涼宮ハルヒの選択 - Endless four days - 1週目 2日目 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:06:32.37 ID:J4dircPH0 翌日、目覚めもよかったせいで(そりゃ昨日あれだけ寝たんだから当然か)上機嫌で投稿した俺は、 いつものハイキングコースで谷口と出会った。右肩上がりだったご機嫌グラフは、現在凋落を記録している。 あー……朝から面倒なやつと出会っちまった。俺もつくづく運がない。 朝の正座占いはチェックしない俺だが、まず間違いなく俺の正座は12位だろう。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:09:28.30 ID:J4dircPH0 「ようキョン。機嫌よさそうだな。いいことでもあったのか?」 お前の目は節穴か、なーんてありきたりな科白は胸にしまっておく。 「別に朝から何もねえよ。まあ昨日はそれなりに気分は良かったけどさ」 昨夜の電話を思い出す。朝目覚めた時に脇に転がっていた子機を見て、 勝手に寝てしまったことを後悔していたが、なんとなく、佐々木は怒っていないような気がしていた。 それにしても久しぶだったな。しょっちゅうは願い下げだが、たまにならああいう交流も悪くはないと―― 「うおっ! 何すんだいきなり」 後ろから羽交い締めにされる俺。犯人は言わずもがな、アホの谷口だ。谷口は俺から離れるとふふんとそっぽを向き、 「別に」 俺のもの真似をしているつもりなのだろうか。あのな、俺はそんな仏頂面してねえ。 「お前朝からのほほんとしすぎ。なんかさ、お前最近、どっか抜けてるような気がするんだよなー」 「失礼なやつだな。朝は誰でも血圧低いんだよ」 谷口の戯れ言を適当にあしらって、徒歩に専念することにする。 お前はそこでずっと俺のもの真似してるがいいさ。 「おいおい待ってくれよキョン。親友おいてくとか冗談きついって!」 今から思えば。谷口の言葉は戯言でも虚言でもなく、見事にそのときの状況を穿っていた。 誰もが気づくような、違和感。異変。異常。 ただ、その時の俺があまりに緊張感を失っていて、目を逸らしていて、気づくまいとしていただけのこと。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:12:24.34 ID:J4dircPH0 さてHR10分前というベストタイムに教室に着いた俺は、 登校中に考案したHR前の雑談用話題のどれからハルヒにぶつけてみようかと思惑を巡らせて、 「キョーンー……なんであたしのメール無視したのよ!」 用意した話題すべてが水泡と帰したのを悟った。 いやー、あの、ほら、ハルヒ。まずは冷静になろう。激昂した状態で議論なんてできるわけ―― 「うるさい。ほら、ちゃんと説明しなさい。聞いたげるわ。ただし……」 「ただし……?」 獅子に睨まれたドブネズミのような心境で復唱する。 「嘘ついたら殺すわよ」 昨日の怠慢(帰宅してグダグダ→電話→即就寝)がこんなところで俺の精神をすり減らすことになるとはね。 流石に丸半日メールを無視されたらハルヒも怒るよな。おそらく、いや間違いなく俺の携帯のメールボックスは 20件分ほどハルヒの未開封メールで占拠されているに違いない。 ここは―― 1、いいわけする(高度な) 2、いいわけする(低レベルな) 3、正直に昨夜のことを話す >>110までまでに一番多かったのを取る 104 名前:ポニーテール仮面[] 投稿日:2007/12/05(水) 21:48:44.96 ID:ipQNly280 懸命だな。 では、キョンらしく1で。・・・いや、3かな? 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 21:49:18.81 ID:hN8nwEG8O 3 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 21:49:38.78 ID:PThGRXRjO 1 執筆スピード早すぎるだろ常考 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 21:50:57.94 ID:fX61220j0 3かな キョンなら素直に話すんじゃないだろうか 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 21:51:20.32 ID:iMAbem8ZO 1 109 名前:ポニーテール仮面[] 投稿日:2007/12/05(水) 21:52:14.09 ID:ipQNly280 うかつにぺらぺら話してハルヒの機嫌を損ねるのがキョンと言う生き物だ。 ・・・が、嘘をつくよりはダメージは軽減されるだろうな。 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 21:53:06.09 ID:ShWwqgNqO 3 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:13:15.01 ID:J4dircPH0 下手に嘘をつくのはよくない。昔の偉い人は言いました。 一度嘘をつけば、その嘘がばれないようにするために嘘を重ねなくてはならないと。 ま、そんな一般論はともかく、教室の張り詰めた空気は刻一刻と息苦しくなっているし、 『さっさと宥めろよキョン』 『早くしないと涼宮さん切れちゃうじゃない』 クラスメイトからの無言の圧力に俺は圧死寸前だ。言い訳を考えている時間なんて一秒もない。 俺はありのままの事実を述べることにした。哀しいかな、これがSOS団平団員の使命なのである。 「――――というわけだ。ま、昨日は忙しかったんだよ」 ハルヒはしばらく俺の話に静かに耳を傾けていたが、「佐々木」の名前が出た辺りから ゆっくりと表情をゆがませはじめ、終には怒気全開の微笑というなんとも複雑な表情を浮かべてこうのたまった。 「あ、あらそうだったの。それじゃ、し、仕方ないわよね。  何しろ大事な親友佐々木さんからの電話だもんね」 「ハルヒ……無粋な質問かもしれないが、一応聞いておく。怒ってるか?」 数瞬の間。 「……あたしが怒ってると思う?」 「いいえ思いません」 俺は機械仕掛けの人形のように体を前方方向にロールさせることを余儀なくされて、 結局HR前の雑談は叶わず、いそいそと授業に備えることにした。 午前の授業中、ずっと背中にシャープペンシル突きが浴びせかけられていたことは、言うまでもないだろう。 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:15:48.02 ID:J4dircPH0 滞りなくHRが終了し、放課後が訪れる。 今日も授業は早めに終わり、まだ時間は3時を少し回ったくらいだ。 受験生ってのはいいね。勿論のこと、俺にこの放課後を勉強に回す気は毛頭もないんだが。 「昨日はあたしがいないからさぼったみたいだけど、今日はそうはいかないわよ」 「分かってるって。あ、ちょっとばかし片すから、時間かかるかもしれん。