれんと必死でこなたを押し留める。

しかし、こなたの力は思いの他強く、逆に服越しに胸を揉みしたがれた。

「あ…あん!」


敏感になった乳房から、電撃のように快感が走り、思わず声が出てしまった…。

531 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 19:33:54.38 ID:jzRURZc7O

「好きだよ…かがみん……」


かがみとこなたの涎が糸を引き、互いの唇を結びつける。


「皆さん…落ち着いて……んっ…これは恐らく色情の呪術です…皆さんが児を孕むように仕向けるための……罠です……。」


顔を赤らめ、足を震わせながら、みゆきが声を絞り出した。

「でも……こんなの…どうやって……治めれば…。」

540 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 19:42:20.80 ID:jzRURZc7O

あやのが熱い吐息を含ませた、いやらしい声色で言った。


みゆきは震える手で何とか書物を読みながら言った。


「……唾液です…皆さん……互いに接吻して、唾液を…飲みこんで下さい……こなたさんとかがみさんがしているように……。」

544 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 19:51:25.49 ID:jzRURZc7O

みゆきはそう言うと、側にいたあやのの頭を掴み寄せて、接吻をした。


「みなみちゃん…仕方ないけど…やるよ……いい…?」


ゆたかが、みなみの汗ばんだ顔に唇を近付けながら言った。


「……かまわない…。」


みなみはそういうと、ゆっくりとゆたかの唇に自分の唇を触れさせた。
そして互いに舌を絡ませ合う。

550 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 19:59:02.52 ID:jzRURZc7O

「お姉ちゃぁん…私は…?」


つかさが肩で息をしながら言った。


「あ…そ…そうね…私がしてあげる……。」


こなたと見つめ合い、うっとりとした表情をしていたかがみがふと我に返り、こなたを押し留め、つかさを抱き寄せる。


それを、子宮のうづきが止まったこなたが寂しげな目で見つめた。

553 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 20:06:12.59 ID:jzRURZc7O

「姉妹でこんな事するのも、何か変だけど…仕方ないわよね……。」


「お姉ちゃん……。」


つかさとかがみも同様に舌を絡ませ合い接吻をした。

557 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 20:16:39.45 ID:jzRURZc7O

辺りに、クチャクチャと、液体を絡ませ合う淫靡な音が響く…。


みゆきとあやのは唇を離すと、照れ臭そうに見つめ合った。


「突然すみません…何か変な感じです……。」


みゆきが口元を抑えながら、恥ずかしげに言った。


あやのはニンマリと微笑むと、皆に聞こえないように、みゆきの耳元まで口を持って来て言った。

563 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 20:25:30.05 ID:jzRURZc7O

「小娘風情が…術の邪魔をしよって……」


あやのは老婆のような声でそう言うと再び、みゆきに向き直った…。


「え……どうして…?」


突然の事に訳が分からず、みゆきがあやのの目を見つめる…。


あやのの目は別人のように、冷たい光を宿し、殺意を持った目で見つめ返していた。

567 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 20:33:49.28 ID:jzRURZc7O

そして、乱暴にみゆきの頭を抱き寄せると再び接吻した。


今度の接吻は先程のとは違った…唇が切れ、歯と歯がガチリと合わさりあい、そしてあやのの舌がヒルのように喉に侵入し、呼吸を塞いだ。


「んんっ!…んふっ!」


口を塞がれ、悲鳴もあげられないみゆきは何とか、危機をしらせようと、必死でうなるが、聞こえてはいなかった…。みんな初めての同性同士のキスに夢中なのだ。

569 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 20:44:25.05 ID:jzRURZc7O

まだ色情の呪術が少し残っている……。


みゆきは手であやのの肩を掴むと何とか自分から引き剥がそうとした。
しかし、あやのの手が優しくそれを掴むと、ガッチリと固定されてしまった。


みゆきの意識が段々と朦朧な物になってくる…。


あやのは皆に気付かれないようにスカートを捲ると、パンティから自らの性器を露にした。

572 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 20:50:30.06 ID:jzRURZc7O

あやのに乗り移り、ここで私に児を孕ませようとしている…マズイ…

みゆきは何とかして、この危機を皆にしらせようとした。


あやのがみゆきのスカートに捲り、パンティをずらして湿り気を帯びた性器を露にした。

そして死の接吻をしながら、体を寄せて来る。

そしてあやのの性器が性器の先にヌチャリと音を立てて触れた。

575 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 21:02:29.87 ID:jzRURZc7O

接吻をするあやのの目が血走り、鼻息がふいごのように荒くなる。


みゆきは何とか使える足でテーブルを蹴り上げた。

ガタン、と音がして、テーブルにあった書物が床に落ちた。


皆は接吻を中断し、みゆきの方を向き、ようやく異変に気付いた。


「ちょっと…あやの……どうして…」

578 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 21:08:41.22 ID:jzRURZc7O

「んんっ…ンクッ…んっ…」


塞がれたみゆきの口からあえぎ声が漏れる。


その場にいた皆があやのを掴むと、全員で引き剥がさんと引っ張った。


ようやく、口が離れて、みゆきが咳き込みながら、ソファーから転げ落ちた。


すかさずあやのが皆を振り払い立ち上がる。凄い力だ…。

580 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 21:16:18.94 ID:jzRURZc7O

「ひとつ…ふたつ……フフフ…贄が二つじゃ……」


あやのは老婆のようなしわがれ声でそういうと、自らの顔に手を回し、もう片方の手で顎を持ち上げた。


「これで…贄がみっつ…」


あやのはそう言うと腕に力を込めた。自らの首をヘシ折る気だ。


「駄目…やめてえええ!」

583 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 21:25:06.25 ID:jzRURZc7O

かがみが叫びながら、あやのに飛び付く。


だが手遅れだった。


ゴキゴキと鈍い音がして、あやのの首から皮膚を突き破って頚骨が飛び出した。
あやのの首から鮮血がほとばしり、首をブラブラさせながら、その場にグシャリと倒れこんだ。


そして、天井に三本目の赤い刷毛が刻まれた。

584 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 21:33:42.86 ID:jzRURZc7O

あやのの血が辺りに飛び散り、返り血を浴びたかがみは、目を虚ろにし、その場にヘナリと座り込んでしまった。


濃厚な血の臭いが辺りに漂う…


その場に居た者は、ただ呆然と、あやのの亡骸を見つめていた。

587 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 21:42:47.14 ID:jzRURZc7O

あやのの亡骸にカーペットを被せた一同は、血の臭いに耐えきれず、談話室から食堂へと移動した。


食堂にはまだ仔牛肉のステーキが残っており、冷めて固まっていた。

一同は言葉も出ない様子で、食堂のナプキンを使って返り血を拭うかがみを見つめていた。


「で…どうするの、みゆきさん。どうすれば、儀式を回避出来るの?」

590 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 21:55:58.37 ID:jzRURZc7O

一同は言葉も出ない様子で、食堂のナプキンを使って返り血を拭うかがみを見つめていた。


「で…どうするの、みゆきさん。どうすれば、儀式を回避出来るの?」


口元をハンカチで覆うみゆきに、こなたはたずねた。


「この嵐が…気を浄化してくれます…」

593 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:02:34.57 ID:jzRURZc7O

まだ喉の調子がおかしいのか、かすれた声で途切れ途切れにみゆきが言った。


「50年間溜まりにたまった気を、この嵐が吹き飛ばしてくれるんです……ですから嵐が過ぎれば、伊右衛門の力も無くなり、我々にとって脅威では無くなります…。」


「でも……止む気配はないね…。」


ゆたかが食堂の窓から外を除き込み、呟いた。

594 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:04:13.26 ID:jzRURZc7O

「ゆきちゃん…気分が悪そうだけど、大丈夫…?」


青白い顔をして、椅子に座り、時折咳き込むみゆきに、つかさはたずねた。

無理もない…あんな事をされて平気でいられる人間などそうそういるものではない…。


「ええ…少し…胸が苦しいです…」


軽く咳き込みながらみゆきが言った。

595 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:08:35.78 ID:jzRURZc7O

「つまり……嵐が過ぎるまで、何とか生き残ればいいわけね…」


かがみがあやのの血で真っ赤になったナプキンを床に放り捨てながら言った。


「こなた…つかさ…何か武器を探しに行くわよ…。」


かがみはそう言うと、テーブルに置かれたパン切りナイフを手に取った。


「みゆきはそこで休んでで…ゆたかちゃん、みなみちゃん…みゆきを頼むはね。」

596 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:11:05.96 ID:jzRURZc7O

かがみはそう言うと食堂のドアを乱暴に開けて出ていった。


こなたとつかさは互いに顔を見合わせながら、かがみの後を追った。


みゆきは相変わらずハンカチで口元を押さえながら咳き込んでいた。

599 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:16:13.13 ID:jzRURZc7O

「武器を探すなら物置ね…。」


かがみはそう呟きながら、二階の廊下をズカズカと進んでいく。


そして二階の一番右端にあるお目当ての物置へと辿り着いた。


中は相当カビ臭いと踏んだのか、三人は予め口元を袖で覆いながら、ドアを開けた。

600 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:21:44.17 ID:jzRURZc7O

そこは不思議な世界だった。

天空から照り付ける太陽に三人は思わず、目を手で覆った。


埃にまみれた小汚い物置を想像していた三人は面食らった。

そこは太陽が照り付ける、中庭だった。


狂ったような三味線の音色が鳴り響き、しわがれた笑い声と遊女の楽しげな嬌声が聞こえる。

603 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:24:36.46 ID:jzRURZc7O

「なに…これ…」


思わずつかさが呟いた。


「やれ産めや…やれ産めや…岸猿伊右衛門の稚児を見せるのじゃ…。」


三味線の音色に混じって、不気味なしわがれ声が、監視塔の上から聞こえた。


中庭には白装束を着た何十人もの女性が並べられ、その後ろに、刀を構えた男がそれぞれ佇んでいた。

604 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:26:47.00 ID:jzRURZc7O

女性はみな地面に仰向けに寝て、足を開いている。


そして苦しげにあえぎ、悲鳴を上げていた。


不自然に膨らんだお腹から、その女性は皆妊婦であると推測される。


異常で…狂っていた…何十人もの妊婦が中庭に並べられ、そして一斉に出産させられてるのだ。


それぞれの妊婦の後ろに立つ男達はただじっと、妊婦の出産を見ていた。


そして、妊婦の中の一人が一際大きな声を挙げると、産道から血をほとばしらせながら、赤ん坊の頭をひり出した。

606 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:33:14.92 ID:jzRURZc7O

しかし産まれおちてなお、赤ん坊は泣き声をあげる気配がない。
死産だった…。

「あの女が子を流しおったぞ!切り捨てい!」


監視塔から怒りに震えたしわがれ声が響いた。


その妊婦の後ろに立っていた男は躊躇いもせずに、刀で首を切り落とした。


「やれ産めや……やれ産めや…」


再び三味線の音色に載せて不気味なしわがれ声が辺りにこだまする。

609 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/09(日) 22:39:22.64 ID:jzRURZc7O

その時、辺りに赤ん坊の泣き声が響いた。


一番端にいた妊婦が、胎児を産み、まだへそのおがついている胎児を愛おしそうに、抱き締めていた。


「でかした!ここまで連れて参れ!」


再び監視塔から、しわがれ声が響き、妊婦の後ろに立っていた男が、妊婦の腕から無理矢理胎児を奪い取ると、刀でへそのおを切断した。

637 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 00:41:18.22 ID:XnADEFPaO

「止めて!返して!」


妊婦の悲痛な叫びが聞こえた。


男は足元にすがりつく妊婦を蹴り払うと、胎児を抱えたままハシゴで監視塔を登っていった。

そして、監視塔の一番上にある覗き窓から胎児を手渡した。


暫く、妊婦の悲痛な叫びが聞こえたあと、監視塔から怒鳴り声が聞こえた。


「ならぬ!このような下賎な稚児は岸猿にふさわしゅうない!」

639 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 00:43:43.02 ID:XnADEFPaO

