SOS団のデジモンアドベンチャー!のようです


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―8月1日未明―

寝苦しい夜を過ごしていた俺を、突然に落下の感覚が襲った。
キョン「なんだ?!」
目を開けるも、すぐに眩い光が視界を覆う。
俺は、歪んだ色とりどりの空間になす術なく巻き込まれていった。
だが巻き込まれ意識を失う瞬間、俺は思った。
俺はこんな光景を確かに見たことがある、と。

体の節々に違和感がある。
横たえた体には固い感触が伝わり、
それはいつもの俺が部屋の床を踏む感覚と同じだった。
不鮮明な意識でとりあえず安心した。
ここは俺の部屋のようだ。
キョン「くそ、8月始めの俺の朝はベッド落下からか。」
ハルヒ「わ、トカゲが喋った!」
・・・ハルヒ?

キョン「おい、お前はキョン様の部屋でなにをやってるんだ。」
ハルヒ「キョンの?ここキョンの部屋?で、あんたはキョンなの?」
ハルヒが俺に怪訝な顔を向ける。
俺か?当たり前だ。ハルヒがここに居るほうがおかしいだろう。

ハルヒ「ホントに?!キョンがトカゲになっちゃったわ!」

トカゲだと?
また訳の分からないこと言い出しやがった。
やれやれ。・・・・・・なんだこれは?
キョン「手がオレンジ色だ。足も。」

これには焦った。
何度も時間移動を繰り返し、多少のことでは驚かないと自負していた俺だが、
今までに自分の体が人外の生き物に変化したことはない。
ハルヒ「どうしちゃったのあんた?病気?」

病気なら恐ろしい奇病もあったものだ。
見た限りオレンジ色に変色し爬虫類のように変形しているのは
腕だけではないらしい。全身これトカゲ、である。
というかこのトカゲ見たことあるぞ。
・・・アグモン?

俺はデジモンになっていた。

SOS団のデジモンアドベンチャー!のようです

第一話「選ばれしSOS団」

ハルヒ「おかしいのはそれだけじゃないの。」

ハルヒは変態には珍しく、幽霊を見たと語る一般人の顔をした。
なに?俺が架空の生き物にマトリクスエボリューションしているほかにも
恐ろしいことがあるのか。
頭が痛い。もうイヤだ。俺は寝る。
ハルヒ「バカ!怠け者!そのでかい頭を起こして周りを見るのよ!」

体は俺は思ったより自由に動く。
空気もなんだかいつも清清し・・・・・・・

アグモン「こいつは一体どういうことだ。」

あるはずの部屋の壁は崩れ、その断面にはコケ類が生えていた。
なくなった外壁から眺める景色は、大自然である。
俺の知っている街の原型は辛うじてあるようだが、
住宅街は見たこともないカラフルな植物、大木が群生し、
大きな川も流れているようだ。

高層建築物からは派手に滝が流れ落ち、
それが朝日を受け輝いている。

ハルヒ「街全体がこうなのよ。」
アグモン「俺がトカゲで、街はジャングルか。コレは楽しいな、ははは。」

今までにこんなことがあったか?
異様な世界を見て初めに思い浮かべたのはモチのロンで閉鎖空間だ。
しかしあの世界はハルヒの虚無感と破壊衝動を反映した、非常に殺風景な世界だった。
今この世界はは生命に満ち満ちている。

ハルヒ「これからどうしたらいいんだろ。」

世界の劇的な変化に戸惑ったのは俺も一緒だが、
こういうトンデモ展開になったときの対応は一つだ。

ハルヒ「北高に行けばなにか分かるの?」
アグモン「多分な。」
俺たち二人は家を出て、似非ジャングルを歩いていた。
珍しくハルヒがおとなしい。さすがにこの不気味なジャングルではな。

ハルヒの憂鬱によって灰色空間に送り込まれたときも、
突然世界がハルヒたちが消失した世界に改変されたときも、
俺は原因解明、脱出の手がかりを北高のSOS団のすくつに見つけた。
今回も期待していいよな?長門よ。

また長門頼りかヘタレ前髪とか思った奴は腹筋10回な。

俺たちは元街のジャングルを真っ直ぐ、
といっても真っ直ぐ進めないところを回り込みつつ北高へ歩いていた。

ハルヒ「人いないわね。」
アグモン「俺はある程度は予想していたがな。」

こんな古代遺跡じみた街に人が居るわけがない。
ハルヒは人に含まれないぞ。

ハルヒ「ぎゃあ!キョン見て!見て!」
俺が冷静な頭脳を披露していたところ、ハルヒが叫んだ。
年頃の女の子ならもっとかわいく叫べ阿呆。

朝比奈さんの爪を煎じて飲ませてやりたいぜ。
お茶くみの腕も一流なあの人の煎茶なら効果は絶大だろうよ。
間違いない。

アグモン「頭をバンバン叩くな。火ぃ噴くぞ、こら。」
ハルヒ「うるさいわね!それよりなにあれ!」
アグモン「タネモンだな。」

俺は興奮するハルヒを尻目に一瞥しスルーした。
人が居ず、デジモンがいることに確かに少し驚いたが、想定の範囲内。
そして幼年期にかまっている暇はない。

これでも俺は今年17になるデジモンブーム直撃の世代だ。
初期のデジモンならば大体把握している。
放映当時小学生の俺は自分も選ばれし子供になれないかという希望も少し持っていた。
え?普通だよな?