先に行っててもいいぞ」 「その手には乗らないわよ。見張っとくわ」 俺の信用も奈落に落ちたか。まあいい。 見つめられているというのは落ち着かないが、朝の分も何か話してみよう 1、なんで昨日元気なかったんだ? 2、朝のこと、ほんとに怒ってないのか? 3、昨日の終業前、教室抜け出して何処行ってたんだよ? >>125までに多かった方 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 22:18:30.37 ID:iMAbem8ZO 3 121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 22:19:29.73 ID:fX61220j0 どれも興味深い3択だな しかし話の流れ的には3が一番だろう 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 22:20:26.84 ID:r8swOcWJ0 4 ここでいきなりフラグブレイカー鶴屋さん登場  123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 22:20:38.51 ID:qvhkx5OOO ここは1で 124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 22:20:46.54 ID:shgFtu60O 3!3! 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 22:20:47.33 ID:iY/MTkxC0 まさかココまで伸びるとは 1 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:17:31.89 ID:J4dircPH0 「昨日の終業前、教室抜け出して何処行ってたんだよ?」 胸の中で燻っていた疑問を、片手間に聞いてみる。昨日の授業終了前。 だん、と大きく椅子を引いて、毅然とした態度で教室を抜け出していったハルヒは、 何かに突き動かされているような感じだった。 「ああ、あれねー……」 ハルヒは逡巡するように語尾を伸ばしてから、 「大したことじゃないわよ」 抑揚のない、静謐の声で"あんたとは関係ない"と言った。 それはまるで、ハルヒではない、別人が話しているような酷薄さで。 「ハル………ヒ………?」 鞄をのぞき込んでいた顔を上げる。 俺の視界で、こちらの作業を逐一観察している少女は――やはり、ハルヒだった。 同時にがやがやとした喧噪が、今更のように耳朶を震わせる。 「もう、何時までかかってんのよ。古泉くんと有希、きっともう待ってるわよ?」 「悪い悪い。今終わった」 連れだって文芸部室に向かう。横には昨日の静けさが嘘のように明るいハルヒがいて。 俺の中に生まれた懐疑は、自然となりを潜めた。 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:20:29.87 ID:J4dircPH0 申し訳程度にノックして、 「入るわよー」 恒例の爆発音と共に、ハルヒが文芸部室のドアを蹴り開けるハルヒ。 よもや文芸部室のドアは木製なんかではなく、オリハルコンかそれに準ずる未知の金属物で できているのではないかと首を捻っていた俺に、湯飲みが差し出された。 「……どうぞ」 清冽な水を連想させる、透き通った声。ありがとな、長門。 「かまわない」 朝比奈さんが卒業してからというものの、SOS団部室のメイドは、専ら長門に一任されていた。 あのメイド服などの衣装は現在大切に保管されており、残念ながら長門は制服のままである。 ま、長門にはメイド服よりも、もっと似合う衣装があるからいいんだけどさ。 ちなみにときたま古泉がお茶煎れを担当しているが、俺はその度に「今日は来なければ良かった」と後悔に苛まれている。 閑話休題。 「昨日は無断欠勤。今日は重役出勤ですか」 「うるせえ。こっちもいろいろあるんだよ」 右手で口元を押さえつつ左手に指導書を持ち、眼下に広がる盤面を睥睨する古泉が話しかけてきた。 このままじゃ将棋につきあわされて一日が終わるのは目に見えている。 俺は―― >>150 自由記述「        」  150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/05(水) 23:09:44.49 ID:ZeR9wZkz0 チン毛MAXもっさりビューティー、 股間にアジエンス使ってんだぜwwwセレブっしょwww 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:24:04.40 ID:J4dircPH0 古泉に勝負を申し込まれるのを覚悟しつつ、詰め将棋の行く末を見守ることにした。 本来なら今日課題として出されたレポートを仕上げるなり、本棚から本を拝借して読書に勤しむ方が 余程建設的なのだが、まあぼんやりとしている時間も長い人生に於いて大切な事だ、と勝手に理由づけてみる。 「ふむ……これは興味深い」 呻吟している。あのデフォルトが余裕綽々の古泉が、片手の本を凝視しながら呻いている。 興味深いとな? 回答の差し手が見事すぎるということだろうか。 「僕も一度はこういう体験をしてみたいものです」 独り言は続く。たまりかねた俺は、慎重に席を立って古泉の後ろに回り込んだ。 古泉は魅入っているのか、こちらに気づいたそぶりは見せない。 何だ。何が古泉を感嘆させている? 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:25:42.12 ID:J4dircPH0 「――――――!!!」 驚きのあまりに、呼吸ができない。 まず一目で分かったのが、古泉が手にしているのが将棋の指導書でも何でもなく、週刊誌系の薄っぺらい雑誌ということだった。 だが、俺の驚愕は見開きのページに掲載された写真に集約される。 もしゃもしゃの縮れ毛が、これでもかと言うほどに泡立ち白泡の固まりと化していた。 横には「巷で噂のアジ○ンス! 高級感溢れるコイツで、毎日洗ってセレブ気分だぜ!」という文字がデカデカと踊っている。 「これは……間違いなくチン毛MAXもっさりビューティー……しかもアジエンスで丸洗い……セレブ…すぎる……」 言い表しようのない虚脱感が俺を包んでいた。 古泉がこんなものを読んでいること以上に、この発想にたどり着けなかった自身への失望が―― 「いやぁ、アフロをアジエ○スで丸洗い。いいですね。あなたも読んでみますか?  これは僕が定期購読している髪型専門誌なんですが、今月はアフロ特集でして」  37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:27:10.37 ID:J4dircPH0 所定位置のパイプ椅子に戻り、お茶を一口飲んで古泉と真正面から向き合い 「誰にでも間違いはあるよな」 「ええ、人間誰しも、早とちりしてしまうことは多々あると僕は思っていますが」 「ありがとう、お前はとてもいいやつだ」 共通認識に達したところで、落ち着きを取り戻した。 