そう言うと、神官の恰好をした伊右衛門は、胎児を監視塔の窓から投げ捨てた。


胎児はまるで人形のように落下し、砂埃を巻き上げて地面に激突して動かなくなった。


「いやああああああ!」


その妊婦は絶叫した。


そして世界が収縮し、辺りが暗くなった。

640 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 00:48:26.80 ID:XnADEFPaO

今目の前に広がっているのはガラクタが積まれた小汚い物置だった。


「今の見た……?」


「うん……。」


気味が悪い幻覚に一同はあっけに取られた…。


「今のが岸猿…伊右衛門…。」


「あんな事を…酷い…」


顔を青くした、つかさが口元を押さえながら呟いた。

641 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 00:50:56.27 ID:XnADEFPaO

「…今やる事やらないと、つかさもあんな風になっちゃうのよ…。」


かがみが淡々とそう言うと、物置へと足を踏み入れた。


食堂で待機している三人はソワソワした様子で、物置に行った三人を待っていた。
以前としてみゆきの顔色は悪く、時折激しく咳き込んでいた。

642 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 00:52:49.53 ID:XnADEFPaO

食堂で待機している三人はソワソワした様子で、物置に行った三人を待っていた。
以前としてみゆきの顔色は悪く、時折激しく咳き込んでいた。


ゆたかとみなみは食堂に置かれていたソファーにみゆきを寝かせてあげると、ナプキンでみゆきの汗を拭った。


「ありがとうございます…ゆたかさん…みなみさん…。」

644 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:00:39.69 ID:XnADEFPaO

みゆきは笑顔で二人に例を言うと再び咳き込んだ。


「…本当に大丈夫…?」


みゆきを姉のように慕っているみなみが心配そうにみゆきの顔を覗き込んだ。


「ええ…大丈夫ですよ……」


そう言うとハンカチを口元にあてて、再び咳き込んだ。

645 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:01:31.16 ID:XnADEFPaO

「ハンカチ、取り替えますね…」


ゆたかはそういうと、自分のハンカチをみゆきの口元にあててあげた。


「本当に…何から何まで…」


「いえいえ…いいんです…」


ゆたかがにっこりと答えた。


「みなみちゃん…このハンカチ洗ってくるから待ってて…。」


「…一人じゃ危ない…私も行く…」

647 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:04:49.57 ID:XnADEFPaO

「でも…みゆきさんが…」


ゆたかが心配そうにみゆきの方を向いた。


「いえ…私なら一人で大丈夫ですから…。」


具合が悪そうにそう答えると、二人を促した。


「そうですか…じゃあ出来るだけ早く戻って来ますね…」


ゆたかがそう言うと、みなみとともに食堂から出ていった。

651 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:11:29.58 ID:XnADEFPaO

みゆきはその様子を眺めてから、軽い咳をして何気なく入口の方を向いた。


濡れたポンチョをはおった人影が其所にはいた。


とっさの事にみゆきは声も出なかった。


「おっぱい…大きいね…」


その人影はズカズカと食堂に入ってくると、脅えるみゆきの前で立ち止まった。

654 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:18:16.12 ID:XnADEFPaO

そして服の上からみゆきの柔らかな乳房をもみしだく…。


「ふえ…ふえええ…」


みゆきが声にもならない悲鳴をあげた。


「ただ殺すだけじゃつまらない…少し…遊ぼうか」

656 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:25:30.55 ID:XnADEFPaO

そういうと男はみゆきに耳打ちをした。


「暫くすれば…二人は戻ってくるだろう……もし…二人に危険を知らせる事が出来れば二人は助けてやる……出来なけりゃ…。」


そう言うと人影はナイフをみゆきの目の前にかざした。


「さぁて…お楽しみといこうか…」

659 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:34:28.44 ID:XnADEFPaO

男はそう言うと、みゆきに接吻をした。


男のうねるような強靭な舌は、みゆきの唇と歯をこじあけ、簡単に口内へと侵入した。
そして自らの口内へとみゆきの舌を吸い入れると、思い切り歯を立てた。


「ングッ…ンンッ…」


みゆきは必死に抵抗したが、男の強大な力の前にはなすすべなど無かった。

660 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:36:43.86 ID:XnADEFPaO

男の歯がみゆきの舌にギリギリと食い込んでいく…。


互いに接吻する口の間から血が滴り落ちた。


そして、ブツリと鈍い音がして、みゆきの舌が食い千切られた。


みゆきは口から血をダラダラと垂らし、体を震わせながらその場に倒れた。

669 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:47:32.66 ID:XnADEFPaO

男はほくそ笑み、みゆきの舌をクチャクチャと咀嚼しながら言い放った。


「せいぜい頑張れ」


ゆたかとみなみはかろうじて水が出る浴室の洗面所でハンカチを洗っていた。

672 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 01:56:39.31 ID:XnADEFPaO

「さっきはいきなりごめんね…」


ゆたかがハンカチを洗いながら、後ろに立っているみなみに言った。

「…あれは不測の事態だったから…別に構わない…」


静かにみなみは言った…。


「…私の方こそ…ゆたかに嫌な思いをさせてしまって…」

677 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 02:06:57.79 ID:XnADEFPaO

「そんな事ないよ…!」


ゆたかがみなみの方を振り向く。

みなみはゆたかから目をそらし、顔を赤らめながら下を向いて、照れ臭そうに言った。


「…私はただ…ゆたかが…」


「私は嬉しかったよ…嬉しかった…」


今度はゆたかが顔を赤らめ、目に涙を溜めた。

680 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 02:15:11.63 ID:XnADEFPaO

「私のせいで…皆を巻き込んじゃって…私…みなみちゃんに嫌われちゃったと思ってそれで…」


みなみはハッとしてゆたかの方を向き、そして呟いた。


「私も…嬉しかった…ゆたかと一つになれて…嬉しかった…。」


「みなみちゃん…」


みなみはゆたかを抱き寄せ、耳元で囁いた。


「……大好き…」

687 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 02:28:42.82 ID:XnADEFPaO

「私もだよ…みなみちゃん…。」


二人は互いに見つめあうとゆっくりと唇を触れ合わせた。


先程の激しい接吻ではなく、うぶな生娘同士の不器用なフレンチキスだ。


二人は暫くそのまま淡い一時を楽しんだ。


「行こ…みゆき先輩が待ってる…」


みなみは顔を赤らめながらうなづくと、ゆたかの手を握り締め、洗面所を後にした…。


食堂で何が待っているのかも知らずに…。

689 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 02:35:41.32 ID:XnADEFPaO

「みゆき先輩…ハンカチを洗って来ました。」


ゆたかは食堂の扉を開けながら言った。


肝心のみゆきはこちらに背を向けて椅子に座っていた。


ほのかに鉄錆のような臭いが漂う。

食堂の様子がおかしい。


ゆたかは何か薄ら寒い物を感じた。


「みゆき先輩…?」

694 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 02:44:03.64 ID:XnADEFPaO

ゆたかはみゆきに呼び掛けた。


返事はない。


ゆたかはゆっくりとみゆきに近づいていった。


「…大丈夫ですか…?」

そう声をかけながら、後ろからみゆきの顔を覗き込む。

みゆきはうつ向き、そして服を血だらけにしていた。

695 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 02:50:26.22 ID:XnADEFPaO

「みゆき先輩!!みなみちゃん…みゆき先輩が…」


食堂の入り口に立っていたみなみが慌ててみゆきに駆け寄る。


みゆきはゆっくりと顔を上げた。


口から血の筋がよだれのように流れ出て、服を汚していたのだ。


「…そんな…」


みなみが絶句した。

733 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 04:25:35.30 ID:XnADEFPaO

みゆきが何かを訴えかけるかのように口を開いた。


その途端口からドバリと吐冩物のように血が流れ出た。


「どうしよう…どうしよう…」


ゆたかが口元を手でおさえながらうろたえた。


「あ……あ……」


みゆきが口から血を流しながら、必死で何かを伝えようとしていた。

737 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 04:34:05.12 ID:XnADEFPaO

ゆたかが必死になってみゆきの言葉を聞き取ろうとした。


「あ…あ…へて…」


みゆきがみなみの後ろを恐怖で見開いた目で見ながら、あえいでいる…。


次の瞬間、みなみの体がビクリとこわばった。

血が飛び散り、脅えるみゆきと、何が起きたか分からず、キョトンとしているゆたかの顔に赤い斑点のように飛沫した。

そしてみなみの体がゆっくりと持ち上がっていく。

845 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 19:21:54.81 ID:XnADEFPaO

「うあっ…はっ…ゴホッ…」


苦しげな声がみなみの口から漏れた。


持ち上がり、宙に浮いたみなみの胸から銀色の何かが生えていた。

それはナイフの刃だった。


みなみの背後から忍び寄った人影が、みなみの肩口にナイフを突き立て、宙に刺し上げたのだ。


「可愛い子だ…ちと胸が寂しいがな…」

848 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 19:29:43.18 ID:XnADEFPaO

人影はそう言いながら、みなみの胸の辺りに手を這わせた。


みゆきは血で濡れた口をわなわなと震わせ、ゆたかは涙を流しながら顔を青ざめさせていた。


「…ゆたか…みゆきさん…逃げて…」


みなみは苦しげにそうつぶやいた。


人影はみなみにナイフを突き立てながら、優しく抱き寄せた。

850 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 19:37:34.98 ID:XnADEFPaO

「綺麗な肌だ…美しい…」


そう言いながら、みなみの頬を舐め上げた。


「…やだ…みなみちゃん…」


ゆたかの頬を涙が伝った。


「ゆたか…逃げて…。」


みなみが声を引き絞る。


ゆたか一人と手負いのみゆきではどうにもならない…ゆたかは助けを呼ぼうと声を振り絞った。

853 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 19:44:52.99 ID:XnADEFPaO

「お姉ちゃ…ングッ…」


途端に血まみれの手が、ゆたかの口を塞ぐ。


「シーッ…こいつがどうなってもいいのかな…?」


そう言うと男はナイフをみなみの体の中でえぐるように少し動かした。


「ああっ!」


みなみが苦悶の表情を浮かべ、口から血を吐き出した。

858 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 19:49:50.42 ID:XnADEFPaO

男は冷たい目線でゆたかを眺めると、命じた。


「脱げ…。」


「え…?」


ゆたかは戸惑いの表情を浮かべ、うつ向いた。


「もう言わん…脱げ」


男は語気をあらげた。そしてみなみの傷口をえぐる。

859 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 19:55:55.21 ID:XnADEFPaO

みなみが再び悲鳴を上げた。


「ひっく…えぐ……。」


ゆたかは涙を流し、しゃくりあげながら白いワンピースのボタンを外していく…。


「ゆたか…駄目…逃げて…」


みなみがゴボゴホと血の泡を吐きながら、苦しげに言った。


「大丈夫だよ、みなみちゃん…助けてあげるから…。」


ゆたかはにっこりと微笑むと、目頭から涙が落ちた。
そしてワンピースを脱ぎ終えて、キャミソール一枚とスカートだけになった。

865 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 20:04:13.57 ID:XnADEFPaO

「捲り上げて…おっぱいを見せて…。」


男がピチャピチャとみなみの喉元を舐めながら命じた。


ゆたかは顔を歪めて一瞬たじろいだが、すぐに言われた通りに腹の辺りまで捲ってみせた。


「ダメダメ…ちゃぁんと全部捲りあげなきゃ…。」


男は蜜を垂らすようないやらしいこえでそう呟くと舌なめずりをした。

867 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 20:16:50.26 ID:XnADEFPaO