しかし、俺たちの目の前にスルーしたくても出来ないものが立ちはだかった。

「そいつ」は間接から鈍い音を立て、
自慢の一対の刃を噛み合わせ俺たちを威嚇している。

ハルヒ「クワ・・・ガタ・・・?」
アグモン「うわあ・・・」

ちょっと待て、早い、早すぎるぞ。
これはまず間違いなくバトルだ。俺にはわかる。
伊達に夏休みはキャンプどころか自宅でゲーム三昧の青春だっただけはあるぞ。
なめるなクワガタ野郎。

しかしそうした俺の凄みも、現実世界のリア充どもには通じないように
この目の前の巨大クワガタには通じないようだった。

ハルヒ「ちょっとキョン。あいつ分かるの?元引きこもりでしょ?」
アグモン「引きこもりではない。仙道を往く者だ。」
ハルヒ「なに言ってん、ほ、ほら!来るわよ!」

ええい、『主人公達の会話は敵が待ってくれる』の法則で時間稼ぎを
試みたが無理があったようだ。現実も厳しいが非現実も同じように
俺には厳しいらしい。

来る!!

俺はとっさにハルヒを突き飛ばした。
横目に見えていた岩の陰へとだ。俺のヒーロー気質が咄嗟に出たわけだ。
ここ大事な。

巨大クワガタ、いや、もう勿体ぶる必要はないな。
クワガーモンは俺へとまっしぐらに向かってきた。
考えろ。
どうすれば勝てる?いや、生き延びられる?

俺は10年ほど前の記憶を掘り返した。

『進化』

すぐにこの単語が頭をよぎった。
というか進化しなければとても勝てる相手じゃないのはアニメで実証済みだ。
アニメがソースな俺きめえええなんて思っている場合でもない。
手がかりはそれのみ。

無常にも俺の思考が終わる前にクワガーモンが目前に迫る。
考えている暇はない!闘争本能に頼るのみ!

アグモン「行けるか!?―――ベビーフレイム!!!」
腹をナイフで突き刺され内臓が出そうになったことはあるが、
火を噴いたことはもちろんない。
出ろ!出ろ!!

ダメか?!
こみ上げてくるのは恐怖のみ。やはりまともに進路も決められない男に
いきなり火を吐けというのが無理な注文なのさ。
と、俺がアッサリ諦めた瞬間、

ハルヒ「キョン!ベビーフレイムよ!」

ハルヒの声に突然力が湧き上がる。なぜだ。いや、これは・・・
クワガーモン「ギギギ!」

飛びのいた俺の口腔から唐突に吐き出された炎は、
クワガーモンの甲殻に防がれながらも、
その小爆発は姿勢を崩すだけの効果はあったようだ。

クワガーモンの一対凶器は、俺の脇の密林に突っ込む。

密林の奥へ消えていくクワガーモンを背中に感じながら俺は思った。
そうか、やはりな。
ということは、『アレ』をハルヒが持っているのか?

ハルヒ「あれ、これ光ってるわ。」

なんというタイミング。これがデジタルワールドか。
最も、いま、見たいような、見たくないような、
と俺をジレンマに追い込んでいた物体が、
ハルヒのスカートのベルト部分に付いていた。

アグモン「持っているなら持っていると言ってくれ・・・。」
ハルヒ「あんたの部屋で目を覚ましたら持ってたの。」

『デジヴァイス』だ。
選ばれし子供たちが所持していた特殊な携帯端末。
パートナーデジモンと子供たちを結びつけ、
また遭遇したデジモンのデータを感情豊かな渋い声で解説してくれる便利機械だ。

ハルヒ「さっきのデジモンのデータが見られるわ!すごい!」

はしゃぐハルヒをよそに俺は絶望のどん底だった。
もしかしなくとも俺はハルヒのパートナーデジモンのようだ。
母さん。公務員になれと説教してくれた母さん。
ごめんな。
俺たぶん将来スカルグレイモン。

―Aパート終了―

アグモン「クワガーモン、追ってこないな。」
ハルヒ「意外と効いてたのよ。あの火が。」

太一たちはそう思っていたところを二度目の襲撃を受けたんだ。
こいつの言ったことは一種の死亡フラグでしかない。
そう思うと自然と足取りも早まる。

北高へ。

北高に到着した。
いろいろあって到着した。しかしあのクワガーモンに再会していないのは、
俺の首と体がまだ仲睦まじくしていることから分かる。

ものの見事にツタが這い、壁は崩れ、大木が生えているが、
確かにここは北高だ。そして部室棟は無事のようだ。

道中、俺はおおまかなデジモン世界の世界観をハルヒに解説し、
この世界はそれに良く似ていると伝えておいた。
聞いてみるとハルヒも最初のデジモンならば少しだけ見ていたらしい。

俺の説明を聞いてからのハルヒは、大はしゃぎ甚だしい。
正直うざい。

そして当然だがパートナーデジモンの件はハルヒには黙っていた。
なぜか?ハルヒが俺を無理やり進化させようとするに違いないからだ。
俺はまだウイルス種になりたくないからな。