さて、 1、もうそろそろ部活が終わる時間だ 2、誰かに話しかけよう 名前自由記入(ただし部室内にいる人間のみ)  >>181 181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 00:08:40.81 ID:PVhY/F4e0 ハルヒ 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:28:56.44 ID:J4dircPH0 落ち着いたところで、部室全体を軽く見渡している。 長門はメイド仕事を淡々とこなした後定位置に座って本の虫になっていて、 ハルヒはカタカタと軽快にタイピング音を響かせていた。 何時も通り。朝比奈さんが欠けたこと以外は、一年前と変わらない平和な光景がある。 ハルヒは佐々木たちとの一騒動の後、めっきり閉鎖空間を発生させなくなった。 涼宮ハルヒの精神分析医と自負する古泉医師から詳細は聞かされていないので、 直接的な理由は俺の知るところではない。 だが、閉鎖空間が発生しなくなったことは事実で、古泉がそれに駆り出されることがなくなったのも、また事実。 騒動から一ヶ月した辺りに、古泉がぽつりと 『いざ閉鎖空間が発生しなくなると、寂しいものですね。  3年前は、毎日のように鳴り響く携帯が煩わしくて仕方がなかったのに』 と漏らしていたが、本心は現状に安堵しているはずだ。 そして、衝突後硬直状態にあった天蓋領域と情報統合思念体も今では調停らしきものを結んだらしく(長門談) 長門は涼宮ハルヒの観察役として、俺たちと時間を共にしている。 あれから、半年近くが過ぎた。未来的宇宙的超能力的出来事が、一つも起こらないままに―― だが、依然ハルヒが神様的能力を保持していることに変わりはない。 ただ行使していないだけ。でも「行使しないこと」がどれだけ難しいかは、一番近くにいた俺が、一番よく知っている。 その精神的な成長は、素直に褒めてやるべきだろう。 「さっきからずっとディスプレイ眺めて、何してるんだ?」 「ふふー、秘密よ、ひ、み、つ。完成したら見せてあげるけど今はダメ」 後ろからのぞき込んだ俺に、悪戯っぽく舌を出して画面を覆うハルヒ。 ま、大方HPのリニューアルだろうし、ここは一つ、先達としてアドバイスでもしてやるとするか。 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:32:44.13 ID:J4dircPH0 ハルヒが犯していそうな単純ミスを、思いつく限り列挙していく。 勿論それは俺が一度突き当たった問題であって、俺にホームページ作成の才能があるわけではない。 「な、何バカなこといってんのよ。  あたしがそんなミスするわけないじゃない。  あたしのプログラムは完璧よ――あ」 ふっ。勢いに乗って喋りすぎたな。ともあれ、これでハルヒがHPを弄っていることは明白になった。 「見せてみろ。俺が荒直ししてやるから」 しぶしぶといった風にキーボードを明け渡すハルヒに、変にいじったりしないと約束して、 俺はソースコードの修正を開始した。一つ、二つ――ん、結構あるな。 肩に顎を乗せているハルヒに、間違っている部分について丁寧に説明してやる。 「おいおい、スペル間違ってるじゃねえか」 「煩いわね! これでも頑張ったんだから」 結局、最後まで修正してやることになってしまった。 「ふぅ、こんなもんか。後はハルヒがやるんだぞ」 「分かってるわよ。ほんとは全部一人でやるつもりだったんだから」 だがしかし。ハルヒに教え事をするのも悪くはない。 万能のこいつにちょっとした優越感を味わえる上に、 「でも………ありがと」 滅多に聞くことのできない、お礼を賜ることができるのだ。 報酬なんてそれで十分さ。教授した疲れも妥当だと言えよう。 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:35:36.50 ID:J4dircPH0 パタンという音が響く。長門が小さな手に似合わぬハードカバーを携えて、 「……下校の時間」 抑揚のない、しかしよく通る声で下校宣言をした。 長門の口数は、日に日に、目に見えないような遅々とした速度ではあるものの、 確実に増えている。この下校宣言も、その成果と言えるだろう。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 「それでは、さよならですね」 「………また明日」 分岐路にさしかかるごとに、一緒に歩いていた影が減っていく。 「じゃねー。寄り道しないで帰りなさいよー」 お前は俺のお袋か。 じゃあな、と右手を軽く振ってやる。 暗褐色の夕陽を背に、ハルヒの後姿が小さくなっていく。 トントン その時だった。肩の振動に振り返れば、そこには 1、別れたはずの古泉がたっていた 2、橘京子がたっていた >>200までに多かった方 196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 00:59:32.39 ID:DVpbTWFw0 2 197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/06(木) 00:59:49.99 ID:mteKImFg0 古泉 198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 01:00:18.62 ID:+XO7UC290 古泉 199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 01:00:27.50 ID:DL3rKH250 1で。 鶴屋さんでないの? 200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 01:01:02.81 ID:eeE3VnsXO 1 なんで安価小説でこんなにクォリティ高いんだw 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:38:30.13 ID:J4dircPH0 ついさっき別れたはずの古泉が、当たり前のように佇んでいた。 「うわっ、なんでお前がここにいるんだよ!」 飛び退く俺と、悪びれた風もなくニコリとする古泉。 「驚かせてしまってすみません。どうしてもあなたと二人で話がしたかったものですから」 斜陽でくっきりと浮かび上がる、シャープな顔立ちとスラリとした体躯。それに芝居がかった口調も加えると、 古泉はまるで俳優のようだ。その実態は、本人に無断で一般市民をストーキングする変態野郎なんだが。 「電話じゃ駄目だったのか。文明の利器は利用しなくちゃ意味がないんだぜ」 「いえ、直接でないと意味がないのです。何しろ、彼女に関係することですから」 一瞬だけ。古泉の能面から、アルカイックスマイルが剥がれた気がした。俺は緩んでいた気を若干引き締めて、 「ふうん、ハルヒ絡みね。久しぶりじゃねえか。もう半年になるのか?」 「ええ、そうですね。