「ンンッ…クッ…」


ゆたかは恥辱に顔を赤らめながらも、キャミソールを上まで捲りあげた。

小柄で、華奢な、膨らみかけた乳房が顔をだした。


「じゃあ次は自分で乳首をたたせてみようか…。」


再び男から耐えがたいまでの屈辱を突き付けられる。


ゆたかは素直に目をつむると、片方の手でキャミソールを捲りながら、もう片方の手で自分の乳首を摘み、そしてしごいた。

869 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 20:22:12.03 ID:XnADEFPaO

ゆたかの乳首は敏感にそれに反応し、みるみるうちに固くなっていった。


「…いい具合だな。じゃあ…次はこれをしゃぶってもらおうか…」


男はそう言うと、ズボンのファスナーを開けて逸物をボロリと出した。


その逸物は誰のものかも分からない血で染まり、赤黒く変色していた。


「さあ…早く…」

874 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 20:33:13.29 ID:XnADEFPaO

男がせかす。


ゆたかは、恐々としながらゆっくりと男に近づき、ひざま付いた。

そして顔をダラリと垂れている男の逸物へと近付けていく。


途端に生臭い血と、スルメのような臭い…そして凄まじい腐敗臭が一気に漂ってきた。


「ウエッ…ゴホッゴホッ…」

882 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 20:41:42.74 ID:XnADEFPaO

ゆたかは思わずえづき、咳き込んだ。


食堂から胃液と胆汁がにじみ出て、口の中が苦酸っぱくなるのを感じた。


「さあ…早くしろ…殺しちゃうよ…。」


男はそういうとみなみの耳に噛みつき、耳たぶをかじり取った。


「あああああ!ゆたか…いいなりになったら駄目…!」


みなみが悲鳴を上げながらゆたかに言った。

892 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 20:53:48.42 ID:XnADEFPaO

しかしゆたかは、男の逸物を口に含むと、腐敗臭と血にまみれたそれを舐め回した。


強烈な吐気がゆたかを襲った。


しかし…ここで吐いて男の機嫌を損ねたらゆたかを含め、みゆきやみなみがどうなるか分かったものではない。


ゆたかはそれを何とかこらえると、血の味がするそれを必死でしゃぶった。

17 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 21:48:51.84 ID:XnADEFPaO

強烈な吐気がゆたかを襲った。


しかし…ここで吐いて男の機嫌を損ねたらゆたかを含め、みゆきやみなみがどうなるか分かったものではない。


ゆたかはそれを何とかこらえると、血の味がするそれを必死でしゃぶった。


「あんまり気持ち良くないなぁ…こう…奥までいれなきゃ…」


男はそういうと、ゆたかの頭を掴み、ゆたかの口に腰を突き出した。


ゆたかの口をゆうに通り過ぎ、腐敗臭のする逸物が喉の奥まで入り込んできた。


もう限界だった。


ゆたかは男の逸物から頭を離すと、その場に嘔吐した。

19 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/10(月) 21:50:17.97 ID:XnADEFPaO

黄色い胃液と胆汁が吐き出され、床を汚す。


「あーあー…床を汚しちゃって…悪い子だな…おしおきしなきゃ…」


男はそういうと、瀕死のみなみを投げ捨て、床に手を付いて咳き込むゆたかを思い切り蹴り上げた。


「キャッ!」

85 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 02:23:19.41 ID:HBdKZpoeO

短い悲鳴を上げて、ゆたかが床に倒れ込んだ。

「よつんばいになれ…早く…。」


男がゆたかに冷たくそう言い放った。


「ううっ…えぐっ…ゴホッ…」


まだ余韻を残してるのか、ゆたかは苦しそうに起き上がった。

87 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 02:28:47.03 ID:HBdKZpoeO

「グズグスするなよ、お嬢ちゃん…このまま喉をかっ切ってもいいんだぞ。」


男は後ろからゆたかの喉元にナイフをそえた。


ゆたかは苦しげに咳き込みながらも、言う通りによつんばいになった。


「よし…いい子だ…」


男はそう言うと、ゆたかのスカートを捲り上げ、純白の簡素なパンツの上から尻を撫でまわした。

89 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 02:35:26.82 ID:HBdKZpoeO

「止め…て…ゆたかに…手を…出さないで…」


みなみが男のズボンを掴むとかすれた声で言った。


「お前は後で可愛がってやる…少し黙ってろ。」


男はそう言うと、みなみの胸の傷のあたりを強く殴り付けた。


「ガハッ…ああ…」


みなみは血を吐くと、胸を押さえて床に倒れ、もがき苦しんだ。

90 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 02:38:01.75 ID:HBdKZpoeO

「もう止めて…言う通りに…するから…だから…止めて。」


よつんばいになりながらゆたかが言った。


「…良い子だ。」


男は尻を撫で回すのを止めると…パンツに手をかけて、膝の辺りまで一気に引き下ろした。


…赤みを帯びた、柔らかそうなゆたかの尻が露になる。

95 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 02:55:48.39 ID:HBdKZpoeO

「すぐすむ…じっとしていろ……。」


そして男はそそりたつ逸物をゆたかの尻に近付けると、性器の入り口をつついた。


「…ンッ…」


逸物が触れる度にゆたかの口から甘い吐息が漏れた。

その反応に男はほくそ笑んだ。


男はフウと息をつくと、逸物を思い切り突き入れるべく、腰に力を入れた。

97 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 03:03:35.95 ID:HBdKZpoeO

その刹那、みゆきが口から血を垂らしながら立ち上がるとゆたかを犯さんとする男に思い切り体当たりをした。


みゆきと男は共に床に投げ出され、倒れ込んだ。


「畜生!…小娘が!」


男はみゆきよりも早く立ち上がると、まだ床に倒れていたみゆきの腹に何度も蹴りを入れた。


そして、みゆきの髪の毛を掴むと喉元を露にした。

100 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 03:11:38.66 ID:HBdKZpoeO

「我に逆らえばどうなるか…その目でよく見てろ!」


男はそういうと、ぐったりとするみゆきの喉にナイフを添えた。


「…止めて…止めて…」


苦しげに咳き込むみなみが懇願するように繰り返し呟いた。


だが無駄だった。

102 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 03:20:30.19 ID:HBdKZpoeO

男はそのままナイフを横に引いた。


みゆきの喉は文字通り真一文字に切り裂かれ、血がほとばしった。


男はみゆきの髪を横に払って床に打ち捨てると、今度はゆたかの髪を掴み、同じように喉元を露にさせた。


「もういい……殺してから種付けしてくれる…。」


そういうと男は再びゆたかの喉元にナイフをそえた。


「もう…止めて…いや…」

108 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 03:31:35.17 ID:HBdKZpoeO

みなみは涙を流し、そして目を瞑った。

ゆたかも、涙を流し、半ば諦めたかのように静かに目を閉じた。

せっかく…せっかく…みなみちゃんと理解しあえると思ったのに…死んじゃうのか…何かやだなぁ…


いままさに死に直面しているゆたかには、そんな事しか考えられなかった。

112 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 03:39:32.29 ID:HBdKZpoeO

そして男は腕に力を込めて、ゆたかの喉に刃を押し当て、引き裂かんとした。


唐突に破裂音がした…ゆたかにはそれが幻聴にしか思えなかった。


「ゆーちゃん!」


遥か彼方にこなたの声が聞こえた。
そんな筈はない…私は死ぬのだから…。

116 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 03:48:17.50 ID:HBdKZpoeO

若干の疑問を残しながら、ゆたかはゆっくりと目を開いた。


目の前には、こなたの姿があった。


「え…?お姉ちゃん…どうして…。」


ゆたかは至極驚いた様子でこなたにたずねた。


「助けに来たんだよ…それに武器も手に入ったし…。」


そういうとこなたはかがみの方をあごてしゃくった。

119 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 03:57:19.43 ID:HBdKZpoeO

そこでは猟銃を構えたかがみが、腹を押さえて苦しむ男に猟銃をつきつけていた。


つかさは血を流して苦しむみなみとみゆきを介抱していた。


ゆたかは思わずこなたに抱きついて泣き出した。


「お姉ちゃん…よかった…ありがとう…。」


「…遅くなってごめんね…。」


こなたはゆたかに謝りながら、頭を撫でた。


「アンタ…一体どういうつもりよ!みんなを殺して…許さない!絶対に許さない!」


猟銃を油断なく構えながらかがみが怒鳴った。


男は腹を押さえて、口から血を吐きながら、クツクツと笑った。

123 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 04:07:00.43 ID:HBdKZpoeO

「我を殺そうとしても無駄じゃ…あきらめい…。」


時折咳き込みながら男が言った。


男が不敵に笑うと、吐き捨てるように言った。


「これで…贄がよっつ……あといつつで…完成じゃ…。」


男が言えたのはここまでだった。かがみは素早く引き金を引くと、男の頭を吹き飛ばした。

128 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 04:16:21.71 ID:HBdKZpoeO

「ゆきちゃん…しっかりして…。」


つかさがみゆきの喉の傷を押さえて止血を試みた。
だが、血があとからあとから出てきて止まらない…。


誰の目から見てもみゆきが助からないのは目に見えていた。


みゆきは無言のまま震える手で、つかさの手を持つと、もう片方の握っていた手をつかさの手の上に乗せた。


そして何かを手渡した。

131 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 04:20:30.43 ID:HBdKZpoeO

それは黄色いタグが付いたキーだった。
タグにはクルーザーとマジックでかかれている。


恐らく体当たりした際に、立木からくすねとったのだろう…。


「ゆきちゃん、すごい!…これで一緒に逃げよう…。」


だがみゆきは優しく微笑むと、首を横に振った。

161 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 05:30:12.38 ID:HBdKZpoeO

そして静かに目を閉じると、そのまま息を引き取った。


「…ゆきちゃん…」


つかさが悲しげに呟いた。


「みなみん…立てる…?」


こなたが手負いのみなみを何とか起こしてやると、椅子に座らせた。

166 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 05:39:59.89 ID:HBdKZpoeO

みなみは苦しげに咳き込んだ。


「大丈夫…。」


みなみはそこまで言うと黙り込んでしまった。


無理もない…姉のように慕っていたみゆきが今しがたしんでしまったのだ。


かがみはため息をつくと椅子にドスンと座った。

252 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 19:17:13.40 ID:HBdKZpoeO

かがみはため息をつくと椅子にドスンと座った。


「つかさ…一本いい…?」


「…ふえ…?」

突然の事につかさはおののいた。

254 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 19:22:40.75 ID:HBdKZpoeO

「私はアンタの双子の姉よ…知ってるんだから…オーバーオールの右ポケット…マルボロのメンソール…」


つかさが右ポケットに手を入れると案の定、マルボロのメンソールが出てきた。

つかさはかがみに素直にそれを手渡すと、火を付けてやった。


かがみは煙草をうまそうにふかすと、咳き込んだ。


「アンタもどう?」


かがみがこなたの方を向いて言った。


こなたはいらないという風に首を振った。

258 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 19:30:50.01 ID:HBdKZpoeO

つかさはクルーザーのキーをポケットにしまった。


これでこの島から脱出が出来る。


だか五人には問題があった。


まずは嵐。これが止まない事には、船つき場だろうがどこだろうが、行けた物ではない…そして件のクルーザーは本当にあるのだろうか…もしかしたらないのかもしれない…。


そして、立木が最後に言い放ったあの言葉…あやのの先例が余計に説得力と現実味を感じさせたあの言葉…

260 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 19:42:37.20 ID:HBdKZpoeO

もしあの言葉の通りなら、岸猿はまだ生きており、再び狂った殺人劇を繰り広げる事だろう…。


「とりあえず…ゆきちゃん…このままじゃかわいそうだから…談話室まで運んでくるね…」


つかさはそう言うと、みゆきの亡骸を苦労して持ち上げ、食堂から出ていった。


「あたしも…手伝ってくる…お姉ちゃんはみなみちゃんを診てて…。」


ゆたかがそう言うと、つかさの後に続き、食堂から出ていった。

264 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 19:53:40.93 ID:HBdKZpoeO