ハルヒ「アグキョン!部室に行くんでしょ!ほら、いけいけ!」
頭の上からでかい声が響く。
アグキョンだと?語呂がいいのが悔しい。
しかしだんだんと動物扱いになってきているのがアレだな。

ハルヒ「ほぉら!はいどう!はいどー!」
アグモン「騒ぐな揺するな腕を回すな前が見えん。」
こんな具合だ。
いまハルヒは俺に肩車され、暴れん坊将軍気分。
俺は馬か。

ハルヒ「部室棟、近くで見ると思ったより侵食されてるわね。」

懐かしい気がする。というお決まりの感想を漏らしつつ部室棟へ。

植物に塞がった入り口を恐ろしい膂力で(ハルヒが)ぶち破り、
俺たちは無事に部室棟への進入に成功した。

長門はいるだろうか。
あいつの無機的な雰囲気がこの世界に似合わず、
いるのかどうか少しばかり不安だ。

まあいいか。いなかったら俺は死ぬそれだけだ。

ハルヒ「着いたわ!」
いてくれよ、長門。俺は心の準
アグモン「躊躇いもなくバーンとあけるな!」

勢いよくドアを開け、SWAT顔負けの突入をするハルヒにツッコミを入れつつも
俺はハルヒと共にすかさず部屋を見渡した。
ハルヒ「誰かいる!?」


長門「いる。」

アグモン「長門・・・。」

感動の再会だがこっちがオレンジ色のトカゲなのがちょっとシュールだ。

我らがSOS団が誇る、宇宙印の万能人間はいつもの場所に存在した。
俺は安堵した。こういうときにはこいつがいなければ話にならない。

ところで長門の俺への視線が微妙におかしいのは気のせいだよな?
まさか長門、俺の姿を見て「ユニーク」だとか思っていないよな?

ハルヒ「有希。なにそれ。ぬいぐるみ?」
安心しきって気が抜けていた俺は、ハルヒの声に、
初めて長門が本ではないものを抱えていることに気がついた。

長門「テリアモン。」

アグモン「テリアモン?モーマンタイの?」
長門「知らない。」
そりゃそうだよな。3年前に現れた女子がテリアモンを詳しく知っているはずがない。

待て。
それもおかしい。
長門が『知らない』だと?
世俗的かつこの状況では必要な知識のはずだ。

そして長門にテリアモンだと?
無口だが意外と可愛いもの好きというギャップは狙えるが、
あえて長門が選ぶような、実戦向けのデジモンではない。

俺はテリアモンから長門へ視線を戻した。
長門は俺に、俺にしかわからないほど希薄だが、
意味ありげな視線を向けている。

ハルヒ「こいつかわいいわね!もらっていい!?」
長門「無理。」

ハルヒがテリアモンを抱え大騒ぎし、
俺と長門がアイコンタクトを図っているとき、部室のドアが開いた。

古泉「おやおや、二人とも。やっとお出でですか。」
みくる「涼宮さん、やっぱり無事だったんですね!」
俺は振り向いた。
乱暴な植物に席巻された部室に、SOS団仕様のエンジェウーモンが降臨していた。
しかしよく見ると朝比奈さんた。デジモンになってはいない。

アグモン「朝比奈さん!」
みくる「・・・・・・!!!」

みくる「ふぎゅわあああ!!」

部室に朝比奈さんの悲鳴がこだました。
すいません。俺いま恐竜だったんですよね。
畜生!

古泉「さて、今回はいつもより状況が混沌としています。」
アグモン「見りゃ分かる。いや、何も見なくとも俺の足が逆に曲がっているから分かる。
      ・・・長門も状況を把握していないみたいだな。」

古泉「その通りです。彼女は最も早く部室に到着していましたが、
    この世界には気がついたらいた、
    情報統合思念体へのアクセスも非常に困難、とのことです。」
アグモン「そんなことがあるものなのか。」

俺は古泉と部室前の廊下で、窓から変貌した街を眺めつつ話し込んでいた。

長門の親玉が手を焼くような空間。

そういえばデジタルワールドはネットのなか、という設定だったな。
膨大な情報が行き来する世界の真っ只中に閉じ込められれば、
さすがの長門も外部への接続が困難になるかもしれない。

古泉「彼女の見解もほとんど同様です。」
アグモン「しかも、世界が俺たちの地元の意匠を残しているところを見ると、
       ほぼ間違いなくハルヒの力も加わっているな。」
古泉「僕と長門さんの共同見解としては、
    僕達は何者かによって、ネット世界に招かれた。
    涼宮さんの能力を狙った何者かに、ね。」

そうだろうな。
ハルヒのみの力で起こったにしては、
この世界がハルヒの知らない、デジモンワールドに変わったのは不自然すぎる。

その何者かがハルヒを引き込んだとき、
ハルヒの力が俺たちを、そして街の情報を巻き込んだ。
つまりハルヒは迷惑な奴だ。
今の時点ではこう考えるのが妥当か。

古泉「まあまあ。僕達SOS団はまさに、涼宮さんに選ばれし子供たちですからね。」

古泉「ところでキョン君。僕の姿を見てくれ。こいつをどう思う・・・?」

アグモン「すごく・・・ガブモンです。」
触れたくなかったので触れなかったが、古泉はガブモンになっていた。
なんでこいつがガブモンなんだ。テントモンあたりでいいだろ。