勿論水面下では例の一件の事後処理が成されていましたが、  彼女と、それを取り巻く人間、つまり私たちが共通の問題に直面するのは、約半年ぶりといえます」 「立ち話もなんだし、場所、移さないか」 「近くに行きつけの喫茶店があります。静かで密談には最適かと」 古泉に案内されるがままに、とっぷりと日の暮れた街並みを歩いていく。 悠々と歩を進める背中を追いながら、俺は古泉の言葉に、どうしようもない不安を抱いていることを自覚していた。 どうしてだ? 半年前から何も変わらず、安寧を保ち続けた俺たちが、何故? SOS団の誰もが、充足した毎日を送っていると信じていた。それをとりまく環境も、人々も、変わらなかったのに、どうして――― 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:41:43.55 ID:J4dircPH0 注文したコーヒーが運ばれてくるまで、古泉は本題については緘黙したままだった。 微笑を浮かべたまま、取り留めもない話(それでも谷口トークよりは数倍マシだ)を投げかけてくる。 喫茶店に付くまでの足取りからするに、切羽詰まった状況でないことは理解していたが――悠長すぎないか、おまえ。 「いえ、決して現況を楽観視しているわけではありませんよ。  事がまだ、急を要する段階ではないだけのこと。それと、恐らく勘違いしているようですから断っておきますが、  今回お話がしたかったのは、我々機関の不手際故の事後処理についてではありません」 ハルヒに関する話題において古泉は嘘をつかない。虚飾もしない。 だから、俺はその言葉を聞いて僅かながらに安堵した。それを悟られないようにして、本題に入る。 「それで……俺たちが半年ぶりに直面した問題ってのはどういった類のものなんだ?」  少なくとも俺には、あいつとの関係に罅を入れた憶えは微塵もないぜ」 俺が早口になっているのは、分かっていた。 しかしそんな俺とは対照的に、古泉は上品な仕草でコーヒーに口を付けてから 「落ち着いてください。まずは僕の話を聞いていただきましょうか。閉鎖空間の発生原理を、あなたは憶えていますか?」 愚問だな。忘れてる方がどうかしてる。 ハルヒの機嫌が悪くなったとき、自分の思い通りに行かなくなったときに閉鎖空間は発生する。 「ご名答です。では、昨年の春の一件の後、閉鎖空間の発生率が零に等しくなったのは何故でしょう?」 「それは……あいつが精神的に成長したからじゃないのか」 この世の中のつまらなさを理解した上で、そこに小さな愉しみを見つける。 そんな"当たり前"のことを、ハルヒがようやく受け入れたからじゃなかったのか。 古泉は過去を反芻するかのように、目を細める。 「ええ、そう考えるのが合理的です。機関の見解も同じでしたよ。閉鎖空間の修正作用が発見されるまでは、ね」 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:44:57.49 ID:J4dircPH0 修正、作用……? 新出単語に戸惑う俺。数学に比べりゃ現国の成績は良かったんだがな。 「破壊されることだけを目的とした閉鎖空間が、何を修正するっていうんだ」 「誤謬がありましたね。修正、というよりは瞬間的な自己消滅と言った方が適切でしょうか。  彼女は閉鎖空間を発生させているわけじゃない。  発生しようとしている閉鎖空間を押しとどめているのです。勿論のこと、識域下でですが」 閉鎖空間は発生する前に封じ込められている。だから表面上はハルヒの精神は安定している。そういうことか? 「ええ」 古泉はコーヒーに視線を落としたまま、あっさりと同意した。 そう簡単に頷いてもらっても困るね。お前の言っていることが正しければ、 「ハルヒは毎日を楽しく思っていない、という結論に至るんだが」 ハルヒが毎日に我慢していたとは思えなかった。 周囲への物腰が柔らかくなったことと、行動に冷静さが伴うようになったこと以外は、出会ったときから何も変わっちゃいない。 100Wの笑顔も健在だしな。 「それは極論ですよ。落ち着いてください。  閉鎖空間の発生規模は4年前に比べれば月と太陽ほどの違いがありますし、  彼女が"叶うはずのない"欲望――宇宙人と邂逅を果たしたいなど――を抑圧するのに、ストレスは付随していません」 「なら、どうして閉鎖空間が瞬間的に消滅するとはいえ発生するんだよ」 間髪入れず質問を返した俺に、古泉は苦笑しつつ 「それが分からないからこそ、あなたにお話を伺いたかったのです」 ……ははあ、そういう訳か。二年前から相変わらずのその問題丸投げ姿勢には、呆れを通り越して感服するね。 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:46:35.62 ID:J4dircPH0 「まあまあそう仰らずに。彼女と心理的な距離が一番近いのはあなたです。  あなたの視点から見て、何か気づいたことがあれば教えていただきたいのですが」 俺は数刻前の古泉と同様、グラスに視線を落とした。 どうやら無意識の内に飲み干していたようで、溶けかけの氷が積み上がっている。 ハルヒについて心当たり、か。 そういや――― 1、今朝はメールのことでこってり絞られたっけ 2、昨夜の帰り道で、「今が楽しい?」なんて聞かれたな 3、別に心当たりはないな >>298までに多かったので 294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 16:45:12.01 ID:5lIYIJ/t0 >>293 2 295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 16:46:17.16 ID:XHwaLHLd0 1 296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 16:47:31.88 ID:eeE3VnsXO ここは2だろ 297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/06(木) 16:50:10.65 ID:+XO7UC290 2 298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/06(木) 16:50:28.85 ID:WLxbJ9UG0 まあ2だな 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:48:52.64 ID:J4dircPH0 「昨日の夜、あいつと一緒に帰ったときのことなんだが……」 俺は心に小さく巣くっていた疑問を、打ち明けてみることにした。 やけに元気がなかったハルヒ。妙に居心地が悪くなって、声を掛けようとしたときに、 「今が楽しい?」なんて抽象的な質問をされたんだっけ。 「それで―――あなたはどう答えたのです?」 ふと視線を上げた先。古泉はいつになく真剣な面持ちで、話の続きに耳を傾けていた。 こんなに眼光が鋭い古泉を見るのは久方ぶりだ。 昨夜の会話には、何か重要な意味が込められていたのかもしれない。 「嘘偽りなく答えたよ。  