かがみは吸い終えたマルボロを足元に落とすと、それを踏み消した。


辺りに重い沈黙が流れた。


外は依然として嵐がゴウゴウと音を立てて辺り一帯の物を全てなぎはらわんと暴れまわっている。


「ねぇ…こなた…さっきの事なんだけど…。」


傷のせいで気を失って寝込んでいるみなみをソファーに寝かせているこなたに、かがみは言った。

266 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 20:02:30.27 ID:HBdKZpoeO

「かがみ…どうしたの?」


「いや…さっきのキスって…あれ本気じゃないわよね…。」


頭を人差し指で掻きながら照れ臭そうに、かがみが言った。


「まあ、確かにアンタとは一度…ああなっちゃった事もあったけどね…。」


かがみは、つい一月前の出来事を思い出し、赤面した。

270 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 20:08:12.66 ID:HBdKZpoeO

その時とは、学園祭の打ち上げの時だった…。

まさか打ち上げで酒が入るとは思わなかったかがみは相当酔いが回り、学校の屋上で一人酔いを醒ましていたときだった。


突然こなたがやって来て、かがみにキスをしたのだ…。


そして、こなたは無理矢理かがみを押し倒すと…。


こんな時にこんな事を考えてしまう自分に嫌気をさしながらも、かがみはその事が頭からこびりついて離れなかった。

273 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 20:11:17.85 ID:HBdKZpoeO

「いや…あれは…場の成り行きというか…。」


こなたも赤面し、うつ向いた。


「…アンタ…責任…とりなさいよね…。」


かがみがプイとソッポを向いて言った。


「分かってる…必ず生きて帰ろ…そんで、続き…しようよ…。」

276 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 20:14:23.56 ID:HBdKZpoeO

「……………うん…。」


二人は互いにソッポを向きながら言い合った。


「ゆきちゃん…こんな事しかしてあげられなくてごめんね…」


ゆたかと二人でみゆきの亡骸を持ちながら、つかさが呟いた。

279 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 20:19:52.31 ID:HBdKZpoeO

「後で必ず弔ってあげますから…。」


二人は談話室の扉を開けると、あやのの亡骸が目に飛び込んで来た。


カーペットが捲られ、ズボンとパンツが一緒くたにずり下げられて、足首で引っかかっていた。


太ももの辺りには、白濁した粘液がポタポタと付着している。

281 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 20:37:27.12 ID:HBdKZpoeO

死後何者かに死姦されたのは明らかだった。


「…酷い…」


ゆたかが思わず呟いた。


つかさはみゆきの亡骸を床に下ろすと、太ももの粘液を拭ってやり、ズボンとパンツをはかせてやった。

既に死後硬直が始まっている死体にズボンをはかせるのは難儀だったし、いくら友達だったとしても気味が悪かった。

282 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 20:40:44.77 ID:HBdKZpoeO

そして再びカーペットをかけてやった。


そして、みゆきをあやのの隣に寝かせてあげた。


「ゆきちゃん…またね…」


みゆきにもカーペットを被せると、つかさは立ち上がり、ゆたかとともに談話室を後にしようとした。

283 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 20:47:47.10 ID:HBdKZpoeO

その時、背後からゴソリと音がした。

「全ては岸猿家のために…」

背後から物音とともにくぐもった老婆のしわがれ声がした。

二人は背筋を凍らせ、そして振り返った。


カーペットが盛り上がり、佇んでいる…。

288 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 20:57:14.72 ID:HBdKZpoeO

どちらかの死体が半身を起こし、カーペットを盛り上げている…。


あり得ない…あやのは頚骨が完全に折れ、首から飛び出しているし、みゆきは骨の一部が露出するほど喉を切り裂かれているのだ…どちらも今更息を吹き返すなどあり得ない事だ。


「…うそ……」


恐慌をきたし、呆然と佇むゆたかが思わず漏らした。

290 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 21:00:50.31 ID:HBdKZpoeO

不意にカーペットがずり下がり、半身が露になる…。


みゆきが半身を起こし、こうべを垂れていた。


「…ゆきちゃん……?」


つかさか怪訝そうな面持ちでたずねた。


みゆきはこうべを垂れたまま、腕をあげでつかさとゆたかを指差した。

294 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 21:09:34.83 ID:HBdKZpoeO

「贄が……いつつ…むっつ…うまそうな贄じゃ…特に紫色の髪をした贄…股から血を垂らしておる…ここまで臭ってくるわ…」


みゆきがしわがれた声でゆっくりと言った。


つかさが子宮の辺りをギュッと押さえた。


「…いや…ゆきちゃん…」


つかさが足を震わせて後退る。

296 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 21:19:24.25 ID:HBdKZpoeO

みゆきは床に手を付くと、よつんばいのまま、つかさ達の方へゆっくりと近づいて来た。


「隠れても無駄じゃ…血が臭ってくるわ…。」


唐突に、こうべを垂れていたみゆきが頭を上げた。


舌が、紫色に変色した舌が、爬虫類か何かのように口から飛び出し、シュルシュルと獲物を探すようにうごめいていた。

299 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 21:28:03.17 ID:HBdKZpoeO

目には正気が感じられず、虚ろな眼窩に妖しい光だけが恍々と輝いている。


もはやその動きに生前のみゆきの面影は無かった…いや…人間だった面影すら感じられない…。


あの時…あやのと接吻をしたあの時から既に、みゆきの体内で何かが起きていたとしか思えなかった…。


二人はただただ、突然の脅威から後退り、逃げる他なかった…。

301 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 21:35:48.85 ID:HBdKZpoeO

ゆたかとつかさは必死で廊下を駆け、二階へと登った。


後ろからドタドタとそうぞうしい足音を響かせながら、みゆきが追いかけてきている。


「いやだ!ゆきちゃん!ついて来ないで!」


つかさが悲鳴のような声を上げた。


二人は階段を登りきると、廊下を夢中で走った…。

307 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 21:46:59.02 ID:HBdKZpoeO

20もの客室のドアが並ぶ廊下を通り過ぎ、書斎の戸を開けると、そこに飛び込んで、スライド式の鍵を締めた。


二人が飛び込み、鍵を掛けた瞬間、ドアに何かがぶちあたり、大きな音をたてて揺れた。


「開けろ!逃げられんぞ!諦めろ!」


ドアの向こうから、しわがれた怒鳴り声が聞こえて来た。


そしてドアをひっきりなしに叩いていた。


「止めて!ゆきちゃん!来ないで!

311 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 21:54:14.23 ID:HBdKZpoeO

つかさはドアが破られないように必死で押さえながら、言った。


後ろではゆたかが大層ショックを受けたように、顔を押さえてしゃがみこみ、泣いていた。


暫く、ドアを叩く音と、しわがれた怒鳴り声が辺りをこだました。


そして、唐突にドアを叩く音が止んだ。

312 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 22:00:16.85 ID:HBdKZpoeO

つかさはキョトンとして、ドアに聞耳を立てた。


ドアの向こうから、足音が聞こえ、それが徐々に遠ざかって行った。


諦めてくれたのだろうか…


つかさは肩を撫でおろすと、その場にしゃがみ込んだ。


「ゆたかちゃん…行ったみたい…もう大丈夫だよ…」

320 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 22:12:02.28 ID:HBdKZpoeO

そう言うと、つかさはゆたかの頭を撫でてあげた。


「みゆき先輩…あんなになって……」

ゆたかが顔を押さえながら、呟いた。

かりにかがみ達の所に行ったとしても向こうには物置から調達した銃がある…。


つかさは再びドアに耳を当て、近くに潜んでいないかどうかを確かめた。
何の物音もしない…。

323 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 22:18:03.40 ID:HBdKZpoeO

試しに、鍵を開け、ドアの隙間から廊下を覗こうとゆっくりとノブを回し、ドアを開けた。


そしてドアの僅かな隙間から廊下を見てみる…。


ドアが並んだ薄暗い廊下には物陰一つ無かった。


「ゆたかちゃん…行こ…」


つかさはそう言いながら、部屋の奥に立つゆたかの方を向いた。

325 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 22:27:02.29 ID:HBdKZpoeO

ゆたかの背後の窓に、何かが張り付いていた。

つかさは恐怖で見開いた目で、窓を凝視した。


窓にはみゆきの青白い顔がベタリと張り付き、こちらの様子を伺うかのように目をギョロリと向けている…。


「え…つかさ先輩…どうしたんですか…。」


ゆたかがそれに気づいて居ないのだろうか、怪訝そうな面持ちでつかさの顔をのぞきこんでいる。

330 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 22:36:40.46 ID:HBdKZpoeO

つかさが悲鳴をあげようとしたその刹那、窓を砕いて侵入してきたみゆきにゆたかは押し倒された。

「…贄じゃ…贄じゃ…」


みゆきはそう呟くと、ゆたかの服を掴み、引き裂いた。


途端にゆたかが半裸に近い格好になった。


ゆたかの口から引き絞るような悲鳴が上がるが、大きく開いた口に、みゆきは自分の口を重ねた。

332 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 22:42:18.30 ID:HBdKZpoeO

そして、自らがされたようにゆたかの舌を噛み千切らんと歯を立てた。


ゆたかの悲鳴はコボコボと血を吐く音に変化した。


つかさは腰が抜けたように座り込み、ゆたかが生きたままなぶり殺される様子を見ているしかなかった。


みゆきはゆたかの舌をクチャクチャと咀嚼し、味わうと、今度は小柄な乳房に口をつけ、クリクリとした可愛い乳首を食い千切った

340 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 22:50:27.67 ID:HBdKZpoeO

そして、腹を切り開くと、内臓をグチャグチャ音をたてながら、むさぼり始めた。


ゆたかの谷底に落ちて行くような長く細い悲鳴が途切れる事は無かった。


内臓を食い荒らされたからなのか、はたまた、精一杯の悲鳴を上げているからなのか、ゆたかは今まで聞いたことがないような大きな音でおならをした。


それを聞いたみゆきは、ゆたかの内臓から口を離すと、ケタケタと笑い始めた。


つかさはそれを青ざめた顔で震えながら見つめているしかなかった。

348 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 23:04:57.22 ID:HBdKZpoeO

「ンッ…ンフッ…チュク…」


かがみとこなたは椅子にすわり、互いの唇をむさぼりあっていた。
互いに抱き合い、そして互いの舌を絡ませ、味わう…。

命の危機にさらされ、子孫を残すために性欲が増強したのか、まだ色情の呪術の効果が残っているのか、
はたまたこの狂った状況のせいで互いの理性のたがが外れたのかもしれない…。

354 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 23:14:04.36 ID:HBdKZpoeO

だが二人にはそんな事はどうでも良かった…。


もしかしたら…次は自分が死体になるかもしれない…


二人はこの時間を永遠の物にしたかった…。


かがみが椅子に座り、こなたがそれに跨るようにして、対面し、そして熱い吐息を吐き出しながら接吻を繰り返す。


もしかしたら、互いに出会った時には既に惹かれ合い、このような状況になる事は必然だったのかもしれない。

357 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 23:22:16.43 ID:HBdKZpoeO

二人は微笑みあい、この時間が永遠に続けばいいと本気で思った。


その時であった…二階からガラスが割れる音が響き、つづいてくぐもった悲鳴が聞こえてきた。


ゆたかとつかさの身に何かがあったのだろうか…。


かがみはとっさに古ぼけて、埃がつもった猟銃を手に取ると、身構えた。


「こなた…みなみちゃんを頼むわね…」

360 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 23:27:34.24 ID:HBdKZpoeO

そう言うと、こなたから体を離し、食堂から出ていった…。


こなたは寂しげにかがみの背中を見送ると、ソファーで気を失っているみなみを見つめた。


顔を赤くし、額に玉のような汗を滲ませ、そして肩で息をしているみなみも、そう長くはもたないだろう事は、こなたでも一目で分かった。

366 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 23:37:47.68 ID:HBdKZpoeO