ガブモン「ジョグレスなんて事態になったらどうします?」
アグモン「それを言うんじゃない。冗談になってないんだぞ。」
俺は泣きたくなってきた。
もし、あると思いたくはないがもし・・・ダメだ涙が・・・

ガブモン「あれ?どうして泣きそうなんですか?」
アグモン「死ね!ガチホモ!」

そうして、自然な流れで俺が某チョイ悪自動車修理工のことを考えていたときだ。

『っ!!!』
部室から3人分の悲鳴があがったと思うと
窓の砕け散る音が校内に響き渡った。

ガブモン「羽虫、ですか?!」
アグモン「やっぱりきやがったか!」

俺の耳に不気味な羽音が聞こえてきた。でかい。
覚悟を決めるしかないようだ。

俺の腕がいつも俺と朝比奈さんの着替えを隔てている
ヘブンズゲートとも言える部室のドアを弾き飛ばした。

アグモン「朝比奈さん、ハルヒ、長門!」

ハルヒ「キョン、あいつが!」
タダでさえ急に老朽化し脆くなっていた部室の壁が無残に剥ぎ取られていた。
奴の姿は見えないが、羽音はまだ耳に届いている。
旋回でもしているのだろう。

ガブモン「く!またあいつですか!」
古泉の口から意外な言葉が出た。
知っているのか。
ガブモン「ええ、ここに来る途中で襲われましてね。
      恥ずかしながら地形を利用して逃げ回るので手一杯でした。」

長門と朝比奈さんも無事だった。
朝比奈さんは誰もが予想してとおり、
その天上のものとしか思えないお顔を引きつらせ、泣き声も上げられないようだった。
俺は二人の無事を確認し、窓の外を一望するために外壁に駆け寄った。
すると、

みくる「わああああ!!」
予期せぬ方向から刃が突き出でた。
天井だ。
部室棟の上部は大きく抉られ、弾けとんだ。

舞う破片。飛び去るクワガーモンの風圧も部室を蹂躙していった。
空とこの部室を阻むものは無くなった。
なんて威力だ。私もビビる。

ガブモン「く!」
古泉はガルルモンのデータのカスだという毛皮で朝比奈さんを
破片から守っていた。
それ以上近づいたら殺す。

一方俺はパートナーデジモンの性ででもあったのか、
それなりに硬い皮膚を盾にハルヒを守っていた。

―――長門は?

俺はそこで恐るべきものを見た。
いや、予想はできたはずだ。しかし慣れというものは怖い。
てっきり大丈夫なものと思い込んでいた。

アグモン「長門!!」
長門は腕から血を滴らせていた。
傷は深くはないようだ。裏返せばそれしきの傷を回復する力が今の長門にはないのだ。

俺は走り寄ろうとした。

テリアモン「あなたは涼宮さんを守ってちょうだい!長門さんは任せて!」

・・・・・・・?
まさか、あのテリアモン・・・。

破壊された部室。
迫り来る刃の恐怖。
血を流す長門。
俺のトラウマが御開帳した。

テリアモン「あなたは涼宮さんを守るんでしょ。ほら!」
アグモン「お前・・・朝倉か?」

テリアモン「ふふ♪久しぶりね。」

ガブモン「キョン君!奴が来ます!」

うるさい。俺はそれどころではない。
クワガーモンがなんだ。
奴には俺を殺そうとした前科はないだろう。
しかしこいつは。
目の前のこいつは。

長門「大丈夫。」
長門。お前がそう言うなら信じてもいいのか?

朝倉「そうよ、大丈夫よ。」
お前は黙ってろおおおおおおおおお!!

ハルヒ「なに怪物同士でゴチャゴチャやってんの!」
みくる「ふぇええ!」

くそ、背後から刺される不安はこの際後回しだ。
後回s・・・

アグモン「古泉、俺が前に出る!お前は後ろで備えろ!」
ガブモン「キョン君!(いつになくやる気じゃないですか)」
アグモン「刺されないようにな!」
ガブモン「はい!」

アグモン「ハルヒ!ベビーフレイムだ!」
ハルヒ「メガフレイム!」
アグモン「出ねーよ!」

そんな問答が命取りだ。またも俺にクワガーモンの鉄をも切り裂く鋏が迫る。
逆転の発想だ。俺は鋏が閉じ、俺を両断するより早く奴の頭へ飛び込み爪を繰り出す。
アグモン「クロスファイト!」

上空へ吹き飛ぶ俺。

まずい、一寸も止められなかった。
このままじゃ、ハルヒたちが―――!!

長門「カードスラッシュ。高速プラグイン。ファントモン。」

長門がお買い物の清算をしていた。

いや、清算ではない。その手に握られているのは紛れも無く
ハルヒの持つデジヴァイスの親戚『デジアーク』だ。
長門、朝倉もそうだが、そういうことは先に言え。

デジアークを通したカードの能力をパートナーデジモンに付加する『カードスラッシュ』。
さすが長門!俺たちにできないことを平然とやってのける!そこに(ry

にわかに盛り上がった俺の心だが、次の瞬間、その光景に戦慄した。
サイボーグ○09ばりに加速するテリアモン、
その手にはファントモンの必殺武器『ソウルチョッパー』が握られている。
交差する二体。
常識的に考えて壁を避け上昇するはずのクワガーモンは
糸の切れた操り人形のように壁へ激突した。