刺激がちょっと足りないと思うことはあるが楽しいと……って、どうしたんだよ古泉」 蒼い眼光が一層強くなる。それは長門の視線のように無感情で、その実俺を咎めていた。 しかし瞬きした直後にはいつもの細目に戻っており、表情から、ましてや視線からなど、微々たる負の感情もくみ取れない。 古泉はそれからしばし沈思黙考した後、 「それでは――二つ目にして最後の質問です。あなたにとって、彼女とはなんですか?」 シリアスな雰囲気を一転させる、とんでもない質問をしてきやがった。コーヒーを飲み干しておいて良かったぜ。 もし口に含んでいたら、古泉のビューティフェイスがコーヒー塗れになっていただろうからな。 「き、急にそんなこと聞かれても返答に困る」 どもる俺。我ながら情けないほどの耐性のなさだ。 だが勝手に焦っている俺をよそに、古泉は大真面目な顔で復唱した。 「あなたにとって彼女は、神ですか。友人ですか。それとも―――特別な存在ですか」 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:50:36.75 ID:J4dircPH0 俺はあいつとの距離を測ることを、無意識の内に避けていた。 世界を思うがままに書き換えられる、神の如き力を持った少女。 俺はそいつと出会ってからというものの、今の今までずっと共に毎日を過ごしてきた。 それは何故だ。神のご機嫌をとらなければ世界が破綻するから? 済し崩し的に友人関係という既成事実が完成したから? それとも―――備わった能力なんて関係なく、俺にとって掛け替えのない、大切な存在だから? カラン。小気味よい音とともに、グラスの氷が瓦解する。 「古泉、俺は――――」 1、あいつは神で、俺はただ、そいつに近くにいることを許された凡人だと思ってる。 2、最初は鬱陶しかったが、今じゃ俺を愉しませてくれる良い友人だよ 3、俺はいつのまにか、あいつなしじゃ毎日を楽しめなくなっちまった。だから、掛け替えのない、大切な存在だ。 ※ルート分岐  ハルヒルート(まあこれが一番ノーマル)or他の人 >>324 までに多かったので決めます 305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 17:44:00.70 ID:eeE3VnsXO 3 なんかマジでノベルゲーやってるみたいだ 306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 17:52:17.18 ID:P5irAd6D0 今追いついた ここは3だろ 307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 17:52:27.28 ID:S9yL8A9z0 3 308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/06(木) 17:53:15.24 ID:oKXfilSj0 3!なんといっても3! 309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/06(木) 17:57:20.31 ID:HTqoqBiEO お前らハルヒ好きだな〜 3 310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 17:57:25.95 ID:5lIYIJ/t0 最初はヒロイン攻略でしょ ってことで3 311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 17:58:03.83 ID:XHwaLHLd0 2だと思った俺はもう駄目かもしれない だけど、僕は空気を読めなくてもいいんだ!! 312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 17:59:47.45 ID:L3S5RWlP0 3 313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:04:03.81 ID:4a/tHXrN0 3だな 314 名前:ポニーテール仮面[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:06:31.57 ID:OwF4xvah0 ソロモンよ!私は帰ってきた!!! 愛と勇気だけが友達さ!! ポニーテール仮面ただいま帰還!!! 315 名前:―愛に囚われし愚者―ポニーテール仮面[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:09:07.91 ID:OwF4xvah0 とりあえず、ハルヒの幸せを願って3 316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:17:14.66 ID:/YKtWrRnO 3 317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:17:30.58 ID:RVGM/Grf0 圧倒多数によりハルヒルート決定 まあ最初はメインヒロイン攻略だよな 飯食ってくる 7時くらいに戻ってくるぜ 318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:18:12.06 ID:uBdPH21WO 3 319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:18:28.62 ID:OG9K5x6JO これはこのスレじゃ完結しないんじゃね? 全然いいけど 3! 320 名前:―愛に飢えた野獣―ポニーテール仮面[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:19:56.15 ID:OwF4xvah0 7時・・・今は6時20分・・・ それまで保守だな 321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:20:27.08 ID:anDbLizxO 何?まだこのスレ残って…… 3でしょ 322 名前:311[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:22:18.68 ID:XHwaLHLd0 待ってくれ俺をそんな冷たい目で見つめないでくれ!! 俺はこう・・・あんまり直接的に言うとガチホモ嫉妬ルートかと・・・ 保守 323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:27:47.26 ID:WLxbJ9UG0 良かった皆3で 3だよ3!! 324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 18:28:21.34 ID:UnSgCWK00 だれかこのスレ落ちても保管しといて 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:54:48.42 ID:J4dircPH0 「古泉、俺はさ――――」 第一印象は最悪だった。