こなたに在らぬ加虐心が芽生える…。


肩で息をし、熱を出し、今にも劇症の発作をおこしそうな、緑色の髪と綺麗で純粋な紺碧の瞳をした少女を前にこなたは妄想の世界へと旅立つ。


簡単な事だ。手間は要らない。


この弱った少女の胸に膝を載せ、動けなくしてから、ゆっくりと口と鼻に手を添えて呼吸を止める。


空気を求めてあえぐ少女の瞳はジッとこなたの水色の瞳を見つめる。

372 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 23:44:07.52 ID:HBdKZpoeO

そこには善悪の区別などという生易しいものは介在しない。


ただただ加虐と苦痛のみが支配している…。


この少女を前に…。


「…泉先輩…?」


不意に声をかけられ、こなたはギョッとした。


みなみが苦しげに呼吸をしながらこちらを怪訝そうに眺めていた。

373 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 23:45:59.71 ID:HBdKZpoeO

「んにゃ?…どうしたの…みなみん…。」


平静を装い、こなたがたずねた。


「…ゆたかは…?」


「みゆきさんを談話室まで運びに行ったんだよ…多分すぐ戻ってくるよ。」


こなたはしゃがみこむと、みなみの頭を撫でた。

377 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 23:51:22.86 ID:HBdKZpoeO

「さっき…悲鳴がきこえた…ゆたかの…」


みなみは途切れ途切れにそう言うと、苦しげに咳き込んだ。


「ゆたかが…死んだら……私…どうしたら…」


みなみは目に涙を溜めてそういうと、クズグズと鼻をすすり、泣き始めた。


「心配ないよ……さっきかがみんが様子をみにいったから…きっと無事だよ…」


こなたは優しくそう言うと、みなみの額に口付けをした。

381 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/11(火) 23:58:48.93 ID:HBdKZpoeO

かがみは油断なく、猟銃を構えながら、一階の薄暗い廊下を進んで行った。

依然として、小さな悲鳴が二階から聞こえて来ている。


早くいかなければ…。


かがみは歩を早めると、談話室の前に差し掛かった。
そして異変に気付いた。

本来ならば二つの亡骸が、カーペットを被って横臥しているはずだった…
しかし、談話室にあるのはペタリとしたカーペットが一枚と見えない刷毛で描かれた四本の赤い線…。

387 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 00:10:14.31 ID:obGbfp3mO

二人の死体が忽然と姿を消したのだ。


つかさとゆたかちゃんが死体を動かしたにしても二人合わせて80キロ近くはあるであろう亡骸を、こんな短時間で理由もなく、動かすのはいささか不自然であり得なかった。


と、すると、考えられる事は一つ…


二人の死体がゾンビのように勝手に動き出し、何処かをさまよっているのか…あるいは二階でつかさとゆたかちゃんに危機を及ぼしているのか…。

387 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 00:10:14.31 ID:obGbfp3mO

二人の死体が忽然と姿を消したのだ。


つかさとゆたかちゃんが死体を動かしたにしても二人合わせて80キロ近くはあるであろう亡骸を、こんな短時間で理由もなく、動かすのはいささか不自然であり得なかった。


と、すると、考えられる事は一つ…


二人の死体がゾンビのように勝手に動き出し、何処かをさまよっているのか…あるいは二階でつかさとゆたかちゃんに危機を及ぼしているのか…。

391 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 00:25:13.34 ID:obGbfp3mO

「ああっ…うあっ!」


かがみはビクリと体を反応させると、震える手で猟銃を構えて、あやのに狙いをつけた。


「あらあら…友達を撃つ気なの…?」


口から血の飛沫を飛ばしながら、他人事のように淡々とあやのが言った。


「あなたはいつもそう…そうやって心に障壁を築いている…。」

395 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 00:30:27.71 ID:obGbfp3mO

そう言いながら、フラフラとした足取りであやのがかがみに近づいていく…その度に首が危なげにブラブラと揺れ、今にも千切れそうになる…。


「アンタ…あやのの体を一体どうするのよ…」


かがみが油断なく猟銃を向けながらたずねた。


「私の体って…私は私よ…?」


そうゆっくりと呟きながらフラフラとこちらに歩み寄って来る。

398 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 00:35:36.84 ID:obGbfp3mO

かがみは背中に冷たい汗をかきながら、後退った。


あやのは危うい足取りで廊下を歩いて来ると、花瓶を置いたテーブルに足をひっかけて、盛大に転んだ。


ブラブラした首がグシャリと打ちっぱなしのコンクリートの床にぶち当たり、そこから脳が露出した。
さながらゾンビ映画を思わせる光景だ…

452 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 03:04:44.11 ID:obGbfp3mO

もう耐えきれなかった。


転んでなお、小さく笑いながらこちらにはいずってくるあやのを後にし、かがみは二階へと階段を登っていった。


二階へと階段をかけ登り、そして悲鳴が聞こえる一番端の書斎へと駆けた。


入り口のドアが少しだけ開き、中からくぐもったうめきと、泥が詰まったバケツを手でこねくりまわすような不快な音が響いて来ている。

455 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 03:10:27.11 ID:obGbfp3mO

かがみは警戒しながら、書斎のドアへと近付き、少し開いた隙間から、中をチラリと覗き込んだ…。


途端に血生臭いにおいが鼻をつき、グロテスクな光景が広がっていた。


口から血の泡を吐いたゆたかが、粉々に砕け、風雨が吹き込む窓の近くで、先程身を呈して自分を助けてくれたみゆきに、内臓をむさぼられ、小さいうめきと悲鳴をあげていたのだ…。

459 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 03:17:05.57 ID:obGbfp3mO

そしてドアの近くにはしゃがみ込み、失禁で床を濡らしているつかさが腰が抜けたように、ただただその光景をながめていた。


「…ゆたかちゃん……」


かがみは思わず呟いた。


「…お姉ちゃん…ゆたかちゃんを助けてあげて…」


つかさはかがみに気付くと懇願するように言った。

465 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 03:29:05.51 ID:obGbfp3mO

しかし半分肉塊と成り果てた少女は既に手遅れだった…。


「行くわよ…ここから逃げるの…」


かがみはそう言うと、つかさの手を掴み、床から立ち上がらせた。

ポタポタと、股間から失禁の尿を滴らせるつかさの手を引くと、地獄の光景と呼んでも差し支えない書斎を後にした。

471 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 03:39:38.51 ID:obGbfp3mO

「し…死なせて…」


書斎を後にし、廊下を進むかがみ達の後ろから非難がましい、ひきしぼるような声が飛んで来た。


ゆたかが苦しみ、死を懇願していたのだ…。


やめて…聞きたくない…


かがみは耳を塞ぐように、つかさをつれて二階の廊下を走り去っていった。

475 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 03:49:32.87 ID:obGbfp3mO

「どうやら助けはなかったようじゃな…」


内臓を食われて、虫の息の少女にみゆきはいやらしい声で言った。
そして、大きくえぐれた傷口に手を突き込む。


「…あああ…」


ゆたかが小さく苦痛のあえぎを漏らした。

そして、みゆきは何かを大事そうに取り出すと、それを紫色の舌で舐め回した。

477 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 03:58:16.50 ID:obGbfp3mO

それは子宮と卵巣だった。


子宮の脇にぶら下がっている卵巣を、さくらんぼでも頬張るかのように口に入れ、それを口の中で転がす。


そして歯を立てると、子宮と繋がっている卵管をひきちぎり、卵巣を噛み締めた。

ゆたかは体をビクンとひきつらせると、そのまま動かなくなった。

485 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 04:26:19.56 ID:obGbfp3mO

「ゆたかちゃんが…ゆたかちゃんが…」


失禁で股間を濡らしたつかさがうわ言のように繰り返す。

かがみは構わず、つかさの手を取り、階段を駆け降りた。


階段脇の廊下には案の定、あやのがズルズルと半分潰れた顔をこちらに向けながらはいずっていた。


かがみは思わずたじろぎ、つかさは悲鳴をあげて尻餅をついた。

588 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 19:10:19.17 ID:obGbfp3mO

「ゆたかちゃんが…ゆたかちゃんが…」


失禁で股間を濡らしたつかさがうわ言のように繰り返す。

かがみは構わず、つかさの手を取り、階段を駆け降りた。


階段脇の廊下には案の定、あやのがズルズルと半分潰れた顔をこちらに向けながらはいずっていた。


かがみは思わずたじろぎ、つかさは悲鳴をあげて尻餅をついた。

もう元のあやのじゃない!


かがみは猟銃をあやのに向けると躊躇いもなく、引き金を引いた。

589 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 19:15:55.72 ID:obGbfp3mO

散弾が、あやのの背中に命中し、肉が弾け飛んだ。


猛獣のうなりのような声をあげると、あやのは動かなくなった…。


「早く立って…行くよ…!」


かがみはつかさに駆け寄ると再び抱き起こした。


その刹那、二人の正面にある玄関の鉄扉がバンと音を立てて揺れた。

590 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 19:20:12.37 ID:obGbfp3mO

誰かが叩いているようだ。


「柊……」


外から、痰が絡んだような声が聞こえて来た。みさおだ。


そして、再び扉が大きな音を立てて揺れた。


「…なんで…助けてくれなかったんだよ…柊…」

591 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 19:26:12.84 ID:obGbfp3mO

みさおの痰が絡んだような悲しげな声が扉越しにくぐもって響いて来る。


「痛いよ…寒いよ…柊…中に入れてくれよ…柊…頼むよ…」


そして、扉を繰り返し、叩いている。


かがみはそれを無視し、未だにヒクヒクとうごくあやのの脇を通り過ぎ、食堂を目指した。

593 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 19:33:14.25 ID:obGbfp3mO

食堂へと辿り着くと、ソファーで寝ているみなみを前に、こなたが呆然と佇んでいた。


「…こなた?」


今しがた走って来て、息をあらげているかがみが、こなたのその様子を見て、不審に思い、思わず呼び掛けた。


こなたはゼエゼエと肩で息をし、顔には汗が滲んでいた…。

595 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 19:40:09.13 ID:obGbfp3mO

「…みなみん…しんじゃった…」


淡々と、こなたはそう言った。


「…え…うそ…」


かがみは猟銃を携え、ソファーで寝ているみなみの元へ駆け寄った。


紺碧の美しい目がドロンと天井を仰ぎ、充血して、涙が溜っている。

598 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 19:50:21.12 ID:obGbfp3mO

口は空気を求めているかのように大きく開かれ、口の周りが赤くなっていた。

何かで押さえつけられでもしたのだろうか…。
口から涎が流れ出て、筋を作っている…。


そして、服装は不自然に乱れ、手は苦痛を紛らすかのようにソファのふちをがっしりとつかんでいた。


自然に死んだとしても、これはあまりに不自然だった。

600 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 19:57:16.71 ID:obGbfp3mO

「急に…苦しみだしたと思ったら…突然動かなくなって…」


後ろから、こなたの弁解がましい声が聞こえて来た。


つかさは食堂の入り口で、口を押さえて立っているばかりだ…。


「アンタ…殺したの…?」


かがみはそのままの体勢で、こなたにたずねた。

607 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 20:05:16.30 ID:obGbfp3mO

「いやぁ〜まさか…。」


こなたがおどけた様子で言った。


かがみはこなたの方を振り向くと、猟銃を向けた。


「本当は…アンタにこんな事したくない…」

そしてかがみは目頭から涙を流して、呟いた。


「だけど…おかしな事ばかり…頭が変になりそうよ…」


「…お姉ちゃん…」


つかさが呆然と佇みながら、かがみを見つめて独り言のように呟く。

610 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 20:10:16.14 ID:obGbfp3mO

「こんな事…もうたくさんよ…」


「かがみん…落ち着いて…」


こなたが手の平をこちらに向けて、後退りながら言った。

かがみは引き金をゆっくり引き絞った。

616 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 20:17:36.93 ID:obGbfp3mO