アグモン「ぐふ!・・・やったのか?」
目の前の光景に見入り、着地に失敗した俺は
死亡フラグをあっさり呟いてしまった。

長門「きっと。」

俺より先に死亡フラグが成就したらしいクワガーモンが起き上がることはなかった。

俺たちはクワガーモンを倒した。進化なしで。
それでいいのかは気にしない。
なぜならデジモンの進化によって敵を打ち砕くのがデジモン流なら、
長門の大活躍によって敵を打ち砕くのが俺たち流だ。

テリアモン「またつまらないものを斬ってしまったわ」

こっちみんな。

ともかく俺たちの戦いは終わった。

ハルヒ「すごいじゃない、テリアモン!かわいいだけじゃないのね!」
おいハルヒよ。お前がかわいいと抜かしているテリアモン。
血の滴る鎌を担いで不適に笑ってるぞ。
怖くないのか。俺は怖い。

ガブモン「やれやれ。僕達の活躍の余地はありませんでしたね。」
やはり弱っても長門だな。
ガブモン「しかし、無敵というわけではありません。
      彼女の力が衰えているのはあの傷を見ても分かるとおりです。」

みくる「キョン君。頑張ったね。」
さすが朝比奈さん、血だらけのぬいぐるみを愛でるハルヒとは違う。
俺の功労も少しは讃えられていいはずだ。
もう少しで両断されいたんだぞ。

ガブモン「いやはや、涼宮さんが僕達のリクエストどおりに動いてくれないのは
      いつもの通りですが、今回ばかりは焦りましたよ。」
アグモン「まああいつもこの世界の勝手が分かっているわけじゃないからな。
      しょうがないと言えばしょうがない。」

ハルヒ「有希、キョンとこいつ交換して!」
長門「・・・・・・。」
テリアモン「長門さん、交換なんて出来ないのよ?長門さん?」


〜第一話終了〜

第二話「激烈進化!グレイモンガルルモンガルゴモンインフェルモン!」

長門「私たちは人間としての情報以外この世界に持ち込まれてはいない。
    でもデジモンをいくつかの手段で強化、進化を促進する能力はこの限りではない。
    このデジタルワールドと仮称される世界での人間とはそういった存在と
    規定されているようだから。」

俺たちは俺たち全員の見解をまとめていた。
もちろんそれらを収束し推測を立てるのは「鯛は腐っても鯛、長門は弱っても長門。」
のことわざで有名な長門だ。

俺たちは状況の把握を進めていった。

ハルヒ「じゃあ、デジタルワールドでのあたしの雑用はやっぱりキョンなのね!」
アグモン「雑用じゃないぞ。」
ハルヒ「させるんだから一緒よ。」

止むを得ないといえばそうだが、俺がハルヒのパートナーデジモンであることは
公然の事実としてSOS団のなかで認可された。
それで、長門のデジモンはテリアモン(朝倉)
朝比奈さんのデジモンはガブモン(古泉)、と俺が断じようとしたとき

ガブモン「すいませんが、僕は朝比奈さんのデジモンではありませんね。」
みくる「はい、私は、あの、デジヴァイスですか?それ持ってないです。」

これはなんたる僥倖。
ホーリーリングをいくつもその瞳の中に隠し持っているであろう神聖なる朝比奈さんの
デジモンが、俺の背後を性的な意味で狙っているらしい古泉のパートナーではないと。

アグモン「じゃあ古泉。お前は誰のパートナーデジモンなんだ?」
ガブモン「恐れ多くも涼宮さんのかと。」
ハルヒ「へ?ああ、こっちの一回も光ってない方は古泉君の?」

お前ら、俺を驚かしたりうろたえさせて楽しいか?え?

ハルヒ制服の懐からもう一つデジヴァイスを持ち出した。
なんだ。お前はいつの間に豊臣秀吉に憧れるようになったんだ。

ハルヒ「セクシー、って言いなさいよ。フージコちゃんよ。」

やめておけ、お前に窃盗の才能はない。
強盗の才能はあるかも知れんが。

ガブモン「はは、ではやはりキョン君と僕は(穴)兄弟ということになるんですね。」
アグモン「()のなかのモノを今すぐ撤回しろ。今すぐ。」
ガブモン「キョン君、見えてるんですか・・・?」

それよりこれからどうするんだ。
今は便宜上この風通しの良くなった部室にテーブルを囲んでいるが、
なんとなく腹も減ってきたような気がする。

長門「ここに来る途中、いくつかの場所に摂食可能な果実を見つけた。」
長門お前はどこまで役に立つんだ。
なら、これからは食料の調達をするということでいいんだな?
長門「妥当かと思われる。」

俺たちは班に分かれた。
ハルヒと俺、古泉が一組、長門、テリアモン(よく見えない)、朝比奈さんの班だ。
俺たちはデジモン2体、長門は、長門なら毒キノコを
パクリと食べてしまいそうな朝比奈さんのお世話をしてくれるだろう。
今回も頼んだぜ。

北高と下界を結ぶ心臓破りの坂もすっかり密林へと変貌していた。
ハルヒ「キョン、これ食べられそうじゃない?おはぎよおはぎ!」
阿呆、それはボタモンだ。

だがかくいう俺も見たこともない植物だらけで
何が食べていいものなのかまるで見当が付かない。
と思ったが、俺は意外なものを斜面に発見した。

アグモン「デジタケ?」

デジタケは某ゲームをプレイしたことのあるお友達たちには
メジャーなデジモン用の食料だ。
見た目が地味なのでこのジャングルの中では発見しやすい。
まさかここにも存在するとは。

アグモン「古泉、とりあえずこのキノコは食べられる。コレを探せ。」
ガブモン「これが食べられるんですか。分かりました。」
ハルヒ「あんたゲーム以外の特技があったのね。見直したわ。」

俺はハルヒたちの言葉に何も言わなかった。
男は黙って職務を全うするのである。
後ろめたいことがあっても黙って全うするのである。
ほら、無口職人キャラには大抵暗い過去があるだろ?