SOS団なんて珍妙な組織に引っ張り込まれ時なんか、 どれだけHR前に話しかけたことを後悔したか知れない。 「いつのまにか――――」 だが、悔悟心は消えていった。SOS団には俺が子供の時に夢見ていた幻想が、現実化していた。 超能力者、未来人、宇宙人、ひいては神様にまで振り回されて。 いやいや引きずられていたはずの俺は、いつしか、自らの意志で関わりを持つようになった。 「いや、ほんとにいつのまにこんな風になっちまったのかわかんねーんだけど―――」 中庸平凡といった言葉が似合う俺を、こっち側に無理矢理引き込んだのはあいつだ。 でも、俺にフツーに暮らすよりもずっと充実した日々を贈ってくれているのもあいつだ。 認めるのは悔しいが、 「あいつなしじゃ毎日が楽しくないんだよ――――」 だがしかし。俺を飽きさせぬ摩訶不思議体験はハルヒの神様パワーだとしても、 そのパワーの持ち主に対する気持ちは掛け値なしの、純粋な気持ちなわけで……まあ、要するに 「俺にとってあいつは、孤高の神様でもただの友人でもない、特別な存在なんだ」 ……いっちまった。こんな芝居じみた科白は古泉の専売特許だってのに。 古泉は俺の答えを聞いてからは黙ったままで、なにやら考え事をしている様子。 俺はといえばあんなことを口走ってしまった後悔の念でいっぱいで、 もうまもなく脳内で、脳内人格による"大反省会"が開かれようとしていた。 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 14:57:56.10 ID:J4dircPH0 「ふふ……どうやら僕は、あなたを見くびりすぎていたようですね」 しかし議長が議員のカウントを始めたところで、反省会は頓挫する。 「あなたの意志は十分に伝わりました。これで僕も、あなたにヒントをあげることができます」 瞑目から覚めた古泉は、意味ありげな笑みと共に、そう宣った。……ヒント? 「ええ、涼宮さんを葛藤から救い出すためのヒントです」 ここで俺は、ある矛盾が生じることに気づいた。ちょっと待て。 出題する側は答えが分かっていなきゃ、ヒントなんて余裕かます以前に出題できないはずだ。 「答えならとっくに分かっていますよ。  客観的な視点とは、主観者よりも多彩な推論が立てられるのです。  先ほどの質疑応答で、僕は抱いていた仮説に、確かな確証を持ちました」 「ほう。ならご託はいい。さっさと解決方法を言え」 俺なりに精一杯強面をつくって、超能力野郎を脅迫する。だがそれは軽くそれを受け流し、 「あなたが自発的に理解しない限り、意味はありません。それは僕の強制になってしまう」 「時間的な余裕はあるとしても、だ。もし俺が何時までたっても気づけなかったらどうするつもりなんだよ」 お馴染みのポーズをとったまま、古泉は続ける。 「その心配はありえませんね。彼女の生成された瞬間消滅する閉鎖空間は、  機関の戦闘員が侵入するのがやっとなくらい矮小なものです。放置しても、現界にはなんら影響はありません」 「……騙してたのかよ。一人で焦ってた俺は、なんだったんだ?」 「おや、僕は一言もタイムリミットがあるとは言っていませんが。  それに――彼女の中に蟠りがあると知った今、あなたにそんな縛りは意味がないのではありませんか?」 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:00:03.57 ID:J4dircPH0 「ぐ……」 痛いところをついてきやがる。だが、先ほど「ハルヒは俺にとって大切な存在だー」と豪語した俺に、 上手い返しは見あたらない。 「じゃあヒントでいい。教えてくれ」 「まあヒントというわけでもありませんが。  彼女の行動の一つ一つに、目を向けてあげて下さい」 「は……?」 あまりに大雑把なヒントに、拍子抜けする。 「そして、あなたと出会った当初の彼女と、どう変わったのか。それをもう一度再確認してみてください」 「そんな適当なことでいいのか」 「ええ、構いません。十分です」 ………。それきり喋ろうとせずにこちらをニコニコと見つめる古泉に、俺は1分間だけ付き合って、 「あー、俺、帰るわ」 コーヒー代を置いて席を立った。不完全燃焼感が拭えないが、もう話すことは何も残っていない。 もし俺が佐々木なら、知的トークで深夜まで盛り上がれるんだろうけどな。 「じゃあな」 新しいコーヒーを注文した古泉を捨て置いて喫茶店を後にする。春先だというのに、夜風は秋風のように冷ややかだ。 ふと空を見上げれば。菫色に染まった空に、不定期に瞬く、寂しげな外灯があった。 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:07:16.70 ID:J4dircPH0 ―――――――――――――――――――――― 「ふぅ」 二杯目のモカを一口。長広舌の所為で乾燥した口内が、温かい味で満たされていく。 美味しい。素直にそう思える味だ。それでも昨年卒業した、朝比奈さんのそれには遠く及ばないが。 必要なファクターは既に出揃っていた。 後は、そう――不器用な彼女と、鈍感な彼が如何に誤解なく歩み寄れるか。 相互理解さえしてしまえば、後は済し崩し的に事は進む。僕の補助は無用になる。 これでもう、表面的に僕ができるのは静観だけとなった。 例えイレギュラー因子が登場したとしても、僕に手出しをする資格はない。 まあ……彼は自分の気持ちには正直な人だから、この想定こそが無意味なのだろうけど。 カラン。残ったモカは四分の一ほど。 もし彼が彼女の蟠りを重要視していなければ、僕はどういった反応を返していたのだろう。 明確な答えを貰った今となっては、仮定が難しい。 けど、一つだけ自信を持って言えることがある。例え返事が快いものでなかったとしても。 ―――僕はSOS団の一員として、彼らの仲を取り持つよう努力したのではないかと思う。 摩擦することのないすれ違いを傍観するのは、あまりにも辛すぎるから。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 遅くなったことに関して、家族の反応は様々だ。 「連絡しなさいよ」と小言を漏らす親。俺が帰ってきたことにも気付かずに爆睡しているシャミセン。 そして最愛の妹はというと―― 「ただい「キョンくんおかえりー! ずっと待ってたんだよー!!」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:14:02.90 ID:J4dircPH0 なあ妹よ。俺はときどき、お前が何歳か分からなくなる。 さて。俺は風呂に入ったあと、居間でTVを鑑賞している。 だがどれもこれもつまらない番組ばかりで、チャンネルが定まらない。 ここは―― 1、メールのチェックでもするか。昨日はそれを怠って災難にあったわけだし。 2、古泉の話について俺なりに考えてみよう。 3、久々に妹と遊んでやるか。 >>352までに多かったの 350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 20:37:54.29 ID:+Nu3vrWmO 3 351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 20:38:04.28 ID:eeE3VnsXO 文才があふれてますね 2 352 名前:ポニーテール仮面[] 投稿日:2007/12/06(木) 20:38:21.49 ID:OwF4xvah0 3もいいかもしれんがここはあえて2で。 …う〜む一番書きにくそうだな。ごめんよID:RVGM/Grf0さん。 古泉の話を、もう一度俺なりに整理してみよう。 ハルヒは昨年の春の一件の後、閉鎖空間を発生させなくなった。 俺はそれを、ハルヒの外面的印象から、精神的に成長したのだと決めつけていた。 だが、それは俺に都合がいいだけの、なんとも勝手な解釈だった。 閉鎖空間は発生していた。だが、瞬間的に抑圧されて消滅し、機関の観測員に発見されずにいたのだ。 この特殊な閉鎖空間(以後、便宜上「特殊閉鎖空間」と呼ぶ)を機関が認知していなかった理由は、もう一つある。 それは特殊閉鎖空間の規模が、あまりに矮小であったこと。4年前の最盛期と比べると、それはとてもとても小さなものらしい。 偶発的にでも発見されたのは、奇跡的なことだったということだ。 が、発見されたところで、機関のお偉いさんにはその発生原因が突き止められなかった。古泉は俺に助力を求めた。 その結果。古泉は特殊閉鎖空間のタネが分かったらしいが、質問された俺はといえば、さっぱりである。 古泉はハルヒの動向に目をむけろと言っていた。過去のハルヒとの違いが、答えにつながるらしいが―― まったく、古泉も具体性に欠けるヒントをくれたものである。 ちなみにこの事態の解決にタイムリミットはない。 特殊閉鎖空間が拡大する蓋然性は無に等しく、放置していても現界に影響はないからである。 要するに。ハルヒの蟠りを解消するか放置するかの判断は俺に一任されている、ということになる。 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:19:56.42 ID:J4dircPH0 「キョーンーくんっ!」 と、俺が思考に耽っていたときのことだった。油断していた俺はその掛け声に気づき遅れ、 「ぶへぇあ」 見事にボディプレスが脇腹に決まり、情けないうめき声を上げる俺。 早速マウントポジションをとった妹が、小悪魔的冷笑を口端に浮かべる。怖い。怖いよMy sister。 妹の愛らしい手は近場にあった小型の直方体をつかむと、一気に俺の顔面に振り下ろし、 「はい。携帯ふるえてるよー。キョンくんってば、ぼーっとしすぎ」 携帯を胸に落として去っていった。兄からの忠告だ。 ワンピース型のパジャマでマウントポジションはやめたほうがいいぜ。その、色々と問題がある。 「えーなんでー? あ、眠いからねるね。おやすみー」 「ああ、おやすみ」 妹に夜の挨拶を返して、携帯のディスプレイに目を向ける。新着メール一件、か。 誰だろう。俺は携帯を持ちながらもメールを多用する人種ではないので、 こちらから発信しない分、発信されることもないという結構寂しいメールライフを送っている。 例外はいるものの、あいつを除けば暇つぶしにメールを送ってくるような暇人はいない。 いるとすれば、歴とした用件を携えているやつだけだ。 片手でボタンを操作して、俺はメールボックスを開けた。 送信者の名前は―― >>375 自由記入「      」 375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 21:18:35.64 ID:13Aa5Xu60 ハルヒ 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:22:50.16 ID:J4dircPH0 「ハルヒ……」 送信者の名前が、ぼう、とディスプレイに表示される。 一覧を見る限り、本日のハルヒからのメールはこれが初めてのようだ。 俺は今頃夢の世界をはね回っているであろう妹に、心中で謝辞を述べた。 さんきゅ、お前のおかげで早期発見することができたぜ。 4/24 from:ハルヒ subject: 今起きてる? 起きてたら絶対メール返しなさいよね スクロールバーはない。用件は記載されておらず、俺が起きているかどうかの確認らしい。 それにしても……素っ気ない文章だな。絵文字を使用しているのが唯一の救いだ。 初めてメール交換したときなんかは、あまりに殺伐とした文章で辟易したもんだった。 疑問符や感嘆符は使用されているものの、顔文字や絵文字が一切使用されていなかったのである。 後日伺えば、曰く、余計な装飾は不要とのこと。 あれからあいつに絵文字による感情表現の大切さを説いてやって、次第に絵文字をつけるようになったんだっけ。 と、閑話はここまでにしておいて。 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:24:49.35 ID:J4dircPH0 to:ハルヒ subject: ああ、起きてるぜ 昨日はマジで悪かった それで、今日は何の用だ? 送信ボタンをプッシュする。送信中...という文字が表示されて、俺のメールはハルヒの元へと旅立っていった。 便利な時代になったもんだ。どんなに離れていても簡単にコミュニケートできるなんて、古人は想像もしなかったに――― ヴー、ヴー、ヴー……送信終了から約40秒後のこと。どうやらハルヒは、俺にモノローグを吐露する寸暇も与えてくれないみたいだ。 from:ハルヒ subject: 用なんて何もないわ メールしたいからメールしたの 用件ないって、お前な。 メールしたいからメールしたいって、目的と手段がごっちゃになってないか? to;ハルヒ subject: まあ予想はついてたけどな 要するに暇なんだろ? 俺で良ければ話し相手になるぜ 送信、と。そして携帯を脇に放り投げた30秒後に、携帯が着信したことを誇張する。 ハルヒの反射神経が天性のものであることは重々承知していたが、幾ら何でも早すぎる。 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:26:17.95 ID:J4dircPH0 from:ハルヒ subject: あんたは大きな勘違いをしてるわね キョンが話し相手になるんじゃなくて あたしがキョンの話し相手になってあげるの あー…こんな簡単に伝家の宝刀を出さざるを得なくなってしまうとは、俺も修行不足ということか。 急激に衝動が込み上げ、俺はそれに流されるままに、 「やれやれ」 深〜い溜息をはき出した。ハルヒ節ここに極まれり、だな。 さて、この我が儘な団長様を愉しませるには、どんな話題が良いだろう? >>445 自由記入「      」 445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/06(木) 23:41:55.54 ID:eeE3VnsXO 今度の休日は遊びにいこうぜ 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:27:39.97 ID:J4dircPH0 携帯片手に、しばし思案する。 