引き金が撃鉄を解放し、撃鉄が銃弾を叩く。


尻を叩かれた銃弾はあらくれ馬のように、銃口を飛び出し、そして拡散する。


拡散された散弾がこなたの肩口から胸にかけてめり込み、こなたの小柄な体は後ろに吹き飛ばされた。


辺りは静かになった…。


窓の外では相変わらず風が強く吹き荒れていたが、雨は止み、漆黒の空は仄かな紺色へと移り変わっていた。夜明けが近い…。

623 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 20:26:25.17 ID:obGbfp3mO

かがみは猟銃を放り投げると、その場に座り込み、号泣した…。


それはこなたや皆の為に流れた涙なのか…はたまた自分の悲運を呪った涙なのか…誰も分からなかった。


「…どうして…こなちゃん…お姉ちゃん…どうして…こうなっちゃったの…?」


つかさが寂しげに、呟いた…。


かがみに撃たれたこなたはヒクヒクと口を動かすと、うわ言のように繰り返しくちずさんだ。

628 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 20:33:51.59 ID:obGbfp3mO

「……す…べては…岸猿…家の…ため…に…すべ…ては………。」


つかさはかがみに歩み寄ると、ポケットから鍵を取り出して言った…。


「逃げよう…私たちだけで…どこか遠くへ……。」


かがみは涙を拭うと、側に立つつかさを仰いだ。


「つかさ…。」

636 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 20:43:46.26 ID:obGbfp3mO

その時だった…つかさの背後からノソリノソリと人影が忍び寄り、何かを振り上げた…。


「つかさ!」


かがみは目を見開き、叫んだが、言えたのはそれだけだった。


人影はつかさの脳天に何かを振り下ろした。


ゴキンと鈍い音がして、つかさの目が見開かれた。

639 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 20:50:12.65 ID:obGbfp3mO

そして、額から血が垂れ、つかさの顔はすぐに血まみれになった…。


「…えっ…?」


つかさはその人影が誰なのか、自分の身に何が起こったのかさえ分からずに…顔を血で真っ赤に染めて、その場に崩れ落ちた。


「すべては岸猿家のために…。」


つかさが倒れたのを見やると、その人影はケタケタと笑い声を上げた。

644 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 20:59:37.12 ID:obGbfp3mO

その人影は田村ひよりだった。


大きくえぐれた傷口から、腸を引きずらせ、毒の効用で紫色に変色した顔に不気味な笑みを浮かべて、鉄パイプを構えている…。


「どうして…助けてくれなかったの…どうして…殺してくれなかったの…すごく…すごく痛かった…苦しかったのに…」


食堂の入り口から声がした。

650 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 21:07:13.32 ID:obGbfp3mO

そしてのっそりとした様子で、変わり果てた小早川ゆたかがフラフラと現れた。


口からボタボタと血を溢し、大きく開かれた下腹部から、内臓がこぼれ落ちない様に手で押さえながら、鈍重な足取りでこちらに歩み寄る。


「そうだ…柊…どうして助けてくれなかったんだよ…。」

658 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 21:14:06.68 ID:obGbfp3mO

背後から声がして、かがみはギョッとして振り返った。


背後にある窓の外からレインコートをはおり、喉からナイフを生やした日下部みさおが非難がましい目でこちらをジッと睨んでいた。


「柊ちゃん…どうして私を撃ったの…?友達でしょ…?」


ズルリ、ズルリと何かが床をはいずる音がして、入口から唐突に、峰岸あやのが首を引きずらせ、はいずったまま入ってきた。

663 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 21:22:08.47 ID:obGbfp3mO

背中にはかがみから受けた銃創が生々しく刻まれていた。


そして、みゆきがあやのと並ぶようによつんばいの姿勢で現れた。喉から骨が露出し、口に肉片を付着させている…。


生ける屍達は、かがみを囲むようにのっそりと近づいて来た。

かがみは恐怖におののき、顔を真っ青にしながら猟銃を手にとると生ける屍達に向けて引き金を引いた。

670 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 21:28:49.82 ID:obGbfp3mO

だが撃鉄がカチリと宙を切る…弾が切れたのだ…。


かがみはわめき声をあげながら狼狽し、再び猟銃を投げ捨てた。


「全部…全部かがみんが悪いんだよ…」


今しがた撃ち殺した泉こなたがムックリと起き上がると、千切れかけた腕をかばいながら立ち上がった。

673 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 21:36:10.54 ID:obGbfp3mO

「ひとつ…ふたつ…みっつ…よっつ…いつつ…むっつ…ななつ…やっつ…ここのつ…」


数を数えながら、岩崎みなみがソファーから起き上がり、青白い顔を携えて、こちらに歩み寄って来る…。


「…止めて…来ないで…来ないでえええええ!」


かがみは叫び声を上げると食堂の隅まで後退った…そこに逃げ場はない…。

679 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 21:42:59.41 ID:obGbfp3mO

「どうしてよ…どうして…」


「…お姉ちゃん……」


いつの間にか、後頭部がひしゃげ、顔から血を流したつかさが、かがみの脇に立ち、そして耳元で囁いていた。


「お姉ちゃん…よく聞いて…」


生ける屍はかがみを中心に輪のようにかがみを囲み、そして幅を狭めていく…。

682 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 21:50:18.61 ID:obGbfp3mO

「…つかさ…助けて…」


かがみはおえつを堪えて涙を流しながらつかさに助けを求めた。


しかし、つかさも生ける屍だと言うことは明らかだった…だが、混乱し、恐慌の最中にいるかがみには、それが理解出来なかった。


つかさが耳元で再び囁く。


「私の目は開いている…お姉ちゃんは…?」


そこまでだった…かがみは混乱と恐怖のあまり、気が遠くなり、とうとう気を失ってしまった…。

686 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 21:55:31.78 ID:obGbfp3mO

かがみにあるのは暗く、寒い闇だけだった…。


「かがみ、そろそろ起きなさいよ!」


聞きなれた声がして、かがみは目を醒ました。


そこはいつもの自分の部屋だった…絶海の孤島にそびえる不気味な舘でもなんでも無かった…。


かがみはベッドから起き上がると、ドアに見慣れた人物が立っていた。


「それにしてもつかさじゃなくてかがみが寝坊なんて珍しいわね…。」


かがみの母親であるみきは怪訝な面持ちでそう言った。

697 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:00:23.27 ID:obGbfp3mO

「とりあえず、学校に遅刻するわよ!下に下りて、ご飯食べなさい!」


あの恐ろしい出来事は夢だったのだろうか…。それにしては妙にリアルで現実味があった…。


「はあい…。」

かがみは母親に素直に従うとベッドから立ち上がった。

705 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:04:26.39 ID:obGbfp3mO

下に降りると、つかさが寝癖を付けながら、トーストを食べていた。


「お姉ちゃん、おはよう。」


つかさがいつもの笑顔でそう言った。


「おはよう…。」


かがみはそうつかさに返すと、つかさの向かいに腰掛け、コーヒーを飲んだ。

708 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:06:41.35 ID:obGbfp3mO

そしてトーストを食べる。何らか変わった様子はない。

いつもの日常風景だ。


「お姉ちゃん…ボーッとして何か変だよ?どうしたの?」


つかさがやはり怪訝そうな面持ちでこちらを眺めている。


「ううん。なんでもない…」


かがみは無難にそう答えると、トーストをかじりため息をついた。

713 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:09:15.22 ID:obGbfp3mO

「おはよう、つかさ、他一名」


駅でつかさと電車を待っているといつもの調子でこなたがやって来た。


「勝手に略すな!」


そしていつもの調子でツッコミを入れた。


「こなちゃん、おはよう」


つかさがニコニコしてこなたに挨拶を返す。


「んにゃ…?どったの、かがみん…何か元気ないねぇ…」

716 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:13:13.47 ID:obGbfp3mO

「お姉ちゃん…今朝から様子が変なんだよ…。」


「べっ…別に何でもないわよ…。」


かがみはプイッとソッポを向いた。


こなたはいつもの調子でかがみにしたり顔を近付けると断言するように言った。


「ん〜…恋じゃな、かがみん…」


「ち…違うわよ!人がちょっと考え事してるだけで勝手な想像するな…」


かがみが顔を赤らめてそう言い返す。


いつもの通りだ。何ら変わった様子はない。

722 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:21:01.19 ID:obGbfp3mO

ただ少し変なのは時折つかさとこなたがこちらを見ながらコソコソと何かを耳打ちしあってるという事だ。


何か感じが悪い…。


電車に乗ってからも、それは続き、今度はクスクスと笑い声をあげていた。


何かおかしい…


学校につき、かがみはこなた達と別れて、自分のクラスに入り、そして席についた。

723 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:24:17.34 ID:obGbfp3mO

するとかがみが席につくやいなや周りのクラスメイト達が、どよめきたち、かがみを指差し、こなたやつかさがしたようにコソコソと何かを耳打ちし合った…。

一体なんなのだろうか…居心地が悪い…この世界の居心地が悪い…。


「オーッス、柊〜」


「柊ちゃん、おはよう」


みさおとあやのがかがみに近付き、挨拶をした。


「…おはよう」


かがみも一応挨拶を返す…。

731 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:31:59.83 ID:obGbfp3mO

みさおとあやのはかがみの机を囲んで立っているが、それ以上は何も話しかけて来ず、ただただニコニコとかがみを見つめていた。


「ちょっと…何なのよ…」


少し不機嫌そうにかがみが二人にたずねた。


「いんや〜別に…何で柊がここにいるのかなぁ…と思っただけだってヴぁ」


「特に何もないわよねぇ…柊ちゃんはここにいるのよねぇ…」


そう答えたきり、再びおし黙り、不気味にニコニコとかがみを見つめるばかりだった…。

742 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:38:31.33 ID:obGbfp3mO

何なのよ…一体…。


いたたまれなくなったかがみは、席を立つと教室からでていった。


一体何なの…?


かがみは学校の廊下を駆け、ひたすら何かから逃げようとした…人々の視線…嘲笑…ささやき声…。


何なの…?一体何なのよ!


訳が分からず、かがみは女子トイレに駆け込んだ。


息を切らせたかがみは、洗面台に向かい、蛇口を捻ると水を出した。

753 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:45:30.40 ID:obGbfp3mO

それを両手ですくうと、顔を洗った。


「何なのよ…一体何なのよ…」


そう呟きながら顔を上げた。


洗面台には鏡がついてると相場が決まっている。


かがみは、鏡を覗き込んだ。

そこには隈が浮いて、疲弊しきった自分の顔と後ろで互いに接吻し合うゆたかとみなみの姿があった…。


かがみは慌てて後ろを振り返る…。

754 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:51:54.25 ID:obGbfp3mO

ゆたかとみなみが接吻を中断し、こちらを軽蔑するような眼差しで、ただただ見ていた。


「…何?」


かがみが話しかけるが、二人は軽蔑した眼差しを返すだけだった。


再び居心地が悪くなったかがみは、女子トイレから出ると、廊下を駆けた。


永遠とも思える長さの廊下を暫く走っていると、脇の教室から急に誰かが飛び出して来た。


避けきれなかったかがみは、その誰かと衝突し、その場に尻餅をついた。

763 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:57:17.47 ID:obGbfp3mO

「いたたたた…。」


その誰かが頭を撫でながら、呟いた。


それはひよりだった。


ひよりが胸に抱えていた書類が辺りに散乱している。


「ひよりちゃん…ごめんなさい…私が前を見てなかったから…」


かがみが慌てて散らばった書類を拾い始めた。


「あ……あう…あ…」

764 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 22:59:01.24 ID:obGbfp3mO

ひよりはかがみを見るやいなや言葉を失い、そして恐怖を感じて顔を青ざめさせた。


「ちょっと…どうしたのよ…」


かがみがひよりに近付くと拾い集めた書類を差し出した。


ひよりは、ビクンと体を引きつらせ、失禁をすると、大声で泣き始めた。


「え…え…ちょ…ちょっと…」


かがみはうろたえた。まるで保育園の保母さんにでもなった気分だった…。

769 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 23:02:25.88 ID:obGbfp3mO

かがみはひよりが胸に抱えていた書類をチラリと見た。


それはクレヨンで描かれた、幼稚で拙い風景画だった。


「あらあら…また田村さんを泣かしちゃったんですか…」


唐突に後ろから声がした。

みゆきだ。


白衣を着たみゆきが、後ろから小走りで近付いて来ると、ひよりの側にしゃがみ込み、そして頭を撫でた。

773 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 23:06:47.98 ID:obGbfp3mO

「大丈夫だからね…大丈夫…。」


そう言うとみゆきは地面に散らばっていたひよりの絵の一枚を取ると、言い聞かせるかのように呟いた。


「よく描けてますね…これは病院の前の花壇かしら…田村さんは絵が上手いですね…」


かがみは混乱した…周りの風景がグニャグニャと変形し、元の形を保っていられない…異常な世界だった。

776 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 23:11:07.58 ID:obGbfp3mO

「ちょっと…みゆき…その格好は一体何なのよ…それに病院って…」


かがみは混乱して、みゆきに言った。


みゆきは一瞬真剣そうな面持ちでこちらを見つめると、すぐにニッコリと微笑みかけた。


「大丈夫ですよ…柊さん…さ、病室に戻りましょ…お薬の時間ですよ…。」

778 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 23:13:45.43 ID:obGbfp3mO

そういうとみゆきはかがみの手を取り、引っ張っていった…。


病室…お薬…?