アグモン「運試しキノコ・・・これは古泉用だな。」

予想以上に食料集めは順調だった。
ガブモン「キョン君、これバナナみたいじゃないですか?」
アグモン「それは・・・!!」

ハルヒ「だいだいこんなもんね!」
アグモン「デジタケ、ブルーリンゴが主だな。まあよしとしよう。」

ハルヒ班は意気揚々と北校へ帰還した。

アグモン「長門たち、お前らは先に帰ってたのか。」
長門「そう。」
仕事が迅速だな。俺たちはハルヒがボタモンを飼うと言い出して聞かなくなるなど、
いくつかのアクシデントも発生したおかげで遅くなったのだ。

みくる「ここからは私が頑張りますね。」
久々の朝比奈さんの手料理である。
期待しないわけがない。
食べ終わる頃には俺もウォーグレイモンにでも進化しているんじゃないか。

みくる「ゆこお〜未来〜の冒険者〜」

朝比奈さんはいつものメイド姿で調理していた。
メイド服はどういうわけか部室にちゃんと引っかかっていたのだ。
ハルヒ・・・見直したぜ。
調理器具等は完全にテリアモンのサバイバル知識の賜物である
なんとも野性味あふれる機材が並んでいたが、
朝比奈さんが使えばどこでもそこはまさに宮廷の厨房である。

テリアモン「ふふ、私の知識もまんざらでもないでしょ?」
アグモン「・・・・・・。」
テリアモン「軍オタじゃないわよ?」
アグモン「・・・・・・。」
テリアモン「でも朝比奈さん、料理は様になってるけど、
        食料調達のときはけっこう手を焼いたのよ。」
アグモン「・・・・・・。」

まさか口には出さなかったが、
朝比奈さんの拾ってきた食材はなかなかにユニークだった。
長門も。
それゆえに、俺はいたいけな朝比奈さんに心苦しいながらも嘘をつき、
それらの食材を仕方なく古泉に回るように手配しておいた。

みくる「みなさん、できましたよ〜。」
さまざまな料理が手際よく作られ部室のいつものテーブル、
といっても今は森と化した校庭に並べられているそこに次々と出現した。

みくる「面白い食べ物がいっぱいあったので楽しかったです。」

ハルヒ「私も作ったのよ、キョン!」
横目にテリアモンが釣り上げたらしいデジカムルの残骸がチラっと見えたが無視した。

ガブモン「いやはや、色とりどりでにぎやかですね。
      この世界も捨てたものじゃないと思えてきます。」

みくる「古泉君のはガブモンさんの体にいいと言われてる食材を使ったの。」

ガブモン「配慮痛み入ります。ふふ、キョン君、いいでしょう。
      ほしいならこの紫色のお肉を一枚上げましょうか?」
アグモン「アグモンは肉は食べないんだ。残念だが。」

古泉がいま嬉々として頬張っている肉、あれはまあアレだ。
ユキダルモン?自販機?なんのことです?

それからしばらくは楽しいピクニック気分が続いた。
俺も食事後のガブモンの変化にニヤニヤが止まらないぜ。

テリアモン「涼宮さんの作った焼き魚かしら?あれも食べてあげたら?」
アグモン(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)
テリアモン「無愛想ね。」

まだテリアモンとは仲良くなれる気がしない。

我らが団長も、お前は一人でフードファイトしてるのかというくらい
ガツガツと朝比奈さん特性のデラックスキノコ入りのキノコソテーを貪っていた。
たまにチラと俺の目の前に置かれた魚の形をした炭を見て、
それから俺をジトッとした視線を送っている。

長門「・・・。」
アグモン「古泉のはガブモンしか食べられないぞ。」

―ここからBパート―

俺たちは共同で食事の片づけをし、
これから必要になるであろうサバイバル用品の製作を開始した。

テリアモン「これはね、小さいけどこれさえあればいつでもテントが張れるの。」
ハルヒ「すごいわねあんた!SOS団に欲しい人材だわ!
     悪の軍隊と全面戦争になったときにきっと役に立つわよ!」

ハルヒはテリアモンの人格があいつであることに気付かないのか。
まあクラスの人間で話題に出るのは谷口くらいだったものな。
谷口・・・あいつのとだからここに来ていたとしても死んでいるか。

サバイバル用品を作る過程でわかったことだが、
古泉に負けず劣らず長門が不器用である。
情報統合(ryのバックアップがないあいつの器用さの自力は
あのときのレトルトカレー程度らしい。
テリアモンに助けられてやっとツタを結って紐にしている。
こういう長門もいいな。