ふと焦点をずらせば、なんとなしに流していたTV番組が特集をやっていた。 『――いよいよ開場が明日に迫った――たくさんの入場客で賑わうと予想され――』 都会近くに建設が進められていたテーマパークの話は、谷口に聞かされて知っていた。 なんでもどこかの財閥が巨額の資金を擲って建造した「金にものをいわせた娯楽施設」らしい。 一瞬脳裏を、麗しい翠緑髪を靡かせた、ハルヒに勝るとも劣らない明るさの先輩がチラつく。まさか、な。 ……いや待てよ。一昨日夜桜を見せにもらいに行ったとき 「今度うちの家の一大プロジェクトが完成するにょろ。その時はみんなで遊びにきてほしいっさ」 とかなんとか言ってなかったか? 自然、俺はニュースキャスターの声に、耳を欹てた。 『――――鶴屋財閥は推定で――億円かけたと言われおり―――』 ビンゴ。 「マジかよ……」 嘆息する。 鶴屋家の総資産額は日本の国家予算を遙か眼下に、どこかの大国と渡り合えるほどなんじゃないだろうか。 でもま、丁度良い話題が見つかったもんだ。早速ハルヒに、知っているか聞いてみよう。 to:ハルヒ subject: 鶴屋さんの家が造ってるっていうテーマパークのこと、知ってたか? なんでも明日が初開場らしいんだが 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:29:13.98 ID:J4dircPH0 from:ハルヒ subject: あ、あんた……それわざと…じゃないわよね キョンだもんね この前あれだけ誘ってもらったのに忘れたの? 愕然とする。くそ、俺の脳はもう寿命が近いということか。 だがしかし、ハルヒが知っているなら話ははやい。 to:ハルヒ subject: すまん、忘れてたみたいだ ところで……どうだ? 今度行ってみるっていうのは 折角誘ってもらってるわけだし 送信、っと。女の子をデートに誘う、なんてシチュエーションはどきどきモノの筈なのだが、 なかなかどうして、今の俺は落ち着いていた。 古泉の言葉を反芻する。ハルヒの動向に注目しろ、と古泉は言った。 それがハルヒの蟠りを氷解させる、足がかりになると。 ならば、テーマパークで遊ぶのはそれを確認する絶好の機会である。ヴー、ヴー…… お、返ってきた返ってきた。二つ返事でOKしてくると有り難いんだが。 from:ハルヒ subject: あたしは構わないけど 他のみんなも誘うの? 長門と古泉の顔が、眼窩に浮かぶ。俺としたことが、完全に他のSOS団メンバーを失念していた。 ここは――1、他のメンバーも誘おうか        2、二人きりで行こう        >>490までに多い方 483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/07(金) 00:23:43.07 ID:u8DCXcX4O 2 484 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/07(金) 00:23:44.83 ID://6UsQ4q0 2 485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/07(金) 00:23:51.50 ID:kIywUJmOO 2 486 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/07(金) 00:23:59.94 ID:ynMXANjg0 2 487 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/07(金) 00:24:15.65 ID:XgP2eEfI0 2 488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/07(金) 00:24:34.16 ID:Ds8bZv2YO それでもある程度推測することは可能だろ さっきのチソ毛のように話を別の方向に持って行くなりだな しかしそれも含めて才能だ、この1には頭が下がる 携帯厨はこの辺で引き下がります 489 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/07(金) 00:25:04.69 ID:9MaUaj5g0 個人的には2だけどキョンなら1 490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/07(金) 00:25:12.61 ID:XarJ5EtbO 2 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 15:30:55.20 ID:J4dircPH0 to:ハルヒ subject: 二人きりで遊びに行かないか 古泉はともかく、長門はあまりああいうトコ好きじゃなさそうだし…… 久々にお前と俺だけってのも悪くないと思うぜ? 気恥ずかしくて長門の喧噪嫌いを引き合いに出したが、本意は三行目に集約されている。 確かに二人きりという条件は、ハルヒの様子を観察するのに役立つだろうが―― いつしか俺は、ハルヒと二人で遊びにいくということが、何よりも愉しみになっていた。俗に言う「目的のすり替わり」である。 携帯を放り投げてから、3分後。若干の間隔を開けて返ってきたメールを、急ぎ開封する。果たしてハルヒの返事や如何に? from:ハルヒ subject: ま、それも悪くないかもね。 行くのは……土曜日がいいわ どうせ知らないだろうから教えてあげるけど 明日はプレオープンで、明後日から本格的に稼働するの それに合わせておっきなセレモニーもやるそうよ ……どうやら喜ばしいことに。ハルヒも乗り気なようである。 結果的に部活は休んでしまうことになるが、団長直々のずる休みだ。 団員が咎められるわけもない。俺はSOS団公認の休日を、ハルヒと愉しむとしますかね。 to:ハルヒ subject: へえ、セレモニーか……ますます楽しみだ 詳しい話はまた明日聞かせてくれ もう時間も遅いしな   おやすみ 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/08(土) 16:07:55.59 ID:J4dircPH0 携帯をポケットにしまって、体を起こす。 食べた後すぐに横になっていた所為か、全身が鉛のように重かった。 牛になるといういう寓話は、存外、嘘でもないのかもしれないな。 自室にたどりついた俺は、倒れ込むようにベッドに沈んだ。 白塗りの天井は消灯しているのに薄明るく、ふと、光源の探して視線を彷徨わせる。 淡朦朧とした光の正体は月光だった。窓外は暗闇に包まれていて、その中心で半月が煌々と輝いている。 雲はなく、しかし星もなく、月だけが昇っている空。ただただ索漠とした印象の、幻想的な風景が広がっている。 だから。微睡みの中で聞こえた 「おやすみ、キョン」 という声も、きっと、夢想の一部に違いない。