かがみには訳が分からなかった…。


「ちょっとみゆき!ふざけるのもいい加減にしてよね!」


かがみが強い口調でそう言うと、手を引っ張って歩くみゆきの歩調のピッチが少し早くなった。


グニャグニャと躍動する風景は形を成し、そして病院の、まさに病室のようになる。

787 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/12(水) 23:22:14.49 ID:obGbfp3mO

そこにはベッドが二つあり、奥のベッドで誰かが寝ていた。


うわ言をブツブツと言いながら、落ち窪んだ眼窩を天井にむけて、横臥しているのはパティだった…。


みゆきは手前のベッドにかがみを座らせると、脇にあった小物入れから何かを取り出した。


それは赤い薬液が充填された注射器だった…。


「止めて!止めて!」


かがみは必死で暴れた。


訳が分からない…何故自分が注射などされなければいけないのか…。

836 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 01:30:38.55 ID:kDHDwzvbO

しかしみゆきは手慣れた様子で、かがみを押さえると、素早く首筋に注射を突き刺し、薬液を注入した。


途端にかがみの筋肉が弛緩し、どこも動かせなくなった。


「大丈夫ですから…。」


みゆきが息を切らせながらかがみにそう言うと、ニッコリと微笑んだ。

842 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 01:33:43.22 ID:kDHDwzvbO

「そういえば…」


筋肉が弛緩し、顔の表情さえも変えられないかがみに、みゆきは思い出したかのようにたずねた。


「あなたの目は開いていますか…?」


途端に世界が明滅し、全てが形を成さなくなった…。

871 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 02:48:30.62 ID:kDHDwzvbO

「いやあああああ!」

自分自身の悲鳴が聞こえ、唐突に目が覚めて、かがみは起き上がった。


そこは、誰も居ないガランとした、館のサロンだった…。


かがみはここで気を失っていたのだろうか…?


窓の外から心地よい日の光が差し込んできている。風も全くない…。

877 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 02:58:06.31 ID:kDHDwzvbO

日が昇り、かまいたちの夜が過ぎさったのだろうか…。

かがみはとっさに上体を起こすと、身構えた。


意識を失う直前のあの光景が目に焼き付いて離れなかった。


生ける屍は今はどこにも居なかった…最低でもかがみの目の前には…。


かがみは呆然と立ち尽くすと、辺りを再び見渡した…。

だだっ広いだけで、タンゴを踊る舞者も居なければ、テーブル一つ無いサロンはどこか滑稽で寂しげだった。

912 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 04:42:42.96 ID:kDHDwzvbO

今までの事は全部悪い夢だったのだろうか…。


かがみはフウとため息をつくと、サロンを後にした。


長い長い一階の廊下を歩いていくと談話室に辿り着いた…。


談話室のドアが心なしか、少し開いている…。


かがみは気になり、ドアに飛び付くと、少しずつ開いていった。


中は窓がないせいか、薄暗く、濃厚な血の臭いが漂っていた。

20 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 19:36:46.47 ID:kDHDwzvbO

だだっ広いだけで、タンゴを踊る舞者も居なければ、テーブル一つ無いサロンはどこか滑稽で寂しげだった。


今までの事は全部悪い夢だったのだろうか…。


かがみはフウとため息をつくと、サロンを後にした。


長い長い一階の廊下を歩いていくと談話室に辿り着いた…。


談話室のドアが心なしか、少し開いている…。


かがみは気になり、ドアに飛び付くと、少しずつ開いていった。

22 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 19:43:26.33 ID:kDHDwzvbO

中は窓がないせいか、薄暗く、濃厚な血の臭いが漂っていた。


床に被せられたカーペットは不自然に膨らみ、血がにじんでいる。

そして天井には刷毛の赤い線が8本…刻まれていた。


かがみは警戒しながら、カーペットの端を掴むと、ゆっくりと捲り上げた。

24 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 19:46:03.64 ID:kDHDwzvbO

かがみは警戒しながら、カーペットの端を掴むと、ゆっくりと捲り上げた。


そこには案の定、みゆきとあやのの死体があった。


みゆきは喉を切り裂かれ、あやのは背中の肉が弾け飛んでいる…同じだ…さっきと全く同じだ…。

27 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 19:51:17.83 ID:kDHDwzvbO

かがみはあとずさると、談話室を後にした。


一体生ける屍達は、岸猿家の呪いは、どうなったのだろうか…。


かがみは壁に手を付いてフラフラと歩きながら考えた。


嵐が過ぎ去った時点で、気が消え去り、同時に岸猿家の陰謀も嵐とともに無くなってしまったのだろうか…自分が気を失っている間に一体何が起きたというのだろうか…。


かがみには分からなかった…。

29 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 19:57:18.80 ID:kDHDwzvbO

そして意識が最後に途切れた、食堂へと辿り着いた…ここでかがみは気を失い、気付いたら、建物の反対側にあるサロンで寝ていた…。


かがみはゆっくりと食堂へと足を踏み入れた。


そこにも案の定、死体が転がっていた…一つ…二つ…三つ…四つ…こなたとみなみとつかさと立木の死体が転がっている…。

32 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 20:05:15.07 ID:kDHDwzvbO

こなたは千切れかけた腕を押さえるようにして、床に横臥し、つかさは床にうつ伏せになって、頭の周りに血の水溜まりを作っていた。


みなみはソファーで虚ろな目線を天井へと向けて、窒息で青白く変色した顔が印象的だった。

33 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 20:13:39.64 ID:kDHDwzvbO

立木は頭が吹き飛び、損傷が激しく、最早顔の選別が付かなくなっている。


皆死んで私だけが生き残ったのだろうか…何とも皮肉な話だ…。


たった一夜でこれだけの数の人間が命を落とした…。


かがみはこなたの脇にしゃがみこむと、彼女の青い綺麗な髪を撫でつけた…。

「こなた…。」


そして冷たい少女の唇に口付けをした。
こなたとの人生最後のくちづけは…冷たい死の味がした…。

「…思い出して…」


後ろから不意に声がして、かがみはとっさに振り返った。

36 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 20:19:46.82 ID:kDHDwzvbO

そこには全身を映し出す程の大きな鏡があるだけで、誰も居なかった…だが確かに声は聞こえた。


「アンタが殺した…。」


再び声がした。


かがみは慌てて辺りを見回した。


死体が転がっているだけで、誰も居ない…その筈だ…。

37 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 20:27:13.84 ID:kDHDwzvbO

「ここよ…ここ…思い出して…」


どうやら声は、その鏡から発せられているようだった…。


かがみは怪訝な面持ちで、鏡に近付くと、自分の姿を覗き込んだ…。


全身血だらけだ…そして口の周りには、ケチャップのように乾きかけた血がこびりついている。


目は自分の物では無いかのように、不気味にも黒洞々たる闇を宿していた。

41 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 20:35:12.30 ID:kDHDwzvbO

かがみは慌てて口の周りを拭った。


口の中に、鉄の味が広がる…。
その味が、かがみの脳髄を駆け巡り、記憶を呼び醒ます。

途端にかがみの頭の中にフラッシュバックのように、唐突に何かが浮かんで来た。


それは書斎の隅で脅えたように、丸まって此方に恐怖を宿した目を向けるゆたかの姿だった…。


かがみはゆたかに近付くと、髪の毛を引っ張って床に押し倒し、接吻ついでに舌を噛み千切った。

44 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 20:42:15.90 ID:kDHDwzvbO

なに…これ…。


混乱するかがみをよそに無情にも、回想は続く…。


舌を噛み切られ、苦しげに咳き込むゆたかの服を捲り上げ、そして柔らかそうな下腹部に歯を立てた。


そして生肉を貪る野獣のように肉を歯で噛み裂き、内臓を引っ張り出す…。そして子宮と卵巣を美味しそうに頬張る自分の姿…。

52 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 20:49:41.37 ID:kDHDwzvbO

「…お姉ちゃん……?」


不意に書斎の入口から声がした。


夢中で内臓を貪っていたかがみがそちらの方を向くと、つかさがドアにもたれかかるようにして、怯えた目を此方に向けていた。


かがみはゆたかから口を離すと、立ち上がり、そしてつかさにのっそりとした様子で歩み寄る…気付けば、手に猟銃が握られていた…。

56 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 20:56:05.86 ID:kDHDwzvbO

身の危険を感じ取ったつかさは、踵を返すと、脱兎のごとく駆け出した。


その後を猟銃を手に追うかがみ…。


つかさは必死で階段を駆け降り、そしてあやのとすれ違った。


「あら…柊ちゃんの妹…あんなに慌ててどうしたのかしら…」

59 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 21:05:06.22 ID:kDHDwzvbO

あやのはそういうと階段の方に向き直り、かがみを見てギョッとした。無理もない…ゆたかの血で全身真っ赤になっているのだから…。


「まあ大変…柊ちゃん、怪我でもしたの?酷い血よ…!」


かがみはあやのの言葉を無視すると、心配そうな目をこちらに向けるあやのに歩み寄り、猟銃の銃床で頭を思い切り殴り付けた。

65 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 21:12:03.43 ID:kDHDwzvbO

ゴキリと鈍い音がして、あやのはもんどりうってうつ伏せに床に倒れた。
首があり得ない角度にねじ曲がり、グロテスクな位置から骨が皮膚を突き破り、飛び出ている。

かがみは念のため、あやのの背中を猟銃で撃ってとどめをさした。


背中の肉が弾け飛んで、背中がボロ切れのようになる…。


かがみはあやのが完全に死んだ事を確認すると、食堂を目指して駆けた。

70 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 21:19:39.84 ID:kDHDwzvbO

食堂に着くと、怯えてしゃがみ込むつかさをこなたとみなみと立木が囲み、必死で落ち着かせようとしていた。


かがみはそこにズカズカと踏み寄ると、間発いれずに、立木の頭に狙いをつけ、至近距離から発砲した。


立木の頭は綺麗に吹き飛び、脳味噌が辺りに散乱する…。


立木が倒れると今度は、突然の出来事に訳が分からずにただただ後退るこなたに猟銃を向けた。

74 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 21:30:10.43 ID:kDHDwzvbO