和やかなムードの流れる元校庭の森に思わぬ来訪者が現れた。

?「あっはっはっは!」

そいつ、いや、その御方はいつもの脈絡のない爆笑とともに
ズカズカと俺たちの輪の中に入ってきた。
硬直する俺たちの様子には全く頓着していない。

?「みーくるたちー!なんだかこんなとこで楽しそうじゃないかぁ!」
俺はその場にいた皆があの人じゃないか、
いや、あの人のほかにありえないという名前で恐る恐る呼びかけた。

アグモン「鶴屋さん・・・?」
ケラモン「お、そっちのかっこいいトカゲリオンはキョン君っかなー!?」

さすがというべきか。
自分がデジモンとなっていることを受け入れているのは当たり前、
そして一声で鶴屋さんはアグモンが俺であることをあっさりと見抜いた。

みくる「なーんだ、鶴屋さんかぁ。」

朝比奈さんの顔がいつもの泣くことすら出来ないそれから
緩んだ笑みに変わったのはいいことだが、
俺には目の前の鶴屋さんの姿に動揺を禁じえなかった。

ハルヒ「ケラモン、成長期、種族不明、属性不明?なにこれ?」

ハルヒはデジヴァイスに表示された鶴屋さん=ケラモンのデータを睥睨し、
絵に描いたような首傾げを披露している。
長門もDアークを眺め小数点以下の角度で傾げている。

ガブモン「キョン君、あの鶴屋さんらしきデジモンとはどういった方で?」
アグモン「けたけた笑いながら核ミサイルを発射してしまうような方だ。」
ガブモン「恐ろしい肩書きですが鶴屋さんだと妙にしっくりきますね・・・。」

ケラモン「みくる!これにょろ、これ!」
みくる「わー、デジヴァイスだー。」

こうして鶴屋さんが仲間になった。

アグモン「それで鶴屋さん、どうしてここに?」
俺はなんとなく聞いてみた。鶴屋さんは一般人だ。
しかしもしかしたら鶴屋さんなら、
鶴屋さんなら何か知っているかもしれないという淡い期待に動かされたのだ。

ケラモン「起きたらジャングルだったのさ!
      そいで最初は私の家の島かな?と思ったんだけどそうでもないみたいでね!」
アグモン「ほうほう、それでそれで?」
ケラモン「それでそれで、ハチの大群、それもでーっかいのに
      襲われてここまできたんだね!」

一同に緊張が走った。
一同は違うな。
災厄に襲われそれを運んできた本人、
鶴屋さんだけは相変わらず楽しそうに笑っている。

テリアモン「みんな、羽音が聞こえるわ!」
テリアモンは大きな耳を小さな腕で持ち上げた微笑ましい姿で
招かれざる客の襲来を告げた。

ガブモン「キョン君!上です!」
アグモン「多すぎる・・・!!」

いつのまにか空一面に巨大な影がいくつも舞っていた。
俺たちを視認したのか、不愉快な騒音を立てて下降してくる。

デジヴァイスを腰から取り上げたハルヒが出力された情報を
その通る声で読み上げた。
ハルヒ「フライモン!ええと、ハエかしら?揚げ物じゃないわよね?」

長門はDアークを無造作に手に持ち、
テリアモンは石を砕いて作ったナイフを構えていた。怖い。
朝比奈さんは鶴屋さんに激励され
デジヴァイス02をとりあえず振り回している。

アグモン「散らばれ!」

奴らの攻撃は苛烈を極めた。
数がいるくせにその上やたらと針を降らしてくる。
ハエっていうレベルじゃねーぞ!

ケラモン「うおー!」
ケラモン「ぬわはははは!」
ケラモン「めがっさでかいにょろ!多いにょろ!」

こんなときでも鶴屋さんは元気です。

フライモンたちは闘争本能を掻き立てられないのか、
人間は狙わないようだった。それだけが唯一の救いだ。

ハルヒ「アグキョンと古泉君!ベビーフレイム!プチファイアー!」
あのハルヒも珍しく空気を読んだのか、しっかりと指示を出している。
ハルヒ「アグキョン、バカ!飛んでいく先に飛ばすの!バッカじゃないの!?」
アグキョンやらバカやら連呼されるのは気に食わないが。

長門とテリアモンも奮戦している。
しかし勝てるわけがない。相手は成熟期である。

戦いが始まって数分も立たず、まず古泉が倒れた。

アグモン「古泉!どうした、毒にやられたか!?」
さきほどから古泉は毛皮が重いのかいくつか飛来する針を受けていた。
逆に毛皮があるからこそそれに耐えられているのだが。
しかしフライモンの針には毒があるはずだ。それを喰らったのかもしれない。

ガブモン「そうかもしれません、急に腹痛が・・・!」

やっちまった。
こんなときに俺が手配した食事が効いてきてしまったみたいだ。
しかししょうがない。こんなときに襲ってくる奴らが悪い。
俺は悪くない。

それに目をつけたフライモンたちは一斉に古泉と俺に対して
針を浴びせてきた。
絶体絶命だ。

落ち着けキョン。
さっきから俺が「しかし」を多用しすぎではないか。
現実を見ろ。KOOLになれ。
そのとき俺の耳にハルヒの声が飛び込んできた。
ハルヒ「キョン!」

あいつはバカか。こっちにくるな。
フライモンの針は一撃で石を砕き地を穿っている。
人間ごときには無理です☆

あいつを守らなければ―――!!