「えっ…ちょ…かがみ?」


泣いているのか笑っているのか…複雑な表情でかがみに問いかけるこなたにかがみは躊躇いもせずに引き金を引いた。


胸と肩に散弾が命中したこなたは後ろに吹き飛ぶようにして倒れた。


突然の出来事にうろたえるみなみに、かがみは銃口を向けると引き金を引いた。

80 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 21:38:17.93 ID:kDHDwzvbO

だが猟銃はカチリと音を立て、持ち主に弾切れを伝えた。


かがみは舌打ちをすると、みなみに歩み寄り、胸を銃床で思い切り打ちすえた。


みなみは短い悲鳴を上げてソファーの上に倒れた。


すかさずかがみは、みなみの胸に膝を載せると、口と鼻を手で塞ぎ、呼吸を止めた。

81 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 21:46:10.11 ID:kDHDwzvbO

胸を打ちすえられた事によって、呼吸困難に陥ったみなみに、かがみは更に追い討ちをかけた。


みなみは目を見開き、暫くかがみの膝の下で、苦しげに体をうねらせると、そのまま徐々に動かなくなった。


よだれと鼻水で糸を引く手の平を、みなみから離すと、今度はつかさの方を向いた。

85 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 21:54:26.98 ID:kDHDwzvbO

つかさはただただ震えて、床に座り込み、失禁していた。


かがみは素早くつかさに歩み寄ると、後頭部を思い切り殴り付けた。


グシャリと鈍い音がして、つかさの後頭部がひしゃげた。


だがかがみは、それでも手を止めず、つかさの後頭部を何度も猟銃で殴り、完全に息の根を止めた。

88 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 22:03:11.01 ID:kDHDwzvbO

そして息をあらげて立ち尽くし、つかさの亡骸を見下ろす。


うつ伏せに倒れたつかさの頭から血がジワジワと床に広がっていく…。


「皆さん大変です!田村さんが…厨房で…田村さんが…」


そう叫びながら現れたのはみゆきだった…。

94 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 22:12:20.62 ID:kDHDwzvbO

田村ひよりに毒を盛ったのも簡単な事だった…青酸カリを注射器で注入した缶ジュースをただ冷蔵庫に入れておけばいい。


夏の暑さに喉が乾いた誰かが缶ジュースを冷蔵庫から手にとればこっちの物だ…缶ジュースを飲むのは誰でもいい…。


「かがみさん…これは一体…」


食堂の異変に気付いたみゆきが、かがみにたずねる。

99 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 22:20:47.92 ID:kDHDwzvbO

かがみは全身血まみれで、肉片がこびりついた猟銃を携えてつかさの亡骸の脇に立っている…かがみがこの異変の元凶だと気付くのに、馬鹿でもそうそう時間はかからないだろう…。


かがみは弾が切れた猟銃をその場に打ち捨てると、テーブルからナイフを取り、それを握り締めて、みゆきににじり寄る…。


みゆきは先程つかさがしたように、背を向けると、声にならぬ悲鳴をあげて逃げ出した。

103 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 22:27:32.04 ID:kDHDwzvbO

かがみが、豹のように襲いかかる。


廊下を談話室の前まで逃げたみゆきはついに、長いピンクの髪の毛を捕まれて、転倒した。

そしてあやのの鮮血で濡れる床に尻餅をつく。


かがみは髪の毛を引っ張り上げると、みゆきの喉元を露にし、ナイフを添えた。


「ふえ…ふええ…」


みゆきが涙を流しながらうろたえた。

107 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 22:36:16.41 ID:kDHDwzvbO

そして、かがみはナイフに力を込めると、一気に喉元を引き裂いた。


そしてフィルムは回りに回る…例え演者や主人公が死のうとも、フィルムは回る…。


全ての元凶へと目指してフィルムは回る…。

その時かがみはみさおと口論をしていた…丁度談話室でホラービデオを見終わった後だ……。

111 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 22:43:08.56 ID:kDHDwzvbO

皆が談話室にいる間に書斎で二人だけの一時を楽しんだ後の些細な口論だった…。


かがみは髪を櫛でとかしながら弁明する…。


「そんな関係じゃないって…あの子とはただの友達よ…。」


みさおはブラジャーを付けながら、かがみをなじるように言った。

116 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 22:52:51.27 ID:kDHDwzvbO

「さっき見たんだからな!ちびっことキスしてる所…それでもまだ言い訳するつもりか?」


「な…別に特別な意味が合った訳じゃ…。」


かがみは髪をとかしながら、顔を赤らめた。


みさおは、プリプリと怒りながら、スカートをはき、そして上着のボタンをつけていく…。


「やっぱり柊って残酷だよな…。」


みさおがボソリと呟いた。

118 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:00:12.58 ID:kDHDwzvbO

それを聞いたかがみの顔色が変わった。


「…えっ?」


「お前の先祖がこの建物作ったんだろ?お前も残酷だよ。」


そう言いながらみさおは、髪を整え始めた。

「…今なんて言ったの…?」


かがみが冷たい怒りを宿した目をみさおに向けながら、たずねた。

119 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:04:38.88 ID:kDHDwzvbO

「…いや柊は残酷だって…」


そこまで言った所でみさおは二の句が告げなかった。

かがみがみさおの襟を掴み上げて、目を睨みつけていたからだ。


「…離せよ…」


みさおが真顔で、だが怒りの韻を含む口調でかがみに命じた。

122 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:11:20.44 ID:kDHDwzvbO

だがかがみはそれを無視した。


「アンタ…言っていい事と悪い事の区別もつかないの?」


「…いいから離せよ…!」


みさおが声をあらげ、かがみの手を振り払った。

かがみがその反動で、机の角にしたたかにみぞおちをぶつけ、うめき声を上げた。


「…怒ると何するか分からないし、やっぱし柊って残酷で怖いな。」

125 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:18:11.82 ID:kDHDwzvbO

襟を直しながら、みさおが呟いた。


かがみは怒りにふるえ、とっさに机の上にあったペーパーナイフを手にとると、振り返り、思い切りみさおの喉元に突き刺した…。


殺すつもりなど…初めから…無かった…。


いや…もっと一緒の時間を生きて、ずっと一緒に居たかった…。

134 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:25:34.92 ID:kDHDwzvbO

かがみは呆然と立ち尽くすと、みさおの喉元に深々と突き刺さっているペーパーナイフから、手を離した。


「…柊…どうして…」


かがみから離れようと、フラフラと後退るみさおがひきしぼるように言った。


「私…わたし…どうして…。」


かがみが口元を押さえてうろたえた…。

137 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:30:15.55 ID:kDHDwzvbO

みさおはフラフラと後退り、そして足元をもつれさせ、転んだ。
その拍子に、窓を突き破り、下に転落した。


「みさお…」


かがみが慌てて窓に駆け寄り、下を見た。


そこには堀の針で、全身を貫かれ、喉からナイフを生やしたみさおが息絶えていた。

139 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:31:57.40 ID:kDHDwzvbO

「あ…あ…。」


かがみはその壮絶な光景に、ただただ絶句した。


「かがみサン…今の音ナンですか…?」


窓が割れた音に気付いたのだろうか、パティが書斎の入口からひょっこりと顔を出していた。


もう後戻りは出来ない…。

143 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:37:09.13 ID:kDHDwzvbO

かがみはとっさに嘘をついた。


「日下部が…足を滑らせて落ちたの…パティちゃん…ちょっと手を貸して…」


「大変!」


パティはすぐさま窓に駆け寄ると下を眺めた。


「日下部サーン…大丈夫デスかー?」


パティが既に息絶えたみさおに向かって悠長にも、声をかけていた。

148 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:42:14.43 ID:kDHDwzvbO

今だ…。


かがみは後ろから目一杯パティを押すと、下に突き落とした。


「あっ…!」


パティは悲鳴を上げる間もなく、みさおと同じ運命を辿った…。


どうあがいても…もう戻れなかった…。


かがみは書斎に立ち尽くすと、側に立掛けてある猟銃を手にとった…。

154 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:47:53.89 ID:kDHDwzvbO

夢があるからこそ現実がある…だが現実がなければ夢など存在しないのだ…。


後戻りが出来ないのならいっそみんな消えてしまえばいい…


かがみの脳髄を支配する暗い欲望が開花し、囁きかける。


殺せ…殺せ…でなければ…お前が死ね。


私が皆を殺したのだろうか…私が…私が…私は狂ってしまったのだろうか…。

157 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:53:25.43 ID:kDHDwzvbO

答えは返ってこない…。


目の前にある鏡だけが…真実を映し出す…。


岸猿家の呪い…呪術…全ては私の夢が作り出した都合のいい解釈でしかなかったのだろうか…。


無意識に…みんなを殺す口実が欲しかった…ただそれだけだったのだろうか…。

160 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/13(木) 23:56:04.78 ID:kDHDwzvbO

談話室の天井にある刷毛も…私が描いた…でしょ…?


生ける屍は私の罪悪感が作り出した幻想…でしょ…?


さっきの夢は私の心の闇…でしょ…?


かがみはただただ、鏡の前に立つ、血まみれの自分の姿を見つめていた…。


全てを終らそう…そう全てを…最初からこうすれば良かったんだ…。

161 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/14(金) 00:00:06.81 ID:3P9xmEwMO

かがみはトボトボと歩き始めると、談話室を目指した。


この哀れな少女に味方をする者は誰もいない…ただただ狂気だけが…彼女をつき動かしていく…。


談話室に入ると、相変わらず薄暗く、そして血生臭かった…。


かがみは談話室のテーブルに置かれていた、乾きかけの血のりで赤黒くなっていたナイフを手にとると…じっくりとそれを眺めた。


こうするしか…方法は無いのよね…。

167 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/14(金) 00:05:18.23 ID:3P9xmEwMO

そして逆手で持つと、自分の胸へと振り下ろさんと、振り上げて構えた。


そして、一気に突き刺した。


世界が明滅し、辺りがグニャグニャと変形していく…。


これで良かったのよ…これで…


かがみはそう呟くと、談話室の床に倒れた…。


辺りが急に暗く、そして静かになっていく…。


冷たく暗い死が、孤独な少女を包み、そして徐々に飲み込んでいく…その時だった…。

172 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/14(金) 00:10:28.39 ID:3P9xmEwMO

かがみの耳元で急にしわがれ声が囁いた。


「…ここのつ…」


「…え…?」


かがみはうつろな目を開き、天井を仰いだ。


赤い刷毛で描かれた八本線のドーマンに九本目の線が刻まれていく…。


辺りに光が満ち、そして三味線の狂ったような音色が辺りにこだまする。

176 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/14(金) 00:17:37.25 ID:3P9xmEwMO

確かに…確かに…私がみんなを殺したのかもしれない…今起こっている事も…私の狂気が作り出した幻想なのかもしれない…。


だが…もし…もし…岸猿家の呪いが実在し、今まで起きた事が全て現実だったとしたら…。


嵐が過ぎ去り、その力を失った岸猿伊右衛門が最後のあがきに…私に偽りの幻想をちらつかせ…そして私を自ら…あやめるように仕向けたとしたら…。

179 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/14(金) 00:22:07.52 ID:3P9xmEwMO

私は間違っていたのか…私の負けなのだろうか…答える者はいない…。


どこからか、赤ん坊の泣き声がした…下腹部に…激痛が走っている…。


私はなんだったの…?


しわがれた笑い声がいつまでも耳にこびりついて離れない…。


そして…私はこれからの明るい未来を夢に見ながら…静かに目を閉じた…。




196 名前: ◆g4b7GjYsgg [] 投稿日:2008/03/14(金) 00:32:11.25 ID:3P9xmEwMO

個人的にすげぇやりきれねぇwwwww
本当はハッピーエンドにしたかったんだぜ…。

おならは実在するとある殺人鬼が、幼女の内臓を生きたまま食べていた時に、幼女が実際にしたそうだ…文献でそれ見て、背筋冷たくなって、うわぁ…って思った。


チクショー!プリズンブレイクで挽回だぜ!



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