アグモン「ハルヒ!」
駆け寄るハルヒに、俺は逆にあいつの前に飛び出した。
アグモンの体なら守れるかも、などと甘い考えは
すぐに容赦なく降り注ぐ攻撃に打ち消された。

もっと図体があれば守りきれるのに。
クワガーモンのように硬い甲殻でもあれば防ぎきれるのに。
灯火のような炎ではなく業火を操れたなら焼き払えるのに。

俺の願いに応えるように、
ハルヒの腰のデジヴァイスが輝いた。

俺の周囲に、輝く空間が発動した。
ハルヒの力を感じる。
それがデジヴァイスを通し、この空間を通し、
俺を進化させる―――!!

刹那のあと、
俺の体はハルヒの前の地面に小ビルのごとく巨大化し、
脚は地を沈ませそびえたっていた。

ハルヒ「グレイキョン!」
グレイモン「グレイモンだ。」

俺は空から来襲する無数の凶器を、
頭部の甲殻を駆使し一薙ぎで打ち払った。

進化の光は俺だけに発動したわけではなかった。
恐らくハルヒのトンデモパワーが伝導したのだろう。

ハルヒのもう一つのデジヴァイス、
長門のDアーク、
朝比奈さんのD-3も
今や光の塊と見えるほどに輝いている。

ガブモン「・・・いけます!」
テリアモン「ふふ、ふふフフフ!力が湧いてくるわ!」
ケラモン「めがっさどかーんにょろー!!」

三者三様の掛け声と共にSOS団の臨時戦闘要員たちは進化した。

森の開けた空間、そこに新たなデジモンが3体出現していた。
ガルルモン、ガルゴモン、インフェルモン。

フライモンたちはその威容に遠巻きに俺たちを威嚇している。
おまけに朝比奈さんも腰を抜かしている。
ハルヒ「どう見ても形勢逆転よ!!」

ハルヒの言うとおりだ。
数の上ではまだ圧倒的な差があるが、そう確信できた。
このメンツなら負けるわけがない。

だがフライモンたちは諦めてはくれなかった。
個人的にはカッコよく進化してめでたしめでたしと行きたかったのだが。
ガルルモン「涼宮さんが許してくれないでしょう。」
そうだな。どう見てもハルヒは全滅させなきゃ許さないという顔をしている。
ハルヒ「なにグズグズしてんのよキョン!」
やはりけしかけられた。

ガルゴモン「ダダダダダー!!」
あの戦闘凶はすでにそうしている。さすがだ。

グレイモン「やれやれ・・・」

戦闘が再開された。今度はさっきのようには行かないぜ、ハエども。

俺が気合を入れて走り出そうとしたとき、早くもフライモンが一匹撃ち落とされた。
地上から放たれた光弾がやかましく羽ばたく羽に直撃したのだ。

インフェルモン「ふおおお!あたしすごいよ!すごい!」

一人だけ完全体になっているのに気付いていない鶴屋さんは、
自分の攻撃の威力に自分で驚いている。
それにしてもかわいいインフェルモンだな。ちゅるやさんにそっくりだ。

横目には閉鎖空間と違い赤い球体ではない古泉が
無駄にカッコイイ巨狼の体が跳ねあげていた。
ガルルモン「ふんもっふ!」

上空の安全圏でデットリーポイズンを放っていたフライモンが
想定の範囲を大きく離れたガルルモンの跳躍に捉えられた。

ガルルモン「フラガラッハビームブレイド!」

ミスリルとかいうよくわからない金属で形成されているらしい
ガルルモンの背の刃が跳躍の軌道上にある全ての物体を切り裂く。
それと古泉、フラガラッハってなんだ。

そろそろ俺も活躍しないとならないようだ。
グレイモンの自慢はその巨体と兜のような甲殻だが、
残念だが頭の上をブンブン飛び回る奴らには届かない。
ならば、あとはアグモンからの正統進化系たる証拠を見せ付けてやるしかないな。

みくる「キョンくーん、頑張ってー!」
はーい朝比奈さん。よく見ててくださいねー。

ハルヒ「グレイキョン!メガフレイム!」
俺の巨大な口腔に空気がつむじを巻いて吸い込まれていく。
グレイモン「おおおお!」
業火の塊が周囲の酸素を激しく燃焼させながら
俺に目を付けられた哀れなフライモンへ一直線に向かう。
獲物に衝突し炸裂し巨大な炎は紫電をも発生させ
フライモンを爆発の渦に巻き込み、そのデータをことごとく灰燼に帰した。

自分でも驚くほど派手に撃破を決めた俺だが、
情けないことにメガフレイムの一撃で体力を大幅に消費していた。
はあはあ喘いでいるのが朝比奈さんにばれたらイヤだな。

ガルルモン「そろそろ決着は付いたようです。」

いつのまにか背後にいた古泉が言った。
なるほど。確かに趨勢は決まったようだ。
長門のカードスラッシュによる援護を受けた戦闘凶、
掟破りのワープ進化を遂げた鶴屋さんの活躍は目覚しく、
フライモンの群れは逃げ腰となっていた。

銃声と鶴屋さんの高笑いが森に響き渡っている。

〜2話終了〜



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